JP3187884B2 - 打撃工具のメインバルブのシール装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、釘打機等の加圧空気に
よって作動する打撃工具に関し、特に、そのシリンダと
メインバルブとの間の加圧空気の供給及び停止を確実に
するシール装置を備えた打撃工具に関する。

【０００２】

【従来の技術】加圧空気によって作動する釘打機等の打
撃工具は建築現場で多用されている。かかる打撃工具
は、加圧空気室を形成するハウジングと、このハウジン
グに配置され下部のノーズに向けて延びるシリンダと、
シリンダ内に配置されてシリンダ上部から供給される加
圧空気によって下方に移動し、ノーズに配置された固着
具を打撃部材で打込むピストンと、シリンダ上部に設け
られ、シリンダへの加圧空気の供給を停止し且つシリン
ダ上部を大気に開放する静止位置とハウジング内の加圧
空気をシリンダ上部へ供給し且つ大気との間を閉塞する
打込位置とをとるメインバルブとを備え、トリガバルブ
の操作によってメインバルブを移動させてピストンを静
止位置から打込み位置へ移動させて釘等の固着具を壁パ
ネル等の打込対象物に打込む。

【０００３】かかる打撃工具において、メインバルブと
シリンダとの間の開閉は確実でなければならない。例え
ば、メインバルブが打込位置に移動するとき、大気への
排気口を閉じてから加圧空気をシリンダ上部に供給しな
いと、ピストンすなわち打撃部材の打撃力が不足し、ま
た、静止位置へ移動するときにも、シリンダ上部を大気
へ連通して加圧空気を排気する際、加圧空気の供給を完
全に停止しないと、ピストンの復帰が不完全になり次の
打撃動作に支障を来す。

【０００４】上記の開閉不良をなくするため、メインバ
ルブ下部とシリンダ上部との間に、メインバルブの外周
面を上下にスライドする環状のシール部材を設け、メイ
ンバルブが打込位置に移動するとき、大気への排気口を
閉じてから加圧空気をシリンダ上部に供給し、メインバ
ルブが打込位置から静止位置へ移動するとき、加圧空気
の供給を停止してからシリンダ上部の加圧空気を排気す
る打撃工具を既に開発した。

【０００５】かかる打撃工具について、必要部分のみを
示した図１を参照して説明する。図１において、（Ａ）
の部分ではメインバルブ１が静止位置にあり、（Ｂ）の
部分ではメインバルブ１が打込位置にあり、（Ｃ）の部
分では静止位置から打込位置への途中の位置にある。先
ず、（Ａ）の部分において、メインバルブ１は最下方位
置にあってシール部材２をシリンダ３の上端に圧接して
ハウジング空気室４からの加圧空気の供給を停止し、ま
た、メインバルブはシリンダ３の上方に形成された排気
通路を開放して矢印５で示すようにシリンダ上部を大気
に連通して静止位置を保っている。

【０００６】図１の（Ｂ）の部分ではメインバルブ１は
打込位置にある。（Ａ）の静止位置から（Ｂ）の打込位
置に至るにはメインバルブ上部へ供給されていた加圧空
気がなくなって、メインバルブ１は、（Ｃ）に示すよう
に上方へ移動させられてメインバルブ１のＯリング６が
排気通路７を塞ぐように大気への排気口を閉じ、次に、
メインバルブが上死点近くに至ったときシール部材２を
上方に上げ、（Ｂ）の矢印８で示すように加圧空気をシ
リンダ上部に供給し、シリンダに配設されたピストンを
下方に移動させる。

【０００７】メインバルブ１を打込位置から静止位置に
移動させるには、先ず、トリガバルブを操作してメイン
バルブ上方に加圧空気を供給し、メインバルブ１を
（Ｂ）の位置から（Ｃ）の位置に移す。この（Ｃ）の位
置においてメインバルブ１のＯリング６は排気通路７を
まだ塞いでいるが、シール部材２の上部には下部より広
い面積に加圧空気が作用して下方へ移動させられ、シー
ル部材２の下端面がシリンダ３の上端面に密接して、シ
リンダ上部への加圧空気の供給を停止する。次に、メイ
ンバルブ１は更に下方へ移動させられて（Ａ）の位置に
至り、シリンダ上部の加圧空気を大気へ排気する。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】かかるシール部材付き
打撃工具は、メインバルブが打込位置に移動すると、大
気への排気口を閉じてから加圧空気をシリンダ上部に供
給し、メインバルブが打込位置から静止位置へ移動する
と、加圧空気の供給を停止してからシリンダ上部の加圧
空気を排気するので、従来の打撃工具の不具合を解消す
る。しかし、かかる打撃工具において、シール部材の移
動力はその上端と下端とに加わる加圧空気の受圧面積の
差によるものなので、シール部材の移動が確実には行わ
れない場合があった。また、メインバルブとシール部材
との間の摩擦力が大きい場合にも、シール部材の移動が
滑らかにならないことがあった。

【０００９】従って、本発明の目的は、メインバルブが
打込位置に移動するとき、大気への排気口を閉じてから
加圧空気をシリンダ上部に供給し、メインバルブが打込
位置から静止位置へ移動するとき、加圧空気の供給を停
止してからシリンダ上部の加圧空気を排気するのを確実
に行う打撃工具を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め、本発明によれば、加圧空気室を形成するハウジング
と、このハウジングに配置されて下部のノーズに向けて
延びるシリンダと、シリンダ内に配置されてシリンダ上
部から供給される加圧空気によって下方に移動し、ノー
ズに配置された固着具を打撃部材で打込むピストンと、
シリンダ上部に設けられ、シリンダへの加圧空気の供給
を停止し且つシリンダ上部を大気に開放する静止位置と
加圧空気をシリンダ上部へ供給し且つ大気との間を閉塞
する打込位置とをとるメインバルブとを備え、トリガバ
ルブの操作によってメインバルブを前記両位置の間で移
動させる打撃工具であって、メインバルブとシリンダと
の間には、シリンダ外周面を上下にスライドする環状の
シール部材が設けられ、このシール部材はメインバルブ
の下端面に当接するように上方に向けてばね付勢され、
ばね付勢されたシール部材の上方には、メインバルブが
打込位置にあるとき該バルブには当接できないようにシ
ール部材を停止させるストッパが設けられていることを
特徴とする打撃工具が提供される。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
ながら説明する。図２において、固着具の打撃工具１１
はハンドル１２が一体成形されたハウジング１３を備
え、このハウジング１３にはハンドル１２の側から加圧
空気が供給されてハウジング全体が加圧空気室を構成し
ている。ハウジング１３の内部にはシリンダ１４が設け
られ、そのシリンダ１４の内部には打撃部材１５が取付
けられたピストン１６が往復動自在に配置されている。
シリンダ１４の上部には、該シリンダ上部へハウジング
１３から加圧空気を供給するのを停止し且つシリンダ上
部を大気に開放する静止位置と、ハウジング１３内の加
圧空気をシリンダ上部へ供給し且つ大気との間を閉塞す
る打込位置とをとるメインバルブ１７が設けられてい
る。

【００１２】メインバルブ１７の静止位置は図２に示さ
れ、メインバルブ１７の打込位置は図４に示され、図３
にはその途中の状態が示されている。メインバルブ１７
は、その上部に設けられた圧力室１８への加圧空気の供
給を制御する、ハンドル１２の根元に設けられたトリガ
バルブ２０によって制御される。トリガピン２１が押さ
れずに静止位置にあるときは、メインバルブ１７の上部
の圧力室１８にはトリガバルブ２０及び通路２２を通し
て加圧空気が供給されてメインバルブ１７を下方に押圧
している。この状態では、メインバルブ１７は図２の静
止位置にあってシリンダ１４の上部は排気口３３を通っ
て排気通路３４から大気へ連通し、シリンダ上面は密閉
されてピストン１６の上面には加圧空気は送られない。

【００１３】次に、トリガピン２１が上方に押される
と、圧力室１８の加圧空気が通路２２及びトリガバルブ
２０を通って大気へ排気され、メインバルブ１７は図４
に示すように上方すなわち打込位置に移動させられる。
この打込状態では、ハウジング１３内の加圧空気をシリ
ンダ１４の上部へ供給し且つシリンダ上部と大気との間
を閉塞する。加圧空気がシリンダ上部からピストン１６
の上部に供給されると、ピストン１６は下方に強く押下
げられ、シリンダ１４の下方に設けられたノーズに配置
された釘等の固着具を壁パネル等の対象物に打込む。そ
して、トリガピン２１が釈放されると元の位置に復帰し
て、メインバルブ１７は再び図２の静止位置に復帰す
る。すなわち、押下げられていたピストン１６の上面側
には加圧空気の供給がなくなり、ピストン下面側にはシ
リンダ１４の外周に形成されたリターンチャンバ２４か
らの加圧空気が供給されるので、ピストン１６は、図２
の中心線２３の右側の位置を経由して、該中心線２３の
左側の上死点位置まで、シリンダ１４内をその下死点か
ら上昇する。このとき、ピストン上面側のシリンダの加
圧空気はメインバルブ１７を通して大気に排気される。

【００１４】本発明においては、メインバルブ１７の下
部とシリンダ１４の上部との間にシリンダ１４の外周面
を上下にスライドする環状のシール部材２６が設けられ
ている。シール部材２６のシール部分２７は、メインバ
ルブの下端面とシリンダ１４の上端面とに接するように
延びて、両者の間を密閉するように形成されている。ま
た、シール部分以外は、シリンダ１４の外周面をスライ
ドしつつシリンダとの密閉を維持する程度の大きさの内
径を有する円筒に形成されている。シール部材２６は一
体成形されてもよいが、シリンダ１４上をスライドし且
つシリンダとの密閉を維持するのに便利なように、２部
品に分けてもよく、この場合には、両部品の中間に密閉
用のシールリング２８を設けてその密閉を確実にするこ
とができる。

【００１５】このシール部材１４は、そのシール部分２
７がメインバルブ１７の下端面に当接するように上方に
向けて、コイルばね２９でばね付勢されている。ばね２
９の下部はシリンダ１４の外周面に形成された突部３０
によって支持されている。従って、シール部材２６には
常時押上げ力が作用している。また、ばね付勢されたシ
ール部材２６の上方のハウジング部分には、メインバル
ブ１７が打込位置にあるとき該バルブには当接できない
ようにシール部材２６を停止させるストッパ３１が設け
られている。この様子が図４に示されており、ストッパ
３１は、ハウジングのメインバルブ収納部分からメイン
バルブ１７の外周面に沿って下方に延びる棒状のもので
よい。

【００１６】かかる構成で成る打撃工具１１を動作させ
て、シリンダ１４への加圧空気の供給及び排気動作につ
いて説明する。先ず、図２の静止位置において、メイン
バルブ１７の上面の圧力室１８にはトリガバルブ２０か
ら通路２２を通して加圧空気が供給され、メインバルブ
１７は下方に押圧されている。従って、メインバルブ１
７の下端はシール部材２６のシール部分２７に密接し、
またシリンダ１４の上端はシール部材２６のシール部分
２７に密接するので、シリンダ上部への加圧空気の供給
は停止させられている。また、メインバルブ１７のＯリ
ング３２は排気口３３を開放し、シリンダ上部の空気を
排気通路３４を通して大気へ排気できるようにしてい
る。この静止状態ではピストン１６は図２の中心線２３
の左側の上死点位置にある。

【００１７】次に、トリガバルブ２０のピン２１を引く
と、図３に示すように圧力室１８の加圧空気が通路２２
及びトリガバルブ２０を通して排気され、メインバルブ
１７の下面側にはハウジング１３内の加圧空気が供給さ
れ（矢印３５参照）、メインバルブ１７を押上げる。メ
インバルブ１７が押上げられても、シール部材２６はコ
イルばね２９の押上げ力によってメインバルブ１７の下
端に当接したまま（すなわち密閉を維持したまま）上方
に移動（図３の中心線２３の左側の状態から右側の状態
に移動）する。メインバルブ１７が、図４の上死点に達
する前に、Ｏリング３２が排気口３３を密閉し排気通路
３４との連通を絶つ。排気口３３が密閉された後、シー
ル部材２６はストッパ３１によってその移動が停止させ
られ、メインバルブ１７の下端から離れて、シリンダ１
４の上部には加圧空気がハウジングから供給される。こ
れによって、ピストン１６は下方に急速に移動させら
れ、打撃部材１５が釘等の固着具を打撃する。

【００１８】固着具の打込み後、トリガバルブ２０のト
リガピン２１を釈放すると、トリガバルブ２０から通路
２２を介して加圧空気が圧力室１８に供給され、メイン
バルブ１７が下方に押下げられる。この押下げの途中
で、メインバルブ１７の下端がシール部材２６のシール
部分２７の上面に密接してハウジング１３からシリンダ
への加圧空気の供給を停止する。その後更にメインバル
ブ１７は押下げられ、Ｏリング３２が密閉していた排気
口３３を排気通路３４に連通して、シリンダ１４の上面
側の加圧空気を大気へ排気できるようにする。これによ
り、ピストン１６の下面に供給されるリターンチャンバ
２４からの加圧空気がピストン１６を押上げて、図２の
中心線２３の右側の位置を経由して、左側の上死点位置
まで、シリンダ１４内をその下死点から上昇する。

【００１９】図５は、シリンダ１４とシール部材２６と
の間のシールを維持するための別の例を示している。こ
の例では、シリンダ１４の上端が半径方向外方に突出し
てシール用突部３９を形成している。このように形成す
ることによって、シール部材２６にはシールリング２８
が不要になり、シール部材２６は一体に成形でき、しか
も、シール部材２６とシリンダ１４との摺擦部分が少な
くなり、シリンダ上でのシール部分の運動も軽くなる。

【００２０】

【発明の効果】本発明の打撃工具によれば、メインバル
ブとシリンダとの間に、シリンダ外周面を上下にスライ
ドする環状のシール部材が設けられ、このシール部材は
メインバルブの下端面に当接するように上方に向けてば
ね付勢され、ばね付勢されたシール部材の上方には、メ
インバルブが打込位置にあるとき該バルブには当接でき
ないようにシール部材を停止させるストッパが設けられ
ているので、メインバルブが打込位置に移動するとき、
大気への排気口を閉じてから加圧空気をシリンダ上部に
供給し、メインバルブが打込位置から静止位置へ移動す
るとき、加圧空気の供給を停止してからシリンダ上部の
加圧空気を排気するのを確実に行い、外力や摩擦力等の
影響による打撃不足等の不具合が一切なくなった。

【図面の簡単な説明】

【図１】既に開発された打撃工具の主要部分を示す説明
図である。

【図２】静止状態にある、本発明に係る打撃工具の主要
部分を示す断面図である。

【図３】静止状態から打込状態に移る、本発明に係る打
撃工具の主要部分を示す断面図である。

【図４】打込状態にある、本発明に係る打撃工具の主要
部分を示す断面図である。

【図５】シリンダとシール部材とシール部分の変形例を
示す部分断面図である。

【符号の説明】

１ メインバルブ ２ シール部材 ３ シリンダ ４ ハウジング空気室 ６ Ｏリング ７ 排気通路 １１ 本発明に係る打撃工具 １２ ハンドル １３ ハウジング １４ シリンダ １５ 打撃部材 １６ ピストン １７ メインバルブ １８ 圧力室 ２０ トリガバルブ ２１ トリガピン ２２ 通路 ２４ リターンチャンバ ２６ シール部材 ２７ シール部分 ２９ コイルばね ３０ 突部 ３１ ストッパ ３２ Ｏリング ３３ 排気口 ３４ 排気通路 ３９ 突部

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加圧空気室を形成するハウジングと、こ
   のハウジングに配置されて下部のノーズに向けて延びる
   シリンダと、シリンダ内に配置されてシリンダ上部から
   供給される加圧空気によって下方に移動し、ノーズに配
   置された固着具を打撃部材で打込むピストンと、シリン
   ダ上部に設けられ、シリンダへの加圧空気の供給を停止
   し且つシリンダ上部を大気に開放する静止位置と加圧空
   気をシリンダ上部へ供給し且つ大気との間を閉塞する打
   込位置とをとるメインバルブとを備え、トリガバルブの
   操作によってメインバルブを前記両位置の間で移動させ
   る打撃工具において、 メインバルブとシリンダとの間には、シリンダ外周面を
   上下にスライドする環状のシール部材が設けられ、この
   シール部材はメインバルブの下端面に当接するように上
   方に向けてばね付勢され、ばね付勢されたシール部材の
   上方には、メインバルブが打込位置にあるとき該バルブ
   には当接できないようにシール部材を停止させるストッ
   パが設けられていることを特徴とする打撃工具。