JP3168604B2 - ゴキブリの誘引、摂食刺激剤 - Google Patents

ゴキブリの誘引、摂食刺激剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゴキブリの誘引,摂食
刺激剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ゴキブリは全世界に最もよく知られた衛
生害虫の一種であり、日本でも家住性としてクロゴキブ
リ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、チャバネゴキブ
リなどがしられている。従来これに対して誘引作用を有
する物質として、ワモンゴキブリの糞や中腸から抽出し
て得られる性フェロモンが知られている他、数種のモノ
テルペノイド系化合物やミリスチン酸,パルミチン酸な
どの脂肪酸及びそのエステル類、テトラロール・ナフト
ール(特開昭61−69701号公報 )、イリステク
トラミンアルコール(特開昭61−72702号公
報)、種子油(特開昭62−135403号公報)、フ
ェノール系化合物(特開昭63−96101号公報)等
も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、性フ
ェロモンを抽出するには多数のゴキブリを必要とする
上、性フェロモンは集合能はあるものの興奮性であるた
めなかなか定着しないばかりか雌雄が共存した場合には
その活性は著しく低下する傾向にあった〔S.TAKAHASHI,
C.KITAMURA:Appl.Ent.Zool.2(3),135-141(1972)〕。ま
た、ミリスチン酸,パルミチン酸などの脂肪酸及びその
エステル類は、ゴキブリに対する誘引活性が弱いため製
剤中に相当量の濃度が必要である上に、それで単独では
定着や摂食刺激の効果はなく、デン粉や糖類の添加が必
要不可欠であった。テトラロール・ナフトール、フェノ
ール系化合物及びイリステクトラミンズアルコールで
は、低濃度、単独でも十分活性があり、他の添加剤を加
えなくとも有用であったが、逆にデン粉や糖類を加えた
製剤の際には、その効果が十分に生かされない場合があ
った。 又、これらテトラロール・ナフトール、フェノ
ール系化合物及びイリステクトラミンアルコール等の物
質はワモンゴキブリの雄に対してのみ特異的に効果を示
す傾向にあった。
【0004】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、これら従
来のゴキブリ誘引剤の欠点が無い、効果的なゴキブリ誘
引剤を製造すべく鋭意研究の結果、式(I)
【0005】
【0006】(式中、R1,R2およびR3は水素原子ま
たはアミノ基を表す。但し、R1,R2およびR3の内い
ずれか一つがアミノ基を表し、他の二つは水素原子を表
す。Xは水素またはハロゲン原子を表す。)で表される
化合物は単独でも、或はあらゆる製剤に配合しても多く
のゴキブリに対して強い誘引作用と摂食作用を示し、定
着性もよいばかりではなく、雌雄が共存してもなんら活
性が低下しない事を見いだして本発明を完成した。本発
明は式(I)で表される化合物を有効成分とするゴキブ
リの誘引摂食刺激剤である。
【0007】本発明の有効成分である式(I)で表され
る化合物の代表例を表1
【0008】
【表1】
【0009】に示す。
【0010】本発明の有効成分である式(1)で表され
る化合物は以下の文献において公知化合物あるいはこれ
ら文献をもとに合成できるものである。 R.A.Benkeser et al.,J.Am.Chem.Soc.,1958,80,6573 V.S.Misra et al.,J.IndianChem.Soc.,1958,36.803 A.G.Green et al.,J.Chem.Soc.,1918,955 S.W.Fenton et al.,J.Am.Chem.Soc.,1955,77,979
【0011】本発明の誘引,摂食刺激剤は例えば次のよ
うにして製造することができる。すなわち、式(I)で
表される化合物を適当な溶媒(例えば、アセトン、メタ
ノール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレング
リコール、ジエチレングリコール、ジメチルホルアミド
などの親水性有機溶媒,ベンゼン、クロロホルム、エー
テル、メチレンクロライド、n−ヘキサンなどの親油性
有機溶媒など)に溶解した溶液を適当な担体(例えば濾
紙、厚紙、不織布、綿布、フランネル など)に含浸さ
せ、乾燥させて誘引,摂食刺激剤を製造することが出来
る。また、式(I)で表される化合物を粘着剤や樹脂中
に混入するか、殺虫剤と共に粘着剤や樹脂中に混入する
か、ベイト剤中に混入するなどして、各々誘引粘着板,
誘引殺虫シート,同プレートや同テープ,誘引ベイト剤
などを製造することが出来る。その他、式(I)で表さ
れる化合物に乳化剤,分散剤,浸透剤,懸濁剤,湿潤
剤,展着剤,賦形剤,安定化剤などを添加し、油剤,水
和剤,粉剤,顆粒剤,丸剤,錠剤,噴霧剤などの形態を
とる誘引、摂食刺激剤を製造することが出来る。
【0012】「試験例」 以下、試験例を上げて本発明の有効成分である式(I)
で表される化合物の誘引、摂食刺激作用を具体的に説明
する。
【0013】試験例1 供試虫として、ワモンゴキブリ,クロゴキブリ,ヤマト
ゴキブリ,コワモンゴキブリ,トビイロゴキブリ,トウ
ヨウゴキブリ,チャバネゴキブリの羽化が1ヶ月の雌雄
(1:1)成虫100頭を1群として各々1群ずつ用意
し、1−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタ
レン、2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフ
タレン、1−アミノ−1,2,3,4―テトラヒドロナ
フタレン、1−アミノ−4−ブロモ−5,6,7,8−
テトラヒドロナフタレン、2−アミノ−5,6,7,8
−テトラヒドロナフタレンヒドロクロリドを検体として
用いた。また、arーαーテトラロールおよびarーβ
ーテトラロールを対照として用いた。直径11cmの濾
紙(東洋濾紙No. 1)上に等間隔に直径3.5cmの円
を2個設け、各円に各々検体のみ1.5mgを含むアセ
トン溶液30μl,及びブランクとしてアセトン30μ
lを十分に風乾して溶媒を揮散させてテスト紙を調製し
た。別個のケージ(35×30×18cmのポリカーボ
ネート製透明容器)にそれぞれ別個の供試虫を1群ずつ
いれ、25℃,12L−12D(12時間明期−12時
間暗期)の条件下で飼育して慣らした後、そこにそれぞ
れ別個のテスト紙を入れた。24時間経過後にテスト紙
を回収してその摂食状態を調べた。検体は各種ゴキブリ
に対して特異的な誘引,摂食作用作用を示した。結果を
表2に示す。
【0014】
【表2】
【0015】試験例2 供試虫としてワモンゴキブリ雄成虫、同雌成虫、同雄幼
虫、同雌幼虫毎に各100頭からなる性と令期が単一の
群とワモンゴキブリ雄成虫、同雌成虫、同雄幼虫、同雌
幼虫各25頭計100頭からなる性と令期が異なるもの
が共存する群(以下雌雄共存群と称する)を各々1群ず
つ用意した。(成虫は羽化後1ヶ月経過したものをい
い、幼虫は孵化後4ヶ月を経過した中令幼虫をいう。)
また、1−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフ
タレン、2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナ
フタレン、1−アミノ−1,2,3,4テトラヒドロナ
フタレン、1−アミノ−4−ブロモ−5,6,7,8−
テトラヒドロナフタレン、2−アミノ−5,6,7,8
−テトラヒドロナフタレンヒドロクロリドを検体とし
た。また、arーαーテトラロールおよびarーβーテ
トラロールを対照として用いた。試験例1に準じて処理
し、摂食の程度をワモンゴキブリの性と令期が単一の場
合と雌雄共存する場合について調べた。検体はワモンゴ
キブリの雌雄成虫、同幼虫に対して特異的な誘引,摂食
刺激作用を示した。また、雌雄共存する場合においても
活性の低下は認められなかった。結果を表3に示す。
【0016】
【表3】
【0017】試験例3 供試虫として、羽化後1ヶ月経過のワモンゴキブリ成虫
100頭を1群とし、各々1群ずつ用意した。また、オ
レイン酸、ミリスチン酸、ラウリルアルコール、ペンタ
デカノール、オクチルアルコール、酢酸ボルニル、ネロ
ール、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、デカリン、ナ
フタリン、テトラリン、ac−α−テトラロール、1−
アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン、2
−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン、
1−アミノ−1,2,3,4テトラヒドロナフタレン、
1−アミノ−4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒド
ロナフタレン、2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒ
ドロナフタレンヒドロクロリド、及びアセトン並びにこ
れとショ糖との(1:1)混合物を検体として用いた。
ac−α−テトラロールと同様に、1−アミノ−5,
6,7,8−テトラヒドロナフタレン、2−アミノ−
5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン、1−アミノ
−1,2,3,4テトラヒドロナフタレン、1−アミノ
−4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレ
ン、2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタ
レンヒドロクロリドはショ糖の添加無しでもワモンゴキ
ブリ成虫に対して強力な誘引、摂食刺激作用を示した。
結果を表4に示す。
【0018】
【表4】
【0019】試験例4 供試虫として、羽化後1ヶ月経過のワモンゴキブリ成虫
及び孵化後4ヶ月経過のワモンゴキブリ中令幼虫15頭
を1群として各々1群用意した。1−アミノ−5,6,
7,8−テトラヒドロナフタレン、2−アミノ−5,
6,7,8−テトラヒドロナフタレン、1−アミノ−
1,2,3,4テトラヒドロナフタレン、1−アミノ−
4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレ
ン、及び2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナ
フタレンヒドロクロリドを検体として用い、試験例1に
準じて種々の濃度でそれぞれ各検体を含浸する円形テス
ト紙(直径1cm)を調製した。内側に流動パラフィン
を塗布した、直径約8.5cm,高さ約10cmの塩化
ビニル製カップの底に円形テスト紙を置き、供試虫を1
頭放した。12時間の暗期を経過した後、テスト紙を回
収して食痕を調べ、供試虫の50%が反応を示す量〔B
R50(μg)〕を求めた。結果を表5に示す。
【0020】
【表5】
【0021】試験例5 供試虫をとして、羽化後1ヶ月経過のワモンゴキブリ成
虫100頭を1群とし、各々1群ずつ用意した。また、
1−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレ
ン、2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタ
レン及びショ糖を検体として用い、塗布濃度を変える他
は試験例1に準じて処理し、各検体の活性力を調べた。
検体はショ糖よりはるかに強い摂食刺激性を示した。結
果を表6に示す。
【0022】
【表6】
【0023】試験例6 1−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレ
ン、または2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロ
ナフタレンを検体とし、試験例4に準じて直径1cmの
円形濾紙(東洋濾紙No. 1)に検体をそれぞれ1000
μg含浸させた誘引剤を調製した。また、魚粉75部、
マルトース5部、L−アラビノース5部、オレイン酸5
部、米ヌカ油10部よりなる混合物に若干の水を加えて
練り、0.7g程度の小さな団子状の誘引剤を調製し
た。
【0024】供試虫として、ワモンゴキブリ,クロゴキ
ブリ,ヤマトゴキブリ,チャバネゴキブリ,トウヨウゴ
キブリについてそれぞれ成虫50頭幼虫50頭からなる
群を3群ずつ用意した。
【0025】約6畳の広さの部屋を4室用意し、試験実
施1週間前からそれぞれ別種の供試虫を1群を放し、十
分に餌と水を与えておいた。実開昭54−142679
号公報記載のゴキブリ捕獲器の粘着面中央に前記円形誘
引剤を設置したとラップA、同じく粘着面中央に前記団
子状誘引餌(0.7g)を設置したトラップB、粘着面
に何も設置しないトラップCを一組にしてこの部屋に置
き、24時間経過後に各トラップのゴキブリ捕獲数を調
べた。実験は3回繰り返し、その平均値を捕獲数とし
た。結果を表7に示す。
【0026】
【表7】
【0027】試験例7
【0028】検体ベイトの処方を表8に示す。
【0029】
【表8】
【0030】対照ベイトの処方を表9に示す。
【0031】
【表9】
【0032】常法により上記処方の団子状の検体ベイト
と対照ベイトを調製した。
【0033】供試虫として、ワモンゴキブリ,クロゴキ
ブリ,ヤマトゴキブリ,チャバネゴキブリ,トウヨウゴ
キブリについてそれぞれ成虫30頭幼虫30頭からなる
群を3群ずつ用意した。
【0034】約6畳の広さの部屋8室用意し、2群に分
け、A群,B群各々にに試験実施1週間前からそれぞれ
各種供試虫を放し、十分に餌と水を与えておいた。A群
の部屋には表9で調製した検体ベイトを、B群の部屋に
は対照ベイトをそれぞれ5箇所に同量配置し、5日後の
死亡数を調べた。結果を表10に示す。
【0035】
【表10】
【0036】
【発明の効果】本発明の誘引、摂食刺激剤は多種のゴキ
ブリに対して強力な誘引、摂食刺激作用を示し、ゴキブ
リの駆除に著しく効果がある。また、本発明の誘引、摂
食刺激成分は単独でもゴキブリに対して強い誘引、摂食
刺激効果を示すと共に定着作用もよく、誘引摂食の製造
に際しては、デン粉、糖類などの添加は必要としないの
で、本発明の誘引、摂食刺激剤は生産コストが低く、剤
型も大型化することなく使用に便利である。また、本発
明のゴキブリ誘引、摂食刺激成分は各ゴキブリ駆除剤に
対し、速効性を付加することが可能である。
【0037】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。
【0038】実施例1 1−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン
約10gに約200mlのn−ヘキサンを加え、攪拌機
によって約10分間十分に攪拌して溶解させた。この溶
液を分注機により、幅20cm,長さ50cm,厚さ
0.1cmの不織布に均一に含浸させた後、n−ヘキサ
ンが揮散するまでよく風乾させた。この含浸布を切断機
によって幅0.5cm,長さ20cmに切断し、誘引、
摂食刺激テープを製造した。このテープは容器状のゴキ
ブリ捕獲器の粘着板中央に設置して使用することができ
る。
【0039】実施例2 1−アミノ−4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒド
ロナフタレンを0.5g,ホウ酸100g,溶性デン粉
150g,バレイショデン粉150g,水599.5g
を混合し、適宜の大きさに成形してベイト剤を製造し
た。
【0040】実施例3 1−アミノ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン
を0.05g,白色ワセリン20g,d−フェノトリン
77.95gを混合し、これを幅5cm,長さ200m
のポリエチレンテープに塗布した。これを幅5cm,長
さ20cmに切断し、殺虫テープを製造した。
【0041】実施例4 2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン
ヒドラクロリド0.5gを200mlのアセトンに加え
て、よく攪拌して溶解した。ホールピペットを用いてこ
の溶液の約0.1mlを直径3cmの円形濾紙(東洋濾
紙 No.1)に含浸させた後、アセトンが揮散するまでよ
く風乾させた。内側にワセリンを幅に塗ったガラス円筒
(直径13cm,高さ18cm)の中にこの含浸濾紙1
枚を入れ、簡易ゴキブリトラップを製造した。
【0042】実施例5 1−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン
ヒドロクロリド0.5g,天然ゴム200g,粘着付与
剤780g,酸化防止剤10gをよく混練し、これを幅
9cm,長さ20cmの厚紙にロールで塗布し、容器状
ゴキブリ捕獲器の誘引粘着板を製造した。
【0043】実施例6 2−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン
を0.5g,ヒドラメチルノン50g,溶性デン粉20
0g,バレイショデン粉150g,水599.5gを混
合し、適宜の大きさに成形してベイト剤を製造した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 漆崎 文男 東京都豊島区高田3丁目24番1号 大正 製薬株式会社内 (72)発明者 島村 治夫 東京都豊島区高田3丁目24番1号 大正 製薬株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−96101(JP,A) 特開 昭61−69701(JP,A) Chemical Abstract s,1967,Vol.66,No.13, 54916j (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01N 33/06 A01N 33/04 A01N 31/08 A01N 31/06 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (式中、R1 2およびR3は水素原子またはアミノ基
    を表す。但し、R1 2およびR3の内いずれか一つが
    アミノ基を表し、他の二つは水素原子を表す。Xは水素
    またはハロゲン原子を表す。)で表される化合物を有効
    成分とすることを特徴とするゴキブリの誘引,摂食刺激
    剤。
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