JP3214485B2 - 容量可変型圧縮機 - Google Patents

容量可変型圧縮機

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JP3214485B2
JP3214485B2 JP08124599A JP8124599A JP3214485B2 JP 3214485 B2 JP3214485 B2 JP 3214485B2 JP 08124599 A JP08124599 A JP 08124599A JP 8124599 A JP8124599 A JP 8124599A JP 3214485 B2 JP3214485 B2 JP 3214485B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハウジング内に区
画形成されたシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐
出室と、シリンダボア内に収容されたピストンと、クラ
ンク室内に回転可能に支持された回転軸と、連結案内機
構を介して回転軸に作動連結されて回転軸の回転をピス
トンの往復運動に変換するカムプレート手段と、クラン
ク室内の圧力を制御することでカムプレート手段の傾角
を制御する容量制御弁とを備えた容量可変型圧縮機に関
する。
【0002】
【従来の技術】車輌用空調装置に使用する冷媒の圧縮機
としては、例えば特開平5−99136号公報(以下
「公開公報A」という)に開示されているような容量可
変型斜板式圧縮機が知られている。かかる容量可変型圧
縮機の一般的な構造を概説すると、圧縮機のハウジング
内には、複数のシリンダボア、クランク室、吸入室及び
吐出室が区画形成され、各シリンダボアにはピストンが
往復動可能に収容される。クランク室内には車輌エンジ
ン(外部駆動源)から動力を伝達される回転軸が設けら
れ、この回転軸上に固定されたロータ(ラグプレート又
は回転支持体ともいう)が、ヒンジ機構(連結案内機構
に相当)を介して斜板(及び揺動板)に作動連結されて
いる。これにより、回転軸の回転をピストンの往復運動
に変換するカムプレート手段たる斜板等は、回転軸と一
体回転可能で且つその回転軸の軸方向へのスライド移動
を伴いながら回転軸に対し傾動可能となっている。ピス
トンの往復運動のストロークすなわち吐出容量は斜板等
の傾角に応じて決まるが、その傾角は主として、容量制
御弁によってコントロールされるクランク室内の圧力と
シリンダボア内の圧力とのピストンを介した差によって
決定される。クランク室内圧を昇圧するにつれて、斜板
等は、回転軸上をロータから離れる方向へスライド移動
(つまり後退)しつつ傾角減少方向に傾動する。
【0003】更に公開公報Aの圧縮機に限って言えば、
その容量制御弁は、吐出室からクランク室へのガス流入
経路の途中に設けられた入れ側弁部と、クランク室から
吸入室へのガス流出経路の途中に設けられた抜き側弁部
とを備え、両弁部が一定条件のもと機械的に連動可能で
あり且つ外部信号によっても制御できる構成となってい
る。そして、外部信号の電流値制御に基づき、抜き側弁
部の全閉状態を維持しながら入れ側弁部の開度を瞬時に
大きくして吐出室の高圧ガスをクランク室に多量に流入
させクランク室の内圧を急激に上昇させることにより、
斜板等の最小傾角状態への移行つまり最小吐出容量への
移行の応答性を向上させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、吐出室
の高圧ガスをクランク室に多量に流入させクランク室の
内圧を急激に上昇させた場合、その昇圧の程度やタイミ
ングによっては種々の不都合を生ずることがある。つま
り、クランク室の内圧が急激に高まりクランク室内圧と
シリンダボア内圧との差が瞬間的に想定差圧範囲を超え
て過大になると、その過大差圧の影響を受けたピストン
が全体として上死点方向(即ちロータから離れる方向)
に引き込まれ、それに伴って斜板等も回転軸に沿って強
引に後退させられる。前述のように斜板等はヒンジ機構
を介してロータと精緻な作動連結関係を有するため、斜
板等がヒンジ機構の想定可動範囲を超えた予期せぬ後退
を強制されると、ロータ及び回転軸も、ヒンジ機構を介
して繋がった斜板等に引っ張られるかたちで予期せぬ後
退を強制されることになる。すると、ピストン群、斜板
等、ヒンジ機構、ロータ及び回転軸からなる圧縮機内部
機構の全体が、設計時に想定した後退限界つまり斜板の
最小傾角に対応したスラスト方向位置よりも更に後退し
ようとするあまり次のような問題を生じてしまう。
【0005】(問題1)シリンダボアの一端を閉塞する
バルブプレートを往復運動するピストンがたたくことが
ない様に、通常、上死点位置のピストンとバルブプレー
トとの間には非常に小さなトップクリアランスが設定さ
れるが、回転軸を含む内部機構の全体が想定後退限界よ
りも僅かでも後退する事態が生ずると、前記トップクリ
アランスがゼロになる虞れがある。すると、ピストンが
バルブプレートに衝突して振動や異音を生じたり、ピス
トン及びバルブプレートを破損してしまう。
【0006】(問題2)通常、ハウジングの外部に突出
する回転軸の前端部の周囲には、クランク室の気密性を
保つためにリップシールが配設されている。ところが、
前述のように回転軸が想定後退限界よりも後退する事態
が生ずると、回転軸とリップシールとの摺動位置がコン
タクトラインと呼ばれる所定位置を逸脱することがあ
る。回転軸の外周面においてコンタクトラインから外れ
た箇所にはスラッジ等の異物が付着していることが多い
ため、回転軸が不用意に後退すると回転軸外周面とリッ
プシールとの間に異物を噛み込んでしまいクランク室の
気密性が保てなくなる虞れがある。
【0007】(問題3)車載用圧縮機ではエンジンから
回転軸への動力伝達経路の途中に電磁クラッチを介在さ
せることがある。電磁クラッチは一般に、エンジン側の
駆動クラッチ板と、回転軸と一体回転可能で且つバネ付
勢されつつ軸方向変位可能な被動クラッチ板(アーマチ
ュア)とを備え、電磁付勢力に基づく両クラッチ板の接
合/離間に応じて動力の伝達/遮断を制御している。当
然、動力遮断時には、アーマチュアと駆動クラッチ板と
の間には一定の隙間が確保されねばならない。ところ
が、前述のように回転軸が想定後退限界よりも後退する
事態が生ずると、動力遮断時であるにもかかわらず、回
転軸と共にアーマチュアまでもが本来の離間位置から駆
動クラッチ板に接近してしまい前記間隔が全く確保でき
なくなる虞れがある。つまり、動力遮断時にもかかわら
ず、アーマチュアと駆動クラッチ板とが滑り接触して動
力遮断が実現されないのみならず、滑り接触による異音
の発生、発熱あるいはクラッチ板の摩耗という新たな問
題を生じてしまう。
【0008】尚、公開公報Aでは、上記問題1,2及び
3については具体的に言及していないが、吐出容量を短
時間に減少させるべくクランク室の内圧を急激に上昇さ
せたときに、圧縮機内部の機構部品に過大な力が加わり
それが原因となって圧縮機が破損する可能性を示唆して
いる。そして、その対策として、前記入れ側/抜き側連
動型の容量制御弁の抜き側弁部に、入れ側弁部から独立
して作動する差圧弁としての機能を持たせ、クランク室
内圧の過大な上昇を回避するようにしている。しかし、
差圧弁による対策では、圧縮機に付随する弁機構(容量
制御弁を含む)の複雑化をもたらすのみならず、差圧弁
の作動条件の設定や恒久的な信頼性において困難や不安
がある。それ故、差圧弁等を用いた差圧制御による対策
の他に、そのような弁機構に頼らない機械的規制による
対策も切望されている。
【0009】本発明の目的は、内部的又は外部的要因に
よってクランク室内の圧力が短時間のうちに急激に高ま
る結果、クランク室内の圧力とシリンダボア内の圧力と
のピストンを介した差が過大になる場合でも、斜板等を
含むカムプレート手段や回転軸が回転軸の軸方向におけ
る想定後退限界よりも更に後退しようとするのを機械的
に規制して、圧縮機内部機構の好ましからざるスラスト
方向変位を効果的に阻止することができる容量可変型圧
縮機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、複数
のハウジング構成部材からなるハウジング内に区画形成
されたシリンダボア、クランク室、吸入室及び吐出室
と、前記シリンダボア内に往復動可能に収容されたピス
トンと、前記クランク室内に回転可能に支持されて外部
駆動源から動力を伝達される回転軸と、連結案内機構に
より前記回転軸と一体回転可能で且つ前記回転軸の軸方
向へのスライド移動を伴いながら該回転軸に対し傾動可
能に作動連結されて前記回転軸の回転をピストンの往復
運動に変換するカムプレート手段と、前記クランク室内
の圧力を制御することにより前記カムプレート手段の傾
角を制御して前記ピストンの往復動に伴う前記シリンダ
ボアから前記吐出室への吐出容量を変化させる容量制御
弁とを備えた容量可変型圧縮機において、前記ハウジン
グ構成部材の一つには、可動部材の移動を規制するため
の規制部が設けられ、その規制部と前記カムプレート手
段との間には、前記回転軸に沿ってスライド移動可能な
少なくとも一つの介装部材が設けられ、少なくとも前記
カムプレート手段が設計上の最小吐出容量に対応する最
小傾角又はその近傍にある状態では、前記介装部材はカ
ムプレート手段による当接を受けるとともに、前記クラ
ンク室内の圧力と前記シリンダボア内の圧力とのピスト
ンを介した差圧が過大となった場合でも、その差圧の影
響を受けてカムプレート手段に押された前記介装部材が
前記規制部に当接することでカムプレート手段のそれ以
上の傾角減少方向への傾動及びスライド移動が制限され
ることを特徴とする。
【0011】この構成によれば、容量制御弁の働きによ
ってクランク室の内圧が高められて斜板が最小傾角状態
に移行した後もクランク室の内圧とシリンダボアの内圧
とのピストンを介した差が過大化することに起因して、
ピストンがカムプレート手段(及びそれに作動連結され
た回転軸)を軸方向のピストン上死点側に更に引っ張ろ
うとした場合でも、カムプレート手段は介装部材を介し
て規制部に当接することにより、それ以上の傾角減少方
向への傾動及びスライド移動が機械的に制限される。従
って、上記問題1、2及び3で指摘したような不都合な
事態が未然に防止される。
【0012】また、請求項1の発明は、前記介装部材は
前記回転軸上を摺動可能な筒状の部材であり、その筒状
の部材は、前記吸入室と該圧縮機の外部とをつなぐ吸入
通路を開閉可能な遮断体を兼ねていることを特徴とす
る。
【0013】この構成によれば、前記筒状の部材は介装
部材及び遮断体としての二つの役割を同時に担うことが
でき、圧縮機の内部構造の簡素化に貢献する。請求項
の発明は、請求項1に記載の容量可変型圧縮機におい
て、前記規制部は、ハウジング構成部材の一つとしての
シリンダブロックに形成された位置決め面であり、この
位置決め面に前記カムプレート手段に押された前記介装
部材が当接することで、カムプレート手段の最小傾角規
制と、カムプレート手段のそれ以上の傾角減少方向への
スライド移動阻止とが同時に達成されることを特徴とす
る。
【0014】この構成によれば、前記介装部材は、シリ
ンダブロックに形成された位置決め面と協働する最小傾
角規定手段としての役割と、カムプレート手段の好まし
からざるスラスト方向変位を阻止する手段としての役割
とを同時に担うことができ、圧縮機の内部構造の更なる
簡素化に貢献する。
【0015】請求項の発明は、請求項1又は2に記載
の容量可変型圧縮機において、前記回転軸の後端部に
は、前記ハウジング内において回転軸のスラスト方向へ
の変位を抑制するためのばねが配設されていることを特
徴とする。
【0016】このようなばねを備えた圧縮機では、内部
的又は外部的な条件次第で回転軸がスラスト方向に変位
する余地が大きいため、本発明におけるような規制部と
介装部材との協働による機械的なスラスト規制構造の必
要性が高い。
【0017】請求項の発明は、請求項1〜のいずれ
か一項に記載の容量可変型圧縮機において、前記容量制
御弁は、前記吐出室とクランク室とをつなぐ通路の途中
に設けられ、外部からの制御によって前記通路の開度を
調節可能であることを特徴とする。
【0018】この容量制御弁は、吐出室からクランク室
への高圧ガスの供給量を外部的に制御可能な入れ側外部
制御弁であり、その外部制御のあり方次第でクランク室
の内圧を急激に高める特性を有する。従って、かかる入
れ側外部制御弁を備えた容量可変型圧縮機では前述のよ
うな問題が顕在化し易い。故に、かかる容量制御弁を備
えた圧縮機では、本発明におけるような規制部と介装部
材との協働による機械的なスラスト規制構造の必要性が
高い。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1
〜図6に基づいて説明する。図1に示すように圧縮機全
体のハウジングの一部となるシリンダブロック1の前端
にはフロントハウジング2が接合されている。シリンダ
ブロック1の後端にはリヤハウジング3がバルブプレー
ト4、弁形成プレート5A,5B及びリテーナ形成プレ
ート6を介して接合固定されている。
【0020】ハウジングの一部となってクランク室2a
を形成するフロントハウジング2とシリンダブロック1
との間には回転軸9が回転可能に架設支持されている。
回転軸9の前端はクランク室2aからフロントハウジン
グ2の挿通口2bを介して外部へ突出しており、この突
出端部には筒状の回り止め保持体59が螺着固定されて
いる。回り止め保持体59には第1の軸受け部材となる
被動プーリ10が嵌合されており、被動プーリ10と回
り止め保持体59との間にはキー60が介在されてい
る。キー60は被動プーリ10と回り止め保持体59と
の間の相対回動を阻止する。被動プーリ10は回転軸9
に対してねじ61により締め付け固定されている。被動
プーリ10はベルト11を介して車両エンジンに作動連
結されている。被動プーリ10は回転軸9に対する回り
止め保持体59の螺合締め付け方向に回転されるように
なっている。従って、被動プーリ10と回転軸9とは相
対回動することなく一体的に回転する。
【0021】フロントハウジング2の前端には支持筒2
cが回転軸9の前記突出端部の周囲を包囲するように突
設されている。被動プーリ10は第1の軸受部材となる
アンギュラベアリング7を介して支持筒2cに支持され
ている。支持筒2cは被動プーリ10に作用するスラス
ト方向の荷重及びラジアル方向の荷重の両方をアンギュ
ラベアリング7を介して受け止める。
【0022】挿通口2cにおいて回転軸9の前端部とフ
ロントハウジング2との間にはリップシール12が介在
されている。リップシール12はクランク室2a内の圧
力洩れを防止する。
【0023】回転軸9には回転支持体8が止着されてい
ると共に、球面状の斜板支持体14がスライド可能に支
持されている。斜板支持体14には斜板15が回転軸9
の軸線方向へ傾動可能に支持されている。斜板15には
連結片16,17が止着されている。図2に示すように
連結片16,17には一対のガイドピン18,19が止
着されている。回転支持体8には支持アーム8aが突設
されている。支持アーム8aには支持ピン20が回動可
能かつ回転軸9に対して直角を成す方向へ貫通支持され
ている。一対のガイドピン18,19は支持ピン20の
両端部にスライド可能に嵌入されている。支持アーム8
a上の支持ピン20と一対のガイドピン18,19との
連係により斜板15が斜板支持体14を中心に回転軸9
の軸線方向へ傾動可能かつ回転軸9と一体的に回転可能
である。斜板15の傾動は、支持ピン20とガイドピン
18,19とのスライドガイド関係、斜板支持体14の
スライド作用及び斜板支持体14の支持作用により案内
される。
【0024】図1、図4及び図5に示すようにシリンダ
ブロック1の中心部には収容孔13が回転軸9の軸線方
向に貫設されており、収容孔13内には筒状の遮断体2
1がスライド可能に収容されている。遮断体21は大径
部21aと小径部21bとからなり、遮断体21の外周
面の段差部21cと収容孔13の内周面上のフランジ部
13aとの間には吸入通路開放ばね36が介在されてい
る。吸入通路開放ばね36は遮断体21を斜板支持体1
4側へ付勢している。
【0025】遮断体21の大径部21aには回転軸9の
後端部が挿入されている。回転軸9の後端部にはボール
41がばね42のばね力により押接されている。ばね4
2は回転軸9のスラスト方向への変位を抑える作用をな
す。
【0026】回転軸9の後端部と大径部21aの内周面
との間には第2の軸受け部材となる深溝玉軸受け部材5
3が介在されている。回転軸9の後端部は深溝玉軸受け
部材53及び遮断体21を介して収容孔13の内周面で
支持される。深溝玉軸受け部材53の外輪53aは大径
部21aの内周面に止着されており、内輪53bは回転
軸9の周面をスライド可能である。図5に示すように回
転軸9の後端部の周面には段差部9aが形成されてお
り、内輪53bが段差部9aにより斜板支持体14側へ
の移動を規制される。即ち、深溝玉軸受け部材53は段
差部9aにより斜板支持体14側への移動を阻止され
る。従って、深溝玉軸受け部材53が段差部9aに当接
することによって遮断体21が斜板支持体14側への移
動を阻止される。
【0027】リヤハウジング3の中心部には吸入通路5
4が形成されている。吸入通路54は収容孔13に連通
しており、収容孔13側の吸入通路54の開口の周囲に
は位置決め面55が形成されている。遮断体21の小径
部21bの先端は位置決め面55に当接可能である。小
径部21bの先端が位置決め面55に当接することによ
り遮断体21が斜板支持体14から離間する方向への移
動を規制されると共に、吸入通路54と収容孔13との
連通が遮断される。
【0028】斜板支持体14と深い溝玉軸受け部材53
との間には伝達筒56が回転軸9上をスライド可能に介
在されている。伝達筒56の一端は斜板支持体14の端
面に当接可能であり、伝達筒56の他端は深溝玉軸受け
部材53の外輪53aに当接することなく内輪53bに
のみ当接可能である。
【0029】斜板支持体14が遮断体21側へ移動する
に伴い、遮断体14が伝達筒56に当接し、伝達筒56
を深溝玉軸受け部材53の内輪53bに押接する。深溝
玉軸受け部材56は回転軸9のラジアル方向のみならず
スラスト方向の荷重も受け止める。そのため、遮断体2
1は伝達筒56の押接作用により吸入通路開放ばね36
のばね力に抗して位置決め面55側へ付勢され、小径部
21bの先端が位置決め面55に当接する。従って、斜
板15の最小傾角は遮断体21の小径部21bの先端と
位置決め面55との当接によって規制される。斜板支持
体14が最小傾角規定リング21に当接しているときの
斜板15の最小傾角は0°よりも僅かに大きい。この最
小傾角状態は遮断体21が吸入通路54と収容孔13と
の連通を遮断する閉位置に配置されたときにもたらさ
れ、遮断体21は前記閉位置とこの位置から離間した開
位置とへ斜板支持体14に連動して切り換え配置され
る。
【0030】斜板15の最大傾角は回転支持体8の傾角
規制突部8bと斜板15との当接によって規制される。
クランク室2aに接続するようにシリンダブロック1に
貫設されたシリンダボア1a内には片頭ピストン22が
収容されている。片頭ピストン22の首部22aには一
対のシュー23が嵌入されている。斜板15の周縁部は
両シュー23間に入り込み、斜板15の両面には両シュ
ー23の端面が接する。従って、斜板15の回転運動が
シュー23を介して片頭ピストン22の前後往復揺動に
変換され、片頭ピストン22がシリンダボア1a内を前
後動する。
【0031】図1及び図3に示すようにリヤハウジング
3内には吸入室3a及び吐出室3bが区画形成されてい
る。バルブプレート4上には吸入ポート4a及び吐出ポ
ート4bが形成されている。弁形成プレート5A上には
吸入弁5aが形成されており、弁形成プレート5B上に
は吐出弁5bが形成されている。吸入室3a内の冷媒ガ
スは片頭ピストン22の復動動作により吸入ポート4a
から吸入弁5aを押し退けてシリンダボア1a内へ流入
する。シリンダボア1a内へ流入した冷媒ガスは片頭ピ
ストン22の往動動作により吐出ポート4bから吐出弁
5bを押し退けて吐出室3bへ吐出される。吐出弁5b
はリテーナ形成プレート6上のリテーナ6aに当接して
開度規制される。
【0032】回転支持体8とフロントハウジング2の端
壁との間にはスラストベアリング62が介在されてい
る。スラストベアリング62はシリンダボア1aから片
頭ピストン22、シュー23、斜板15、連結片16,
17、ガイドピン18,19及び支持ピン20を介して
回転支持体8に作用する圧縮反力を受承する。
【0033】片頭ピストン22のストロークはクランク
室2a内の圧力とシリンダボア1a内の吸入圧との片頭
ピストン22を介した差圧に応じて変わる。即ち、圧縮
容量を左右する斜板15の傾角が変化する。クランク室
2a内の圧力はリヤハウジング3に取り付けられた容量
制御弁24により制御される。クランク室2aと吸入室
3aとは絞り作用を有する放圧通路1bを介して連通し
ている。
【0034】吸入室3aは通口4cを介して収容室13
に連通している。遮断体21が前記閉位置に配置される
と、通口4cは吸入通路54から遮断される。吸入通路
54は圧縮機内へ冷媒ガスを導入する入口であり、遮断
体21が吸入通路54から吸入室3aに到る通路上で遮
断する位置は吸入通路54の下流側である。
【0035】図5及び図6に基づいて容量制御弁24の
内部構成を説明する。ソレノイド25を支持するボビン
26の中空部にはガイド筒27が固定されており、ガイ
ド筒27内には固定鉄芯28が収容固定されている。ガ
イド筒27内には可動鉄芯29が固定鉄芯28に対して
接離可能に収容されている。固定鉄芯28と可動鉄芯2
9との間には弁開放強制ばね30が介在されている。可
動鉄芯29は弁開放強制ばね30のばね作用によって固
定鉄芯28から離間する方向へ付勢されている。
【0036】ボビン26にはバルブハウジング31が連
結部材32を介して結合固定されており、バルブハウジ
ング31内には球状の弁体33が収容されている。バル
ブハウジング31には吐出圧導入ポート31a、吸入圧
導入ポート31b及び制御ポート31cが設けられてい
る。吐出圧導入ポート31aは吐出圧導入通路34を介
して吐出室3bに連通している。吸入圧導入ポート31
bは吸入圧導入通路35を介して吸入通路54に連通し
ており、制御ポート31cは制御通路37を介してクラ
ンク室2aに連通している。
【0037】バルブハウジング31内のばね受け38と
弁体33との間には復帰ばね39及び弁支持座40が介
在されており、弁体33は弁孔31dを閉塞する方向へ
復帰ばね39のばね作用を受ける。
【0038】吸入圧導入ポート31bに通じる吸入圧検
出室43にはベローズ金具44が可動鉄芯29に固着し
た状態で収容されている。ベローズ金具44とばね受け
45とはベローズ46によって連結しており、ベローズ
金具44とばね受け45との間にはばね47が介在され
ている。ばね受け45には伝達ロッド48が止着されて
おり、その先端が弁体33に当接している。弁体33は
吸入圧検出室43内の吸入圧の変動に応じて弁孔31d
を開閉する。弁孔31dが閉塞されると吐出圧導入ポー
ト31aと制御ポート31cとの連通が遮断される。
【0039】吸入室3a内へ冷媒ガスを導入する吸入通
路54と、吐出室3bから冷媒ガスを排出する排出口1
cとは外部冷媒回路49で接続されている。外部冷媒回
路49上には凝縮器50、膨張弁51及び蒸発器52が
介在されている。膨張弁51は蒸発器52の出口側のガ
ス圧の変動に応じて冷媒流量を制御する。
【0040】ソレノイド25は制御コンピュータCの励
消磁制御を受ける。制御コンピュータCは空調装置作動
スイッチ57のONあるいはアクセルスイッチ58のO
FFによってソレノイド25を励磁し、空調装置作動ス
イッチ57のOFFあるいはアクセルスイッチ58のO
Nによってソレノイド25を消磁する。図1の状態では
ソレノイド25は励磁状態にある。ソレノイド25の励
磁状態では図5に示すように可動鉄芯29が弁開放強制
ばね30のばね作用に抗して固定鉄芯28に吸着してい
る。
【0041】ソレノイド25が励磁しているとき、ベロ
ーズ46が吸入通路54から吸入圧導入通路34を介し
て導入される吸入圧の変動に応じて変位し、この変位が
伝達ロッド48を介して弁体33に伝えられる。吸入圧
が高い(冷房負荷が大きい)場合には弁体33の弁開度
が小さくなる。クランク室2a内の冷媒ガスは絞り通路
1bを経由して吸入室3aへ流出している。従って、弁
体33の弁開度が小さくなれば吐出室3bから吐出圧導
入通路34、吐出圧導入ポート31a、弁孔31d、制
御ポート31c及び制御通路37を経由してクランク室
2aへ流入する冷媒ガス量が少なくなる。そのため、ク
ランク室2a内の圧力が低下する。又、シリンダボア1
a内の吸入圧も高いため、クランク室2a内の圧力とシ
リンダボア1a内の吸入圧との差が小さくなる。そのた
め、図1及び図5に示すように斜板傾角が大きくなる。
【0042】逆に、吸入圧が低い(冷房負荷が小さい)
場合には弁体33の弁開度が大きくなり、吐出室3bか
らクランク室2aへ流入する冷媒ガス量が多くなる。そ
のため、クランク室2a内の圧力が上昇する。又、シリ
ンダボア1a内の吸入圧が低いため、クランク室2a内
の圧力とシリンダボア1a内の吸入圧との差が大きくな
る。そのため、斜板傾角が小さくなる。
【0043】吸入圧が非常に低い(冷房負荷がない)状
態になれば弁体33が最大開度位置に近づく。又、空調
装置作動スイッチ57のOFFあるいはアクセルスイッ
チ58のONによってソレノイド25が消磁すると、図
6に示すように可動鉄芯29が弁開放強制ばね30のば
ね作用によって固定鉄芯28から離間し、弁体33が最
大開度位置に移行する。図6に示すような最大開度状態
では吐出室3bの冷媒ガスがクランク室2aへ急激流入
する。そのため、クランク室2a内の昇圧は迅速であ
り、かつクランク室2a内の圧力は最高圧状態となり、
斜板15の傾角は最小傾角側へ移行する。
【0044】斜板15の傾角が最小傾角側に移行するに
伴い、斜板支持体14が遮断体21側へ移動し、伝達筒
56に当接する。遮断体21側へ移動する斜板支持体1
4は伝達筒56を深溝玉軸受け部材53の内輪53bに
押接する。伝達筒56は斜板支持体14と内輪53bと
の間に挟みこまれるため、伝達筒56は回転軸9と共に
回転することになる。伝達筒56は深溝玉軸受け部材5
3に対して内輪53bにのみ当接しているため、回転軸
9、斜板支持体14、伝達筒56及び内輪53bは一体
的に回転し、斜板支持体14、伝達筒56及び内輪53
bの間で摺接は生じない。
【0045】伝達筒56が深溝玉軸受け部材53に押接
された状態で斜板支持体14がさらに遮断体21側へ移
動すると、遮断体21が位置決め面55側へ押されてゆ
き、遮断体21の小径部21bの先端が位置決め面55
へ接近してゆく。この接近動作により吸入通路54から
吸入室3aに到る間の冷媒ガス通過断面積が徐々に絞ら
れてゆく。この絞り作用が吸入通路54から吸入室3a
への冷媒ガス流入量を徐々に減らしてゆく。そのため、
吸入室3aからシリンダボア1a内へ吸入される冷媒ガ
ス量も徐々に減少してゆき、吐出容量が徐々に減少して
ゆく。その結果、吐出圧が徐々に低下してゆき、圧縮機
におけるトルクが短時間で大きく変動することはない。
【0046】遮断体21の小径部21bの先端が位置決
め面55に当接すると、外部冷媒回路49から吸入室3
aへの冷媒ガス流入が停止する。斜板最小傾角は0°で
はないため、斜板傾角が最小の状態においても吐出シリ
ンダボア1aから吐出室3bへの吐出は行われている。
従って、外部冷媒回路49から吸入室3aへの冷媒ガス
流入が停止している状態ではシリンダボア1aから吐出
室3bへ吐出された冷媒ガスは吐出圧導入通路34、制
御弁24内の通路及び制御通路37を通ってクランク室
2aへ流入する。クランク室2a内の冷媒ガスは放圧通
路1bを通って吸入室3aへ流入し、吸入室3a内の冷
媒ガスはシリンダボア1a内へ吸入されて吐出室3bへ
吐出される。吐出室3b、クランク室2a及び吸入室3
aの間では圧力差が生じている。又、圧縮機内の冷媒ガ
スが外部冷媒回路49へ流出することはなく、蒸発器5
2におけるフロスト発生のおそれはない。
【0047】図6の状態から空調装置作動スイッチ57
がON又はアクセルスイッチ5がOFFすると、ソレノ
イド25が励磁し、可動鉄芯29が固定鉄芯28に吸入
される。従って、ベローズ46は吸入通路54から吸入
圧検出室43へ波及している吸入圧によって縮小変位
し、弁体33が弁孔31dを閉塞する。
【0048】吐出室3b、クランク室2a及び吸入室3
aの間では圧力差がある。そのため、弁体33が弁孔3
1dを閉塞すると、クランク室2a内の圧力が低下し、
斜板傾角が最小傾角から増大する。この傾角増大によっ
て斜板支持体14が遮断体21から離間する方向へ移動
するが、遮断体21は吸入通路開放ばね36のばね力に
よって斜板支持体14の移動に追随し、小径部21bの
先端が位置決め面55から離間する。この離間動作によ
り吸入通路54から吸入室3aに到る間の冷媒ガス通過
断面積が徐々に拡大してゆく。この徐々に行われる通過
断面積拡大が吸入通路54から吸入室3aへの冷媒ガス
流入量を徐々に増やしてゆく。そのため、吸入室3aか
らシリンダボア1a内へ吸入される冷媒ガス量も徐々に
増大してゆき、吐出容量が徐々に増大してゆく。その結
果、吐出圧が徐々に増大してゆき、圧縮機におけるトル
クが短時間で大きく変動することはない。
【0049】図1〜図6に示す容量可変型圧縮機は上記
のように構成されているが、この圧縮機の各構成要素や
部材は、次に述べるような機能部材又は機能実現手段と
して把握することができる。即ち、シリンダブロック
1、フロントハウジング2、リヤハウジング3、バルブ
プレート4、弁形成プレート5A,5Bおよびリテーナ
形成プレート6の各々はハウジング構成部材として位置
づけられ、これらによって内部にシリンダボア1a、ク
ランク室2a、吸入室3a及び吐出室3bを区画形成す
る圧縮機のハウジングが構成される。斜板支持体14、
斜板15およびシュー23は、回転軸9の回転をピスト
ン22の往復運動に変換するカムプレート手段を構成す
る。又、回転支持体8、連結片16,17、ガイドピン
18,19および支持ピン20は、前記カムプレート手
段を回転軸9に対し、回転軸9と一体回転可能で且つ回
転軸9の軸方向へのスライド移動を伴いながら該回転軸
9に対し傾動可能に作動連結する連結案内機構を構成す
る。更に、収容孔13内においてシリンダブロック1に
形成された位置決め面55は、可動部材の移動を規制す
るための規制部として機能し、遮断体21、深溝玉軸受
け部材53(特に内輪53b)および伝達筒56の三者
は協働して、前記規制部55とカムプレート手段との間
において回転軸9に沿ってスライド移動可能な介装部材
としての役割を果たす。なお、前記規制部55によって
移動を規制される可動部材とは、前記介装部材およびカ
ムプレート手段を指す。
【0050】さて、外部駆動源が停止しない限り回転し
続ける回転軸9の安定支持は圧縮機の振動、騒音の抑制
の上で重要である。回転軸9の安定支持にはまず一対の
軸受け部材の支持位置の間隔を大きくすることが不可欠
である。本実施例では第1の軸受け部材となるアンギュ
ラベアリング7をフロントハウジング2の前側に配置
し、第2の軸受け部材となる深溝玉軸受け部材53をシ
リンダブロック1の収容孔13内に配置している。この
ような配置構成により被動プーリ10を介して回転軸9
を支持するアンギュラベアリング7と深溝玉軸受け部材
53との位置間隔が圧縮機全長の増長をもたらすことな
く従来よりも大きくなる。回転軸9を支持する第1の軸
受け部材をフロントハウジング2内に配置する従来構成
では、フロントハウジング2の長さを増長しない限り第
1の軸受け部材と第2の軸受け部材との位置間隔を大き
くできない。しかしながら、支持筒2c上にアンギュラ
ベアリング7を配置した構成では、支持筒2cの突出範
囲は回転軸9の突出範囲程度であり、回転軸9の突出程
度は従来と同様に被動プーリ10との接続の上で必要で
ある。従って、アンギュラベアリング7と深溝玉軸受け
部材53との位置間隔がフロントハウジング2の増長を
もたらすことなく従来よりも大きくなり、回転軸9の支
持が従来よりも安定する。
【0051】又、外部駆動源からベルト11を介して被
動プーリ10に作用するラジアル荷重は全て支持筒2c
で受け止められ、被動プーリ10に作用するスラスト荷
重も支持筒2cで受け止められる。従って、被動プーリ
10は安定支持され、被動プーリ10に止着された回転
軸9もアンギュラベアリング7によって安定支持され
る。
【0052】急激なトルク変動を阻止するための遮断体
21のスライド円滑性は回転軸9の安定支持を前提とす
る。回転軸9が振動するような不安定支持状態では遮断
体21のスライドは円滑性を欠き、吸入冷媒ガスの流入
を徐々に変動させることが難しくなる。しかし、回転軸
9を安定支持する本実施例では遮断体21のスライドは
円滑である。
【0053】外部駆動源からベルト11を介して被動プ
ーリ10に作用するラジアル荷重は全て支持筒2cで受
け止められ、このラジアル荷重が回転軸9に波及するこ
とはない。このことは次のような作用効果をもたらす。
【0054】回転軸を支持する軸受け部材を圧縮機内に
配置した従来のクラッチレス圧縮機では、圧縮機内の軸
受け部材の潤滑が考慮される。クランク室内の圧力を調
整して斜板傾角を制御する圧縮機では冷媒ガスと共に流
動する潤滑油によって軸受け部材の潤滑が行われる。そ
のため、回転軸に沿ったクランク室からの圧力漏洩を防
止するためのリップシールは前側(被動プーリ側)の軸
受け部材よりもさらに前側に配置されることになる。従
って、被動プーリに掛かる荷重は前側の軸受け部材を支
点としたモーメント荷重として回転軸に作用する。回転
軸は少なくとも前側の軸受け部材の配置位置からプーリ
の止着位置までの範囲で前記モーメント荷重に耐えるた
めの強度を確保しなければならない。そのため、前記リ
ップシールの配置領域における回転軸の径を大きくしな
ければならないが、この拡径はリップシールと回転軸と
の摺接部位の摺接面積の増加をもたらす。リップシール
はクランク室内の圧力によって回転軸の周面に押接され
ているため、前記摺接面積の増加は回転軸とリップシー
ルとの間の摺接抵抗を増す。この摺接抵抗の増大は動力
損失に繋がる。又、外部駆動源が停止しない限り回転し
続ける回転軸とリップシールとの摺接抵抗の増大はリッ
プシールの劣化を早める。さらに、リップシールと回転
軸との摺接領域における回転軸の拡径はこの部位の回転
軸の周速を大きくし、リップシールの劣化を一層早め
る。
【0055】しかし、外部駆動源からベルト11を介し
て被動プーリ10に作用するラジアル荷重を全て支持筒
2cで受け止める本実施例の構成では、従来のクラッチ
レス圧縮機に比して回転軸9の小径化が可能であり、リ
ップシール12と回転軸9との摺接部位の摺接面積が低
減する。前記摺接面積の低減は回転軸9とリップシール
12との間の摺接抵抗を低減し、この摺接抵抗の低減は
動力損失を減らす。又、外部駆動源が停止しない限り回
転し続ける回転軸9とリップシール12との摺接抵抗の
低減は結果的にリップシール12の耐久性向上となる。
さらに、リップシール12と回転軸9との摺接領域にお
ける回転軸9の小径化はこの部位の回転軸9の周速を小
さくし、リップシール12の耐久性を一層高める。
【0056】更に、本実施例には以下に述べるような効
果が認められる。制御コンピュータCからの指令に基づ
き容量制御弁24の弁体33を開放してクランク室2a
の内圧を上昇させ斜板15を最小傾角状態に移行させた
場合に、図4及び図6に示すように、回転軸9上の斜板
支持体14が伝達筒56、深溝玉軸受け部材の内輪53
a及び筒状の遮断体21を介して位置決め面55に当接
することで、斜板15のそれ以上の傾動が阻止されて最
小傾角が規定されるのみならず、斜板支持体14及び斜
板15のそれ以上の後退が機械的に阻止される。それ
故、クランク室2aの内圧が非常に高まりクランク室内
圧とシリンダボア内圧とのピストン22を介した差が過
大になって、ピストン群が斜板15を軸方向に後退させ
ようとする付勢力が生じたとしても、斜板15の傾動及
び軸方向移動に関与する斜板支持体14は、前記三つの
介装部材56,53a,21を介した位置決め面(規制
部)55によってそれ以上の後退を規制される。結果と
して、斜板15は、その最小傾角よりも更に傾角減少方
向に傾動することも、又、図4及び図6に示す最後退位
置よりも更に後方に移動することも機械的に完全に規制
ないし阻止される。
【0057】それ故、クランク室内圧とシリンダボア内
圧とのピストン22を介した差が過度に高まったとして
も、前記「問題1」で指摘したような上死点位置ピスト
ンのトップクリアランスがゼロとなるような事態が未然
に防止され、ピストン22が弁形成プレート5Aに衝突
して振動や異音を生じたり、ピストン22や弁関係のプ
レート類4,5A,5B,6が変形・破損するという不
都合な事態が回避される。また、前記過大差圧に起因す
る斜板15の予期せぬ後退が機械的に規制されるため、
前記過大差圧が原因となって回転軸9が想定後退限界よ
りも更に後退して回転軸9とリップシール12との摺動
位置が所定のコンタクトラインを逸脱するという事態が
回避される。従って、回転軸9の外周面とリップシール
12との間への異物噛み込みが原因となってクランク室
2aの気密性が保てないという不都合な事態を極力避け
ることが可能となる。このように本実施例によれば、斜
板支持体14及び斜板15を含む圧縮機内部機構の好ま
しからざるスラスト方向変位を少なくとも一つの介装部
材21と規制部55との協働によって機械的に阻止する
ことにより、圧縮機の耐久性及び信頼性を向上させるこ
とができる。
【0058】なお、本実施例の圧縮機は、回転軸9と外
部駆動源との間の動力伝達経路の途中に電磁クラッチを
介在させないクラッチレス圧縮機であるため、そもそも
前記「問題3」で指摘したような事態は生じ得ない。但
し、もし仮に本実施例の圧縮機の回転軸9の前端域に電
磁クラッチ機構を追加配設した場合には、本件圧縮機の
構造的特徴に基づいて前記「問題3」で指摘したような
不都合を回避できることは言うまでもない。
【0059】
【発明の効果】以上詳述したように本発明では、ハウジ
ング構成部材に設けた規制部と、それとカムプレート手
段との間に設けた介装部材との協働によるカムプレート
手段の機械的なスラスト規制構造を採用しているので、
内部的又は外部的要因によってクランク室内の圧力が短
時間のうちに急激に高まる結果、クランク室内の圧力と
シリンダボア内の圧力とのピストンを介した差が過大と
なる場合でも、斜板等を含むカムプレート手段や回転軸
が、回転軸の軸方向における想定後退限界よりも更に後
退しようとするのを機械的に規制することができる。そ
して、圧縮機内部機構の好ましからざるスラスト方向変
位を効果的に阻止することで、圧縮機内部機構の好まし
からざるスラスト方向変位に起因する種々の不都合を回
避することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した圧縮機全体の側断面図であ
る。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】斜板傾角が最小状態にある側断面図である。
【図5】遮断体が開位置にある要部拡大断面図である。
【図6】遮断体が閉位置にあり、ソレノイドが消磁状態
にある要部拡大断面図である。
【符号の説明】 1…シリンダブロック、2…フロントハウジング、3…
リヤハウジング、4…バルブプレート、5A,5B…弁
形成プレート、6…リテーナ形成プレート(以上の1〜
6はハウジング構成部材)、1a…シリンダボア、2a
…クランク室、3a…吸入室、3b…吐出室、8…回転
支持体、9…回転軸、14…斜板支持体、15…斜板、
16,17…連結片、18,19…ガイドピン、20…
支持ピン(8,16〜20は連結案内機構を構成す
る)、21…遮断体(介装部材)、22…ピストン、2
3…シュー(14,15,23はカムプレート手段を構
成する)、24…容量制御弁、34…吐出圧導入通路、
37…制御通路、42…ばね(回転軸のスラスト変位抑
制用)、53…深溝玉軸受け部材(介装部材)、54…
吸入通路、55…位置決め面(規制部)、56…伝達筒
(介装部材)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横野 智彦 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式 会社 豊田自動織機製作所 内 (56)参考文献 特開 昭63−186973(JP,A) 特開 平5−38937(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F04B 27/14 F04B 27/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数のハウジング構成部材からなるハウ
    ジング内に区画形成されたシリンダボア、クランク室、
    吸入室及び吐出室と、 前記シリンダボア内に往復動可能に収容されたピストン
    と、 前記クランク室内に回転可能に支持されて外部駆動源か
    ら動力を伝達される回転軸と、 連結案内機構により前記回転軸と一体回転可能で且つ前
    記回転軸の軸方向へのスライド移動を伴いながら該回転
    軸に対し傾動可能に作動連結されて前記回転軸の回転を
    ピストンの往復運動に変換するカムプレート手段と、 前記クランク室内の圧力を制御することにより前記カム
    プレート手段の傾角を制御して前記ピストンの往復動に
    伴う前記シリンダボアから前記吐出室への吐出容量を変
    化させる容量制御弁とを備えた容量可変型圧縮機におい
    て、 前記ハウジング構成部材の一つには、可動部材の移動を
    規制するための規制部が設けられ、 その規制部と前記カムプレート手段との間には、前記回
    転軸に沿ってスライド移動可能な少なくとも一つの介装
    部材が設けられ、少なくとも前記カムプレート手段が設
    計上の最小吐出容量に対応する最小傾角又はその近傍に
    ある状態では、前記介装部材はカムプレート手段による
    当接を受けるとともに、 前記クランク室内の圧力と前記シリンダボア内の圧力と
    のピストンを介した差圧が過大となった場合でも、その
    差圧の影響を受けてカムプレート手段に押された前記介
    装部材が前記規制部に当接することでカムプレート手段
    のそれ以上の傾角減少方向への傾動及びスライド移動が
    制限され 前記介装部材は前記回転軸上を摺動可能な筒状の部材で
    あり、その筒状の部材は、前記吸入室と該圧縮機の外部
    とをつなぐ吸入通路を開閉可能な遮断体を兼ねてい るこ
    とを特徴とする容量可変型圧縮機。
  2. 【請求項2】 前記規制部は、ハウジング構成部材の一
    つとしてのシリンダブロックに形成された位置決め面で
    あり、この位置決め面に前記カムプレート手段に押され
    た前記介装部材が当接することで、カムプレート手段の
    最小傾角規制と、カムプレート手段のそれ以上の傾角減
    少方向へのスライド移動阻止とが同時 に達成されること
    を特徴とする請求項1に記載の容量可変型圧縮機。
  3. 【請求項3】 前記回転軸の後端部には、前記ハウジン
    グ内において回転軸のスラスト方向への変位を抑制する
    ためのばねが配設されていることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の容量可変型圧縮機。
  4. 【請求項4】 前記容量制御弁は、前記吐出室とクラン
    ク室とをつなぐ通路の途中に設けられ、外部からの制御
    によって前記通路の開度を調節可能であることを特徴と
    する請求項1〜3のいずれか一項に記載の容量可変型圧
    縮機。
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