JP3179851B2 - Cr含有ステンレス鋼板の表面仕上げ方法 - Google Patents

Cr含有ステンレス鋼板の表面仕上げ方法

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JP3179851B2
JP3179851B2 JP08961492A JP8961492A JP3179851B2 JP 3179851 B2 JP3179851 B2 JP 3179851B2 JP 08961492 A JP08961492 A JP 08961492A JP 8961492 A JP8961492 A JP 8961492A JP 3179851 B2 JP3179851 B2 JP 3179851B2
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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種構造材料,建築材
料等として使用されるCr含有ステンレス鋼に、耐食性
を低下させることなく優れた研磨面を付与する表面仕上
げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】SUS329J4L等の二相ステンレス
鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比較して耐応力
腐食割れ性に優れ、フェライト系ステンレス鋼等に比較
して溶接性等に優れている。この性質を利用して、広範
な分野において各種構造用材料として二相ステンレス鋼
が使用されている。特に最近では、貯水槽等の構造部材
としての用途が注目を浴びている。
【0003】ステンレス鋼製貯水槽は、別名パネルタン
クと呼ばれているように、約1m四方のステンレス鋼板
を溶接等で組み合わせることにより構築されている。そ
のため、それぞれのステンレス鋼板の間で表面状態が均
一であることが、完成されたステンレス鋼製貯水槽の外
観を確保する上から必要とされる。また、屋外構造物と
して貯水槽が設置されることから、太陽光等による反射
に対する防幻性を備えていることが要求される。
【0004】そこで、貯水槽として使用されるとき、二
相ステンレス鋼板に通常の酸洗を行った後で、機械研磨
を施することにより二相ステンレス鋼板の表面状態を揃
えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ステンレス鋼
板に機械研磨を施したとき、耐食性が低下する場合があ
る。すなわち、ステンレス鋼の耐食性はステンレス鋼表
面に形成されている不動態皮膜によって維持されるもの
であるが、機械研磨によって不動態皮膜が破壊され、耐
食性が低下する。その結果、貯水槽表面に錆が発生し、
外観が著しく損なわれる。
【0006】また、高速のベルトを使用してステンレス
鋼板を機械研磨するとき、ステンレス鋼と研磨ベルトと
の摩擦によってステンレス鋼の表面温度が上昇し、表面
が軽微に酸化されることもある。酸化の程度によって
は、研磨後のステンレス鋼板を大気雰囲気に曝したと
き、不動態皮膜の再生が十分に行われないことになる。
これによっても、耐食性の低下が生じる。
【0007】研磨後のステンレス鋼に耐食性低下がみら
れるのは、二相ステンレス鋼に限らず、フェライト系ス
テンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼でも同様で
ある。しかし、これまでのところ研磨後耐食性を確保す
る方法が確立されておらず、耐食性低下を考慮しながら
研磨仕上げ程度を定めているのが実情である。そのた
め、貯水槽等の構築物表面の外観及び均質性をある程度
犠牲にしても、所定の耐食性を確保することが必要な場
合も生じる。
【0008】本発明は、このような問題を解消すべく案
出されたものであり、研磨後のステンレス鋼板を酸洗す
ることにより、耐食性の低下を生じることなく、研磨仕
上げ独特の均質な外観を呈するステンレス鋼板を提供す
ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の表面仕上げ方法
は、その目的を達成するため、Oが0.005重量%以
下の低O含有量及びSが0.002重量%以下の低S含
有量でCrよりも酸素親和力の大きなV、Ti、Zr、
Al、Ca、希土類金属等の易酸化性元素を1種以上含
有させたステンレス鋼板を、100番以上の番手の研磨
ベルトを使用して機械研磨した後、硝酸系の酸洗液又は
硝酸−フッ酸系の混合酸洗液を使用した酸洗によって前
記機械研磨の際に生じた酸化皮膜を除去すると共に不動
態皮膜を前記ステンレス鋼板の表面に形成することを特
徴とする。ステンレス鋼板の酸洗は、硝酸濃度4〜50
%酸洗液又は硝酸濃度4〜50%及びフッ酸濃度0.2
〜5%の混合酸洗液を使用し、浸漬時間20秒以上で行
うことが好ましい。
【0010】
【作 用】ステンレス鋼板の耐食性が研磨によって低下
するメカニズムは、次のように考えられている。すなわ
ち、ステンレス鋼板1の表面は、図1(a)に示すよう
に不動態皮膜2で覆われている。不動態皮膜2は、ステ
ンレス鋼板1を大気雰囲気に曝したとき、Crを初めと
する合金成分の酸化物及び水酸化物によって形成される
ものであり、ステンレス鋼板1の地肌に対する防食作用
を呈する。或いは、酸洗等によって、調質された不動態
皮膜2を形成する場合もある。
【0011】ところが、ステンレス鋼板1を機械研磨す
ると、不動態皮膜2が破壊される。そして、ステンレス
鋼板1と研磨ベルトとの摩擦によって、ステンレス鋼板
1の表面温度が上昇する。たとえば、高速で研磨ベルト
を稼動させる場合、ステンレス鋼板1の表面温度が20
0℃を超える高温に達することもある。
【0012】高温状態でステンレス鋼板1が大気雰囲気
に曝されると、Crの優先酸化によって酸化膜3が形成
される。酸化膜3は、ステンレス鋼板1から拡散したC
rの酸化によって生じたものであり、その分だけステン
レス鋼板1の表面部にCr欠乏層4が形成される。酸化
膜3は、通常のステンレス鋼板1表面に形成されている
不動態皮膜2に比較して、OH基を有しておらず多孔質
で且つ厚い。
【0013】酸化膜3で覆われたステンレス鋼板1を大
気雰囲気に曝すと、大気に含まれているCl- 等の腐食
性イオン等が酸化膜3を透過し、ステンレス鋼板1の地
肌に到達する。しかも、ステンレス鋼板1の表面部に
は、酸化膜3の形成によってCrが消費されたCr欠乏
層4がある。Cr欠乏層4は、Cr含有量が本来のCr
含有量よりも数%低下しており、耐食性に劣った層であ
る。そのため、酸化膜3を透過した腐食性イオン等によ
って容易に腐食反応が進行する。また、酸化膜3のため
に、ステンレス鋼特有の不動態皮膜の形成が抑制され、
これによっても腐食反応の進行が助長される。
【0014】本発明者等は、このような腐食メカニズム
に着目し、Cr欠乏層4の生成を抑制すると共に、研磨
後のステンレス鋼板1表面に健全な不動態皮膜を形成す
ることによって、耐食性の確保を図る表面仕上げを検討
した。その結果、ステンレス鋼板1として、Crよりも
酸素親和力が大きなV,Al,Ti,Zr,Al,C
a,希土類金属等の易酸化元素を含むステンレス鋼を使
用し、且つ研磨後に酸洗を施すとき、健全な不動態皮膜
が形成され、耐食性が向上することを見い出した。
【0015】本発明の表面仕上げによるとき、図2に示
す過程でステンレス鋼板の表面に不動態皮膜が形成され
るものと推察される。研磨される前のステンレス鋼板1
の表面には、図1(a)の場合と同様に不動態皮膜2が
形成されている。不動態皮膜2は、機械研磨によってス
テンレス鋼板1の表面から除去される。他方、ステンレ
ス鋼板1に含まれているV,Ti,Zr,Al,Ca,
希土類金属等の易酸化元素は、ステンレス鋼板1の表面
部に濃縮され、大気雰囲気中の酸素と反応する。そのた
め、研磨中においてもステンレス鋼板1の表面に酸化皮
膜3’が瞬時に形成される。
【0016】酸化皮膜3’は、図1(b)の酸化膜3と
異なり、Crよりも酸化され易いV,Ti,Zr,A
l,Ca,希土類金属等の酸化物で構成される。この酸
化皮膜3’は、素地からのCrの拡散を抑制する作用を
呈する。そのため、図1(c)に示したCr欠乏層4が
ステンレス鋼板1の表面部に形成されることがない。
【0017】酸化皮膜3’は、研磨後の酸洗によりステ
ンレス鋼板1の表面から除去される。このとき、ステン
レス鋼板1の表面に薄い不動態皮膜2’が再生される。
再生した不動態皮膜2’は、Crの他にV,Ti,Z
r,Al,Ca,希土類金属等の元素の酸化物及び水酸
化物からなる。不動態皮膜2’は、これら元素の存在に
よって緻密性に優れた構造となり、大気雰囲気がステン
レス鋼板1の表面に直接接触することを防ぐ。
【0018】このように、Cr欠乏層4を生じることな
く緻密な不動態皮膜2’を再生することにより、研磨後
のステンレス鋼板1に十分な耐食性を付与することがで
きる。そのため、耐食性の低下を考慮することなく、十
分な研磨仕上げによってステンレス鋼板1の表面を均一
性のある外観に仕上げることが可能となる。
【0019】ステンレス鋼板としては、二相ステンレス
鋼,フェライト系ステンレス鋼,オーステナイト系ステ
ンレス鋼等の各種ステンレス鋼が使用される。ただし、
ステンレス鋼に含まれているOは、Crと結合してCr
欠乏層を形成する原因になると共に、V,Ti,Zr,
Al,Ca,希土類金属等の易酸化元素と結合して酸化
物を形成する。その結果、V,Ti,Zr,Al,C
a,希土類金属等の易酸化性元素を添加した効果が失わ
れる。また、鋼中のSは、MnS等の非金属系介在物を
生成し、発銹の起点となる。そこで、O含有量及びS含
有量を極力少なくし、且つO及びSを固定する元素を十
分に添加することが好ましい。
【0020】本発明に従った表面仕上げで処理されるス
テンレス鋼として二相ステンレス鋼を使用するとき、
C:0.03重量%以下,Si:1.0重量%以下,M
n:1.5重量%以下,P:0.04重量%以下,S:
0.002重量%以下,Ni:4.0〜9.0重量%,
Cr:20.0〜30.0重量%,Mo:2.0〜4.
0重量%,Cu:1.0重量%以下,V:0.01〜
0.50重量%,Al:0.01〜0.30重量%,
N:0.08〜0.30重量%,O:0.005重量%
以下の組成を持つもの、或いは更にTi:0.01〜
0.50重量%,Zr:0.01〜0.50重量%,C
a:0.1重量%以下,希土類金属:0.1重量%以下
の1種又は2種以上を含むものが好適である。その理由
を、次に説明する。
【0021】C: ステンレス鋼中に不可避的に含まれ
る元素であり、C含有量を低減するとき、炭化物の生成
が少なくなり、加工性が向上する。また、C含有量の低
下に伴って、耐食性及び耐粒界腐食性も改善される。そ
のため、C含有量の上限を0.03重量%とした。
【0022】Si: 脱酸剤としてステンレス鋼に含ま
れる元素である。Si含有量が1.0重量%を超える
と、σ相形成能が強くなり、靭性,耐食性等を劣化させ
る。そこで、Si含有量の上限を1.0重量%に定め
た。
【0023】Mn: ステンレス鋼の溶接性を向上させ
る上で、有効な合金元素である。しかし、1.5重量%
を超えるMn含有量では、耐食性の低下がみられる。そ
こで、Mn含有量の上限を1.5重量%とした。
【0024】P: ステンレス鋼に不可避的に含まれる
元素であり、加工性,耐応力腐食割れ性等に有害な影響
を与える。しかし、P含有量を極めて低くすることは、
製鋼上から製造コストの上昇を招く。そこで、P含有量
の上限を0.04重量%に定めた。
【0025】S: Ti,Zr,V等の易酸化性元素と
結合して硫化物を生成し、易酸化性元素を消費する。し
かも、鋼中のMnと反応し非金属系介在物MnSを生成
し、耐孔食性,耐隙間腐食性等を低下させる。更に、S
は、フェライト−オーステナイト粒界に偏析し易く、二
相ステンレス鋼の熱間加工性を低下させる。Sによるこ
のような悪影響を抑制するため、S含有量を0.002
重量%以下にすることが必要である。
【0026】Ni: 耐食性の向上に有効であると共
に、二相組織を形成する上で不可欠な合金元素である。
Ni含有量は、Cr含有量との関係で適切な二相組織を
得るため、4.0〜9.0重量%の範囲で定める。
【0027】Cr: 耐食性の向上及び二相組織の形成
を図る上で、必要な合金元素である。20.0重量%未
満のCr含有量では、二相ステンレス鋼が使用される過
酷な腐食雰囲気で十分な耐食性を呈さず、またフェライ
ト相の比率も低下する。逆に、Cr含有量が30.0重
量%を超えるとき、σ相が析出し易くなり、靭性,溶接
性等が低下する。そこで、Cr含有量は、Ni含有量と
の関係において、20.0〜30.0重量%の範囲で定
める。
【0028】Mo: Crと共同して耐食性を向上さ
せ、塩素イオンを含む腐食環境における局部腐食に対す
る抵抗性を向上させる有効な合金元素である。20.0
重量%を超えるCrを含有する二相ステンレス鋼におい
ては、2.0重量%未満のMo含有量では、Cr及びM
oの相乗効果が得られず、耐局部腐食の改善が十分に行
われない。しかし、4.0重量%を超えるMoを含有さ
せると、σ相析出に起因した脆化がみられ、加工性,靭
性等を劣化させる。そこで、Mo含有量は、2.0〜
4.0重量%の範囲に定める。
【0029】Cu: 耐応力腐食割れ性,耐亜硫酸ガス
腐食性等を改善する上で、有効な合金元素である。しか
し、1.0重量%を超えるCu含有量では、二相ステン
レス鋼の熱間加工性が低下する。そこで、Cu含有量の
上限を1.0重量%とした。
【0030】N: Cと同様にオーステナイト形成元素
であり、オーステナイト相に固溶し二相ステンレス鋼の
耐食性を向上させる。その結果、フェライト相に比較し
てCr含有量及びMo含有量が若干少ないことに起因す
るオーステナイト相の耐食性低下が抑制される。この
点、特に二相ステンレス鋼の耐食性をバランスよく保持
する上で、Nは必須の合金成分である。また、Nによっ
てσ相の析出が抑制され、靭性の向上も図られる。しか
し、N含有量が0.30重量%を超えると、固溶限以上
のNが含有されるため、過剰のNがガスとなって鋼塊に
欠陥を発生させる。したがって、N含有量は、0.08
〜0.30重量%の範囲に定めた。
【0031】V,Ti,Zr: 炭化物形成元素である
と共に、強力な酸化物形成元素である。機械研磨時にス
テンレス鋼板の表面部が酸化される際、雰囲気中及び鋼
中の酸素と優先的に結合し、Crの酸化に起因するステ
ンレス鋼板の耐食性低下を防止する。なかでも、Vは、
原料を選別することによってCrと同時に比較的安価に
添加することができる。V,Ti,Zr等の添加効果を
発現させる上から、0.01重量%以上の含有量が必要
とされる。しかし、0.50重量%を超えてV,Ti,
Zr等を含有させると、非金属系介在物が多量に生成
し、圧延時等にストリーク状の表面疵を発生させる等、
ステンレス鋼板の表面性状に悪影響を及ぼす。したがっ
て、V,Ti,Zr等の含有量は、それぞれ0.01〜
0.50重量%の範囲に定めた。
【0032】Al: V,Ti,Zr等と同様に、強力
な酸化物形成元素である。Alは、機械研磨時にステン
レス鋼の表面が酸化される際、雰囲気中の酸素と優先的
に結合し、Crの酸化に起因するステンレス鋼板の耐食
性低下を防止する。このようなAlの効果は、含有量
0.01重量%未満でも僅かに発現させることができる
が、十分な効果を得ることから0.01重量%以上のA
lを含有させることが好ましい。また、Alは、極めて
強力なフェライト形成元素であり、0.30重量%を超
える多量の添加は二相組織のバランスを損なう。そこ
で、Al含有量は、0.01〜0.30重量%の範囲で
定める。
【0033】Ca:Alと同様に強力な酸化物形成元素
であると共に、強力な硫化物形成元素でもあり、脱酸剤
としても使用される。しかし、Ca含有量が0.1重量
%を超えるとき、鋼中に多数の非金属介在物が生成し、
ステンレス鋼の清浄度を低下させる。その結果、加工
性,耐食性等が低下する原因となる。したがって、Ca
含有量の上限を0.1重量%に定めた。
【0034】希土類金属: V,Ti,Zr等と同様
に、OやSを低減する作用を呈する。希土類金属による
脱酸,脱硫作用は、La<Ceの場合により効果的にな
る。しかし、0.1重量%を超える希土類金属の添加量
では、鋼中に多数の非金属介在物が生成し、ステンレス
鋼の清浄度を低下させる。したがって、希土類金属含有
量の上限を0.1重量%に定めた。
【0035】また、フェライト系ステンレス鋼を本発明
に従って表面仕上げする場合、C:0.03重量%以
下、Si:1.0重量%以下、Mn:1.5重量%以
下、P:0.04重量%以下、S:0.002重量%以
下、Ni:0.6重量%以下、Cr:17.0〜30.
0重量%、Mo:4.0重量%以下、Cu:1.0重量
%以下、V:0.01〜0.50重量%、Al:0.0
1〜0.30重量%、N:0.03重量%以下、O:
0.005重量%以下の組成を持つもの、或いは更にT
i:0.01〜0.50重量%、Zr:0.01〜0.
50重量%、Ca:0.1重量%以下、希土類金属:
0.1重量以下の1種又は2種以上を含むものが好適で
ある。以下に、その理由を説明する。
【0036】C:ステンレス鋼中に不可避的に含まれる
元素であり、C含有量を低減するときき、炭化物の生成
が少なくなり、加工性が向上する。また、C含有量の低
下に伴って、耐食性及び耐粒界腐食性も改善される。そ
のため、C含有量の上限を0.03重量%とした。
【0037】Si: 脱酸剤としてステンレス鋼に含ま
れる元素である。Si含有量が1.0重量%を超える
と、σ相形成能が強くなり、靭性,耐食性等を劣化させ
る。そこで、Si含有量の上限を1.0重量%に定め
た。
【0038】Mn: ステンレス鋼の溶接性を向上させ
る上で、有効な合金元素である。しかし、1.5重量%
を超えるMn含有量では、耐食性の低下がみられる。そ
こで、Mn含有量の上限を1.5重量%とした。
【0039】P: ステンレス鋼に不可避的に含まれる
元素であり、加工性,耐応力腐食割れ性等に有害な影響
を与える。しかし、P含有量を極めて低くすることは、
製鋼上から製造コストの上昇を招く。そこで、P含有量
の上限を0.04重量%に定めた。
【0040】S: Ti,Zr,V等の易酸化性元素と
結合して硫化物を生成し、易酸化性元素を消費する。し
かも、鋼中のMnと反応し非金属系介在物MnSを生成
し、耐孔食性,耐隙間腐食性等を低下させる。このよう
な悪影響を抑制するため、S含有量を0.002重量%
以下にすることが必要である。
【0041】Ni: 耐食性の向上に有効であると共
に、鋼の靭性を向上させる合金元素である。しかし、多
量のNi添加は、ステンレス鋼を硬質にすると共に、製
品コストを上昇させる原因となる。してがって、通常の
フェライト系ステンレス鋼と同様に0.6重量%以下の
Ni含有量とする。
【0042】Cr: 耐食性の向上を図る上で、必要な
合金元素である。17.0重量%未満のCr含有量で
は、フェライト系ステンレス鋼が使用される過酷な腐食
雰囲気で十分な耐食性を呈さず、またフェライト相の比
率も低下する。逆に、Cr含有量が30.0重量%を超
えるとき、σ相が析出し易くなり、靭性,溶接性等が低
下する。そこで、Cr含有量は、17.0〜30.0重
量%の範囲で定める。
【0043】Mo: Crと共同して耐食性を向上さ
せ、塩素イオンを含む腐食環境における局部腐食に対す
る抵抗性を向上させる有効な合金元素である。しかし、
4.0重量%を超えるMoを含有させると、σ相析出に
起因した脆化がみられ、加工性,靭性等を劣化させる。
そこで、Mo含有量は、4.0重量%以下とした。
【0044】Cu: 耐応力腐食割れ性,耐亜硫酸ガス
腐食性等を改善する上で、有効な合金元素である。しか
し、1.0重量%を超えるCu含有量では、熱間加工性
が低下する。そこで、Cu含有量の上限を1.0重量%
とした。
【0045】N: Cと同様にステンレス鋼中に不可避
的に含まれる元素であり、N含有量の低減によって加工
性が向上する。したがって、N含有量を0.03重量%
以下とした。
【0046】V,Ti,Zr: 炭化物形成元素である
と共に、強力な酸化物形成元素である。機械研磨時にス
テンレス鋼板の表面部が酸化される際、雰囲気中及び鋼
中の酸素と優先的に結合し、Crの酸化に起因するステ
ンレス鋼板の耐食性低下を防止する。なかでも、Vは、
原料を選別することによってCrと同時に比較的安価に
添加することができる。V,Ti,Zr等の添加効果を
発現させる上から、0.01重量%以上の含有量が必要
とされる。しかし、0.50重量%を超えてV,Ti,
Zr等を含有させると、非金属系介在物が多量に生成
し、圧延時等にストリーク状の表面疵を発生させる等、
ステンレス鋼板の表面性状に悪影響を及ぼす。したがっ
て、V,Ti,Zr等の含有量は、それぞれ0.01〜
0.50重量%の範囲に定めた。
【0047】Al: V,Ti,Zr等と同様に、強力
な酸化物形成元素である。Alは、機械研磨時にステン
レス鋼の表面が酸化される際、雰囲気中の酸素と優先的
に結合し、Crの酸化に起因するステンレス鋼板の耐食
性低下を防止する。このようなAlの効果は、含有量
0.01重量%未満でも僅かに発現させることができる
が、十分な効果を得ることから0.01重量%以上のA
lを含有させることが好ましい。しかし、0.30重量
%を超える多量の添加は、多数の非金属介在物を生成す
ると共に、ステンレス鋼の靭性を低下させる。そこで、
Al含有量は、0.01〜0.30重量%の範囲で定め
る。
【0048】Ca:Alと同様に強力な酸化物形成元素
であると共に、強力な硫化物形成元素でもあり、脱酸剤
としても使用される。しかし、Ca含有量が0.1重量
%を超えるとき、鋼中に多数の非金属介在物が分散析出
し、ステンレス鋼の清浄度を低下させる。その結果、加
工性,耐食性等が低下する原因となる。したがって、C
a含有量の上限を0.1重量%に定めた。
【0049】希土類金属: V,Ti,Zr等と同様
に、OやSを低減する作用を呈する。希土類金属による
脱酸,脱硫作用は、La<Ceの場合により効果的にな
る。しかし、0.1重量%を超える希土類金属の添加量
では、鋼中に多数の非金属介在物が生成し、ステンレス
鋼の清浄度を低下させる。したがって、希土類金属含有
量の上限を0.1重量%に定めた。
【0050】また、オーステナイト系ステンレス鋼を本
発明に従って表面仕上げする場合、C:0.03重量%
以下、Si:1.0重量%以下、Mn:1.5重量%以
下、P:0.04重量%以下、S:0.002重量%以
下、Ni:8.0〜30.0重量%、Cr:18.0〜
30.0重量%、Mo:2.0〜8.0重量%、Cu:
1.0重量%以下、V:0.01〜0.50重量%、A
l:0.01〜0.30重量%、N:0.03重量%以
下、O:0.005重量%以下の組成を持つもの、或い
は更にTi:0.01〜0.50重量%、Zr:0.0
1〜0.50重量%、Ca:0.1重量%以下、希土類
金属:0.1重量%以下の1種又は2種以上を含むもの
が好適である。以下に、その理由を説明する。
【0051】C: ステンレス鋼中に不可避的に含まれ
る元素であり、C含有量を低減するときき、炭化物の生
成が少なくなり、加工性が向上する。また、C含有量の
低下に伴って、耐食性及び耐粒界腐食性も改善される。
そのため、C含有量の上限を0.03重量%とした。
【0052】Si: 脱酸剤としてステンレス鋼に含ま
れる元素である。Si含有量が1.0重量%を超える
と、σ相形成能が強くなり、靭性,耐食性等を劣化させ
る。そこで、Si含有量の上限を1.0重量%に定め
た。
【0053】Mn: ステンレス鋼の溶接性を向上させ
る上で、有効な合金元素である。しかし、1.5重量%
を超えるMn含有量では、耐食性の低下がみられる。そ
こで、Mn含有量の上限を1.5重量%とした。
【0054】P: ステンレス鋼に不可避的に含まれる
元素であり、加工性,耐応力腐食割れ性等に有害な影響
を与える。しかし、P含有量を極めて低くすることは、
製鋼上から製造コストの上昇を招く。そこで、P含有量
の上限を0.04重量%に定めた。
【0055】S: Ti,Zr,V等の易酸化性元素と
結合して硫化物を生成し、易酸化性元素を消費する。し
かも、鋼中のMnと反応し非金属系介在物MnSを生成
し、耐孔食性,耐隙間腐食性等を低下させる。更に、S
は、オーステナイト粒界に偏析し易く、ステンレス鋼の
熱間加工性を低下させる。このような悪影響を抑制する
ため、S含有量を0.002重量%以下にすることが必
要である。
【0056】Ni: 耐食性の向上に有効であると共
に、オーステナイト組織を形成する上で不可欠な合金元
素である。Ni含有量は、Cr含有量との関係で適切な
オーステナイト組織を得るため、8.0〜30.0重量
%の範囲で定められる。
【0057】Cr: 耐食性の向上を図る上で、必要な
合金元素である。18.0重量%未満のCr含有量で
は、ステンレス鋼が使用される過酷な腐食雰囲気で十分
な耐食性を呈さず、またフェライト相の比率も低下す
る。逆に、Cr含有量が30.0重量%を超えるとき、
σ相が析出し易くなり、靭性,溶接性等が低下する。そ
こで、Cr含有量は、18.0〜30.0重量%の範囲
で定める。
【0058】Mo: Crと共同して耐食性を向上さ
せ、塩素イオンを含む腐食環境における局部腐食に対す
る抵抗性を向上させる有効な合金元素である。20.0
重量%を超えるCrを含有するオーステナイト系ステン
レス鋼においては、2.0重量%未満のMo含有量で
は、Cr及びMoの相乗効果が得られず、耐局部腐食の
改善が十分に行われない。しかし、8.0重量%を超え
るMoを含有させると、σ相析出に起因した脆化がみら
れ、加工性,靭性等を劣化させる。そこで、Mo含有量
は、2.0〜8.0重量%の範囲に定める。
【0059】Cu: 耐応力腐食割れ性,耐亜硫酸ガス
腐食性等を改善する上で、有効な合金元素である。しか
し、1.0重量%を超えるCu含有量では、熱間加工性
が低下する。そこで、Cu含有量の上限を1.0重量%
とした。
【0060】N: Cと同様にオーステナイト形成元素
であり、オーステナイト相に固溶しステンレス鋼の耐食
性を向上させる。また、オーステナイト系ステンレス鋼
の耐食性を向上させるためにCr,Mo等のフェライト
系元素の含有量を上昇させるとき、オーステナイト組織
を維持するため多量のNi添加が必要になり、ステンレ
ス鋼のコストを上昇させる。この点、特にオーステナイ
ト系ステンレス鋼の耐食性を安価に保持する上で、Nは
必須の合金成分である。また、Nによってσ相の析出が
抑制され、靭性の向上も図られる。しかし、N含有量が
0.30重量%を超えると、固溶限以上のNが含有され
るため、過剰のNがガスとなって鋼塊に欠陥を発生させ
る。したがって、N含有量は、0.30重量%以下とし
た。
【0061】V,Ti,Zr: 炭化物形成元素である
と共に、強力な酸化物形成元素である。機械研磨時にス
テンレス鋼板の表面部が酸化される際、雰囲気中及び鋼
中の酸素と優先的に結合し、Crの酸化に起因するステ
ンレス鋼板の耐食性低下を防止する。なかでも、Vは、
原料を選別することによってCrと同時に比較的安価に
添加することができる。V,Ti,Zr等の添加効果を
発現させる上から、0.01重量%以上の含有量が必要
とされる。しかし、0.50重量%を超えてV,Ti,
Zr等を含有させると、非金属系介在物が多量に生成
し、圧延時等にストリーク状の表面疵を発生させる等、
ステンレス鋼板の表面性状に悪影響を及ぼす。したがっ
て、V,Ti,Zr等の含有量は、それぞれ0.01〜
0.50重量%の範囲に定めた。
【0062】Al: V,Ti,Zr等と同様に、強力
な酸化物形成元素である。Alは、機械研磨時にステン
レス鋼の表面が酸化される際、雰囲気中の酸素と優先的
に結合し、Crの酸化に起因するステンレス鋼板の耐食
性低下を防止する。このようなAlの効果は、含有量
0.01重量%未満でも僅かに発現させることができる
が、十分な効果を得ることから0.01重量%以上のA
lを含有させることが好ましい。また、Alは、極めて
強力なフェライト形成元素であり、0.30重量%を超
える多量の添加は、δフェライトの生成を促進させオー
ステナイト組織を不安定にする。そこで、Al含有量
は、0.01〜0.30重量%の範囲で定める。
【0063】Ca:Alと同様に強力な酸化物形成元素
であると共に、強力な硫化物形成元素でもあり、脱酸剤
としても使用される。しかし、Ca含有量が0.1重量
%を超えるとき、鋼中に多数の非金属介在物が分散析出
し、ステンレス鋼の清浄度を低下させる。その結果、加
工性,耐食性等が低下する原因となる。したがって、C
a含有量の上限を0.1重量%に定めた。
【0064】希土類金属: V,Ti,Zr等と同様
に、OやSを低減する作用を呈する。希土類金属による
脱酸,脱硫作用は、La<Ceの場合により効果的にな
る。しかし、0.1重量%を超える希土類金属の添加量
では、鋼中に多数の非金属介在物が生成し、ステンレス
鋼の清浄度を低下させる。したがって、希土類金属含有
量の上限を0.1重量%に定めた。
【0065】ステンレス鋼に含有されるV,Ti,Z
r,Al,Ca,希土類金属等の易酸化性元素は、機械
研磨時にCrに優先して酸素と結合し、酸化物を形成さ
せるために添加されるものであり、Crの酸化及びCr
欠乏層の生成を防止する点から含有量が決定される。ま
た、易酸化性元素は、1種又は2種以上の添加の何れで
あっても良い。
【0066】また、耐食性に優れた表面仕上げを行う上
で、機械研磨及び酸洗を次のように行うことが好まし
い。 機械研磨: ステンレス鋼板の耐食性は、表面の仕上げ
状態に応じて大きく変化する。100番未満の番手の研
磨ベルトを使用してステンレス鋼板を機械研磨すると
き、研磨疵を起点とする隙間腐食が発生し、研磨後のス
テンレス鋼板は、不十分な耐食性を呈する。逆に、60
0番を超える番手の研磨ベルトを使用した機械研磨で
は、研磨後の鋼板表面が極めて光沢に富むものとなり、
防幻性の点で問題を生じる。そこで、機械研磨に使用さ
れる研磨ベルトは、200〜600番の番手を持つもの
が好ましい。
【0067】酸洗液の濃度:ステンレス鋼の酸洗処理に
は、硝酸及びフッ酸の混合液が使用される。硝酸濃度4
%未満又はフッ酸濃度0.2%未満の混合液では、酸洗
及び不動態化処理が不十分であり、耐食性及び表面性状
に優れたステンレス鋼板を得ることができない。しか
し、50%を超える硝酸濃度の混合液、又は硝酸濃度及
びフッ酸濃度がそれぞれ50%及び5%を超える混合液
で酸洗を行うと、ステンレス鋼板が過剰に酸洗され易く
なり、機械研磨によって仕上げられた表面が損なわれ
る。したがって、硝酸濃度4〜50%の硝酸系酸洗液、
又は硝酸濃度4〜50%及びフッ酸濃度0.2〜5%の
混合酸洗液を使用することが好ましい。この混合酸洗液
を使用した酸洗では、研磨されたままの表面性状がほと
んど変化することなく、酸洗後のステンレス鋼板を従来
の研磨仕上げ材と接合した場合にも腐食等の問題を生じ
ることがない。
【0068】酸洗液への浸漬時間:十分な不動態化処理
を行うためには、研磨後のステンレスを酸洗液に浸漬す
る時間を長くした方がよい。これによって、酸洗による
耐食性向上効果が発現される。特に、浸漬時間を20秒
以上にするとき、耐食性の向上が顕著になる。しかし、
ステンレス鋼のコイルを連続ラインで酸洗する場合、長
時間の浸漬はコスト高となることから、実操業上での浸
漬時間は20〜300秒の間で定めることが好ましい。
【0069】
【実施例】本実施例で使用したステンレス鋼の成分を表
1に示す。なお、試験番号1〜3は本発明例であり、試
験番号4〜6は比較例である。試験番号1〜3のステン
レス鋼は、低O,低Sであると共に、酸化によるCrの
損失を軽減する元素としてV及びAlが含有されてい
る。更に、試験番号2のステンレス鋼は希土類金属を、
試験番号3のステンレス鋼はTi,Zr,Caを含有し
ている。他方、試験番号4及び5のステンレス鋼は、S
US329J4Lに相当し、S含有量及びO含有量が高
く、V又はAlを含んでいない。残る試験番号6のステ
ンレス鋼は、SUS444に相当する組成を持ってい
る。また、試験番号1は、実ラインの通常の工程で製造
したステンレス鋼板である。他方、試験番号2〜6は、
実験用高周波溶解炉で溶製し、何れも熱間圧延,冷間圧
延,焼鈍及び酸洗を施して製造したステンレス鋼板であ
る。
【0070】
【表1】
【0071】試験番号1のステンレス鋼板を仕上げ焼鈍
した後、SUS304の酸洗条件で酸洗を施した。そし
て、80番及び320番の研磨材を使用して酸洗後のス
テンレス鋼板を機械研磨した後、酸洗処理を再度行っ
た。この酸洗には、硝酸濃度10%及びフッ酸濃度1%
で浴温が55℃の酸洗液Aと、硝酸濃度3%及びフッ酸
濃度0.1%で浴温が55℃の酸洗液Bを使用した。
【0072】それぞれの段階において、ステンレス鋼板
から試験片を切り出し、塩素イオン濃度1000ppm
で温度80℃の水溶液中で孔食電位を測定した。また、
濃度5%,温度35℃の食塩水を15分間噴霧した後、
相対湿度20%の雰囲気中で60℃に1時間保持する乾
燥し、相対湿度98%の湿潤雰囲気中で50℃に3時間
保持する塩水噴霧−乾燥−湿潤を1サイクルとして30
0サイクル繰り返す発銹試験を行った。試験結果を、表
2に示す。なお、発銹試験の評価は、発銹がみられない
ものを○,シミが発生したものを△,赤錆が発生したも
のを×として判定した。
【0073】
【表2】
【0074】ケースのステンレス鋼板は、SUS30
4と同様の条件下で酸洗されたものであり、高Cr,高
Moであることからスケール残りが生じている。そのた
め、二相ステンレス鋼本来の耐食性が示されていない。
研磨仕上げを施したケース及びのステンレス鋼板
は、不動態皮膜が機械研磨によって除去されているた
め、耐食性が著しく低下している。これに対し、研磨後
に酸洗処理したケース〜のステンレス鋼板では、耐
食性の回復がみられる。しかし、研磨材の番手が粗いケ
ース,酸洗液に対する浸漬時間の短いケース及び酸
洗液の濃度が低いケースでは、十分に耐食性が回復さ
れたステンレス鋼板が得られていない。これに対し、3
20番の研磨材で機械研磨したステンレス鋼板を酸洗液
Aで酸洗したケースでは、孔食電位も高く、発銹試験
においても十分な耐食性を呈するステンレス鋼板が得ら
れていることが判る。
【0075】更に、表1に示した各ステンレス鋼板を実
験室的にエメリーペーパで320番に仕上げた後、機械
研磨時にステンレス鋼板が昇温する温度に相当する20
0℃の熱処理を施し、機械研磨による酸化をシュミレー
トした。そして、酸洗液Aに100秒環浸漬した後、各
ステンレス鋼板の孔食電位を測定し、同じ条件下の発銹
試験に供した。試験結果を、表3に示す。なお、表3に
おける発銹試験の判定結果×は、ステンレス鋼板の表面
に赤錆が発生したことを示す。
【0076】
【表3】
【0077】表3から明らかなように、試験番号1〜3
の本発明例では、孔食電位が高く且つ発銹試験でも良好
な耐食性が示されている。しかし、試験番号4及び5の
比較例では、耐食性が劣り、孔食電位の低下や発銹試験
におけるシミの発生がみられる。また、試験番号6の比
較例では、表面外観を著しく損ねる赤錆の発生が随所に
みられた。試験番号4〜6の表面を観察したところ、M
nS等の非金属介在物を起点としてシミ,赤錆等が発生
していることが判った。
【0078】以上の実施例においては、二相ステンレス
に対する研磨−酸洗による表面仕上げを説明した。しか
し、本発明はこれに拘束されるものではなく、フェライ
ト系ステンレス鋼板,オーステナイト系ステンレス鋼板
等に対しても同様に適用される。この場合にも、O,S
等の不純物元素を低減し、V,Ti,Zr,Ca,希土
類金属等の易酸化性元素を含有した組成を対象とし、番
手100番以上の研磨ベルトを使用した機械研磨後に硝
酸−フッ酸系の混合酸洗液を使用して酸洗する限り、耐
食性及び表面外観の双方に優れた板材を提供することが
できる。
【0079】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、O及びSを低減しV,Ti,Zr,Al,Ca,希
土類金属等の易酸化性元素を含有させたステンレス鋼板
を機械研磨して所定の表面性状に仕上げた後、機械研磨
によって生じた酸化物層を酸洗により除去している。こ
のとき、易酸化性元素が優先的に酸化されて薄く緻密な
酸化皮膜が形成されるため、機械研磨時にCrの酸化が
抑制され、Cr欠乏層がステンレス鋼板の表面部に形成
されることがない。しかも、易酸化性元素に由来する酸
化皮膜は、酸洗処理によって形成される不動態皮膜に取
り込まれ、不動態皮膜を緻密構造にする。したがって、
酸洗後のステンレス鋼板は、表面外観の均一性及び優れ
た耐食性をもち、貯水槽,貯湯槽等を始めとする各種構
造用材料,建築用材料として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 機械研磨前後におけるステンレス鋼板の表面
状態の変化
【図2】 本発明に
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 足立 俊郎 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新 製鋼株式会社鉄鋼研究所内 (56)参考文献 特開 昭59−182976(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23G 1/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Oが0.005重量%以下の低O含有量
    及びSが0.002重量%以下の低S含有量でCrより
    も酸素親和力の大きなV、Ti、Zr、Al、Ca、希
    土類金属等の易酸化性元素を1種以上含有させたステン
    レス鋼板を、100番以上の番手の研磨ベルトを使用し
    て機械研磨した後、硝酸系の酸洗液又は硝酸−フッ酸系
    の混合酸洗液を使用した酸洗によって前記機械研磨の際
    に生じた酸化皮膜を除去すると共に不動態皮膜を前記ス
    テンレス鋼板の表面に形成することを特徴とするCr含
    有ステンレス鋼板の表面仕上げ方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の酸洗は、硝酸濃度4〜5
    0%の酸洗液又は硝酸濃度4〜50%及びフッ酸濃度
    0.2〜5%の混合酸洗液にステンレス鋼板を20秒以
    上浸漬することにより行われるCr含有ステンレス鋼板
    の表面仕上げ方法。
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