JP3187987B2 - 徐放性繊維材料およびその製造方法 - Google Patents

徐放性繊維材料およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、香料、薬剤などの活性
成分を含有し、これを徐々に放出することの可能な徐放
性繊維材料、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、香料(芳香性物質)を各種繊維材
料に含浸、乾燥させて、これら繊維材料に芳香性を付与
する試みがなされている。例えば、香料およびバインダ
ー(有機ポリマー)が溶解した香料液に、繊維材料を浸
漬させ、その後、この繊維材料を空気中に取り出すとバ
インダーが固化し、香料が繊維材料に付着する。しか
し、このように香料を繊維材料に付着させるだけでは、
一時的な芳香性は得られるものの、香料が容易に揮発す
るため、長期にわたって芳香性を維持することはできな
い。
【0003】繊維材料として多孔質中空糸を用いて多量
の香料を含浸させる試みもなされてるが、糸の中空部分
には、元来、空気が存在しており、その空気が妨げとな
り、香料はその中空部分に入り難く、入ったとしても少
量に過ぎなかった。
【0004】上記の改良法として、香料液の入ったバッ
チ中に中空糸を浸漬させ、それをバッチから引き上げ、
次に減圧器中で減圧することにより香料液を中空糸の中
空部分に入れ、そしてその中空糸を脱水乾燥するような
操作を繰り返し行うような装置を用いて、中空糸中に香
料液を導入する方法が考えられている。しかし、乾燥後
長期にわたる徐放効果についてはまだ不十分である。
【0005】一方、香料をマイクロカプセル化してバイ
ンダーと混ぜ、それを繊維に接着させる方法もまた試み
られている。例えば、コアセルベーション法により、ゼ
ラチン、ポリビニルアルコール(PVA)などの膜で香
料分子を被膜することにより、粒径が10〜100μm
のマイクロカプセル化香料が得られる。このようなマイ
クロカプセル化香料は既に商品化されている。しかし、
このマイクロカプセル内の香料は、上記ゼラチンまたは
PVAの膜で密閉されているため、製造されたままの状
態では香りを放つことができない。物理的な力により、
カプセルの膜が破壊されて初めて香りを放つ。しかし、
カプセルが破壊されると、一度に香料が放出され、放出
された香料は短時間で揮発するため、マイクロカプセル
が破壊された後は、長期にわたる芳香性は維持されな
い。さらに、上記コアセルベーション法によって得られ
るマイクロカプセルを中空糸に適用するには、このマイ
クロカプセルの粒径が平均20〜50μmであるのに対
し、中空糸の孔径は0.01〜3μmであるため、この
マイクロカプセルを中空糸の中空部分に充填することは
できない。
【0006】香料をセラミックス粉に練り込み、中空糸
に封じ込める方法もまた試みられているが、長期にわた
る芳香性についてはいまだ不十分である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問
題点を解決するものであり、その目的とするところは、
繊維固有の風合いおよび柔軟性を損なうことなく、長期
にわたって芳香、薬効成分などを徐々に出し得る徐放性
繊維材料を提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、上記徐放性繊維材料
を比較的容易に製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】本発明者ら
は、香料、薬剤などの活性成分を多孔性のポリマーマト
リックス内にカプセル化もしくは包接した材料を中空糸
の中空部分に充填することができれば、該活性成分の徐
放性に優れた繊維材料が得られると考え、本発明を完成
するに至った。
【0010】本発明の徐放性繊維材料は、中空糸繊維基
材の中空部分に活性成分内包多孔性ポリマーが充填さ
れ、かつ該ポリマーが該基材に物理的、化学的、または
それら両者の結合形態により結合した徐放性繊維材料で
あって、該活性成分内包多孔性ポリマーは、無機アルコ
キシドおよび金属アルコキシドでなる群から選択される
少なくとも一種のアルコキシド類と、エポキシ基を有す
るシランカップリング剤と、香料および薬剤でなる群か
ら選択される少なくとも一種の活性成分とから、ゾル−
ゲル法によって調製される、実質的に均一な微粒子より
なる集合体であり、該活性成分は該ポリマー中に内包さ
れる。
【0011】好適な実施態様においては、上記中空糸繊
維基材は、天然繊維、合成繊維、および半合成繊維でな
る群から選択される少なくとも一種の材料でなる多孔質
中空繊維である。
【0012】好適な実施態様においては、上記薬剤は、
殺菌剤、抗菌剤、消臭剤、紫外線防止剤および熱温度変
色剤でなる群から選択される一種である。
【0013】本発明の徐放性繊維材料を製造する方法
は、無機アルコキシドおよび金属アルコキシドでなる群
から選択される少なくとも一種のアルコキシド類;エポ
キシ基を有するシランカップリング剤;香料および薬剤
でなる群から選択される少なくとも一種の活性成分;お
よびゾル−ゲル法触媒を含有する混合液を、ゾル状態
で、減圧下、中空糸繊維基材に含浸させる工程、および
中空糸繊維基材中に含浸させた該組成物をゲル化させて
活性成分内包多孔性ポリマーを形成させる工程、を包含
する。
【0014】好適な実施態様においては、上記ゾル−ゲ
ル法触媒として、酸触媒および塩基触媒の両方を含有す
る。
【0015】好適な実施態様においては、上記ゾル−ゲ
ル法の塩基触媒は、水に実質的に不溶であり、かつ有機
溶媒に可溶な第三アミンである。
【0016】本発明に用いられる中空糸繊維基材として
は、各種天然繊維、合成繊維、半合成繊維で成る多孔質
中空糸が挙げられる。天然繊維の素材としては、綿、羊
毛、絹などがあり、合成繊維の素材としてはポリアミ
ド、ポリエステル、ポリアクリルなどがあり、半合成繊
維の素材としてはレーヨン、キュプラなどがある。中空
糸は、常法により調製され、市販の中空糸が使用され得
る。中空糸の直径および孔径は特に限定されず、目的に
応じて所望のサイズの中空糸が使用される。例えば、直
径が約0.02〜6μm、そして孔径が約0.01〜3
μmのポリエステル中空糸が用いられ得る。
【0017】本明細書において「無機アルコキシド」と
は、金属以外の無機アルコキシドを指していう。
【0018】本発明に用いられる無機または金属アルコ
キシド(アルコキシド類)は、一般にM(OR)mで示
される。ここでMは無機物質原子または金属原子であ
る。Mの例としては、Li、Na、Cu、Mg、Ca、
Sr、Ba、Zn、B、Al、Ga、Y、Si、Ge、
Pb、P、Sb、Ta、W、La、Nd、Tiなどが挙
げられる。Rは低級のアルキル基(炭素数が1〜4)、
そして、mはMの原子価である。このような化合物とし
ては、例えば、Si(OC254、Al(O-iso-C3
73、Ti(O-iso-C374、Zr(O-t-C
494、Zr(O-n-C494、Ca(OC
252、Fe(OC253、V(O-iso-C374
Sn(O-t-C494、Li(OC25)、Be(O
252、B(OC253、P(OC253、P
(OCH33、Mg(OCH32、Mg(OC25)な
どがある。
【0019】本発明に用いられる香料は、動物性天然香
料、植物性天然香料および合成香料のいずれであっても
よい。本発明に用いられる薬剤としては、殺菌剤、抗菌
剤、消臭剤、害虫防止剤、紫外線防止剤、熱温度変色剤
などが用いられる。これらは生理上、保健上良好である
物質であれば特に限定されない。本発明の徐放性繊維材
料中には上記香料および薬剤の少なくとも一種の活性成
分がカプセル化あるいは包接される。これらは、アルコ
キシド類100重量部に対して1〜300重量部、好ま
しくは50〜200重量部の範囲で用いられる。これら
の含有量が、アルコキシド類100重量部に対して1重
量部未満の場合には、所望の芳香性および/または薬剤
の活性を有する徐放性繊維材料は得られない。一方、ア
ルコキシド類100重量部に対して300重量部を越え
る量の香料および/または薬剤を多孔性ポリマー中に内
包することは困難である。
【0020】本発明に用いられ得るシランカップリング
剤としては、既知のエポキシ基を有するシランカップリ
ング剤が用いられ得る。このようなシランカップリング
剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメ
トキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエト
キシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)
エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。二重結合
を有するシランカップリング剤やその他のシランカップ
リング剤を用いることもできる。このようなシランカッ
プリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラ
ン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メト
キシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−
β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノ
プロピルトリメトキシシランの塩酸塩、γ−アミノプロ
ピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプ
ロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)
アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノ
エチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−
メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプ
トプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキ
シシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジ
シラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、
γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプ
ロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラ
ン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラ
ン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリ
ル)プロピル〕アンモニウムクロライド、アミノシラン
配合物などが挙げられる。
【0021】上記シランカップリング剤は、アルコキシ
ド類100重量部に対して300重量部以下、好ましく
は1〜300重量部、さらに好ましくは10〜40重量
部の範囲で用いられる。シランカップリング剤の含有量
が、アルコキシド類100重量部に対して300重量部
を越えても、300重量部以下の場合と比べて得られる
ポリマー(ゲル化物)の物性はほとんど変わらないうえ
にコストがかかる。
【0022】本発明に用いられる触媒は、いわゆるゾル
−ゲル法触媒(アルコキシド類およびシランカップリン
グ剤を加水分解および重縮合させるために用いられる)
と称されるものであり、酸触媒および塩基触媒の両方を
用いる。酸触媒としては、酸およびその無水物が挙げら
れ、そして塩基触媒としては有機塩基が挙げられる。上
記酸としては、通常、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸が挙
げられる。鉱酸の無水物、例えば、塩化水素ガスを用い
ても同様の効果が得られる。さらに、有機酸およびその
無水物もまた用いられ得る。このような有機酸およびそ
の無水物としては、例えば、酒石酸、フタル酸、マレイ
ン酸、ドデシルコハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチ
ルナジック酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸、ジクロルコハク酸、クロレンディック酸、
無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク
酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック
酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカ
ルボン酸、無水ジクロルコハク酸、無水クロレンディッ
ク酸などが挙げられる。これらの酸触媒は、アルコキシ
ド類1モルに対して0.001モル以上、好ましくは
0.001〜0.5モルの範囲で用いられる。上記酸触
媒の含有量がアルコキシド類1モルに対して0.001
モル未満の場合には、加水分解の進行が非常に遅い。一
方、上記酸触媒の含有量がアルコキシド類1モルに対し
て0.5モルを越える場合には、残存酸性度が大きく、
かつゲル化の進行が速すぎるため、作業に適さない。
【0023】上記有機塩基としては、水に実質的に不溶
であり、かつ、有機溶媒に可溶である第三アミンが好適
に用いられる。このような第三アミンとしては、N,N
−ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン、トリ−
n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、トリプロパ
ルギルアミン、N,N,N−トリメチルエチレンジアミ
ン、トリ−n−ヘキシルアミンなどが挙げられる。この
ような塩基触媒は、上記酸触媒と等モル量もしくはそれ
を越える量、好ましくはアルコキシド類1モルに対して
0.001〜0.8モルの割合で用いられる。塩基触媒
の含有量は、その解離度に応じて上記範囲内で適宜決め
られる。塩基触媒の含有量がアルコキシド類1モルに対
して0.001モル未満の場合には、アルコキシド類お
よびシランカップリング剤の加水分解後の重縮合反応が
極めて遅くなる。一方、塩基触媒の含有量がアルコキシ
ド類1モルに対して0.8モルを越える場合には、一挙
にゲル化が進行し、作業に適さない。
【0024】本発明に用いられる溶媒としては、加水分
解に用いられる水の他、有機溶媒が挙げられる。有機溶
媒としては、水と混合し得る溶媒、もしくは水に一部溶
解し得る溶媒が用いられる。このような有機溶媒として
は、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プ
ロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、アセトン、
メチルエチルケトン、ホルムアミドが挙げられる。
【0025】本発明において用いられ得るポリマーの調
製には有機モノマーが用いられ得、それには、重合性の
モノマーが挙げられる。重合性のモノマーとしては、例
えば、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルホルムアミ
ド、アクリロニトリル、スチレン、アクリル酸メチル、
アクリル酸エチル、メタクリル酸エチルがある。このよ
うな有機モノマーに加えて、またはその代わりに、ポリ
マーを用いることもできる。このようなポリマーとして
は、ナイロン、ブチラールなどが挙げられる。このよう
な有機モノマーおよび/またはポリマーは、上記アルコ
キシド類100重量部に対して300重量部以下、好ま
しくは10〜300重量部、さらに好ましくは30〜1
00重量部の範囲で用いられる。
【0026】次に、本発明の徐放性繊維材料の製造方法
について説明する。
【0027】本発明の徐放性繊維材料を製造するには、
香料および薬剤でなる群から選択される少なくとも一種
の活性成分、アルコキシド類、エポキシ基を有するシラ
ンカップリング剤、触媒および溶媒を主として用いて、
ゾル状態の混合物を調製し、これを多孔質の中空糸繊維
基材に含浸させ、その後、基材を減圧下にて乾燥する
(例えば、減圧高周波乾燥機により乾燥する)ことによ
り、基材の中空部分に含浸されたゾル状態の混合物をゲ
ル化することによって、活性成分を内包する多孔性ポリ
マーが生成する。このポリマーは、基材の中空部分に充
填され、基材内壁に物理的および/または化学的に結合
する。
【0028】上記工程を、さらに詳細に説明すると、例
えば、まず、アルコキシド類を有機溶媒、例えば、アル
コールに溶解させる。このときのアルコキシド類の濃度
は、特に限定されないが、通常、500〜600g/l
である。次いで水が添加される。添加される水の量は、
アルコキシド類1モルに対して1〜30モルの割合であ
ることが好ましい。ここで用いられる水は、予め上記有
機溶媒に混合されていてもよい。このアルコキシド類の
溶液(水を含む)に、活性成分(香料および/または薬
剤)を溶解もしくは分散させる。これに、シランカップ
リング剤および必要に応じて光増感剤が加えられる。光
増感剤はシランカップリング剤が重合性の基を含む場合
に、紫外線照射により、該重合性の基による光重合反応
を促進させる。この混合液に、上記ゾル−ゲル法触媒の
酸(もしくはその無水物)および塩基(第三アミン)を
加えて攪拌する。pHは、5〜6に調整される。この反
応は、香料などの活性成分の揮発を防止するために、常
温で行うのが好ましい。ここで、ゾル状態の混合液のp
Hは低く設定されているため、急速に反応が進行し、ゲ
ル化することはない。このゲル化時間は、上記pHの
他、使用する水の量およびゾル−ゲル法触媒の量に依存
する。
【0029】次に、ゾル状態の上記混合物が入れられた
タンク内に中空糸繊維基材を通すことにより、このゾル
を中空糸繊維基材に含浸させる。その後、タンクから中
空糸繊維基材を引き上げて、減圧下に保持することによ
り、ゾルを中空糸繊維基材の中空部分に浸透含浸させ
る。次いで、基材を減圧下にて乾燥する(例えば、減圧
高周波乾燥を行う)。この間にゾルがゲル化し、図1〜
図3の写真に示されるように、中空糸の中空部分に、香
料および/または薬剤(以下、活性成分という)を含有
するゲルが保持される。このゲル化は、上記アルコキシ
ド類およびシランカップリング剤の加水分解および重縮
合によって、無機性のポリマーが生成するために生じ
る。
【0030】このようにして、高分子化合物のマトリッ
クス内に、活性成分が内包される。活性成分は、分子、
該分子を溶解もしくは分散させていた有機溶媒などを含
む粒子の集合体、もしくは液状の微粒子の形態でマトリ
ックス内に存在する。
【0031】さらに詳細には、次のようにして活性成分
がカプセル化および/または包接化されると考えられ
る。すなわち、上記反応において、加水分解されたアル
コキシド類同士が重縮合して架橋し、三次元構造の粒子
が形成される。この三次元構造の粒子が形成されるとき
に、活性成分は微粒子状態あるいは溶剤に溶解した状態
で、その三次元構造内に包接される。つまり、活性成分
は、ポリマー粒子中にカプセル化された形態となる。こ
の粒子が複数個集まり、さらに重縮合反応および架橋反
応が進行すると、連続した三次元マトリックスが形成さ
れる。活性成分は、三次元マトリックスの内部空間に取
り込まれ、カプセル化もしくは包接化された形態とな
る。上記溶媒、および反応によって生じたアルコールが
三次元マトリックスの骨格中より揮発し除去されると、
多孔性のマトリックス骨格内部に活性成分が包接された
形態となる。しかも上記多孔性マトリックスの小孔の孔
径は極めて小さいため、活性成分は徐々に揮発し、徐放
性が長時間持続する。
【0032】本発明の徐放性繊維材料は、上記シランカ
ップリング剤を添加せずに製造することもでき、その場
合には、活性成分を含む無機質のポリマーが形成され
る。
【0033】さらに、本発明の方法においては、有機モ
ノマーおよび/またはポリマーを加えることもできる。
有機モノマーは、上記ラジカル重合反応および共重合反
応を促進し、有機質部分として上記高分子化合物の分子
内に組み込まれることにより、複雑に架橋した複合高分
子化合物を形成する目的で添加される。ポリマーは、上
記高分子化合物と共存し、多孔質中空糸の多孔質部分
を、部分的に封鎖する目的で添加される。すなわち、有
機モノマーおよびポリマーは、両者とも活性成分を中空
糸の中空部分に長時間にわたって留めておくために用い
られる。
【0034】上記のように本発明によれば、アルコキシ
ド類およびシランカップリング剤(無機部分)の加水分
解反応および重縮合反応は急速に進行する。シランカッ
プリング剤の有機質部分のラジカル重合(架橋反応を含
む)も、上記重縮合反応と同時に進行する。上記反応
は、同種分子間および異種分子間の両方において起こ
る。シランカップリング剤の無機質部分(シリカ部分)
は、無機高分子の骨格に組み込まれるか、単独で重合し
て無機高分子を形成する。有機質部分は、ケイ素原子に
結合したまま架橋部分を形成する。
【0035】このようにして形成される高分子化合物
は、アルコキシド類およびシランカップリング剤の加水
分解反応および重縮合反応によって形成される無機質ポ
リマー部分と、シランカップリング剤の官能基(有機部
分)の重合により形成される有機質部分とを有する。言
い換えれば、アルコキシド類とシランカップリング剤と
が反応して分子レベルで結合した高分子化合物が形成さ
れる。この高分子化合物は、有機質部分と無機質部分と
を有する複合化合物と考えられる。
【0036】一般に、ゾル−ゲル法触媒としては鉱酸が
知られているが、触媒として鉱酸を採用すると、有機モ
ノマーを含有する場合は、有機モノマーの重合反応に比
べて、アルコキシド類およびシランカップリング剤の加
水分解反応および重縮合反応が極めて遅い。その結果、
均質な複合高分子化合物が形成されない。これに対し
て、本発明の方法においては、発明者が開発した上記ゾ
ル−ゲル法触媒(酸および第三アミン)が使用されるた
め、上記アルコキシド類およびシランカップリング剤の
重縮合反応が極めて速やかに進行し、均質な複合高分子
化合物が形成される。
【0037】有機モノマーを用いる場合には、紫外線照
射されることにより、有機モノマーがラジカル反応によ
り重合する。この重合反応は、有機モノマー分子同士の
間で起こり、さらにシランカップリング剤の有機部分
(ビニル基などの二重結合部分)と該有機モノマー分子
との間で起こる。紫外線を用いてラジカル反応を行う
と、20〜30℃という低温でも反応が進行するため、
活性成分が揮発または消失することがない。本発明の方
法においては、紫外線の代わりに電子線を用いることも
できる。このようにして得られる高分子化合物は、反応
系(マトリックス骨格内部を含む)から溶媒および反応
により生じるアルコールが除去されると、活性成分を内
包する多孔質のポリマーマトリックスが得られ、それ
は、活性成分の徐放効果に優れる。
【0038】これらの方法で得られる組成物中の高分子
化合物は、有機成分を含有するため、繊維材料との結合
性に優れる。そのため、耐久性に優れ、かつ徐放効果に
優れた芳香性を有する各種中空糸繊維材料が得られる。
【0039】
【実施例】以下に本発明を実施例につき説明する。
【0040】(実施例1) 成分 使用量(g) (モル比) エチルシリケート40(商品名) 250 (1) (平均5量体、コルコート社製) エタノール 125 2N塩酸 1.7 (約0.01) 蒸留水 85.3 (約4) N,N−ジメチルベンジルアミン 20 (約0.004) (3.2%エタノール溶液) 香料(ERENADE 9876(商品名)) 50 (高砂香料工業社製) ナイロン(5%エタノール溶液) 40 上記各成分を混合してpH6〜7に調整された混合物を
得た。次にこの混合物中に中空糸を浸漬し、その後、そ
れを減圧装置に入れ、120トールで30分間減圧す
る。その後、脱水乾燥する。このようにして得られた繊
維材料の断面写真を図1に示す。上記方法によって得ら
れた中空糸2:無加工中空糸8の割合でふとん綿を作成
したところ、1年にわたり、一定の芳香性が保たれた。
【0041】(実施例2) 成分 使用量(g) (モル比) エチルシリケート40(商品名) 250 (1) (平均5量体、コルコート社製) エタノール 50 2N塩酸 1.7 (約0.01) 蒸留水 85.3 (約4) N,N−ジメチルベンジルアミン 20 (約0.004) (3.2%エタノール溶液) 香料(桧 FH−5960(商品名)) 40 (高砂香料工業社製) ナイロン(5%エタノール溶液) 32 上記各成分を混合してpH6〜7に調整された混合物を
得た。次にこの混合物中に中空糸を浸漬し、その後、そ
れを減圧装置に入れ、120トールで30分間減圧す
る。その後、脱水乾燥する。このようにして得られた繊
維材料の断面写真を図2に示す。上記方法によって得ら
れた中空糸2:無加工中空糸8の割合でふとん綿を作成
したところ、1年にわたり、一定の芳香性が保たれた。
【0042】(実施例3) 成分 使用量(g) (モル比) エチルシリケート40(商品名) 250 (1) (平均5量体、コルコート社製) エタノール 125 2N塩酸 1.7 (約0.01) メチルセルロース 2.6 蒸留水 85.3 (約4) N,N−ジメチルベンジルアミン 20 (約0.004) (3.2%エタノール溶液) 香料(桧 FH−5960(商品名)) 50 (高砂香料工業社製) ナイロン(5%エタノール溶液) 40 上記各成分を混合してpH6〜7に調整された徐放性組
成物を得た。次に、この徐放性組成物中に中空糸を浸漬
し、その後、それを減圧装置に入れ、120トールで3
0分間減圧する。その後、脱水乾燥する。このようにし
て得られた繊維材料の断面写真を図3に示す。上記方法
によって得られた中空糸2:無加工中空糸8の割合でふ
とん綿を作成したところ、1年にわたり、一定の芳香性
が保たれた。
【0043】
【発明の効果】本発明の徐放性繊維材料においては、長
期間にわたり、所定の効果、例えば、芳香性、殺虫効
果、消毒効果などが維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により得られた繊維材料の断面を示す
写真である。
【図2】実施例2により得られた繊維材料の断面を示す
写真である。
【図3】実施例3により得られた繊維材料の断面を示す
写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井狩 雅道 滋賀県野洲郡野洲町大字大篠原6番地 株式会社中戸研究所内 (56)参考文献 特開 平5−192222(JP,A) 特開 平2−300383(JP,A) 特開 昭62−281816(JP,A) 実開 昭57−9875(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 23/02 D06M 11/77 D06M 13/513

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】中空糸繊維基材の中空部分に活性成分内包
    多孔性ポリマーが充填され、かつ該ポリマーが該基材に
    物理的、化学的、またはそれら両者の結合形態により結
    合した徐放性繊維材料であって、 該活性成分内包多孔性ポリマーが、無機アルコキシドお
    よび金属アルコキシドでなる群から選択される少なくと
    も一種のアルコキシド類と、エポキシ基を有するシラン
    カップリング剤と、香料および薬剤でなる群から選択さ
    れる少なくとも一種の活性成分とから、ゾル−ゲル法に
    よって調製される、実質的に均一な微粒子よりなる集合
    体であり、該活性成分が該ポリマー中に内包される、材
    料。
  2. 【請求項2】前記中空糸繊維基材が、天然繊維、合成繊
    維、および半合成繊維でなる群から選択される少なくと
    も一種の材料でなる多孔質中空繊維である、請求項1に
    記載の徐放性繊維材料。
  3. 【請求項3】前記薬剤が、殺菌剤、抗菌剤、消臭剤、紫
    外線防止剤および熱温度変色剤でなる群から選択される
    一種である、請求項1または2に記載の徐放性繊維材
    料。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の徐放性繊維材料を製造す
    る方法であって、 無機アルコキシドおよび金属アルコキシドでなる群から
    選択される少なくとも一種のアルコキシド類;エポキシ
    基を有するシランカップリング剤;香料および薬剤でな
    る群から選択される少なくとも一種の活性成分;および
    ゾル−ゲル法触媒を含有する混合液を、ゾル状態で、減
    圧下、中空糸繊維基材に含浸させる工程、および中空糸
    繊維基材中に含浸させた該組成物をゲル化させて活性成
    分内包多孔性ポリマーを形成させる工程、を包含する、
    方法。
  5. 【請求項5】前記ゾル−ゲル法触媒として、酸触媒およ
    び塩基触媒の両方を含有する請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】前記ゾル−ゲル法の塩基触媒が、水に実質
    的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンであ
    る、請求項5に記載の方法。
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