JP3173096B2 - 光ディスク基板 - Google Patents

光ディスク基板

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JP3173096B2
JP3173096B2 JP04461092A JP4461092A JP3173096B2 JP 3173096 B2 JP3173096 B2 JP 3173096B2 JP 04461092 A JP04461092 A JP 04461092A JP 4461092 A JP4461092 A JP 4461092A JP 3173096 B2 JP3173096 B2 JP 3173096B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光ディスク基板に係り、
特に、特定の熱安定剤及び脂肪酸金属塩を含有してな
る、熱加工安定性に優れたポリビニルシクロヘキサン系
樹脂より構成された光ディスク基板に関する。
【0002】
【従来の技術】レーザーを用いた光学記録は高密度の情
報記録、保存、及び再生が可能であるため、近年その開
発が積極的に行なわれている。この様な光学記録の一例
として光ディスクを挙げることが出来る。一般に光ディ
スクは、透明な基板とその上にコートされた種々の記録
媒体とから基本的に構成される。
【0003】光ディスクの透明基板には無色透明な合成
樹脂が用いられるケースが多く、その代表的なものとし
てポリカーボネート(以下、「PC」と略称する。)又
はポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と略
称する。)を挙げることができる。これらの樹脂は無色
透明性に秀いでる他、夫々に固有の優れた性質を有する
ものではあるが、光学材料、特に光ディスク基板として
の要件を全て備えている訳ではなく、解決すべき問題点
を有している。例えば、PCにおいてはその芳香族環に
起因する複屈折性の問題があり、また、吸水性或いは透
水性においても問題がある。一方、PMMAにおいて
は、耐熱性、吸水性、靭性の面における問題点がかねて
より指摘されている。
【0004】このように、これらの樹脂は夫々固有の問
題点を内在させつつ使用に供されているのであるが、実
際には更に、これらの樹脂よりなる透明基板の上にコー
トされる記録媒体との関係において、後述のような新た
な問題が生じている。
【0005】一方、記録媒体については、従来より光デ
ィスクの用途に応じて多岐にわたる開発が行なわれてい
る。例えば、ライト・ワンス型と呼ばれる記録−再生専
用のものでは穴あけタイプのものが、またイレーザブル
型と呼ばれる、記録−再生−消去−再記録用のもので
は、結晶転移現象を利用した相転移タイプのもの、光磁
気効果を利用した光磁気タイプのもの等が知られてい
る。これらの記録媒体用材料は、ライト・ワンス型では
テルル又はその酸化物、合金化合物等、イレーザブル型
では、GdFe,TbFe,GdFeCo,TbFeC
oといった希土類−遷移金属のアモルファス合金化合物
等、無機系材料が主流とされており、一般に高真空下で
のスパッタリング等の乾式処法により、透明基板上に成
膜することにより形成されている。
【0006】ところで、PC、PMMAの吸湿性及び透
水性は、一方では基板自身の吸湿時の膨張によるソリの
問題を引き起こすものであるが、他方、基板を通しての
水分の透過により記録媒体の腐蝕を引き起こし、光ディ
スクの寿命を縮める原因となっている。
【0007】また、基板用樹脂の耐熱性について更に言
及すれば、次のような問題がある。即ち、光ディスク、
特にライト・ワンス型、イレーザブル型等の光ディスク
においては、記録の書き込み、消去時の記録媒体の温度
は200℃以上にもなる。このため、ディスク基板にこ
の熱が直接かかることは無いにしても、記録の書き込
み、消去時には基板が相当高温になることが予想され、
耐熱性の低い樹脂では、基板の変形或いはグルーブの変
形等の問題が起こり得る。
【0008】一方、光ディスクの生産工程においては、
基板或いは記録媒体の経時変化防止等の目的で、熱処理
工程を取り入れることが多いが、生産性の向上のために
は、できるだけ高い処理温度で処理することにより処理
時間を短縮することが望まれる。この様な観点からも、
樹脂の耐熱性が低いと高い処理温度を採用することがで
きず、生産性を上げることができないという不具合があ
る。
【0009】このようなことから、光ディスクの生産工
程或いは使用状況の高温度に耐えるには、耐熱性の低い
PMMAでは全く不十分であり、従来においては専ら、
より耐熱性の高いPCが透明基板材料として検討されて
いる。
【0010】PC、PMMA等の従来の樹脂の欠点を補
うものとして、特開昭63−43910等において、ポ
リビニルシクロヘキサン系樹脂を光ディスク基板として
用いる方法が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリビ
ニルシクロヘキサン系樹脂を用いた場合においても、必
ずしも高特性光ディスク基板が得られるわけではなく、
いくつかの点で満足し得る結果が得られていないのが現
状である。
【0012】本発明者等は、前記特許出願において提案
されているポリビニルシクロヘキサン系樹脂を用いた光
ディスク基板の成型性等について詳細に検討した結果、
次のような知見を得た。
【0013】ポリビニルシクロヘキサン系樹脂は、通
常、ビニル芳香族系重合体の芳香環の水添により得ら
れ、一般にポリスチレン同様の脆性高分子として知られ
ている樹脂である。
【0014】前述した様にライト・ワンス型、イレーザ
ブル型等の光ディスクにおいては、その使用状況、生産
工程において、相当の熱履歴を受けることから、樹脂基
板に対して高い耐熱性が要求される。また、ディスク基
板用樹脂材料としては、少なくとも射出成型の際の金型
離型時に破損しない程度の靭性も要求される。
【0015】このような要求を満たすべく、耐熱性に秀
れ、ある程度の靭性を持つポリビニルシクロヘキサン系
重合体を得るためには、合成に際し、芳香環の水添率を
高くし、かつ一定以上の分子量を保持する必要がある。
【0016】一方、光ディスク基板としては、ソリ、歪
が少くグルーブの転写性が良好である必要があり、この
ような観点からは、射出成型時の樹脂の流動性はできる
だけ良好であることが好ましい。また、シルバーストリ
ーク発生や着色の防止、更にはディスク基板表面の異物
の付着防止のためには、樹脂の吸湿量を下げると共に、
できる限り樹脂の劣化を防止する必要がある。
【0017】ところで、ある程度の靭性が保持されるよ
うな分子量を持つポリビニルシクロヘキサン系樹脂に関
して、樹脂の劣化が防止できる低温での射出成型では、
流動性が不十分となるので、成型温度を高くする必要が
ある。このような成型温度としては270〜330℃、
更には280〜320℃の範囲が好ましい。
【0018】しかしながら上記温度範囲においては、ポ
リビニルシクロヘキサン系樹脂の劣化が避けられず、熱
安定剤の使用により、できるだけその劣化の程度を抑え
ると共に、脂肪酸金属塩等の滑剤を併用することによ
り、異物の発生を抑えることが不可欠となる。
【0019】本発明は、特定の熱安定剤及び脂肪酸金属
塩を併用することにより、耐熱性、靭性、流動性、吸湿
性、透明性等の特性を改善したポリビニルシクロヘキサ
ン系樹脂よりなる高特性光ディスク基板を提供すること
を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】請求項1の光ディスク基
板は、熱重量計で測定した5%重量減少温度が295℃
以上である、ヒンダードフェノール系熱安定剤及びリン
系熱安定剤と、長鎖飽和脂肪酸金属塩とを配合したポリ
ビニルシクロヘキサン系樹脂からなる光ディスク基板で
あって、該ポリビニルシクロヘキサン系樹脂が水素化ビ
ニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体に水
素化ビニル芳香族炭化水素重合体を配合した重合体組成
物であることを特徴とする。
【0021】請求項2の光ディスク基板は、請求項1の
光ディスク基板において、ポリビニルシクロヘキサン系
樹脂が、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共
重合体とビニル芳香族炭化水素重合体を核水添して得ら
れるものであることを特徴とする。
【0022】請求項3の光ディスク基板は、請求項1又
は2の光ディスク基板において、長鎖飽和脂肪酸金属塩
を構成する飽和脂肪酸の炭素数が12〜30、金属の原
子価が2価以上であることを特徴とする。
【0023】即ち、本発明者等は、前述のポリビニルシ
クロヘキサン系樹脂の熱劣化を効果的に防止すると共
に、射出成型時にディスク基板表面に付着物が発生しな
い添加剤について鋭意検討した結果、熱安定剤として、
熱重量計で測定した5%重量減少温度が295℃以上で
あるヒンダードフェノール系熱安定剤及びリン系熱安定
剤を用いると共に、更に長鎖飽和脂肪酸金属塩を併せて
用いることにより、樹脂の劣化が効果的に防止され、シ
ルバーストリーク着色、及び表面付着物の問題が解消さ
れることを見出し、本発明に到達した。
【0024】本発明において、ヒンダードフェノール系
熱安定剤としては、1分子中にヒンダードフェノール基
を3つ以上有するものが好ましい。
【0025】リン系熱安定剤としては、テトラキス
(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフ
ェニレンホスフォナイト及び/又はビス(2,6−ジ−
t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトー
ル−ジ−ホスファイトが好ましい。
【0026】また、長鎖飽和脂肪酸金属塩としては、炭
素数が12〜30の長鎖飽和脂肪酸と、原子価が2価以
上の金属との塩が好ましい。
【0027】更に、水素化ビニル芳香族炭化水素−共役
ジエンブロック共重合体に水素化ビニル芳香族炭化水素
重合体を配合した重合体組成物の数平均分子量は5万〜
25万であることが好ましい。
【0028】以下に本発明を詳細に説明する。
【0029】本発明において、ポリビニルシクロヘキサ
ン系樹脂とは、水素化ビニル芳香族炭化水素−共役ジエ
ンブロック共重合体に水素化ビニル芳香族炭化水素重合
体を配合した重合体組成物であって、組成物全体中のビ
ニルシクロヘキサン単位の総含量が30重量%以上のも
のを指す。
【0030】このようなポリビニルシクロヘキサン系樹
脂は、好ましくはビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブ
ロック共重合体とビニル芳香族炭化水素重合体の核水
添により得られる。以下、ビニル芳香族炭化水素−共役
ジエンブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素重合体
について説明する
【0031】ニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロッ
ク共重合体を構成するビニル芳香族炭化水素重合体セグ
メント中のビニル芳香族炭化水素モノマーとしては、ス
チレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等を
挙げることができ、特に代表的なものとしてスチレンが
挙げられる。
【0032】ビニル芳香族炭化水素重合体セグメントと
しては、これらのビニル芳香族炭化水素モノマーの1種
よりなる単独重合体或いは2種以上の共重合体が挙げら
れる。また、上記ビニル芳香族炭化水素モノマーと共重
合可能な他のモノマーを、ビニル芳香族炭化水素重合体
セグメントの特性が失なわれない範囲で含有しても良
い。このようなモノマーとしては、アクリル酸、アクリ
ル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、
マレイン酸、無水マレイン酸、アクロレイン、ビニルエ
ステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、アクリ
ロニトリル等が挙げられる。
【0033】一方、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン
ブロック共重合体を構成する共役ジエン重合体セグメン
ト中の共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、イソプ
レン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3
−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、
特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが一般的であ
る。
【0034】これら2種以上のセグメントからなるビニ
ル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体は、い
わゆるリビングアニオン重合と称せられる公知の方法、
例えば有機リチウム化合物を開始剤とし、ヘキサン、ヘ
プタンの様な炭化水素溶媒中で重合する方法等により容
易に得ることができる。
【0035】このようなビニル芳香族炭化水素−共役ジ
エンブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体
セグメントの含有量は50〜99重量%、特に70〜9
5重量%とするのが好ましい。なお、ビニル芳香族炭化
水素重合体として、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン
ブロック共重合体を単独で用いる場合は、そのビニル芳
香族炭化水素重合体セグメントの含有量は80〜99重
量%、特に90〜97重量%とするのが好ましい。ビニ
ル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体中の共
役ジエン重合体セグメントの含有量が多過ぎる場合は得
られるポリビニルシクロヘキサン系樹脂の耐熱性、剛性
が低下し、光ディスク基板として不適当なものとなり、
少な過ぎる場合は流動性、靭性が低下する。
【0036】このような原料ビニル芳香族炭化水素−共
役ジエンブロック共重合体の分子量は数平均分子量で3
万〜40万、好ましくは5万〜40万である。
【0037】このようなビニル芳香族炭化水素−共役ジ
エンブロック共重合体を核水添して水素化ビニル芳香族
炭化水素−共役ジエンブロック共重合体を製造するに
は、該ビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重
合体を芳香核水素化能を有する水素化触媒の存在下で核
水添する。
【0038】ここで使用される水素化触媒としては、例
えばニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、白
金、パラジウム等の金属又はその酸化物、塩、錯体及び
これらを活性炭、ケイソウ土、アルミナ、シリカ等の担
体に担持したもの等が挙げられる。これらの中でも特に
パラジウムのシリカ担持触媒が、反応性や水素化後の重
合体の透明性向上の面から好ましい。
【0039】上記核水添反応は、50〜250kg/c
の圧力、100〜200℃の温度下にて、溶媒とし
てシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−オクタ
ン、デカリン、テトラリン、ナフサ等の飽和炭化水素系
溶媒、或いは、THF(テトラヒドロフラン)等のエー
テル系溶媒を用いて行なうのが好ましい。
【0040】このような水添反応による水添率に関し
て、共役ジエン重合体セグメントに由来する二重結合の
水添率は実質的に100%である。一方、芳香核の水添
率に関しては、好ましくは60mol%以上80mol
%未満、より好ましくは65〜75mol%である。核
水添率が上記値より高い場合は記録膜との密着性が不十
分であり、光ディスク基板として特に長期の耐久性に問
題が生じる。逆に、低い場合は、耐熱性の低下、複屈折
率の増大等の問題がある。
【0041】本発明において、このようにビニル芳香族
炭化水素−共役ジエンブロック共重合体の核水添により
得られる水素化ビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロ
ック共重合体の分子量は、数平均分子量で2万〜30
万、好ましくは5万〜20万、更に好ましくは8万〜1
5万である。分子量が低過ぎると得られるポリビニルシ
クロヘキサン系樹脂の強度が不足し、高過ぎると成型
性、光学的均一性が低下する。
【0042】本発明に係るポリビニルシクロヘキサン系
樹脂の他の核水添原料であるビニル芳香族炭化水素重合
体としては、上述のビニル芳香族炭化水素−共役ジエン
ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体セグ
メントと同様な重合体が挙げられる。また、その重合法
としては非晶質重合体が得られるものであれば特に制限
はないが、通常はラジカル重合、アニオン重合等が用い
られる。
【0043】この原料ビニル芳香族炭化水素重合体の分
子量は数平均分子量で5万以上であることが好ましい。
分子量が低過ぎると、核水添後得られるポリビニルシク
ロヘキサン系樹脂の耐熱性、靭性が低下する。一方、分
子量の上限については、好ましくは40万以下、より好
ましくは20万以下である。
【0044】このようなビニル芳香族炭化水素重合体は
上述のビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重
合体の核水添と同様な方法で核水添することができる。
核水添反応による芳香核の水添率は、好ましくは60m
ol%以上80mol%未満、より好ましくは65〜7
5mol%である。水添率が低いと得られるポリビニル
シクロヘキサン系樹脂の耐熱性が低下し、また光学材料
としての複屈折率が高くなり好ましくない。水添率が高
いと記録膜との接着性が不十分である。
【0045】以上のようにしてビニル芳香族炭化水素重
合体の核水添により得られる水素化ビニル芳香族炭化水
素重合体の分子量は、数平均分子量で5万〜30万、好
ましくは6万〜15万である。数平均分子量が5万未満
であると得られるポリビニルシクロヘキサン系樹脂の強
度が不足するので好ましくなく、30万を超えると成型
性、光学的均一性が損なわれるので好ましくない。
【0046】本発明において採用されるポリビニルシク
ロヘキサン系樹脂は、水素化ビニル芳香族炭化水素−共
役ジエンブロック共重合体に水素化ビニル芳香族炭化水
素重合体を配合した重合体組成物であるが、全重合体
(組成物)中のビニル芳香族炭化水素由来セグメントの
含有量が80〜99重量%、特に90〜97重量%であ
り、全体の芳香核の核水添率が60mol%以上80m
ol%未満、特に65〜75mol%であり、数平均分
子量が5万〜25万であることが好ましい。
【0047】なお、ポリビニルシクロヘキサン系樹脂の
調製にあたり、上述の成分の混合方法に関しては特に制
限されるものではないが、通常は上述の成分を溶媒に溶
解した後、貧溶媒に投入する、或いは溶媒を留去する等
によって共析出させる方法、押出機、ブラベンダープラ
ストグラフ、バンバリーミキサー等の混練機により溶融
混合する方法等を用いることができる。また、溶液混合
の後、溶融混練する方法も好ましい。
【0048】本発明においては、このようなポリビニル
シクロヘキサン系樹脂に、熱安定剤として、熱重量計に
おいて空気気流下で測定されるところの5%重量減少温
度が295℃以上であるヒンダードフェノール系熱安定
剤の少なくとも一種と、同じく5%重量減少温度が29
5℃以上であるリン系熱安定剤の少なくとも一種とを組
み合わせて配合し、更に長鎖飽和脂肪酸金属塩を併用す
る。
【0049】なお、本発明で言う、ヒンダードフェノー
ル系熱安定剤とは、分子中に少なくとも一つのヒンダー
ドフェノール基(水酸基の両側に、互いに同一又は異な
る、炭素数1〜4のアルキル置換基を持つフェノール
基)を有する熱安定剤であり、熱重量計において空気気
流下で測定されるところの5%重量減少温度とは、空気
流量100ml/分の流通下、20℃/分の昇温速度で
加熱した時の重量減を測定し、重量減が5.0重量%と
なった時の温度である。
【0050】また、本発明で言うところのリン系熱安定
剤とは、分子中に少なくとも一つのホスファイト又はホ
スフォナイト構造を持つものである。
【0051】本発明で採用されるヒンダードフェノール
系熱安定剤の例としては、テトラキス[メチレン−3−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネートメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチ
ル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5
−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−
2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウン
デカン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシベンジル−s−トリアジン−2,4,
6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリ
メチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、1分子中に
ヒンダードフェノール基を3つ以上持つものを用いた時
に最も優れた効果が得られる。
【0052】また、リン系熱安定剤の例としては、テト
ラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’
−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,6−ジ−t
−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール
−ジ−ホスファイト等が挙げられる。
【0053】更に、上記熱安定剤と併用する長鎖飽和脂
肪酸金属塩としては、一般式、 (R−CO−O)M (式中、Rは炭素数12〜30のアルキル基であり、M
は2価又は3価の金属イオン、nは1〜3の整数で金属
の価数に一致する数)で表わされる、長鎖飽和脂肪酸の
金属塩が挙げられる。
【0054】この長鎖飽和脂肪酸金属塩を構成する長鎖
飽和脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン
酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げら
れ、このうち、ステアリン酸が好ましい。
【0055】一方、金属塩の金属イオンとしては2価以
上の金属イオンが好ましく、例えばMg,Ca,Zn,
Pd,Sr,Al等が挙げられ、このうち、Zn,Ca
が好ましく、特にZnが好ましい。
【0056】これら熱安定剤や長鎖飽和脂肪酸金属塩の
好適な添加量は、ポリビニルシクロヘキサン系樹脂10
0重量部に対して、ヒンダードフェノール系熱安定剤、
リン系安定剤及び長鎖飽和脂肪酸金属塩を各々0.01
〜3重量部、好ましくは0.05〜1重量部である。熱
安定剤や長鎖飽和脂肪酸金属塩の添加量がこの範囲未満
では、劣化防止効果及びディスク基板表面の付着物の防
止効果が不十分であり、この範囲を超える添加量ではブ
リードが生じたり、光ディスク基板として必要な透明性
が低下する等の問題を生じる場合がある。
【0057】これらの熱安定剤及び長鎖飽和脂肪酸金属
塩とポリビニルシクロヘキサン系樹脂との混合方法につ
いては特に制限はないが、通常は樹脂と熱安定剤及び長
鎖飽和脂肪酸金属塩とをリボンブレンダー、タンブラー
ブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合し、その後、
バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機等で溶融
混練し、ペレット形状とすることにより混合する。
【0058】しかして、このようにして得られたペレッ
トを用い、成型温度270〜330℃、特に280〜3
20℃で射出成型することにより、透明性、耐熱性等に
優れ、着色、表面付着物等もなく光学歪の著しく小さい
光ディスク基板を得ることができる。
【0059】本発明の光ディスク基板を用いて光ディス
クを製造する際には、該基板表面に金属蒸着等により前
述の記録媒体の皮膜を形成するか、或いは塗布等の方法
で有機色素系材料の皮膜を設け、これらを更に保護膜で
覆う等の方法を採用することができる。
【0060】
【作用】本発明において、特定の熱安定剤及び長鎖飽和
脂肪酸金属塩を併用することによる作用機構の詳細は明
らかではないが、以下のように推定される。即ち、成型
時の樹脂の劣化については、本発明に係るヒンダードフ
ェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤との併用により、
効果的に抑制されるが、なお、若干の劣化による、酸化
された低分子量物の生成は避け難い。このものが、成型
時に樹脂本体からはじき出され、成型機の器壁或いはノ
ズル付近に次第に蓄積し、ある程度の量以上になった時
に、器壁からはがれ、射出成型される樹脂と共に金型内
に入り、表面付着物となるものと思われる。本発明にお
ける長鎖飽和脂肪酸金属塩の効果は、このような劣化生
成物の樹脂本体からの分離、或いは器壁付近への付着を
抑制することにあり、これにより、射出成型されたディ
スク基板表面への異物の付着が防止される。
【0061】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限
り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以
下の実施例及び比較例における各種物性は、次の方法に
よって測定したものである。
【0062】 数平均分子量: ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GP
C)により、THFを溶媒としてポリスチレンと同様に
測定し、ポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
【0063】 核水添率(%): ポリビニルシクロヘキサン系樹脂をテトラヒドロフラン
(THF)に溶解し、UV吸収により測定した。
【0064】 光ディスク基板の光線透過率(%): JIS K 6714に準拠して測定した。
【0065】 光ディスク基板の複屈折(nm): 成型した厚さ1.2mm、直径130mmのディスクの
中央から5.5cm位置での複屈折(以下「Δ
5.5」と略記する。)で評価した。複屈折は日本光
学社製の偏光顕微鏡により測定した。
【0066】 光ディスク基板の反り量(mm): NiDEK社フラットテスターFT−7を用いて測定し
た。
【0067】 光ディスク基板の外観: 後述する方法で成型した光ディスク基板に関して、着
色、表面付着物、シルバーストリークの発生等を目視に
より調べた。
【0068】実施例1 スチレン単独重合体の水添により得られた、数平均分子
量6.8万、核水添率76%の水素化ポリスチレン3.
1kgと、アニオン重合法により得られた、数平均分子
量7.9万、ブタジエン含有量15重量%のスチレン−
ブタジエンブロック共重合体の水素化物(数平均分子量
7.5万,水添率69%)2.0kgとをTHFに溶解
し、次いでメタノール中に共析出させた。
【0069】得られたウェットパウダーに添加剤とし
て、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)
ベンゼン(日本チバガイギー社製「Irganox13
30」)と、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチ
ルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト
(アデカアーガス社製「MARKPEP−36」)と、
ステアリン酸亜鉛とを各0.1重量部添加した後乾燥し
た。次いで、押出機を用いて260℃で溶融混練を行な
いペレット化した。
【0070】このペレットを射出成型機(名機社製「M
140A」)を用いて、可動金型側にグルーブ付スタン
パーを取り付け、樹脂温度300℃で厚さ1.2mm、
直径130mmの円盤状光ディスク基板を成型した。得
られた光ディスク基板の物性を表1に示す。
【0071】実施例2 スチレン単独重合体の水添により得られた数平均分子量
5.7万、核水添率79%のポリビニルシクロヘキサン
12.0kgと、アニオン重合法により得られた、数平
均分子量9.6万、ブタジエン含有量20重量%のスチ
レン−ブタジエンブロック共重合体の水素化物(数平均
分子量8.2万,水添率72.0%)4.0kgとを実
施例1と同様にパウダー化した。
【0072】得られたウェットパウダーに添加剤とし
て、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブ
チル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン
(日本チバガイギー社製「Irganox1010」)
0.2重量部と、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル
フェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト
(同「Irgaphos P−EPQ」)0.2重量部
と、ステアリン酸亜鉛0.1重量部とを添加し、実施例
1と同様にしてペレット化及び射出成型を行なった。得
られた光ディスク基板の物性を表1に示す。
【0073】比較例1 実施例1においてステアリン酸亜鉛を用いなかったこと
以外は同様にしてペレット化及び射出成型を行なった。
得られた光ディスク基板の物性を表1に示す。
【0074】比較例2 添加剤としてブチルヒドロキシトルエン0.2重量部の
みを用いたこと以外は実施例1と同様にしてペレット化
及び射出成型を行なった。得られた光ディスク基板は熱
劣化による分子量低下が起こり、割れが生じ、また表面
付着物が発生した。このものの物性を表1に示す。
【0075】比較例3 実施例2において「Irgaphos P−EPQ」を
用いなかったこと以外は同様にして光ディスク基板を得
た。得られた光ディスク基板は熱劣化による分子量低下
が起こり、強度が若干不足し、クラックが発生した。こ
のものの物性を表1に示す
【0076】施例 実施例1において、長鎖飽和脂肪酸金属塩としてステア
リン酸亜鉛の代わりにステアリン酸カルシウムを用いた
こと以外は同様にしてペレット化及び射出成型を行なっ
た。得られた光ディスク基板の物性を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】表1より明らかなように、特定のヒンダー
ドフェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤及び長鎖飽和
脂肪酸金属塩を配合したポリビニルシクロヘキサン系樹
脂を用いることにより、耐熱性、透明性、光特性、形状
安定性に優れ、シルバーストリークや着色、表面付着物
等のない高特性光ディスク基板が得られる。
【0079】これに対し、長鎖飽和脂肪酸金属塩を用い
ない比較例1のものでは、ディスクの軟化温度、透明性
等には変化はなかったが、表面付着物の発生があった。
リン系熱安定剤及び長鎖飽和脂肪酸金属塩を用いておら
ず、1分子中にヒンダードフェノール基を1個のみ有す
るヒンダードフェノール系熱安定剤のみを用いた比較例
2のものでは、熱劣化による若干の着色と、分子量低下
にともなう強度不足によるディスクの割れが起こり、ま
た、表面付着物、シルバーストリーク等が発生した。ま
た、リン系熱安定剤を用いない比較例3のものでは、着
色(黄色)が認められ、強度も若干不足し、クラックが
発生した。
【0080】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、耐
熱性、透明性等に優れ、低吸湿性、低複屈折性の高特性
ポリビニルシクロヘキサン樹脂から、樹脂の劣化や表面
付着物等の問題もなく安定生産することが可能な光ディ
スク基板が提供される。
【0081】請求項2,3によれば、より一層高特性の
光ディスク基板が提供される。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 25/02 C08L 25/02 53/02 53/02 (56)参考文献 特開 平1−294753(JP,A) 特開 昭61−138648(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱重量計で測定した5%重量減少温度が
    295℃以上である、ヒンダードフェノール系熱安定剤
    及びリン系熱安定剤と、長鎖飽和脂肪酸金属塩とを配合
    したポリビニルシクロヘキサン系樹脂からなる光ディス
    ク基板であって、 該ポリビニルシクロヘキサン系樹脂が水素化ビニル芳香
    族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体に水素化ビニ
    ル芳香族炭化水素重合体を配合した重合体組成物である
    ことを特徴とする光ディスク基板。
  2. 【請求項2】 ポリビニルシクロヘキサン系樹脂が、
    ニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック共重合体と
    ニル芳香族炭化水素重合体を核水添して得られるもの
    であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク基
    板。
  3. 【請求項3】 長鎖飽和脂肪酸金属塩を構成する飽和脂
    肪酸の炭素数が12〜30、金属の原子価が2価以上で
    あることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ディス
    ク基板。
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