JP3217364U - 剥離装置、および剥離用ブレード - Google Patents

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Abstract

【課題】貼合物および粘着層を透明基板から円滑に剥離できる、剥離装置を提供する。【解決手段】透明基板30に粘着層を介して貼合されている貼合物10を、透明基板から剥離する剥離装置100であって、透明基板30を平坦に支持する支持体110と、透明基板30と粘着層との間に挿入され、貼合物10および粘着層を透明基板30から剥離するブレード150とを有し、ブレード150が、ブレード本体と、ブレード本体の表面のうち少なくとも粘着層に接触する表面を覆う被覆層とを有する。【選択図】図1

Description

本考案は、剥離装置、および剥離用ブレードに関する。
特許文献1には、カバーガラスが接着材によって表示パネルに接着している表示モジュールを、カバーガラスと表示パネルに分離する剥離装置が開示されている。この剥離装置は、表示パネルの主面と平行に接着材を切断する金属板を有する。金属板の厚さは接着材の厚さよりも薄く、接着材は厚さ方向中央で切断される。
特開2016−38436号公報
従来から、透明基板に粘着層を介して貼合されている貼合物を、前記透明基板から剥離するための剥離装置が検討されているが、より円滑に剥離できる装置が望まれていた。
本考案は、上記課題に鑑みてなされたものであって、貼合物および粘着層を透明基板から円滑に剥離できる、剥離装置の提供を主な目的とする。
本考案の一態様によれば、
透明基板に粘着層を介して貼合されている貼合物を、前記透明基板から剥離する剥離装置であって、
前記透明基板を平坦に支持する支持体と、
前記透明基板と前記粘着層との間に挿入され、前記貼合物および前記粘着層を前記透明基板から剥離するブレードとを有し、
前記ブレードが、ブレード本体と、前記ブレード本体の表面のうち少なくとも前記粘着層に接触する表面を覆う被覆層とを有するものである、剥離装置が提供される。
本考案の一態様によれば、貼合物および粘着層を透明基板から円滑に剥離できる、剥離装置が提供される。
図1は、一実施形態による剥離装置をZ方向から見た図である。 図2は、一実施形態による剥離装置をY方向から見た図である。 図3は、一実施形態による剥離装置の剥離動作を示す図である。 図4は、図3に続く、剥離装置の剥離動作を示す図である。 図5は、一実施形態によるブレードの断面図である。
以下、本考案を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。各図面において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は、支持体110の透明基板30を平坦に支持する支持面111に対し平行な方向である。Z方向は、支持面111に対し垂直な方向である。
図1は、一実施形態による剥離装置をZ方向から見た図である。図2は、一実施形態による剥離装置をY方向から見た図である。剥離装置100は、貼合物としての表示装置10および粘着層20を、透明基板30から剥離する。表示装置10は、予め、粘着層20を介して透明基板30の貼合面31に貼合されている。以下、透明基板30の貼合面31を背面31とも呼び、透明基板30の貼合面31とは反対側の表面を前面32とも呼ぶ。また、透明基板30を基準として、表示装置10側(Z方向正側)を後方とも呼び、表示装置10とは反対側(Z方向負側)を前方とも呼ぶ。尚、本実施形態の貼合物は表示装置10であるが、貼合物の種類は特に限定されない。
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイである。液晶ディスプレイは、液晶パネルおよびバックライトを有する。液晶パネルの後方から液晶パネルをバックライトで照らすと共に、液晶パネルを透過する光の透過率を画素毎に制御することにより、画像を表示することができる。
液晶パネルは、例えば、アレイ基板と、液晶層と、カラーフィルタ基板とをこの順で有する。アレイ基板は、液晶層側に、TFTなどのスイッチング素子と、透明な画素電極とを有する。カラーフィルタ基板は、液晶層側に、カラーフィルタと、透明な対向電極とを有する。
液晶パネルは、アレイ基板の液晶層とは反対側に設けられる第1偏光板と、カラーフィルタ基板の液晶層とは反対側に設けられる第2偏光板とを有する。第1偏光板の偏光軸と第2偏光板の偏光軸とは、例えば90°で交差する。
バックライトは、液晶パネルを後方から照らす。バックライトは、エッジライト型のもの、直下型のものいずれでもよい。バックライトは、発光素子に加えて、各種の光学フィルムを有してもよい。光学フィルムは、光の強度を均一化したり、視野角を変更したり、光の利用効率を改善したりする。
尚、表示装置10はタッチセンサを含むものでもよい。タッチセンサは、透明基板30に対する指などの物体の接触または接近を検出する。表示装置10は、液晶パネルおよびバックライトを支持するフレームやケース等を有してもよい。また、表示装置10は、液晶ディスプレイには限定されず、例えば有機ELディスプレイまたはプラズマディスプレイ等であってもよい。
粘着層20は、表示装置10と透明基板30とを接着する。粘着層20の材料としては、表示装置10等の分野で公知のものが用いられてよい。粘着層20は、典型的には、硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。粘着層20は、単層構造でもよく多層構造でもよい。多層構造の場合、同一の材料を積層した構造でもよく、異なる材料を積層した構造でもよい。粘着層20が多層構造である場合、粘着層20を構成する層の数は2層以上であればよい。
周波数1Hz、25℃における粘着層20の貯蔵せん断弾性率G´は、5×10Pa以上であることが好ましく、1×10Pa以上であるとより好ましい。G´が5×10Pa以上であれば、粘着層20が充分な硬度を有しているため、後述のブレード150が粘着層20を突き破ることなく粘着層20と透明基板30との間に侵入できる。また、ブレード150が剥離界面を安定して進行できる。一方で、G´は1×10Pa以下であることが好ましく、1×10Pa以下がより好ましい。G´が1×10Pa以下であれば、表示装置10と透明基板30との貼合時に、表示装置10と粘着層20との界面又は透明基板30と粘着層20との界面等において気泡が発生したとしても、その気泡が短時間で消失しやすい。また、粘着層20がある程度軟らかいため、ブレード150を粘着層20と透明基板30との間に容易に侵入でき、容易に剥離起点を拡大できる。さらに、粘着層20の引張伸びが大きく、透明基板30を粘着層20から剥離した後、表示装置10から粘着層20を引っ張って剥離する場合にも、剥離の途中で粘着層20が切れにくく、粘着層20全体を一度に剥離できる。
粘着層20の厚さは、0.03mm以上が好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましく、0.3mm以上1.5mm以下がさらに好ましい。粘着層20の厚さが0.03mm以上であれば、ブレード150の侵入による表示装置10の過度な変形を抑制でき、好ましい。また、透明基板30を粘着層20から剥離した後、表示装置10から粘着層20を引っ張って剥離する場合に、剥離の途中で粘着層20が切れにくい。一方、粘着層20の厚さが2.0mm以下であれば、剥離工程において表示装置10を適度に変形できるほか、ブレード150が粘着層20を突き破ることなく粘着層20と透明基板30との間に容易に侵入でき、容易に剥離起点を拡大できる。
粘着層20は、例えば、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、光及び熱硬化性樹脂組成物等を硬化して得られる。これらの硬化性樹脂組成物は、予め硬化され、シートの形態で、表示装置10と透明基板30との間に挿入されてよい。
「光硬化性樹脂組成物」とは、露光により硬化し得る樹脂組成物を意味する。「熱硬化性樹脂組成物」とは、加熱により硬化し得る樹脂組成物を意味する。「光及び熱硬化性樹脂組成物」とは、露光及び加熱により硬化し得る樹脂組成物を意味する。「露光」は、紫外線等の光を照射することを意味する。
硬化性組成物としては、低温で硬化でき、硬化速度が速い点から、光硬化性樹脂組成物が好ましい。
光硬化性樹脂組成物は、溶剤を除去するための加熱を行う必要がない点で、無溶剤型であることが好ましい。「無溶剤型」とは、溶剤を含まない、又は溶剤の含有割合が、光硬化性樹脂組成物の総質量(100質量%)のうち、5質量%以下であることを意味する。「溶剤」とは、沸点が150℃以下の液体(揮発性希釈剤)を意味する。
光硬化性樹脂組成物は、乾燥工程が省ける点、時間とエネルギーを省くことができる点で、溶剤を含まないことが最も好ましい。
硬化性組成物は、典型的には、硬化性基を有する硬化性化合物(A)と、光重合開始剤(B)とを含む。必要に応じて、光重合開始剤(B)以外の他の非硬化性成分が含まれてもよい。非硬化性成分としては、非硬化性ポリマー(C)、他の添加剤等が挙げられる。
硬化性化合物(A)としては、アクリル系、シリコーン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系等の化合物が挙げられる。中でも、粘着層20の貯蔵せん断弾性率G´を5×10Pa以上1×10Pa以下の範囲内に調整しやすい点で、硬化性化合物(A)は、シリコーン系またはウレタンアクリレート系が好ましい。
透明基板30は、例えば表示装置10のカバーガラスとして用いられる。カバーガラスは、表示装置10を保護するものである。透明基板30の厚さは、表示装置10の厚さよりも厚くてよい。そのため、透明基板30は、表示装置10に比べて変形しにくい。
透明基板30の前面32には、低反射層や防汚層などの機能層が形成されてもよい。低反射層および防汚層のうち、いずれか1つのみが形成されてもよいし、両方が形成されてもよい。後者の場合、透明基板30の前面32には、低反射層と防汚層とがこの順で形成される。
低反射層は、外光の反射を抑制するものである。低反射層は、例えば屈折率の異なる複数の層を積層した構造を有する。外光の映り込みを防止する防眩性を向上でき、表示装置10で表示される画像の視認性を向上できる。
防汚層は、汚れが付くことを抑制するものである。表示装置10がタッチパネルである場合に、指紋などの付着を防止できる。防汚層は、フッ素含有有機ケイ素化合物などで形成される。フッ素含有有機ケイ素化合物は、防汚性、撥水性、撥油性などを有する。
また、透明基板30の前面32には、太陽光や照明光などの外光を拡散反射する凹凸面が形成されてもよい。外光の映り込みを防止する防眩性を向上でき、表示装置10で表示される画像の視認性を向上できる。凹凸面は、エッチング処理などによって形成される。この凹凸面に、低反射層や防汚層が形成されてもよい。
一方、透明基板30の背面31には、表示装置10の配線等を前方から見えないように隠す遮光層が形成されてもよい。前方から見て、遮光層は、枠状に形成され、その内周縁は表示装置10の画像を表示する画像表示領域の外周縁と重なるように形成される。また、透明基板30の背面31には、ミラーとして機能する金属層が形成されてもよい。
透明基板30は、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、無アルカリガラス等の無機ガラスで形成されてよい。無機ガラスは、強度向上の観点から、強化ガラスであってもよい。強化ガラスは、化学強化ガラス、物理強化ガラスのいずれでもよい。
化学強化ガラスは、アルカリ金属を含むガラス、具体的には、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスなどで形成される。化学強化ガラスは、ガラス表面のイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えばNaイオン)をイオン半径が大きいアルカリ金属イオン(例えばKイオン)に置換することにより、ガラス表面に圧縮応力層を形成したものである。
尚、透明基板30は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の有機ガラスで形成されてもよい。また、透明基板30は、複数のガラス板が貼り合わされた合わせガラスであってもよい。
剥離装置100は、貼合物としての表示装置10および粘着層20を、透明基板30から剥離する。剥離後の透明基板30には粘着層20の残渣がほとんど付着しないため、残渣の除去が容易である。剥離装置100は、支持体110と、ガイド120と、スライダ130と、ブレード150と、傾斜角度調整機構170と、ヒータ180とを有する。
支持体110は、透明基板30を平坦に支持する支持面111を有する。支持体110は、透明基板30を真空吸着してもよい。支持体110によって透明基板30を平坦に支持しながら、透明基板30と粘着層20との間にブレード150を挿入することにより、粘着層20および表示装置10を透明基板30から剥離できる。剥離の際に、透明基板30を平坦に支持するため、透明基板30の破損を抑制できる。
ガイド120は、支持体110に対し固定され、ブレード150を第1方向に案内する。ガイド120は、第1方向に対し垂直な第2方向に間隔をおいて一対設けられる。以下、第1方向をX方向とも呼び、第2方向をY方向とも呼ぶ。X方向およびY方向は、支持面111に対し平行な方向である。
スライダ130は、ガイド120に沿って移動する。スライダ130は、ガイド120毎に設けられ、Y方向に間隔をおいて一対設けられる。一対のスライダ130には、ブレード150が架け渡される。ブレード150は、一対のスライダ130と共にX方向(例えば図2では斜め下方向)に移動する。
ブレード150は、透明基板30と粘着層20との間に挿入され、表示装置10および粘着層20を透明基板30から剥離する。ブレード150がX方向片側からX方向反対側に向けて移動するにつれ、粘着層20がX方向片側からX方向反対側に向けて徐々に透明基板30から剥離される。
透明基板30の貼合面のうち、粘着層20が粘着している部位と、粘着層20が剥離された部位との境界線を、剥離前線とも呼ぶ。ブレード150の刃先の厚さは、粘着層20の厚さよりも薄いが、ゼロではない。そのため、剥離前線は、ブレード150の刃先よりも、ブレード150の移動方向前方(図2では斜め下方)に形成される。
ブレード150は、刃先に、支持体110の支持面111に対し平行であって透明基板30に接触する平行面151と、平行面151に対し傾斜する傾斜面152とを有する。Y方向から見たときの平行面151と傾斜面152とのなす角を、刃先角度α(図2参照)とも呼ぶ。刃先角度αは、例えば1°以上60°以下である。
ブレード150は、例えば図1に示すように形成される。ブレード150は、一対のスライダ130に架け渡される基部155と、基部155からX方向片側(詳細にはブレード150の移動方向前方)に突出するブレード刃部156とを有する。ブレード刃部156が、平行面151と傾斜面152とを有する。ブレード刃部156の刃先角度αは、ブレード刃部156全体において均一であることが好ましい。
粘着層20と透明基板30との間にブレード150を押し込む荷重を、単に「押込み荷重」とも呼ぶ。押込み荷重としては、モータ等の駆動力を利用してもよいが、本実施形態では重力を利用する。この場合、押込み荷重を調整するため、ブレード150に対し取外し可能に重りが取付けられてよい。ブレード150とスライダ130と重りとの合計の重さが大きくなるほど、押込み荷重が大きくなる。
傾斜角度調整機構170(図2参照)は、Y方向から見たときの、支持体110の支持面111の水平面に対する傾斜角度βを調整する。支持面111が水平面に対し平行であるとき傾斜角度βは0°であり、支持面111が水平面に対し垂直であるとき傾斜角度βは90°である。ブレード150とスライダ130と重りとの合計の重さが同じ場合、傾斜角度βが大きいほど、重力のX方向における分力が大きく、押込み荷重が大きくなる。
傾斜角度調整機構170は、例えば、水平な台に載置されるベースフレーム171と、ベースフレーム171に対し支持体110を旋回可能に支持する旋回軸172とを有する。旋回軸172の軸方向はY方向とされ、旋回軸172を中心に支持体110が旋回可能とされる。傾斜角度βを、0°以上90°以下の範囲で変更できる。傾斜角度βの調整後、支持体110はベースフレーム171に対し旋回不能に固定される。
尚、傾斜角度βが0°の場合、押込み荷重としては、モータ等の駆動力を利用する。この場合、剥離装置100は、モータの回転運動をスライダ130の直線運動に変換する運動変換機構を有してよい。運動変換機構としては、例えばボールねじが用いられる。
ヒータ180は、支持体110で支持されている透明基板30を介して、粘着層20を加熱する。粘着層20は、加熱されると、軟化するため、粘着層20と透明基板30との間に押し込まれるブレード150を受け入れるように変形しやすい。そのため、ブレード150を容易に押し込むことができる。
ヒータ180は、図2等では支持体110と支持体110で支持されている透明基板30との間に設けられるが、支持体110の内部に設けられてもよい。ヒータ180としては、例えばシリコンラバーヒータが用いられる。ヒータ180の温度は、例えば40℃以上230℃以下の範囲で設定される。
図3は、一実施形態による剥離装置の剥離動作を示す図である。図4は、図3に続く、剥離装置の剥離動作を示す図である。以下、図3および図4を参照して、上記構成の剥離装置100を用いた剥離方法について説明する。
先ず、図3に示すように、透明基板30を支持体110で平坦に支持する。表示装置10は、透明基板30を基準として、支持体110とは反対側に配される。その後、ヒータ180を用い、支持体110を介して粘着層20を予め定められた温度に加熱する。
次いで、支持体110で支持されている透明基板30と粘着層20との間にシムプレート190を挿入し、剥離起点を形成する。シムプレート190の厚さは、ブレード150の刃先の厚さよりも薄い。そのため、剥離起点を容易に形成できる。
次いで、剥離起点に、ブレード150の刃先が挿入される。ブレード150の刃先は、シムプレート190と透明基板30との間に挿入される。これにより、ブレード150の刃先を、粘着層20と透明基板30との間に確実に挿入できる。
次いで、図4に示すように、シムプレート190を取外し、ブレード150をX方向片側からX方向反対側に向けて移動させ、粘着層20をX方向片側からX方向反対側に向けて徐々に透明基板30から剥離する。これにより、表示装置10および粘着層20が、透明基板30から剥離される。
ところで、図4に示すように、ブレード150は、傾斜面152および傾斜面152から続く背面153において、粘着層20と接触する。傾斜面152および背面153は、粘着層20の透明基板30から剥離された部分と接触する。
ブレード刃部156が平行面151および傾斜面152を有し、基部155が背面153を有してよい。背面153は、平行面151に対し平行とされる。これにより、剥離時に粘着層20および表示装置10の過度な変形を抑制でき、剥離による表示装置10の表示機能の劣化(例えば破損や表示色のムラ)を抑制できる。
本考案者は、粘着層20に対するブレード150の摩擦抵抗を低減するため、ブレード150の粘着層20に接触する表面の、水接触角に着目した。水接触角は、日本工業規格(JIS R3257:1999)に記載の静滴法に準拠して測定される。水接触角は、材料の種類、表面粗さなどに依存する。
ブレード150の表面のうち少なくとも粘着層20に接触する表面は、水接触角が60°以上であることが好ましい。例えば、傾斜面152および背面153は、水接触角が60°以上である。これにより、粘着層20に対するブレード150の摩擦抵抗を低減でき、小さな押込み荷重で剥離前線を進めることができる。そのため、剥離時に表示装置10にかかる負荷を低減でき、剥離による表示装置10の表示機能の劣化を抑制できる。その結果、剥離した表示装置10を再利用でき、例えば剥離した表示装置10を透明基板30に貼り直すことができる。
尚、水接触角は、ブレード150の表面全体において60°以上でもよいが、ブレード150の表面のうち、粘着層20に接触する表面において60°以上であればよく、粘着層20に接触しない表面において60°未満でもよい。
ブレード150の表面のうち少なくとも粘着層20に接触する表面は、水接触角が好ましくは100°以上、より好ましくは120°以上である。水接触角が大きいほど、表面自由エネルギーが小さいため、粘着層20に対するブレード150の摩擦抵抗を低減できる。
ブレード150の表面のうち少なくとも粘着層20に接触する表面は、表面処理によって形成されたものであってよい。表面処理としては、コーティング法が挙げられる。表面処理によって表面を改質できるため、粘着層20に対するブレード150の摩擦抵抗を低減できる。
コーティング法は、図5に示すように、ブレード本体161の表面にコーティング剤を塗布することにより、ブレード本体161の表面に被覆層162を形成する方法である。被覆層162の材料として、ブレード本体161の材料よりも大きい水接触角を有するものを用いることができる。
ブレード本体161は、切削加工性などの観点から、アルミニウムなどの金属で形成される。一方、被覆層162は、ブレード本体161よりも大きい水接触角の材料、例えばシリコーン系樹脂などで形成される。これにより、粘着層20に対するブレード150の摩擦抵抗を低減できる。
被覆層162の厚みは、例えば2μm以上200μm以下である。被覆層162の厚みが2μm以上であると、被覆層162が破れにくいため、被覆層162の耐久性が良好である。一方、被覆層162の厚みが200μm以下であると、表面粗さを保ちやすい。また、被覆層162の形成に要する時間が短いため、被覆層162の形成が容易である。
尚、被覆層162は、図5ではブレード本体161の表面全体を覆うが、粘着層20に接触する表面のみを覆ってもよい。粘着層20に対するブレード150の摩擦抵抗を低減できればよい。
以下、具体的な実施例や比較例などについて説明する。以下で説明する例1〜例4のうち、例1〜例2が実施例、例3〜例4が比較例である。
[例1]
例1では、32インチ(縦710mm、横410mm)の液晶ディスプレイのカラーフィルター側の偏光板とカバーガラスとを向かい合わせたうえで粘着層を介して貼合し、得られた貼合体を液晶ディスプレイ及び粘着層とカバーガラスとに剥離した。
カバーガラスとしては、旭硝子社製のソーダライムガラス(商品名:AS)を用意した。矩形状のカバーガラスの縦寸法および横寸法は、それぞれ、32インチの液晶ディスプレイの縦寸法および横寸法よりも30mm大きかった。カバーガラスの厚さは、2mmであった。
粘着層としては、縦705mm、横405mm、厚さ1mmのアクリル系透明樹脂からなる両面粘着シートを用いた。液晶ディスプレイと粘着層との積層、及びカバーガラスと粘着層との積層は、ラミネータを用いて順次行った。粘着層の液晶ディスプレイに接触する面を保護する保護シートは、液晶ディスプレイと粘着層との積層の直前に除去した。また、粘着層のカバーガラスに接触する面を保護する保護シートは、カバーガラスと粘着層との積層の直前に除去した。粘着層の貯蔵せん断弾性率G´は、Anton Paar社製MCRレオメータ301により測定したところ、12kPaであった。
貼合体の剥離には、図1〜図4に示す剥離装置100を用いた。刃先角度αは3°とし、傾斜角度βは40°とした。ここでは、液晶ディスプレイが実用新案登録請求の範囲に記載の貼合物に対応し、カバーガラスが実用新案登録請求の範囲に記載の透明基板に対応する。
ブレードは、図5に示すようにブレード本体と被覆層とで構成した。
ブレード本体は、アルミニウムを成形加工して作製した。
被覆層は、ブレード本体の表面のうち、粘着層に接触する表面に形成した。被覆層の材料としては、シリコーン樹脂(トシコ社製、UNA−400)を用いた。
ブレードの粘着層に接触する表面の水接触角は、日本工業規格(JIS R3257:1999)に記載の静滴法に準拠して測定した。測定装置としては、協和界面化学社製のFACE接触角計CA-A型を用いた。水としてはイオン交換水を用い、水滴の容量は5μLとした。ブレードの粘着層に接触する表面の水接触角は143.0°であった。
[例2]
例2では、被覆層の材料として別のシリコーン樹脂(トシコ社製、UNA−310)を用いた以外、例1と同じ条件で貼合体の剥離を行った。尚、貼合体は、例1と同じ条件で作製した。
[例3]
例3では、シリコーンゴム(フソウゴム社製、SR−50)のみからなるブレードを用いた以外、例1と同じ条件で貼合体の剥離を行った。尚、貼合体は、例1と同じ条件で作製した。
[例4]
例4では、4フッ化エチレン(PTFE)樹脂(ミスミ社製、PTFE−63−63−10)のみからなるブレードを用いた以外、例1と同じ条件で貼合体の剥離を行った。尚、貼合体は、例1と同じ条件で作製した。
[剥離試験の結果]
剥離試験の条件および結果を、表1に示す。
Figure 0003217364
表1の「剥離結果」において、「A」はカバーガラスの剥離が問題なく完了したことを、「B」は粘着層とブレードとが固着し粘着層が伸びてしまったために剥離が進行しなかったことを、「C」は粘着層とブレードとの固着による粘着層の伸びは生じなかったもののブレードが進まずに剥離が進行しなかったことを意味する。
表1から明らかなように、例1〜例2では、ブレードの表面に被覆層を有しているため、カバーガラスの剥離が完了した。例1および例2では、ブレードが粘着層を突き破るなどの問題が生じることなく剥離が完了した。
一方、例3〜例4では、剥離が進行しなかった。具体的には、例3では、粘着層とブレードとが固着し粘着層が伸びてしまったために剥離が進行しなかった。また、例4では、粘着層とブレードとの固着による粘着層の伸びは生じなかったもののブレードが進まずに剥離が進行しなかった。
以上、剥離装置および剥離用ブレードの実施形態について説明したが、本考案は上記実施形態などに限定されず、実用新案登録請求の範囲に記載された本考案の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
10 表示装置(貼合物)
20 粘着層
30 透明基板
100 剥離装置
110 支持体
120 ガイド
130 スライダ
150 ブレード
170 傾斜角度調整機構
180 ヒータ
α 刃先角度
β 傾斜角度

Claims (5)

  1. 透明基板に粘着層を介して貼合されている貼合物を、前記透明基板から剥離する剥離装置であって、
    前記透明基板を平坦に支持する支持体と、
    前記透明基板と前記粘着層との間に挿入され、前記貼合物および前記粘着層を前記透明基板から剥離するブレードとを有し、
    前記ブレードが、ブレード本体と、前記ブレード本体の表面のうち少なくとも前記粘着層に接触する表面を覆う被覆層とを有するものである、剥離装置。
  2. 前記ブレードの刃先角度が1°以上60°以下である、請求項1に記載の剥離装置。
  3. 前記被覆層がシリコーン系樹脂からなる、請求項1または2に記載の剥離装置。
  4. 前記貼合物が表示装置である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離装置。
  5. 透明基板に粘着層を介して貼合されている貼合物を、前記透明基板から剥離するのに用いられ、前記透明基板と前記粘着層との間に挿入される剥離用ブレードであって、
    ブレード本体と、前記ブレード本体の表面のうち少なくとも前記粘着層に接触する表面を覆う被覆層とを有するものである、剥離用ブレード。
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