JP3823628B2 - 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法 - Google Patents

溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水圧鉄管、圧力容器、ラインパイプ及び海洋構造物等に用いられる60キロ級構造用鋼で、特に曲げなどの冷間加工後においても優れた低温靭性を有する歪時効後の靭性に優れた鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼を冷間で塑性変形すると歪時効脆化と呼ばれる靭性が劣化する現象が生ずる。歪時効脆化に間しては主に自動車ボデイ用の薄鋼板を対象に研究が行なわれてきたが、近年、構造物の信頼性に対する要求が高まり、厚鋼板においても素材段階のみならず加工や不慮の事故などにより塑性変形を受けた後の靭性が問題視されるようになってきた。
【0003】
歪時効脆化を評価する試験として5%の引張り予歪を付与し、250℃で1時間の時効処理後シャルピー試験を行なう歪時効シャルピー試験が知られ、近年、材料評価試験の一つとして要求される事例が増えている。
【0004】
厚鋼板を対象とする歪時効脆化抑制の技術として、特開平5−320820号、特開昭59−182915号及び特開昭56−127750号等があるが、いずれも一般的な600MPa級厚肉鋼板を対象とした技術ではない。
【0005】
特開平5−320820号には引張り強度 400MPa級の球状船首用低降伏点焼入れ鋼が開示されている。鋼材組織を整粒化し、歪時効後の靭性劣化を防止するものであるが、C量が0.002〜0.03%、他の強化元素も殆ど含有されていない成分組成が対象であり、60キロ級鋼に適用することは出来ない。
【0006】
特開昭59−182915号はTMCP型500MPa級鋼での歪時効脆化を抑制する製造方法を開示している。TMCP50キロ鋼を冷間加工した場合、冷間加工後の脆化がフェライト・ベイナイト組織のフェライト相に歪が集中することにより生じることに着目し、フェライト中の固溶N,固溶Cを冷却停止温度の制御により低減させ、フェライト相の脆化を抑制する技術である。このため、室温付近まで冷却され、焼入れ組織となる60キロ級鋼には適用できない。
【0007】
特開昭56−127750号には600MPa級鋼の歪時効脆化抑制技術が記載されているが、本技術はVN析出型の鋼において、0.01%以上のN含有により生ずる歪時効脆化をCaまたはMgの添加により抑制できることを示している。しかし、本技術は、as rollあるいはノルマで製造するVN鋼に限ってその効果を発揮するもので、実施例の鋼もC量が0.12%以上と高く、Pcmも0.25%以上と溶接施工性に劣る鋼が記載され、現在の一般的な需要家の要望に応えるものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上、述べたように、溶接施工性に優れた60キロ級厚肉鋼材で塑性変形させた後の脆化を抑制する技術は未だ完成されていない。本発明は、溶接性に優れ、かつ歪時効後にも優れた靭性を有する60キロ級高張力鋼の製造方法を提供するものであり、具体的には歪時効シャルピー試験の破面遷移温度vTs(aged)がー40℃以下となる60キロ級高張力鋼の製造方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
従来、歪時効後の靭性劣化機構については、薄鋼板の場合、鋼中に固溶しているCやNと歪付与による転位との相互作用により、転位の動きが妨げられ、降伏点が上昇し、脆化することが知られている。しかし、本発明者等が厚肉鋼を対象に、歪時効後の靭性劣化度の異なる鋼の固溶CとNを内部摩擦測定法によりスネークピーク測定を行った結果、いずれの鋼においても固溶CとN量は3ppm未満であり、厚肉鋼の歪時効後の靭性劣化に固溶CとN量の積極的影響は認められず、その原因として薄鋼板のフェライト主体に対し、厚肉鋼がベイナイト主体組織であることより、組織的相違によるものと推察された。
【0010】
そこで、本発明者等は、鋼材の成分組成と熱処理条件を種々変化させ、歪時効特性に及ぼす組織の影響について,詳細に検討し、以下に述べるNb含有厚肉鋼に特有の歪時効特性を把握した。
【0011】
1.C含有量の減少は歪時効後の靭性劣化を軽減する。
【0012】
2.焼戻しによる母相の軟化傾向とNb炭窒化物の析出により、母材の強度と靭性のバランスは630℃付近を境に変化する。図1は母材の強度と靭性に及ぼす焼戻し温度の影響を模式的に示すもので、630℃付近より低温側においては、焼戻し温度の上昇に伴い、Nb炭窒化物が整合析出し、強度は上昇し、靭性は若干劣化する。
【0013】
歪時効後の靭性も焼戻し温度の上昇に伴い、劣化するが、歪時効前後の靭性差は小さい。一方、630℃付近より高温側では、焼戻し温度の上昇に伴い、母相が更に軟化すると同時に、Nb炭窒化物が成長し母相との整合度が低下し強度上昇効果を失うため、強度は低下する。母材靭性は回復するが、歪時効後の靭性は回復せず、劣化するため、歪時効前後の靭性差は拡大する。
【0014】
3.焼戻しにより、組織は変化し、焼戻し温度が低いほどセメンタイトが比較的微細に析出する。その析出サイトは旧オーステナイト結晶粒界、ベイナイトのパケット境界および旧オーステナイト結晶粒内に分散しているのが観察された。焼戻し温度が高くなると、セメンタイトが凝集粗大化し、析出サイトも旧オーステナイト結晶粒界、ベイナイトのパケット境界のみとなった。
【0015】
4.焼入れ時のオーステナイト結晶粒径が細かいほど、またベイナイトのパケットサイズが小さいほど歪時効後の靭性劣化は軽減される。
【0016】
5.旧オーステナイト粒界に膜状のフェライトが存在すると歪時効後の靭性劣化が軽減する。膜状のフェライト生成にはSiとCrを適量複合添加することが有効である。
【0017】
6.歪時効後のシャルピー衝撃試験における脆性破面の破壊単位はベイナイトのパケットサイズに対応する。
【0018】
これらの結果より、Nb含有厚肉鋼の靭性劣化はセメンタイトの析出によるもので、旧オーステナイト結晶粒界とベイナイトのパケット境界に析出するセメンタイトのサイズ、析出量により歪時効後の靭性が支配されることが把握された。そして、セメンタイトのサイズ、析出量に影響を与える因子として、直接的にはC量と焼戻し温度、間接的には一定のセメンタイト量に対し析出サイトを増加させ、析出サイズを小さくする効果を有する旧オーステナイト結晶粒、ベイナイトのパケットサイズ、旧オーステナイト粒界上に析出する膜状のフェライトが認められた。
【0019】
すなわち、歪時効後の靭性に影響を与える主な製造条件はC量、フェライト生成に影響を与えるSi量、Cr量、焼戻し温度、旧オーステナイト結晶粒径とベイナイトのパケットサイズに影響を与えるスラブ加熱温度となる。
【0020】
本発明は以上の知見を基に更に検討を加えてなされたものである。
【0021】
1.質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.1〜0.5%、Mn:1.2〜1.8%、Cr:0.1〜0.5%、Nb:0.01〜0.05%、sol.Al:0.002〜0.07%、N:0.001〜0.004%を含み、且つPcm≦0.20%、Ceq(WES)≦0.42%、0.50%≦Si+3Cr≦1.25%、B:0.0002%以下を満たし、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を、焼入れ時の加熱温度をT min. (℃)〜T max. (℃)とし、Ar3以上より再加熱焼入れ後、400〜630℃で焼戻すことを特徴とする溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
【0022】
但し、 min. (℃)=(6770/(2.26−log(0.005C)))−373+2tT max. (℃)=910+2t
t:板厚(mm)
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B,
Ceq(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14とする。
【0023】
2.鋼組成として、更に質量%でMo:0.02〜0.3%、Cu:0.1〜0.6%の一種または二種を含有する1記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
【0024】
3.鋼組成として、更に質量%でNi:0.1〜0.5%を含有する1又は2記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
【0025】
4.鋼組成として、更に質量%でV:0.01〜0.08%を含有する1乃至3の但し、 min. (℃)=(6770/(2.26−log(0.005C)))−373+2tT max. (℃)=910+2t
t:板厚(mm)
Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B,
Ceq(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14とする。何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
【0026】
5.鋼組成として、更に質量%でTi:0.005〜0.02%、Ca:0.001〜0.004%の一種または二種を含有する1乃至4の何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に本発明における成分組成、製造条件について説明する。
【0030】
1.成分組成
C:0.06%以上0.10%以下
Cは所定の強度を確保するため添加する。0.06%未満では厚肉材の場合60キロ級の引張り強度を確保することが困難で、0.10%を超えると,歪時効後の靭性が劣化するため、0.06%以上0.10%以下添加する。
【0031】
Si:0.1%以上0.5%以下
Siは強力なフェライト生成元素であり、旧オーステナイト粒界に膜状のフェライトを生成させるため添加する。0.1%未満ではその効果が十分でなく、0.5%を超えると効果が飽和し、溶接熱影響部の靭性が著しく劣化するため、0.1%以上0.5%以下添加する。
【0032】
Mn:1.2%以上1.8%以下
Mnは所定の強度を確保するために添加する。1.2%未満では厚肉材の場合60キロ級の引張り強度を確保することが困難で、1.8%を超えると、溶接熱影響部の靭性が著しく劣化するため1.2%以上1.8%以下添加する。
【0033】
Cr:0.1%以上0.5%以下
Crは、強力なフェライト生成元素で、旧オーステナイト粒界に膜状のフェライトを生成させるため添加する。0.1%未満では、その効果が不十分で、0.5%を超えると焼入れ性が著しく高まり、膜状フェライトの生成が困難になるため0.1%以上0.5%以下添加する。
【0034】
Nb:0.01%以上0.05%以下
Nbは、圧延時のオーステナイトの再結晶を抑制し、直接焼入れ時のオーステナイト粒界を活性化させ、膜状フェライトの生成を容易とする。また、焼戻し時にNb炭化物として析出し、強度上昇に有効なため添加する。0.01%未満ではそれらの効果が不十分で、0.05%超えでは著しいNb炭化物の析出強化により靭性が劣化するため0.01%以上0.05%以下添加する。
【0035】
sol.Al:0.002%以上0.07%以下
Alは脱酸のため添加する。sol.Al量で0.002%未満の場合、その効果が十分でなく、0.07%を超えて添加すると鋼材の表面疵が発生しやすくなるため、0.002%以上0.07%以下添加する。
【0036】
N:0.001%以上0.004%以下
Nは、圧延加熱時AlあるいはTiと結びつきAlN,TiNを生成し、オーステナイトを微細化させる。0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.004%を超えて含有すると焼入れ焼戻し後も固溶Nにより著しい歪時効脆化を生じるため、0.001%以上0.004%以下とする。
【0037】
Pcm≦0.20、Ceq(WES)≦0.42
Pcm,Ceq(WES)は、溶接低温割れ性、溶接熱影響部の靭性の指標で、Pcmが0.20%を超えた場合、予熱無しの溶接では低温割れが生じる可能性があり、Ceq(WES)が0.42を超えた場合、大入熱溶接の熱影響部靭性が著しく劣化するためPcm≦0.20、CeqWES≦0.42とする。ここでPcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B,Ceq(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14とする。
【0038】
本発明では更に以下のパラメータを満足するように成分範囲を規定する。
【0039】
Si+3Cr:0.50%以上1.25%以下
本パラメータは上記成分範囲にある鋼の旧オーステナイト粒界に、膜状のフェライトを生成させうるもので、Si+3Crが0.50%未満の場合、その効果が十分でなく、1.25%を超えると過度の焼入れ性により膜状のフェライトの生成が抑制されるため、0.50%以上1.25%以下とする。
【0040】
以上が本発明鋼における基本的な成分組成及びパラメータであるが、所望する特性を向上させるため、Mo,Cu、Ni,V,Ti,Caを単独または複合添加することが可能である。
【0041】
Mo:0.02%以上0.3%以下、Cu:0.1%以上0.6%以下の一種または二種
Moは強度を向上させ、特に厚肉材で有効なため添加する。0.02%未満ではその効果が十分でなく、0.3%を超えると溶接性及び溶接熱影響部の靭性が著しく劣化するため0.02%以上0.3%以下とする。Cuは強度を向上させるため添加する。
【0042】
0.1%未満ではその効果が十分でなく、0.6%を超えて添加するとCu割れの懸念が高まるため0.1%以上0.6%以下とする。
【0043】
Ni:0.1%以上0.5%以下
Niは靭性を向上させるため添加する。0.1%未満ではその効果が十分でなく、0.5%を超えると鋼材コストの上昇が著しいので0.5%以下とする。
【0044】
V:0.01%以上0.08%以下
Vは焼戻し時、炭化物として析出し、強度を向上させるため添加する。0.01%未満ではその効果が十分でなく、0.08%超えでは著しいV炭化物の析出強化により靭性が劣化するため0.01%以上0.08%以下とする。
【0045】
Ti:0.005%以上0.02%以下、Ca:0.001%以上0.004%以下の一種又は二種
Ti、Caは母材靭性並びに溶接熱影響部の靭性を向上させるため添加する。Tiは圧延加熱時あるいは溶接時、TiNを生成しオーステナイト粒径を微細化する。
【0046】
0.005%未満ではその効果が十分でなく、0.02%を超えて添加すると圧延時にTiNbの複合炭化物が析出し、焼戻し時のNb炭化物の析出量が不足するようになり強度低下が生じるため、0.005%以上0.02%以下とする。
【0047】
CaはCa硫化物として鋼中に存在し、圧延加熱時あるいは溶接時、オーステナイト粒径を微細化する。0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.004%を超えて添加すると多量のCa硫酸化物により清浄度を著しく劣化させるため、0.001%以上0.004%以下とする。
【0048】
更に本発明ではB,O、P,Sを以下の範囲に規制することが望ましい。
【0049】
B:0.0002%以下、O:0.001%以上0.004%以下
Bは本発明では不純物元素として扱う。焼入れ時、固溶Bとして存在すると旧オーステナイト粒界における膜状フェライトの生成が抑制されるため溶解原料の選別などにより0.0002%以下に規制する。Oは不可避不純物であるが、0.001%未満とすることは製造コストが高価となり、0.004%を超えると多量のCa硫酸化物が集合し、清浄度を劣化させるため、0.001%以上0.004%以下とする。
【0050】
P≦0.010%、S≦0.002%
P,Sは不純物元素で、P≦0.010%、S≦0.002%とした場合、中央偏析が軽減され、板厚中央の靭性及び溶接性を向上させる。
【0051】
2.製造条件
焼入れ温度:Ar3以上
所定の強度、靭性が得られる焼入れ性を確保するため、焼入れ時の組織をオーステナイト単相とすることが必要であり、焼入れ温度をAr3以上とする。Ar3は例えばAr3=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Moとして求められる。
【0052】
本発明では成分、板厚に応じた更に適切な焼入れ条件として、焼入れ時の加熱温度をTmin.(℃)〜Tmax.(℃)とすることが可能である。
【0053】
但し、Tmin.(℃)=(6770/(2.26−log(0.005C)))−373+2t
Tmax.(℃)=910+2t
t:板厚(mm)
本発明が対象としているNb含有鋼では、強度を確保するため、板厚の増大に応じて、焼入れ時の加熱温度を高くし、Nb固溶量を増加させ、焼入れ性の増大と焼戻し時のNb炭窒化物を増加させること、及びNb含有量が比較的少なく、C含有量が多い場合はNb固溶量が減少するため、やはり焼入れ時の加熱温度を高くすることが望ましく、好ましくはTmin.(℃)以上とする。一方、加熱温度が高温になると、焼入れままの強度調節のための焼戻し温度が高温となり、歪時効後の靭性が劣化するため、Tmax.(℃)以下とすることが好ましい。
【0054】
焼戻し温度:400℃以上630℃以下
焼戻しは、母相の軟化による靭性回復と、Nb炭窒化物の析出強化による強度―靭性バランスの向上を目的に行う。400℃未満ではその効果が明確でなく、630℃を超えると歪時効後の靭性を著しく劣化させるため、400℃以上630℃以下とする。
【0055】
【実施例】
表1に実施例に用いた供試鋼の化学成分を示す(表示しない残部は実質的にFe及び不可避不純物よりなる)。これらの化学成分を有する鋳片を加熱後、32〜100mmに圧延した。圧延後、再加熱焼入れし、その後、焼戻しを実施した。表2に製造条件、鋼板の特性を示す。
【0056】
機械的特性として強度、靭性および歪時効後の靭性を求めた。引張り試験は1/4tより、採取したJIS14A号(14φ)試験片を用いた試験とした。
【0057】
衝撃試験は、1/4tより長手方向が圧延方向と直角になるように採取した2mmVノッチシャルピー衝撃試験片(JIS4号標準試験片)を用いた試験とした。歪時効後の靭性は板状の試験片に、5%引張り予歪を付与し、250℃で1時間の時効処理後、引張方向に2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、試験を行った。
【0058】
以下、実施例及び参考例について詳述する。
表1における鋼種A,B,E,F,Gは請求項1乃至5何れかに記載の発明を満足する成分組成の鋼で、鋼種H〜Jは各々の成分、Pcm,Ceq(WES),又はSi+3Crの何れかの規定が発明の範囲外となっている。また、表1の鋼種C,Dは参考例に対応する成分組成の鋼を示す。表2における鋼番1,2,5,6,7は夫々鋼種A,B,E,F,Gを用いた製造例で請求項1乃至5の何れかに記載の発明の実施例となっている。また、表2における鋼番3,4は夫々鋼種C,Dを用いた製造例を示す。
【0059】
歪時効後のvTsは−40℃以下、歪時効の前後でのvTsの変化は小さく、良好な耐歪時効脆化性が得られている。鋼番8〜11は、焼入れ焼戻し条件が請求項1乃至5の何れかに記載の発明の範囲外で強度又は歪時効後の靭性に劣っている。鋼番12〜14は鋼種H〜Jによる製造例で、成分組成が本発明の範囲外であり、耐歪時効脆化性に劣っている。
【0060】
【表1】
Figure 0003823628
【0061】
【表2】
Figure 0003823628
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、再加熱焼入れ時に、旧オーステナイト粒界に膜状のフェライトが生成され、実質的な粒界面積が増大されるため、焼戻しにおいて析出するセメンタイトに集中する歪が小さく、歪時効後の靭性に優れると共に、溶接性に優れる60キロ級再加熱焼入れ焼戻し鋼の製造方法の提供が可能で、産業上その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】強度及び歪時効前後のvTsに及ぼす焼戻し温度の影響を模式的に示す図

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.1〜0.5%、Mn:1.2〜1.8%、Cr:0.1〜0.5%、Nb:0.01〜0.05%、sol.Al:0.002〜0.07%、N:0.001〜0.004%を含み、且つPcm≦0.20%、Ceq(WES)≦0.42%、0.50%≦Si+3Cr≦1.25%、B:0.0002%以下を満たし、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を、焼入れ時の加熱温度をT min. (℃)〜T max. (℃)とし、Ar3以上より再加熱焼入れ後、400〜630℃で焼戻すことを特徴とする溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
    但し、 min. (℃)=(6770/(2.26−log(0.005C)))−373+2tT max. (℃)=910+2t
    t:板厚(mm)
    Pcm=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B,
    Ceq(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14とする。
  2. 鋼組成として、更に質量%でMo:0.02〜0.3%、Cu:0.1〜0.6%の一種または二種を含有する請求項1記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
  3. 鋼組成として、更に質量%でNi:0.1〜0.5%を含有する請求項1又は2記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
  4. 鋼組成として、更に質量%でV:0.01〜0.08%を含有する請求項1乃至3の何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
  5. 鋼組成として、更に質量%でTi:0.005〜0.02%、Ca:0.001〜0.004%の一種または二種を含有する請求項1乃至4の何れかに記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
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