JP3207172B2 - 光学活性環状化合物類の製造方法 - Google Patents

光学活性環状化合物類の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、四塩化スズと光学
活性ビナフトール誘導体の1:1配位錯体等の光学活性
ビナフトール誘導体にハロゲン化金属化合物が配位して
形成される錯体を人工酵素として用いたポリプレノイド
等のポリオレフィンのバイオミティックエナンチオ選択
的分子内環化反応に関する。
【0002】
【従来の技術】酵素反応によるポリプレノイドの環化反
応は、多環状テルペノイドの生合成におけるキーステッ
プとして、一度に多くの炭素−炭素結合とそれに伴う多
くの不斉点を導入できるという点で極めて効率的な不斉
合成法として知られている[Chem. Rev. 93, 2189-2206
(1993)]。酵素を用いたポリプレノイドの環化反応によ
る多環状テルペノイド骨格の立体特異的な構築は、生合
成における最も興味深いステップの一つであるといわれ
ている。この環化反応の立体化学は、初期段階である末
端の炭素原子間の二重結合のプロトン化によって形成さ
れるシクロヘキサン環が、最も安定な椅子型配向をとっ
たとき、プロトンの付加と環化が同時にアンチ付加する
という Stork-Eschenmoser仮説によって説明できる。し
かし、全体の環形成のメカニズムについての詳細はまだ
よくわかっていない[J. Org. Chem. 57, 955-960 (199
2)]。酵素の活性部位の幾何学的構造と立体化学とは深
く関わっており、基質の環化のメカニズムと酵素の構造
との間の相関関係は、そのジアステレオ選択性に影響を
与えるといわれている。
【0003】分子内に多くの二重結合をもつ不飽和炭化
水素として知られているポリオレフィン(ポリエン)の
環化反応は、酵素の代わりに、古典的ルイス酸(四塩化
スズ等)やブレンステッド酸(HSO3 F等)の存在
下、ある程度のジアステレオ選択性で進行することが既
に知られている[Asymmetric Synthesis (ed. Morrison,
J.D.)(Academic, New York, 1982)]が、不斉触媒によ
るエナンチオ選択的な環化反応の成功例は報告されてい
ない。
【0004】また、キラルブレンステッド酸の共役塩基
にルイス酸が配位することで活性化された複合酸、ルイ
ス型複合型キラルブレンステッド酸( Lewis acid-assi
stedchiral Brφnsted acid;LBA)が、プロトン酸
性の調節機能とプロトンの配向制御という二つの重要な
特徴を有することが、本発明者らにより報告されている
[J. Am. Chem. Soc. 116, 11179-11180 (1994)、Croa
t. Chem. Acta 69, 513-517 (1996)、J. Am. Chem. So
c. 118, 12854-12855 (1996)、Synlett 411-420(199
7)、Tetrahedron Lett. 38, 6429-6432 (1997)、Synlet
t 758-760 (1997)]。
【0005】他方、光学活性多環状テルペノイドであ
り、香料としての独特の香と定着能をもつアムブロック
ス(AmbroxR)は、竜ぜん香を作るための最も重
要な商品価値のある物質として知られている[Perfume
s, art, science and technology (ed. Muller, P.M.;
Lamparsky, D.)(Elsevier, New York, 1991)]。このア
ムブロックスは天然にも微量存在するが、化学合成によ
る大量供給が期待されていたものであり、1950年に
最初の全合成が発表されて以来、天然に存在する光学活
性原料であるセスキテルペン、ジテルペン、モノテルペ
ンを用いて光学活性な(−)−アムブロックスへ誘導す
る方法が幾つか報告されている。しかし、これら従来の
方法では多段階合成となるため、非常に効率が悪い[Te
trahedron:Asymmetry 7, 1695-1704 (1996)、Can. J. C
hem. 75, 1136-1150 (1997)]。(±)−アムブロック
スの合成については酸触媒を用いた生合成類似型環化反
応が報告されている[J. Org. Chem. 61, 2215-2218 (1
996)]。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、バイ
オミメティックエナンチオ選択的分子内環化反応によ
り、ポリプレノイド等のポリオレフィンから光学活性多
環状テルペノイド類等を効率よく製造する方法を提供す
ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために鋭意研究し、ポリオレフィンの環化反応
を触媒する人工酵素の設計を目標とする場合、かかる人
工酵素に求められる最も重要な作用としては、初期段階
のポリプレノイドの末端イソプレニル基へのプロトン化
における不斉誘導能であるとの知見や、四塩化スズと光
学活性ビナフトール(BINOL)誘導体から調製され
るルイス酸複合型キラルブレンステッド酸(LBA)が
プロキラルなシリルエノールエーテルやアリルトリメチ
ルスズのエナンチオ選択的プロトン化のキラルプロトン
化剤となるばかりか、シリルエノールエーテルの速度論
的異性体から熱力学的異性体への立体選択的異性化反応
の触媒となるという知見に基づき、こうした活性オレフ
ィンのエナンチオ面識別反応でのLBAの触媒作用は、
単純オレフィンへのプロトン化がキー・ステップとなる
ポリエン分子内環化反応の人工酵素としても有効に利用
しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明は、ポリオレフィンに、分
子内環化反応の不斉触媒として、光学活性ビナフトール
誘導体にハロゲン化金属化合物が配位して形成される錯
体を作用させることを特徴とする光学活性環状化合物類
の製造方法や、ポリオレフィンがヒドロキシポリオレフ
ィンである上記光学活性環状化合物類の製造方法や、ヒ
ドロキシポリオレフィンがポリプレノールである上記光
学活性環状化合物類の製造方法や、ポリオレフィンがポ
リプレノイドである上記光学活性環状化合物類の製造方
法や、ポリオレフィンがファーネシル誘導体又はゲラニ
ル誘導体である上記の光学活性環状化合物類の製造方法
に関する。
【0009】また本発明は、ハロゲン化金属化合物にお
ける金属がスズである上記の光学活性環状化合物類の製
造方法や、錯体が光学活性ビナフトール誘導体に四塩化
スズが配位して形成される錯体である上記の光学活性環
状化合物類の製造方法や、光学活性ビナフトール誘導体
に四塩化スズが配位して形成される錯体が、一般式
(I)(式中、Rは、水素、メチル基、イソプロピル基
のいずれかを表す。)又は式(II)で表される錯体であ
る上記の光学活性環状化合物類の製造方法に関する。
【0010】
【化4】
【0011】
【化5】
【0012】さらに本発明は、光学活性環状化合物類が
光学活性多環状化合物類である上記の光学活性環状化合
物類の製造方法や、光学活性多環状化合物類が光学活性
多環状テルペノイド類である上記光学活性環状化合物類
の製造方法や、光学活性多環状テルペノイド類が次式
[2]で表される光学活性多環状テルペノイド化合物であ
る上記光学活性環状化合物類の製造方法に関する。
【0013】
【化6】
【0014】そしてまた本発明は、分子内環化反応の反
応溶媒として、ジクロロメタン等のハロアルカンを用い
る上記の光学活性環状化合物類の製造方法や、分子内環
化反応が、−78〜25℃の低温下に行われる上記の光
学活性環状化合物類の製造方法に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明においてポリオレフィンと
は、分子内に多くの二重結合をもつ不飽和炭化水素とし
て知られているポリエンを意味し、かかるポリオレフィ
ンとしては、数個の直鎖イソプレン単位をもち、末端に
イソプレニル基を有するポリプレノイドや、分子内にヒ
ドロキシル基を有するヒドロキシポリオレフィンや、数
個の直鎖イソプレン単位をもち、末端が第1級アリルア
ルコールであるポリプレノールを例示することができ
る。そして、かかるポリプレノイド、ヒドロキシポリオ
レフィン、ポリプレノールとしては、ホモファーネソー
ル、2−ファーネシルヒドロキノン等のファーネシル誘
導体や、ゲラニルアセトンから誘導される脂肪族アルコ
ール、o−ゲラニルフェノール、ゲラニルフェニルエー
テル等のゲラニル誘導体を具体的に挙げることができ
る。
【0016】本発明においては、分子内環化反応の不斉
触媒として、光学活性ビナフトール誘導体にハロゲン化
金属化合物が配位して形成される錯体が用いられる。そ
して、かかる光学活性ビナフトール誘導体にハロゲン化
金属化合物が配位して形成される錯体としては、ポリオ
レフィンから光学活性環状化合物類を製造することがで
きる、分子内環化反応の不斉触媒として作用しうるもの
であればどのような錯体をも用いることができる。
【0017】そして、上記錯体を構成する光学活性ビナ
フトール誘導体としては、光学活性な1,1′−ビ−2
−ナフトールのナフチル環上に置換基を有するものや、
一方の水酸基をエーテルやエステルに変換したモノアル
コールを挙げることができ、より具体的には、光学活性
な1,1′−ビ−2−ナフトールの3,3′あるいは
6,6′位に、メチル、エチル等のアルキル、フェニ
ル、トリル等のアリール、臭素、塩素等のハロゲンなど
を導入した誘導体や、光学活性な1,1′−ビ−2−ナ
フトールのモノベンゾイルエステル、モノイソプロピル
エーテル等の誘導体を例示することができる。また、上
記錯体を構成するハロゲン化金属化合物における金属と
しては、スズ、ジルコニウム、ハフニウム等を挙げるこ
とができ、ハロゲン化金属化合物としては四塩化スズを
具体的に挙げることができる。
【0018】そして、光学活性ビナフトール誘導体にハ
ロゲン化金属化合物が配位して形成される錯体として
は、光学活性ビナフトール誘導体に四塩化スズが配位し
て形成される錯体を挙げることができ、光学活性ビナフ
トール誘導体に四塩化スズが例えば1対1で配位して形
成される錯体としては、上記一般式(I)で、Rが水素
である錯体(以下「LBA1」という)、Rがメチル基
である錯体(以下「LBA2」という)、Rがイソプロ
ピル基である錯体(以下「LBA3」という)又は式
(II)で表される錯体(以下「LBA4」という)を具
体的に例示することができる。そして、ポリオレフィン
類から光学活性多環状テルペノイド類等の光学活性多環
状化合物類への反応性を高め、化学収率、立体選択性を
も高めることができることから、これらLBA1〜4を
用いることが好ましい。
【0019】分子内環化反応の不斉触媒として作用す
る、光学活性ビナフトール誘導体にハロゲン化金属化合
物が配位して形成される錯体は、従来公知の方法で調製
することができる。例えば、ジクロロメタン等の反応溶
媒の存在下に、光学活性ビナフトール誘導体に対し、過
剰の四塩化スズ等のハロゲン化金属化合物を攪拌下反応
させて、光学活性ビナフトール誘導体にハロゲン化金属
化合物が1対1で配位して形成される錯体を調製するこ
とができる。かかる不斉触媒の調製は、アルゴン雰囲気
下等酸素が存在しない雰囲気下に行うことが好ましい。
【0020】本発明における光学活性環状化合物類とし
ては、光学活性多環状化合物類、殊に光学活性多環状テ
ルペノイド類を挙げることができる。かかる光学活性多
環状テルペノイド類の具体例として、前記アムブロック
ス、トランスデカリン等を挙げることができる。
【0021】本発明において、ポリオレフィン類からの
光学活性多環状テルペノイド類等の光学活性環状化合物
類の製造は、分子内環化反応の不斉触媒を基質となるポ
リオレフィン類に反応溶媒の存在下に作用させることに
より行うことができる。かかる分子内環化反応の不斉触
媒は、予め調製しておくこともできるが、製造時に調製
することもできる。分子内環化反応における反応溶媒と
しては、ジクロロメタン、ジブロモメタン等のハロアル
カン、トルエン、ヘキサン、DMF等を例示することが
できるが、反応性を高め、化学収率、立体選択性をも高
めることができるジクロロメタン等のハロアルカンを用
いることが好ましい。また、かかる分子内環化反応にお
ける反応温度は、例えば−78〜25℃、特に−78℃
の低温下に行うことが、選択性向上の点から好ましい。
【0022】そして、分子内環化反応の進行具合は、薄
層クロマトグラフィー(TLC)によりチェックするこ
とができる。目的とする光学活性環状化合物類は、ポリ
オレフィン基質が消費され、反応が終了した時点で、ピ
リジン等の有機溶媒を添加し、室温まで昇温させ、必要
に応じて希アルカリ性水溶液を加え、ジエチルエーテル
等の有機溶媒で有機化合物を抽出することにより得るこ
とができる。有機溶媒相からの目的とする光学活性環状
化合物類の精製は、従来公知の精製方法により行うこと
ができ、例えば抽出後の有機溶媒相を硫酸マグネシウム
で乾燥した後、濾過、濃縮、シリカゲルカラムクロマト
グラフィーを用いて目的物質の精製を行う方法を例示す
ることができる。このとき、光学活性ビナフトール誘導
体も回収することが好ましい。
【0023】
【実施例】以下、実施例を挙げてこの発明を更に具体的
に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例
に限定されるものではない。 (製造方法)以下の実施例における、光学活性多環状テ
ルペノイド類の製造は以下の方法により行った。アルゴ
ン雰囲気下、(R)−光学活性ビナフトール(BINO
L)誘導体(0.22mmol)のジクロロメタン(4
mL)溶液に、四塩化スズの1Mジクロロメタン溶液
(0.2mmol)を室温で加え数分間撹拌した後、−
78℃に冷却し、基質(0.1mmol)を添加した。
反応の進行具合はTLCチェックし、原料基質が無くな
った時点でピリジン(0.2mmol)を加え、室温ま
で昇温させた後、重曹水を加え、ジエチルエーテルで有
機化合物を抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥
した後、濾過・濃縮し、次いでシリカゲルカラムクロマ
トグラフィーを用いて目的物質を精製した。このとき、
(R)−BINOL誘導体もシリカゲルクロマトグラフ
ィーを用いて回収した。
【0024】(実施例1)分子内環化反応の不斉触媒と
して、(R)−LBA2を用い、基質としてホモファー
ネソール[1]を用いて、エナンチオ選択的環化反応を行
い、(−)−アムブロックス[2]を得た。反応式とその
結果を以下に示す。エナンチオ選択性とジアステレオ選
択性は中程度ではあったが、不斉合成による(−)−ア
ムブロックス[2]の製造例としては最初の報告である。
また、この反応によると、(−)−アムブロックス[2]
以外に、同時に他の副生成物[3]〜[5]も微量得られ、
これらの構造も文献値と比較し同定した。
【0025】
【化7】
【0026】(実施例2)分子内環化反応の不斉触媒と
して(R)−LBA2を用い、基質としてゲラニルアセ
トンから誘導される脂肪族アルコール[6]を用いて、同
様にエナンチオ選択的環化反応を行った。反応式とその
結果を以下に示す。(R)−LBA2はゲラニルアセト
ンから誘導される脂肪族アルコール[6]の環化反応にお
いても、トランスデカリン[7]を52%ee以上で与え
た。また、この反応によると、トランスデカリン[7]以
外に、同時に他の副生成物[8]も微量得られ、これらの
構造も文献値と比較し同定した。
【0027】
【化8】
【0028】(実施例3)ヒドロキシポリオレフィンの
末端にある水酸基は、環化反応の際、分子内求核官能基
として働くが、同時にLBAの触媒活性を阻害してしま
うことがわかった。そこで、この環化システムを詳細に
調べるために、まず、モデル基質として、脂肪族アルコ
ールよりも反応性の高いことが期待される芳香族アルコ
ールを選んだ。初めに1当量の(R)−LBA1を用い
てο−ゲラニルフェノール[9]の環化反応をジクロロメ
タン中、−78℃で行った。予想どおり、反応は1日以
内に完結し、トランス三環性化合物[10]を主なジアステ
レオマー(84%ds)として得ることができたが、ト
ランス三環性化合物[10]の光学収率は36%eeだっ
た。また、この反応によると、トランス三環性化合物[1
0]以外に、同時に他の副生成物[11]も微量得られ、これ
らの構造も文献値と比較し同定した。
【0029】また、シリルエノールエーテルのエナンチ
オ選択的プロトン化反応のキラルプロトン源としてLB
A1よりも優れているLBA2を用いたところ、エナン
チオ選択性は50%eeまで改善された。次に、キラル
ブレンステッド酸として(R)−BINOLの一つの水
酸基を保護することによって誘導される様々なモノアル
コールをスクリーニングし、(R)−BINOLのモノ
ベンゾイルエステルと四塩化スズから調製されるLBA
4を用いたところ、エナンチオ選択性は54%ee(9
5%ds)まで改善された。これら反応式とその結果を
以下に示す。
【0030】
【化9】
【0031】エナンチオ選択性はLBA4が最も優れ、
次いでLBA2、LBA1の順になっている上記結果か
ら、立体選択性は促進剤であるLBAの活性に依存、L
BA4がこの環化反応の絶対及び相対立体化学を制御す
るのに最も効果的であることがわかった。なお、この環
化反応は四塩化スズ単独によってもゆっくりと進行した
が、四塩化スズとBINOLのジメチルエーテルとの配
位錯体では進行しなかったことから、四塩化スズとBI
NOLから誘導されるブレンステッド酸の配位錯体によ
って促進することがわかる。
【0032】(実施例4)分子内環化反応の不斉触媒と
して(R)−LBA2を用い、基質としてο−ネリルフ
ェノールを用いて、同様にエナンチオ選択的環化反応を
行った。基質の低い反応性のため副生成物がかなりの量
生成してきたが、期待したシス三環性化合物[11]が主な
ジアステレオマーとして33%eeで得られた。その絶
対立体化学は、実施例3のο−ゲラニルフェノール[9]
を基質とした環化反応の場合とは逆であった。
【0033】(実施例5)分子内環化反応の不斉触媒と
して(R)−LBA4を用い、基質としてゲラニルフェ
ニルエーテル[12]を用いて、同様にエナンチオ選択的環
化反応を行った。反応は20mol%のLBA4存在下
でさえゆっくりと進行し、トランス生成物[9]を77%
ee、98%dsで与えた。反応式とその結果を以下に
示す。これらの結果から、より高いエナンチオ選択性と
ジアステレオ選択性を獲得するためには、より穏やかな
条件で反応を進行させることが重要であることがわか
る。また、この反応は[1,3]−転移(異常クライゼ
ン転位)を経由して起こるものと考えられるが、これら
2段階のどちらが先に起こっているかは不明である。
【0034】
【化10】
【0035】(実施例5)LBAによって促進されるエ
ナンチオ選択的環化反応の一般性を確かめるために、他
の三環性テルペノイドであるクロマゾナロール(Chroma
zonarol)[13]を相当するファーネシル誘導体からバイ
オミメティックに合成した。クロマゾナロール[13]は、
太平洋の褐色の海藻(Dictyopteris undulata)から取
れる副成分であり、主成分であるセスキテルペン置換型
ヒドロキノンであるゾナロール(zonarol)[14]の環状
異性体である。これらクロマゾナロール[13]やゾナロー
ル[14]は、その構造や生合成経路からして、ファーネシ
ルヒドロキノンの環化反応によるものと考えられる。
【0036】
【化11】
【0037】分子内環化反応の不斉触媒として(R)−
LBA2を用い、基質として2−ファーネシルヒドロキ
ノン[15]を用いて、同様にエナンチオ選択的環化反応を
行った。反応は直接2当量の(R)−LBA2の存在
下、ジクロロメタン中、−78℃で行われた。反応は3
日間以内に完結し、期待される三環性化合物クロマゾナ
ロール[13]が28%eeで主たるジアステレオマーとし
て得られた。
【0038】(実施例6)次に、上記2−ファーネシル
ヒドロキノン[15]よりも反応性の高い4−ベンジルオキ
シフェニルエーテル[16]を基質として用い、直接1当量
の(R)−LBA3の存在下、ジクロロメタン中、−7
8℃で反応を行った。反応は3日間以内に完結し、以下
に示すように、期待される三環性化合物[17]が44%e
eで主たるジアステレオマーとして得られ、エナンチオ
選択性が改善されることがわかった。(R)−LBA3
の代わりに(R)−LBA4を用いて反応させると、ラ
セミ体[17]を17%以下で与え、この低いエナンチオ選
択性は4−ベンジルオキシフェニルエーテル[16]に対す
る(R)−LBA4の低活性が原因と思われる。
【0039】
【化12】
【0040】
【発明の効果】本発明によると、バイオミメティックエ
ナンチオ選択的分子内環化反応により、ポリプレノイド
等のポリオレフィンから光学活性多環状テルペノイド類
等を効率よく製造することができ、従来多段階合成反応
による他は得ることができなかったアムブロック等の光
学活性多環状テルペノイド類を、一段階合成反応により
優れた化学収率、立体選択性で得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C07M 7:00 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 307/92 B01J 31/22 C07D 311/74 C07D 311/80 C07F 7/22 C07M 7:00 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィンに、分子内環化反応の不
    斉触媒として、光学活性ビナフトール誘導体にハロゲン
    化金属化合物が配位して形成される錯体を作用させるこ
    とを特徴とする光学活性環状化合物類の製造方法。
  2. 【請求項2】 ポリオレフィンが、ヒドロキシポリオレ
    フィンであることを特徴とする請求項1記載の光学活性
    環状化合物類の製造方法。
  3. 【請求項3】 ヒドロキシポリオレフィンが、ポリプレ
    ノールであることを特徴とする請求項1記載の光学活性
    環状化合物類の製造方法。
  4. 【請求項4】 ポリオレフィンが、ポリプレノイドであ
    ることを特徴とする請求項1記載の光学活性環状化合物
    類の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリオレフィンが、ファーネシル誘導体
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の
    光学活性環状化合物類の製造方法。
  6. 【請求項6】 ポリオレフィンが、ゲラニル誘導体であ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の光学
    活性環状化合物類の製造方法。
  7. 【請求項7】 ハロゲン化金属化合物における金属が、
    スズであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記
    載の光学活性環状化合物類の製造方法。
  8. 【請求項8】 錯体が、光学活性ビナフトール誘導体に
    四塩化スズが配位して形成される錯体であることを特徴
    とする請求項1〜7のいずれか記載の光学活性環状化合
    物類の製造方法。
  9. 【請求項9】 光学活性ビナフトール誘導体に四塩化ス
    ズが配位して形成される錯体が、一般式(I) 【化1】 (式中、Rは、水素、メチル基、イソプロピル基のいず
    れかを表す。)又は式(II) 【化2】 で表される錯体であることを特徴とする請求項8記載の
    光学活性環状化合物類の製造方法。
  10. 【請求項10】 光学活性環状化合物類が、光学活性多
    環状化合物類であることを特徴とする請求項1〜9のい
    ずれか記載の光学活性環状化合物類の製造方法。
  11. 【請求項11】 光学活性多環状化合物類が、光学活性
    多環状テルペノイド類であることを特徴とする請求項1
    0記載の光学活性環状化合物類の製造方法。
  12. 【請求項12】 光学活性多環状テルペノイド類が、次
    式[2]で表される光学活性多環状テルペノイド化合物で
    あることを特徴とする請求項11記載の光学活性環状化
    合物類の製造方法。 【化3】
  13. 【請求項13】 分子内環化反応の反応溶媒として、ハ
    ロアルカンを用いることを特徴とする請求項1〜12の
    いずれか記載の光学活性環状化合物類の製造方法。
  14. 【請求項14】 分子内環化反応が、−78〜25℃の
    低温下に行われることを特徴とする請求項1〜13のい
    ずれか記載の光学活性環状化合物類の製造方法。
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