JP3183654U - 釣糸 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた表面滑性及び耐水性を有すると共に、これらの物性が釣糸全体に亘って略均一な釣糸を提供する。
【解決手段】 本考案の釣糸1は、長手方向に垂直な断面が海島構造を有し、前記海島構造の海部分11を形成する樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、前記海島構造の島部分12を形成する樹脂が、フッ素系樹脂を含み、前記島部分12の平均径長が、2.0μm未満であると共に、その最大径長が、25.0μm以下である。
【選択図】 図1

Description

本考案は、魚釣り用の釣糸に関する。
従来、ナイロン6やナイロン66を主成分とするポリアミド系モノフィラメントからなる釣糸(ポリアミド系釣糸)が知られている。
ポリアミド系釣糸は、柔軟性、機械的強度、及び適度な伸張性があることから、磯釣りや投げ釣り用の釣糸として広く用いられている。
しかしながら、ポリアミド系釣糸は、表面滑性が悪いという問題があった。そのため、ポリアミド系釣糸を長時間使用した場合、水中において釣糸が岩などの障害物と擦過した際に釣糸の表面が摩耗し易い。釣糸の表面が摩耗すると、釣糸の引張強度及び引張伸度は著しく低下する。そのため、魚がヒットした際に糸切れを生じ、魚を取り逃がす可能性が高まるという問題点があった。
さらに、ポリアミド樹脂は、親水性であるため、撥水性が低い。そのため、ポリアミド系釣糸を長時間使用した場合、釣糸が水膨潤による強度低下を生じるという問題があった。
このような問題点を解決するため、特許文献1には、ポリアミド樹脂に対し、フッ素系樹脂を混練した混練樹脂を溶融紡糸して得られたモノフィラメントからなる釣糸が開示されている。
フッ素系樹脂は、表面滑性に優れた疎水性の樹脂である。そのため、この樹脂を含む混練樹脂を釣糸の材料として用いることにより、表面滑性及び耐水性が向上した釣糸を形成することができる。
しかし、前記混練樹脂を釣糸の材料として用いた場合、釣糸の表面滑性、及び耐水性等の物性が、釣糸の長手方向に亘って変動する(即ち、釣糸の物性が不均一になる)という問題がある。
釣糸の物性が不均一であると、釣糸の糸切れ頻度を十分に改善できない。そのため、釣糸を長期間に亘って安定的に使用することができないという問題がある。
特開平10−18127号公報
本考案の課題は、優れた表面滑性及び耐水性を有すると共に、これらの物性が全体に亘って略均一な釣糸を提供することである。
本考案者は、混練樹脂を釣糸の形成材料として用いる際に、その物性が不均一となる原因について鋭意研究を行った。その結果、釣糸の物性の不均一性は、釣糸内部において、ポリアミド樹脂とフッ素系樹脂が両樹脂の界面において分離し易いことに起因することを見出した。
つまり、親水性であるポリアミド樹脂中に疎水性であるフッ素系樹脂を混練すると、両樹脂の境界における接着性が悪くなり、釣糸内部においてポリアミド樹脂とフッ素系樹脂が分離し易い。両樹脂の接着性が悪いと、釣糸の表面滑性、耐水性等の物性が不均一になる。
本考案者は、上記知見に基づき、ポリアミド樹脂中にフッ素系樹脂を微粒子状に分散させることにより、フッ素系樹脂とポリアミド樹脂が釣糸内部において分離し難くなり、その結果、物性が略均一な釣糸が得られることを見出した。
本考案の釣糸は、長手方向に垂直な断面が海島構造を有し、前記海島構造の海部分を形成する樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、前記海島構造の島部分を形成する樹脂が、フッ素系樹脂を含み、前記島部分の平均径長が、2.0μm未満であると共に、その最大径長が、25.0μm以下である。
本考案の好ましい釣糸は、前記断面内において、第1単位領域に含まれる島部分の個数(A)と、第2単位領域に含まれる島部分の個数(B)との比率(A:B)が、3:5〜5:3である。但し、前記第1単位領域及び前記第2領域は、前記断面内においてそれぞれ無作為に抽出された独立した領域であり、両単位領域は、面積が同じであり、且つ、それぞれの単位領域が前記断面の面積の10%以上の面積を有する。
本考案の好ましい釣糸は、前記第1単位領域に含まれる島部分の総面積(C)と、前記第2単位領域に含まれる島部分の総面積(D)との比率(C:D)が、3:5〜5:3である。また、さらに好ましくは、前記島部分の最大径長が、15.0μm以下である。
本考案の好ましい釣糸は、前記フッ素系樹脂の配合量が、10質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下である。さらに好ましくは、前記ポリアミド樹脂の相対粘度が、3.0〜5.0である。
本考案の好ましい釣糸は、前記フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びポリクロロトリフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種を含んでいる。また、好ましくは、前記ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。
本考案の釣糸は、釣糸の長手方向に垂直な断面が海島構造を有しており、島部分(フッ素系樹脂)の平均径長が2.0μm未満であると共に、その最大径長が25.0μm以下である。即ち、本考案の釣糸は、ポリアミド系樹脂中において、フッ素系樹脂が微粒子状に分散している。従って、本考案の釣糸は、優れた表面滑性及び耐水性を有すると共に、それらの物性が釣糸全体に亘って略均一である。従って、釣糸を安定的に長期間使用することができる。
本考案の釣糸をその長手方向に垂直な方向に切断した拡大断面図。 本考案の釣糸の断面内に含まれる1つの島部分を示す拡大図。 摩擦係数の測定方法を示す概略側面図。 (a)は、実施例1に係る釣糸の断面を示す写真図であり、(b)は、比較例4に係る釣糸の断面を示す写真図。
本考案の釣糸は、その長手方向に垂直な断面が海島構造を有する。海部分を構成する樹脂は、ポリアミド樹脂を含み、島部分を構成する樹脂は、フッ素系樹脂を含む。そして、島部分の平均径長は、2.0μm未満であり、島部分の最大径長は、25.0μm以下である。以下、本考案の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本考案の釣糸1の断面図である。本断面図は、釣糸1の長手方向に垂直な断面を表している。図1に示すように、本考案の釣糸1は、断面が海島構造を有する。
ここで、海島構造とは、釣糸1を構成する主要材料である樹脂中に、主要材料とは別の樹脂が点在していることをいう。主要材料である樹脂は、断面内で海部分11を構成しており、点在した樹脂は、断面内で島部分12を構成している。
釣糸の断面形状は、特に限定されない。断面形状は、図1に示すように円形であってもよいし、楕円形であってもよいし、多角形であってもよいし、不定形であってもよい。
もっとも、釣糸の表面が角張っていると、水中において釣糸が障害物に引っかかり易くなり、その結果、釣糸が摩耗し易くなる虞がある。
このような観点から、釣糸の断面形状は、好ましくは円形又は楕円形であり、より好ましくは円形である。
断面内において、島部分の平均径長は、2.0μm未満であり、好ましくは1.8μm以下である。また、島部分の平均径長の下限は特に限定されないが、好ましくは0.1μmであり、より好ましくは0.5μmであり、特に好ましくは1.0μmである。
島部分の最大径長は、25.0μm以下であり、好ましくは20.0μm以下であり、より好ましくは15.0μm以下であり、特に好ましくは10.0μm以下である。また、島部分の最大径長の下限は特に限定されないが、好ましくは3.0μmであり、より好ましくは5.0μmである。
ここで、島部分の径長は、島部分の外縁の第1点と、前記第1点とは独立した島部分の外縁の第2点と、を直線で結んだ距離である。このような直線は無数に存在するが、無数に存在する直線のうち距離が最大となるものが本考案における島部分の径長に相当する。
図2は、釣糸の断面内にある一島部分を示す拡大図である。図2に示す通り、島部分12は不定形であり、矢印Xが、島部分の径長に相当する。矢印Xは、島部分12の外縁の第1点12aと、前記第1点12aとは独立した島部分の外縁の第2点12bを直線で結んだ線のうち、距離が最大となるものである。
なお、島部分が、円形である場合、島部分の径長は、円の直径であり、島部分が楕円形である場合、島部分の長径であり、島部分が正方形である場合、島部分の径長は対角線の長さに相当する。
島部分の平均径長は、釣糸の断面内に存在する全ての島部分の径長の平均であり、島部分の最大径長は、断面内に存在する全ての島部分の径長のうち、最大の島部分の径長である。
本考案では、島部分の平均径長が2.0μm未満であり、且つ、その最大径長が25.0μm以下である。このように、本考案では、釣糸内部において、島部分が微小な粒状(微粒子状)に分散している。そのため、島部分と海部分が分離し難い。従って、本考案の釣糸は、優れた表面滑性及び耐水性を有すると共に、それらの物性が釣糸の長手方向全体に亘って略均一である。
本考案において、釣糸の径長は特に限定されず、釣糸の用途に応じて適宜変更することができる。釣糸の径長は、島部分の径長と同様の方法によって測定される値である。即ち、釣糸の径長は、その断面の外縁の第1点と前記第1点と独立した断面の外縁の第2点を結んだ無数の直線のうち、長さが最大となる直線の距離に相当する。
釣糸の径長は特に限定されず、釣糸の用途により適宜変更することができる。もっとも、釣糸の径長は、通常、0.05mm〜5.0mmであり、好ましくは0.1mm〜2.0mmである。なお、通常、釣糸の断面は円形である場合、円の直径が釣糸の径長に相当する。
また、釣糸の断面の面積に対して島部分の総面積が占める割合は、好ましくは0.01%〜10%であり、より好ましくは0.01%〜6%であり、特に好ましくは0.01%〜5%である。。
この割合は、式:島部分の総面積/断面の面積×100、で表される値である。式中において、島部分の総面積とは断面内に分散した島部分の面積を全て合わせた値であり、断面の面積とは島部分の総面積と海部分の面積を合わせた値である。
島部分の総面積が占める割合が0.01%を下回ると、釣糸内部におけるフッ素系樹脂の絶対量が少ないため、釣糸の表面滑性及び耐水性を向上できない虞がある。他方、島部分の総面積が占める割合が10%を上回ると、ポリアミド樹脂とフッ素系樹脂の混練性を高めることが難しくなり、ポリアミド樹脂とフッ素系樹脂が分離し易くなり、釣糸全体に亘って物性を均一化できない虞がある。
釣糸全体に占めるフッ素系樹脂の配合量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。フッ素樹脂の配合量が10質量%を上回ると、ポリアミド樹脂とフッ素系樹脂の混練性を高めることが難しくなり、釣糸全体に亘って物性を均一化できない虞がある。
また、本考案において、海島構造は、釣糸の長手方向に連続的に形成されていてもよく、釣糸の長手方向に不連続に形成されていてもよい。
「海島構造が釣糸の長手方向に連続的に形成されている」とは、釣糸の一断面内における島部分の形状及び配置と、前記一断面から釣糸の長手方向に位置ズレした他断面内における島部分の形状及び配置が同じであることをいう。即ち、どの部分で断面をとっても島部分の形状及び配置が同じであることをいう。
他方、「海島構造が釣糸の長手方向に不連続に形成されている」とは、釣糸の一断面内における島部分の形状及び配置と、前記一断面から釣糸の長手方向に位置ズレした他断面内における島部分の形状及び配置が異なることをいう。即ち、断面をとる部分によって島部分の形状及び配置が異なっていることをいう。
何れの場合においても、島部分の平均径長が2.0μm未満であり、島部分の最大径長が25.0μm以下であれば、表面滑性や耐水性等の物性を釣糸全体に亘って略均一にすることができる。
もっとも、後述する本考案の釣糸の製造方法を考慮すると、海島構造は、釣糸の長手方向に不連続に形成されていることが好ましい。
本考案では、釣糸の断面内において、島部分が略均一に分散していることが好ましい。「島部分が略均一に分散している」とは、断面内において島部分の分布頻度が略均一であることをいう。以下、図1を参照しつつ説明する。
図1において、釣糸1の断面内において破線で囲われた部分は、第1単位領域21と第2単位領域22である。本考案では、第1単位領域21に含まれる島部分の個数(A)と、第2単位領域22に含まれる島部分の個数(B)の比率(A:B)が、3:5〜5:3であり、好ましくは4:5〜5:4である。島部分の比率が、本範囲内にある場合、断面内において島部分が略均一に分散しているといえる。
図1において、第1単位領域21に含まれる島部分の個数(A)は、10個であり、第2単位領域22に含まれる島部分の個数(B)は、10個である。従って、島部分の比率(A:B)は、1:1となる。
なお、第1単位領域と第2単位領域は、断面内においてそれぞれ無作為に抽出された独立した領域である。第1単位領域21と第2単位領域22は、同面積である。第1単位領域と第2単位領域の外縁形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形、又は不定形等を採用することができる。図1では、第1単位領域21と第2単位領域22の外縁形状は長方形である。また、図1では、第1単位領域21と第2単位領域22の外縁形状は同じであるが、両単位領域21,22の外縁形状は互いに異なっていてもよい。
図1において、第1単位領域21と第2単位領域22は、断面内において互いの領域が重なり合わないように抽出されている。しかし、第1単位領域21と第2単位領域22は、互いの領域の一部が重なり合うように抽出されてもよい。もっとも、第1単位領域21と第2単位領域22が完全に重なり合うように両領域を抽出することはできない。
また、第1単位領域及び第2単位領域は、それぞれ釣糸の断面の面積の10%以上の面積を有する。第1単位領域及び第2単位領域の面積が釣糸の断面の面積の10%を下回ると、両単位領域内に含まれる島部分の個数が0になる可能性があり、このような場合、第1単位領域と第2単位領域に含まれる島部分の比率(A:B)を算出することができないためである。
なお、第1単位領域と第2単位領域の各面積は、釣糸の断面の面積(100%)よりも小さい。両単位領域の面積が、釣糸の断面の面積と同じである場合、第1単位領域と第2単位領域が完全に重なり合うためである。
本考案の釣糸は、断面内のどの部分で第1単位領域及び第2単位領域を抽出したとしても、両単位領域の島部分の数の比率(A:B)は、3:5〜5:3である。つまり、両単位領域の抽出場所に関わらず、両単位領域の島部分の数の比率(A:B)は、3:5〜5:3である。
両単位領域に含まれる島部分の比率(A:B)が、3:5〜5:3であれば(即ち、島部分が断面内において略均一に分散していれば)、表面滑性や耐水性等の物性を釣糸全体に亘ってより均一化することができる。
また、本考案では、好ましくは第1単位領域に含まれる島部分の総面積(C)と、第2単位領域に含まれる島部分の総面積(D)の比率(C:D)が、3:5〜5:3であり、好ましくは4:5〜5:4である。
両単位領域に含まれる島部分の面積の比率(C:D)が、本範囲にあれば、釣糸の表面滑性や耐水性等の物性をより釣糸全体に亘ってより均一化することができる。
本考案において、断面内に含まれる海部分は、ポリアミド樹脂を主成分として含んでいれば特に限定されない。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6(ポリカプロラクタム)、ナイロン12(ポリラウロラクタム)、ナイロン66(ポリヘキサメチレンジアジパミド)、ナイロン69(ポリヘキサメチレンアゼラミド)、ナイロン610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ナイロン46、ナイロン6/66(ナイロン6とナイロン66の共重合体)、ナイロン6/12(ナイロン6とナイロン12の共重合体)、ナイロン11(11−アミノウンデカン酸の縮合生成物)等の脂肪族系ポリアミド樹脂;ナイロン6IP(ポリヘキサメチレンイソフタラミド)、ナイロンMXD6(メタキシレンジアミン/アジピン酸共重合体)等の芳香族系ポリアミド樹脂;等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いることもできれば、2種以上を混合して用いることもできる。
本考案では、ポリアミド樹脂は、好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、又はナイロン12であり、より好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、又はナイロン6/66であり、特に好ましくは、ナイロン6/66である。
ナイロン6/66中におけるナイロン6とナイロン66の配合比(質量基準)は特に限定されないが、通常、98:2〜30:70であり、好ましくは95:5〜80:20であり、より好ましくは90:10〜70:30である。
また、ポリアミド樹脂の相対粘度は、3.0〜5.0であることが好ましく、より好ましくは3.0〜4.0であり、特に好ましくは2.0〜4.0である。
なお、相対粘度は、JIS K 6810に従って98%硫酸中、濃度1%、温度25℃で測定した値である。
ポリアミド樹脂の相対粘度が3.0を下回る場合、釣糸の引張り強さ及び結節強さが低下する虞がある。他方、ポリアミド樹脂の相対粘度が5.0を上回る場合、釣糸の作製時における紡糸温度が高温となり、一部のポリアミド樹脂が熱分解される虞がある。
また、海部分は、ポリアミド樹脂を主成分として、他の樹脂を含んでいてもよい。なお、「ポリアミド樹脂を主成分とする」とは、海部分において、ポリアミド樹脂の占める割合(質量基準)が最も多いことを意味する。海部分におけるポリアミド樹脂の占める割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
海部分に含まれるポリアミド樹脂以外の樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、環状ポリオレフィンなどの炭化水素系ポリマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのエチレン系共重合体;等を挙げることができる。
本考案において、断面内に含まれる島部分は、フッ素系樹脂を主成分として含んでいれば特に限定されない。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いることもできれば、2種以上を混合して用いることもできる。
本考案では、フッ素系樹脂は、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)であり、より好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。ポリフッ化ビニリデンは、耐熱性、成形性、及び分散性に優れているためである。
また、島部分は、フッ素系樹脂を主成分として、他の樹脂を含んでいてもよい。島部分におけるフッ素系樹脂の占める割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
島部分に含まれるフッ素系樹脂以外の樹脂は、特に限定されないが、例えば、上記に例示したように、海部分に含まれるポリアミド樹脂以外の樹脂と同様のものが用いられる。
さらに、本考案では、釣糸内部におけるフッ素系樹脂の分散を阻害しないことを条件として、各種の添加剤を添加することができる。
このような添加剤としては、例えば、顔料、酸化チタン、耐候剤、耐光剤、結晶化抑制剤、金属化合物、比重調整剤、撥水処理剤、親水処理剤等が挙げられる。
本考案の釣糸の引張り強さは、好ましくは7.0cN/dtex〜11.0cN/dtexであり、より好ましくは8.6cN/dtex〜9.5cN/dtexである。また、釣糸の伸び率は、好ましくは23〜35%であり、より好ましくは24%〜30%である。釣糸の摩擦係数は、好ましくは1.0〜2.4である。
また、本考案の釣糸の結節時における引張り強さ(結節強さ)は、好ましくは5〜10cN/dtexであり、より好ましくは6.8cN/dtex〜8.5cN/dtexである。また、釣糸の結節時における伸び率(結節伸び率)は、好ましくは13%〜25%であり、より好ましくは15%〜20%である。
なお、引張り強さ、伸び率、及び摩擦係数の測定方法については、後の実施例の欄にて詳述する。
本考案の釣糸の製造方法の一例について説明する。もっとも、本考案の釣糸の製造方法は、以下の製造方法に限定されない。
本考案の釣糸は、釣糸内部においてフッ素系樹脂を微粒子状に分散させることにより製造することができる。
具体的には、ポリアミド樹脂ペレットとフッ素系樹脂ペレットを一定比率で混合することにより混合樹脂を得る。そして、混合樹脂を押出し機に供給し、溶融・混練させた後、押出し機のノズルから溶融混練樹脂を押出す。押出した溶融混練樹脂を直ちに冷却固化し、原糸を得る。なお、冷却固化の方法は特に限定されないが、例えば、5〜40℃の水中に溶融混練樹脂を導入する方法が挙げられる。その後、原糸を所望の延伸倍率で延伸した後、所望のリラックス率で熱セット処理することにより本考案の釣糸が得られる。
以下、実施例及び比較例を示して本考案をさらに説明する。なお、本考案は、下記実施例のみに限定されるものではない。
(引張強さ及び伸び率の測定方法)
200mmの釣糸を5サンプル用意し、JIS L 1013の規定に準じて、室温20℃、相対湿度65%の温湿度調整室内で24時間これらの釣糸を放置した。
その後、引張試験機((株)島津製作所製、製品名「オートグラフS−500D」)を用いて、各釣糸に対して、引張速度300mm/分の条件で引張強さ及び伸び率を測定し、その平均値を求めた。
(結節強さ及び結節時における伸び率(結節伸び率)の測定方法)
200mmの釣糸を5サンプル用意し、JIS L 1013の規定に準じて、室温20℃、相対湿度65%の温湿度調整室内で24時間これらの釣糸を放置した。
その後、各釣糸を真結びで一回強く結節した。そして、引張試験機((株)島津製作所製、製品名「オートグラフS−500D」)を用いて、各釣糸に対して、引張速度300mm/分の条件で引張強さ及び伸び率を測定し、その平均値を求めた。
(表面滑性の評価方法)
図3に示すように、釣糸送り出し装置31、セラミック製のピックアップピンによって構成された第1〜第3のテンションローラー(32a、32b、及び32c)、及び釣糸巻取装置33を配置し、30m/分の送り出し速度となるように釣糸を送り出した。なお、図3において、白抜き矢印は、釣糸の搬送方向を示している。
そして、釣糸送り出し装置31と第1のテンションローラー32aの間にある釣糸(1a)の張力(T1)と、第3のテンションローラー32cと釣糸巻取装置33の間にある釣糸(1b)の張力(T2)を計測し、以下の式に基づき摩擦係数を算出した;摩擦係数=T2/T1。
摩擦係数が小さいほど、釣糸の表面滑性が優れていることを示し、摩耗係数が大きいほど、釣糸の表面滑性が劣っていることを示す。
摩擦係数は、1種の釣糸に対して5回測定し、その最小値と最大値を求めた。
(糸切れ頻度の評価方法)
各実施例及び各比較例の釣糸を作製する際に、延伸工程中に糸切れが生じるか否かを観察し、糸切れが頻発した釣糸を「×」と評価し、糸切れが生じた釣糸を「△」と評価し、糸切れが生じなかった釣糸を「○」と評価した。
(島部分の径長の測定方法)
釣糸を、長手方向に垂直方向にミクロトームを用いて切断し切片サンプルを作製した。この切片サンプルを光学顕微鏡を用いて、倍率400倍にてその断面を観察した。
そして、顕微鏡の視野内に含まれる島部分の径長をマイクロルーラーを用いて実測し、その平均径長と最大径長を算出した。
<実施例1>
90質量部のナイロン6と10質量部のナイロン66を共重合することによって形成されたナイロン6/66樹脂チップを用意した。このナイロン6/66樹脂チップ95質量部に対し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる樹脂チップを5質量部添加し、攪拌機によって攪拌し、混合樹脂を形成した。
混合樹脂を押出し機に供給し、290℃で溶融・混練させた後、濾過層を有する紡糸パックに導入し、ノズルから溶融した混練樹脂を押出した。ノズルから押出された溶融混練樹脂を、直ちに温度20℃の水中で冷却固化させ、原糸を得た。
得られた原糸を、98℃の熱水中で3.8倍に延伸した後、さらに190℃の熱空気中で1.58倍に延伸した。なお、総延伸倍率は、6.0倍であった。その後、延伸した原糸を180℃の熱空気中でリラックス率0.9倍で熱セットを行った後、親水性油剤をローラーにて付与し、釣糸を得た。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。実施例1で得られた釣糸の断面写真を図4に示す。本写真は、釣糸の断面を光学顕微鏡を用いて倍率400倍にて撮影したものである。
さらに、得られた釣糸の各物性(引張強さ(cN/dtex)、伸び率(%)、結節強さ(cN/dtex)、結節伸び率(%)、摩擦係数、及び糸切れ頻度)を、上記の測定方法によって測定・評価した。
また、釣糸を、その長手方向と垂直な方向に切断し、釣糸の断面内に含まれる島部分(PVDF)の平均径長及び最大径長を、上記の測定方法によって測定した。
釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<実施例2>
ポリフッ化ビニリデンの配合量を、ナイロン樹脂チップ97質量部に対して3質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定・評価した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<実施例3>
ポリフッ化ビニリデンの配合量を、ナイロン樹脂チップ99質量部に対して1質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<実施例4>
ポリフッ化ビニリデンの配合量を、ナイロン樹脂チップ99.99質量部に対して0.01質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<実施例5>
ポリフッ化ビニリデンをポリフッ化ビニル(PVF)からなる樹脂チップに変更し、その配合量をナイロン樹脂チップ99質量部に対して1質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<実施例6>
ポリフッ化ビニリデンをポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)からなる樹脂チップに変更し、その配合量をナイロン樹脂チップ99.5質量部に対して0.5質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<比較例1>
フッ素系樹脂を配合しなかったこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<比較例2>
ポリフッ化ビニリデンの配合量を、ナイロン樹脂チップ93質量部に対して7質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<比較例3>
ポリフッ化ビニリデンの配合量を、ナイロン樹脂チップ99質量部に対して1質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
<比較例4>
ポリフッ化ビニリデンの配合量を、ナイロン樹脂チップ99質量部に対して1質量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法により釣糸を作製し、各物性、平均径長、及び最大径長を測定した。なお、得られた釣糸は、断面形状が円形であった。比較例4で得られた釣糸の断面写真を図4に示す。本写真は、釣糸の断面を光学顕微鏡を用いて倍率400倍にて撮影したものである。
この釣糸の組成、各物性の測定・評価結果、平均径長、及び最大径長を表1に示す。
(評価)
表1に示すように、実施例1〜実施例6の釣糸は、フッ素系樹脂を含んでいない比較例1の釣糸に比して、摩擦係数が低く、表面滑性に優れていることが分かる。
また、実施例1〜実施例6の釣糸は、島部分の平均径長が2.0μm未満であり、且つ、その最大径長が25.0μm以下である。即ち、釣糸内部において、島部分(フッ素系樹脂)が微粒子状に分散している。島部分が微粒子状に分散していることは、図4(a)に示す実施例1の写真からも読み取れる。島部分が微粒子状に分散しているため、実施例1〜実施例6の釣糸は、糸切れが生じなかった。即ち、釣糸全体に亘って引張強さや伸び率等の物性が略均一であると考えられる。
これに対し、比較例2〜比較例4の釣糸は、島部分の平均径長が2.0μm以上である。即ち、比較例2〜比較例4の釣糸は、釣糸内部において島部分が微粒子状に分散していない。図4(b)に示す通り、比較例4の断面写真には、平均径長30μmを超える筋状の島部分が存在している。また、その他の島部分の径長も比較的大きいため、島部分が微粒子状に分散しているとはいえない。島部分が微粒子状に分散していないため、比較例2〜4の釣糸は、糸切れが生じた。つまり、釣糸全体に亘って引張り強さや伸び率等の物性が不均一である。
1…釣糸、11…海部分、12…島部分、12a…島部分の外縁の第1点、12b…島部分の外縁の第2点、21…第1単位領域、22…第2単位領域、X…島部分の径長

Claims (9)

  1. 長手方向に垂直な断面が海島構造を有し、
    前記海島構造の海部分を形成する樹脂が、ポリアミド樹脂を含み、
    前記海島構造の島部分を形成する樹脂が、フッ素系樹脂を含み、
    前記島部分の平均径長が、2.0μm未満であると共に、その最大径長が、25.0μm以下であることを特徴とする釣糸。
  2. 前記断面内において、第1単位領域に含まれる島部分の個数(A)と、第2単位領域に含まれる島部分の個数(B)との比率(A:B)が、3:5〜5:3である請求項1に記載の釣糸。
    但し、前記第1単位領域及び前記第2領域は、前記断面内においてそれぞれ無作為に抽出された独立した領域であり、
    両単位領域は、面積が同じであり、且つ、それぞれの単位領域が前記断面の面積の10%以上の面積を有する。
  3. 前記第1単位領域に含まれる島部分の総面積(C)と、前記第2単位領域に含まれる島部分の総面積(D)との比率(C:D)が、3:5〜5:3である請求項2に記載の釣糸。
  4. 前記島部分の最大径長が、15.0μm以下である請求項1〜3の何れかに記載の釣糸。
  5. 前記フッ素系樹脂の配合量が、10質量%以下である請求項1〜4の何れかに記載の釣糸。
  6. 前記フッ素系樹脂の配合量が、6質量%以下である請求項1〜4の何れかに記載の釣糸。
  7. 前記ポリアミド樹脂の相対粘度が、3.0〜5.0である請求項1〜6の何れかに記載の釣糸
  8. 前記フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びポリクロロトリフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項1〜7の何れかに記載の釣糸。
  9. 前記ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66から選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項1〜8の何れかに記載の釣糸。
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