JP3197286B2 - 記録媒体用塗工液および記録媒体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、記録媒体用塗工液およ
びそれを使用して得られる記録媒体に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、各種学会、会議等のプレゼンテー
ション用として、従来のスライドプロジェクターに代わ
り、オーバーヘッドプロジェクターが用いられる機会が
多くなっている。また、印刷の分野でも、各種の出版物
や、包装等の用途で、透明な印刷物が求められるように
なっている。

【０００３】これらの透明なフィルムへの印字、印刷
は、基材であるフィルムそれ自体に吸収性が無いため、
一般の紙面上に行なう印刷に比べ、印刷の速度や乾燥の
面で特別な配慮が必要である。また、不透明な基材にお
いても、吸収性に乏しく、同様な配慮が必要な場合が多
い。

【０００４】本発明者らは、透明で、吸収性を有さない
基材上に、アルミナ水和物からなる吸着層を設けた記録
シートが、上記の問題点を解決でき、記録媒体として好
適に使用できることを見出し、既に、特開平2-276670号
などとして提案した。

【０００５】この記録シートは、ポリエチレンテレフタ
レートなどの透明な基材上に、主としてインク中の色素
を吸収、定着する、多孔性アルミナ水和物からなる層を
設けたものである。この多孔性アルミナ水和物層は、ア
ルミナ水和物粉末と、水系溶媒と、ポリビニルアルコー
ル系のバインダーとからなる塗工液を、基材に塗布し、
乾燥することにより形成されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アルミ
ナ水和物と、水系溶媒と、ポリビニルアルコール系バイ
ンダーとからなる塗工液は、経時的に粘度が上昇しやす
く、固形分濃度の高い塗工液の場合は、取り扱い性が悪
く、塗布作業等が困難であり、特に、連続塗布作業時に
はハンドリングが悪くなるという問題を有していた。

【０００７】本発明の目的は、経時安定性に優れたアル
ミナ水和物を含有するスラリーからなる記録媒体用塗工
液を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、アルミナ水和
物と、水系溶媒と、ケン化度50〜90％のポリビニルアル
コールとを含有することを特徴とする記録媒体用塗工液
を提供する。

【０００９】本発明においてアルミナ水和物は、記録媒
体の表面に塗布して多孔質層を形成したとき、インク中
の溶媒等を効果的に吸収できるものであればいずれのも
のを用いてもよいが、擬ベーマイト（AlO(OH) ）が特に
好ましく使用できる。

【００１０】本発明の記録媒体用塗工液を、基材に塗布
した後、乾燥することにより、多孔質アルミナ水和物層
が得られる。この多孔質アルミナ水和物層は、その細孔
構造が実質的に半径が10〜100 Åの細孔からなり、細孔
容積が0.3 〜1.0cc/g である場合は、十分な吸収性を有
し、かつ、アルミナ水和物層も透明性があるので好まし
い。このとき、基材が透明であれば、被記録材も透明な
ものが得られる。基材が不透明である場合にも、基材の
質感を損なわない高品質な画像を得ることが可能であ
る。

【００１１】望ましくは、これらの物性に加え、アルミ
ナ水和物層の平均細孔半径が、15〜50Åでありその平均
細孔半径の±10Åの半径を有する細孔の容積が全細孔容
積の45％以上である場合は、特に定着性と透明性の両立
の観点から好ましい。平均細孔半径が、15〜30Åであり
その平均細孔半径の±10Åの半径を有する細孔の容積が
全細孔容積の55％以上である場合はさらに好ましい。な
お、本発明における細孔半径分布の測定は、窒素吸脱着
法による。

【００１２】水系溶媒としては、水が好ましく使用され
る。

【００１３】本発明の塗工液は、ケン化度50〜90％のポ
リビニルアルコールをバインダーとして含む。ケン化度
とは、ポリ酢酸ビニルをケン化してＰＶＡを得た際の、
ケン化によって生じた水酸基のモル数の、初めのアセト
キシ基のモル数に対する割合である。ケン化度が50％未
満の場合は、この塗工液を基材に塗布して乾燥させて得
られるアルミナ水和物層の機械的強度や耐水性が不十分
になるので不適当である。ケン化度が90％を超える場合
は、塗工液の粘度が経時的に上昇するので不適当であ
る。ケン化度のより好ましい範囲は、70〜90％である。

【００１４】また、ケン化度50〜90％のポリビニルアル
コールの使用量は、アルミナ水和物に対してポリビニル
アルコールが５〜50重量％になるようにするのが好まし
い。バインダーの使用量が上記範囲に満たない場合は、
アルミナ水和物層の機械的強度が不十分となり、逆に上
記範囲を超える場合には、アルミナ水和物層のインク吸
収性を阻害するおそれがあるので好ましくない。

【００１５】ポリビニルアルコールの重合度としては、
重合度 500〜4000のものを用いるのが好ましい。重合度
が 500に満たない場合は、アルミナ水和物層の強度が不
十分になるおそれがあり、重合度が4000を超える場合
は、溶液の粘性が増大し、取り扱いが困難になるおそれ
があるのでそれぞれ好ましくない。重合度が1500〜3000
である場合はさらに好ましい。

【００１６】本発明の記録媒体用塗工液は、各種の基材
上に、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレード
コーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコー
ターなどを用いて塗布し、乾燥することにより、インク
吸収層を形成することができる。塗膜の厚さは、各プリ
ンター等の仕様、記録に用いられるインクやその溶剤の
種類、インク量などによって適宜選択することができ
る。

【００１７】

【作用】本発明においては、バインダーとしてのケン化
度50〜90％のポリビニルアルコールは、残存アセトキシ
基が多いため、界面活性能が高くなり、塗工液の安定性
が増大するものと思われる。

【００１８】

【実施例】

実施例 アルミナゾル（固形分換算で８５ｇ）に、ケン化度88％
平均重合度2400のポリビニルアルコール１５ｇを加え、
さらに水を加えて１５分間撹拌して記録媒体用塗工液１
０００ｇを得た。得られた塗工液の粘度の経時変化をＢ
型粘度計で測定した。結果を図１に、△で示す。

【００１９】比較例 実施例で用いたポリビニルアルコールをケン化度97.5
％、平均重合度1700のポリビニルアルコールに変えた以
外は、実施例と同様にして塗工液を得た。得られた塗工
液の粘度の経時変化を同様に測定した。結果を図１に、
○で示す。

【００２０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の記録媒体
用塗工液は、経時安定性に優れ、長時間放置しても粘度
が安定している。このため、取り扱い、塗布作業、特
に、連続塗布作業が容易である。また、この塗工液を用
いることにより、多孔質アルミナ水和物からなる均一な
インク吸収層を形成することができる。この塗工液を、
基材に塗布した後、乾燥して得られる多孔質アルミナ水
和物層を有する記録媒体は、良好なインク吸収性を示
す。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例および比較例の塗工液の粘度の経時変化
を示す図

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−276670（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−245588（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−317380（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−103637（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C08J 7/04 - 7/06 C09D 129/04

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】アルミナ水和物と、水系溶媒と、ケン化度
   50〜90％のポリビニルアルコールとを含有することを特
   徴とする記録媒体用塗工液。
2. 【請求項２】請求項１の記録媒体用塗工液を、基材に塗
   布した後、乾燥して得られる多孔質アルミナ水和物層を
   有する記録媒体。