JP3165917B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物

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JP3165917B2 JP28422689A JP28422689A JP3165917B2 JP 3165917 B2 JP3165917 B2 JP 3165917B2 JP 28422689 A JP28422689 A JP 28422689A JP 28422689 A JP28422689 A JP 28422689A JP 3165917 B2 JP3165917 B2 JP 3165917B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関
し、さらに詳しくは、優れた耐熱性、耐衝撃性、難燃性
を維持したまま機械的特性を向上させたポリアリーレン
スルフィド樹脂組成物に関する。
[従来の技術および発明が解決すべき課題] 従来から、耐熱性や難燃性に優れたポリフェニレンス
ルフィド(ホモ−PPS)等のポリアリーレンスルフィド
に対し、その機械的特性を改善するために、ガラス繊維
を配合することが行なわれている。
しかしながら、この種ポリアリーレンスルフィド樹脂
組成物については近年ますますその耐衝撃性の要求が高
まり、従来の樹脂組成物の有する耐衝撃性ではその要求
に応えることができない。
そこでこの耐衝撃性を改善するため、エラストマーを
配合することも行なわれているが、耐衝撃性は改善され
ても、樹脂組成物の機械的特性が低下し、耐熱性や難燃
性も低下してしまう。
一方、特開昭61−207462号公報には、アミノ基やアミ
ド基を含有するポリフェニレンスルィドに熱可塑性エラ
ストマー、さらに必要に応じて無機充填剤を配合した樹
脂組成物が開示されているが、この樹脂組成物は耐熱
性、剛性などが著しく劣るものである。
なお、無機充填剤は一般にマトリクス樹脂に対する濡
れ性が劣り、マトリクス樹脂がどのようであれ、マトリ
クス樹脂に無機充填剤を単に配合しただけでは、初期の
強化効果を得ることができない。
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので
ある。
すなわち、本発明の目的は、優れた耐熱性、剛性、難
燃性等を損ねることなく耐衝撃性、曲げ強度等の機械的
特性を向上せしめた樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、耐衝撃性にすぐれた組成
物を得ることができ、他の材料との濡れ性ないし接着性
を改良することが出来る原料樹脂組成物を提供すること
にある。
[課題を解決するための手段] 前記目的を達成するための請求項1の発明は、アミノ
基および/またはアミド基を含有するコモノマーを共重
合してなるアミノ基および/またはアミド基を含有する
ポリアリーレンスルフィドと、酸、酸無水物、および酸
ハライドから選ばれると共に、一分子内に、前記アミノ
基またはアミド基と反応可能な二以上の官能基を有する
化合物(但し、高分子化合物を除く。)とを含有するこ
とを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物で
あり、 請求項2に記載の発明は、アミノ基および/またはア
ミド基を含有するコモノマーを共重合してなるアミノ基
および/またはアミド基を含有するポリアリーレンスル
フィドと、酸、酸無水物、および酸ハライドから選ばれ
ると共に、一分子内に、前記アミノ基またはアミド基と
反応可能な二以上の官能基を有する化合物(但し、高分
子化合物を除く。)と、前記化合物と反応する官能基を
有するシラン系カップリング剤で処理された無機充填剤
とを含有することを特徴とするポリアリーレンスルフィ
ド樹脂組成物である。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
(ポリアリーレンスルフィド) 本発明で用いるポリアリーレンスルフィドは、その分
子中にアミノ基および/またはアミド基を含有する。
このアミノ基および/またはアミド基は、ポリマー主
鎖中に存在しても良いし、また分岐鎖中に存在しても良
い。
前記アミノ基としては、次式(I) で表わされ、アミド基としては次式(II) で表わされる。ただし、R1、R2、R3、R4は水素原子、ま
たはアルキル基であり、互いに同一であっても相違して
も良い。
R1〜R4で表わされるアルキル基としては、たとえばメ
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが好まし
い。
いずれにしても、本発明においては、通常、アミノ基
は−NH2であり、アミド基は−CONH2である。
このアミノ基および/またはアミド基含有成分は、共
重合成分としてポリアリーレンスルフィドに導入され
る。この共重合成分の含有量は、通常0.1〜50モル%、
好ましくは0.3〜20モル%、より好ましくは1〜10モル
%である。
なお、この場合に、ポリアリーレンスルィドは、アミ
ノ基および/またはアミド基含有共重合体とポリアリー
レンスルフィド単独重合体との混合物であってもよい。
この場合の含有量は、混合物全体中の共重合成分のモル
%を意味する。
この含有量が前記範囲内にあるとき、このポリアリー
レンスルフィドは、本発明における後述の特定の化合物
と反応することにより、優れた接着性もしくは濡れ性を
発揮することになる。また、前記含有量が0.1モル%未
満であると、ポリアリーレンスルフィドは、たとえ後述
する特定の化合物と反応することができたとしても接着
性もしくは濡れ性が改善されないことがあり、50モル%
を超えると、それに見合う濡れ性の向上の得られないこ
とがある。
このようにアミノ基および/またはアミド基を有する
ポリアリーレンスルフィドは、ASTM D−1238(316、
5℃、荷重5Kg)に準拠して測定したメルトフロレート
が通常10〜10,000g/10分であり、用途に応じて種々の分
子量のポリアリーレンスルフィドが採用される。たとえ
ば、射出成形用のポリアリーレンスルフィドの場合、そ
のメルトフロレートは、20〜2,000g/10分であるのが好
ましい。
また本発明におけるポリアリーレンスルフィドは、そ
の対数粘度数[ηinh]が通常0.1〜0.8、好ましくは0.1
5〜0.6である。前記対数粘度数[ηinh]が前記範囲内
にあると、機械的強度に優れたポリアリーレンスルフィ
ド樹脂組成物が得られる。
本発明におけるポリアリーレンスルフィドは未架橋ポ
リアリーレンスルフィドおよび一部架橋もしくは分岐し
たポリアリーレンスルフィドのいずれであっても良く、
また、それらの混合物であっても良い。
アミノ基および/またはアミド基含有のポリアリーレ
ンスルフィドは、アミノ基および/またはアミド基を含
有するコモノマーを共重合させる各種の方法を採用する
ことにより、得ることができる。
前記コモノマーとして、たとえばモノクロルアニリ
ン、ジクロルアニリン、N−アルキルモノクロルアニリ
ン、N−アルキルジクロルアニリンなどの、クロル置換
されたアニリン類、クロルアセトアニリド等のクロル置
換されたアセトアニリド類、ジクロルベンズアミド等の
クロル置換されたベンズアミド類を共重合することによ
って導入される。
前記コモノマーを使用する重合方法として、たとえば
p−ジクロルベンゼンと、前記アミノ基および/または
アミド基を含有するコモノマーとを、硫黄と炭酸ソーダ
との存在下に重合させる方法、p−ジクロルベンゼンと
アミノ基および/またはアミド基を含有するコモノマー
との極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは水酸化ナトリ
ウムと水酸化ナトリウムまたは硫化水素と水酸化ナトリ
ウムとの存在下に重合させる方法、N−メチルピロリド
ン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラ
ン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロ
ルベンゼンおよび前記アミノ基および/またはアミド基
を含有するコモノマーとを反応させる方法などを挙げる
ことができる。この際、重合度を調整するために、カル
ボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩、塩化リチウムな
どのアルカリ金属ハロゲン化物などの重合助剤を添加し
たり、水酸化アルカリを添加しても良い。
このような方法により、アミノ基および/またはアミ
ド基を有するポリアリーレンスルフィドは、アミノ基お
よび/またはアミド基を含有する共重合成分として、ア
ミノ基置換フェニレンスルフィド結合 [ただし、R1およびR2は前記と同様の意味を表わ
す。]、アミド基置換フェニレンスルフィド結合 [ただし、R3およびR4は前記と同様の意味を表わ
す。]、その外に種々のアミノ基置換アリーレンスルフ
ィド結合、アミド基置換アリーレンスルフィド結合、ア
ミノ基置換アルキレンスルフィド結合、アミド基置換ア
ルキレンスルフィド結合等をポリマー中に有することと
なる。
なお、本発明におけるポリアリーレエンスルフィド
は、アミノ基および/またはアミド基を有するコモノマ
ーに由来する共重合成分の外に、 (ただし、R5はアルキル基、ニトロ基、フェニル基、ア
ルコキシ基、カルボン酸基またはカルボン酸の金属塩基
を示す)、 などを含有しても良い。
(酸、酸無水物、酸ハライド) 請求項1のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物で
は、前記アミノ基および/またはアミド基を有するポリ
アリーレンスルフィド以外に、酸、酸無水物、および酸
ハライドから選ばれるとともに、一分子内に、前記アミ
ノ基またはアミド基と反応可能な二つ以上官能基を有す
る化合物(以下、単に特定化合物と称することがあ
る。)が用いられる。
これらの特定化合物の官能基は、ポリアリーレンスル
フィドのアミノ基やアミド基と反応する限りにおいて特
に制限がないのであるが、代表的な官能基として、−CO
OH、−COX(ただし、Xはハロゲン原子を示す。)、−
C(=O)OC(=O)−(酸無水物基)を挙げることが
できる。
また、前記特定化合物は前記官能基をその分子中に少
なくとも二個有することが重要である。少なくとも二個
の官能基の内その一個の官能基は、ポリアリーレンスル
フィド中のアミノ基および/またはアミド基と反応し、
残る一個の官能基が、濡れ性もしくは接着性の発現に大
きく寄与することになる。
前記のような官能基を有する特定化合物は次の一般式
で表わすことができる。
A−R6−B この一般式においてAおよびBは−COOH、−COXまた
は次式 で表わされる酸無水物基を示し、AおよびBは互いに同
一であっても相違していてもよく、R6はアルキル基また
は芳香族炭化水素基を示す。またXはハロゲン原子を示
す。
前記一般式で表わされる特定化合物の代表例として、
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン
酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン
酸、1,9−ナノメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチ
レンジカルボン酸、1,11−ウンデカメチレンジカルボン
酸、1,12−ドデカメチレンジカルボン酸、1,13−トリデ
カメチレンジカルボン酸、1,14−テトラデカメチレンジ
カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等
の、一般式HOOC−R7−COOH(ただし、R7はアルキル基ま
たは芳香族炭化水素基を表わす。)で表わされるジカル
ボン酸、塩化フタロイル等の、一般式XC(=O)−R8
C(=O)X(ただし、R8はアルキル基または芳香族炭
化水素基を表わす。)で表わされるジカルボン酸ハロゲ
ン化物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテ
トラカルボン酸二無水物、シクロペンタンカルボン酸二
無水物、ピロメリット酸無水物、3,3′,4,4′−ベンゾ
フェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベ
ンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′
−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′
−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス
(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2
−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水
物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無
水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二
無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタ
ン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタ
ン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタ
ン二無水物、4,4′−(p−フェニレンジオキシジフタ
ル酸二無水物、4,4′−(m−フェニレンジオキシ)ジ
フタル酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボ
ン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸
二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無
水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、
3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,
7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−
フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等の、次式 (ただし、R9は飽和脂肪属炭化水素基または芳香族炭化
水素基を表わす。)等のジカルボン酸二無水物を挙げる
ことができる。
前記各種の特定の化合物の中でもジカルボン酸二無水
物が好ましく、特に無水ピロメリット酸が好ましい。
これらの特定化合物はその一種を単独で使用すること
もできるし、またその二種以上を併用することもでき
る。
(無機充填剤) 本発明で使用する無機充填剤は、前記特定の化合物が
有する官能基と反応可能な官能基を有するシラン系カッ
プリング剤で表面処理されてなる。
このように無機充填剤に表面処理を施すと、本発明の
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を調製する際、前
記ポリアリーレエンスルフィドのアミノ基および/また
はアミド基と、前記特定の化合物の官能基と、無機充填
剤表面に付与された官能基とが反応しあい、結果的に単
に各構成成分間の濡れ性が改善されるだけでなく、特定
の化合物を介して前記ポリアリーレンスルフィドと無機
充填剤とが結合し、その結果、得られるポリアリーレン
スルフィド樹脂組成物の機械的特性が改善され、本発明
の目的を達成することができるものと考えられる。
このような表面処理をしない無機充填剤、あるいは上
記以外の表面処理剤で処理した無機充填剤では、本発明
の効果を奏することはできない。
上述した無機充填剤を表面処理するのに用いられるシ
ラン系カップリング剤は、前記特定の化合物中の酸、酸
無水物、酸ハライドと反応する官能基、たとえば、アミ
ノ基、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、イソシアネ
ート基、ビニル基、ハロゲンなどを有するものである。
具体的な例としては、3−アミノプロピルトリエトキ
シシラン、r−(2−アミノエチル)アミノプロピルト
リメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルメトキシシ
ラン、(3−メルカプトプロピル)メチルジメトキシシ
ラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
(3−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メタク
リロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキ
シシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラ
ン)、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3
−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロ
ピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのシラン系カップリング剤は、一種単独で使用
することができるし、二種以上を併用することもでき
る。
前記無機充填剤としては、たとえばガラス繊維、炭素
繊維、金属繊維、アラミド繊維、繊維状チタン酸カリウ
ム、アスベストおよび炭化ケイ素や窒化ケイ素等を初め
とする各種のウイスカー等の繊維状無機充填剤、グラフ
ァイト、炭カル、マイカ、シリカ、チッ化ホウ素、硫酸
バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロ
フィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、
マイカ、雲母、ネフェリンシナイト、フェライト、アタ
ルパルジャイト、ウオラストナイト、ケイ酸カシウム、
炭酸マグネシウム、ドロマイト、三酸化アンチモン、酸
化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、二硫
化モリブデン、黒鉛、石膏、ガラス粉、ガラスビーズ、
石英、石英ガラス、鉄、亜鉛、銅、アルミニウム、ニッ
ケル等の金属粉などを挙げることができる。
前記各種の無機充填剤の中でも繊維状無機充填剤が好
ましく、特にガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維を使用する場合、その平均繊維径として
は、通常20μm以下であり、特に5〜14μmであること
が望ましく、そのアスペクト比としては通常5〜500、
特に10〜300であるのが好ましい。
なお、前記各種の無機充填剤は、一種単独で使用して
もよいし、あるいは二種以上を併用してもよい。
二種以上の無機充填剤を使用する場合には、前記繊維
状無機充填剤と他の無機充填剤とを併用するのが好まし
い。このような併用をする場合、繊維状無機充填剤好ま
しくはガラス状繊維を無機充填剤全量に対して少なくと
も5重量%、好ましくは10重量%以上を使用するのが望
ましい。
なお、ガラス繊維を併用する場合の他の無機充填剤は
必ずしも、シラン系カップリング剤で処理されていなく
てもよい。
上記シラン系カップリング剤で無機充填剤を表面処理
するには、このカップリング剤またはこれを含む溶液中
に無機充填剤を浸漬するか、あるいはカップリング剤ま
たはこれを含む溶液を無機充填剤の表面に吹き付けるか
して、カップリング剤を無機充填剤の表面に付着させれ
ばよい。
(ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物) 請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成
物は、アミノ基および/またはアミド基を含有するコモ
ノマーを共重合してなるアミノ基および/またはアミド
基を含有するポリアリーレンスルフィドと、酸、酸無水
物、および酸ハライドから選ばれると共に、一分子内
に、前記アミノ基またはアミド基と反応可能な二以上の
官能基を有する化合物(但し、高分子化合物を除く。)
とを含有してなり、請求項2に記載のポリアリーレンス
ルフィド樹脂組成物は、アミノ基および/またはアミド
基を含有するコモノマーを共重合してなるアミノ基およ
び/またはアミド基を含有するポリアリーレンスルフィ
ドと、酸、酸無水物、および酸ハライドから選ばれると
共に、一分子内に、前記アミノ基またはアミド基と反応
可能な二以上の官能基を有する化合物(但し、高分子化
合物を除く。)と、前記化合物と反応する官能基を有す
るシラン系カップリング剤で処理された無機充填剤とを
含有してなる。
これらの配合量については、次のとおりである。
一分子内に、アミノ基および/またはアミド基と反応
する二つ以上の官能基を含む前記化合物の配合量は、ア
ミノ基および/またはアミド基を含むポリアリーレンス
フィドの重量、またはこれと後述のホモ−ポリアリーレ
ンスルフィドとの合計量に対し、通常0.01〜5重量%、
好ましくは0.05〜3重量%である。
この配合量が0.01重量%未満であると、アミノ基およ
びアミド基を有するポリアリーレンスルフィドとこの特
定化合物とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組
成物にあってはその接着性もしくは濡れ性が不十分にな
ることがあり、また、アミノ基およびアミド基を有する
ポリアリーレンスルフィドとこの特定化合物と前記化合
物と反応する官能基を有するシラン系カップリング剤で
処理された無機充填剤とを含有するポリアリーレンスル
フィド樹脂組成物にあってはその機械的特性の向上が見
られないことがある。また、この配合量が5重量%を超
えると、配合量の増加に見合う効果が得られないことが
ある。
また、無機充填剤の配合量は、アミノ基および/また
はアミド基を含むポリアリーレンスルフィドの重量、ま
たはこれと後述のホモ−ポリアリーレンスルフィドと前
記特定の化合物と無機充填剤との合計量に対し、80〜5
重量%、好ましくは70〜10重量%、より好ましくは60〜
20重量%である。
無機充填剤の配合量が前記範囲内にあると、ポリアリ
ーレンスルフィド樹脂組成物の耐熱性や剛性を低下させ
ることなく、その耐衝撃性、曲げ強度などの機械的特性
の向上を図ることができ、80重量%を超えると樹脂成分
の含有量が不足して混練性、成形性が低下し、また、無
機充填剤の配合量が5重量%未満であると無機充填剤を
配合することによる耐熱性や補強効果が得られないこと
がある。
本発明においては、アミノ基および/またはアミド基
を含有する前記ポリアリーレンスルフィドを配合する
際、直鎖もしくは分岐状のホモ−ポリアリーレンスルフ
ィドを併用することができる。
この直鎖または分岐状ホモ−ポリアリーレンスルフィ
ドとしては、 単位を80モル%以上含有するものが好ましく、メルトフ
ロレートが5〜10,000である広範囲の分子量を有するも
のから選ぶことができる。
このホモポリアリーレンスルフィドを併用する場合、
その配合量は、アミノ基および/またはアミド基を含有
するポリアリーレンスルフィドと直鎖状または分岐状ホ
モ−ポリアリーレンスルフィドとの合計に対して99重量
%以下、好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80
重量%以下である。
本発明では、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に
諸特性を付与するために、各種重合体やエラストマー等
を、前記官能基を有するポリアリーレンスルフィドに適
宜に配合することができる。
この重合体またはエラストマーとしては、たとえばエ
チレン、ブチレン、ペンテン、ブタジエン、イソプレ
ン、クロロプレン、スチレン、α−メチルスチレン、酢
酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、(メタ)
アリロニトリルなどの単独重合体または共重合体、ナイ
ロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイ
ロン46等のポリアミド、ポリウレタン、ポリアセター
ル、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリルサル
ホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリフ
ェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ
イミド、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹
脂、ポリアリールエーテル、ポリスルフィドなどの単独
重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフ
ト共重合体、前記以外のポリエステル、エラストマーな
どを挙げることができる。
これらも一種単独で使用することができるし、ニ種以
上を併用することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を調製
する際、各配合成分の混合順序については特に制約を受
けない。特に、本願請求項1に記載のポリアリーレンス
ルフィド樹脂組成物については、アミノ基および/また
はアミド基を含有するポリアリーレンスルフィドと、
酸、酸無水物、および酸ハライドから選ばれると共に、
一分子内に、前記アミノ基またはアミド基と反応可能な
二以上の官能基を有する化合物とを各種の手段により混
合することができ、その混合の際にポリアリーレンスル
フィドにおけるアミノ基および/またはアミド基と前記
特定の化合物中の官能基とが反応させることまでは要求
されない。
請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成
物は、それを所定の対象物と組み合わせるときに、前記
ポリアリーレンスルフィド中のアミノ基および/または
アミド基と前記特定の化合物中の官能基とが反応してポ
リアリーレンスルフィド樹脂組成物の接着性もしくは濡
れ性が発揮されれば良いのである。また、請求項2に記
載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物にあっては、
官能基を有する前記特定の化合物とアミノ基および/ま
たはアミド基を含むポリアリーレンスルフィドとを先に
反応せしめてからシランカップリング処理をした無機充
填剤と混練する方法、各配合成分を同時に混練する方
法、官能基を有する特定の化合物とシラン系カップリン
グ剤で処理された無機充填剤とを先に反応させてから残
りの成分を混練する方法によって、ポリアリーレンスル
フィド樹脂組成物を調製することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を調製
するのに採用する混合手段としては、均一な混合物が得
られるのであれば特に制約がなく、各種の混合方法を用
いることができる。
その具体例としては、たとえば、リボンブレンダー、
タンブルミキサー、ヘンシェルミキサー、オープンロー
ル、バンバリミキサー、ヘンシェルミキサー、単軸スク
リュー押出機、2軸スクリュー押出機、単軸往復動スク
リュー混練機等により行なうことができる。
このようにして得られるポリアリーレンスルフィド樹
脂組成物は、たとえば射出成形、圧縮成形、押出成形等
の各種の成形法により種々の成形品に成形することがで
きるし、各種のシーラントやコーティング剤として使用
することもできる。たとえば、本発明のポリアリーレン
スルフィド樹脂組成物を平板、フィルム、シート等に成
形し、このような板状体と他の板状体とで合板や積層体
を形成することもできるし、あるいは、共押出成形によ
り多層のフィルムやシートを成形することもできる。
また、前記各種の成形法により、本発明のポリアリー
レンスルフィド樹脂組成物は、繊維、パイプ、ロッド、
フィルム、シート、軸受等の各種の、機械分野、電気分
野、電子分野、その他の分野における成形品にすること
ができる。
[実施例] 次に本発明を実施例と比較例とに基いてさらに具体的
に説明する。
(実施例1) アミノ基含有ポリフェニレンスルフィドの製造 攪拌機を備えた反応槽に含水硫化ナトリウム(Na2S・
5水塩)833モルとN−メチルピロリドン(NMP)510
を仕込み、減圧下に145℃に保ちながら1時間脱水処理
した。次いで反応系を45℃に冷却した後、p−ジクロロ
ベンゼン833モルとジクロロアニリン(DCA)41.85モル
を加え、240℃で5時間反応させた。しかるのち反応槽
を冷却して内容物をろ別し、次いでケーキを熱水で3回
洗浄したのちに170℃のNMPで1回、水で3回の洗浄を行
ない、さらにアセトンで1回洗浄してから185℃で乾燥
し、78kgの白色をした顆粒状のアミノ基含有ポリフェニ
レンスルフィド(以下、DCA−PPSと略称する。)を得
た。
このDCA−PPSはアミノ基の含有率が2.5モル%、対数
粘度数[ηinh]が0.3、メルトフロレートが71g/10分で
あった。
ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の調製 次に上記DCA−PPS 720gと無水ピロメリット酸を樹脂
重量あたり0.17%と3−アミノプロピルトリエトキシシ
ランで処理したガラス繊維(13mmφx3mm、旭ファイバー
ガラス社製、CSO3MAFT525)とを、ガラス繊維の含有率
が40重量%になるように混合し、2軸押出機で溶融混合
してペレットを製造した。
続いて、このペレットをシリンダー温度320℃、金型
温度135℃の条件で射出成形して試験片を製造し、この
試験片のアイゾット衝撃強度と曲げ強度と熱歪温度(HD
T)とシャルピー衝撃強度とを測定した。
結果を第1表に示す。
なお、上記DCA−PPSと無水ピロメリット酸とを溶融混
合して別途に調製したポリアリーレンスルフィド樹脂組
成物は、これにガラス繊維を加えて組成物としても同様
な結果が得られた。
(実施例2) 実施例1の無水ピロメリット酸の配合量を0.33重量%
にしたこと以外は前記実施例1と同様にして樹脂組成物
の試験片を製造し、その物性を測定した。
結果を第1表に示す。
(実施例3) 実施例1の無水ピロメリット酸の配合量を0.5%にし
たこと以外は前記実施例1と同様にして樹脂組成物の試
験片を製造し、その物性を測定した。
結果を第1表に示す。
(比較例1) 実施例1において、無水ピロメリット酸を配合しなか
ったこと以外は前記実施例1と同様にして樹脂組成物の
試験片を製造し、その物性を測定した。
結果を第1表に示す。
(比較例2) 実施例1とDCA−PPSの代わりにホモポリフェニレンス
ルフィド(直鎖状、対数粘度数[ηinh]0.26)を用い
たこと以外は比較例1と同様にして樹脂組成物の試験片
を製造し、その物性を測定した。結果を第1表に示す。
(実施例4) アミド基含有ポリフェニレンスルフィドの製造 ジクロロアニリンの代りに2,5−ジクロルベンズアミ
ド41.85モルを使用し、230℃で5時間反応させた以外は
前記実施例1と同様に実施した。
得られたこのアミド基含有ポリフェニレンスルフィド
は、アミド基の含有率が5モル%、対数粘度数
[ηinh]が0.28、メルトフロレートが80g/10分であっ
た。
ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の調製 前記アミド基含有ポリフェニレンスルフィドを使用
し、前記実施例2と同様にしてポリフェニレンスルフィ
ド樹脂組成物の試験片を製造し、その物性を測定した。
結果を第1表に示す。
なお、本発明の実施例と比較例とで得られた成形品の
破断面を電子顕微鏡で観察したところ、明らかに、樹脂
とガラス繊維との間の接着性に差が見られた。
[発明の効果] 請求項1に記載の発明によると、このポリアリーレン
スルフィド樹脂組成物と組み合わせる対象物に対して良
好な接着性もしくは濡れ性を有する組成物を提供するこ
とができる。したがって、たとえば、請求項1に記載の
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物と各種の部材を組
み合わせて各種の複合材料たとえば合板や請求項2に記
載の樹脂組成物を形成することができる。
請求項2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成
物は、アミノ基および/またはアミド基を含有するポリ
アリーレンスルフィドと、酸、酸無水物、および酸ハラ
イドから選ばれると共に、一分子内に、前記アミノ基ま
たはアミド基と反応可能な二以上の官能基を有する化合
物と、前記化合物と反応する官能基を有するシラン系カ
ップリング剤で処理された無機充填剤とを含有するの
で、樹脂と無機充填剤との接着性もしくは濡れ性が向上
し、その結果、ポリアリーレンスルフィドが本来備えて
いる熱歪温度および不燃性を損なうことなく、機械的特
性を大きく向上させることができる。
したがって、このポリアリーレンスルフィド樹脂組成
物から射出成形その他の成形法で得られる成形品は、機
械、電気、電子等の工業分野に重要な貢献をするもので
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 81/00 - 81/02 C08K 5/09 - 5/098 C08K 9/04 - 9/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アミノ基および/またはアミド基を含有す
    るコモノマーを共重合してなるアミノ基および/または
    アミド基を含有するポリアリーレンスルフィドと、酸、
    酸無水物、および酸ハライドから選ばれると共に、一分
    子内に、前記アミノ基またはアミド基と反応可能な二以
    上の官能基を有する化合物(但し、高分子化合物を除
    く。)とを含有することを特徴とするポリアリーレンス
    ルフィド樹脂組成物。
  2. 【請求項2】アミノ基および/またはアミド基を含有す
    るコモノマーを共重合してなるアミノ基および/または
    アミド基を含有するポリアリーレンスルフィドと、酸、
    酸無水物、および酸ハライドから選ばれると共に、一分
    子内に、前記アミノ基またはアミド基と反応可能な二以
    上の官能基を有する化合物(但し、高分子化合物を除
    く。)と、前記化合物と反応する官能基を有するシラン
    系カップリング剤で処理された無機充填剤とを含有する
    ことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成
    物。
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