JP3171666B2 - 架橋ポリオレフィン成形物の製造方法 - Google Patents

架橋ポリオレフィン成形物の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は架橋ポリオレフィン成形
物の製造方法に関する。詳しくは特定の共重合体を含有
する成形物を特定の方法で放射線を照射して不均一に架
橋した架橋ポリオレフィン成形物を製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】機械物性の改良、耐溶剤性の改良、耐熱
性の改良などの目的でポリオレフィンを架橋することは
広く行われている。架橋する方法としても既に種々の方
法が提案されており、2官能の単量体とラジカル発生剤
を混合して加熱溶融する方法、アルコキシシラン等の加
水分解性の基を有する単量体を共重合し成形ののち沸騰
水などで加水分解して架橋する方法(特開昭58-11724
4)、放射線を照射して架橋する方法などがよく知られて
いる。また本発明者らによって提案されたアルケニルシ
ランの共重合体を触媒で処理する方法などもある( 特
3-106951) 。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】用途によっては、成形
物全体が均一に架橋しているより架橋密度が部分的に異
なるような成形物であることが要求される。これに対し
て、本発明者は先に、成形物の表面と内部で架橋密度の
異なる成形物の製造方法について提案した。しかしなが
らこの方法では成形物の厚さ方向以外に架橋密度の傾斜
をつけることができない。実際の成形物の利用上は、厚
さ方向以外に架橋密度の傾斜をつけることを要求される
場合が多い。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を
解決して簡便に架橋密度が不均一であるような成形体を
製造する方法について鋭意検討し本発明を完成した。
【0005】即ち本発明は、下記一般式(化5)
【化5】 (式中nは0〜12、pは1〜3、Rは炭素数1〜12
の炭化水素残基。)で表されるアルケニルシランとオレ
フィンの共重合体を含有する成形物の各部に異なる線量
の放射線を照射することを特徴とする不均一に架橋した
架橋ポリオレフィン成形物の製造方法である。
【0006】本発明において用いられるアルケニルシラ
ンは、上記一般式(化)で表される化合物である。
【0007】具体的にはビニルシラン、アリルシラン、
ブテニルシラン、ペンテニルシランなどが例示できる。
【0008】またオレフィンとしては下記一般式(化
2)で示される化合物、
【0009】
【化2】H2C=CH-R (式中Rは水素または炭素数1 〜12の炭化水素残基。)
が例示でき、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン
-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、2-メチルペンテン、ヘプ
テン-1、オクテン-1などのα−オレフィンの他にスチレ
ンまたはその誘導体も例示される。
【0010】本発明においてオレフィンとアルケニルシ
ランの共重合体は、不活性溶媒を使用する溶媒法の他に
塊状重合法、気相重合法で製造することができる。また
製造するに用いる触媒としては遷移金属化合物と有機金
属化合物からなる触媒を用いるのが一般的であり、遷移
金属化合物としてはハロゲン化チタンが、有機金属化合
物としては有機アルミニウム化合物が好ましく用いられ
る。
【0011】具体的には四塩化チタンを金属アルミニウ
ム、水素或いは有機アルミニウムで還元して得た三塩化
チタンを電子供与性化合物で変性処理したものと有機ア
ルミニウム化合物、さらに必要に応じ含酸素有機化合物
などの電子供与性化合物からなる触媒系、或いはハロゲ
ン化マグネシウム等の担体或いはそれらを電子供与性化
合物で処理したものにハロゲン化チタンを担持して得た
遷移金属化合物触媒と有機アルミニウム化合物、必要に
応じ含酸素有機化合物などの電子供与性化合物からなる
触媒系、あるいは塩化マグネシウムとアルコールの反応
物を炭化水素溶媒中に溶解し、ついで四塩化チタンなど
の沈澱剤で処理することで炭化水素溶媒に不溶化し、必
要に応じエステル、エーテルなどの電子供与性の化合物
で処理し、ついでハロゲン化チタンで処理する方法など
によって得られる遷移金属化合物触媒と有機アルミニウ
ム化合物、必要に応じ含酸素有機化合物などの電子供与
性化合物からなる触媒系等が例示される(例えば、以下
の文献に種々の例が記載されている。Ziegler-Natta Ca
talysts and Polymerization by John Boor Jr(Academi
c Press),Journal of Macromorecular Science Reviews
in MacromolecularChemistry and Physics,C24(3) 355
-385(1984)、同C25(1) 578-597(1985)) 。
【0012】あるいは炭化水素溶剤に可溶な遷移金属触
媒とアルミノキサンからなる触媒を用いて重合すること
もできる。
【0013】ここで電子供与性化合物としては通常エー
テル、エステル、オルソエステル、アルコキシ硅素化合
物などの含酸素化合物が好ましく例示でき、さらにアル
コール、アルデヒド、水なども使用可能である。
【0014】有機アルミニウム化合物としては、トリア
ルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライ
ド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルア
ルミニウムジハライドが使用でき、アルキル基としては
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル
基などが例示され、ハライドとしては塩素、臭素、沃素
が例示される。また上記有機アルミニウムと水または結
晶水とを反応することで得られるオリゴマー〜ポリマー
であるアルミノキサンも利用できる。
【0015】ここでアルケニルシランとオレフィンの重
合割合としては架橋度を高くするという意味から、通常
アルケニルシランが 0.1〜30モル%程度、好ましくは0.
5 〜10モル%である。また他のオレフィンの重合体と混
合して用いる場合には1〜20モル%である。
【0016】重合体の分子量としては特に制限はない
が、成形物の物性を向上させる意味からは分子量はでき
るだけ高い方が、少ないアルケニルシラン含量でも架橋
度を高めることができる。また成形性という点では分子
量があまり高いと成形性が悪くなることから、好ましく
は 135℃のテトラリン溶液で測定した極限粘度が0.5 〜
10程度、特に好ましくは 1.0〜5.0 程度である。
【0017】ポリオレフィン(例えば、下記のような混
合して用いるポリオレフィンが使用できる。)にアルケ
ニルシランをグラフト重合して得たグラフト共重合体も
本発明の目的に使用可能であり、その場合、ポリオレフ
ィンにアルケニルシランをグラフトする方法としては特
に制限はなく、通常のグラフト共重合に用いる方法及び
条件が利用でき、通常は用いるポリオレフィンとアルケ
ニルシランをパーオキサイドなどのラジカル開始剤の存
在下にラジカル開始剤の分解温度以上に加熱することで
簡単にグラフト共重合することができる。
【0018】本発明においては必要に応じ上記共重合体
とポリオレフィンを混合して用いることができ、用いる
ポリオレフィンとしては上記一般式(化2)で示される
オレフィン、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン
-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、2-メチルペンテン、ヘプ
テン-1、オクテン-1などのα−オレフィンあるいは、ス
チレンまたはその誘導体の単独重合体、相互のランダム
共重合体、或いは、始めにオレフィン単独、或いは少量
の他のオレフィンと共重合し、ついで2種以上のオレフ
ィンを共重合することによって製造される所謂ブロック
共重合体などが例示される。
【0019】これらのポリオレフィンの製造法について
は既に公知であり種々の銘柄のものが市場で入手可能で
ある。またアルケニルシランを用いない他は上記オレフ
ィンとアルケニルシランの共重合体の製造法と同様に行
うことでも製造可能である。
【0020】本発明においては必要に応じ、無機フィラ
ーを混合して用いることができ、そのような無機フィラ
ーとしては、ポリオレフィンの物性改良に用いられるフ
ィラーであればどのようなものでも利用できるが通常金
属の塩、酸化物、窒化物、炭化物などで針状のもの、鱗
片状のもの、繊維状のものなど補強効果の大きい形状を
したものが好ましく利用される。具体的には、タルク、
カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、
硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、チタン酸バリウム
などが利用できる。
【0021】本発明においてはさらに、少なくとも2つ
の不飽和結合を有する化合物を併用することも可能であ
りそのような物としては反応性の不飽和結合を含有する
化合物としてジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベン
ゼン、ジアリルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、エ
チレングリコールジメタクリレート、エチレングリコー
ルジアクリレートなどの不飽和エステル、ポリブタジエ
ン、ポリイソプレンなどの重合体などが例示でき、反応
性の不飽和結合を少なくとも2つ有する化合物であれば
どの様なものも利用できる。
【0022】本発明においてはまた、Si−H基を含有
するポリシリコーンを併用することが可能であり、その
ようなものとして、下記一般式(化3)で表される化合
物が例示できる。
【0023】
【化3】 (式中Rは炭素数1〜20の炭化水素残基、n は1以上の
整数。)。
【0024】このような化合物は対応する下記一般式
(化4)で表されるアルキルジクロロシラン、あるいは
アリルジクロロシランなどを水で加水分解することで製
造することができる。
【0025】
【化4】RSiCl2 (式中Rは炭素数1〜20の炭化水素残基。)。
【0026】上記アルケニルシランとオレフィンの共重
合体、必要に応じて用いられる、少なくとも2つの不飽
和結合を有する化合物、フィラー、ポリオレフィンある
いはSi−H基を含有するポリシリコーンの混合方法と
しては特に制限はなく通常の方法でパウダー状態で混合
されそのまま利用されたり、さらに溶融混練し造粒さ
れ、ついで射出成形、押出成形、プレス成形などによっ
て成形される。ここで混合物中のアルケニルシラン濃度
としては0.01〜20モル%、好ましくは0.1 〜10モル%に
なるように混合される。
【0027】本発明において放射線とは、電子線、γ
線、X線、紫外線などが例示される。照射は、上記アル
ケニルシランの共重合体を含有する化合物から所望の成
形物に成形した後、照射される。線源としては透過性の
点からγ線、X線、電子線が好ましく、照射線量として
は、通常0.1 〜100Mrad 程度、好ましくは0.1 〜50Mrad
程度である。照射温度としては50℃以下で行われ、特に
低温で行う必要はなく室温で行えば良い。照射を高温で
行うと成形物が変形するとか、架橋が効率的でないなど
の問題がある。従って照射は比較的低温で行って、照射
後に加熱してラジカルを完全に消去するのが好ましい。
【0028】本発明において重要なのは、放射線の照射
を成形物の場所によって、目的に応じた線量だけ行うこ
とにある。即ち、比較的架橋密度を小さくしたい部分に
は比較的少ない量の放射線を照射し、架橋密度を上げた
い部分には比較的多い線量の放射線を照射することにあ
る。従って、放射線の線量が比較的制御し易い、電子
線、X線を用いるのが簡便である。また比較的少ない線
量を全体に照射し、ついで順次線量を多く当てる部分に
放射線を当てて行くのが好ましい。
【0029】
【実施例】以下に実施例を示しさらに本発明を説明す
る。
【0030】実施例1 直径12mmの鋼球9kgの入った内容積4リットルの粉砕用
ポットを4個装備した振動ミルを用意する。各ポットに
窒素雰囲気下で塩化マグネシウム 300g、テトラエトキ
シシラン60mlおよびα, α, α−トリクロロトルエン45
mlを入れ、40時間粉砕した。こうして得た共粉砕物 300
gを5リットルのフラスコに入れ、四塩化チタン 1.5リ
ットルおよびトルエン 1.5リットルを加え、 100℃で30
分間撹拌処理し、次いで上澄液を除いた。再び四塩化チ
タン 1.5リットルおよびトルエン1.5 リットルを加え、
100 ℃で30分間撹拌処理し、次いで上澄液を除いた。そ
の後固形分をn-ヘキサンで繰り返し洗浄して遷移金属触
媒スラリーを得た。一部をサンプリングしてチタン分を
分析したところチタン分は 1.9wt%であった。
【0031】内容積5リットルのオートクレーブに窒素
雰囲気下トルエン40ml、上記遷移金属触媒 100mg、ジエ
チルアルミニウムクロライド 0.128ml、p-トルイル酸メ
チル0.06mlおよびトリエチルアルミニウム0.20mlを入
れ、プロピレン 1.5kg、ビニルシラン80gを加え、水素
0.5Nリットル圧入した後、75℃で2時間重合した。重合
後未反応のプロピレンをパージし、パウダーを取り出
し、濾過乾燥して 480gのパウダーを得た。
【0032】135 ℃のテトラリン溶液で極限粘度 (以下
ηと略記する) を測定し、示差熱分析装置を用い10℃/
min で昇温或いは降温することで融点及び結晶化温度を
最大ピーク温度として測定したところ、得られたパウダ
ーは、ηが2.35であり、融点156 ℃、結晶化温度 120℃
である結晶性のプロピレン共重合体であった。尚、元素
分析によればビニルシラン単位を 1.3wt%含有してい
た。
【0033】得られた共重合体100gをプレス成形して厚
さ1mm、幅5cm、長さ10cmの成形物を得た。この成形物
に電子線の照射装置を用いて、750KeVの電子線を9cmの
ところまで0.1Mrad 照射し、次いで、5cmのところまで
0.5Mrad を照射し、さらに2cmのところまで10Mrad照射
した。ついで成形物を 100℃で1時間加熱処理した。成
形物について条件を変えたところで切り出して各部を沸
騰キシレンで12時間抽出したところ、電子線を照射して
いない部分の残分の割合は0.4 %、0.1Mrad 照射た部分
は45%、0.5Mrad を照射した部分は85%、10Mrad照射し
た部分は98%であった。このようにシートの長さ方向に
架橋密度に勾配を持たすことができた。一方シートの全
体に10Mrad照射したところ98%、97%、98%、98%であ
り勾配を持たすことができなかった。
【0034】実施例2 ビニルシランに変えアリルシラン1gを用いた他は実施
例1と同様に重合してアリルシラン含量0.25wt%のプロ
ピレンの共重合体を製造した。共重合体のηは1.85であ
り、融点 158℃、結晶化温度 115℃、沸騰n-ヘプタンで
6時間抽出した時の抽出残分の割合が96.8%であった。
【0035】このパウダー100gを用いた他は実施例1と
同様にして成形物を作り電子線を照射したところ、電子
線を照射していない部分の残分の割合は 0.4%、0.1Mra
d 照射した部分は18%、0.5Mrad を照射した部分は42
%、10Mrad照射した部分は96%であった。このようにシ
ートの長さ方向に架橋密度に勾配を持たすことができ
た。一方シートの全体に10Mrad照射したところ96%、95
%、94%、94%であり勾配を持たすことができなかっ
た。
【0036】
【発明の効果】本発明の方法を実施することにより成形
物の場所によって架橋密度の異なる機能性の架橋ポリオ
レフィン成形物を得ることができ工業的に極めて価値が
ある。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(化1) 【化1】 (式中nは0〜12、pは1〜3、Rは炭素数1〜12
    の炭化水素残基。)で表されるアルケニルシランとオレ
    フィンの共重合体を含有する成形物の各部に異なる線量
    の放射線を照射することを特徴とする不均一に架橋した
    架橋ポリオレフィン成形物の製造方法。
  2. 【請求項2】放射線を照射した後、成形物を加熱処理す
    る請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】初めに比較的少ない線量を照射し、ついで
    順次より大きい線量の放射線を照射する請求項1に記載
    の製造方法。
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