JP3191913B2 - 架空電線 - Google Patents

架空電線

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は架空送電線、架空
地線等に使用される架空電線に関する。
【0002】
【従来の技術】 架空送電線に使用される電線の代表的
な構成を図及び図に示す。図は鋼心1の周囲に円
形素線2を撚り合わせて断面円形(正確には包絡外形が
円形である)としたACSR、公称断面積810mm
、外径38.4mmである。ACSRは、中心にテン
ションメンバーとして鋼線を撚り合わせた鋼心を配置
し、その周囲にアルミまたはアルミ合金線を撚り合わせ
て同心円状に層を形成したもので、用途に応じて鋼線に
亜鉛メッキやアルミ被覆した鋼心あるいはインバー鋼線
を撚り合わせた鋼心が用いられる。図は、非円形成形
素線を用いて占積率を向上させた例で、鋼心1の周囲を
アルミまたはアルミ合金の非円形成形素線3によって同
心円状に層を形成し断面円形としたACSRである。こ
の場合は、導体の断面積は図の電線と同じ810mm
であるが、外径は35.3mmと縮径されている。
なお、公称断面積は鋼心を含まない導体の断面積によっ
て表される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 図、図に示した
電線では、断面が円形のため風音が発生し、騒音とな
る。また風加重は図の電線では、縮径によって図
ものに比べ軽減されるが、反面、コロナ騒音が問題とな
る。コロナ騒音は、降雨時に発生するコロナ放電による
AN(オーディブル・ノイズ)で、電線表面の電位傾度
が大きくなると、より発生しやすく、大きくなる。した
がって、図の電線の場合には縮径によって電位傾度が
増加するためANは増大する。これらの問題を解決する
には、 1.風荷重の低減には電線の投影面積を小さくすると共
に断面形状を流線形状に近づける方がよい。 2.一方、ANを減少させるには電線の外径が大きい方
がよい。 3.風音及び振動を低減するには断面円形は望ましくな
い。 4.また、電線への着雪に対処するには断面非円形が着
雪の低減に有効である。以上の要件を充たすものとし
て、図に示すような断面形状が楕円(正確には包絡外
径が楕円である)の電線が考えられる。しかし、断面形
状が楕円であるだけでは充分な効果が達成されないこと
が判明した。本発明は架空送電線、架空地線等に使用さ
れ、ANが小さく、且つ風音、風荷重を低減することが
でき、着雪しにくい架空電線を提供することを目的とす
るものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】 本発明は、鋼心の周囲
非円形成形素線を撚り合わせて同心円状に層を形成し
た断面円形の内層と、内層に接し、大きさの異なる非円
形成形素線を撚り合わせて形成した最外層からなる電線
の断面形状を、下記要件を備えた楕円または楕円に近い
長円(略楕円という)に構成したものである。すなわ
ち、最外層の、大きさが異なる非円形成形素線は電線の
断面形状である楕円または略楕円の長軸に対して対称に
配置され、且つ長軸が、最外層にある最大素線を貫く形
ではなく対をなす最大素線の間を通るように、したがっ
て最大素線は長軸を挟んで対称となるように配置され
る。非円形成形素線の材料にはアルミまたはアルミ合金
が適している。また、電線の断面形状において長径
(a)と短径(b)との比(b/a)は、1/1.2〜1
/1.7が実用的な範囲であり、特性上最も好ましい範囲
は1/1.2〜1/1.5の範囲である。このような構成によ
り、AN(オーディブル・ノイズ)を改善すると共に、
風音、振動、風荷重、着雪をも改善することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】 本発明の構成例を図1により説
明する。鋼心1の周囲にアルミまたはアルミ合金の非円
形成形素線5を撚り合わせて同心円状に層を形成し断面
円形の内層を構成する。内層と接する最外層は、大きさ
の異なるアルミまたはアルミ合金の非円形成形素線7を
用いて撚り合わせ、電線の断面形状が楕円となるように
構成する。最外層の非円形成形素線については、最大素
線と最大素線の間を楕円の長軸が通り、したがって、素
線は長軸を中心として上下対称に配置される。図に示
した電線は長径38.4mm、短径32.0mmで、導
体の断面積は810mm であるが、等価径が35.
5mmと図に示した縮径された従来の円形電線の外径
とほぼ同じとなり、図のものと同等の投影面積を達成
することができる。なお、等価径とは、上記の例でいえ
ば、楕円の断面積と同じ断面積をもった断面円形の電線
に換算した場合における直径をいう。
【0006】ANの低減について本発明の電線は従来の
断面円形の電線に比べ優れた効果を発揮する。一方、図
2の電線のように単に断面形状を楕円にしただけでは、
従来電線に比べ充分なAN低減効果が得られない。その
理由について図3で説明する。図3の(a)は図2の電
線の水滴の付き具合を示したものであり、図3の(b)
は、(a)と比較するために断面円形の素線を使用して
いるが、最外層の素線の配置は図1と同じの電線におけ
る水滴の付き具合を示したものである。の構成では
(a)に示すように降雨時に大きな水滴が付着する
ために水切れ性が悪くAN特性は改善されないが、図
の(b)に示す構成によれば水滴が小さくなるためAN
特性が改善される。
【0007】図に示した本発明の構成でも、素線間の
毛細管作用による水滴形状は図(b)と同じようにな
るが、長軸の両側に配置された最大径の素線について図
に示すように成形素線に元々あるrよりも大きなR、
R>rの窪みをつければ更にAN特性が改善される。種
々検討の結果、窪み部分の幅w及び深さhについて、
w、hが共に範囲1〜5mm内にあれば曲率RでもC面
取り構造でもよいことが分かった。
【0008】以上のようにANレベルを低減できる一方
で、電線の投影面積を小さく且つ断面形状を流線形状に
することができるので風荷重を少なくすることができ
る。投影面積を問題にする場合には、長手方向に旋回し
てゆく断面から等価平均径を求めて比較することができ
る。また着雪特性についても楕円の長径をa、短径をb
とすればb/a≦1/1.2で優れた難着雪特性を示し
た。一方、本発明の構成によれば楕円を形成する最外層
の素線はあまり太くても細くても撚り構造が不安定とな
るほか、材料の強度面でも問題があり試作試験の結果、
b/a≧1/1.7であれば実用的な設計が可能であるこ
とが明らかとなった。この意味で現在の技術におけるb
/aの実用的な範囲は1/1.2〜1/1.7の範囲であると
いうことができる。この範囲であればANの改善、風
音、風加重の低減効果についても充分目的を達成するこ
とができる。なお、以上の説明では本発明の電線の断面
形状を楕円として説明してきたが、楕円に近い長円(略
楕円とする)であってもよい。また、本発明について
は、架空送電線を主体に説明してきたが、架空送電線と
同様に鉄塔間に架線される架空地線に対しても有効であ
る。特にUHV送電線路においては、本線の影響を受け
ることによって本線以外にも架空地線の低AN化が望ま
れており、光ファイバ複合架空地線などへの適用が考え
られる。
【0009】
【発明の効果】 本発明の電線を架空送電線、架空地線
に使用することにより、コロナ放電に伴う騒音を低減す
ることができ、しかも風音、風加重も低減することがで
き、更に雪も着きにくいという効果を達成することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電線を示す断面図。
【図2】 楕円電線の例を示す断面図。
【図3】 水滴の付着状況を示す、(a)は図2の電線
の断面図、(b)は図1の構成の電線で素線に円形素線
を用いた場合の断面図。
【図4】 図1の構成の改良例である本発明の電線を示
す断面図。
【図5】 従来の電線の一例を示す断面図。
【図6】 従来の電線の他の例を示す断面図。
【符号の説明】
1 鋼心 2 円形素線 3 非円形成形素線 4 内層を形成する円形素線 5 内層を形成する非円形成形素線 6 最外層を形成する円形素線 7 最外層を形成する非円形成形素線 8 水滴
フロントページの続き (72)発明者 佐藤 恵二 茨城県日立市川尻町4丁目10番1号 日 立電線株式会社 豊浦工場内 (72)発明者 菅 伸明 茨城県日立市川尻町4丁目10番1号 日 立電線株式会社 豊浦工場内 (72)発明者 伊藤 宏明 茨城県日立市川尻町4丁目10番1号 日 立電線株式会社 豊浦工場内 (72)発明者 岩間 成美 茨城県日立市日高町5丁目1番1号 日 立電線株式会社パワーシステム研究所内 (56)参考文献 特開 昭60−189809(JP,A) 特開 平3−196413(JP,A) 実開 平1−152409(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 5/10

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼心の周囲に非円形成形素線を撚り合わ
    せて同心円状に形成した断面円形の内層と、内層に接
    大きさの異なる非円形成形素線を撚り合わせて形成
    した最外層からなり断面形状が流線形状をした楕円ま
    たは流線形状をした略楕円の架空電線において、最外層
    非円形成形素線が、長軸に対して対称に配置され、且
    つ対をなす最大素線の間を長軸が通るように配置されて
    いることを特徴とする架空電線。
  2. 【請求項2】 最外層を形成する非円形成形素線のう
    ち、最大素線の外周隅部に面取りを施して、対をなす最
    大素線の間に窪みを設けることにより、水切れ特性を向
    上させることを特徴とする請求項1記載の架空電線。
  3. 【請求項3】 非円形成形素線がアルミまたはアルミ合
    金からなることを特徴とする請求項1から2のいずれか
    記載の架空電線。
  4. 【請求項4】 断面形状における長径(a)と短径
    (b)との比(b/a)が、1/1.2〜1/1.7の範囲で
    あるように構成することを特徴とする請求項1から3の
    いずれか1記載の架空電線。
  5. 【請求項5】 断面積を、断面円形の電線と同一とした
    場合において、長径が前記断面円形の電線の外径よりも
    大きく、且つ、長手方向の等価平均径が前記断面円形の
    電線の外径と同一となるように構成することを特徴とす
    る請求項1から4のいずれか1記載の架空電線。
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