JP3182798B2 - 酸化物超電導体の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導体の製造方法

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JP3182798B2 JP19106791A JP19106791A JP3182798B2 JP 3182798 B2 JP3182798 B2 JP 3182798B2 JP 19106791 A JP19106791 A JP 19106791A JP 19106791 A JP19106791 A JP 19106791A JP 3182798 B2 JP3182798 B2 JP 3182798B2
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準一郎 加瀬
剛 森本
一正 戸叶
浩明 熊倉
弘 前田
雅宏 清藤
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  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化物超電導体の製造
方法、特にBi-Sr-Ca-Cu-O 系酸化物超電導体の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、Bi-Sr-Ca-Cu-O 系超電導体には、
Bi2Sr2Ca2Cu3Oy(以下2223相ともいう)、Bi2Sr2Ca
1Cu2Oy(以下2212相ともいう)、Bi2Sr2CuOy(以下
2201相ともいう)の3種の構造があり(yはそれぞ
れ酸素量)、それぞれの臨界温度がおよそ110K、8
0K、20Kであることが知られている。これらのうち
2212相は、臨界温度が比較的高いうえに、溶融状態
から成長しやすく、テープ状にした場合に配向組織も得
やすいため、2212相について溶融プロセスを利用し
た線材化技術の開発が進められている。
【0003】酸化物超電導体の線材化の手法としては、
酸化物超電導体の粉末を銀のパイプに充填し伸線加工や
ロール圧延を加えてテープ状に成形する銀シース法や、
酸化物超電導体の粉末を有機溶媒とともに混合しスラリ
ーとし刃の隙間から押し出すことにより厚膜状に成形す
るドクターブレード法等が知られている。いずれの方法
により作られたテープも、成形後に熱処理を加えること
により超電導線材が製造される。このうち、ドクターブ
レード法で成形されたテープは銀基体と張り合せて複合
化してから熱処理を行なうと、銀が、熱処理中の形状保
持や、超電導テープの安定化剤として有効に作用するこ
とが知られている。
【0004】2212相は、約880℃で分解溶融する
ことが知られており、この温度よりやや高い温度から徐
冷して凝固すると、例えば、890℃から870℃まで
徐冷すると、2212相の結晶が成長する。金属テープ
と2212相の積層体を処理した場合は、テープ中に2
212相の配向組織が得られる。
【0005】このようにして製造された2212相と銀
の複合テープは、高い臨界電流密度を有することが知ら
れており、特に液体ヘリウムを冷媒とした4.2Kでの
応用については、20T以上の高い磁界中においても臨
界電流特性が低下しないことが知られている。このた
め、20T以上の高磁界を発生するコイル用の線材とし
て、2212相は極めて有望であると考えられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】2212相は、800
℃付近の高い温度では安定に合成できるが、550℃よ
り低い温度では不安定となり合成することができない。
また、一旦合成した2212相も、500℃付近の温度
で保持すると分解してしまう。このため、溶融・徐冷に
より2212相の良好な配向組織を形成しても、その後
の室温までの冷却中に500℃付近を通過することにな
り、このとき2212相の分解が進行して、特性を低下
させる原因となっていた。
【0007】本発明の目的は、上記の問題点を排除し
て、高い臨界温度および臨界電流密度を有するBi-Sr-Ca
-Cu-O 系超電導体を製造する方法を提供することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、Bi,Sr,Ca,Cu,
O を構成元素として含む超電導体を、600℃以上の温
度から室温まで冷却する工程を含む製造方法であって、
600℃から400℃までの温度範囲における平均冷却
速度が200〜106 ℃/hであることを特徴とする酸
化物超電導体の製造方法を提供するものである。
【0009】Bi,Sr,Ca,Cu,O を構成元素として含む超電
導体は、2212相であることが好ましい。2212相
において、c軸長が30.8Åの結晶相である場合は、
高い臨界温度を示すので好ましい。
【0010】本発明では、600℃から400℃の温度
範囲を、充分に短い時間、つまり、200℃/h以上の
平均冷却速度で冷却することにより、本来2212相が
有する臨界電流特性を低下させることなく超電導体を製
造できる。平均冷却速度が350℃/h以上である場合
は、より好ましい。さらには、平均冷却速度が500℃
/h以上であることが望ましい。
【0011】平均冷却速度は、106 ℃/h以下である
ことが必要である。平均冷却速度が、これを超える場合
は、超電導体にクラックが生成するおそれがある。平均
冷却速度が104 ℃/h以下である場合は、より好まし
い。さらには、平均冷却速度が2000℃/h以下であ
ることが望ましい。
【0012】本発明者は、600℃以上の温度では88
0℃で分解溶融するまでの間は、2212相は安定に存
在しているのに対し、約550℃以下の低い温度では2
212相の分解反応が進行することを見出した。しか
し、温度がさらに低下して400℃以下になると、分解
反応の進行が極めて緩慢となり、事実上400℃以下で
の反応は臨界電流特性にとって問題とならない。したが
って、少なくとも冷却工程のうちの、600℃から40
0℃までの間について、平均冷却速度を上記の範囲に保
持する必要がある。本発明において、この600℃およ
び400℃は、必ずしも臨界的な数値ではなく、概ねこ
の温度範囲における平均冷却速度が、前述の範囲であれ
ばよいことを示すものである。
【0013】本発明の冷却工程は、雰囲気が還元性にな
るほど、2212相が安定に生成する領域が低温側に広
がるため、2212相の分解が押えられ、より好ましい
結果が得られる。空気中で冷却しても良いが、窒素雰囲
気のように、より還元性の雰囲気中で冷却するほうが好
ましい。
【0014】Bi,Sr,Ca,Cu,O を構成元素として含む超電
導体は、焼成あるいは凝固法により製造し、その温度
(600℃以上)から本発明の条件で冷却するのが好ま
しい。特に、融液からの凝固により製造する場合は、緻
密でかつ配向した組織の超電導体が得られるので好まし
い。
【0015】金属の基板上に、酸化物超電導体の組成の
仮焼粉末の厚膜状成形体を積層して、溶融して凝固する
場合は、金属との界面張力で、超電導体の結晶が配向し
て高い臨界電流密度を有する超電導体が得られるので好
ましい。このときの金属として、銀が好ましく用いられ
る。積層だけでなく、金属シース法のように金属に被覆
されたものでも良い。
【0016】具体的には、金属シース法、ドクターブレ
ード法、スクリーン印刷法、ディップコート法等で、こ
のような金属との積層体が得られる。このような方法に
よると、テープ状の超電導体が得られる。酸化物超電導
体層の厚さは、100μm以下が好ましい。
【0017】
【実施例】
実施例1 Bi:Sr:Ca:Cu の原子比が2:2:1:2 となるような酸化物の
仮焼粉末を作り、この粉末をオクチルアルコールと混合
した後、これを0.05mm× 5mm×50mmの銀板上に50μm
の厚さにスクリーン印刷し、乾燥した。(これをテープ
Aとする。)このテープAを空気中で890℃で10分
間溶融し、840℃まで10℃/hで冷却した後、室温
まで300℃/hの速度で冷却した。
【0018】得られたテープ状超電導体を、走査型電子
顕微鏡で観察したところ、2212相の結晶が銀の面に
平行に成長しておりかつ、クラックは認められなかっ
た。このテープの臨界電流密度を直流四端子法で調べた
ところ、温度4.2K,磁界12T中で120,000 A/cm2
であった。
【0019】実施例2 実施例1中のテープAを空気中で890℃で10分間溶
融し、840℃まで10℃/hで冷却した後、雰囲気ガ
スを窒素に変え、室温まで300℃/hの速度で冷却し
た。得られたテープ状超電導体を、走査型電子顕微鏡で
観察したところ、2212相の結晶が銀の面に平行に成
長しておりかつ、クラックは認められなかった。このテ
ープの臨界電流密度を直流四端子法で調べたところ、温
度4.2K,磁界12T中で140,000 A/cm2であった。
【0020】実施例3 実施例1中のテープAを空気中で890℃で10分間溶
融し、840℃まで10℃/hで冷却した後、室温まで
500℃/hの速度で冷却した。得られたテープ状超電
導体を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、2212
相の結晶が銀の面に平行に成長しておりかつ、クラック
は認められなかった。このテープの臨界電流密度を直流
四端子法で調べたところ、温度4.2K,磁界12T中
で170,000 A/cm2であった。
【0021】比較例1 実施例1中のテープAを空気中で890℃で10分間溶
融し、840℃まで10℃/hで冷却した後、室温まで
100℃/hの速度で冷却した。得られたテープ状超電
導体を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、2212
相の結晶が銀の面に平行に成長しておりかつ、クラック
は認められなかった。このテープの臨界電流密度を直流
四端子法で調べたところ、温度4.2K,磁界12T中
で 50,000 A/cm2であった。
【0022】比較例2 実施例1中のテープAを空気中で890℃で10分間溶
融し、840℃まで10℃/hで冷却した後、雰囲気ガ
スを酸素に変え、室温まで100℃/hの速度で冷却し
た。得られたテープを走査型電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、2212相の結晶が銀の面に平行に成長しておりか
つ、クラックは認められなかった。このテープの臨界電
流密度を直流四端子法で調べたところ、温度4.2K,
磁界12T中で 30,000 A/cm2であった。
【0023】
【発明の効果】本発明により、酸化物超電導体の熱処理
工程において必ず通過しなくてはならない、不安定な温
度領域を速やかに冷却することによって、高い臨界電流
特性をもつ超電導テープを再現性よく製造することがで
きる。本発明により製造された超電導テープは、特に低
温高磁界中において優れた特性を有し、4.2Kに冷却
した場合、従来の超電導線材では実現不可能であった、
20T以上の高磁界を発生させるマグネット用のテープ
として充分に実用的な特性を有している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸叶 一正 茨城県つくば市竹園3−410−1 (72)発明者 熊倉 浩明 茨城県つくば市吾妻2−901−103 (72)発明者 前田 弘 茨城県つくば市東2−2−5 (72)発明者 清藤 雅宏 茨城県土浦市中貫町3322−16 審査官 酒井 美知子 (56)参考文献 特開 平2−199057(JP,A) 特開 平2−30655(JP,A) 特開 平1−282128(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 12/00 - 13/00 C01G 1/00 C30B 29/22

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶液から冷却することによりBi 2 Sr 2 Ca 1
    Cu 2 y (yは酸素量)の組成式で表される超電導体の
    結晶相を凝固させた後、600℃以上の温度から室温ま
    で冷却する工程を含む製造方法であって、600℃から
    400℃までの温度範囲における平均冷却温度が200
    〜106 ℃/hであることを特徴とする酸化物超電導体
    の製造方法。
  2. 【請求項2】結晶相を凝固させた後、その温度から室温
    まで冷却することを特徴とする請求項1の酸化物超電導
    体の製造方法。
  3. 【請求項3】室温まで冷却する工程が、空気中より還元
    性の雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1また
    は請求項2の酸化物超電導体の製造方法。
  4. 【請求項4】酸化物超電導体が厚膜状であり、金属に積
    層あるいは金属に被覆されていることを特徴とする請求
    項1〜3いずれか1の酸化物超電導体の製造方法。
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