JP3166765B2 - 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼 - Google Patents

溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼

Info

Publication number
JP3166765B2
JP3166765B2 JP23265899A JP23265899A JP3166765B2 JP 3166765 B2 JP3166765 B2 JP 3166765B2 JP 23265899 A JP23265899 A JP 23265899A JP 23265899 A JP23265899 A JP 23265899A JP 3166765 B2 JP3166765 B2 JP 3166765B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
toughness
steel
strain aging
weldability
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP23265899A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001059131A (ja
Inventor
典己 和田
孝之 小林
章嘉 辻
一夫 小俣
稔 諏訪
伸一 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
JFE Engineering Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Engineering Corp filed Critical JFE Engineering Corp
Priority to JP23265899A priority Critical patent/JP3166765B2/ja
Publication of JP2001059131A publication Critical patent/JP2001059131A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3166765B2 publication Critical patent/JP3166765B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、水圧鉄管、圧力
容器、ラインパイプ及び海洋構造物等に用いられる60
キロ級構造用鋼で、特に曲げなどの冷間加工後において
も優れた低温靭性を有する歪時効後の靭性に優れた鋼に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼を冷間で塑性変形すると歪時効脆化と
呼ばれる靭性が劣化する現象が生ずる。歪時効脆化に間
しては主に自動車ボデイ用の薄鋼板を対象に研究が行な
われてきたが、近年、構造物の信頼性に対する要求が高
まり、厚鋼板においても素材段階のみならず加工や不慮
の事故などにより塑性変形を受けた後の靭性が問題視さ
れるようになってきた。
【0003】歪時効脆化を評価する試験として5%の引
張り予歪を付与し、250℃で1時間の時効処理後シャ
ルピー試験を行なう歪時効シャルピー試験が知られ、近
年、材料評価試験の一つとして要求される事例が増えて
いる。
【0004】厚鋼板を対象とする歪時効脆化抑制の技術
として、特開平5−320820号、特開昭59−18
2915号及び特開昭56−127760号等がある
が、いずれも一般的な600MPa級厚肉鋼板を対象と
した技術ではない。
【0005】特開平5−320820号には引張り強度
400MPa級の球状船首用低降伏点焼入れ鋼が開示
されている。鋼材組織を整粒化し、歪時効後の靭性劣化
を防止するものであるが、C量が0.002〜0.03
%、他の強化元素も殆ど含有されていない成分組成が対
象であり、60キロ級鋼に適用することは出来ない。
【0006】特開昭59−182915号はTMCP型
500MPa級鋼での歪時効脆化を抑制する製造方法を
開示している。TMCP50キロ鋼を冷間加工した場
合、冷間加工後の脆化がフェライト・ベイナイト組織の
フェライト相に歪が集中することにより生じることに着
目し、フェライト中の固溶N,固溶Cを冷却停止温度の
制御により低減させ、フェライト相の脆化を抑制する技
術である。このため、室温付近まで冷却され、焼入れ組
織となる60キロ級鋼には適用できない。
【0007】特開昭56−127750号には600M
Pa級鋼の歪時効脆化抑制技術が記載されているが、本
技術はVN析出型の鋼において、0.01%以上のN含
有により生ずる歪時効脆化をCaまたはMgの添加によ
り抑制できることを示している。しかし、本技術は、a
s rollあるいはノルマで製造するVN鋼に限って
その効果を発揮するもので、実施例の鋼もC量が0.1
2%以上と高く、Pcmも0.25%以上と溶接施工性に
劣る鋼が記載され、現在の一般的な需要家の要望に応え
るものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上、述べたように、
溶接施工性に優れた600MPa級厚肉鋼材で塑性変形
させた後の脆化を抑制する技術は未だ完成されていな
い。本発明は、溶接性に優れ、かつ歪時効後にも優れた
靭性を有する60キロ級焼入れ焼戻し鋼を提供するもの
であり、具体的には再加熱処理材と比較して組織が粗
く、靭性に劣り、特に塑性変形を受けると著しく靭性が
劣化する直接焼入れ焼戻し鋼で、歪時効シャルピー試験
の破面遷移温度vTs(aged)がー40℃以下とな
る60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、直接焼入
れ焼戻し鋼を対象に塑性変形をうけた後の靭性劣化の原
因、及びその防止技術について鋭意検討を行ない、靭性
劣化が以下の図1〜3に示す機構によりもたらされるも
のであり、その防止には粒界面積の増大が有効なことを
見出した。
【0010】図1は焼入れままのミクロ組織を模式的に
示すもので、低成分設計:低Pcm,低Ceq(WE
S)の60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼の場合、オーステ
ナイトの細粒化が困難なため再加熱焼入れ焼戻し材のミ
クロ組織と比較すると粗いベイナイト組織となる。
【0011】図2は焼入れ後、焼戻した場合のミクロ組
織を示すもので、セメンタイトが粒界に析出する。セメ
ンタイトは焼戻し温度が同じ場合、再加熱材と比較して
粒界面積の小さい直接焼入れ材で粗大化する。
【0012】図3は焼入れ焼戻し鋼に歪を付加した場合
の状況を示すもので、セメンタイト周辺に歪が集中する
ようになる。歪集中は析出したセメンタイトが粗いほど
大きくなり、直接焼入れ焼戻し鋼の歪脆化は再加熱焼入
れ焼戻し鋼より著しくなり,又、その防止にはセメンタ
イトを微細化させる粒界面積の増大が有効である。
【0013】以上の知見を基に、本発明者らは粒界面積
を増大させる方法について検討を行い、図4に示すよう
に直接焼入れ時、旧オーステナイト粒界に、数μm以下
の膜状のフェライトを生成させた場合、実質的に粒界面
積が増大し、セメンタイトが微細化することを把握し、
本発明を完成させたものである。
【0014】すなわち、本発明は、 1.旧オーステナイト粒界上にフェライトが膜状に析出
した組織を有し、質量%で、C:0.04%以上、0.
09%以下、Si:0.1%以上、0.5%以下、M
n:1.2%以上、1.8%以下、Cr:0.1%以
上、0.5%以下、Nb:0.01%以上、0.05%
以下、sol.Al:0.002%以上、0.07%以
下、N:0.001%以上、0.004%以下、残部F
e及び不可避不純物よりなり、且つ、Pcm≦0.20
%、Ceq(WES)≦0.42%を満足する化学組成
からなる溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級
直接焼入れ焼戻し鋼。 但し、Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/2
0+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+
5B, Ceq(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/
40+Cr/5+Mo/4+V/14とする。 2. 更に、鋼成分として、質量%で、Mo:0.02
%以上、0.3%以下、Cu:0.1%以上、0.6%
以下の一種又は二種を含有する1記載の溶接性及び歪時
効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼。
【0015】3. 更に、鋼成分として、質量%で、N
i:0.1%以上、0.5%以下を含有する1又は2記
載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接
焼入れ焼戻し鋼。 4. 更に、鋼成分として、質量%で、V:0.01%
以上、0.08%以下を含有する1乃至3の何れかに記
載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接
焼入れ焼戻し鋼。
【0016】5. 更に、鋼成分として、質量%で、T
i:0.005%以上、0.02%以下、Ca:0.0
01%以上、0.004%以下の一種又は二種を含有す
る1乃至4の何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭性
に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼。 6. 更に、鋼成分において、質量%で、B:0.00
02%以下、P:0.010%以下、S:0.002%
以下としたことを特徴とする1乃至5の何れかに記載の
溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入
れ焼戻し鋼。
【0017】7. 膜状に析出するフェライトの厚みが
0.1〜5μm,旧オーステナイト粒界占有率が20%
以上であることを特徴とする1乃至6の何れかに記載の
溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入
れ焼戻し鋼。 但し、粒界占有率(%)=ΣLn/旧オーステナイト粒
界全長*100 ΣLn:膜状フェライト全長
【0018】
【発明の実施の形態】本発明でミクロ組織、成分を限定
する理由について述べる。
【0019】1.ミクロ組織 本発明鋼では焼入れ焼戻し時に粒界に析出するセメンタ
イトを微細化させるため、旧オーステナイト粒界にフェ
ライトを析出させ、粒界面積を実質的に増大させる。
【0020】析出させるフェライトの形態は、ポリゴナ
ルな場合、歪時効後の靭性改善効果に比して強度低下が
大きく、60キロ級の強度が得られるなくなるため、膜
状とする。本発明における膜状とは、均一な厚みの膜に
のみ限定するものではなく、60キロ級の強度を確保
し、歪時効後の靭性改善効果が得られる範囲での、厚み
の凹凸は許容できる。
【0021】本発明の効果は、膜の厚み及び旧オーステ
ナイト粒界上の占有率を規定した場合、より好ましいも
のとなる。膜としての厚みは0.1μm未満の場合、歪
時効脆化の抑制効果が十分でなく、5μmを超えると強
度の低下が大きいため、0.1〜5μmが好ましい。上
述したように、この範囲であれば凹凸状に変動しても好
ましい結果が得られる。
【0022】膜の厚みを規定し、且つ析出するフェライ
トの旧オーステナイト粒界上の占有率を20%以上とし
た場合、歪時効脆化の抑制効果は顕著なものとなる。
尚、粒界占有率は図4において、粒界占有率(%)=Σ
Ln/旧オーステナイト粒界全長*100、ΣLn:膜
状フェライト全長として求める。
【0023】2.成分組成 Pcm≦0.20% Pcmは溶接低温割れ性の指標であり、0.20%を超
えると、予熱無しの場合、低温割れの生じる可能性が高
まるため、0.20%以下とする。
【0024】Ceq(WES)≦0.42% Ceqは溶接熱影響部の靭性の指標で、0.42%を超
えると、大入熱溶接した場合、熱影響部の靭性が著しく
劣化するため、0.42%以下とする。
【0025】本発明鋼はPcm≦0.20%、Ceq
(WES)≦0.42%の成分組成で、60キロ級強度
を確保するため、直接焼入れ焼戻しに製造方法を限定す
る。尚、60キロ級鋼として好ましい成分組成は以下の
ようである。 C:0.04%以上0.09%以下 0.04%未満では厚肉材の場合60キロ級の引張り強
度を確保することが困難で、0.09%を超えると,歪
時効後の靭性が劣化するため、0.04%以上0.09
%以下とする。
【0026】Si:0.1%以上0.5%以下 強力なフェライト生成元素であり、直接焼入れ時、旧オ
ーステナイト粒界に膜状のフェライトを生成させるのに
有効である。0.1%未満ではその効果が十分でなく、
0.5%を超えると効果が飽和し、溶接熱影響部の靭性
が著しく劣化することがあるため、0.1%以上0.5
%以下とする。
【0027】Mn:1.2%以上1.8%以下 所定の強度を確保するために有効である。1.2%未満
では厚肉材の場合60キロ級の引張り強度を確保するこ
とが困難で、1.8%を超えると、溶接熱影響部の靭性
が著しく劣化することがあるため、1.2%以上1.8
%以下とする。
【0028】Cr:0.1%以上0.5%以下 Crは、強力なフェライト生成元素で直接焼入れによ
り、旧オーステナイト粒界に膜状のフェライトを生成さ
せるのに有効である。0.1%未満では、その効果が不
十分で、0.5%を超えると焼入れ性が著しく高まり、
膜状フェライトの生成が困難になるため0.1%以上
0.5%以下とする。
【0029】Nb:0.01%以上0.05%以下 Nbは、圧延時のオーステナイトの再結晶を抑制し、直
接焼入れ時のオーステナイト粒界を活性化させ、膜状フ
ェライトの生成を容易とする。また、焼戻し時にNb炭
化物として析出し、強度上昇に有効である。0.01%
未満ではそれらの効果が不十分で、0.05%超えでは
著しいNb炭化物の析出強化により靭性が劣化するため
0.01%以上0.05%以下とする。
【0030】sol.Al:0.002%以上0.07
%以下 Alは脱酸のため添加する。sol.Al量で0.00
2%未満の場合、その効果が十分でなく、0.07%を
超えて添加すると鋼材の表面疵が発生しやすくなるた
め、0.002%以上0.07%以下添加する。
【0031】N:0.001%以上0.004%以下 Nは、圧延加熱時AlあるいはTiと結びつきAlN,
TiNを生成し、オーステナイトを微細化させる。0.
001%未満ではその効果が十分でなく、0.004%
を超えて含有すると焼入れ焼戻し後も固溶Nにより著し
い歪時効脆化を生じるため、0.001%以上0.00
4%以下とする。
【0032】更に以下のパラメータを満足するように成
分範囲を規定することが望ましい。
【0033】Si+3Cr:0.50%以上1.25%
以下 本パラメータは上記成分範囲にある鋼の旧オーステナイ
ト粒界に、膜状のフェライトを生成させるのに有効で、
Si+3Crが0.50%未満の場合、その効果が十分
でなく、1.25%を超えると過度の焼入れ性により膜
状のフェライトの生成が抑制されるため、0.50%以
上1.25%以下とすることが望ましい。所望する特性
を向上させるため、Mo,Cu、Ni,V,Ti,Ca
を単独または複合添加し、更に不可避不純物であるB,
P,Sを規制することが可能である。
【0034】Mo:0.02%以上0.3%以下、C
u:0.1%以上0.6%以下の一種または二種 Moは強度を向上させ、特に厚肉材で有効なため添加す
る。0.02%未満ではその効果が十分でなく、0.3
%を超えると溶接性及び溶接熱影響部の靭性が著しく劣
化するため0.02%以上0.3%以下とする。Cuは
強度を向上させるため添加する。
【0035】0.1%未満ではその効果が十分でなく、
0.6%を超えて添加するとCu割れの懸念が高まるた
め0.1%以上0.6%以下とする。
【0036】Ni:0.1%以上0.5%以下 Niは靭性を向上させる場合、添加する。0.1%未満
ではその効果が十分でなく、0.5%を超えると鋼材コ
ストの上昇が著しいので0.5%以下とする。
【0037】V:0.01%以上0.08%以下 Vは焼戻し時、炭化物として析出し、強度を向上させる
ため添加する。0.01%未満ではその効果が十分でな
く、0.08%超えでは著しいV炭化物の析出強化によ
り靭性が劣化するため0.01%以上0.08%以下と
する。
【0038】Ti:0.005%以上0.02%以下、
Ca:0.001%以上0.004%以下の一種又は二
種 Ti、Caは母材靭性並びに溶接熱影響部の靭性を向上
させるため添加する。Tiは圧延加熱時あるいは溶接
時、TiNを生成しオーステナイト粒径を微細化する。
【0039】0.005%未満ではその効果が十分でな
く、0.02%を超えて添加すると圧延時にTiNbの
複合炭化物が析出し、焼戻し時のNb炭化物の析出量が
不足するようになり強度低下が生じるため、0.005
%以上0.02%以下とする。
【0040】CaはCa硫化物として鋼中に存在し、圧
延加熱時あるいは溶接時、オーステナイト粒径を微細化
する。0.001%未満ではその効果が十分でなく、
0.004%を超えて添加すると多量のCa硫酸化物に
より清浄度を著しく劣化させるため、0.001%以上
0.004%以下とする。
【0041】B:0.0002%以下 Bは不純物元素として扱う。直接焼入れ時、固溶Bとし
て存在すると旧オーステナイト粒界における膜状フェラ
イトの生成が抑制されるため溶解原料の選別などにより
0.0002%以下に規制する。
【0042】P≦0.010%、S≦0.002% P,Sは不純物元素で、P≦0.010%、S≦0.0
02%とした場合、中央偏析が軽減され、板厚中央の靭
性及び溶接性を向上させるため規制する。
【0043】
【実施例】表1に実施例に用いた供試鋼の化学成分を示
す(表示しない残部は実質的にFeよりなる)。表中、
鋼A〜FはPcm,Ceq(WES)に関する本発明の
規定を満足するが、鋼G、H,Jは何れか一方、又は両
者が発明の範囲外となっている。これらの化学成分を有
する250mm厚の鋳片を表2に示す制御圧延(CR)
と直接焼入れ焼戻し(DQT)による種々の製造条件に
より、旧オーステナイト粒界でのフェライトの析出状態
を変化させた板厚34〜80mmの鋼板とした。 熱処
理後のミクロ組織を、SEMにより500〜2000倍
で観察し、粒界に析出したフェライトの形態、粒界占有
率を調べた。機械的特性として強度、靭性および歪時効
後の靭性を求めた。引張り試験は1/4tより、採取し
たJISG14A号(14φ)試験片を用いた試験とし
た。
【0044】衝撃試験は1/4tより採取した2mmV
ノッチシャルピー衝撃試験片を用い試験温度をー100
〜0℃とする試験とした。歪時効後の靭性は板状の試験
片に、5%引張り予歪を付与し、250℃で1時間の時
効処理後、引張方向に2mmVノッチシャルピー衝撃試
験片を採取し、−100〜20℃で試験を行った。
【0045】溶接性試験は、JISZ3101に準拠す
る手溶接熱影響部の最高硬さ試験とした。また、溶接熱
影響部の靭性を、レ開先継手(溶接条件:入熱30kJ
/cmのCO2溶接)より採取した2mmVノッチシャ
ルピー衝撃試験片(ノッチ位置:HAZ1mm、図5に
試験片採取要領を示す)で求めた。 表2に鋼板の製造
条件に併せてミクロ組織観察結果を、表3に各試験結果
を示す。尚、表3において溶接熱影響部のシャルピー衝
撃試験結果は3本の試験片による結果の最小値を示す。
【0046】表2,3から明らかなように、請求項7記
載の発明の実施例となる鋼板No.1〜11(旧オース
テナイト粒界に厚み0.1〜5μmの膜状のフェライト
が粒界占有率20%以上で析出し、且つPcm,Ceq
(WES)に関する規定を満足する)は、歪時効による
劣化度が10℃以内と優れ、且つ60キロ級として十分
な強度と優れた溶接性が得られている。
【0047】鋼板No.14は膜状のフェライトが析出
しているものの粒界占有率が10%と低いため歪時効後
の靭性がやや劣り、Pcmも高いため、溶接部の硬化が
著しい。粒界にフェライトが析出しない鋼板No.1
2,13,17、18及びポリゴナルなフェライトが析
出する鋼板No.15,16では歪時効による靭性の劣
化が大きい。又、鋼板12、13はPcm,Ceqに関
する規定の何れか又は両者が外れるため、溶接部が硬化
し、溶接熱影響部の靭性も低い。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、直接焼入れ時に、旧オ
ーステナイト粒界に生成する膜状のフェライトにより、
実質的な粒界面積が増大されるため、焼戻しにおいて析
出するセメンタイトに集中する歪が小さく、歪時効後の
靭性に優れると共に、Pcm,Ceq(WES)が低い
ため溶接性に優れる60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼の提
供が可能で、産業上その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼入れ後のミクロ組織を模式的に示す図
【図2】焼入れ焼戻し後のミクロ組織を模式的に示す図
【図3】焼入れ焼戻し後、歪を付加した場合のミクロ組
織を模式的に示す図
【図4】旧オーステナイト粒界に膜状のフェライトが析
出した組織の焼戻し後の状態を模式的に示す図
【図5】溶接熱影響部シャルピー衝撃試験の試験片採取
位置を示す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小俣 一夫 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 諏訪 稔 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 鈴木 伸一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−162518(JP,A) 特開 平11−36042(JP,A) 特開 平9−3597(JP,A) 特開 平10−273751(JP,A) 特開 平11−61249(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 301 C21D 6/00 C21D 8/02 C22C 38/54

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 旧オーステナイト粒界上にフェライトが
    膜状に析出した組織を有し、質量%で、C:0.04%
    以上、0.09%以下、Si:0.1%以上、0.5%
    以下、Mn:1.2%以上、1.8%以下、Cr:0.
    1%以上、0.5%以下、Nb:0.01%以上、0.
    05%以下、sol.Al:0.002%以上、0.0
    7%以下、N:0.001%以上、0.004%以下、
    残部Fe及び不可避不純物よりなり、且つ、Pcm≦
    0.20%、Ceq(WES)≦0.42%を満足する
    化学組成からなる溶接性及び歪時効後の靭性に優れた6
    0キロ級直接焼入れ焼戻し鋼。 但し、Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/2
    0+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+
    5B, Ceq(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/
    40+Cr/5+Mo/4+V/14とする。
  2. 【請求項2】 更に、鋼成分として、質量%で、Mo:
    0.02%以上、0.3%以下、Cu:0.1%以上、
    0.6%以下の一種又は二種を含有する請求項1記載の
    溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入
    れ焼戻し鋼。
  3. 【請求項3】 更に、鋼成分として、質量%で、Ni:
    0.1%以上、0.5%以下を含有する請求項1又は2
    記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直
    接焼入れ焼戻し鋼。
  4. 【請求項4】 更に、鋼成分として、質量%で、V:
    0.01%以上、0.08%以下を含有する請求項1乃
    至3の何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れ
    た60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼。
  5. 【請求項5】 更に、鋼成分として、質量%で、Ti:
    0.005%以上、0.02%以下、Ca:0.001
    %以上、0.004%以下の一種又は二種を含有する請
    求項1乃至4の何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭
    性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼。
  6. 【請求項6】 更に、鋼成分において、質量%で、B:
    0.0002%以下、P:0.010%以下、S:0.
    002%以下としたことを特徴とする請求項1乃至5の
    何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60
    キロ級直接焼入れ焼戻し鋼。
  7. 【請求項7】 膜状に析出するフェライトの厚みが0.
    1〜5μm,旧オーステナイト粒界占有率が20%以上
    であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載
    の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼
    入れ焼戻し鋼。但し、粒界占有率(%)=ΣLn/旧オ
    ーステナイト粒界全長*100 ΣLn:膜状フェライト全長
JP23265899A 1999-08-19 1999-08-19 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼 Expired - Fee Related JP3166765B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23265899A JP3166765B2 (ja) 1999-08-19 1999-08-19 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23265899A JP3166765B2 (ja) 1999-08-19 1999-08-19 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000327135A Division JP2001115232A (ja) 1999-08-19 2000-10-26 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001059131A JP2001059131A (ja) 2001-03-06
JP3166765B2 true JP3166765B2 (ja) 2001-05-14

Family

ID=16942769

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP23265899A Expired - Fee Related JP3166765B2 (ja) 1999-08-19 1999-08-19 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3166765B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4507746B2 (ja) * 2003-07-31 2010-07-21 Jfeスチール株式会社 耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高靱性鋼管及びその製造方法
JP4507745B2 (ja) * 2003-07-31 2010-07-21 Jfeスチール株式会社 耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高靱性鋼管およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001059131A (ja) 2001-03-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1559797B1 (en) Method for manufacturing a high strength steel sheet
EP2420586B1 (en) High strength steel plate and method for manufacturing the same
JP3504560B2 (ja) 形状凍結性が良好で成形性に優れた高強度熱延鋼板
JP5146051B2 (ja) 靭性および変形能に優れた板厚:25mm以上の高強度鋼管用鋼材およびその製造方法
EP0924312B1 (en) Method for manufacturing super fine granular steel pipe
US7018488B2 (en) Steel pipe for use in reinforcement of automobile and method for production thereof
JP3370875B2 (ja) 耐衝撃性に優れた高強度鋼板及びその製造方法
JP3231204B2 (ja) 疲労特性にすぐれる複合組織鋼板及びその製造方法
JP2023531248A (ja) 鋼組成物から高強度鋼管を製造する方法およびその鋼管から作られる構成部品
EP3964600A1 (en) Ultra-high strength steel sheet having excellent shear workability and method for manufacturing same
JP3579307B2 (ja) 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼
JP3823626B2 (ja) 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法
JP3166765B2 (ja) 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼
JP3823627B2 (ja) 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級非調質高張力鋼の製造方法
JP3286050B2 (ja) 疲労特性に優れた加工用高強度熱延鋼板
JP3296591B2 (ja) 低降伏比高強度熱延鋼板およびその製造方法
KR100330432B1 (ko) 초미세 입자 강관 및 그 제조방법
JP2001115232A (ja) 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級直接焼入れ焼戻し鋼
JP3444244B2 (ja) 靱性に優れた高張力鋼材およびその製造方法
JP3823628B2 (ja) 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法
JP2718550B2 (ja) 疲労特性の優れた強加工用高強度熱間圧延鋼板の製造方法
JP3846119B2 (ja) 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法
JP4639464B2 (ja) 加工性に優れる高張力熱延鋼板およびその製造方法
JP2009179840A (ja) 低温靭性、亀裂伝搬停止特性に優れた高張力鋼の製造方法
EP4079906A1 (en) Structural steel material and method for manufacturing same

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3166765

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080309

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090309

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100309

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100309

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110309

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120309

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130309

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130309

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140309

Year of fee payment: 13

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees