JP3177942B2 - ストロボ内蔵カメラ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はストロボ内蔵カメラに係
り、特に自動露出機能と常時発光式ストロボとを備えて
適正な露光量でカラー写真撮影することができるストロ
ボ内蔵カメラに関する。

【０００２】

【従来の技術】通常、逆光下で人物を撮影すると顔が暗
くなったり、また、逆光とまではいかなくても太陽が真
上に有るような場合には、顔に影ができてしまう。この
ような被写体の影を消すために日中でもストロボを発光
させて、外光による露光にストロボ光を付加させる常時
発光方式が知られている。ネガカラーフイルムを使用す
る場合には、露光オーバーに対してラチチュードが広い
ため、このような常時発光方式が好まれている。この種
の常時発光方式を用いたストロボ内蔵カメラとして、例
えば特開昭５６─１４９０２号公報のものが知られてい
る。

【０００３】また、外光の輝度を測定する測光部と、被
写体距離を測定する測距部とを備え、外光輝度及び被写
体距離に応じてストロボ照射による露光量を段階的に制
御する常時発光式ストロボ内蔵カメラも提案されており
（特願平６─２５５５９９号明細書参照）、フイルム感
度を考慮して、露光値（ＥＶ値）に連動してストロボ光
の照射による露光量の切替えを行うことも提案されてい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ストロボ内蔵カメラは、異なるフイルム感度のフイルム
に対しては、ストロボ光制御の切替えを行う外光輝度
（ＢＶ値）を単にスライドさせることによって対応して
いるために、高感度カラーフイルムを使用する際には、
ストロボによる露光量が下がり、外界光源による影響を
強く受けて色味の劣化が生じるという問題がある。

【０００５】具体的には、高感度フイルムを使用する
と、低輝度の外光下でも撮影が可能となり、ストロボ照
射光量を少なくしても撮影に十分な露光を得ることがで
きる。普通、このような低輝度外光下での撮影は、例え
ば室内などで行われ、蛍光灯などの外界光源からの光の
下で行われることが多い。高感度カラーフイルムを使用
した撮影は、この外界光源（蛍光灯）の色の影響を強く
受けるため、写真が青みがかるという問題がある。

【０００６】蛍光灯撮影の場合は、光源の分光特性の関
係上、プリントが緑色に片寄りやすく、使用される光源
の種類によって色味の劣化の程度は様々である。本発明
はこのような事情に鑑みてなされたもので、高感度フイ
ルムを使用する場合の外界光源による色味の劣化を防
ぎ、常に良好な色再現をすることができるストロボ内蔵
カメラを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成
するために、撮影視野内の輝度を測定する測光手段と、
所定のシャッター開放時間で最適な露光が得られる外光
輝度を「基準外光輝度」とし、このときの露光量を「標
準露光量」とすると、前記測光手段で測定した輝度に基
づいて前記「基準外光輝度」以上の輝度の外光下で撮影
する場合に外光による露光寄与成分のみで前記「標準露
光量」が得られるように絞り羽根兼用シャッターを開閉
する自動露光機構と、前記測光手段で測定した輝度及び
撮影に使用されるフイルムの感度で定まる露光値（ＥＶ
値）に基づいて前記シャッターの開閉動作中にストロボ
光を発光させてストロボ光による露光寄与成分を外光に
よる露光寄与成分に付加するストロボ光制御部であっ
て、ストロボ光のみによって撮影に必要な露光量が得ら
れるように制御したときのストロボ光による露光量を
「基準ストロボ露光量」とすると、前記露光値が所定の
露光値よりも小さい場合は、ストロボ光による露光量が
前記「基準ストロボ露光量」となるように制御し、前記
露光値の増加に伴いストロボ光による露光量を前記「基
準ストロボ露光量」から段階的に減少させるＥＶ値連動
制御を基本として行うストロボ光制御部と、を備えたス
トロボ内蔵カメラにおいて、前記ストロボ光制御部は、
高感度フイルムが使用される場合は、算出される露光値
が前記所定の露光値を上回るものであっても、前記測光
手段によって測定された輝度がフイルム感度にかかわら
ず規定されている一定の輝度以下の場合には、前記基本
とするＥＶ値連動制御を行わないで、強制的にストロボ
光による露光量が前記「基準ストロボ露光量」となるよ
うに発光させて、前記基本となるＥＶ値連動制御を行っ
た場合と比較して外光の露光寄与成分の比率を減少させ
るように制御することを特徴としている。

【０００８】

【作用】本発明によれば、測光手段で撮影視野内の輝度
を測定するとともに測距手段で主要被写体までの距離
（被写体距離）を測定し、使用されるフイルムの感度と
前記測光手段で測定した撮影視野内の輝度で定まる露光
値（ＥＶ値）と前記被写体距離とに基づいて、ストロボ
による露光量をストロボ光制御手段によって制御してい
る。ここに、基準ストロボ露光量とは、外光による露光
寄与を排除して、ストロボ光のみで撮影に必要な露光量
が得られるように制御したときのストロボによる露光量
をいい、ストロボによる露光量の制御は、この基準スト
ロボ露光量からの減少量を加減して行われる。しかも、
この制御は、前記測距手段で測定した主要被写体までの
距離（被写体距離）を考慮して行われるので、被写体距
離が近くても露光過多になることなく、また、被写体距
離が遠くても露光不足になることはない。本発明は、こ
のような制御について、測光手段で測定した輝度が所定
の輝度以下の場合は、フイルム感度によらず、ストロボ
による露光量を前記基準ストロボ露光量にするように制
御することを特徴としている。

【０００９】このように、基本的にはＥＶ値連動による
ストロボ切替え制御を行いつつも、所定の輝度以下の低
輝度外光下においては、フイルム感度によらずストロボ
光による露光量を強制的に前記基準ストロボ露光量にす
ることで、外光による露光量に対するストロボ光による
露光量の比率を高めることができ、結果的に高感度フィ
ルム使用時における外光による露光寄与率を相対的に低
下させることができる。これにより、像面における外界
光源の分光特性の影響を低減することができ、外界光源
の分光特性に起因する色味の劣化を防止することができ
る。

【００１０】また、具体的には、前記露光値が大きくな
るにしたがって、ストロボによる露光量を基準ストロボ
露光量から段階的に減少させるように制御する一方、使
用されるフイルムの感度が所定の感度より高く且つ前記
測光手段で測定した輝度が所定の輝度以下の場合で、前
記総露光量に対して外光輝度の寄与率が高くなり、スト
ロボによる露光量の比率が低くなる条件下では、ストロ
ボによる露光量を前記基準ストロボ露光量に保持するよ
うに制御するという適用が考えられる。このように、基
本的にはＥＶ値連動によるストロボ切替え制御を行い、
特に、前記所定の感度以上の高感度フイルム使用時であ
って、且つ前記所定の輝度以下の低輝度外光下において
は、ストロボ光による露光量を前記基準ストロボ露光量
に保持することで、相対的に外光による露光寄与率を低
下させ、これにより、像面における外界光源の分光特性
の影響を低減することができ、外界光源の分光特性に起
因する色味の劣化を防止することができる。

【００１１】

【実施例】以下添付図面に従って本発明に係るストロボ
内蔵カメラの好ましい実施例について詳説する。図１は
本発明に係るストロボ内蔵カメラの実施例の外観を示す
斜視図である。同図に示すストロボ内蔵カメラは、直方
体形状のカメラボディ１０の上面にシャッターボタン１
１が配置され、カメラボディ１０の前面の中央部に撮影
レンズ１２の組み込まれた鏡胴１３が取り付けられてい
る。

【００１２】カメラボディ１０前面の上部には図の左か
ら、投光器１４、ファインダー１５、受光器１６、及び
ストロボ１７が配置されている。これらのうちの投光器
１４と受光器１６とで主要被写体（例えば人物）までの
距離を測定する測距部が構成される。この測距部では、
例えば三角測量の原理に基づいて主要被写体までの距離
が求められる。

【００１３】また、カメラボディ１０前面の鏡胴１３の
右脇に撮影視野内の外光輝度を測定するための測光部１
８が組み込まれている。この測光部１８は、カメラボデ
ィ１０の表面に形成された入射窓１８ａと、この入射窓
１８ａの内側に配置されたレンズ１８ｂと、レンズ１８
ｂの結像位置近傍に受光面が配された受光素子１８ｃと
を備えている。

【００１４】前記受光素子１８ｃの受光面は、レンズ１
８ｂの結像位置とずらして配置されているので、受光素
子１８ｃの受光面には完全な被写体像が結像されること
はなく、主要被写体を含む撮影視野全体の平均外光光量
が受光素子１８ｃで検出される。更に、カメラボディ１
０内部のレンズ１２の光軸上には、フイルムに必要な露
光量を与えるシャッター１９が組み込まれている。

【００１５】前記ストロボ１７は、シャッター１９の開
口タイミングに合わせて自動的にストロボ発光を行うも
のであり、本実施例では、このストロボ１７の発光タイ
ミングをシャッター１９の開口タイミングに対して微妙
にずらすことにより、主要被写体面での露光量の調整を
行っている。この調整方法を図２のタイムチャートを参
照して説明する。図２に示すタイムチャートは、シャッ
ター１９が始動してから、どのタイミングでストロボ１
７を発光すると、どの程度の露光量が得られるかを示し
たものである。同図（ａ）より、シャッター１９が始動
して時間ｔ1 経過したタイミングでストロボ光を照射し
た場合（図２（ｂ））は、まだシャッター１９の開口面
積が小さく、フイルムを露光する光束も小さい。このた
め、露光量は少ない（図２（ｃ））。

【００１６】これに対して、シャッター１９が始動して
時間ｔ2 経過したタイミングでストロボ光を照射した場
合（図２（ｄ））には、シャッター１９の開口面積が最
大になっているので、フイルムを露光する光束は大き
い。この為、時間ｔ1 での露光量に比べてほぼ２倍の露
光量となる（図２（ｅ））。このように、ストロボ１７
の発光タイミングを調整することにより、ストロボ１７
の発光量を変えることなくストロボ１７による露光量を
自由に調整することができる。

【００１７】本実施例では、投光器１４及び受光器１６
で測定される主要被写体までの距離（被写体距離）、測
光部１８で測定される撮影視野内の輝度（外光輝度）、
及びフイルム感度に基づいて、撮影に最適な露光を得る
ためのストロボ光の発光タイミング制御を行っている。
図３は発光タイミング制御を行うための具体的な構成を
示すブロック図である。同図に示すように、発光タイミ
ング制御はＲＯＭ２１に書き込まれた制御プログラム２
１ａに基づいてＣＰＵ２０が中心になって行っている。

【００１８】ＣＰＵ２０には、シャッターボタン１１か
ら半押し信号又は全押し信号が与えられる。シャッター
ボタン１１から半押し信号を受けたＣＰＵ２０は、投光
器１４に対して被写体距離を測定するための信号を与え
ると共に、測光器１８に対して外光輝度を測定するため
の信号を与える。これらの信号に基づいて、投光器１４
（及び受光器１６）と測光部１８はそれぞれ測距・測光
を行い、測定結果をＣＰＵ２０に与える。また、シャッ
ターボタン１１から全押し信号を受けたＣＰＵ２０は、
ストロボ１７に対してストロボ発光を行うための信号を
与え、シャッター１９に対してシャッター開閉を行う為
の信号を与える。

【００１９】次に、制御プログラム２１ａに基づいてＣ
ＰＵ２０が行う発光タイミング制御の処理の流れを図４
のフローチャートを用いて説明する。先ず、電源スイッ
チが投入されると、ＣＰＵ２０に内蔵されたメモリのク
リアやＩ／Ｏポートの設定など初期処理が行われる（ス
テップ１００）。そして、何れかのスイッチが起動され
るまで、処理を待機する（ステップ１０１）。前記スイ
ッチには、シャッターボタン１１以外に図示しないセル
フタイマースイッチやズームスイッチなどがある。何れ
かのスイッチが起動された場合に（ステップ１０２）、
どのスイッチが起動されたかを検出し（ステップ１０
３）、シャッターボタン１１以外のスイッチの場合はス
イッチ毎の処理を行う（ステップ１０４）。

【００２０】ステップ１０３でシャッターボタン１１が
半押しされたことを検出すると、電源電池の残量のチェ
ックが行われる（ステップ１０５）。続いて、ＣＰＵ２
０からの信号が測光部１８に与えられ、測光部１８では
外光輝度の測定を行う（ステップ１０６）。更に、ＣＰ
Ｕ２０からの信号が投光器１４に与えられ、投光器１４
と受光器１６で被写体距離の測定を行う（ステップ１０
７）。そして、ステップ１０６で求めた外光輝度のアペ
ックス値（ＢＶ）とフイルム感度のアペックス値（Ｓ
Ｖ）を次式(1)に代入して、シャッター１９の制御値で
ある露光値ＥＶを算出する（ステップ１０８）。

【００２１】ＥＶ＝ＳＶ＋ＢＶ…(1) このＥＶ値の算出によって、撮影に必要や露光量を得る
ためのシャッター速度と絞り値の組み合わせが決定す
る。次に、ストロボ１７を発光させるタイミングを決め
るためのＡＶ値を算出する（ステップ１０８）。ＡＶ値
はストロボ１７を発光させた際のシャッター１９の開口
面積に対応する値である。つまり、ＡＶ値が求められれ
ば、シャッター１９が始動して徐々に増加する開口面積
がどの面積になったときにストロボ１７を発光させれば
よいか判るので、ＡＶ値からストロボ１７の発光タイミ
ングを求めることができる。

【００２２】ＡＶ値の算出には、先ず、ステップ１０７
で求めた被写体までの距離（Ｄ）を次式(2)に、ガイド
ナンバー（ＧＮo ．）を次式(3)に、それぞれ代入し
て、ＤＶ値、ＧＶ値を求める。 ＤＶ＝−２ｌｏｇ₂ Ｄ …(2) ＧＶ＝２ｌｏｇ₂ ＧＮo ． …(3) 次に、補正値であるＯＦＳ値をＲＯＭ２１に書き込まれ
た補正テーブル２１ｂから求める。図５はフイルム感度
ＩＳＯ１００（ＳＶ＝５）についての補正テーブルの一
例を示す図であり、外光輝度と被写体距離とをパラメー
タとして補正値が割り付けられているテーブルである。

【００２３】この例では、外光輝度を（〜Ｂ1 、Ｂ1 〜
Ｂ2 、Ｂ2 〜Ｂ3 、Ｂ3 〜）の４段階に分け、被写体距
離を（〜Ｄ1 、Ｄ1 〜Ｄ2 、Ｄ2 〜Ｄ3 、Ｄ3 〜）の４
段階に分けている（但し、Ｂ1 ＜Ｂ2 ＜Ｂ3 、Ｄ1 ＜Ｄ
2 ＜Ｄ3 ）。そして、ストロボ１７による露光量の補正
値であるＯＦＳ値を各段階ごとに細かく割り付けている
（図５参照）。基本的には、外光輝度が低いＢ1 以下の
場合は外光輝度だけでは露光量が不足するので、ストロ
ボ１７による露光量が減少しない補正値ＯＦＳ＝１（０
ＥＶ）が割り付けられている。そして、外光輝度がＢ1
以上の場合は、ストロボ１７による露光量を減少させる
補正値ＯＦＳ＝１／２〜１／８（−１ＥＶ〜−３ＥＶ）
が割り付けられている。この時の減少量は、被写体距離
が短い場合に大きくなるように調整されている。

【００２４】尚、０ＥＶ発光とは、ストロボによる露光
量が撮影に必要な１００％の露光量となるような発光を
いい、以下−１ＥＶは５０％、−２ＥＶは２５％、−３
ＥＶは１２．５％の露光量となるストロボ照射を意味す
る。上記補正テーブル２１ｂを用いて、ステップ１０６
で測定した外光輝度とステップ１０７で測定した被写体
距離とからＯＦＳ値を求めることができる。例えば、距
離Ｄ1 とＤ2 の間で、輝度がＢ2 とＢ3 の間の場合はＯ
ＦＳ＝１／４（−２ＥＶ）となる。また、距離がＤ3 以
上で、輝度がＢ1 とＢ2 の間の場合はＯＦＳ＝１（０Ｅ
Ｖ）となる。このＯＦＳ値を次式(4)に代入することに
より、ＦＬ値が得られる。

【００２５】ＦＬ＝ｌｏｇ₂ ＯＦＳ …(4) 前記式(1)〜(4)により得られたＤＶ値、ＧＶ値、ＦＬ
値、及びフイルム感度（ＳＶ）を次式(5)に代入するこ
とによりＡＶ値が得られる（ステップ１０９）。 ＡＶ＝ＧＶ＋ＳＶ＋ＤＶ＋ＦＬ−５ …(5) 尚、フイルム感度とＳＶ値の対応関係は、ＩＳＯ１０
０、２００、４００、８００、１６００…に対して、そ
れぞれＳＶ５、６、７、８、９…である。

【００２６】次に、シャッターボタン１１が半押しの状
態から更に押されて、全押しの状態になるまで処理を待
機し（ステップ１１０、１１１）、全押しされずにシャ
ッターボタン１１から指が離れて元に戻った場合は、ス
テップ１０１の処理まで処理を戻す。また、シャッター
ボタン１１が全押しされた場合は、シャッター１９を開
閉して写真撮影を行う。シャッター１９の開閉制御はス
テップ１０８で算出したＥＶ値に基づいて行う。そし
て、シャッター１９の開口面積がステップ１０９で算出
したＡＶ値となったタイミングでストロボ１７を発光す
る（ステップ１１２）。このストロボ１７の発光により
撮影に充分な露光が得られる。

【００２７】シャッター１９が閉じた後にフイルムを給
送し（ステップ１１３）、ストロボ１７の充電を行う
（ステップ１１４）。そして、シャッターボタン１１が
半押し状態の間、処理を待機し（ステップ１１５）、シ
ャッターボタン１１から指が離れてシャッターボタン１
１が元に戻った後に、処理をステップ１０１に戻す。図
６〜図９は、図５に示したＩＳＯ１００についての補正
テーブルをその他のフイルム感度を含めて拡張したフイ
ルム感度連動切替テーブルを示す図であり、それぞれが
各距離（〜Ｄ1 、Ｄ1 〜Ｄ2 、Ｄ2 〜Ｄ3 、Ｄ3 〜）に
対応している。尚、前記各距離Ｄ1 乃至Ｄ3 は、例えば
Ｄ1 ＝１．３ｍ 、Ｄ2 ＝２ｍ、Ｄ3＝９ｍという値と
する。

【００２８】図６は距離Ｄ1 以下の場合のフイルム感度
連動切替テーブルであり、横軸にフイルム感度ＳＶ、縦
軸に外光輝度ＢＶをとり、この象限上の点で露光値ＥＶ
を示している。同図の折れ直線ｇよりも上側（低輝度
側）の領域（図の斜線で示す部分）の露光値にあって
は０ＥＶ発光を行い、前記折れ直線ｇと直線ｈとで挟ま
れるの領域の露光値では−１ＥＶ発光を行う。また、
前記直線ｈと直線ｋとで挟まれるの領域のＥＶ値の場
合は−２ＥＶ発光を行い、直線ｋより下側（高輝度側）
の領域では−３ＥＶ発光を行うように設定されている
ことを示している。

【００２９】本実施例の特徴は、０ＥＶと−１ＥＶとの
切替えを行うの露光値を示す線ｇが点線ｇ′で示すよう
な直線ではなく、図の点Ｐで折れた線になっている点に
ある。従来のＥＶ連動によるストロボ切替えでは、異な
るフイルム感度に対しては、単にストロボ切替えを行う
外光輝度をスライドさせて適用しているので、例えば、
０ＥＶ発光と−１ＥＶ発光との切替えを行う露光値を示
す線は点線ｇ′に示すように直線となっている。つま
り、図の点線ｇ′と折れ直線ｇで挟まれた領域′にお
けるＥＶ値については−１ＥＶ発光を行うものである。

【００３０】しかし、このような従来の制御では、撮影
に必要な露光量は確保できるが、外界光源（例えば蛍光
灯）の分光特性による色味の劣化という問題が生じるこ
とは既に述べたとおりである。そこで、本実施例では、
外光輝度がＢＶ１以下においてはフイルム感度にかかわ
らず、０ＥＶ発光を行うように設定し、この領域′の
ＥＶ値についても強制的に０ＥＶ発光を行うことでスト
ロボによる露光量を増やし、相対的に外光による露光の
寄与率を低下させ、外界光源の分光特性の影響を低減さ
せている。例えば、フイルム感度がＩＳＯ８００におい
ても、外光輝度がＢＶ１以下の場合は０ＥＶ発光を行う
ことになる。

【００３１】本来、露光値が高くなったところで、スト
ロボによる露光量を５０％に減少する切替制御（−１Ｅ
Ｖ発光）を行うことにより、像面における総露光量が適
正露光量から過大にオーバーとなるのを防止しているの
であるが、前記領域′の部分については、強制的に０
ＥＶ発光としてストロボによる露光量を１００％に保持
して、露光オーバーとすることにより、外界光源による
色味の劣化を防止するものである。

【００３２】図７は距離Ｄ1 〜Ｄ2 の場合のフイルム感
度連動切替テーブルであり、およそ図６と同じである
が、図６と異なるのは、外光輝度が高くなって露光値が
ＥＶ１３になってもストロボ１７による露光量を−３Ｅ
Ｖに減少するといった細かい処理を行っていない点であ
る。図８は距離Ｄ2 〜Ｄ3 の場合のフイルム感度連動切
替テーブルであり、直線ｍよりも上側（低輝度側）の領
域では０ＥＶ発光を行い、直線ｍより下側（高輝度側）
の領域では−１ＥＶ発光を行う。図８の場合は、図６、
図７のように、強制的に０ＥＶ発光を行うまでもなく、
高感度且つ低輝度の領域で０ＥＶ発光が行われるように
なっている。

【００３３】図９は距離Ｄ3 〜の場合のフイルム感度連
動切替テーブルであり、同図において直線ｎよりも上側
（低輝度側）の領域ではストロボ１７による露光量を１
００％の露光量とする（０ＥＶ発光を行う）点は図８と
同じであるが、直線ｎより下側（高輝度側）の領域では
ストロボ１７の発光を止める（ＯＦＦする）ように制御
している点で図８と異なる。

【００３４】次に、図６〜図９に示したフイルム感度連
動切替テーブルによって補正されたストロボ１７による
露光量と撮影視野内の外光による露光量との関係を図１
０〜図１５のグラフを用いて説明する。図１０はフイル
ム感度ＩＳＯ１００（ＳＶ＝５）について被写体距離が
Ｄ1 以下でストロボ１７による露光量と外光による露光
量との関係を示すグラフである。同図の横軸は外光輝度
（ＢＶ）とフイルム感度（ＳＶ）の和で示されるＥＶ値
（露光値）であり、いま、ＳＶ＝５であるので横軸に示
す露光値は外光輝度を示すものと考えることができる。
また、図５のＢ1 、Ｂ2 、Ｂ3 に対応する露光値をそれ
ぞれ、Ｅ1 、Ｅ2 、Ｅ3 とする。

【００３５】図１０に示すように露光値がＥＶ９（外光
輝度がＢＶ４）以下の場合は、シャッター１９を開いて
いる時間が手ブレ防止限界となり一定であるため、外光
だけでは撮影に必要な１００％の露光が得られない。即
ち、ＥＶ９は、いわゆるＡＥ自動制御ができる限界の輝
度である。このため、露光値がＥＶ９になるまで外光に
よる露光量は増加し続ける。そして、露光値がＥＶ９以
上になるとＡＥ自動制御が働いてシャッター１９が制御
され、外光による露光量が１００％を維持するように調
整される。このため、外光輝度がＢＶ４以上（露光値が
ＥＶ９以上）では外光による露光量は一定となる。

【００３６】これに対して、ストロボ１７による露光量
は、外光輝度がＢ1 以下の場合、即ち露光値がＥ1 以下
の場合には撮影に必要な１００％の露光量であり、外光
輝度が増加するに従って、〜Ｅ1 、Ｅ1 〜Ｅ2 、Ｅ2 〜
Ｅ3 、Ｅ3 〜の外光輝度に対してそれぞれＯＦＳ＝１
（０ＥＶ）、ＯＦＳ＝１／２（−１ＥＶ）、ＯＦＳ＝１
／４（−２ＥＶ）、ＯＦＳ＝１／８（−３ＥＶ）が補正
テーブル２１ｂに割り付けられている。

【００３７】フイルムを露光する総露光量は、外光によ
る露光量とストロボによる露光量との和で示されるが、
露光値がＥＶ９より低い領域において、外光による露光
寄与量が次第に大きくなってくる露光値Ｅ1 で、ストロ
ボによる露光寄与量を減少させるようにストロボによる
露光量を切り替えている。即ち、図６の切り替え露光値
Ｅ1 ではストロボによる露光寄与量を５０％に減少する
切替制御を行っている。これにより、総露光量が適正露
光量から過大にオーバーとなるのを防止している。

【００３８】これにより、前記ＡＥ自動制御ができる限
界の露光値ＥＶ９（外光輝度ＢＶ４）の近傍のときのス
トロボ光による露光量が過度にならないようにすること
ができ、被写体面と背景の光量のバランスを保つことが
でき、被写体が白く浮かび上がった写真になるのを防ぐ
ことができる。また、露光値ＥＶ９以上となる外光輝度
の領域についても、外光輝度が高くなるに従ってストロ
ボ１７による露光量が段階的に少なくなっている。即
ち、Ｅ1〜Ｅ2 まではストロボによる露光寄与量は５０
％、Ｅ2 〜Ｅ3 ではストロボによる露光寄与量は２５
％、Ｅ3 〜はストロボによる露光寄与量は１２．５％
と、それぞれ段階的に少なくなっている。

【００３９】もし、外光輝度が高くなった場合でも、ス
トロボ１７による露光量が一定であるように発光させる
と主要被写体に対する背景の光量比率が下がり、背景が
暗く感じられる写真が撮影されてしまう。本実施例で
は、外光輝度が高くなるに従ってストロボ１７による露
光量が段階的に少なくなっているので、外光輝度が高い
場合でも被写体に対する背景の光量比率が下がることは
ない。このため、高輝度下においても背景が暗くならな
い写真が撮影され、写真としての雰囲気が損なわれるこ
とはない。尚、後述するように被写体までの距離がＤ1
以上の場合でも、外光輝度が高くなるに従ってストロボ
１７による露光量が段階的に少なくなるよう調整されて
いるので、被写体距離が長くなっても同様の効果が得ら
れる。

【００４０】また、被写体距離がＤ1 以下と短い場合
は、露光値がＥ3 （外光輝度がＢ3 ）以上でのストロボ
１７による露光量は極めて少なくなっている（露光寄与
量１２．５％）。これは、近距離の撮影では背景に比べ
て主要被写体の占める面積が大きくなるので、被写体面
と背景の光量のバランスが崩れ、被写体が白く浮かび上
がった写真となり易いという点を考慮したもので、本実
施例では、近距離で且つ外光輝度が高い場合に、ストロ
ボ光の照射による光量が非常に少なくなるように制御さ
れているので、被写体面と背景のバランスが保たれ、被
写体が白く浮かび上がった写真となることはない。

【００４１】図１１は図１０においてフイルム感度をＩ
ＳＯ８００とした場合のグラフである。図６で説明した
ように、露光値がＥＶ９になるまで強制的に０ＥＶ発光
を行っている点で図１０と異なり、その他は図１０と同
様である。これにより、露光値ＥＶ９の手前近傍では露
光オーバーとなるが、そのため、外光による露光の寄与
を相対的に低下させることができ、外界光源による色味
の劣化を防止することができる。

【００４２】図１２は、フイルム感度ＩＳＯ１００（Ｓ
Ｖ＝５）について被写体距離がＤ1〜Ｄ2 でストロボ１
７による露光量と外光による露光量との関係を示すグラ
フである。図のグラフより、外光による露光量は図１０
のグラフと同じである。これに対して、ストロボ１７に
よる露光量は、露光値がＥ3 以下の場合には図１０のグ
ラフと同じであるが、露光値がＥ3 以上と高くなっても
ストロボ１７による露光量を更に１／２に減少するとい
った細かい処理を行っていない点で図１０のグラフと異
なる。これは、被写体までの距離がＤ1 とＤ2 の間にお
いては、外光輝度が高くなると上述したような被写体面
と背景の光量のバランスが崩れるといった問題が生じな
いからである。

【００４３】尚、図１２に対応するＩＳＯ８００の場合
のグラフは、図示しないが、図１１においてＥ3 以上で
露光量をさらに１／２に減少させないものとなる。図１
３は、フイルム感度ＩＳＯ１００（ＳＶ＝５）について
被写体距離がＤ2とＤ3 の間でのストロボ１７による露
光量と外光による露光量との関係を示すグラフである。
同図のグラフが図１２のグラフと異なるのは、露光値が
Ｅ1 になってもストロボ１７による露光量が減少してい
ないで、露光値がＥ2 になるまでストロボ１７による露
光量を１００％の露光量としている点と、露光値がＥ3
になってもストロボ１７による露光量を更に１／２に減
少するといった細かい処理を行っていない点である。

【００４４】これは、被写体までの距離がＤ2 以上と図
１２のグラフに比べて更に長くなったところでは、露光
値がＥＶ９以下においてストロボ１７による露光量を減
少させても、そのことによる効果が図１０、図１２に示
すような近距離領域に比べて顕著でなく、また外光輝度
の全域について総露光量が適正露光量より過大であって
も、上述したような被写体面と背景の光量のバランスが
崩れるといった問題が生じることが少ないからである。

【００４５】図１４は、被写体までの距離がＤ3 〜での
ストロボ１７による露光量と外光による露光量との関係
を示すグラフであり、ＩＳＯ１００についてのものであ
る。露光値がＥ2 になるまでストロボ１７による露光量
を１００％の露光量とする点は図１３と同じであるが、
Ｅ2 以上の露光値になるとストロボ１７の発光を止める
（ＯＦＦする）ように制御している点で図８と異なる。
このように、被写体までの距離がＤ3 以上と長く且つ露
光値がＥ2 以上と高い場合は、被写体に届くストロボの
光量が極めて少ないので、ストロボ１７の発光を止めて
も写真撮影には殆ど影響しないためである。

【００４６】尚、距離がＤ2 以上にあっては、ＩＳＯ８
００のグラフは、図１３、図１４と同等である。本実施
例では、図５に示す補正テーブル２１ｂについて説明し
たが、補正テーブルの態様はこれに限らず、外光輝度の
区分や被写体までの距離の区分について更に細かく段階
を設けてもよいし、逆に、図５に示す補正テーブル２１
ｂよりも少ない段階のものでもよい。

【００４７】なお、本発明は上記実施例に限定されるこ
となく、種々の変形が可能である。例えば本実施例で
は、図２で示したようにストロボ１７の発光タイミング
をシャッタータイミングと微妙にずらすことによって露
光量を調整しているが、ストロボ１７の発光タイミング
を一定にして発光量自体を変えることにより露光量を調
整してもよい。

【００４８】また、被写体までの距離の測定は、投光器
１４と受光器１６を用いたアクティブ方式で行っている
が、パッシブ方式を用いてもよい。

【００４９】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係るストロ
ボ内蔵カメラによれば、使用されるフイルムの感度と測
光手段で測定した輝度で定まる露光値（ＥＶ値）、及び
測距手段で測定した距離に基づいて、ストロボ光による
露光量を制御する際、測光手段で測定した輝度が所定の
輝度以下の場合には、ストロボによる露光量を前記基準
ストロボ露光量にするように制御して、外光による露光
量に対するストロボ光による露光量の比率を高めるよう
にしたので、結果的に高感度フイルム使用時における外
光による露光寄与を相対的に低くすることができ、外界
光源の分光特性に起因する色味の劣化を防止することが
できる。これにより、高感度フイルムを使用する場合に
も常に良好な色再現をすることができ、良好な写真撮影
が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るストロボ内蔵カメラの実施例の外
観を示す斜視図

【図２】シャッターの開口タイミングとストロボ発光タ
イミングとの関係を示すタイムチャート

【図３】ストロボ発光タイミング制御を行うための具体
的な構成を示すブロック図

【図４】ストロボ発光タイミング制御の処理の流れを示
すフローチャート

【図５】補正テーブルの一例を示す図

【図６】被写体距離が〜Ｄ1 以下の場合のフイルム感度
連動切替テーブルを示す図

【図７】被写体距離がＤ1 〜Ｄ2 の場合のフイルム感度
連動切替テーブルを示す図

【図８】被写体距離がＤ2 〜Ｄ3 の場合のフイルム感度
連動切替テーブルを示す図

【図９】被写体距離がＤ3 〜以上の場合のフイルム感度
連動切替テーブルを示す図

【図１０】フイルム感度ＩＳＯ１００について被写体距
離がＤ1 以下でのストロボによる露光量と撮影視野内の
外光による露光量との関係を示す図

【図１１】フイルム感度ＩＳＯ８００について被写体距
離がＤ1 以下でのストロボによる露光量と撮影視野内の
外光による露光量との関係を示す図

【図１２】被写体距離がＤ1 〜Ｄ2 でのストロボによる
露光量と撮影視野内の外光による露光量との関係を示す
図

【図１３】被写体距離がＤ2 〜Ｄ3 でのストロボによる
露光量と撮影視野内の外光による露光量との関係を示す
図

【図１４】被写体距離がＤ3 以上でのストロボによる露
光量と撮影視野内の外光による露光量との関係を示す図

【符号の説明】

１０…カメラボディ １２…撮影レンズ １３…鏡胴 １４…投光器（測距手段） １５…ファインダー １６…受光器（測距手段） １７…ストロボ １８…測光部 １９…シャッター ２０…ＣＰＵ（ストロボ光制御手段） ２１ａ…制御プログラム（ストロボ光制御手段） ２１ｂ…補正テーブル（ストロボ光制御手段）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−232532（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−192931（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−157631（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−67258（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−149022（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−41423（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−2206（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G03B 7/00 - 7/28 G03B 15/05

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 撮影視野内の輝度を測定する測光手段
   と、 所定のシャッター開放時間で最適な露光が得られる外光
   輝度を「基準外光輝度」とし、このときの露光量を「標
   準露光量」とすると、前記測光手段で測定した輝度に基
   づいて前記「基準外光輝度」以上の輝度の外光下で撮影
   する場合に外光による露光寄与成分のみで前記「標準露
   光量」が得られるように絞り羽根兼用シャッターを開閉
   する自動露光機構と、 前記測光手段で測定した輝度及び撮影に使用されるフイ
   ルムの感度で定まる露光値（ＥＶ値）に基づいて前記シ
   ャッターの開閉動作中にストロボ光を発光させてストロ
   ボ光による露光寄与成分を外光による露光寄与成分に付
   加するストロボ光制御部であって、ストロボ光のみによ
   って撮影に必要な露光量が得られるように制御したとき
   のストロボ光による露光量を「基準ストロボ露光量」と
   すると、前記露光値が所定の露光値よりも小さい場合
   は、ストロボ光による露光量が前記「基準ストロボ露光
   量」となるように制御し、前記露光値の増加に伴いスト
   ロボ光による露光量を前記「基準ストロボ露光量」から
   段階的に減少させるＥＶ値連動制御を基本として行うス
   トロボ光制御部と、を備えたストロボ内蔵カメラにおい
   て、 前記ストロボ光制御部は、高感度フイルムが使用される
   場合は、算出される露光値が前記所定の露光値を上回る
   ものであっても、 前記測光手段によって測定された輝度
   がフイルム感度にかかわらず規定されている一定の輝度
   以下の場合には、前記基本とするＥＶ値連動制御を行わ
   ないで、強制的にストロボ光による露光量が前記「基準
   ストロボ露光量」となるように発光させて、前記基本と
   なるＥＶ値連動制御を行った場合と比較して外光の露光
   寄与成分の比率を減少させるように制御することを特徴
   とするストロボ内蔵カメラ。