JP3180347U - 後付け耐震補強構造体および後付け耐震補強金物ユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】地震時における既設建物の上部軸組の変形や浮き上がりを防止し、既設基礎の負担軽減および既設建物の揺れを軽減可能にする耐震補強金物ユニットを提供する。
【解決手段】後付け耐震補強構造体5は、既設建物1の布基礎2と一体化するように打設された増設基礎6と、増設基礎6および布基礎2の双方にアンカーボルトによって後付け固定された基礎固定金物7と、既設建物1の柱4にコーチボルトなどの固定部材90によって後付け固定された躯体固定金物8と、基礎固定金物7と躯体固定金物8とを弾性的に連結している連結ユニット9と、基礎固定金物7と躯体固定金物8の間に介在するコイルスプリング10を備える。連結ユニット9は、皿ばね重合ユニットを用いて構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】後付け耐震補強構造体5は、既設建物1の布基礎2と一体化するように打設された増設基礎6と、増設基礎6および布基礎2の双方にアンカーボルトによって後付け固定された基礎固定金物7と、既設建物1の柱4にコーチボルトなどの固定部材90によって後付け固定された躯体固定金物8と、基礎固定金物7と躯体固定金物8とを弾性的に連結している連結ユニット9と、基礎固定金物7と躯体固定金物8の間に介在するコイルスプリング10を備える。連結ユニット9は、皿ばね重合ユニットを用いて構成されている。
【選択図】図1
Description
本考案は、既設建物の耐震性を向上することのできる後付け耐震補強構造体およびこれに用いる後付け耐震補強金物ユニットに関する。
一般に、木造建物は、地盤上に形成した基礎の上に土台を設置し、この土台に建物の柱等を接合することにより、建物の荷重を基礎によって支持している。しかしながら、古い木造建物(例えば、平成以前に建てられたもの)には、金物等をほとんど用いておらず、アンカーボルトによって土台が基礎に固定されていない状態のものもあり、地震によって倒壊して被害が発生するおそれがあった。そこで、この種の建物の耐震性向上を目的として、基礎、土台、およびその上部の軸組を相互に接合する後付けの耐震補強金物を用いた耐震補強が行われている。
また、この種の耐震補強金物を皿ばねなどの弾性部材を用いて構成することにより、地震時の振動を弾性部材の変形で吸収して圧縮荷重による部材の変形や引っ張り荷重による部材の浮き上がりを防止すると共に、生活振動についても改善できるようにすることが提案されている。特許文献1には、この種の耐震補強金物が開示されている。
耐震補強金物は、地震時の引き抜き力に耐えられる強度が必要であり、また、既設建物の柱脚・土台・基礎を連結して地震時の力を基礎に伝えることのできる構造とする必要がある。特許文献1では、既設基礎と上部軸組を耐震補強金物によって連結している。しかしながら、古い木造建物の基礎は、これまでの地震や経年劣化等によってすでにひび割れが生じるなどして強度が劣化したものも多い。従って、既設基礎と上部軸組を金物を介して接合しただけでは十分な引抜強度が得られず、十分な耐震補強効果が得られないおそれがある。また、建物の揺れを効果的に防止できないおそれがある。
本考案の課題は、この点に鑑みて、直下型地震の発生時のような大きな荷重時にも建物の上部軸組の変形や浮き上がりを防止できると共に、既設基礎の負担を減らしつつ建物の揺れを軽減できる後付け耐震補強構造体および後付け耐震補強金物ユニットを提案することにある。
上記の課題を解決するために、本考案は、既設基礎と、当該既設基礎に支持されている既設構造部材とを接合する後付け耐震補強構造体であって、
前記既設基礎に沿って増設され当該既設基礎と一体化している増設基礎と、
前記既設基礎および前記増設基礎に固定される基礎固定金物と、
前記既設構造部材に固定される躯体固定金物と、
前記基礎固定金物と前記躯体固定金物を弾性的に連結しており、前記既設構造部材の引抜方向および圧縮方向に伸縮可能な連結ユニットと、
前記躯体固定金物と前記基礎固定金物の間に介在するコイルスプリングとを備えることを特徴としている。
前記既設基礎に沿って増設され当該既設基礎と一体化している増設基礎と、
前記既設基礎および前記増設基礎に固定される基礎固定金物と、
前記既設構造部材に固定される躯体固定金物と、
前記基礎固定金物と前記躯体固定金物を弾性的に連結しており、前記既設構造部材の引抜方向および圧縮方向に伸縮可能な連結ユニットと、
前記躯体固定金物と前記基礎固定金物の間に介在するコイルスプリングとを備えることを特徴としている。
本考案は、このように、既設基礎およびこれに一体化した増設基礎の双方に基礎固定金物を固定しているため、既設基礎の負担を減らすことができると共に、地震時の力を確実に基礎に伝達できる。また、基礎固定金物と躯体固定金物を連結ユニットによって弾性的に連結すると共に両金物の間にコイルスプリングを配置しているため、これらの緩衝作用と、既設基礎および増設基礎の支持力により、既設構造部材(上部軸組)の浮き上がりや変形を軽減でき、既設構造部材の引き抜きを回避できる。また、建物の揺れを軽減できる。よって、既設基礎の負担を減らしつつ、建物の耐震性能および振動防止効果を高めることができる。
本考案において、前記基礎固定金物は、前記既設基礎の側面に沿って上下方向に延びる板状の既設基礎固定部と、当該既設基礎固定部の下端縁から水平に突出する板状の増設基礎固定部と、当該増設基礎固定部の上方において前記既設基礎固定部から突出している上側水平突片および下側水平突片を備え、前記躯体固定金物は、前記既設構造部材の側面に沿って上下方向に延びる板状の躯体固定部と、当該躯体固定部と平行に延びる平行板部と、前記躯体固定部と前記平行板部を連結する補強リブと、前記平行板部から前記躯体固定部側に向けて水平に突出する躯体側水平突片を備え、前記基礎固定金物と前記躯体固定金物は、前記上側水平突片、前記躯体側水平突片、前記下側水平突片がこの順で上から下に重なる配置となるように、前記既設基礎および前記増設基礎に固定され、前記上側水平突片と前記躯体側水平突片の間に前記コイルスプリングが配置され、前記躯体側水平突片と前記下側水平突片が前記連結ユニットを介して連結されていることが望ましい。このような構成により、基礎固定金物を既設基礎および増設基礎の双方に確実に固定できると共に、躯体固定金物を既設構造部材に確実に固定できる。更に、両金物に形成された水平突片を介して両金物を弾性的に連結できる。従って、既設基礎および増設基礎に対する地震力の伝達効果が高く、且つ、振動緩和機能のある耐震補強金物として機能させることができる。
また、本考案において、前記躯体固定金物の前記躯体固定部には、上下方向に千鳥状に配列された複数の固定孔が形成されていることが望ましい。このようにすると、ネジや釘等の取り付けによる既設構造部材(柱)の割れを回避できる。
ここで、前記連結ユニットとして、前記躯体側水平突片と前記下側水平突片との間に配置される耐圧縮力用緩衝部材と、前記躯体側水平突片の上側に配置される耐振動用緩衝部材と、前記下側水平突片の下側に配置される耐引抜力用緩衝部材と、前記耐振動用緩衝部材、前記躯体側水平突片、前記耐圧縮力用緩衝部材、前記下側水平突片、前記耐引抜力用緩衝部材が上下に重なった締着部位を上下方向に締め付けるボルトおよびナットを備えており、前記耐圧縮力用緩衝部材、前記耐振動用緩衝部材、および前記耐引抜力用緩衝部材は、複数枚の皿ばねを上下方向に重ねた皿ばね重合体と、当該皿ばね重合体の上下に配置した重荷重用ワッシャーと、前記皿ばね重合体および前記重荷重用ワッシャーの外周側を被覆する弾性体とを備える皿ばね重合ユニットを用いることができる。このようにすると、既設構造部材の引き抜き(ほぞ抜け)、変形などを回避できる。
また、前記基礎固定金物は、前記増設基礎の打設時に当該増設基礎に植設されたアンカーボルトを介して、前記増設基礎固定部が前記増設基礎に固定されると共に、前記既設基礎に対して後施工で植設されたケミカルアンカーを介して、前記既設基礎固定部が前記既設基礎に固定され、前記増設基礎は、前記既設基礎に後施工で植設された差筋アンカーによって前記既設基礎と一体に接合されていることが望ましい。このようにすると、基礎固定金物を既設基礎および増設基礎に緊結して地震時の力を確実に基礎に伝達できると共に、既設基礎の負担を確実に軽減できる。
次に、本考案は、上記の後付け耐震補強構造体における前記基礎固定金物、前記躯体固定金物、前記連結ユニット、および前記コイルスプリングを備える後付け耐震補強金物ユニットである。
本考案によれば、既設基礎およびこれに一体化した増設基礎の双方に基礎固定金物を固定しているため、既設基礎の負担を減らすことができると共に、地震時の力を確実に基礎に伝達できる。また、基礎固定金物と躯体固定金物を連結ユニットによって弾性的に連結すると共に両金物の間にコイルスプリングを配置しているため、これらの緩衝作用と、既設基礎および増設基礎の支持力により、既設構造部材(上部軸組)の浮き上がりや変形を軽減でき、既設構造部材の引き抜きを回避できる。また、建物の揺れを軽減できる。よって、既設基礎の負担を減らしつつ、建物の耐震性能および振動防止効果を高めることができる。
以下に、図面を参照して、本考案を適用した後付け耐震補強構造体および後付け耐震補強金物ユニットを説明する。
図1は後付け耐震補強構造体を用いた既設建物の耐震補強部位の概略縦断面図である。既設建物1は、鉄筋コンクリート製の布基礎2(既設基礎)と、布基礎2の上に設置された土台3と、土台3に対してほぞ接合された柱4(既設構造部材)を備えている。後付け耐震補強構造体5は、布基礎2の隣に増設された増設基礎6と、増設基礎6および布基礎2の双方に後付け固定された基礎固定金物7と、柱4に後付け固定された躯体固定金物8と、基礎固定金物7と躯体固定金物8とを連結している連結ユニット9と、基礎固定金物7と躯体固定金物8の間に介在するコイルスプリング10を備えている。基礎固定金物7、躯体固定金物8、連結ユニット9、およびコイルスプリング10は、後付け耐震補強金物ユニット5Aを構成している。
増設基礎6は鉄筋コンクリート製であり、その寸法は、幅(W)が400mm、高さ(H)が800mm、長さ(L:図4参照)が600mmである。増設基礎6を打設する際には、増設位置にある布基礎2の側面2aにドリル等で穴あけを行い、差筋アンカー11を後施工で取り付ける。差筋アンカー11としては、例えば、ドリル孔にスリーブを内挿した後、スリーブに異形鉄筋等を打ち込んで抜け止め作用を発揮するようにスリーブを変形させるなどの構成のものを用いる。差筋アンカー11の施工後に増設基礎6を打設することにより、差筋アンカー11を介して布基礎2と増設基礎6が一体化される。また、増設基礎6の打設時には、増設基礎6における基礎固定金物7の取り付け箇所である基礎上面にアンカーボルト12(M12、全長400mm)を植設する。
図2は基礎固定金物7の正面図、側面図および平面図である。図2(a)は正面図であり、図1の矢印X1方向から見た状態を示している。また、図2(b)は側面図、図2(c)は平面図である。この図に示すように、基礎固定金物7は、垂直に延びる既設基礎固定部71と、既設基礎固定部71の下端から水平に延びる増設基礎固定部72を備えた全体として断面L字状の部材である。基礎固定金物7の各部は一定の板厚(本実施形態では、板厚t=9mm)の鋼材から形成されている。既設基礎固定部71および増設基礎固定部72の寸法は、両部材の幅(W1)が200mm、既設基礎固定部71の高さ(H1)は390mm、増設基礎固定部72の長さ(L1)は160mmとなっている。
既設基礎固定部71および増設基礎固定部72が接続している角部の幅方向の中央には、三角リブ73が形成されている。また、図2(a)に示すように、既設基礎固定部71における正面から見て上部右寄りの位置には、上側水平突片74および下側水平突片75が水平に突出している。上側水平突片74および下側水平突片75は同一形状をしており、上下に重なるように配置されている。上側水平突片74の下面には縦リブ76が形成されている。また、下側水平突片75の中央には、連結ユニット9を取り付けるためのボルト孔75aが形成されている。基礎固定金物7の各部の寸法は、図2に図示したとおりである。
既設基礎固定部71における下側水平突片75の下側には、固定孔77が形成されている。また、図2(c)に示すように、増設基礎固定部72には、4つの固定孔78が形成されている。増設基礎6に植設した上記のアンカーボルト12は、固定孔78の配置に対応する位置に設置されている。各アンカーボルト12を固定孔78に挿通した後、増設基礎固定部72の上からナットを締着することにより、増設基礎6に対して基礎固定金物7が固定される。一方、布基礎2の側面2aにおける既設基礎固定部71が当接する位置には、ケミカルアンカー13が後施工で取り付けられる。既設基礎固定部71の固定孔77にケミカルアンカー13を挿通してナットを締着することにより、布基礎2に対して基礎固定金物7が固定される。
図3は躯体固定金物8の正面図、側面図、および背面図である。図3(a)は正面図であり、図1の矢印X1方向から見た状態を示している。また、図3(b)は側面図、図3(c)は背面図であり、図3(c)は図1の矢印X2方向から見た状態を示している。この図に示すように、躯体固定金物8は、全体として柱状の形態をしており、その寸法は、幅(W2)が100mm、高さ(H2)が800mm、厚さ(D2:図1のX1/X2方向の寸法)が70mmである。躯体固定金物8の各部は、基礎固定金物7と同様に、一定の板厚(本実施形態では、板厚t=9mm)の鋼材から形成されている。躯体固定金物8は、柱4の側面に沿って上下方向に延びる垂直な板状の躯体固定部81と、躯体固定部81から一定寸法だけ離れて平行に伸びている平行板部82を備えている。平行板部82は躯体固定金物8の上端から下端まで延びている。一方、躯体固定部81の下端は平行板部82よりも200mm短くなっている。
躯体固定部81と平行板部82の上部は、水平な板状の補強リブ83、84によって連結されている。補強リブ83は躯体固定部81と平行板部82の上端同士を連結しており、補強リブ84は補強リブ83よりも220mm下側の位置で躯体固定部81と平行板部82を連結している。また、躯体固定部81と平行板部82の下部には、両部材の側端縁同士を連結する補強リブ85、86が設けられている。補強リブ85、86は、躯体固定部81の下端から350mmの高さまでの位置に設けられている。躯体固定金物8の下端近傍には、水平な板状の躯体側水平突片87が設けられている。躯体側水平突片87の両側端縁は補強リブ85、86に接続され、後端縁は平行板部82に接続されている。また、躯体側水平突片87の中央には、連結ユニット9を取り付けるためのボルト孔87aが形成されている。
図3(a)に示すように、平行板部82には、作業孔88が4箇所に形成されている。作業孔88は上下方向に一定のピッチで千鳥状に配列されている。また、躯体固定部81にも4箇所に固定孔89が形成されている。固定孔89は、作業孔88と重なる位置に形成されており、上下方向に一定のピッチで千鳥状に配列されている。図1に示すように、躯体固定部81と柱4の側面との間には、柱4に固定された外装材などのボード4aが配置されている。このボード4aに躯体固定部81を当接させ、ネジや釘などの固定部材90を各固定孔89からボード4aおよび柱4に打ち込むことにより、柱4に対して躯体固定金物8が固定される。本実施形態では、固定部材90として、コーチボルト(M12、全長90mm)を用いている。作業孔88は、固定部材90を取り付ける際の作業用に設けられている。このように、固定部材90を千鳥状に打ち込むことにより、柱4が割れるなどして既設建物1の構造部材が損傷するおそれが少なくなる。
図4は、組立前の後付け耐震補強構造体5の分解斜視図である。図1に示すように、後付け耐震補強構造体5は、平行板部82の下端部分と既設基礎固定部71の上端部分(上側水平突片74および下側水平突片75が形成された部位)とを一定間隔で対向させ、上側水平突片74と下側水平突片75の間に躯体側水平突片87を挿入するように組み立てられている。上側水平突片74と躯体側水平突片87の間には、縦リブ76を挟み、2本のコイルスプリング10が配置されている。各コイルスプリング10の上端は上側水平突片74の下面に固定されており、下端は躯体側水平突片87の上面に当接している。なお、コイルスプリング10の下端を躯体側水平突片87の上面に固定し、上端を上側水平突片74の下面に当接させてもよい。コイルスプリング10としては、直径が3cm、自由長が10cm程度ものが用いられる。図1のような組立状態で柱4に引き抜き力が加わるとき、コイルスプリング10の弾性力が耐引き抜き力として作用する。
図1、図4に示すように、躯体側水平突片87および下側水平突片75の幅方向の中央部分には、連結ユニット9が取り付けられる。連結ユニット9は、躯体側水平突片87の上に配置される耐振動用の皿ばね重合ユニット91(耐振動用緩衝部材)と、下側水平突片75の下側に配置される耐引抜力用の皿ばね重合ユニット92(耐引抜力用緩衝部材)と、躯体側水平突片87と下側水平突片75との間に配置される皿ばね重合ユニット93(耐圧縮力用緩衝部材)と、これら3つの皿ばね重合ユニット91、92、93、躯体側水平突片87、および下側水平突片75の全てを上下に貫通するように装着されるボルト94と、ボルト94に締着されるナット95を備えている。ボルト94にナット95を締着すると、締着部位が上下方向に締め付けられる。
図5は、皿ばね重合ユニット91、92、93の断面図および連結ユニット9による締着部位の縦断面図である。図5(a)(b)は皿ばね重合ユニット91、92、93の断面図であり、図5(c)は連結ユニット9による締着部位の縦断面図である。この図に示すように、皿ばね重合ユニット91、92、93は、複数枚の炭素鋼製の皿ばね96を上下方向に重ねた皿ばね重合体97と、皿ばね重合体97の上下に配置したワッシャー98と、皿ばね重合体97およびワッシャー98を外周側から被覆する弾性体99を備えている。各皿ばね96は直径3cm程度の円環状をしており、中央に貫通孔96aが形成されている。ここで、皿ばね重合ユニット92、93は同数(例えば、9枚)の皿ばね96を用いて構成してあり、最も下の1枚の皿ばね96のみ上向きに配置され、他の皿ばね96は全て下向きの状態で重なっている。一方、皿ばね重合ユニット91は皿ばね重合ユニット92、93よりも少ない数の皿ばね96を用いて構成されており、最も上の1枚の皿ばね96のみ下向きに配置され、他の皿ばね96は全て上向きの状態で重なっている。ワッシャー98は皿ばね96と同一径であり、厚肉リング状の重荷重用のものが用いられる。また、弾性体99としては、厚肉の樹脂やゴムを円筒形に形成したものが用いられる。
このような皿ばね重合ユニット91、92、93を用いて躯体側水平突片87と下側水平突片75を連結することにより、皿ばね重合ユニット92、93を構成する皿ばね96のばね力およびその積層枚数に応じた引き抜き力および圧縮力の発生時に皿ばね重合ユニット92、93が引き抜き方向および圧縮方向に変形し、引き抜き力の発生時と圧縮力の発生時のいずれの場合においても地震による振動を吸収できる。また、皿ばね重合ユニット91は、その皿ばね枚数を他の皿ばね重合ユニット92、93の皿ばね枚数よりも少なくしているため、既設建物1の近くを車両等が通過するときの振動など、地震時よりも振幅の小さい各種の生活振動を吸収できる。
以上のように、本実施形態の後付け耐震補強構造体5およびこれを構成する後付け耐震補強金物ユニット5Aは、既存の布基礎2の隣に増設基礎6を打設して、布基礎2を壊すことなく布基礎2と増設基礎6を一体化する。そして、布基礎2および増設基礎6の双方にアンカーボルト(アンカーボルト12およびケミカルアンカー13)によって基礎固定金物7を固定する。従って、地震時の力を確実に両基礎に伝達でき、既存の布基礎2の負担を減らすことができる。また、増設基礎6のサイズをある程度以上の大きさ(本実施形態では、0.25m2程度)にしたことにより、全体として支持力を大幅に上げることができる。従って、既設建物1の耐震性能を確実に向上させることができ、既設建物1の揺れを確実に軽減できる。
また、基礎固定金物7と躯体固定金物8を連結ユニット9によって弾性的に連結すると共に両金物の間にコイルスプリング10を配置しているため、これらの緩衝作用と、既存の布基礎2および増設基礎6の支持力により、通し柱などの既存の柱4の浮き上がりや変形を軽減できる。この場合に、地震時の引き抜き荷重による連結ユニット9の変形量が柱4と土台3のほぞ継ぎにおけるほぞ高さを越えないように構成することにより、柱4の引き抜きを確実に回避できる。また、コイルスプリング10は上下の荷重だけでなく左右方向の揺れに対しても緩衝作用があるため、上下左右の揺れを効果的に軽減できる。よって、既設建物1の耐震性能および振動防止効果を大幅に高めることができ、生活振動に対する耐振動性も合わせて確保できる。
更に、本実施形態では、基礎固定金物7および躯体固定金物8の板厚を9mmにしている。このように、鉄鋼構造の建物の構造部材として用いられる鋼材と同等の板厚の鋼材からなる固定金物を用いることにより、地震時の引き抜き力に耐えられる補強構造とすることができ、既設建物1の構造部材に作用する地震時の力を確実に増設基礎6および布基礎2に伝達できる。加えて、高い耐久性が得られ、長期にわたって耐震性能を確保できる。また、既設建物1に対して補強作業を行う際の作業性が良く、後付けによる建物外観への影響もそれほど大きくないという利点がある。
なお、上記実施形態では、躯体固定金物8を柱4の側面との間にボード4a(外装材など)を挟んで固定しているが、柱4の側面に直接躯体固定金物8を当接させて固定する構造としてもよい。また、上記実施形態では、柱4のみに固定部材90を取り付けていたが、土台3に対しても固定部材90を打ち込んで、柱4だけでなく土台3と躯体固定金物8とを緊結する構造としてもよい。
また、本考案の実施にあたって、後付け耐震補強構造体5およびこれを構成する後付け耐震補強金物ユニット5Aの各部の具体的形状、構造、材質、数、大きさ、これらの相対位置関係等は、上記考案の要旨に反しない限り様々の形態とすることができる。
1…既設建物
2a…側面
2…布基礎
3…土台
4…柱
4a…ボード
5…後付け耐震補強構造体
5A…後付け耐震補強金物ユニット
6…増設基礎
7…基礎固定金物
8…躯体固定金物
9…連結ユニット
10…コイルスプリング
11…差筋アンカー
12…アンカーボルト
13…ケミカルアンカー
71…既設基礎固定部
72…増設基礎固定部
73…三角リブ
74…上側水平突片
75…下側水平突片
75a…ボルト孔
76…縦リブ
77…固定孔
78…固定孔
81…躯体固定部
82…平行板部
83…補強リブ
84…補強リブ
85…補強リブ
86…補強リブ
87…躯体側水平突片
87a…ボルト孔
88…作業孔
89…固定孔
90…固定部材
91…皿ばね重合ユニット
92…皿ばね重合ユニット
93…皿ばね重合ユニット
94…ボルト
95…ナット
96…皿ばね
96a…貫通孔
97…皿ばね重合体
98…ワッシャー
99…弾性体
2a…側面
2…布基礎
3…土台
4…柱
4a…ボード
5…後付け耐震補強構造体
5A…後付け耐震補強金物ユニット
6…増設基礎
7…基礎固定金物
8…躯体固定金物
9…連結ユニット
10…コイルスプリング
11…差筋アンカー
12…アンカーボルト
13…ケミカルアンカー
71…既設基礎固定部
72…増設基礎固定部
73…三角リブ
74…上側水平突片
75…下側水平突片
75a…ボルト孔
76…縦リブ
77…固定孔
78…固定孔
81…躯体固定部
82…平行板部
83…補強リブ
84…補強リブ
85…補強リブ
86…補強リブ
87…躯体側水平突片
87a…ボルト孔
88…作業孔
89…固定孔
90…固定部材
91…皿ばね重合ユニット
92…皿ばね重合ユニット
93…皿ばね重合ユニット
94…ボルト
95…ナット
96…皿ばね
96a…貫通孔
97…皿ばね重合体
98…ワッシャー
99…弾性体
Claims (6)
- 既設基礎(2)と、当該既設基礎(2)の上に設置される既設構造部材(4)とを連結する後付け耐震補強構造体(5)であって、
前記既設基礎(2)に沿って増設され当該既設基礎(2)と一体化している増設基礎(6)と、
前記既設基礎(2)および前記増設基礎(6)に固定される基礎固定金物(7)と、
前記既設構造部材(4)に固定される躯体固定金物(8)と、
前記基礎固定金物(7)と前記躯体固定金物(8)を連結しており、前記既設構造部材(4)の引抜方向および圧縮方向に伸縮可能な連結ユニット(9)と、
前記躯体固定金物(8)と前記基礎固定金物(7)の間に介在するコイルスプリング(10)とを備えることを特徴とする後付け耐震補強構造体(5)。 - 請求項1において、
前記基礎固定金物(7)は、
前記既設基礎(2)の側面に沿って上下方向に延びる板状の既設基礎固定部(71)と、
当該既設基礎固定部(71)の下端縁から水平に突出する板状の増設基礎固定部(72)と、
当該増設基礎固定部(72)の上方において前記既設基礎固定部(71)から突出している上側水平突片(74)および下側水平突片(75)を備え、
前記躯体固定金物(8)は、
前記既設構造部材(4)の側面に沿って上下方向に延びる板状の躯体固定部(81)と、
当該躯体固定部(81)と平行に延びる平行板部(82)と、
前記躯体固定部(81)と前記平行板部(82)を連結する補強リブ(83、84、85)と、
前記平行板部(82)から前記躯体固定部(81)側に向けて水平に突出する躯体側水平突片(87)を備え、
前記基礎固定金物(7)と前記躯体固定金物(8)は、前記上側水平突片(74)、前記躯体側水平突片(87)、前記下側水平突片(75)がこの順で上から下に重なる配置となるように、前記既設基礎(2)および前記増設基礎(6)に固定され、
前記上側水平突片(74)と前記躯体側水平突片(87)の間に前記コイルスプリング(10)が配置され、
前記躯体側水平突片(87)と前記下側水平突片(75)が前記連結ユニット(9)を介して連結されていることを特徴とする後付け耐震補強構造体(5)。 - 請求項2において、
前記躯体固定金物(8)の前記躯体固定部(81)には、上下方向に千鳥状に配列された複数の固定孔(89)が形成されていることを特徴とする後付け耐震補強構造体(5)。 - 請求項2または3において、
前記連結ユニット(9)は、
前記躯体側水平突片(87)と前記下側水平突片(75)との間に配置される耐圧縮力用緩衝部材(93)と、
前記躯体側水平突片(87)の上側に配置される耐振動用緩衝部材(91)と、
前記下側水平突片(75)の下側に配置される耐引抜力用緩衝部材(92)と、
前記耐振動用緩衝部材(91)、前記躯体側水平突片(87)、前記耐圧縮力用緩衝部材(93)、前記下側水平突片(75)、前記耐引抜力用緩衝部材(92)が上下に重なった締着部位を上下方向に締め付けるボルト(94)およびナット(95)を備えており、
前記耐圧縮力用緩衝部材(93)、前記耐振動用緩衝部材(91)、および前記耐引抜力用緩衝部材(92)は、複数枚の皿ばね(96)を上下方向に重ねた皿ばね重合体(97)と、当該皿ばね重合体(97)の上下に配置したワッシャー(98)と、前記皿ばね重合体(97)および前記ワッシャー(98)の外周側を被覆する弾性体(99)とを備える皿ばね重合ユニット(91/92/93)であることを特徴とする後付け耐震補強構造体(5)。 - 請求項2ないし4のいずれかの項において、
前記基礎固定金物(7)は、
前記増設基礎(6)の打設時に当該増設基礎(6)に植設されたアンカーボルト(12)を介して、前記増設基礎固定部(72)が前記増設基礎(6)に固定されると共に、
前記既設基礎(2)に対して後施工で植設されたケミカルアンカー(13)を介して、前記既設基礎固定部(71)が前記既設基礎(2)に固定され、
前記増設基礎(6)は、前記既設基礎(2)に後施工で植設された差筋アンカー(11)によって前記既設基礎(2)と一体に接合されていることを特徴とする後付け耐震補強構造体(5)。 - 請求項2ないし5のいずれかの項に記載の後付け耐震補強構造体(5)における前記基礎固定金物(7)、前記躯体固定金物(8)、前記連結ユニット(9)、および前記コイルスプリング(10)を備える後付け耐震補強金物ユニット(5A)。
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