JP3207471B2 - ベンゾフェノン誘導体、紫外線吸収剤及びそれを配合した皮膚外用剤 - Google Patents

ベンゾフェノン誘導体、紫外線吸収剤及びそれを配合した皮膚外用剤

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JP3207471B2 JP30107691A JP30107691A JP3207471B2 JP 3207471 B2 JP3207471 B2 JP 3207471B2 JP 30107691 A JP30107691 A JP 30107691A JP 30107691 A JP30107691 A JP 30107691A JP 3207471 B2 JP3207471 B2 JP 3207471B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はベンゾフェノン誘導体、
紫外線吸収剤及び皮膚外用剤、特にUV−B領域の紫外
線吸収能を有するベンゾフェノン誘導体とそれを用いた
紫外線吸収剤、皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】太陽光線に含まれる紫外線は、皮膚科学
的には400nm〜320nmの長波長紫外線(UV−
A)、320nm〜290nmの中波長紫外線(UV−
B)、290nm以下の短波長紫外線(UV−C)に分類
される。このうち、290nm以下の波長の紫外線はオゾ
ン層によって吸収され、地表に到達しない。地表に届く
紫外線は、人間の皮膚に様々な影響を及ぼす。地上にま
で達する紫外線の内で、特にUV−Bは皮膚の紅斑や水
泡を形成し、メラニン形成も促進する。
【0003】このようなUV−Bの有害性から皮膚を保
護するために、各種紫外線吸収剤が開発されてきた。既
存のUV−B域紫外線吸収剤としては、PABA誘導
体、桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン
誘導体、ウロカニン誘導体、カンファー誘導体および複
素環誘導体などが利用されてきた。
【0004】そして、これらのUV−B吸収剤は、通
常、化粧料あるいは医薬部外品等の皮膚外用剤に配合さ
れているが、外用剤基剤には低分子量のジメチルシロキ
サン系基剤が広く使用されている。すなわち、もっとも
頻繁に日焼け止を使用するのが夏であるため、耐汗性、
耐水性等の観点から紫外線吸収剤として使用されてきた
ものは、油溶性のものが殆どであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、最近では日
常の生活で受ける紫外線の影響についても問題になって
おり、通常のスキンケアでも日焼け止が望まれている。
このため、化粧水等の水系のスキンケア製品にも多量に
配合できること、より高い紫外線吸収効果を有する外用
剤を処方する上でも系全体に多量の紫外線吸収剤を配合
できる方がよいので、油相だけでなく水相にも紫外線吸
収剤を配合することが望まれること等から、水溶性で且
つUV−B領域の紫外線を吸収する物質の開発が強く要
望されていた。
【0006】しかし、従来のUV−B吸収剤は、前述し
たようにその殆どが油溶性で水溶性が低く、処方が制限
されていた。水溶性UV−B吸収剤としては、僅かに2
−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルフォキソニウム
ベンゾフェノンナトウリム塩が知られているのみであ
り、これは塩であるので処方系のpHに影響をもたらす
という課題があった。
【0007】本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされ
たものであり、その目的は優れたUV−B吸収性を有
し、しかも水溶性である物質およびそれを配合した皮膚
外用剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明者らが鋭意検討した結果、ベンゾフェノン誘導
体が優れたUV−B吸収性及び極性溶媒相溶性を有する
ことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本
出願の請求項1記載のベンゾフェノン誘導体は、下記一
般式化3で表わされる。
【0009】
【化3】 但し、Aは糖または糖アルコール、Gはグリセリン1モ
ルに相当し、このうち一つの水酸基をAと、他の一つの
水酸基をBと結合する。Bは下記一般式化4で示される
ベンゾフェノン基
【化4】 (化4中R1〜R4のうち一つはGとの結合基であり、他
は水素もしくは水酸基、アルキル基、アルコキシル基で
ある。)nは1以上の整数である。
【0010】請求項2記載の皮膚外用剤は前記化3のベ
ンゾフェノン誘導体を一種または二種以上を含むことを
特徴とする。
【0011】前記一般式化3において、Aは、糖または
糖アルコ−ルの残基で、糖の具体例としては、グルコ−
ス、ガラクト−ス、キシロ−ス、フルクト−ス、アルト
ロ−ス、タロ−ス、マンノ−ス、アラビノ−ス、イド−
ス、リキソ−ス、リボ−ス、アロ−ス等の単糖類及びそ
の混合物、またはマルト−ス、イソマルト−ス、ラクト
−ス、キシロビオ−ス、ケンチオビオ−ス、コ−ジオビ
オ−ス、セロビオ−ス、ソホロ−ス、ニゲロ−ス、スク
ロ−ス、メリビオ−ス、ラミナリビオ−ス、ルチノ−ス
等の二糖類及びその混合物、またはマルトトリオ−ス等
の三糖類及びその混合物、さらにそれ以上の多糖及びそ
の混合物、またこれらの単糖、二糖、それ以上の多糖の
混合物を用いることも可能である。糖アルコ−ルの具体
例としては、マルチト−ル、ソルビト−ル、マンニト−
ル、ガラクチト−ル、グルシト−ル、イノシト−ル、マ
ルチトリオ−ル等の糖アルコ−ル及びその混合物、また
はそれ以上の多糖アルコ−ル及びその混合物が挙げら
れ、または、これらの糖アルコ−ルの混合物を用いるこ
ともできる。さらにこれらの単糖、二糖、三糖、それ以
上の多糖、糖アルコ−ルの混合物も用いても同様の作用
を得ることができる。
【0012】ベンゾフェノン基Bを表わす一般式化4に
おいて、R1〜R4は、水素もしく水酸基、アルキル基も
しくはアルコキシル基もしくはGとの結合基を表す。ア
ルキル基、アルコシキシル基の場合、脂肪鎖は、直鎖ア
ルキル基、分岐アルキル基、不飽和アルキル基、シクロ
アルキル基のいずれでもよく、脂肪鎖の具体例として
は、メチル基、エチル基、アセチレニル基、プロピル
基、イソプロピル基、プロペニル基、ブチル基、イソブ
チル基、t−ブチル基、ブテニル基等が挙げられる。い
ずれも、UV−B吸収波長に顕著な差はないが、工業性
等から、特にメチル基、エチル基が好ましい。
【0013】Gはグリセリン1モルに相当するグリセリ
ル基で、どのような結合付加でも構わない。nは整数を
表し、水溶性の面から、好ましくは1〜3を表す。
【0014】上記のベンゾフェノン誘導体は、固体もし
くはシロップ状で、安全性、安定性に極めて優れている
ため、染料やインク、プラスチック、コ−ティング剤、
化学繊維等の化学製品などに配合出来る他、医薬品、医
薬部外品、化粧料及び洗浄料の成分として配合されう
る。さらに保湿性を有するという特徴がある。
【0015】本発明のベンゾフェノン誘導体は、例えば
一般式化5で表されるヒドロキシベンゾフェノンをグリ
シジル化し、得られる一般式化6で表されるグリシジロ
キシベンゾヘェノンを、糖や糖アルコ−ルと特願61−
180989号に記載の方法等で反応させる方法等によ
り製造しうる。
【化5】
【化6】 例えば、次のように合成できる。
【0016】一般式化6で表される化合物は、一般式化
5で示される化合物を、サンドラ−らの方法{S.R.Sand
ler,F.R.Berg,J.Appl.Polymer.Soc.9,3707(1965)}
や、ロバ−トらの方法{Tetrhedorn,35,2169〜2172(19
79)}により合成できる。すなわち、ジメチルスルフォ
キサイド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジメチ
ルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−アセチル
モルホリン、N−メチルコハク酸イミド等の非水系溶媒
に溶解もしくは懸濁するか、アセトン水系溶媒に溶解も
しくは懸濁するか、または無溶媒でエピクロルヒドリン
と触媒下90〜130℃で撹拌し、この際、反応は窒素
やアルゴン等の気流下で行なっても良く、一般式化5で
示される化合物は単独でも、2種以上を伴用してもよ
い。
【0017】この際に用いられる触媒は、BF3・Et2
O、三塩化アルミニウム等のルイス酸触媒、p−トルエ
ンスルホン酸、ヘテロポリリン酸、塩酸、硫酸等の酸触
媒、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウ
ム、炭酸ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムア
ルコラ−トなどのアルカリ、N−メチルベンジルアミン
等のアミン類等が挙げられる。
【0018】一般式化3で示される化合物は、得られた
一般式化4で示される化合物を、糖や糖アルコ−ルと特
願61−180989号に記載の方法等で反応させる方
法等により製造し得る。
【0019】例えば、次の方法で合成できる。糖や糖ア
ルコ−ルをジメチルスルフォキサイド、ジメチルホルム
アミド、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、N−メチ
ルピロリドン、N−アセチルモルホリン、N−メチルコ
ハク酸イミド等の非水系溶媒に溶解もしくは懸濁し、一
般式化6で示される化合物と触媒下90〜130℃で撹
拌、この際、反応は窒素やアルゴン等の気流下で行なっ
ても良く、一般式化6で示される化合物は単独でも、2
種以上を伴用してもよい。
【0020】この際用いられる触媒は、p−トルエンス
ルホン酸、ヘテロポリリン酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭
酸ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアルコラ
−ト等のアルカリ、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム
等の塩、N−メチルベンジルアミン等のアミン類が挙げ
られる。
【0021】この反応に使用される糖及び糖アルコ−ル
と一般式化5で表される化合物のモル比は、例えば、モ
ノエ−テルを主生成物として得ようとする場合には、
1:1〜3:1が好ましく、2:1〜3:1がさらに好
ましい。糖及び糖アルコ−ルと一般式化5で表される化
合物のモル比がこの範囲をはずれる場合、すなわち、糖
及び糖アルコ−ルが少ないとテトラエ−テルなどの不純
物を生じやすく、多過ぎると、糖や糖アルコ−ルが多量
に残って後の精製に支障をきたすので好ましくない。
【0022】触媒に酸やアルカリを用いた場合、一般式
化5で表される化合物がすべて消費された後に、反応系
の触媒を中和する目的で、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸等
の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ
を加える。これらの反応後、反応溶媒を減圧留去し、生
成物をそのまま用いても、溶媒などで分配して用いても
良く、カラムクロマト法や再結晶法等で精製してもよ
い。
【0023】このようにして得られた反応生成物には、
一般式化3で示されるベンゾフェノン誘導体のほか、一
般式化3でnが4個以上の化合物、塩、未反応の糖や糖
アルコ−ルが共存している。そのため、例えば糖や糖ア
ルコ−ル、塩を除去する場合には、メチルアルコ−ル、
エチルアルコ−ル、ブチルアルコ−ル、イソプロピルア
ルコ−ル等の溶媒で抽出したり、塩を多量に含む水とメ
チルエチルケトン、n−ブタノ−ル等で分配し、有機溶
媒層を分取することにより精製できる。また、糖や糖ア
ルコ−ルと塩を除去し、化合物を分離する場合、反応生
成物を水または水とアルコ−ルの混液に懸濁させ、ハイ
パ−ポ−ラスポリマ−(例えば三菱化成工業株式会社製
のハイポ−ラス樹脂)、オクタデシルシリカなどの逆相
分配カラムで、始め水で通液し、次にメタノ−ル、エタ
ノ−ルなどのアルコ−ルやアセトニトリルなどの極性有
機溶媒と水の混液で通液し、この液を分取することによ
り精製できる。また、塩等を除去した後、シリカゲルカ
ラムクロマトグラフ法等の順相系で精製することもでき
る。
【0024】このようにして得られるベンゾフェノン誘
導体は、化学安定性・酸化安定性に優れ、水溶性で、U
V−B領域に吸収を有する上、保湿性に優れるという機
能を持つ。
【0025】本発明のベンゾフェノン誘導体は安全性に
優れるので、化粧料、医薬料等に配合できる。また、本
発明に加えて通常用いられる他の化粧料や医薬料成分を
適宣配合することができる。例えば、流動パラフイン、
スクワラン、ワセリン、セチルアルコ−ル、イソステア
リルアルコ−ル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−オ
クチルドデシルアルコ−ル、トリイソステアリン酸グリ
セリン、マカデミアンナッツ油、ラノリン等の各種炭化
水素、油脂類、ロウ類等の油性成分、シリコ−ン類、界
面活性剤、増粘剤、中和剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止
剤、粉体成分、色素、香料、他の紫外線吸収剤、薬効
剤、金属封鎖剤、pH調製剤等が挙げられる。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を示すが、これは本発
明の技術的範囲を限定するものではない。配合量は重量
%である。実施例1 1−(4-ヘ゛ンソ゛イルフェニル)ク゛リセロールマルチトールエーテル 4ーヒドロキシベンゾフェノン1g、エピクロルヒドリ
ン4.668g(0.025mol)を溶解した後、水酸
化ナトリウム20.54mgを加え、反応系を100℃まで昇
温した後、95℃にして、水酸化ナトリウム201.4
mgを加え、さらに加熱撹拌を3時間行った。系を室温ま
で冷却した後、塩を瀘去した。得られた瀘液を減圧濃縮
し、シリカゲルカラムクロマト法で精製すると、固体状
の4−グリシジロキシベンゾフェノンが1.0g(収率
83%)得られた。
【0027】次にマルチト−ル2.921g 、水酸化
カリウム476.0mgをジメチルスルホキシド20mlに
溶解し、窒素気流下、30分間加熱撹拌した後、得られ
た4−グリシジロキシベンゾフェノン719mgをジメチ
ルスルホキシド1mlに溶解した溶液を滴下した。さらに
窒素気流下加熱撹拌を1時間行った後、室温まで冷却
し、塩酸で中和した。反応系をハイパ−ポ−ラスポリマ
−(三菱化成工業株式会社製のハイポ−ラス樹脂)のカ
ラムクロマトグラフ法で、展開溶媒として初めに精製
水、次にエチルアルコ−ル:精製水=1:1を用いて分
画し、エチルアルコ−ル:精製水=1:1溶出部を濃縮
し、1−(4−ベンゾイルフェニル)グリセロ−ルマル
チトールエーテルを500mg(吸収率30%)を得た。
【0028】(1)赤外吸収スペクトル測定法 日本分光工業株式会社製、IRA−1赤外吸収スペクト
ル測定装置を用い、KBr錠剤法で測定したところ、3
387cm-1に水酸基の伸縮振動、2928cm-1にグリセ
ロイル基の伸縮振動、1649cm-1にカルボニル基の伸
縮運動よる吸収が観測された。結果を図1に示す。
【0029】(2)13C−NMR測定法 日本電子株式会社製のJOEL GX−400により、
CD3ODを溶媒として、35℃にて測定したところ、
δ197ppm、164ppm、139ppm、134ppm、13
3ppm、131ppm、129ppm、115ppmにベンゾフェ
ノン部分の炭素に由来するシグナルが、103ppm〜6
2ppmにマルチトール基とグリセリル基に由来するシグ
ナルが、それぞれ観測された。結果を、図2に示す。
【0030】(3)1H−NMR測定法 日本電子株式会社製のJOEL GX−400により、
CD3ODを溶媒として、室温にて測定したところ、δ
7.8ppm〜7.1ppmにベンゾフェノン部分の水素に由
来するシグナルが、δ5.2ppm〜3.3ppmにマルチト
ール基とグリセリル基の水素に由来するシグナルがそれ
ぞれ観測された。結果を図3に示す。
【0031】(4)紫外線吸収スペクトル測定法 日本分光工業株式会社、UVIDEC 610C紫外吸
収スペクトル測定装置を用い、溶媒メタノ−ルで測定し
たところ、282.7nmに、極大吸収を示した。結果を
図4に示す。 (5)フェノ−ル指示薬 生成物をTLC上にスポットし、噴霧器にてフェノ−ル
指示薬を噴霧した後、続いて10%炭酸水素ナトリウム
水溶液を噴霧してもフェノ−ルの呈色は示さなかった。
【0032】実施例2 1-(4-ヘ゛ンソ゛イル-3-ヒト゛ロキシフェニル)ク
゛リセロ-ルマルチト-ルエ-テル 2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン3.0g、エピク
ロルヒドリン15.55g(0.075mol)を溶解し
た後、水酸化ナトリウム112.0mgを加え、反応系を
100℃まで昇温した後、95℃にして、水酸化ナトリ
ウム672.2mgを加え、さらに加熱撹拌を3時間行っ
た。系を室温まで冷却した後、塩を瀘去した。得られた
瀘液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマト法で精製
すると、固体状の4−グリシジロキシ−2ヒドロキシベ
ンゾフェノンを2.8216g(収率75%)得られ
た。
【0033】次にマルチト−ル1.550g 、水酸化
カリウム84.2mgをジメチルスルホキシド10mlに溶
解し、窒素気流下、30分間加熱撹拌した後、得られた
4−グリシジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン4
06.0mgをジメチルスルホキシド6mlに溶解した溶液
を滴下した。さらに窒素気流下加熱撹拌を1時間行った
後、室温まで冷却し、塩酸で中和した。反応系をハイパ
−ポ−ラスポリマ−(三菱化成工業株式会社製のハイポ
−ラス樹脂)のカラムクロマトグラフ法で展開溶媒とし
て初めに精製水、次にエチルアルコ−ル:精製水=1:
1を用いて分画し、エチルアルコ−ル:精製水=1:1
溶出部を濃縮し、1−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキ
シフェニル)グリセロ−ルマルチト−ルエ−テルを47
8mg(収率52%)を得た。
【0034】(1)赤外吸収スペクトル測定法 日本分光工業株式会社製、IRA−1赤外吸収スペクト
ル測定装置を用い、KBr錠剤法で測定したところ、3
380cm-1 に水酸基の伸縮振動、2928cm-1 に炭化
水素基の伸縮振動、1626cm-1にカルボニル基の伸縮
運動よる吸収が観測された。結果を図5に示す。
【0035】(2)13C−NMR測定法 日本電子株式会社製のJOEL GX−400により、
CD3ODを溶媒として、35℃にて測定したところ、
δ201ppm、166ppm、139ppm、136ppm、13
3ppm、132ppm、130ppm、129ppm、114ppm
にベンゾフェノン部分の炭素に由来するシグナルが、1
09ppm〜62ppmにマルチトール基とグリセリル基の炭
素に由来するシグナルが、それぞれ観測された。結果を
図6に示す。
【0036】(3)1H−NMR測定法 日本電子株式会社製のJOEL GX−400により、
CD3ODを溶媒として、室温にて測定したところ、δ
12.5ppm、7.8〜7.1ppmにベンゾフェノン部分
の水素に由来するシグナルが、5.2ppm〜3.3ppmに
マルチトール基とグルセリル基の水素に由来するシグナ
ルがぞれぞれ観測された。結果を図7に示す。
【0037】(4)紫外線吸収スペクトル測定法 日本分光工業株式会社製、UVIDEC 610C紫外
吸収スペクトル測定装置を用い、溶媒メタノ−ルで測定
したところ、279.8nmに極大吸収を示した。結果
を図8に示す。 (5)フェノ−ル指示薬 生成物をTLC上にスポットし、噴霧器にてフェノ−ル
指示薬を噴霧した後、続いて10%炭酸水素ナトウム水
溶液を噴霧すると、フェノ−ルの呈色を示した。
【0038】
【0039】
【0040】試験例1 美容液の製造 表1のような処方にて、ベンゾフェノン誘導体を配合し
た美容液と、対照例として2−ヒドロキシ−4−メトキ
シ−5−スルフォキソニウムベンゾフェノンを配合した
美容液の製造を行なった。
【表1】 ────────────────────────────────── 成分 配合例1 対照例1 ────────────────────────────────── A(アルコール相) エタノール 5.0 5.0 POEオレイルアルコールエーテル 2.0 2.0 香料 適 量 適 量 ────────────────────────────────── B(水相) 1,3−ブチレングリコール 5.0 5.0 ベンゾフェノン誘導体(実施例1) 8.0 _ 2-ヒト゛ロキシ-4-メトキシ-5-スルフォキソニウムヘ゛ンソ゛フェノン _ 8.0 トリエタノールアミン 0.1 0.1 カルボキシビニルポリマー 0.15 0.15 精製水 残余 残余 ────────────────────────────────── アルコ−ル相Aを水相Bに添加し、香料を可溶化して美
容液を得た。配合例1は、無色透明で粘性のある良好な
美容液が得られたのに対し、対照例1では、黄味が強く
粘性のないものであった。
【0041】試験例2 日焼け止めテスト 試験例1で製造した2つの美容液を用いて、海浜での実
使用テストを行なった。方法としては、サンプルを男女
各20名の背中に左右半分ずつ塗布し、日焼け度合いを
判定した。判定基準は、以下のようにした。 日焼けの程度の評価基準 強い紅斑が認められ・・・・× 僅かに紅斑が認められた・・△ 紅斑が認められなかった・・○ 結果を、表2に示す。
【表2】 ────────────────────────────────── 配合例1の塗布部 対照例1の塗布部 ────────────────────────────────── ○ 37 6 △ 3 12 × 0 22 ────────────────────────────────── 皮膚トラブル件数 なし かゆみ10件 発疹 2件 ────────────────────────────────── これらの結果より、ベンゾフェノ誘導体を配合した皮膚
外用剤は、従来の水溶性紫外線吸収剤を配合した皮膚外
用剤よりも紫外線防御効果が高く、皮膚トラブルもな
く、安全性の高いものであった。
【0042】試験例3 保湿性 室温25℃ 50%相対湿度の環境下で男女15名の皮
膚コンダクタンスの変化を測定した。試験例1で製造し
た美容液を腕部に塗り、その処理後24時間経過した後
の腕部の皮膚コンダクタンスを測定し、その増加率より
判定を行なった。判定は以下のように行なった。 コンダクタンス増加率=コンダクタンス値の増加量/処
理前コンダクタンス値 保湿性の判定基準 コンダクタンス増加率15%・・・・・・・・・・× コンダクタンス増加率15%以上30%未満・・・△ コンダクタンス増加率30%以上・・・・・・・・○ 結果は、表3のようになった。
【表3】 ───────────────────────────────── 判定 配合例1の塗布部 対照例1の塗布部 ───────────────────────────────── ○ 21 6 △ 9 8 × 0 16 ───────────────────────────────── 以上の結果より、本発明にかかるベンゾフェノン誘導体
を配合した皮膚外用剤は、従来の水溶性紫外線吸収剤を
配合した皮膚外用剤よりも保湿性の高い優れたものであ
ることがわかった。以下に本発明にかかる皮膚外用剤の
配合例を説明する。なお、各皮膚外用剤ともに優れた紫
外線防御効果を示した。
【0043】実施例3 クリ−ム A.油脂 ステアリン酸 10.0 ステアリルアルコ−ル 4.0 ステアリン酸モノグリセリンエステル 8.0 ビタミンEアセテ−ト 0.5 香料 0.4 エチルパラべン 0.1 ブチルパラベン 0.1 プロピルパラベン 0.1 B.水相 プロピレングリコ−ル 8.0 グリセリン 2.0 1-(4-ヘ゛ンソ゛イル-3-ヒト゛ロキシフェニル)ク゛リセロ-ルマルチト-ルエ-テル 6.0 水酸化カリウム 0.4 エデト酸三ナトリルム 0.05 精製水 残余 〈製法〉Aの油相部とBの水相部をそれぞれ70℃に加
熱し完全溶解する。A相をB相に加えて、乳化機で乳化
する。乳化物を熱交換器を用いて冷却し、クリ−ムを得
た。
【0044】実施例4 クリ−ム A.油相 セタノ−ル 4.0 ワセリン 7.0 イソプロピルミリステ−ト 8.0 スクワラン 12.0 ジメチルポリシロキサン 3.0 ステアリン酸モノグリセリンエステル 2.2 POE(20)ソ゛ルヒ゛タンモノステアレ-ト 0.5 グリチルリチン酸ステアレ−ト 0.1 BHT 0.02 エチルパラベン 0.1 ブチルパラベン 0.1 プロピルパラベン 0.1 B.水相 1,3ブチレングリコ−ル 7.0 エデト酸ニナトリルム 0.07 フェノキシエタノ−ル 0.2 L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩 3.0 ポリアクリル酸アルキルエステル 1.0 1-(4−ヘ゛ンソ゛イルフェニル)ク゛リセロ-ルマルチト-ルエーテル 8.0 精製水 残余 〈製法〉実施例3に準じてクリ−ムを得た。
【0045】実施例5 乳液 A.油相 オレイルオレ−ト 3.0 ワセリン 7.0 スクワラン 5.0 ソルビタンセスキオレイン酸エステル 0.8 ポリオキシエチレンオレイルエ−テル(20E.0.) 1.2 1-(4-ヘ゛ンソ゛イル-3-ヒト゛ロキシフェニル)ク゛リセロールソルヒ゛トールエーテル 3.0 メチルパラベン 0.1 香料 0.12 B.水相 ジプロピレングリコ−ル 5.0 エタノール 3.0 カルボキシビニルポリマ− 0.17 ヒアルロン酸ナトリウム 0.01 ポリアクリル酸アルキルエステル 1.0 1-(4-ヘ゛ンソ゛イル-3-ヒト゛ロキシフェニル)ク゛リセロールシュカ゛ーエーテル 4.0 水酸化カリウム 0.08 ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05 精製水 残余 〈製法〉実施例3に準じて乳液を得た。
【0046】実施例6 クリ−ム A.油相 ベヘニルアルコール 0.5 12−ヒドロキシステアリン酸コレスタノールエステル 2.0 スクワラン 7.0 ホホバオイル 5.0 自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 2.5ホ゜リオキシエチレンソルヒ゛タンモノステアリン 酸エステル(20EO) 1.5 2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン 3.0 エチルパラベン 0.2 ブチルパラベン 0.1 プロピルパラベン 0.1 B.水相 プロピレングリコ−ル 5.0 エデト酸酸ナトリウム 0.08 グリセリン 5.0 ビ−ガム(モンモリロナイト) 3.0 水酸化カリウム 0.3 1-(4-ヘ゛ンソ゛イル-3-ヒト゛ロキシフェニル)ク゛リセロ-ルマルトトリオールエーテル 8.0 精製水 残余 〈製法〉実施例3に準じてクリ−ムを得た。
【0047】実施例7 粉末入化粧水 A.油相 エタノール 8.0 POE(60)グリセリルモノイソステアレート 2.0 L−メントール 0.1 カンファー 0.1 メチルパラベン 0.2 香料 適 量 B.水相 グリセリン 3.5 1-(4-ヘ゛ンソ゛イルフェニル)ク゛リセロールマルトトリオールエーテル 4.0 亜鉛 1.5 カオリン 0.5 ベントナイト 0.3 ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.03 精製水 残余 〈製法〉実施例3に準じてクリームを得た。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように本発明にかかるベン
ゾフェノン誘導体によれば、優れたUV−B吸収能、及
び極性溶媒相溶性を有する。また、それを配合した皮膚
外用剤は極性基剤に対しても配合可能で優れた使用性を
発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ルフェニル)グリセロールマルチトールエーテルの赤外
吸収スペクトルチャート図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ルフェニル)グリセロールマルチトールエーテルの13
−NMRスペクトルチャート図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ルフェニル)グリセロールマルチトールエーテルの1
−NMRスペクトルチャート図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ルフェニル)グリセロールマルチトールエーテルの紫外
吸収スペクトルチャート図である。
【図5】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ル−3−ヒドロキシ−フェニル)グリセロールマルチト
ールエーテルの赤外吸収スペクトルチャート図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ル−3−ヒドロキシ−フェニル)グリセロールマルチト
ールエーテルの13C−NMRスペクトルチャート図であ
る。
【図7】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ル−3−ヒドロキシ−フェニル)グリセロールマルチト
ールエーテルの1H−NMRスペクトルチャート図であ
る。
【図8】本発明の一実施例にかかる1−(4−ベンゾイ
ル−3−ヒドロキシ−フェニル)グリセロールマルチト
ールエーテルの紫外吸収スペクトルチャート図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−108713(JP,A) 特開 平4−270211(JP,A) 特開 平4−305592(JP,A) 特開 平4−270298(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 49/84 A61K 7/42 C07H 15/04 C09K 3/00 104 CAPLUS(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式化1で表わされるベンゾフェ
    ノン誘導体。 【化1】 但し、Aは糖または糖アルコール、 Gはグリセリン1モルに相当し、このうち一つの水酸基
    をAと、他の一つの水酸基をBと結合する。Bは下記一
    般式化2で示されるベンゾフェノン基 【化2】 (化2中R1〜R4のうち一つはGとの結合基であり、他
    は水素もしくは水酸基、アルキル基、アルコキシル基で
    ある。)nは1以上の整数である。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のベンゾフェノン誘導体よ
    りなる紫外線吸収剤。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のベンゾフェノン誘導体を
    一種または二種以上を含むことを特徴とする皮膚外用
    剤。
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