JP3175457B2 - 熱間静水圧プレスにより得られた耐食性に優れたＮｉ基燒結合金 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、化学プラント機器、
連続電気メッキラインのコンダクターロールなど、酸溶
液による腐蝕が問題になる部分の構造部材製造用Ｎｉ基
燒結合金に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、化学プラントの機器、連続電気
メッキラインのコンダクターロールなど酸溶液による腐
蝕が問題になる部分の構造部品は、Ｃｒ：２５〜３３
％、Ｍｏ：１６〜２３％を含有し、残り：Ｎｉおよび不
可避不純物からなるＮｉ基合金を原料粉末とし、これを
熱間静水圧プレスすることにより製造していた。このよ
うにして製造した圧密化体は、耐摩耗性に優れ、かつ耐
食性にも優れていることが知られている（特開平１−１
１６０９８号公報参照）。

【０００３】

【発明が解決しょうとする課題】しかし、最近の化学プ
ラントに用いられる機器、連続電気メッキラインのコン
ダクターロールなどは、高耐摩耗性を有するだけでな
く、酸化性酸に対してさらなる耐食性を有することが要
求され、さらに、出来るかぎり機器の交換回数を少なく
して保守の周期を長くし、長期にわたって続けて運転操
業できることが要求される傾向にある。

【０００４】このような状況に対して、上記従来のＮｉ
基燒結合金で作製された化学プラントに用いられる機器
および連続電気メッキラインのコンダクターロールなど
は、上記要求に対して、十分満足出来るものではなかっ
た。

【０００５】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
かかる要求に対処すべく、従来よりも一層優れた耐腐蝕
性を有するＮｉ基燒結合金からなる化学プラントの機
器、連続電気メッキラインのコンダクターロールなどを
製造すべく研究を行った結果、 （１） 上記従来のＮｉ基燒結合金には、微量ながらＰ
相が析出していることがあり、このＰ相が析出している
Ｎｉ基燒結合金を化学プラント用機器部品および連続電
気メッキラインのコンダクターロールなどの素地中に析
出すると、局部電池作用により腐蝕が進行しやすく、十
分な耐腐蝕性が得られなくなる、 （２） 従来のＮｉ基燒結合金よりもＣｒ量の多いＮｉ
基合金粉末を１２１０℃〜１２５０℃の温度で熱間静水
圧プレスすると、Ｐ相が析出しないＮｉ基燒結合金が得
られる、などの知見を得たのである。

【０００６】この発明は、かかる知見に基づいて成され
たものであって、重量％で、Ｃｒ：４３〜５０％、Ｍ
ｏ：１０〜２５％となるように含有し、残り：Ｎｉおよ
び不可避不純物からなる組成を有し、かつ、Ｐ相を含ま
ない熱間静水圧プレスにより得られた耐食性に優れたＮ
ｉ基燒結合金に特徴を有するものである。

【０００７】つぎに、この発明のＮｉ基燒結合金の成分
組成を上記のごとく限定した理由について説明する。

【０００８】（ａ）Ｃｒ Ｃｒは、４３％未満ではＰ相が出現することがあって耐
蝕性に悪影響を及ぼすので好ましくなく、一方、５０％
を越えると延性を持つγ相の分率が減少し、靭性が劣化
するので好ましくないところからＣｒ：４３〜５０％に
定めた。

【０００９】（ｂ）Ｍｏ Ｍｏ成分は、１０％未満では耐摩耗性に効果のあるσ相
が出現しないので十分な耐摩耗性が得られず、一方、２
５％を越えると、延性を持つγ相の分率が減少し、靭性
が劣化するので好ましくないところからＭｏ：１０〜２
５％に定めた。

【００１０】

【実施例】つぎに、この発明を、実施例にもとづいて具
体的に説明する。

【００１１】通常の真空高周波加熱炉を用い、真空度：
１０^-4ｔｏｒｒの真空雰囲気中で溶解し、表１に示した
成分組成となるように溶湯を調製し、このＮｉ基合金溶
湯の温度を１５００℃に保持し、予熱したタンディッシ
ュ内に注湯し、その底に設けたノズルより落下せしめ、
それを専用の噴霧ノズルより窒素ガスを圧力：２５ｋｇ
／ｃｍ² 、流量：１２Ｎｍ³ ／ｍｉｎなる条件で粉末化
を行い、Ｎｉ基合金粉末を製造した。このようにして得
られたＮｉ基合金粉末をステンレス製のカプセルに充填
し、加熱温度：４００℃、真空度：１０^-5ｔｏｒｒの真
空雰囲気下で１２時間保持し、粉末表面に吸着したガス
の真空脱ガス処理を行い、密封して真空密封構造物を作
製した。

【００１２】上記真空密封構造物を表１に示される条件
で熱間静水圧プレスし、表１に示した成分組成を有する
本発明Ｎｉ基燒結合金１〜４および従来Ｎｉ基燒結合金
を製造した。このようにして得られたＮｉ基燒結合金の
金属組織を観察してＰ相の有無を調べた後、耐腐蝕性を
評価する目的で、５０％Ｈ₂ ＳＯ₄ ＋４２ｇＦｅ₂ （Ｓ
Ｏ₄ ）₃ の沸騰溶液に２４時間浸漬するＡＳＴＭ Ｇ２
８の試験を行い、これらの測定結果をそれぞれ表１に示
した。

【００１３】

【表１】

【００１４】表１に示される結果から、本発明Ｎｉ基燒
結合金１〜４は、従来Ｎｉ基燒結合金よりも極めて優れ
た耐食性を有することが分かる。

【００１５】

【発明の効果】上述のように、この発明のＮｉ基燒結合
金は、極めて優れた耐食性を有し、化学プラント機器お
よび連続電気メッキラインのコンダクターロールの構造
部材として用いるとすぐれた効果を発揮するものであ
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡 勉 埼玉県桶川市上日出谷1230 三菱マテリ アル株式会社 桶川製作所内 (56)参考文献 特開 平４−325695（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−255784（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−255785（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−65241（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−180028（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C22C 19/05 C22C 1/04 C22C 30/00

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 重量％で、 Ｃｒ：４３〜５０％、 Ｍｏ：１０〜２５％、 を含有し、残り：Ｎｉおよび不可避不純物からなる組成
   を有し、かつ、Ｐ相を含まないことを特徴とする熱間静
   水圧プレスにより得られた耐食性に優れたＮｉ基燒結合
   金。