JP3171583B2 - 樹脂成形用金型および樹脂成形用金型への硬質被膜形成方法 - Google Patents

樹脂成形用金型および樹脂成形用金型への硬質被膜形成方法

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    • B29C2045/2634Stampers; Mountings thereof mounting layers between stamper and mould or on the rear surface of the stamper

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、固定金型と可動
金型とからなり、両金型が閉鎖されたときにキャビティ
を形成する一方の金型表面に、スタンパを取り付けて使
用される樹脂成形用金型、例えばコンパクトディスク,
光ディスク,光磁気ディスク,レーザディスク等を成形
するための金型、およびその樹脂成形用金型のキャビテ
ィを形成する表面のスタンパと接触する部分への硬質被
膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】音楽や映像などが記録されたコンパクト
ディスク,光ディスク,光磁気ディスク,レーザディス
ク等のデイスク状の記録媒体を製造するには、固定金型
と可動金型とからなる樹脂成形用金型の、両金型が閉鎖
されたときにキャビティを形成する金型の一方(一般に
可動型)の表面にスタンパ(母型)を取り付け、そのキ
ャビティ内に樹脂を射出して加圧注入し、樹脂を成形す
ると同時にスタンパの表面の凹凸形状を転写している。
【0003】このような樹脂成形用金型の固定金型と可
動金型は、例えば特開昭62−267937号公報に見
られるように、樹脂成形金型用鋼によって形成され、少
なくともスタンパ取り付け面およびキャビティ形成面に
は焼き入れ焼戻しが施され、硬さ耐摩耗性の向上が図ら
れている。
【0004】そして、上記スタンパ取り付け面およびキ
ャビティ形成面が鏡面状態に仕上げられ、射出成形され
るディスクの寸法精度の高精度化が図られている。ま
た、スタンパはニッケルによって作られており、金型の
スタンパ取り付け面と接する面が鏡面状態に仕上げられ
ている。
【0005】このような樹脂成形用金型による射出成形
時には、キャビティ内に高温の溶融樹脂が射出され、高
い圧力が加えられるため、ショット毎にスタンパがその
高温と高圧による膨張と収縮を繰り返し、キャビティを
形成する金型の表面と摺接して、その表面を摩耗させ
る。金型のスタンパ取り付け面が摩耗すると、スタンパ
にキズが入ったり、割れが発生したりする恐れがある。
【0006】また、スタンパは成形するディスクによっ
て交換されるが、金型は共通に使用されるものであり、
高価なものでもあるから、長期間に亘って摩耗すること
なく使用できることが望まれる。そのため、例えば特開
昭62−267937号公報には、光ディスク製造用金
型において、スタンパ取り付け面に、そのスタンパ取り
付け面を構成する金型の材料よりも硬度が高く、かつ耐
摩耗性に優れた材料からなる硬質層、例えば炭化チタン
(TiC)や炭化珪素(SiC),窒化チタン(Ti
N)などの薄膜を形成することを提案している。
【0007】さらに、特開平1−234214号公報に
は、上記のようなディスク成形用金型のキャビティを構
成する表面のスタンパを支持する部分に、ダイヤモンド
状薄膜を被覆することによって、その耐摩耗性および低
摩擦性を大幅に向上させ、金型の耐用寿命を大幅に延ば
すことが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前者のように、樹脂成
形用金型のキャビティを形成する金型表面のスタンパ取
り付け面に、そのスタンパ取り付け面を構成する材料よ
りも硬度が高く、かつ耐摩耗性に優れた材料からなる硬
質層を形成することは、成形用金型のスタパ取り付け面
の耐摩耗性を高め、金型の耐用寿命を延ばすのに有効で
あるが、その硬質膜として、炭化チタン(TiC)や炭
化珪素(SiC),窒化チタン(TiN)などを形成す
るだけでは、充分ではなかった。
【0009】また、後者のように、その硬質層としてダ
イヤモンド状薄膜(ダイヤモンドライク・カーボン膜:
DLC膜と略称する)を被覆することにより、成形用金
型のスタンパ取り付け面の耐摩耗性を飛躍的に高めると
ともに、スタンパとの摩擦抵抗を著しく低減し、金型お
よびスタンパの耐用寿命を大幅に延ばすことが期待され
る。
【0010】しかしながら、樹脂成形金型用鋼で形成さ
れた金型のキャビティを形成する表面に直接DLC膜を
形成したのでは、DLC膜の金型表面への密着力が弱い
ため、形成したDLC膜の表面を鏡面仕上げするために
ポリシングやラッピングを行おうとすると、DLC膜が
剥離してしまったり、使用中に内部応力等によってDL
C膜が剥離してしまうなどの問題があることが判った。
【0011】この発明はこのような問題を解決するため
になされたものであり、樹脂成形用金型のキャビティを
形成する金型の表面の少なくともスタンパと接触する部
分に、強い密着力で容易に剥離しないように硬質被膜で
あるDLC膜を形成して、樹脂成形用金型の耐用寿命を
飛躍的に延ばし、スタンパにも損傷を与えないようにし
てその寿命も延ばすことを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を
達成するため、次のように構成した樹脂成形用金型と、
その樹脂成形用金型への硬質被膜形成方法を提供する。
すなわち、この発明による樹脂成形用金型は、固定金型
と可動金型とからなり、両金型が閉じられたときにキャ
ビティを形成する金型の表面に、スタンパを取り付けて
使用される樹脂成形用金型であって、上記金型の表面の
少なくともスタンパと接触する部分に、該金型の表面と
の密着力を高める厚さ1μm程度の中間層を介して、膜
厚は1μmから5μm程度のダイヤモンドライク・カー
ボン膜を形成したものである。
【0013】そして、その中間層を、クロム又はチタン
を主体とする下層と、シリコン又はゲルマニウムを主体
とする上層とからなる2層構造にする。 あるいは、その
中間層を、チタンを主体とする下層と、炭化タングステ
ン又は炭化珪素を主体とする中層と、炭素を主体とする
上層との3層にする。
【0014】これらの中間層を介して、上記金型表面の
スタンパと接触する部分に形成されたダイヤモンドライ
ク・カーボン膜は、表面粗さが0.2から0.02μm
となるようにするのが望ましい。
【0015】この発明による樹脂成形用金型への硬質被
膜形成方法は、固定金型と可動金型とからなり、両金型
が閉じらたときにキャビティを形成する金型の表面に、
スタンパを取り付けて使用される樹脂成形用金型への硬
質被膜形成方法であって、次の各工程を有することを特
徴とする。
【0016】上記スタンパを取り付ける表面を洗浄した
金型を真空槽内にセットして排気する工程、排気した該
真空槽内にアルゴンを導入してイオン化し、シリコン,
タングステン,炭化チタン,炭化珪素,および炭化クロ
ムのうちのいずれかをターゲットとするスパッタリング
処理によって、上記金型の表面の少なくとも上記スタン
パと接触する部分に中間層を形成する中間層形成工程、
【0017】上記真空槽内のアルゴンを排出して、該真
空槽内に炭素を含むガスを導入する工程、該真空槽内に
プラズマを発生させ、プラズマCVD処理によって前記
中間層の表面にダイヤモンドライク・カーボン膜を形成
する工程、
【0018】この樹脂成形用金型への硬質被膜形成方法
において、上記ダイヤモンドライク・カーボン膜を形成
する工程の後に、該工程で形成されたダイヤモンドライ
ク・カーボン膜の表面を、粒子径が0.1μmから4μ
mのダイヤモンドペーストとアルミナペーストを使用し
ポリシングとラッピングによって仕上げ研磨する工
程、
【0019】それによって、上記ダイヤモンドライク・
カーボン膜の表面を表面粗さRaが0.2から0.02
μmになるように仕上げ研磨するとよい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好ましい実施の
形態を図面を参照して説明する。 〔樹脂成形用金型の実施形態〕図2は、この発明を実施
したコンパクトディスク,ビデオディスク等の各種ディ
スクを成形するための射出成形装置の要部を示す断面
図、図1はそのスタンパ取付部の一部拡大断面図であ
る。
【0021】この射出成形装置は、固定側ダイプレート
3に固定金型1を、可動側ダイプレート4に可動金型2
をそれぞれ固定し、図示しない型締めシリンダによって
可動金型2を固定金型1に密着させた状態で、図2に示
すように成形品(ディスク)の形状をなすキャビティ5
を形成する。その固定金型1と可動金型2は鋼材によっ
て製作され、この発明の対象とする樹脂成形用金型10
を構成している。
【0022】固定金型1の中央部には固定側ブッシュ1
1が固着され、そこに固定側ダイプレート3に取り付け
られたスプールブッシュ12が嵌入している、そのスプ
ールブッシュ12の中心に、射出ノズル8から射出され
る樹脂をキャビティ5へ導くゲート12aが設けられて
いる。この固定金型1にはエアベント孔13が形成され
ている。
【0023】一方、可動金型2の中央部にはインナスタ
ンパ押え15と可動側ブッシュ16が固設され、その可
動側ブッシュ16に、可動側ダイプレート4を貫通して
設けられたスプールカットパンチ17とエジェクタ18
の先端部が嵌入している。
【0024】そして、この可動金型2のキャビティ5を
形成する表面2aに、円盤状のスタンパ(母型)6を密
着させて取り付ける。すなわち、図1に示すように、厚
さDを有するスタンパ6の中央部をインナスタンパ押え
15によって押え、外周部を外周リング19によって可
動金型2の表面(金型表面)2aに押え付けて取り付け
る。外周リング19はキャビティ5の周壁も形成してい
る。
【0025】このスタンパ6はニッケルによって作ら
れ、表面(キャビティ側の面)に成形するデイスクの記
録情報となる溝あるいはピットを形成するための多数の
凹凸6aが形成され、裏面(可動型に表面に接する側の
面)は鏡面状態に仕上げられている。
【0026】可動金型2のスタンパ6と接触する表面2
aも鏡面に仕上げられ、図1に円Aで囲んだ部分を拡大
して示すように、その金型表面2aに中間層20を介し
て硬質被膜であるダイヤモンドライク・カーボン(DL
C)膜30を形成している。
【0027】このDLC膜30は、ダイヤモンド状薄
膜、硬質カーボン被膜、水素アモルファス・カーボン
膜、i−カーボン膜などとも称され、ダイヤモンドによ
く似た構造および性質を持つ非晶質の炭素薄膜であり、
ビッカース硬度が2000kg/mm以上あり、硬度
が高いため耐摩耗性が強く、且つ摩擦係数が小さく潤滑
性があり、耐蝕性も高いという特性をもっている。
【0028】また、中間層20は、このDLC膜30の
金型表面2aとの密着性を高めるために設ける1層以上
の薄膜層であり、一層構造の場合、シリコン(Si),
タングステン(W),炭化チタン(TiC),炭化珪素
(シリコンカーバイト:SiC),炭化クロム(Cr
C)のうちのいずれかによって形成する。
【0029】このように、金型表面2aに中間層20を
介してDLC膜30を形成することにより、DLC膜3
0が金型表面2aに密着性よく強固に形成され、その表
面を一層平滑にするためにポリシングやラッピングを行
っても剥離することがなく、使用中の熱と圧力による内
部応力等によって剥離するようなこともなくなる。
【0030】この射出成形装置によってディスクの成形
を行う際には、図2に示すように、固定型1に可動型2
を合わせて型締めし、キャビティ5を形成する。そし
て、図2に示す射出ノズル8をスプールブッシュ12の
外端部に密着させて、溶融樹脂7をゲート内へ射出さ
せ、それをキャビティ5内に加圧充填させて行う。
【0031】このとき、スタンパ6は溶融樹脂7の高い
温度(360°C程度)で幾分膨張し、高い樹脂圧力
(400kg/cm 程度)を受けながら金型表面2
aを摺動するが、DLC膜30が設けられているため、
その高い耐摩耗性と潤滑性により、金型表面2aが摩耗
したり、スタンパ6自体の接触面が摩耗したりすること
がない。実験の結果によれば20万回の成形(ショッ
ト)を行っても金型表面2aに損傷がなかった。
【0032】〔中間層の構成〕次に、中間層20の種々
な構成例を図3乃至図6によって説明する。これらの図
は、可動金型(以下単に「金型」ともいう)2の表面2
a付近のごく一部を大幅に拡大して、DLC膜30と中
間層20の構成を示す模式図てある。
【0033】図3は、金型表面2a上に前述した一層構
造の中間層20を介して硬質膜であるDLC膜30を形
成したものである。その中間層は、シリコン(Si),
タングステン(W),炭化チタン(TiC),炭化珪素
(SiC),炭化クロム(CrC)のうちのいずれかに
よって、厚さ1μm程度に形成する。DLC膜30は、
1μmから5μm程度に形成する。
【0034】図4は、2層構造中間層を形成した例であ
り、金型表面2a上に下層21と上層23からなる中間
層20を形成し、その上層23上にDLC膜30を形成
している。その下層21はクロム(Cr)又はチタン(T
i)を主体として厚さ0.5μm程度に形成し、上層2
3はシリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)を主体とし
て厚さ0.5μm程度に形成する。
【0035】この場合、中間層20の下層21のクロム
又はチタンは金型2を構成する鋼材と密着性よく形成す
ることができる。さらに、上層23のシリコン又はゲル
マニウムは、DLC膜30を構成する炭素とは周期律表
で同じ第IVb族の元素であり、いずれもダイヤモンド
構造を有する。そのため、上層23とDLC膜とは共有
結合して高い密着力で結合する。そのうえ、下層のクロ
ム又はチタンと上層のシリコン又はゲルマニウムとは、
良好な密着性で被膜形成することができる。
【0036】そのため、金型表面2a上のこのような構
成の中間層20を介してDLC膜30を形成することに
より、一層強固な密着力でDLC膜30を形成すること
ができ、金型2の耐久性を飛躍的に高めることができ
る。
【0037】図5は、2層構造の中間層の他の例を示
す。この例では、金型表面2a上にチタン(Ti)を主
体とする下層21と、タングステン(W),炭化タング
ステン(WC),炭化珪素(SiC),および炭化チタ
ン(TiC)のうちのいずれかを主体とする上層23と
の2層構造の中間層20を形成し、その上層23上にD
LC膜30を形成する。
【0038】このようにしても、図4に示した例と同様
なDLC膜30の密着力が得られる。中間層20の下層
21と上層23はそれぞれ0.5μm程度の厚さに形成
し、DLC膜は1μmから5μm程度の膜厚に形成す
る。
【0039】図6は、3層構造の中間層を形成した例を
示す。この例では、金型表面2a上に、中間層20とし
て、まずチタン(Ti)を主体とする下層21を形成
し、その上に炭化チタン(TiC)又は炭化珪素(Si
C)を主体とする中層22を形成し、さらにその上に炭
素(C)を主体とする上層23を形成する。そしてその
上層23上にDLC膜30を形成する。
【0040】この場合、下層21と中層22と上層23
は、明確に異なる層とせず、下層21の金型表面2aに
隣接する部分ではチタンの濃度が最も高く、上層23に
向かってその濃度が次第に薄くなり、上層23のDLC
膜30と隣接する部分では炭素の濃度が最も高く、下層
21に向かってその濃度が次第に薄くなる傾斜構造にし
てもよい。むしろ、そのような傾斜構造にした方がDL
C膜30の密着力を高めることができる。
【0041】これらの各例によって形成したDLC膜3
0は、その表面をポリシング及びラッピングして、その
表面粗さRaが0.2から0.02μm程度の鏡面に仕
上げるとよい。上述した各実施形態の樹脂成形用金型で
は、その可動金型のキャビティを形成する表面にスタン
パを取り付ける構造のため、その可動金型のスタンパと
接触する表面に中間層を介してDLC膜を形成した。し
かし、これに限るものではなく、固定金型のキャビティ
を形成する表面にスタンパを取り付ける構造の樹脂成形
用金型の場合には、その固定金型のスタンパと接触する
表面に中間層を介してDLC膜を形成すればよい。
【0042】〔摩耗性試験による耐摩耗性の評価〕ここ
で、この発明による金型および従来の金型と同様な被膜
構成の試験片に対して摩耗試験を行って、その結果を比
較して耐摩耗性を評価した。ここで使用した摩耗試験機
は、スガ試験機株式会社の商品名NUS−ISO−2の
摩耗試験機である。
【0043】この摩耗試験機による摩耗試験の方法を、
図7を用いて説明する。図7に示すように、被膜形成し
た試験片92をその被膜形成面側を下向きにして、試験
片押え板94と試験片押えネジ95とによって、試験片
取付台93の開口部に固定する。さらに、摩耗輪91に
研磨紙(図示せず)を貼り付ける。この摩耗輪91に、
図示しない天秤機構によって研磨紙を試験片92に押し
つけるような上向きの荷重を加える。
【0044】そして、試験片取付台93を、図示しない
モータの回転運動を往復運動に変換する機構によって往
復運動させ、さらに摩耗輪91を試験片取付台93の1
往復ごとに角度0.9゜ずつ矢印方向に回転させる。そ
れによって、試験片92は摩耗輪91に貼りつけられた
研磨紙の摩耗していない新しい領域に常に接触すること
になる。試験片取付台93の往復回数は自動設定するこ
とができ、設定した回数で摩耗試験機は自動停止する。
【0045】ここで用いた試験片92は、その基材とし
て樹脂成形用金型の作製に使用する鋼材からなる板厚が
1mmのものを使用し、その表面を、表面粗さRa=
0.05μm〜0.5μmに研磨仕上げしたものであ
る。そして、この発明による金型に相当する試験片とし
て、その基材の表面にチタンによる下層の中間層とシリ
コンによる上層の中間層とを、いずれも膜厚は0.5μ
mに形成し、その上に膜厚1.0μmのDLC膜を設け
たもの(試験片92Aという)を用いた。これと比較す
る従来の金型に相当するものとして、上記試験片の基材
上に直接DLC膜を膜厚1.0μmに形成したもの(試
験片92Bという)を用いた。
【0046】さらに、摩耗輪91に貼りつける研磨紙と
しては、メッシュ600番のSiCを用い、この研磨紙
と試験片92との接触荷重は830gとし、試験片取付
台93の往復運動回数は200回の条件として、上記試
験片92Aと試験片92Bの被膜の摩耗試験を行った。
その摩耗試験の結果は、この発明による被膜構造の試験
片92Aでは、被膜の剥離はほとんど発生せず、試験後
もDLC膜の表面状態は変化しなかった。これに対し
て、従来の被膜構造の試験片92Bでは、DLC膜の剥
離が発生し、試験片の表面の鋼材が肉眼で観察でき、D
LC膜が剥離していることがわかった。
【0047】この試験片92Aと92Bの被膜構造の相
違点は、基材の表面に2層の中間層を介してDLC膜を
形成しているか、基材の表面に直接DLC膜を形成して
いるかの点である。この摩耗試験の結果から、2層の中
間層を設けることによって、DLC膜の密着性が強固に
なり、被膜の耐摩耗性が著しく向上することが分かっ
た。
【0048】〔引っかき試験による表面物性の評価〕次
に、この発明による金型および従来の金型に相当する各
種試料に対して、引っかき試験を行うことによりその被
膜の機械的性質(特に耐摩耗性)を評価した。この引っ
かき試験に使用した測定機は、HEIDON−14型の
表面性測定機である。
【0049】この表面性測定機を使用した引っかき試験
によれば、引っかき時に生じる抵抗力を測定することに
よって、被膜の表面物性を評価できる。そこで、以下に
記載する(A)から(E)の5種類の試料を作成して、
上記表面性測定機を使用して引っかき時に生じる抵抗力
を測定した。これらの試料の基材はいずれも樹脂成形用
金型に使用する鋼材で、その表面は研磨加工されてい
る。
【0050】(A)基材の表面に直接DLC膜を形成し
たもの。 (B)基材の表面に炭化チタン(TiC)による中間層
を介してDLC膜を形成したもの。 (C)基材の表面に炭化珪素(SiC)による中間層を
介してDLC膜を形成したもの。 (D)基材の表面にチタン(Ti)による下層の中間層
とシリコン(Si)による上層の中間層を介してDLC
膜を形成したもの。 (E)基材の表面にチタン(Ti)による下層の中間層
と炭化珪素(SiC)による上層の中間層を介してDL
C膜を形成したもの。
【0051】そして、DLC膜の膜厚はいずれの試料と
も1.0μmであり、炭化チタン,炭化珪素(シリコン
カーバイト),チタン,およびシリコン(珪素)による
各中間層の膜厚はいずれも0.5μmである。表面性測
定機を使用した被膜の表面物性の測定は、先端角度が9
0゜で先端曲率半径が50μmのダイヤモンド圧子を使
用し、引っかき速度は30mm/分とし、引っかき荷重
は10grから500grまで10grおきに変化させ
た。
【0052】その測定結果である引っかき荷重と引っか
き抵抗値との関係を、図8のグラフに示す。なお、この
図8のグラフは、引っかき荷重を10grから10gr
ずつ増加して加え、そのときの引っかき抵抗値の抵抗力
を測定してプロットし、その平均値を直線で近似してグ
ラフ化している。図8のグラフは、縦軸に引っかき抵抗
値である抵抗力を示し、横軸に引っかき荷重を示す。そ
して曲線A,B,C,D,Eがそれぞれ試料(A)から
試料(E)の測定結果を示している。
【0053】この図8から明らかなように、引っかき荷
重がある値以上になると抵抗力が急激に変化している。
このように特性曲線に変曲点が発生する現象は、この変
曲点以下の臨界荷重では、圧子は単なる摩擦流動を示
し、荷重の増加とともに直線的に引っかき抵抗値が増加
していくが、臨界荷重以上になると、セラミックス基板
上に形成した被膜に亀裂が発生しているためと考えられ
る。そして発生した亀裂のために、引っかき抵抗値は急
激な増加を示し、摩擦係数が増大する。
【0054】このように、図8の特性曲線の変曲点であ
る臨界荷重の値によって、基材に対する被膜の密着力を
評価することができる。そして、図8に示されるよう
に、基材上に直接硬質カーボン膜を形成した従来の試料
(A)の場合の臨界荷重は80grである。
【0055】これに対して、発明の実施例に相当する1
層の中間層を有する被膜構造の試料(B)の場合の臨海
加重は180gr、試料(C)の場合の臨海加重は22
0grであり、2層の中間層を有する被膜構造の試料
(D)の場合の臨界荷重は350gr、試料(E)の場
合の臨界荷重は380grである。すなわち、この発明
による金型では、従来の金型よりもDLC膜が2倍以上
の密着力を有して形成されていることになる。
【0056】〔硬質被膜形成方法のの実施形態〕次に、
図9から図12によって、前述したこの発明による樹脂
成形用金型における可動金型(単に「金型」ともいう)2
の表面2aの少なくともスタンパと接触する部分への硬
質膜の形成方法について説明する。まず、金型の表面に
前述した中間層20を形成する中間層形成工程につい
て、図9を用いて説明する。
【0057】図9は中間層を形成するのに使用するスパ
ッタ装置の断面図である。この図に示すように、ガス導
入口53と排気口54を備えた真空槽51内の一壁面の
近傍に、ターゲットホルダ56が固設されており、そこ
に中間層の材料であるターゲット55をセット(配置)
する。この真空槽51内に、スタンパを取り付ける表面
2aを洗浄した金型2(簡略化して図示している)を、
表面2aがターゲット55と対向するようにセット(配
置)する。
【0058】この金型2は直流電源58に接続し、ター
ゲット55はターゲット電源57に接続する。なお、図
示を省略しているが、ターゲット55と金型2との間に
は、ターゲット55を覆う位置と露出させる位置とに開
閉可能なシャッタが設けられている。そのシャッタを最
初はターゲット55を覆う位置にしておく。そして、図
示しない排気手段により真空槽51内を真空度が3×1
0- torr以下になるように、排気口54から真空排気
する。
【0059】その後、ガス導入口53からスパッタガス
としてアルゴン(Ar)ガスを導入して、真空槽51内
の真空度が3×10- torrになるように調整する。さ
らにその後、金型2には直流電源58からマイナス50
Vの直流負電圧を印加する。またターゲット55にはタ
ーゲット電源57からマイナス500Vから600Vの
直流電圧を印加する。すると、真空槽51の内部にプラ
ズマが発生し、イオン化したアルゴンによって金型2の
表面2aをイオンボンバードして、その表面に形成され
ている酸化膜等を除去する。
【0060】次に、図示しないシャッタを開いてターゲ
ット55を露出させ、プラズマ中のアルゴンイオンによ
ってターゲット55の表面をスパッタする。そして、こ
のターゲット55がシリコンであれば、その表面から叩
きだされたシリコンの分子が金型2の表面2aに付着し
て、シリコン膜からなる中間層を形成する。このスパッ
タリング処理によって中間層が所定の膜厚に形成される
ように、この中間層形成工程を実施する。
【0061】図3に示した1層の中間層20を形成する
場合には、ターゲット55として、シリコン,タングス
テン,炭化チタン,炭化珪素(シリコンカーバイト),
および炭化クロムのうちのいずれかをセットして上記ス
パッタリング処理を行う。それによって、金型2の表面
2aに、シリコン膜,タングステン膜,炭化チタン膜,
炭化珪素(シリコンカーバイト)膜,あるいは炭化クロ
ム膜のいずれかによる中間層20を形成する。
【0062】炭化チタン膜あるいは炭化珪素膜による中
間層を形成する場合には、次のような方法をとることも
できる。すなわち、ターゲット55として、チタンある
いはシリコン(珪素)をセットして、アルゴンイオンに
よるスパッタを行うと同時に、ガス導入口53から炭素
を含むガスとして例えばメタン(CH)ガスを導入し
て、スパッタされたチタンあるいはシリコンの分子とガ
ス中の炭素とによる反応スパッタリング処理によって、
金型2の表面2aに炭化チタン膜あるいは炭化珪素膜に
よる中間層20を形成する。
【0063】また、図4に示した下層21と上層23か
らなる2層の中間層20を形成する場合には、真空槽5
1内に2個のターゲットホルダ56と、その各々に対す
るシャッタとを設け、その一方のターゲットホルダ56
にターゲット55としてクロム又はチタンをセットし、
他方のターゲットホルダ56にターゲット55としてシ
リコン又はゲルマニウムをセットする。
【0064】そして、まず第1の中間層形成工程におい
ては、ターゲット55としてクロム又はチタンをセット
したターゲットホルダ56側のシャッタのみを開いてス
パッタリング処理を行って、金型2の表面2aにクロム
又はチタンを主体とする膜による下層21を、膜厚0.
5μm程度に形成する。
【0065】続いて、第2の中間層形成工程によって、
ターゲット55としてシリコン又はゲルマニウムをセッ
トしたターゲットホルダ56側のシャッタのみを開いて
スパタリング処理を行って、上記下層21上にシリコン
又はゲルマニウムを主体とする膜による上層23を、膜
厚0.5μm程度に形成する。
【0066】さらに、図5に示した下層21と上層23
からなる2層の中間層20を形成する場合も同様に、真
空槽51内に2個のターゲットホルダ56と、その各々
に対するシャッタとを設け、その一方のターゲットホル
ダ56にターゲット55としてチタンをセットし、他方
のターゲットホルダ56にターゲット55としてタング
ステン,炭化タングステン,炭化珪素,炭化チタンのう
ちのいずれかをセットする。
【0067】そして、まず第1の中間層形成工程におい
て、ターゲット55としてチタンをセットしたターゲッ
トホルダ56側のシャッタのみを開いてスパッタリング
処理を行って、金型2の表面2aにチタンを主体とする
膜による下層21を、膜厚0.5μm程度に形成する。
【0068】続いて、第2の中間層形成工程によって、
ターゲット55としてタングステン,炭化タングステ
ン,炭化珪素,炭化チタンのうちのいずれかをセットし
たターゲットホヘルダ56側のシャッタのみを開いてス
パタリング処理を行い、上記下層21上にタングステ
ン,炭化タングステン,炭化珪素,炭化チタンのいずれ
かを主体とする膜による上層23を、膜厚0.5μm程
度に形成する。
【0069】あるいは、上記第1の中間層形成工程によ
って、金型2の表面2aにチタンを主体とする中間層の
下層21を形成した後、第2の中間層形成工程では、タ
ーゲット55としてタングステン又はシリコンをセット
したターゲットホルダ56側のシャッタのみを開くとと
もに、真空槽51内に炭素を含むガス例えばメタン(C
)ガスを導入して、スパッタされたタングステン又
はシリコンの分子とガス中の炭素とによる反応スパッタ
リング処理によって、上記下層21上に炭化タングステ
ン又は炭化珪素を主体とする中間層の上層23を形成す
ることもできる。
【0070】さらに、図6に示した下層21と中層22
と上層23とからなる3層の中間層20を形成する場合
も、中層22を炭化珪素を主体とする膜にする場合に
は、真空槽51内に2個のターゲットホルダ56と、そ
の各々に対するシャッタとを設け、その一方のターゲッ
トホルダ56にターゲット55としてチタンをセット
し、他方のターゲットホルダ56にターゲット55とし
てシリコンをセットする。
【0071】そして、まず第1の中間層形成工程におい
て、ターゲット55としてチタンをセットしたターゲッ
トホルダ側のシャッタのみを開いてスパッタリング処理
を行い、金型2の表面2aにチタンを主体とする膜によ
る下層21を形成する。続いて、第2の中間層形成工程
で、ターゲット55としてシリコンをセットしたターゲ
ツトホルダ側のシャッタのみを開いて、真空槽51内に
炭素を含むガス、例えばメタン(CH)ガスを導入
し、スパッタされたシリコン分子とガス中の炭素とによ
る反応スパッタリング処理によって、上記下層21上に
炭化珪素を主体とする膜による中層22を形成する。
【0072】その後、第3の中間層形成工程で、真空槽
51内の図示しないシャッタを徐々に閉じてターゲット
55としてのシリコンの露出量を減少させて、シリコン
のスパッタ量を漸減させ、上記中層22上に炭素の比率
が次第に多くなる炭素を主体とする上層23を形成す
る。
【0073】なお、中層22を炭化チタンを主体とする
膜にする場合には、真空槽51内のターゲツトホルダ5
6とシャッタは一組でよく、そこにチタンをセットし
て、上記第1,第2,第3の中間層形成工程と同様に各
工程を実行すればよい。しかし、第1の中間層形成工程
と第2の中間層形成工程との間で2つのシャッタの開閉
切換を行う必要はない。
【0074】次に、上記のような各種の中間層形成工程
によって、少なくともスタンパと接触する表面2a上に
中間層20を形成した金型2の、中間層20上にDLC
膜30を形成する工程について、図10から図12を用
いて説明する。つまり、このDLC膜の形成工程として
は3種類のDLC膜形成方法ある。
【0075】はじめに、図10を用いてDLC膜の第1
のDLC膜形成方法を説明する。図10はそのためのプ
ラズマCVD装置の断面図である。この第1のDLC膜
形成方法は、ガス導入口63と排気口65とを有し、内
部上方にアノード79とフィラメント81とを備えた真
空槽61を使用する。そして、この真空槽61内に、少
なくともスタンパと接触する面2aに中間層20を形成
した金型2を配置する。その金型2を支持する部材は図
示を省略している。
【0076】そして、この真空槽61内を真空度が3×
10- torr以下になるように、図示しない排気手段に
よって排気口65から真空排気する。その後、ガス導入
口63から炭素を含むガスとしてベンゼン(C
を真空槽61内に導入して、真空槽61内の圧力を5×
10- torrになるようにする。そして、金型2には直
流電源73から直流電圧を印加し、さらにアノード79
にはアノード電源75から直流電圧を印加し、フィラメ
ント81にはフィラメント電源77から交流電圧を印加
する。
【0077】このとき、直流電源73から金型2に印加
する直流電圧はマイナス3kVとし、アノード電源75
からアノード79に印加する直流電圧はプラス50V、
フィラメント電源77からフィラメント81に印加する
電圧は30Aの電流が流れるように10Vの交流電圧と
する。それによって、真空槽61内の金型2の周囲領域
にプラズマが発生して、プラズマCVD処理によって、
金型2上の中間層20(多層の中間層の場合はその上層
23)の表面にダイヤモンドライク・カーボン(DL
C)膜を形成することができる。このDLC膜5は、膜
厚1μmから5μmに形成する。
【0078】なお、説明の便宜上、中間層形成工程で使
用する真空槽51とDLC膜形成工程で使用する真空槽
61を別にして説明したが、同じ真空槽を使用してこれ
らの各工程を連続して行なうことができる。その場合に
は、中間層形成工程が完了した後、真空槽内のアルゴン
を排出して炭素を含むガスを導入する。
【0079】図11はDLC膜形成方法の他の例を説明
するための、プラズマCVD装置の断面図である。この
図11に示す装置を使用する場合には、ガス導入口63
と排気口65とを有する真空槽61内に、中間層20を
形成した金型2を配置し、真空槽61の内部を図示しな
い排気手段によって、真空度が3×10- torr以下に
なるように、排気口65から真空排気する。
【0080】その後、ガス導入口63から炭素を含むガ
スとしてメタンガス(CH)を真空槽61の内部に導
入して、真空度を0.1 torrになるようにする。そし
て、金型2には、発振周波数が13.56MHzの高周
波電源69から高周波電力(radio freqency power)を、
マッチング回路67を介して印加する。それによって、
金型2の周囲にプラズマが発生し、プラズマCVD処理
により、金型20上に形成された中間層20(多層の中
間層の場合はその上層23)の表面にDLC膜を形成す
ることができる。
【0081】図12はDLC膜形成方法のさらに他の例
を説明するための、プラズマCVD装置の断面図であ
る。この図12に示す装置を使用する場合には、ガス導
入口63と排気口65とを有する真空槽61内に、中間
層20を形成した金型2を配置し、図示しない排気手段
によって、真空槽61内を真空度が3×10- torr以
下になるように、排気口65から真空排気する。
【0082】その後、ガス導入口63から炭素を含むガ
スとしてメタンガス(CH)を真空槽61内に導入
し、真空度が0.1torr になるようにする。そして、金
型2に直流電源83からマイナス600Vの直流電圧を
印加して、その周囲にプラズマを発生させ、プラズマC
VD処理により、金型2上に形成された中間層20(多
層の中間層の場合はその上層23)の表面のにDLC膜
を形成することができる。
【0083】これらのDLC膜形成方法の場合も、中間
層形成工程と同じ真空槽を使用して、中間層形成工程と
連続して行なうことができる。その場合には、中間層形
成工程が完了した後、真空槽内のアルゴンを排出して炭
素を含むガスを導入する。なお、図10から図12によ
って説明した方法によってDLC膜を形成する場合に、
炭素を含むガスとしてメタンガスやベンゼンガスを用い
る例で説明したが、メタン以外にエチレンなどの炭素を
含むガスや、あるいはヘキサンなどの炭素を含む液体の
蒸発蒸気を使用することもできる。
【0084】つぎに、このようにして金型2の表面2a
上に中間層20を介して形成したDLC膜30の表面を
より平滑にするために、DLC膜30の表面をポリシン
グとラッピングによって仕上げ研磨する工程を実施し、
表面粗さRaが0.2から0.02μmになるようにす
るとよい。
【0085】その場合、布にダイヤモンドペースト又は
アルミナペーストを付けてポリシングし、円盤状の板に
ダイヤモンドペースト又はアルミナペーストを付けてラ
ッピングする。ダイヤモンドペースト又はアルミナペー
スト中の粒子径は0.1μmから4μm程度で、ポリシ
ングには1μm以上のものを、ラッピングには1μm以
下のものを使用するのがよい。このような研磨工程を行
っても、DLC膜は金型表面に中間層を介して強固に形
成されているため、剥離するようなことはない。
【0086】
【発明の効果】以上説明してきたように、この発明によ
れば、樹脂成形用金型のキャビティを形成する金型の表
面の少なくともスタンパと接触する部分に、強い密着力
で容易に剥離しないように硬質被膜であるDLC膜を形
成して、樹脂成形用金型の耐用寿命を飛躍的に延ばし、
スタンパにも損傷を与えないようにしてその寿命も延ば
すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2におけるスタンパ取付部の一部拡大断面図
である。
【図2】この発明による樹脂成形用金型を用いた射出成
形装置の要部を示す断面図である。
【図3】図1における金型の表面付近のごく一部を大幅
に拡大してDLC膜と中間層の構成例を示す模式図であ
る。
【図4】同じく2層の中間層の構成例を示す模式図であ
る。
【図5】同じく2層の中間層の他の構成例を示す模式図
である。
【図6】同じく3層の中間層の構成例を示す模式図であ
る。
【図7】摩耗試験機により被膜の耐摩耗性を試験する方
法を説明するための図である。
【図8】この発明による金型と従来の金型に相当する各
種の試料に対して引っかき試験を行って測定した引っか
き加重と引っかきの抵抗力との関係を示す線図である。
【図9】この発明による樹脂成形用金型への硬質膜形成
方法における中間層形成工程に使用するスパッタ装置の
断面図である。
【図10】この発明による樹脂成形用金型への硬質膜形
成方法におけるDLC膜形成工程に使用するプラズマC
VD装置の一例を示す断面図である。
【図11】同じくプラズマCVD装置の他の例を示す断
面図である。
【図12】同じくプラズマCVD装置のさらに他の例を
示す断面図である。
【符号の説明】
1:固定金型 2:可動金型 2a:金型表面 3:固定側ダイプレート 4:可動側ダイプレート 5:キャビティ 6:スタンパ 8:射出ノズル 10:樹脂成形用金型 11:固定側ブッシュ 12:スプールブッシュ 12a:ゲート 15:インナスタンパ押え 16:可動側ブッシュ 17:スプールカットパンチ 18:エジェクタ 19:外周リング 20:中間層 21:下層 22:中層 23:上層 30:ダイヤモンドライク・カーボン(DLC)膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−195377(JP,A) 特開 平1−234214(JP,A) 特許3057077(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 33/00 - 33/76 B29C 45/26 - 45/44

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定金型と可動金型とからなり、両金型
    が閉じられたときにキャビティを形成する金型の表面
    に、スタンパを取り付けて使用される樹脂成形用金型で
    あって、 前記金型の表面の少なくともスタンパと接触する部分
    に、該金型の表面との密着力を高める厚さ1μm程度の
    中間層を介して、膜厚1μmから5μm程度のダイヤモ
    ンドライク・カーボン膜を形成しており、 前記中間層が、クロム又はチタンを主体とする下層と、
    シリコン又はゲルマニウムを主体とする上層とからなる
    2層構造である ことを特徴とする樹脂成形用金型。
  2. 【請求項2】 固定金型と可動金型とからなり、両金型
    が閉じられたときにキャビティを形成する金型の表面
    に、スタンパを取り付けて使用される樹脂成形用金型で
    あって、 前記金型の表面の少なくともスタンパと接触する部分
    に、該金型の表面との密着力を高める厚さ1μm程度の
    中間層を介して、膜厚1μmから5μm程度のダイヤモ
    ンドライク・カーボン膜を形成しており、 前記中間層が、チタンを主体とする下層と、タングステ
    ン又は炭化珪素を主体とする中層と、炭素を主体とする
    上層との3層構造であることを特徴とする 樹脂成形用金
    型。
  3. 【請求項3】 前記金型表面のスタンパと接触する部分
    に前記中間層を介して形成された前記ダイヤモンドライ
    ク・カーボン膜は、表面粗さRaが0.2から0.02
    μmである請求項1又は2に記載の樹脂成形用金型。
  4. 【請求項4】 固定金型と可動金型とからなり、両金型
    が閉じられたときにキャビティを形成する金型の表面に
    スタンパを取り付けて使用される樹脂成形用金型への硬
    質被膜形成方法であって、 前記スタンパを取り付ける表面を洗浄した金型を真空槽
    内にセットして排気する工程と、 排気した該真空槽内にアルゴンを導入してイオン化し、
    シリコン,タングステン,炭化チタン,炭化珪素,およ
    び炭化クロムのうちのいずれかをターゲットとするスパ
    ッタリング処理によって、前記金型の表面の少なくとも
    前記スタンパと接触する部分に中間層を形成する中間層
    形成工程と、 前記真空槽内のアルゴンを排出して、該真空槽内に炭素
    を含むガスを導入する工程と、 該真空槽内にプラズマを発生させ、プラズマCVD処理
    によって前記中間層の表面にダイヤモンドライク・カー
    ボン膜を形成する工程と、 該工程で形成されたダイヤモンドライク・カーボン膜の
    表面を、粒子径が0.1μmから4μmのダイヤモンド
    ペースト又はアルミナペーストを使用してポリシングと
    ラッピングによって仕上げ研磨する工程とを有する樹脂
    成形用金型への硬質被膜形成方法。
  5. 【請求項5】 前記仕上げ研磨する工程において、前記
    ダイヤモンドライク・カーボン膜の表面を表面粗さRa
    が0.2から0.02μmになるように仕上げ研磨する
    請求項4記載の樹脂成形用金型への硬質被膜形成方法。
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