JP3175111B2 - 強靭直接パテンティング線材の製造方法 - Google Patents

強靭直接パテンティング線材の製造方法

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JP3175111B2
JP3175111B2 JP30833191A JP30833191A JP3175111B2 JP 3175111 B2 JP3175111 B2 JP 3175111B2 JP 30833191 A JP30833191 A JP 30833191A JP 30833191 A JP30833191 A JP 30833191A JP 3175111 B2 JP3175111 B2 JP 3175111B2
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俊之 村上
能由 大和田
豊明 江口
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エヌケーケー条鋼株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は強靭直接パテンティング
線材の製造方法に係り、鉛パテンティングと同等の強度
を有すると共にばらつきが少く、高延性で表面酸化スケ
ールの少い鋼線材を的確に製造することのできる方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】高炭素鋼線材の強靭化のため鉛パテンテ
ィング(以下LPと略称する)により組織を微細化する
ことは広く採用されている方法であるが、LPはオース
テナイト化のための加熱、鉛槽の高温保持等にコスト、
エネルギー面での問題、さらには鉛ヒュームによる環境
汚染の問題があり、熱間圧延後に直接熱処理してLP材
と同等の品質を有する直接パテンティング線材の製造が
望まれている。
【0003】然して、斯かるLP材相当の強度を有する
直接パテンティング法としては、気水混相流体を用い
る方法(特開昭60-96726) 、ミストを用いる方法(特
開昭51-112711)等が発表されている。
【0004】又線材を単線でパテンティングする方法と
して線材の連続熱処理法(特開昭52-15407) 、および
鋼線材の直接熱処理方法及び装置(特開昭62-170424)
が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記した
ような従来技術によるものは夫々に問題を有しており、
即ち前記の方法は線材を熱間圧延後リング状に巻き
取り、コンベヤ上に非同心リング状態で展開して搬送さ
れる間に急冷されるため、コンベア端の線材が層厚にな
って重なり状態にむらが生じ、冷却にばらつきが生じ易
い欠点を有している。このため重なりの無い単線で熱処
理するLP材と比較して強度ばらつきが大きくなってし
まい、ばね、PC鋼線等の品質の厳しい用途には使用出
来ないのが実情である。
【0006】またこれらの従来法はいずれもオーステナ
イト域温度で巻き取って数秒後に急冷を行うため10〜
30μmのスケールが生成し、これを除去するため30
分程度の酸洗をせねばならず、酸洗時間が長いと共に、
酸公害の問題、排酸処理の問題、スマット処理の問題、
コスト上の問題等多くの問題を抱えているが、このよう
な酸洗工程を省略することができなかった。
【0007】前記のものも好ましいものとなし得な
いもので、に関して言うならば、その内容はLPと同
じく線材を再加熱してパテンティングを行う方法に関す
るものであり、十分なオーステナイト化を達成させるた
めに線材の搬送速度は熱間圧延線材より著しく遅い。即
ち今日の線材の圧延速度は例えば5.5φ線材の場合10
0m/sec 程度であり、この場合長くとも数秒以内で所
望の温度にまで急冷しないと冷却帯が長くなって設備費
がかさむことになる。しかるにこのにおける冷却手段
は空気と水の混合した噴霧流であり、水量密度が高くし
てもせいぜい2000Kcal/m2h ℃までの熱伝達係数し
か得ることは出来ず(例えば鉄鋼製造プロセスにおける
冷却技術、昭和63年8月日本鉄鋼協会発行)、そのた
めこの程度の冷却能では所望の温度までの冷却時間が長
くなって冷却帯を長くせざるを得ず、該冷却手段は高速
圧延材、特に5.5φ前後の細径材に適用するには不向き
である。
【0008】また前記によるものにおいては熱間圧延
後直接パテンティングを施す方法に関するものである
が、これもまたと同じく冷却手段としてスプレーミス
トを用いるものであって、しかも800〜950℃の温
度から550〜400℃の間の温度まで平均冷却速度1
0〜50℃/sec で冷却することが望ましいとしてい
る。例えば100m/sec で圧延された線材を1100
℃から500℃まで50℃/sec の冷却速度で冷却する
場合12秒必要とし、冷却帯は1200mもの長さを必
要とすることになって、到底建設可能な冷却帯長さでは
なくなる。また50℃/sec の冷却速度を達成するため
の水量、空気量及び空気/水混合比などについての具体
的開示は何もない。
【0009】即ちこれらのものは限定された冷却帯
の長さの中で、所望の冷却を達成するために必要な冷却
能及びそれを達成するための冷却流体の量については考
慮されておらず、従って単に線材が低速で搬送される場
合に適用可能な、ミスト冷却によるパテンティングの概
念を開示しているに過ぎないものである。
【0010】なお前述したようなLP材は、直接パテン
ティング材より延性が低いので強加工には不向きであ
り、今日におけるこの種線材に対する加工は益々厳しく
なっていて従来より一層優れた加工性を有する線材に対
する要求が大である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記したような
従来技術の課題を解消することについて検討を重ねた結
果、LP材と同等の強度および強度ばらつきで、しかも
LP材および従来直接パテンティング材よりも高延性で
あり、かつ表面の酸化スケールもなく、酸洗工程の省略
が可能な直接パテンティング線材を得ることに成功した
ものであって、以下のとおりである。
【0012】(1) C:0.40〜1.0%を含有した鋼
を最終仕上げ温度700〜1200℃で5〜16φmmの
直径に熱間圧延後、コイル状に巻かれる以前の単線の状
態で直ちに冷却するに際して、50℃以下の水を100
〜2000m3/hrで供給し、熱伝達係数1000〜20
000Kcal/m2h ℃の間で冷却能を調整して10秒以内
に600〜400℃の間の断面内平均温度に急冷し、直
ちにコイル状に巻き取ることを特徴とする強靭直接パテ
ンティング線材の製造方法。
【0013】(2) C:0.40〜1.0%を含有した鋼
を最終仕上げ温度700〜1200℃で5〜16φmmの
直径に熱間圧延後、コイル状に巻かれる以前の単線の状
態で直ちに冷却するに際して、50℃以下の水を100
〜2000m3/hrで供給し、熱伝達係数1000〜20
000Kcal/m2h ℃の間で冷却能を調整して10秒以内
に600〜400℃の間の断面内平均温度に急冷し、直
ちにコイル状に巻き取ると共に圧延終了からオーステナ
イト変態が完了するまでの間を酸化防止してオーステナ
イトの変態を完了せしめ、その後水冷することを特徴と
する強靭直接パテンティング線材の製造方法。
【0014】(3) 50℃以下の水を冷却管より噴射
させ、且つ熱伝達係数を3000〜15000Kcal/m2
h ℃の間で水量を調整し急冷することを特徴とする前記
(1)項または(2)項の何れかに記載の強靭直接パテ
ンティング線材の製造方法。
【0015】(4) 最終仕上げ温度が800〜110
0℃であることを特徴とする前記(1)項または(2)
項の何れかに記載の強靭直接パテンティング線材の製造
方法。
【0016】(5) 急冷の途中に線材の表面と内部と
の温度差が100℃以下とするための復熱帯を設けたこ
とを特徴とする前記(1)項〜(4)項の何れかに記載
の強靭直接パテンティング線材の製造方法。
【0017】(6) 急冷温度が550〜450℃であ
ることを特徴とする前記(1)項または(2)項の何れ
かに記載の強靭直接パテンティング線材の製造方法。
【0018】(7) 線材の結束前における任意の時点
において防錆剤または潤滑剤の一方または双方を付着さ
せることを特徴とする前記(1)〜(6)項の何れかに
記載の強靭直接パテンティング線材の製造方法。
【0019】
【作用】上記したような本発明について、その技術的関
係を説明すると、素材成分として、C:0.40〜1.0%
である。即ちCが0.40%未満では所望の強度を得るの
が困難であり、一方1.0%を越えると延性の低下が大き
いので0.40〜1.0%とする。本発明に使用される鋼は
主としてJIS 3502(ピアノ線材)、JIS 3506(硬鋼線
材)、SAE J403(炭素鋼)が使用されるが、目的に応じ
てSi、Mnが規格範囲外であっても有効であり、更にCr、
V等の強化元素を含んでもよい。また当然鋼にはP、
S、Cu等の不純元素や、Al等の脱酸元素を含む。
【0020】・熱間圧延線材の直径:5〜16mm。 熱間圧延後の線材の直径が5mm未満では断面形状が円形
になり難く、一方16mmより太くなると急冷に際して中
心と表面の温度差が大きくなって組織のむらが生ずるの
で5〜16mmの間とすることが必要である。
【0021】・最終仕上げ温度:700〜1200℃。 熱間圧延における最終仕上げ温度が700℃未満になる
と線材に表面疵が発生し易く、また熱間加工変形粒が残
存してパーライトが層状に析出しなくなり延性の低下を
もたらす。一方1200℃を越える高温にすると線材を
所望の温度に冷却するのに長い冷却帯が必要になるので
700〜1200℃の間とする。圧延後に加工変形粒を
再結晶させて、粒を適当な大きさにしてパテンティング
効果を十分効かせるには800℃以上が好ましく、また
できるだけ短い冷却帯で冷却を行い、且つ結晶粒を適当
に小さいものとするには仕上げ温度は1100℃以下が
望ましい。
【0022】・水量:100〜2000m3/hr。 水量が100m3/hr未満では所望の冷却能力が得られな
い。一方2000m3/hrを越えても冷却能力は飽和して
くるので水量は100〜2000m3/hrの間とする。冷
却水の水温としては50℃以下とすることが適切であ
る。
【0023】・熱伝達係数:1000Kcal/m2h ℃以
上。 熱伝達係数が1000Kcal/m2h ℃未満では所望の温度
にまで急冷するのに時間がかかり過ぎて長い冷却帯を必
要とする。好ましくは2000Kcal/m2h ℃、より好ま
しくは3000Kcal/m2h ℃以上であって、できるだけ
冷却帯を短くするには5000Kcal/m2h ℃以上が望ま
しい。一方熱伝達係数が20000Kcal/m2h ℃を越え
ると線材の表面と内部の温度差がつき過ぎて復熱帯を長
く取らねばならないので好ましくない。復熱帯を設けな
いか、設けても短いものとするためには熱伝達係数は1
5000Kcal/m2h ℃以下が望ましい。
【0024】・冷却時間:10秒以内。 線材は太径の16mmで、一般的に遅くとも10m/sec
程度で圧延される。冷却帯として可能な範囲は100m
程度であるので冷却時間は10秒以内とした。
【0025】・急冷温度:断面内平均温度で600〜4
00℃。 線材の急冷温度は断面内平均で600〜400℃の間と
する。600℃より高い温度ではパーライト変態温度が
高く、微細なパーライトが得られず、強度および延性の
低い線材しか得られない。十分微細なパーライトを得る
には550℃以下が望ましい。これに対し400℃未満
に冷却するとベイナイト、マルテンサイト等の過冷組織
の発生量が多くなって、伸線加工に際して断線の原因に
なる。表面の一部に過冷組織が出現してもその後の自己
焼戻しで靭性を回復させるには400℃以上とする必要
がある。また過冷組織の出現を防止して、組織を微細パ
ーライトのみ、あるいは粒界に極少量のフェライトの存
在する微細パーライトの組織とするには450℃以上が
望ましい。そこで線材の急冷温度は断面内平均で600
〜400℃、望ましくは550〜450℃の間とする。
【0026】急冷の途中において線材の表面と内部との
温度差が100℃以下になるように復熱帯を設けること
により線材表面などにマルテンサイトなどの出現を防止
し、断面における組織の均一化を計って良好な特性を有
するパテンティング線材を得しめる。
【0027】線材の結束前における任意の時点において
防錆剤または潤滑剤の何れか一方または双方を線材に付
着させることにより該線材表面におけるスケールの発生
を防止し、又その加工を容易ならしめ、従って又その脱
スケールを容易ならしめ酸洗所要時間などの充分な短縮
あるいは完全な不要化を図らしめる。
【0028】本発明によるものの実施態様について説明
すると、図1には本発明を実施するための設備系統の1
例が示されており、中間サイズに圧延された線材1は仕
上げミル2により目的とする直径の線材に圧延される。
このときの仕上げ温度は温度計3により計測され、その
後線材1は幾つかのブロックからなる冷却帯4にて単線
の状態で急冷される。急冷温度を温度計3aにより測定
し、その後線材は巻取り機5によりコイル状に成形され
る。
【0029】図2には本発明によるもう1つの実施態様
に示す設備系統図が示されている。仕上げミル2を出た
線材1は測温可能な無酸化シール帯6を経て急冷帯4に
入る。さらに急冷後の線材は測温可能な無酸化シール帯
6aを経てコイルに巻き取られる。巻取り後オーステナ
イトの変態が完了するのを待ってコイルは水槽8により
完全に冷却される。巻取りから水冷までの時間は1〜2
分で十分である。また巻取りから水冷までは窒素等のガ
スを充満させた無酸化室7により表面の酸化を防止す
る。急冷に用いる水に酸化防止剤を添加すると一層効果
がある。
【0030】図3には上記のような本発明の実施に当っ
て、水冷帯内に設置した水冷管の構造を示すもので、
(a)は急冷の主体部分を行う水冷ノズルであり、
(b)は急冷の最終部分で用いる水切りノズルである。
管11の内径は10〜30mm程度、長さは200〜80
0mm程度であり、必要とする冷却帯の長さに応じてこれ
らのノズルを幾つか直列に配置する。水は高圧の状態で
水冷ノズル、水切りノズルの何れにおいても図の下方の
供給口12より供給され、斜めに設けた隙間、即ちスリ
ット13より噴射されて、通過する線材を冷却するよう
に成っている。
【0031】図4は前記した図1に示した設備によって
実施した場合の冷却曲線の1例を0.82%C鋼の等温変
態図と併せて示した図であるが、曲線aは従来のミスト
等による直接パテンティングにおける断面内平均温度の
変化を示す冷却曲線であり、曲線bは同じく本発明にお
ける冷却曲線であり、図中のRは急冷、Sは徐冷を示
す。また図中の一点鎖線Tは単線の線材をコイル状に形
成する時点を指すものである。即ち曲線aにおいては仕
上げ圧延後急冷→徐冷→巻取り→急冷→徐冷の工程を経
てパテンティングされる。パテンティングの主要部分は
コイル状に巻き取ってから行うため線材同士が重なって
冷却のばらつきが大きい。また完全にパーライトのノー
ズ部に冷やすのは困難で十分な強度が得られない。これ
に対して本発明に係る曲線bは単純に急冷→巻取り→徐
冷の工程であり、急冷は巻取り前に行うため冷却にばら
つきが生じない。完全にパーライトノーズ部に冷却可能
で高い強度を得ることができ、オーステナイトからパー
ライトへの変態はコイル状に巻き取られてから完了す
る。
【0032】図5には最終仕上げ温度を800〜110
0℃とした場合における冷却曲線の1例が示されてお
り、冷却途中での表面の冷え過ぎを防止するため水冷を
停止して復熱させた例である。実線は線材表面温度、一
点鎖線は断面内平均温度であり、線材径11mm、仕上げ
圧延速度40m/s、冷却の熱伝達係数約8500Kcal
/m2h ℃である。即ち圧延後0.8秒冷却すると表面と平
均の温度差は150℃もありこれをこのまま冷却すると
マルテンサイトの発生するMs点以下に表面が下がって
しまう。そこで0.5秒冷却を止めると温度差は約30℃
程度に縮まる。しかる後さらに所望の温度まで急冷すれ
ば内外の温度差のない、即ち断面内の硬度差の少ないパ
テンティング線材が製造できる。本例では急冷の中間で
一回復熱させただけであるが、冷却帯を幾つかに分割し
て急冷復熱を複数回繰り返してもよい。
【0033】なおマルテンサイト、ベイナイト等が出現
しても500℃付近で自己焼戻しして、延性を回復する
ことができるので、伸線において断線が生じない程度の
少量であれば特に差し支えはない。また復熱の間はこの
例の如く完全に水を停止してもよく、あるいはミスト等
の熱伝達係数の小さい冷却流体により緩速冷却してもよ
い。
【0034】図6は本発明により線材の結束前に防錆剤
または潤滑剤を附着させる場合の態様を示すもので、コ
イル状線材20に対しノズル21から防錆剤、潤滑剤が
供給附着される。用いられる潤滑剤としては燐酸塩系、
硼砂系等を用いる。マシン油等の鉱物油、ヤシ油等の植
物油、ポリエチレン等の合成油を用いれば潤滑とともに
防錆の効果が期待できる。これらのコイルに満遍なく、
ノズルより噴射して吹きつける。
【0035】図7には具体的実施に当って用いた水冷管
の熱伝達係数と水量密度(水冷管1mで1時間当たりの
噴射水量)の関係を示すが、図中の温度は水温であり、
水温が低い方が小さい水量密度で高い熱伝達係数を得る
ことができる。この水温は夏季には40℃程度まで上昇
するが、冬季には水の凍結を防止するため低くても10
℃程度である。また冷却帯の一部にミストを併用するこ
とも当然本発明の技術的範囲に属するものである。
【0036】上述したように用いられる水温は季節によ
り変動するし、一日の間でも圧延開始時点と圧延終了間
際では大きくことなる。また圧延仕上げ温度も変動する
ので、これらの変動を防止して、線材の急冷温度を一定
に保つ必要がある。そのためには線材の仕上げ温度を測
定してこれをフィードフォワードする、冷却後の線材温
度を測定してこれをフィードバックする、あるいは冷却
後の線材温度を測定してこれを次の材料、或いは次次材
に対して学習制御させて水量を調整するのがよい。
【0037】図8には、5〜16mmφの線材を直接パテ
ンティングした条件を示す。図の上方から最終圧延速
度、水冷帯100mまたは50mの時の冷却時間(線A
またはB)、仕上げ温度であり、これを500℃まで冷
却するに必要な熱伝達係数およびその熱伝達係数を得る
ために使った総水量である。たとえば5.5φ線材の最終
圧延速度100m/secで、冷却帯100mの場合冷却時
間は1秒であり、1100℃の仕上げ温度から500℃
まで冷却するに必要な熱伝達係数は6800Kcal/m2h
℃であり、使用水量は約700m3/hrである。
【0038】
【実施例】本発明によるものの具体的な実施例について
説明すると、先ず本発明者等が具体的に採用した供試材
の成分組成は次の表1に示す如くである。
【0039】
【表1】
【0040】又前記表1の鋼Cについて、前記した図8
に示したように5〜16mmφの線材を直接パテンティン
グした場合の具体的な実施条件は次の表2に示す如くで
ある。
【0041】
【表2】
【0042】即ち、前記表2において、No.1〜5は50
mの冷却帯で5〜16φの線材を直接パテンティングし
た詳細である。鋼Cにおいて135kgf /mm2 程度の強
度で、ばらつきも2kgf /mm2 以下と小さく、絞りも高
くて、組織も微細パーライトの良好な線材を得ている。
なおばらつきは50本の最大値〜最小値の差を示した。
また、No.6〜9は100mの冷却帯で直接パテンティン
グした詳細であるが、この場合にもNo.1〜5と同様に良
好な結果を得ていることが確認される。
【0043】上記のような本発明のものに対し No.10
及び11は従来のLP材の特性を示すものである。ばら
つきは小さいがNo.1〜9の本発明と比較すると、強度、
絞りとも低い値である。LP材においてはオーステナイ
ト化のための再加熱により結晶粒が粗大化して50μm
程度となるのに対して、直接パテンティングにおいては
熱間圧延後に直ちに急冷するためオーステナイトの再結
晶が殆ど進まず、5〜10μm程度の微細粒であるた
め、強度、延性ともLP材より高くなる。
【0044】図9、図10ならびに次の表3には、前述
した表1のA、B鋼に対し5.5mmφまたは16mmφ、あ
るいは7mmφの線材の圧延速度を変えあるいは同じとし
て実施した結果が示されている。
【0045】
【表3】
【0046】即ち、図9と表3における No.12〜14
は5.5φ線材の圧延速度を変えて試験した例である。圧
延速度が上がって仕上げ温度が高くなるとともに、冷却
時間も短くなって、大きな熱伝達係数が必要になり、大
量の水を必要とする。かかる条件で冷却した鋼Aの特性
は良好である。低炭素であるため組織には一部フェライ
トを含む。
【0047】図10と表3における No.15〜17は1
6φ線材の圧延速度を変えて試験した例である。圧延速
度が下がって仕上げ温度が低くなるとともに、冷却時間
も長くなり、パテンティングに必要な熱伝達係数は小さ
く、少量の水で目的は達せられる。かかる条件でも冷却
した鋼Bの特性は良好である。
【0048】前述した表3の No.18〜22は7φ線材
の急冷温度を630〜380℃の間で変えた例である。
冷却温度が630℃の No.18は粗大パーライトが発生
して強度が低い。冷却温度が590℃〜410℃にある
No.19〜21は微細パーライトで強度も110kgf /
mm2 前後と良好である。 No.22は冷却温度が380℃
と低く、組織にマルテンサイトが出ており、かかる低い
温度ではマルテンサイトは焼戻しが十分でなく、断線の
原因となる。
【0049】次の表4には表1の鋼Cについて既述した
図5に示すような冷却曲線を採った場合その他の仔細が
示されている。
【0050】
【表4】
【0051】即ち表4における No.23は図5に冷却曲
線の詳細が示されたが、11mmφの線材を冷却するに際
して冷却の中間で復熱させて線材表面と内部の温度差を
小さくして断面内の均一化を計ったもので、良好な特性
を有するパテンティング線材を得ている。また No.24
は中間で復熱して、420℃まで冷却した例であり、N
o. 23よりやや高強度の良好な線材を得ているが、中
間で復熱させないで一気に420℃まで冷却した No.2
5においては表面にマルテンサイトが出現した。
【0052】下記する表5には10mmφ線材における無
酸化シールの有無と表面に生成した酸化スケール厚みな
どを示す。
【0053】
【表5】
【0054】即ち No.26は本発明における第1発明の
例で、冷却前後の無酸化シール対策はない。しかしなが
ら圧延直後に500℃まで急冷するので、生成するスケ
ール厚みは2μmと大変薄い。また No.27は本発明に
おける第2発明の例で、冷却前後に無酸化シール対策を
施し、変態完了後に水冷したものであるが、酸化スケー
ルは全くない。これに対して No.28のLP材は980
℃で加熱しているため、スケールは25μmと厚い。か
かる厚いスケールを除去するには塩酸あるいは硫酸水溶
液で30分程度の酸洗時間を要するのに対し、 No.26
の線材では酸洗時間が数分で済み、また No.27の線材
では全く酸洗を必要としない。
【0055】
【発明の効果】以上説明したような本発明によるときは
従来技術において不可能であったLP材なみの強度をも
ち、しかもそのばらつきが著しく低い線材を製造するこ
とができ、その強度、延性はLP材より優れ、しかも鉛
公害、酸公害を回避せしめ、エネルギー的損失を適切に
解消するなどの効果を有しており、工業的にその効果の
大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施態様についての設備系統図
である。
【図2】本発明による別の実施態様についての設備系統
図である。
【図3】本発明において用いる水冷管の構造を示した断
面図である。
【図4】本発明の第1発明における冷却曲線を0.82%
炭素鋼の等温変態図と併せて示した図表である。
【図5】急冷の中間で復熱させた場合の冷却曲線を示し
た図表である。
【図6】コイルに潤滑剤を吹付ける手法についての説明
図である。
【図7】水冷管の熱伝達係数と水量密度の関係を示した
図表である。
【図8】5〜16mmφの線材を直接パテンティングした
条件についての図表である。
【図9】5.5mmφ線材の圧延速度を変えてパテンティン
グした場合の条件を示した図表である。
【図10】16mmφ線材の圧延速度を変えてパテンティ
ングした場合の条件を示した図表である。
【符号の説明】
1 線材 2 仕上げ圧延機 3、3a 温度計 4 水冷帯 5 巻取り機 6 無酸化シール帯 7 無酸化室 8 水槽 11 管 12 供給口 13 スリット 20 コイル状線材 21 ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−146224(JP,A) 特開 昭57−143440(JP,A) 特開 昭51−10107(JP,A) 特開 平1−116032(JP,A) 特開 昭61−133326(JP,A) 特開 平2−232321(JP,A) 特開 昭56−86619(JP,A) 特開 平1−312035(JP,A) 特開 平3−20415(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/52,9/56,9/573 C21D 8/06

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.40〜1.0%を含有した鋼を最終
    仕上げ温度700〜1200℃で5〜16φmmの直径に
    熱間圧延後、コイル状に巻かれる以前の単線の状態で直
    ちに冷却するに際して、50℃以下の水を100〜20
    00m3/hrで供給し、熱伝達係数1000〜20000
    Kcal/m2h ℃の間で冷却能を調整して10秒以内に60
    0〜400℃の間の断面内平均温度に急冷し、直ちにコ
    イル状に巻き取ることを特徴とする強靭直接パテンティ
    ング線材の製造方法。
  2. 【請求項2】 C:0.40〜1.0%を含有した鋼を最終
    仕上げ温度700〜1200℃で5〜16φmmの直径に
    熱間圧延後、コイル状に巻かれる以前の単線の状態で直
    ちに冷却するに際して、50℃以下の水を100〜20
    00m3/hrで供給し、熱伝達係数1000〜20000
    Kcal/m2h ℃の間で冷却能を調整して10秒以内に60
    0〜400℃の間の断面内平均温度に急冷し、直ちにコ
    イル状に巻き取ると共に圧延終了からオーステナイト変
    態が完了するまでの間を酸化防止してオーステナイトの
    変態を完了せしめ、その後水冷することを特徴とする強
    靭直接パテンティング線材の製造方法。
  3. 【請求項3】 50℃以下の水を冷却管より噴射させ、
    且つ熱伝達係数を3000〜15000Kcal/m2h ℃の
    間で水量を調整し急冷することを特徴とする請求項1ま
    たは2の何れかに記載の強靭直接パテンティング線材の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 最終仕上げ温度が800〜1100℃で
    あることを特徴とする請求項1または2の何れかに記載
    の強靭直接パテンティング線材の製造方法。
  5. 【請求項5】 急冷の途中に線材の表面と内部との温度
    差が100℃以下とするための復熱帯を設けたことを特
    徴とする請求項1〜4の何れかに記載の強靭直接パテン
    ティング線材の製造方法。
  6. 【請求項6】 急冷温度が550〜450℃であること
    を特徴とする請求項1または2の何れかに記載の強靭直
    接パテンティング線材の製造方法。
  7. 【請求項7】 線材の結束前における任意の時点におい
    て防錆剤または潤滑剤の一方または双方を付着させるこ
    とを特徴とする請求項1〜6項の何れかに記載の強靭直
    接パテンティング線材の製造方法。
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