JP3187335B2 - 建築物の接合金具 - Google Patents

建築物の接合金具

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JP3187335B2
JP3187335B2 JP01421497A JP1421497A JP3187335B2 JP 3187335 B2 JP3187335 B2 JP 3187335B2 JP 01421497 A JP01421497 A JP 01421497A JP 1421497 A JP1421497 A JP 1421497A JP 3187335 B2 JP3187335 B2 JP 3187335B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木造建築物におけ
る土台と大引や、柱と土台の接合に用いる木部材の接合
金具に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の木造軸組建築では、木部材の接合
に接合金具を用いた工法が採られている。このような接
合金具を用いた工法によれば、特別な技術や加工作業等
が不要となり、軸組作業もきわめて単純で簡単となるた
め、施工現場において効率の良い作業を行なうことがで
きる。この種の木造軸組工法に用いられる接合金具の例
としては、例えば実開平4−041002号の公報に記
載された木造建築物の柱と梁の接合金具がある。
【0003】この実開平4−041002号公報に記載
の接合金具は、図9に示すように、柱400側に固定さ
れる取付板1と、この取付板1の両端を直角に折り曲げ
て前方に突出させた一対の案内側板2とからなってい
る。
【0004】取付板1には、中心部分に、柱400を貫
通する締結具3の貫通する取付孔1aが、また上端部分
に、柱400側に食い込む打込部1bが、それぞれ設け
られている。また、一対の案内側板2には、梁500を
貫通したピン4が貫通する挿通孔2aが複数形成されて
おり、上方の挿通孔2aは上部が開口した溝状の孔とな
っている。
【0005】このような構成からなる実開平4−041
002号公報の接合金具によれば、取付板1を柱400
側に固定した後、案内側板2に、梁500の端部に形成
した仕口部分を貫挿し、梁500の側面からピン4を打
ち込んで案内側板2の挿通孔2aに貫通させることによ
って、柱400と梁500を簡単に接合することができ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この実
開平4−041002号公報に記載の接合金具による木
部材の接合では、案内側板が、梁の仕口部分に梁と同一
方向に挿入されるだけなので、梁を柱側へ十分締め付け
て接合することができなかった。特に、木造建築物にお
いては、建築後の時間の経過により、木部材が乾燥等に
よって収縮し、木部材の各仕口部間に隙間を生じること
があり、このような場合に、この従来の接合金具では、
締付量を調整して隙間を埋めるというようなことは不可
能であった。
【0007】一方、この従来の接合金具では、案内側板
は二枚一対の板状部材が平行に配設された構成となって
いるため、案内側板が貫挿される梁端部の仕口部分に
も、案内側板に対応した二本一対の溝を形成する必要が
あり、仕口加工に手数を要するという問題もあった。特
に、梁等の木部材が集成材のような場合、木部材がきわ
めて堅固であるため、溝状の仕口加工を行なうための工
具が破損してしまうようなことがあった。
【0008】さらに、この実開平4−041002号の
接合金具は、柱と梁の接合用であり、土台と大引、ある
いは柱と土台等の接合についてはそのまま適用すること
は困難であった。
【0009】本発明は、このような従来の技術が有する
問題を解決するために提案されたものであり、溝状の仕
口加工を必要とすることなく、きわめて単純な木部材の
仕口加工のみによって、木部材を強力,堅固に接合する
ことができ、接合後に木部材の仕口部間に隙間が生じた
場合でも、木部材間の締め付けを十分行なって締付け力
を高めることができ、さらに、軸組作業も容易,確実か
つ安全に行なうことができる建築物の接合金具であっ
て、特に建築物における土台と大引、あるいは柱と土台
の接合に好適な建築物の接合金具の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の請求項1記載の建築物の接合金具は、木造建築
物における土台と大引の接合に用いる建築物の接合金具
において、上方及び一側方に開口する中空の筐体状をな
し、前記土台の一側面に固定される板状の背部と、この
背部と対向して配設された、前記大引の仕口面に固定さ
れる板状の受け部と、この背部と受け部の側辺を連結す
る板状の側部と、これら背部,受け部及び側部の底面側
を覆う底板と、前記受け部の下端側から外側方向に向か
って突出する受け板と、この受け板の先端に上方に傾斜
して突設されたあご掛けとを備えた金具本体と、この金
具本体の背部を前記土台の一側面に固定する固定ボルト
と、前記金具本体の受け部を前記大引の仕口面に固定す
る軸状固定手段とを具備した構成としてあり、請求項2
記載の建築物の接合金具は、前記金具本体の受け部の下
端を縦方向に延設し、前記底板より下方に突出させた構
成としてある。
【0011】また、請求項3記載の建築物の接合金具
は、木造建築物における柱と土台の接合に用いる建築物
の接合金具において、上方及び一側方に開口する中空の
筐体状をなし、前記柱の一側面に固定される板状の背部
と、この背部と対向して配設された、前記土台の仕口面
に固定される板状の受け部と、この背部と受け部の側辺
を連結する板状の側部と、これら背部,受け部及び側部
の底面側を覆うとともにアンカーボルト孔が穿設された
底板とを備えた金具本体と、この金具本体の背部を前記
の一側面に固定する固定ボルトと、前記金具本体の受
け部を前記土台の仕口面に固定する軸状固定手段とを具
備した構成としてあり、請求項4記載の建築物の接合金
具は、前記金具本体の背部の上端を縦方向に延設した構
成としてある。
【0012】また、請求項5記載の建築物の接合金具
は、前記金具本体の受け部に、前記軸状固定手段が嵌合
する、上方が前記受け部の上端まで開口したあご掛け溝
を形成してあり、請求項6記載の建築物の接合金具は、
前記金具本体の受け部に、前記軸状固定手段が貫通する
固定孔を穿設した構成としてある。
【0013】このような構成からなる本発明の建築物の
接合金具によれば、接合する土台と大引、又は柱と土台
の間に金具本体が介在しているので、金具本体を各木部
材に固定する固定ボルト及び軸状固定手段を締め付ける
ことにより、金具本体と柱や土台の木部材の間に隙間が
生じることもなく、また、接合後に土台等が収縮して隙
間が生じた場合でも、ボルトや軸状固定手段の締付量を
増すことにより、隙間を簡単になくすことができる。
【0014】また、本発明の建築物の接合金具において
は、木部材への取付けをボルト及び棒状部材からなる固
定ボルト及び軸状固定手段のみによって行なっているの
で、木部材への仕口加工は、全て孔開け加工のみとな
る。従って、仕口加工が非常に単純なものとなり、木部
材が集成材のような場合でも、仕口加工を簡単に行なう
ことができ、従来の接合金具で発生していたような仕口
加工の困難性や工具の破損等の問題も生じることがな
い。
【0015】さらに、金具本体に底板を設けることで、
底板が金具本体自体の強度が高められるとともに、金具
本体の受け部に受け板を形成することにより、受け板に
よって大引の底面を保持することが可能となる。これに
よって、金具本体自体がねじれるようなことがなく、か
つ、大引の仕口部下端が受け板によって保持されるの
で、より堅固な木部材の接合力を確保することができ、
特に、従来、下支えが必要であった大引の接合について
も、下支えの手段を設けることなく堅固に土台に接合す
ることが可能となる。
【0016】また、底板の先端部に、上方に傾斜したあ
ご掛けを突設することにより、あご掛けが大引に係合す
るので、金具本体をより堅固に大引に固定することがで
きるとともに、接合作業の際に金具本体と大引の位置合
わせを容易に行なうことができ、接合作業を効率的かつ
安全に行なうことが可能となる。
【0017】また、金具本体の底板にアンカーボルト孔
を形成することにより、建築物の基礎に打ち込まれたア
ンカーボルトの上端にアンカーボルト孔を貫通させるこ
とができ、これによって金具本体を基礎に固定すること
ができる。そして、このように底板にアンカーボルトを
貫通させることによって、金具本体の背部を基礎上の柱
の側面に固定するとともに、受け部側を基礎上の土台の
仕口面に固定することができ、柱と土台と基礎を本金具
によって一体的かつ堅固に接合することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる建築物の接
合金具の実施の形態について、図面を参照して説明す
る。 [第一の実施形態]まず、本発明の建築物の接合金具の
第一の実施形態について説明する。図1は、本発明の建
築物の接合金具の第一実施形態の金具本体を示す全体斜
視図であり、図2及び図3は、同じく軸状固定手段を示
す正面図である。また、図4は、本実施形態の接合金具
により土台と大引を接合した状態の一部截断側面図であ
る。
【0019】これらの図に示すように、本実施形態の接
合金具は、木造建築物における土台と大引の接合に用い
る接合金具であり、図4は、基礎100上に搭載,固定
された土台200に大引300を接合する場合を示して
いる。
【0020】そして、本実施形態の接合金具は、両木部
材を接合する金具本体10と、この金具本体10と両木
部材を固定するための、土台200側に貫通する固定ボ
ルト20及び大引300側に挿入される軸状固定手段3
0,40とを備えた構成としてある。
【0021】金具本体 まず、金具本体について説明する。図1に示すように、
金具本体10は、土台200の一側面に固定される板状
の背部11と、この背部11と対向して配設された板状
の受け部12と、この背部11と受け部12との間に位
置する板状の側部13と、これら背部11,受け部1
2,側部13の底面側を覆う底板14を備えた、上方及
び一側方に開口する中空の筐体状となっている。そし
て、側部13の両辺が背部11及び受け部12の一辺と
連接するとともに、受け部12は下端側が縦方向に延設
してあり、底板14より下方に突出している。
【0022】ここで、この金具本体10は、製作の容易
性,剛性等の観点から、例えば背部11と側部13及び
底板14を、一枚の鉄等の金属からなる板状部材を折り
曲げて形成するとともに、これらより下方向に長尺化し
てある受け部12を溶接するようにしてあり、側部13
と受け部12、側部13と底板14、及び受け部12と
底板14とがそれぞれ溶接により固着してある。
【0023】なお、本実施形態では、このような溶接に
よる金具の固着部分の強度を確保するため、図1に示す
ように、側部13の受け部12との固着側辺を長く形成
し、溶接部分を大きく確保するようにしてある。
【0024】このような金具本体10において、まず背
部11には、ボルト貫通孔11aが形成してあり、後述
するように、固定ボルト20が貫通するようになってい
る。図1に示す本実施形態においては、このボルト貫通
孔11aを、背部11の高さ方向の中心線上からずらし
た二箇所に穿設してある。
【0025】このように、ボルト貫通孔11aを位置を
ずらして穿設することで、後述するように、固定ボルト
20が土台200の中心を貫通するアンカーボルト10
1と干渉しないようになっている。なお、このボルト貫
通孔11aは、接合する木部材の高さ,重量等に応じて
任意の数とすることができ、接合金具の汎用性を向上さ
せる観点から、あらかじめ複数箇所に設けておくことが
好ましい。
【0026】背部11に対向して配設された受け部12
は、図1に示すように下端側が底板14より下方に延設
してある。そして、この受け部12の延設部分にはボル
ト固定孔12aが穿設してあり、また、受け部12の上
部には、上端まで開口したあご掛け溝としての軸固定孔
12bが形成してある。
【0027】そして、このボルト固定孔12aには、後
述する軸状固定手段としての雇いパイプだぼ30の固定
ボルト32が貫通するとともに、あご掛け溝として形成
した軸固定孔12bには、後述する軸状固定手段として
の雇い軸だぼ40の端部が嵌合するようになっている。
【0028】なお、図1に示すように、ボルト固定孔1
2aは、受け部12の下側に一箇所穿設してあるが、上
述した背部11に設けたボルト貫通孔11aと同様、接
合する木部材の高さ,重量等に応じて、縦方向に任意の
数だけ複数形成することもできる。
【0029】また、受け部12を接続する木部材に応じ
てさらに延設して縦方向に長尺化することもでき、その
場合には、このボルト固定孔12aもさらに増設するこ
とができ、より大型の大引300等を土台200に接合
することも可能となる。この場合、受け部12を下方向
に延設する長さは、接合する大引300等の横木部材の
高さに合わせて形成する。
【0030】なお、受け部12の上部にあご掛け溝とし
て形成した軸固定孔12bは、上方に開口した溝状とす
ることにより、後述するように、大引300と土台20
0の接合作業が容易となるという効果がある。また、こ
の軸固定孔12bは、上方に開口したあご掛け溝としな
いで、通常の貫通孔として穿設することもできるが、作
業の容易性と木部材の接合強度を高めるためには、あご
掛け溝と貫通孔とを併設することが好ましい。
【0031】そして、この受け部12の下端部に受け板
15が形成されている。この受け板15は、受け部12
の下端縁に、外側方向、すなわち、背部11と反対の大
引300側方向に向かって水平に突出する板状部材であ
る。このように金具本体10の受け部12に受け板15
を形成することにより、図4に示すように、受け板15
によって大引300の端部底面を保持することが可能と
なる。
【0032】これによって、図4に示すように、金具本
体10の背部11を基礎100上の土台300の側面に
固定するとともに、受け部12を大引300の仕口面
固定することで、受け板15が大引300の底面をしっ
かりと保持した状態で、土台200と大引300とを堅
固に接合することができる。
【0033】さらに、この受け板15の先端には、図1
及び図4に示すように、上方に傾斜したあご掛け15a
を突設してある。この場合、図4に示すように、大引3
00の仕口部底面側には、あご掛け15aが係合する切
り欠き302を形成しておく。
【0034】このように、受け板15の先端にあご掛け
15aを突設することにより、大引300の底面切り欠
き302にあご掛け15aを係合させることで、木部材
の接合の際の大引300の金具本体10への位置合わせ
を容易に行なうことができるとともに、木部材の接合の
際の作業性,安全性の向上を図ることができる。
【0035】また、あご掛け15aは上方に傾斜して突
設してあるので、大引300を受け板15に落とし込ん
で搭載した際、あご掛け15aが切り欠き302に係合
し、これによって、大引300を金具本体10側に引き
寄せることができ、大引300をさらに堅固に金具本体
10側に固定することが可能となる。なお、本実施形態
では、図1に示すように、大引300の切り欠き302
への係合を容易にするため、あご掛け15aの先端両角
を落とした形状にしてある。
【0036】底板14は、図1に示すように、金具本体
10の背部11及び受け部12の対向間の底面側を覆う
大きさに形成してあり、本実施形態では、上述したよう
に背部11及び側部13と同一の板状部材を折り曲げて
形成され、側部13及び受け部12の内側面に溶接など
の手段により固着してある。
【0037】この底板14は、金具本体10自体の補強
部材としての役割を果たしている。すなわち、底板14
を金具本体10の下面側に配設することで、背部11と
受け部12及び側部13とを一体的に固定することがで
き、金具本体10自体の強度が高められる。
【0038】これによって、例えば金具本体10の側部
13に対してねじり方向の力が作用するような場合で
も、金具本体10がねじれたり曲がったりすることがな
く、大引300等の横木部材の横振れ防止の強化を図る
ことができる。
【0039】また、底板14を設けることによって、土
台200と大引300の接合作業の際に、底板14の端
部が基礎100上に搭載された状態で作業が行なえるの
で、大引300を保持する労力が軽減され、接合作業が
より容易かつ安全に行なえるとともに、金具本体10の
接続強度もより向上し、金具本体10の安定性を高める
という効果もある。
【0040】なお、図1に示すように、本実施形態の金
具本体10では、底板14に結露防止用の貫通孔14a
が穿設してあるが、これについては適宜増減又は省略が
可能である。
【0041】固定ボルト 次に、金具本体10を土台200に固定するための固定
ボルト20について説明する。図4に示すように、固定
ボルト20は、土台200の一側面から挿入されて、こ
の土台200を貫通して他側面から先端が突出するボル
ト21と、このボルト21の先端に螺合するナット22
とからなる。
【0042】そして、この固定ボルト20は、土台20
0を貫通したボルト21の先端が、金具本体10の背部
11に形成したボルト貫通孔11aを貫通するととも
に、このボルト21の先端にナット22が螺合すること
により、金具本体10を土台200の一側面に固定する
ようになっている。なお、この固定ボルト20は、金具
本体10のボルト貫通孔11aの数に応じて任意の数と
することができ、本実施形態では二本のボルト21とこ
れに螺合するナット22となっている。
【0043】軸状固定手段 次に、金具本体10の受け部12と大引300とを固定
するための軸状固定手段について説明する。図2,図3
及び図4に示すように、本実施形態では、軸状固定手段
として雇いパイプだぼ30と雇い軸だぼ40の二種類の
ものを用いている。
【0044】まず、図2に示す軸状固定手段の一つであ
る雇いパイプだぼ30について説明する。この雇いパイ
プだぼ30を構成する中空状の軸部材31は、後述する
ように、大引300の仕口部に形成しただぼ挿入穴30
1から挿入される。この軸部材31の一端側の内周に
は、ねじ31aが形成してあり、他端側には、軸部材3
1の長手軸方向と直交して貫通するピン孔31bが穿設
してある。なお、この軸部材31は、通常、円筒状をな
し、鋼鉄製のものが好ましい。
【0045】32は固定ボルトで、軸部材31の一端側
内周に形成したねじ31aに螺合する。33は軸部材3
1のピン孔31bに貫通する貫通ピンで、後述するよう
に、大引300の側面に形成したピン貫通孔から打ち込
まれて、ピン孔31bに貫通するようになっている。こ
の貫通ピン33は、通常、鋼鉄製の円柱状のものを使用
し、大引300からピン孔31bへの打ち込みを容易に
するため、先端をテーパ状に形成することが好ましい。
【0046】なお、この雇いパイプだぼ30の軸部材3
1は、上述したように、円筒状となっているが、固定ボ
ルト32が内周に螺合することができれば、必ずしも全
体が筒状のものでなくてもよく、少なくとも一端側が中
空状であればよく、例えば固定ボルト32の螺合部分の
みに雌ねじを切った円柱状の軸部材とすることもでき
る。
【0047】次に、図3に示す、もう一つの軸状固定手
段である雇い軸だぼ40について説明する。この雇い軸
だぼ40を構成する軸部材41は、円柱状となってお
り、雇いパイプだぼ30と同様、大引300の仕口部の
だぼ挿入穴301から挿入されて、大引300に固定さ
れるようになっている。
【0048】この軸部材41の一端側外周には、ねじ4
1aが形成してあり、他端側には、軸部材41の長手軸
方向と直交して貫通するピン孔41bが穿設してある。
なお、この軸部材41も、雇いパイプだぼ30と同様、
鋼鉄製のものを使用することが好ましい。
【0049】42は固定ナットで、軸部材41の一端側
外周のねじ41aに螺合するようになっている。43は
貫通ピンで、雇いパイプだぼ30と同様、大引300の
側面に形成したピン貫通孔から打ち込まれて、軸部材4
1のピン孔41bに貫通するようになっている。
【0050】なお、この雇い軸だぼ40の軸部材41は
円柱状となっているが、固定ナット42は軸部材41の
外周に螺合するため、軸部材41は必ずしも円柱状でな
くてもよく、中空筒状等とすることもできる。その場合
には、軸部材41のねじ41a側の強度を高めるため、
ねじ41aを形成した側の中空部分に補強用の丸鋼等を
嵌入することが望ましい。
【0051】また、貫通ピン43は、上述した貫通ピン
33と同様、鋼鉄製のものを使用し、大引300からピ
ン孔41bへの打ち込みを容易にするため、先端をテー
パ状に形成することが好ましい。
【0052】そして、以上のような構成からなる雇いパ
イプだぼ30及び雇い軸だぼ40は、上述した受け部1
2に形成したボルト固定孔12a及び軸固定孔12bに
貫通及び嵌合することにより、受け部12に固定される
ようになっている。
【0053】すなわち、雇いパイプだぼ30は、受け部
12の下側に穿設したボルト固定孔12aに固定ボルト
32が貫通するので、この固定ボルト32が軸部材31
のねじ31aに螺合することにより受け部12に固定さ
れる。
【0054】また、雇い軸だぼ40は、受け部12の上
側に形成したあご掛け溝とした軸固定孔12bに、軸部
材41のねじ41aを形成した一端側が直接嵌合し、こ
の軸部材41の一端側のねじ41aに固定ナット42が
螺合することによって、受け部12に堅固に固定される
ようになっている。
【0055】次に、このような構成からなる本実施形態
の接合金具の使用態様について説明する。まず、あらか
じめ基礎100上に搭載されアンカーボルト101によ
って固定された土台200に、固定ボルト20が貫通で
きるように、金具本体10を取り付ける面から反対側の
面に貫通するボルト孔を形成する。また、大引300に
も、仕口部に軸状固定手段30,40が挿入されるだぼ
挿入穴301を形成するとともに、側面に貫通ピン3
3,43が貫通するピン貫通孔を形成しておく。
【0056】次に、土台200に形成したボルト孔に固
定ボルト20のボルト21を貫通させ、土台200を貫
通して突出したボルト21の先端部分に、金具本体10
の背部11に形成した貫通孔11aを嵌め込み、その後
ボルト21の先端にナット22を締め付ける。この際、
固定ボルト20には、緩み止めのため、ワッシャを貫通
させておくことが望ましい。
【0057】これにより、金具本体10は、背部11が
土台200の一側面に固定される。なお、図4に示すよ
うに、本実施形態では、同一の固定ボルト20によって
土台200の他側にも金具本体10が固定してあり、土
台200の両側に二つの金具本体10が取り付けてある
が、これを片側のみとすることもできる。
【0058】次いで、大引300の仕口部に形成しただ
ぼ挿入穴301に、雇いパイプだぼ30及び雇い軸だぼ
40の軸部材31,41をピン孔31b,41bを設け
た側から挿入する。そして、大引300の側面に形成し
たピン貫通孔から貫通ピン33,43を打ち込んで軸部
材31,41のピン孔31b,41bを貫通させる。こ
のとき、雇い軸だぼ40には固定ナット42を仮締めし
た状態で取り付けておく。
【0059】これにより、雇いパイプだぼ30と雇い軸
だぼ40は、大引300にしっかりと固定される。この
際、図4に示すように、大引300の下側には雇いパイ
プだぼ30を挿入し、上側には雇い軸だぼ40を挿入す
る。なお、通常ここまでの作業は工場等の作業環境の良
い場所で行なっておくことができるので、施工現場の危
険がともなう場所での面倒な作業を省くことができ、安
全性,作業効率の観点からも好ましい。
【0060】施工現場では、大引300に貫通させてあ
る軸状固定手段30,40を、土台200に固定した金
具本体10の受け部12の孔に位置合わせするととも
に、受け板15に突設してあるあご掛け15aに大引3
00の切り欠き302を位置合わせして、土台200と
大引300を接合する。
【0061】このとき、大引300の上側に挿入した雇
い軸だぼ40が受け部12のあご掛け溝として形成した
軸固定孔12bに嵌合するとともに、大引300を受け
板15に落とし込んで搭載した際、あご掛け15aが切
り欠き302に係合して大引300が金具本体10側に
引き寄せられる。これによって、大引300と土台20
0は簡単に接合位置を合わせることができ、大引300
の接合を容易に行なうことができる。
【0062】また、雇い軸だぼ40には固定ナット42
を仮締めしてあるとともに、受け板15のあご掛け15
aが大引300の切り欠き302に係合しているので、
大引300が受け部12から外れることがなく、作業を
安全に効率よく行なえる。さらに、大引300の仕口下
端部は受け板15によって受けられており、大引300
を保持する労力が軽減され、接合作業を容易に行なうこ
とができる。
【0063】その後、金具本体10の側部13と反対側
の開口面から固定ボルト32を雇いパイプだぼ30のね
じ31aに螺合させるとともに、固定ナット42を締め
付けて本締めする。
【0064】なお、図4に示すように、本実施形態で
は、雇い軸だぼ40に固定ナット42を螺合する際、角
座金44を介在させて螺合している。上述したように、
雇い軸だぼ40が嵌合するあご掛け溝は、上方が開口し
ているため、固定ナット42を本締めした際、この開口
部分によって固定ナット42の締付力が不足することも
考えられる。
【0065】そこで、雇い軸だぼ40に角座金44を貫
通させ、固定ナット42と受け部12の間に介在させる
ことによって、固定ナット42の締付力を十分に確保で
きるようにしてある。これで土台200と大引300の
接合が完了する。
【0066】なお、特に図示していないが、ナット22
や固定ボルト32、あるいは固定ナット42など、本明
細書中における接合金具の締付部分には、緩み防止のた
め、ワッシャを介在させることが望ましい。
【0067】このようにして接合した木部材は、大引3
00が、金具本体10を介して土台200の側面に堅固
に接合される。特に、雇い軸だぼ40の一端が、受け部
12のあご掛け溝として形成した軸固定孔12bに直接
嵌合するので、大引300の仕口面は金具本体10にし
っかりと固定される。
【0068】また、接合後に木部材が乾燥などにより収
縮した場合でも、金具本体10の側部13と反対側の
口部から固定ボルト20,雇いパイプだぼ30及び雇い
軸だぼ40を固定しているナット22,固定ボルト32
及び固定ナット42を締め付けることにより、締付量を
調整することができるので、木部材の接合が緩んだり
ることもない。
【0069】さらに、本実施形態の接合金具によれば、
木部材への取付けを、軸状の固定ボルト20及び雇いパ
イプだぼ30,雇い軸だぼ40のみにより行なっている
ので、土台200及び大引300への仕口加工は、全て
孔又は穴開け加工のみとなる。従って、仕口加工が非常
に単純なものとなり、木部材が集成材のような場合で
も、仕口加工を簡単に行なうことができ、従来の接合金
具で発生していたような仕口加工の困難性や工具の破損
等の問題も生じることがない。
【0070】[第二の実施形態]次に、本発明の建築用
接合金具の第二の実施形態について、図5及び図6を参
照して説明する。図5は、本発明の建築物の接合金具の
第二の実施形態の金具本体を示す全体斜視図であり、図
6は、本実施形態の接合金具により柱と土台を接合した
状態の一部截断側面図である。
【0071】これらの図に示すように、本実施形態の接
合金具は、上述した第一の実施形態の接合金具の変形実
施形態であり、建築物の基礎100上において柱400
と土台200を固定する場合に用いる接合金具である。
この本実施形態の金具本体10は、背部11を上方に延
設するとともに、受け部12については下方に延設する
ことなく、背部11及び側部13と下端が同一平面に位
置するように形成してある。
【0072】また、底板14のほぼ中心にアンカーボル
ト孔14bを穿設してある。さらに、受け部12には、
軸状固定手段の取付孔としてボルト固定孔12aが一箇
所に形成してあり、上述した雇いパイプだぼ30が取り
付けられるようになっている。
【0073】このように形成された本実施形態の金具本
体10によれば、図6に示すように、金具本体10を建
築物の基礎100の上面に搭載できるとともに、基礎1
00に打ち込まれたアンカーボルト101の上端にアン
カーボルト孔14bを貫通させることができ、金具本体
10を基礎100に直接固定することが可能となる。
【0074】このように、底板14にアンカーボルト1
01を貫通させることによって、金具本体10の背部1
1を柱400の側面に固定するとともに、受け部12を
基礎100上に搭載された土台200の仕口面に固定す
ることができ、これによって、柱400と土台200及
び基礎100を本金具によって一体的かつ堅固に接合す
ることができる。
【0075】また、本実施形態では、横木部材である土
台200を基礎100上に搭載した状態で接合作業を行
なえるので、横木部材を保持しながら接合作業を行なう
必要がなくなる。このため、受け部12に形成する軸状
固定手段の取付孔については、位置合わせ等の作業性を
考慮して第一実施形態におけるような上方に開口したあ
ご掛け溝12bとする必要がなく、単なる貫通孔である
ボルト固定孔12aとすることができる。
【0076】これにより、本実施形態の金具本体10で
は、雇いパイプだぼ30が、ボルト固定孔12aに貫通
して保持されることになるので、基礎100上に搭載さ
れただけの土台200の上がり防止手段としても機能
し、従来使用されていた土台の上がり防止手段として土
台に打ち込まれていたアンカーボルトを省略することが
可能となり、また、大地震等が発生しても雇いパイプだ
ぼ30が金具本体10から外れるようなこともない。ま
た、土台200にアンカーボルトを使用する場合でも、
本金具が土台200の上がり防止手段として機能してい
るので、土台200の任意の位置に自由にアンカーボル
トを打ち込むことが可能となり、コストダウンや作業性
の向上に資することができる。
【0077】さらに、本実施形態の接合金具は、基礎1
00上に搭載された状態で背部11を柱400と接合す
るようになっているので、図6に示すように、柱400
側に固定される背部11を、受け部12及び側部13よ
り高さ方向に長尺に形成することができる。これによっ
て、ボルト貫通孔11aを高さ方向に複数形成すること
ができ、背部11をより堅固に柱400に固定すること
が可能となる。
【0078】なお、本実施形態の金具では、金具本体1
0の背部11を他の部分より長尺化してあるので、金具
の製作を容易にするため、背部11と底板14を曲折形
成により一体的に形成するとともに、受け部12と側部
13を同様に曲折形成して一体的に形成し、これら二つ
の部材を溶接等によって固着して金具本体10を形成し
ている。
【0079】このように二つの部材を固着して金具本体
10を形成する場合、金具全体の強度をより強く確保す
るため、図6に示すように、側部13の底面を底板14
の上面端部に搭載することが好ましい。これ以外の金具
の構造,各木部材への固定手段等については、上述した
第一の実施形態の場合とほぼ同様である。
【0080】[第三の実施形態]次に、本発明の建築用
接合金具の第三の実施形態について、図7及び図8を参
照して説明する。図7は、本発明の建築物の接合金具の
第三の実施形態の金具本体を示す全体斜視図であり、図
8は、本実施形態の接合金具により柱と土台を接合した
状態の一部截断側面図である。
【0081】これらの図に示すように、本実施形態の接
合金具は、上述した第二の実施形態の接合金具の変形実
施形態であり、金具本体10の背部11を上方に延設す
ることなく、上端が背部11及び側部13と同一平面に
位置するように形成してあり、金具本体10の全体が方
形状となっている。これ以外の金具の構造,各木部材へ
の固定手段等については、上述した第二の実施形態の場
合とほぼ同様である。
【0082】上述した第二実施形態の接合金具の場合、
長尺化された背部11が土台200より上方に突出し、
柱400の側面に露出していたが、本実施形態によれ
ば、背部11が受け部12,側部13と同一の高さとな
っており、土台200の上部側に露出するようなことが
なくなる。これにより、特に建築物内部の仕切り等の設
置が背部11が露出することにより干渉,規制を受ける
ことがなくなる。
【0083】
【発明の効果】以上のように、本発明の建築物の接合金
具によれば、簡易な構造のみからなる金具によって、溝
状などの複雑かつ困難な仕口を必要とすることなく、き
わめて単純な木部材の仕口加工のみによって、隙間が生
じることなく木部材を強力,堅固に接合することがで
き、さらに、軸組作業も容易,確実かつ安全に行なうこ
とができ、特に建築物における土台と大引、柱と土台の
接合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の建築物の接合金具の第一の実施形態の
金具本体を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の建築物の接合金具の第一の実施形態の
軸状固定手段を示す正面図である。
【図3】本発明の建築物の接合金具の第一の実施形態の
軸状固定手段を示す正面図である。
【図4】本発明の建築物の接合金具の第一の実施形態の
接合金具により土台と大引を接合した状態の一部截断側
面図である。
【図5】本発明の建築物の接合金具の第二の実施形態の
金具本体を示す全体斜視図である。
【図6】本発明の建築物の接合金具の第二の実施形態の
接合金具により柱と土台を接合した状態の一部截断側面
図である。
【図7】本発明の建築物の接合金具の第三の実施形態の
金具本体を示す全体斜視図である。
【図8】本発明の建築物の接合金具の第三の実施形態の
接合金具により柱と土台を接合した状態の一部截断側面
図である。
【図9】従来の建築物の接合金具を示す全体分解斜視図
である。
【符号の説明】
10…金具本体 11…背部 12…受け部 13…側部 14…底板 15…受け板 15a…あご掛け 20…固定ボルト 30…雇いパイプだぼ 40…雇い軸だぼ 100…基礎 200…土台 300…大引 400…柱

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 木造建築物における土台と大引の接合に
    用いる建築物の接合金具において、 上方及び一側方に開口する中空の筐体状をなし、前記土
    の一側面に固定される板状の背部と、この背部と対向
    して配設された、前記大引の仕口面に固定される板状の
    受け部と、この背部と受け部の側辺を連結する板状の側
    部と、これら背部,受け部及び側部の底面側を覆う底板
    と、前記受け部の下端から外側方向に向かって突出する
    受け板と、この受け板の先端に上方に傾斜して突設され
    たあご掛けとを備えた金具本体と、 この金具本体の背部を前記土台の一側面に固定する固定
    ボルトと、 前記金具本体の受け部を前記大引の仕口面に固定する軸
    状固定手段と、 を具備したことを特徴とする建築物の接合金具。
  2. 【請求項2】 前記金具本体の受け部の下端を縦方向に
    延設し、前記底板より下方に突出させた請求項1記載の
    建築物の接合金具。
  3. 【請求項3】 木造建築物における柱と土台の接合に用
    いる建築物の接合金具において、 上方及び一側方に開口する中空の筐体状をなし、前記柱
    の一側面に固定される板状の背部と、この背部と対向し
    て配設された、前記土台の仕口面に固定される板状の受
    け部と、この背部と受け部の側辺を連結する板状の側部
    と、これら背部,受け部及び側部の底面側を覆う、アン
    カーボルト孔が穿設された底板とを備えた金具本体と、 この金具本体の背部を前記柱の一側面に固定する固定ボ
    ルトと、 前記金具本体の受け部を前記土台の仕口面に固定する軸
    状固定手段と、 を具備したことを特徴とする建築物の接合金具。
  4. 【請求項4】 前記金具本体の背部の上端を縦方向に延
    設した請求項3記載の建築物の接合金具。
  5. 【請求項5】 前記金具本体の受け部に、前記軸状固定
    手段が嵌合する、上方が前記受け部の上端まで開口した
    あご掛け溝を形成した請求項1,2,3又は4記載の建
    築物の接合金具。
  6. 【請求項6】 前記金具本体の受け部に、前記軸状固定
    手段が貫通する固定孔を穿設した請求項1,2,3,4
    又は5記載の建築物の接合金具。
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