本考案の実施形態に係るダイヤル式錠は、図4の分解斜視図に示すような各構成要素よりなる。以下、本実施形態に係るダイヤル式錠の構成を説明する。このダイヤル式錠は、内部奥まで異物が浸入するのを防止するために、カバー部材を箱体内に設けたことを特徴としている。本実施形態に係るダイヤル式錠は、ダイヤル数字の組合せが自由に設定されて記憶される自由設定ダイヤル状態と、ダイヤル数字の組合せが固定されて記憶されている固定ダイヤル状態とを、切換操作によって使い分けできるようになっている。まず、図4乃至図13を参照してダイヤル式錠の全体構成を説明する。
図4に示すように、ダイヤル式錠は、箱体10内に、支持軸1とドラム2とダイヤルリング3とカム6と押動レバー7とフォーク状レバー8とシーソーレバー14と連結レバー11と切換部材9とを備えて構成されている。
支持軸1は、箱体10に対してコイルスプリング1cによる付勢力によって一方(図において左方向)に移動可能に支持された軸である。図5に示すように、ドラム2は、支持軸1に対し軸周りに回転可能で軸方向に摺動不可能に支持され、ダイヤルリング3から露出した周面の一箇所に記憶用の凹部2aが形成されている。ドラム2は複数個(本実施形態では4個)設けられている。ダイヤルリング3は、各ドラム2の外周に回転可能に内周が嵌合され、各ドラム2が一方向(図において右方向)に摺動すると、その周面の軸方向一側に形成した係合突起2cが係合する係合凹部3bが内周部に形成されている。ダイヤルリング3の外周面には、ダイヤル数字(図示せず)が記載されている。ダイヤルリング3は、複数個(本実施形態では4個)設けられている。
図8に示すように、カム6は、ノブ4および鉤5と連動して回動する。カム6には、第1,第2のカム部6a,6b、およびカム6が回動しないように係合される係合部6cが形成されている。押動レバー7は、箱体10に対し回動可能に支持されている。押動レバー7は、第1のカム部6aに当接押動される一端部7aと、支持軸1をスプリング付勢力に抗して当接押動する他端部7bとを有する。フォーク状レバー8は、箱体10に回動可能に支持されている。フォーク状レバー8は、各ドラム2の記憶用の凹部2aに一斉に出没する各フォーク先端8aと、カム6の係合部6cに係合し得る反対側端8cとを有している。シーソーレバー14は、箱体10に回動可能に支持されている。シーソーレバー14は、カム6の第2のカム部6bに当接押動される一端部14aと、フォーク状レバー8の各フォーク先端8aを各ドラム2の記憶用の凹部2aに付勢力に抗して没入させフォーク先端8aと反対側端8cをカム6の係合部6cから逃がすように押動する他端部14bとを有している。シーソーレバー14は、弾性材料よりなる。連結レバー11は、押動レバー7の一端部7a側に一端部(連結孔11a(図4参照))が回動可能に支持されている。連結レバー11は、他端部に嵌合凹部11bを有している。切換部材9は、嵌合凹部11bに嵌合される偏心部9aを有し、固定ダイヤル錠に切換えるときには偏心部9aで連結レバー11と押動レバー7と支持軸1とを押動し続け、自由設定ダイヤル錠に切換えるときには偏心部9aで連結レバー11を押動しないように構成されている。
さらに、各部の細部について説明すると、支持軸1は、図4および図5に示すように、その一端部1aに形成したスプリング押部1bがコイルスプリング1c(図4参照)によって他方(図において左方向)に押動付勢されている。また、図5に示すように、支持軸1の一端部1aに形成した段部1dから他端部側に延在して円柱部1eが形成されている。この円柱部1eに4個のドラム2が回転可能に嵌合され、最後に嵌合されたドラム2が支持軸1の他端部1fから脱落しないように止輪1gで止められている。従って、前記4個のドラム2は支持軸1に対して軸周りに回転可能で、且つ軸方向に摺動不可能に支持されている。また、各ドラム2の大径部21 のダイヤルリング3から露出した外周の一部(ダイヤルリング3から軸方向に露出した部分)に記憶用の凹部2aが形成されており、各ドラム2の小径部22の軸方向一側(大径部21側)には、周方向に等間隔で複数の係合突起2cが形成されている(図5〜図7参照)。
前記のように、支持軸1に取付けられた各ドラム2の大径部21 の外周に、ダイヤルリング3が、記憶用の凹部2aを露出可能に、また、ドラム2の小径部22を露出可能に挿入されている(図5〜図7参照)。ダイヤルリング3の外周3aには、例えば0から9のダイヤル数字(0から9に限らず、奇数の1から9、または偶数の0から8でもかまわない。)が等間隔で記載されている。また、ダイヤルリング3の内周部には、複数の係合凹部3bが周方向に等間隔で形成されている。係合凹部3bには、ドラム2に形成された係合突起2cが係合する。係合突起2cは、ドラム2の小径部22 の軸方向一側(大径部21側)に周方向に等間隔で形成されている。従って、支持軸1と共に各ドラム2が各ダイヤルリング3の方へ、すなわち、図において右方向へ移動すると、ドラム2の係合突起2cがダイヤルリング3の係合凹部3bに係合して、ダイヤルリング3と一体にドラム2が回転するようになる。なお、ドラム2の係合突起2cがダイヤルリング3の係合凹部3bとの係合から外れると、ダイヤルリング3はドラム2と独立して別個に回転可能になる。
図6は支持軸とドラムとダイヤルリングを組み立てた詳細な説明図ある。図6(a)は支持軸1が、コイルスプリング1cによって、図において左方向に押動されて、支持軸1と共に各ドラム2が左方向に移動し、各ドラム2の外周の一部に形成した平坦部2dが回転止板柱15(図4も参照)の上端に当接している。これによって、各ドラム2の回転が止められ、各ドラム2の係合突起2cが各ダイヤルリング3の係合凹部3bとの係合から離れて、各ダイヤルリング3が各ドラム2と独立して自由に回転することができる状態にある。図6(b)は支持軸1が、コイルスプリング1cの押動付勢力に抗して、図において右方向に押動され、各ドラム2の外周の一部に形成した平坦部2dが回転止板柱15の上端から離れて回転できる状態になり、各ドラム2の係合突起2cが各ダイヤルリング3の係合凹部3bに係合し、ダイヤルリング3と共にドラム2を回転させることができる状態にある。なお、図6(a)、(b)に示すように、各ダイヤルリング3は、回転止板柱15と横移動止板柱16(図4も参照)とで挟まれているので、各ドラム2が左右に移動するときに、それにつられて各ダイヤルリング3が移動されることはない。図6(c)は図6(b)のc−c線における断面図、図6(d)は同d−d線における断面図、図6(e)は同e−e線における断面図、図6(f)は同f−f線における断面図である。
図7はダイヤル数字の自由設定の説明図であり、つまり、各ダイヤルリング3を回転させて所望のダイヤル数字の組合の設定を行う説明図である。図7の(a′)〜(c′)に示す、白三角印は今までに設定しておいたダイヤル数字、黒三角印はこれから設定しようとするダイヤル数字を示す。
図7(a)は、鉤5(図4参照)が閉錠位置に回動されたときに、解錠ができる状態に各ダイヤルリング3のダイヤル数字を揃えた状態を示す図である。鉤5が閉錠位置に回動されているときには、図8および図10に示すように、鉤5と共に回動したカム6の第1のカム部6aで押動レバー7が押動され、この押動レバー7で支持軸1が押動され、各ドラム2が各ダイヤルリング3に係合して、ダイヤルリング3と共にドラム2を回転させて、鉤5を解錠に回動できるように各ダイヤルリング3のダイヤル数字の組合せを揃えることができる。このとき、ドラム2の記憶用の凹部2aが一列に揃う。そうすると、図9の(b)に示すように、鉤5を解錠位置に回動させると、カム6の第2のカム部6bがシーソーレバー14を押動し、このシーソーレバー14がフォーク状レバー8を押動して、そのフォーク先端8aを前記一列に揃った各記憶用の凹部2aに没入させて、フォーク先端8aの反対側端8cをカム6の係合部6cに係合しないように逃がし、鉤5が解錠し得るようにカム6を回動させることができる。
図7(b)は、鉤5(図4参照)を解錠位置に回動させた状態を示す図である。鉤5を解錠位置に回動させたときには、図8(a)に示すように、押動レバー7による支持軸1の押動が解除され、各ドラム2と各ダイヤルリング3との係合が解除される。従って、各ダイヤルリング3のみを回転させることができる。
図7(c)は、各ダイヤルリング3を回転させて、所望のダイヤル数字の組合せを設定した状態を示す図である。
図7(d)は、鉤5(図4参照)が閉錠に回動された状態を示す図である。鉤5が閉錠位置に回動されたときには、カム6と押動レバー7の前記のような作用によって、支持軸1が押動されると共に、各ドラム2が各ダイヤルリング3に係合し、ダイヤルリング3と共にドラム2を回転させて、各ダイヤルリング3のダイヤル数字の組合せを解錠できない状態に変えておく。
また、図10および図11に示すように、自由設定ダイヤル錠と固定ダイヤル錠との切換機構は、コイルスプリング1cと、カム6と、押動レバー7とを有するものである。コイルスプリング1cは、支持軸1と箱体10との間に介在され、支持軸1が箱体10に対し他方(図において左方向)に移動する方向に付勢力を付与する。カム6は、ノブ4および鉤5と連動して回動し、第1のカム部6aが形成されている。押動レバー7は、箱体10に対し回動可能に支持され、第1のカム部6aに当接押動される一端部7aと、支持軸1を当接押動する他端部7bと、後述する連結レバー11に係合する連結部7dとが形成されている。
さらに、詳細に説明すると、図10は自由設定ダイヤル錠に切換えた状態を示すものであり、押動レバー7の連結部7dに、連結レバー11の一端部の連結孔11a(図4参照)が連結され、連結レバー11の他端部の嵌合凹部11bに、固定ダイヤル錠と自由設定ダイヤル錠との切換部材9の偏心部9aが嵌合されて構成されている。そして、切換部材9を自由設定ダイヤル錠側に回動すると、その偏心部9aで連結レバー11の他端部の嵌合凹部11bが押動されなくなり、押動レバー7の他端部7bで支持軸1の一端部1aの外端1hを押動し続けなくなる。従って、ノブ4によって鉤5は解錠側に回動したときには、押動レバー7の他端部7bで支持軸1の一端部1aの外端1hを押動せず、各ドラム2が各ダイヤルリング3との嵌合から離れて、各ダイヤルリング3を独立して回転させることができる(図10(b)参照)自由設定ダイヤル錠となる。
なお、図11は固定ダイヤル錠に切換えた状態を示すものであり、切換部材9を、箱体10の外から固定ダイヤル錠側に回動させると、その偏心部9aで連結レバー11の他端部の嵌合凹部11bを押し、連結レバー11を介して押動レバー7の他端部7bで支持軸1の一端部1aの外端1hを押動し続け、各ドラム2を各ダイヤルリング3に係合し続けて、常にダイヤルリング3とドラム2とが一体に回転する固定ダイヤル錠となるように構成されている。
また、切換部材9に、これを固定ダイヤル錠側、または自由設定ダイヤル錠側に切換回動させたときに、その回動位置を保持するように、切換部材9と一体に回動する突起9bが形成され、この突起9bが箱体10の底面に穿設した孔10aまたは孔10b(図13および図14参照)に嵌合するようになっている。また、切換部材9を箱体10の外から硬貨等を用いて回動することができるように、箱体10から露出させた切換部材9の端に溝9cが形成されている(図15(c)参照)。
また、図8および図9に示すように、施錠機構は、ダイヤル数字の組合せの記憶用の凹部2a(図5参照)と、カム6と、フォーク状レバー8と、シーソーレバー14とを備えて構成されている。凹部2aは、各ドラム2の外周の一部に形成されたダイヤル数字の組合せの記憶用の部位である。カム6は、ノブ4および鉤5と連動して回動し、第2のカム部6bおよび係合部6cが形成されている。フォーク状レバー8は、箱体10に対し回動可能に支持されており、記憶用の凹部2aに出没するフォーク先端8aと、係合部6cに当接する反対側端8cとが形成されている。シーソーレバー14は、箱体10に対し回動可能に支持されており、第2のカム部6bに当接押動される一端部14aと、フォーク状レバー8を付勢的に押動する他端部14bとが形成された弾性材料よりなる。
図8および図9は施錠機構を解錠状態から閉錠状態にする説明図である。図8(a),(a′)および図9(a)は、鉤5が開いた状態を示す。この状態においては、カム6の第1のカム部6aが押動レバー7を押動せず、この押動レバー7が支持軸1を押動せず、支持軸1がコイルスプリング1cによって図において左方に押動され、全てのドラム2の外周の記憶用の凹部2aが一列に揃った状態で、ドラム2の外周の一部の平坦部2dが各回転止板柱15の上端15aに当接して回転が止められている(図6参照)。図8(b),(b′)および図9(b)は、鉤5が閉錠方向に回動する途中の状態を示す。この状態においてはカム6を実線矢印で示す時計回り方向に回動して、第1のカム部6aが押動レバー7を押動し、この押動レバー7が支持軸1およびドラム2を右方へ押動し、各ドラム2を各ダイヤルリング3に係合させる。また、カム6の回動により、第2のカム部6bが、弾性材料よりなるシーソーレバー14の一端部14aを押動し、このシーソーレバー14の他端部14bがフォーク状レバー8を押動し、そのフォーク先端8aが各ドラム2の記憶用の凹部2aに嵌合する。図8(c),(c′)および図9(c)は、鉤5が閉錠方向に回動し終わった状態を示す。この状態においては、カム6の第1のカム部6aが押動レバー7を押動し、この押動レバー7が支持軸1およびドラム2を右方へ押動し続け、フォーク状レバー8は、カム6の第2のカム部6bの押動から解放され、スプリング8dで図において反時計回り方向に回動され、各フォーク先端8aが各ドラム2の外周の記憶用の凹部2aから離れている。従って、この鉤5を閉めた状態において、各ダイヤルリング3と共に各ドラム2を任意に回転させて、各ダイヤルリング3のダイヤル数字の組合せを解錠できない状態に変えておく。
なお、鉤5が閉まった状態から、鉤5を開ける場合には、前述したように、各ダイヤルリング3のダイヤル数字の組合せを解錠できる状態に合わせ、各ドラム2の外周の記憶用の凹部2aを、図7、図8(c),(c′)および図9(c)に示すように一列に揃えた状態で、鉤5と共にカム6を点線矢印(図8(c)参照)で示す反時計回り方向に回動させると、カム6の第2のカム部6bが弾性材料よりなるシーソーレバー14を介してフォーク状レバー8を押動し、その各フォーク先端8aを各ドラム2の外周の記憶用の凹部2aに嵌合させて(図8(b′)および図9(b)参照)、フォーク状レバー8を時計回り方向に回動させ、フォーク状レバー8の回動支持部8bから反対側端8cが、カム6の係合部6cとの係合から外れて、カム6と共に鉤5が解錠方向に回動可能となる。
また、鉤5が閉まった状態から、鉤5を開ける場合に、各ダイヤルリング3のダイヤル数字の組合せが解錠できるように揃っていないときには、各ドラム2の記憶用の凹部2aが一列に揃っておらず、従って、カム6の第2のカム部6bが弾性材料よりなるシーソーレバー14を介してフォーク状レバー8を押動しても、その各フォーク先端8aが各ドラム2の外周の記憶用の凹部2aに没入できないので、フォーク状レバー8が回動できなく、その反対側端8cがカム6の係合部6cに係合して、カム6と連動する鉤5を解錠方向に回動させることができない(図8(c),(c′)参照)。
また、図12および図13に示すように、ダイヤル数字の組合せの検索機構は、ダイヤル数字の組合せの検索用の凹部2b(図6も参照)と、検索カム12と、フォーク状検索レバー13とを備えて構成されている。ダイヤル数字の組合せの検索用の凹部2bは、ドラム2のダイヤルリング3から露出した小径部22 の外周の一部に形成されている。検索カム12は、挿入されたキーと連動して回動する。検索カム12には、検索カム部12bが形成されている。フォーク状検索レバー13は、箱体10に対し回動可能に支持されている。フォーク状検索レバー13は、ドラム2に形成された検索用の凹部2bに付勢力によって没入する複数の先端13bと、検索カム部12bに当接押動される後端部13aとが形成された弾性材料よりなる。フォーク状検索レバー13は、各ドラム2を回転させ複数の先端13bが前記複数の検索用の凹部2bに嵌合してドラム2の外周の一部に形成された各記憶用の凹部2aを一列に揃えるためのものである。
さらに、このダイヤル数字の組合せの検索機構を図12および図13を参照して詳細に説明する。図12は検索機構の一部を示す正面図、図13は検索機構の作動説明図である。解錠できる各ダイヤルリング3のダイヤル数字の組合せを検索する際には、箱体10の外からキーをキー孔12aに挿入して、図13(a)の状態から検索カム12を図13(b)の状態に回動すると、弾性材料よりなるフォーク状検索レバー13の後端部13aが、検索カム12の検索カム部12bで押動されて、各ドラム2の小径部22 に弾性材料よりなるフォーク状検索レバー13の各先端13bを押接する。そして、各ダイヤルリング3と共に各ドラム2を回転させたときに、フォーク状検索レバー13の各先端13bが、各ドラム2の小径部22 の外周に形成した各検索用の凹部2bに嵌合して、各ドラム2の回転が止まる。全部のドラム2の回転が止まるように全部のダイヤルリング3を回転させたときに、全部のドラム2の大径部21 の外周の一部に形成した記憶用の凹部2aが一列に揃って解錠できるように回転した後で止まる。そのときのダイヤル式錠の箱体10の窓(開口51)から見える各ダイヤルリング3の外周のダイヤル数字の組合せを見ることによって、解錠できるように設定したダイヤル数字の組合せを検索することができる。
なお、図12および図13に示すように、例えば基端部17aが箱体10の底部のボス(円い突起)10cに固定されたスプリング17の先端部17bによって、弾性材料よりなるフォーク状検索レバー13の後端部13aを押しており、フォーク状検索レバー13を図において時計回り方向に回動付勢している。また、図4に示すように、ダイヤルリング3が不用意に回転しないように、各ダイヤルリング3の外周に所定の押圧力で各先端部18aが当接するダイヤル感触バネ18が設けられている。また、図14および図15に示すように、このダイヤル式錠を取付けた扉を閉めたときに、閉められた開口の内壁に設けた凹部(図示しない)に嵌合する嵌合ローラー19が箱体10の側面に設けられている。また、図14はこの考案に係るダイヤル式錠の箱体10の蓋を外した状態の正面図であり、図15(a)はこの考案に係るダイヤル式錠の正面図で、図15(b)は同左側面図で、図15(c)は同背面図である。
図15(a)に示すように、箱体10は、箱本体部材50aと蓋部材50bとを備えている。蓋部材50bには、ダイヤルリング3の一部を箱体10の表面部から露出させるための窓となる開口51が形成されている。開口51は、ダイヤルリング3ごとにそれぞれ形成されている。開口51の内周面(開口縁部)は、ダイヤルリング3と干渉しないように、外部に露出されるダイヤルリング3の側面(軸方向端面)および外周面(箱体10から出没する位置での外周面)との間に僅かな隙間をあけるように構成されている。つまり、開口51は、ダイヤルリング3の露出部分より一回り大きい長方形状を呈している。
図5に示すように、ダイヤルリング3の軸方向の両側面には、環状の凹溝52が形成されている。凹溝52は、ダイヤルリング3の側面のうち、ドラム2が挿入される内側収容部よりも外周側で、箱体10内に収容される部分に形成されている。凹溝52は、ダイヤルリング3の両側面に形成されている。凹溝52は、ダイヤルリング3の軸方向に深さを有して形成されている。なお、凹溝52はダイヤルリング3の側面に形成されているが、図4への図示は省略している。
以上のような構成のダイヤル式錠において、本実施形態では、ダイヤルリング3の周囲にカバー部材55を設けたことを特徴とする。図3に示すように、カバー部材55は、箱体10の表面部(蓋部材50b)の内側に設けられ、開口51の内周面(開口縁部)とダイヤルリング3の側面との隙間を内側に投影した部分を覆う部材である。
以下にカバー部材55の構成を詳細に説明する。カバー部材55は弾性材料にて形成されている。カバー部材55は、図1および図2に示すように、略矩形の板状に形成されており、ダイヤルリング3の挿通用開口56が形成されている。挿通用開口56は、略長方形状を呈しており、ダイヤルリング3の個数と同様に4箇所が、間隔を隔てて互いに平行に形成されている。挿通用開口56の側部(ダイヤルリング3の軸方向に隣接する部分)が、前記隙間を投影した部分を覆う遮蔽板部57を構成する。遮蔽板部57の中間部分は、ダイヤルリング3の凹溝52に沿って円弧状に湾曲しており、円弧部58が形成されている。円弧部58以外の部分は、平らになっている。
円弧部58の幅方向両側の端縁部59(遮蔽板部57の端縁部)は、挿通用開口56に向かって延出しており、ダイヤルリング3間に配置されたときに、ダイヤルリング3の凹溝52内に入り込む(図3参照)。また、このとき円弧部58は、ドラム2の外周面を非接触で覆うように配置される(図3参照)。これによって、開口51の内周面とダイヤルリング3の側面との隙間から見える内部の部材は、カバー部材55のみとなり、ドラム2などの他の部材がカバー部材55によって遮蔽されていることとなる。挿通用開口56に向かって延出した端縁部59は、ダイヤルリング3の外周面側に立ち上がって形成され、立上り部を構成している。この立上り部は、表面が傾斜しており、凹溝52の深さ方向奥側(端縁部59の先端側)に向かうに連れて立上り高さが高くなる(外周面側に近づく)ように構成されている。円弧部58の立上り部(端縁部59)の基端部には、溝60が形成されている。溝60は、断面U字状に形成されており、立上り部で堰き止められた埃や水分などの異物を溜めて他の部分に落下するのを防止することができる。
複数の遮蔽板部57のうち隣り合うダイヤルリング3,3の間に位置する遮蔽板部57には、スリット62が形成されている。スリット62は、前記の隙間を内側に投影した部分の間に形成されている。このスリット62は、カバー部材55を装着する作業を容易に行う為に形成されており、遮蔽板部57を幅方向両側から押圧することで、スリット62が縮んで、遮蔽板部57の幅を小さくすることができる。
カバー部材55の外周部には、矩形形状の突出部63が形成されている。この突出部63は、箱体10の箱本体部材50aと蓋部材50bとで挟み込まれてカバー部材55の位置固定を行うための部位である。なお、箱本体部材50aと蓋部材50bで挟み込まれる位置は、突出部63に限定されるものではなく、他の位置に突出部を設けてもよいし、突出しない部分を挟み込むようにすれば突出部を設けなくてもよい。
以上のような構成のダイヤル式錠によれば、ダイヤルリング3の側面と箱体10の開口51の内周面との隙間から埃や水などの異物が浸入したとしても、カバー部材55によって遮蔽されるので、異物が内部の支持軸1付近に浸入し難くなる。これによって、支持軸1の回転が阻害されることなく、操作性の悪化を防止することができる。
また、本実施形態では、遮蔽板部57の端縁部59に立上り部が形成されているので、立上り部によって異物を堰き止められる。したがって、異物が、ダイヤルリング3の凹溝52の底部側に入り込みにくくなるので、より一層、支持軸1付近に浸入し難くなる。立上り部で堰き止められた異物は、表面の傾斜に沿って溝60に溜められるので、ドラム2や支持軸1側に浸入し難い。
さらに、カバー部材55は、弾性部材にて構成されており、遮蔽板部57の一部にスリット62が形成されているので、スリット62を狭くするように遮蔽板部57を押し縮めることでその幅を小さくできる。これによって、遮蔽板部57の幅は、隣り合うダイヤルリング3,3間の幅より大きくても、遮蔽板部57を装着する際にダイヤルリング3,3間に容易に挿入することができる。そして装着後は、遮蔽板部57は弾性的に元の形状に戻るので、端縁部59がダイヤルリング3の凹溝52に入り込む。
その他、本実施形態のダイヤル式錠では、支持軸1に回転自在かつ摺動不可能に各ドラム2を支持し、支持軸1と共にドラム2を一方に移動させると係合し、他方に移動させると係合が外れ回転自在となるように、外周にダイヤル数字を記載した各ダイヤルリング3が各ドラム2の外周に嵌合されているので、支持軸1と共にドラム2を一方に移動させてダイヤルリング3と係合させると、ダイヤルリング3と共にドラム2を回転させて、各ドラム2の回転位置を容易に、解錠できる状態に揃えることができる。また、支持軸1と共にドラム2を他方に移動させてダイヤルリング3との係合を外すと、各ドラム2とは独立にダイヤルリング3を回転させて、解錠できるダイヤル数字の組合せを容易に変更することができる。
また、切換部材9を固定ダイヤル錠側に切換えると、支持軸1と共にドラム2を一方に移動させ続け、ドラム2をダイヤルリング3と係合し続けて固定ダイヤル錠として使用することができる。また、切換部材9を自由設定ダイヤル錠側に切換えると、解錠できるダイヤル数字の組合せを変更するときには、支持軸1と共にドラム2が他方に移動して、各ドラム2が各ダイヤルリング3との係合から外れ、各ダイヤルリング3を各ドラム2と独立に回転させて、解錠できるダイヤル数字の組合せを容易に自由に変更設定することができる。
また、各ダイヤルリング3のダイヤル数字を予め設定した解錠できる組合せに合わせると、ドラム2の外周の一部に形成した記憶用の凹部2aを、軸に沿う方向に一列に揃えることができ、この状態において、ノブ4を回して鉤5を解錠方向に回動させると、この回動と連動するカム6の第2のカム部6bにフォーク状レバー8が押動され、その各フォーク先端8aを記憶用の凹部2aに没入させて、フォーク状レバー8の反対側端を、カムの係合部との係合から外し、鉤5を解錠方向に回動させることができる。
さらに、箱体10の外からキーをキー孔12aに挿入して、検索カム12を回動すると、弾性材料よりなるフォーク状検索レバー13が、検索カム12の検索カム部12bで押動されて、フォーク状検索レバー8の各先端を各ドラム2の小径部22に押接し、各ダイヤルリング3と共に各ドラム2を回転させたときに、フォーク状検索レバー8の各先端が、各ドラム2の小径部22の外周に形成した各検索用の凹部2bに嵌合して、各ドラム2の回転が止まり、全部のドラム2の回転が止まったときに、ダイヤル式錠の箱体10の窓(開口51)から見える各ダイヤルリング3のダイヤル数字の組合せを見ることによって、解錠できるように設定したダイヤル数字の組合せを容易に検索することができる。
以上、本考案を実施するための形態について説明したが、本考案は前記実施形態に限定されず、本考案の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、ダイヤル数字の組合せが自由に設定されて記憶される自由設定ダイヤル状態と、ダイヤル数字の組合せが固定されて記憶されている固定ダイヤル状態とを、切換操作によって使い分けできるダイヤル式錠にカバー部材55を設けた場合を例に挙げて説明したが、このようなダイヤル式錠に限定する趣旨ではない。ダイヤルリングが箱体から露出しているダイヤル式錠であれば、たとえば、ダイヤル数字の組合せが自由に設定されて記憶される自由設定式のみのダイヤル式錠にも本考案を適用できるし、ダイヤル数字の組合せが固定されて記憶されている固定式のダイヤル式錠にも本考案を適用できる。