JP3157943B2 - 基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置 - Google Patents

基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置

Info

Publication number
JP3157943B2
JP3157943B2 JP03913193A JP3913193A JP3157943B2 JP 3157943 B2 JP3157943 B2 JP 3157943B2 JP 03913193 A JP03913193 A JP 03913193A JP 3913193 A JP3913193 A JP 3913193A JP 3157943 B2 JP3157943 B2 JP 3157943B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
nitrogen gas
hard
gas
purity nitrogen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP03913193A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06248417A (ja
Inventor
正治 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP03913193A priority Critical patent/JP3157943B2/ja
Publication of JPH06248417A publication Critical patent/JPH06248417A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3157943B2 publication Critical patent/JP3157943B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基体表面の改質処理方
法およびその処理装置に関し、詳しくは金属からなる基
体表面をドライプロセスによって硬化処理することによ
り改質して、その基体の耐摩耗性および耐蝕性を向上さ
せる基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、内部にキャビティを画成する成形
面が形成された一対の金型(基体)からなり、該キャビ
ティ内に溶融樹脂が射出充填されて成形面を転写して成
形品を成形する射出成形用の金型が知られており、鉄鋼
系材料が一般的に用いられ、特に精密樹脂成形にはプリ
ハードン鋼等の高価な鋼材が用いられている。
【0003】この種の汎用樹脂成形用の金型の基体材料
として、非鉄金属材料が検討されており、特にアルミニ
ウム合金系は軽量で切削等の機械加工性が良いので、金
型製作コストの軽減や製品の開発期間短縮のために試作
用金型や精密転写性を必要としない成形金型の材料に検
討されている。このアルミニウム合金の生材は、ビッカ
ース硬度がHv150程度であるため、最近多用されて
いるグラスファイバーや無機質繊維入り樹脂を射出成形
(所謂エンジニアリングプラスチックの成形)すると短
期間で金型の成形面が摩耗してしまいダレが発生してし
まったり、形状寸法の変化が大きく実用することができ
ないという不具合があった。
【0004】そのため、近年、アルミニウム合金からな
る金型表面に、硬質アルマイト処理(陽極酸化処理)を
施して硬質アルマイト膜を形成することにより耐久性を
向上させる射出成形用の金型が検討されている。この硬
質アルマイト膜の硬度はビッカース硬度Hv400程度
であるが、母材となるアルミニウム合金のビッカース硬
度がHv150であるためその金型を実用に耐えるよう
にするには硬質アルマイト膜の膜厚を30μm以上にす
る必要がある。この硬質アルマイト膜の膜厚制御は難し
く、さらに形状寸法を変化させたくない箇所(嵌め合い
箇所等)にマスクを作製して硬質アルマイト処理しない
無処理箇所を形成することができないため、改質処理後
の寸法精度が要求される(例えば、寸法差5μm以下)
場合にはこのようなウエットプロセスにより金型表面を
改質する方法を適用することはできないという不具合が
あった。
【0005】この不具合を解消するため、ドライプロセ
スであるPVD(Physical Vapor deposition)法、例
えばイオンプレーティングあるいはスパッタリング法に
より金型表面を改質する処理方法が、例えば、特開昭5
9−118419号公報に提案されている。この金型表
面の改質処理方法は、成形面に耐蝕性および耐摩耗性を
有する金属、金属酸化物、金属窒化物あるいは金属炭化
物のオングストロームからミクロンオーダの薄膜(硬質
膜)を金型表面にイオンプレーティングあるいはスパッ
タリング法により形成して高精度な金型を作製するとと
もに金型の寿命を長期化する。
【0006】また、特開平2−214619号公報に
は、アルミニウムからなる金型表面に超硬合金からなる
中間被覆を形成してその表面に反応性ガススパッタリン
グ法により窒化チタンあるいは炭化チタンを形成するこ
とにより金型表面に多層膜からなる硬質膜を形成し金型
の寿命を長期化させる金型表面を改質する処理方法が記
載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の金型表面の改質処理方法にあっては、イオン
プレーティング法では金型表面に薄膜を形成する際に、
金型基体を高温(例えば、300℃前後)に加熱して薄
膜を形成するため、調質処理を施していてもアルミニウ
ム合金系は150℃〜170℃程度の熱処理によって鈍
ってしまい金型自体の硬度が低下してしまうという問題
がある。
【0008】また、スパッタリング法では低温処理が可
能であるが、スパッタリング法により硬質膜を金型表面
に形成してもその硬質膜の膜厚が1μm〜3μm程度の
薄さでは金型自体の硬度がビッカース硬度でHv150
程度であるため亀裂および剥離等が発生してしまうとい
う問題があり、超硬合金からなる中間被覆を形成すると
高価になってしまうという問題があった。
【0009】なお、ドライプロセスとしては他にCVD
(Chemical Vapor Deposition)法、例えばプラズマC
VD法または熱CVD法があるが、このCVD法におい
ても、処理温度が高温であるため、同様な問題が発生し
てしまう。このような問題を解消する方法としては、特
開平3−314239号公報に、チタンまたは窒化チタ
ンからなる表層内にイオン注入法によりアルミニウムイ
オンあるいは窒素イオンを注入した後、その表層上にチ
タンおよびアルミニウムの窒化金属間化合物からなる硬
質膜を形成して表面を硬化する改質処理方法が記載され
ている。
【0010】しかしながら、この改質処理方法にあって
は、表層内にイオン注入法によりアルミニウムイオンあ
るいは窒素イオンを注入して表層を硬化処理している
が、このイオン注入を施す装置はイオンを高電圧で加速
して局所に注入するものであるため、表層全体を硬化処
理するためには長時間掛かってしまい、さらにこの装置
自体が大型であるとともに高価であるためコスト高にな
ってしまうという問題があった。
【0011】そこで、本発明は、基体の表層内および表
層表面を簡易に硬化処理することにより、基体の耐久性
を向上させる基体表面の改質処理方法およびその装置を
提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、請
求項1記載の発明は、所定の金属元素からなる基体表面
を活性化した後、該基体表面の前記金属元素を窒化する
ことにより硬質窒化物を形成するとともに、該硬質窒化
物を基体表面内に拡散することにより該基体表面層を固
溶体化し、次いで、該基体表面上に硬質層を形成するこ
とを特徴とするものである。
【0013】請求項2記載の発明は、前記硬質層を、少
なくとも前記金属元素を含む硬質窒化膜により構成し、
該硬質窒化膜は前記基体表面から離隔するほど窒化率を
高くすることを特徴とするものである。また、請求項3
記載の発明は、所定の金属元素からなる基体を内部に保
持可能な第1真空容器と、該第1真空容器内を真空引き
する第1真空排気装置と、前記基体表面を活性化させる
活性化手段と、該基体表面の前記金属元素を窒化して硬
質窒化物を形成する窒化物形成手段と、該硬質窒化物を
基体表面内に拡散させ該基体表面層を固溶体化して固溶
体層を形成する固溶体形成手段と、該固溶体層上に硬質
層を形成する硬質層形成手段と、を備えることを特徴と
するものである。
【0014】請求項4記載の発明は、前記活性化手段
が、前記基体を保持可能な第2真空容器と、不活性ガス
を基体表面に照射し、その衝撃により前記基体表面から
不純物を離脱させ活性化させる照射手段と、該基体表面
の活性化状態を検出する活性化検出手段と、該基体を大
気に触れさせることなく前記第1真空容器および第2真
空容器間を移送する移送手段と、を備え、前記基体表面
を活性化させ、該基体を大気に触れさせることなく第1
真空容器に内に移送することを特徴とするものである。
【0015】請求項5記載の発明は、前記窒化物形成手
段が、ガスをプラズマ状態にして前記基体表面に照射す
る電子サイクロトロン共鳴型プラズマ源と、前記基体表
面付近に高純度窒素ガスを供給する高純度窒素ガス供給
手段と、からなり、前記電子サイクロトロン共鳴型プラ
ズマ源に、内部を排気して所定真空度にする第2真空排
気装置と、内部にアルゴンおよび窒素ガスを導入する第
1ガス導入手段と、を設け、アルゴンおよび窒素ガスの
混合プラズマを基体表面に照射するとともに高純度窒素
ガスを該基体表面付近に供給することにより前記金属元
素を窒化処理して硬質窒化物を形成することを特徴とす
るものである。
【0016】請求項6記載の発明は、前記窒化物形成手
段に、前記基体表面に照射される前記混合プラズマを解
析するプラズマ解析手段と、該プラズマ解析手段による
解析結果に基づいて電子サイクロトロン共鳴型プラズマ
源を制御して混合プラズマを最適化するプラズマ制御手
段と、前記基体表面付近に供給される前記高純度窒素ガ
スの分圧を検出する窒素ガス分圧検出手段と、該窒素ガ
ス分圧検出手段による検出結果に基づいて前記高純度窒
素ガス供給手段を制御して高純度窒素ガス供給量を最適
化する窒素ガス分圧制御手段と、を設け、前記混合プラ
ズマおよび高純度窒素ガス分圧を最適化することにより
窒化処理を安定させることを特徴とするものである。
【0017】請求項7記載の発明は、前記固溶体形成手
段が、ガスをイオン化して前記基体表面に照射する荷電
粒子ビーム源と、該荷電粒子ビーム源にアルゴンまたは
窒素ガスの少なくともどちらか一方を導入する第2ガス
導入手段と、該荷電粒子ビーム源が照射するイオンガス
ビームの照射強度および照射量を検出する照射エネルギ
検出手段と、該照射エネルギ検出手段の検出結果に基づ
いて荷電粒子ビーム源を制御してイオンガスビームの照
射エネルギーを最適化する荷電粒子ビーム制御手段と、
を備え、前記硬質窒化物にイオンガスビームを照射して
前記基体表面内に該硬質窒化物を拡散させ基体表面層を
固溶体化することを特徴とするものである。
【0018】請求項8記載の発明は、前記硬質層形成手
段が、前記金属元素を含むターゲットと、該ターゲット
にRFあるいはDC電力を供給する電力供給電源と、前
記第1真空容器内に高純度窒素ガスを供給する高純度窒
素ガス供給手段と、を備え、前記ターゲットに所定電力
を供給して前記金属元素をスパッタリングするとともに
高純度窒素ガスを供給して反応性スパッタリングにより
前記硬質層を形成することを特徴とするものである。
【0019】前請求項9記載の発明は、記硬質層形成手
段が、前記金属元素を含むターゲットと、該ターゲット
にRFあるいはDC電力を供給する電力供給電源と、前
記第1真空容器内への高純度窒素ガスの供給量を制御可
能な高純度窒素ガス供給手段と、を備え、前記固溶体形
成手段が、ガスをイオン化して前記基体表面に照射する
荷電粒子ビーム源と、該荷電粒子ビーム源ヘ導入するア
ルゴンおよび窒素ガスの混合率の制御可能な第2ガス導
入手段と、を備え、前記高純度窒素ガス手段が高純度窒
素ガスの供給量を当初には少量に抑えて徐々に増加させ
るとともに、前記第2ガス導入手段が窒素ガスの混合率
を当初には低くして徐々に高くすることにより、前記基
体表面から離隔するほど窒化率の高い前記硬質層を形成
することを特徴とするものである。
【0020】
【作用】請求項1記載の発明では、所定の金属元素から
なる基体表面が活性化された後、その基体表面の金属元
素が窒化され硬質窒化物が形成されるとともに、その硬
質窒化物が基体表面内に拡散されることにより該基体表
面層が固溶体化され、次いで、その基体表面上に硬質層
が形成される。したがって、硬質層の下地となる基体表
面層が硬質窒化物との固溶体にされることによって硬質
にされ、その基体表面上に硬質層が形成されるので、基
体の耐摩耗性が向上されるるとともに硬質層の亀裂およ
び剥離等が防止されて基体の耐久性が向上される。ま
た、硬化処理の前処理として基体表面が活性化され、活
性な金属に吸着している酸化物等が除去されるので、基
体表面と硬質層との密着力が向上される。
【0021】請求項2記載の発明では、基体表面上に形
成された硬質層が基体を構成している金属元素を含む硬
質窒化膜により形成されるとともに、基体表面から離隔
するほど窒化率が高くなるよう形成される。したがっ
て、基体表面と硬質膜との密着力がより向上され、基体
の耐久性が向上される。また、請求項3記載の発明で
は、基体表面が活性化手段により活性化され、その基体
表面の金属元素が窒化物形成手段により窒化され硬質窒
化物が形成され、その硬質窒化物が固溶体形成手段によ
り基体表面内に拡散され基体表面層が固溶体化され硬質
な固溶体層が形成される。さらに、その固溶体層上に硬
質層形成手段により硬質層が形成される。したがって、
硬質層の下地となる基体表面に硬質な固溶体層が形成さ
れ、その上に硬質層が形成されるので、基体の耐摩耗性
が向上されるとともに硬質層の亀裂および剥離等が防止
され、基体の耐久性が向上される。また、硬化処理され
る前に基体表面が活性化手段により活性化され、吸着し
ている酸化物等が除去されるので、基体表面層と硬質層
との密着力が向上される。
【0022】請求項4記載の発明では、第2真空容器内
で不活性ガスが照射手段により基体表面に照射され、そ
の衝撃により基体表面から不純物が離脱されて活性化さ
れ、移送手段により大気に触れることなく第1真空容器
に移送される。したがって、基体表面が酸化されたり不
純物が付着してしまうことが防止されて硬質層との密着
力がより向上される。さらに、硬化処理する第1真空容
器と異なる第2真空容器内で活性化処理するため、活性
化手段により除去される酸化物等によって第1真空容器
が汚染してしまうことが防止される。
【0023】請求項5記載の発明では、電子サイクロト
ロン共鳴型プラズマ源によりアルゴンおよび窒素ガスの
混合プラズマが基体表面に照射されるとともに、第2ガ
ス導入手段により基体表面付近に高純度窒素ガスが供給
されて、基体表面の金属元素がガス窒化されるとともに
イオン窒化され硬質窒化物が形成される。このとき、電
子サイクロトロン共鳴型プラズマ源では低温の高密度の
プラズマが生成される。したがって、基体は高温にされ
ることなく基体表面に低電力で高硬度の硬質窒化物が形
成される。
【0024】請求項6記載の発明では、プラズマ解析手
段により電子サイクロトロン共鳴型プラズマ源によって
生成される混合プラズマが解析されるとともに、窒素ガ
ス分圧検出手段により高純度窒素ガスの分圧が検出さ
れ、その解析結果および検出結果に基づいて電子サイク
ロトロン共鳴型プラズマ源がプラズマ制御手段により制
御されて混合プラズマが最適化されるとともに第2ガス
導入手段が窒素ガス分圧制御手段により制御されて高純
度窒素ガス供給量が最適化される。したがって、基体表
面層を窒化する窒化処理が安定され均一な硬質窒化物が
形成される。また、基体を構成する金属元素が異なった
り基体サイズが異なってもその窒化処理が最適化され
る。
【0025】請求項7記載の発明では、照射エネルギ検
出手段により荷電粒子ビーム源によって基体表面に照射
されるイオンガスビームの照射強度および照射量が検出
され、その検出結果に基づいて荷電粒子ビーム源が荷電
粒子ビーム制御手段により制御されてイオンガスビーム
の照射エネルギーが最適化され、最適なエネルギーのイ
オンガスビームが硬質窒化物に照射される。したがっ
て、硬質窒化物が基体表面内に効率よく拡散されること
によって基体表面層が効率よく固溶体化される。
【0026】請求項8記載の発明では、ターゲットに電
力供給電源によりRFあるいはDC電力が供給されると
ともに第1真空容器内に高純度窒素ガスが高純度窒素ガ
ス供給手段により供給され、基体を構成する金属元素の
反応性スパッタリングにより硬質層が形成される。した
がって、基体表面と硬質層との密着力がより向上され
る。
【0027】請求項9記載の発明では、ターゲットに電
力供給電源によりRFあるいはDC電力が供給されると
ともに第1真空容器内に高純度窒素ガスが高純度窒素ガ
ス供給手段により供給され、基体を構成する金属元素の
反応性スパッタリングにより硬質層が形成される際に、
荷電粒子ビーム源ヘの窒素ガスの混合率が徐々に高くさ
れたイオンガスビームが基体表面に照射されるとともに
第1真空容器内への高純度窒素ガスの供給量が徐々に増
加されて硬質窒化膜が形成される。したがって、基体表
面から離隔するほど窒化率が高くなるよう形成され、基
体表面層と硬質層との密着力がさらに向上される。
【0028】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。図
1は本発明に係る基体表面の改質処理方法を実施するそ
の処理装置の全体構成図である。まず、構成を説明す
る。
【0029】図1において、10は基体表面を改質する処
理装置であり、処理装置10は、例えば、アルミニウムか
らなり所定の成形面が形成された射出成形用金型の金型
11表面を硬化処理することにより耐摩耗性を向上させて
耐久性を向上させる。この処理装置10は、内部を真空引
きされる真空容器(第1真空容器)12と、真空容器12内
を真空引きする例えば、ターボ分子ポンプからなる真空
排気装置(第1真空排気装置)13と、真空容器12内に金
型11を保持する基体ホルダ14と、金型11表面に付着して
いる不純物および水分等を除去して活性化させる活性化
手段20と、金型11を大気に触れさせることなく活性化手
段20から真空容器12に移送する移送手段30と、金型11表
面を窒化して窒化アルミニウム(硬質窒化物)を形成す
る窒化物形成手段40と、その窒化アルミニウムを金型11
表面内に拡散させ表面層を固溶体化して固溶体層を形成
する固溶体形成手段50と、その固溶体層上に硬質層を形
成する硬質層形成手段60と、から構成されている。
【0030】活性化手段20は、内部を真空引きされる真
空容器(第2真空容器)21と、真空容器21内を真空引き
する真空排気装置(例えば、ターボ分子ポンプ)22と、
真空容器21内に金型11を保持する電極構造の基体ホルダ
23と、この基体ホルダ23に高周波電圧を印加するマッチ
ング回路を備える高周波電源24と、流量制御器を備え真
空容器21内にアルゴンガス(不活性ガス)を供給して所
定圧力に調整する図示しないアルゴンガス供給手段と、
から構成されている。この活性化手段20は真空排気装置
22が真空容器21内を所定真空圧力まで真空引きして、前
記アルゴンガス供給手段がアルゴンガスをその真空容器
21内に供給し所定圧力に調整した後、高周波電源24が基
体ホルダ23に所定電力の高周波電圧を印加することによ
り金型11表面にそのアルゴンガスを照射しその衝撃によ
って、金型11表面を所謂逆スパッタリングして金型11表
面に付着している不純物および水分等を除去して活性化
させる。すなわち、基体ホルダ23、高周波電源24および
前記アルゴンガス供給手段は照射手段を構成している。
【0031】この活性化手段20は質量分析計25および制
御・計測器26を具備しており、制御・計測器26によって
質量分析計25を制御するとともに前記逆スパッタリング
されることによって弾き飛ばされたスパッタ粒子を分析
し、金型11表面の活性化が充分行なわれたか確認するよ
うになっている。すなわち、質量分析計25および制御・
計測器26は活性化検出手段を構成している。この質量分
析計25はスパッタリングの圧力領域では直接スパッタ粒
子を分析することは不可能なため、図2に示すように、
質量分析する分析部25aを差動排気装置27により排気す
ることによって所定真空圧力に保ち、前記スパッタ粒子
をオリフィス25bから分析部25aに取り込み分析するよ
うになっている。
【0032】移送手段30は、真空容器12、21を連通させ
るとともに互いに異なる内部圧力に維持できるよう遮断
するゲートバルブ31と、金型11を基体ホルダ23から取り
外し真空容器21から真空容器12に移送して基体ホルダ14
に固定させる図示しない搬送装置と、を備えている。こ
の移送手段30は、活性化手段20により表面が活性化され
た金型11を真空排気装置22が真空容器21内を所定真空圧
力まで排気した後、ゲートバルブ31を開放して真空排気
装置13により所定真空圧力に真空引きされた真空容器12
内に前記搬送装置がその金型11を大気に触れさせること
なく移送し基体ホルダ14に固定する。
【0033】窒化物形成手段40は、基体ホルダ14に固定
されている金型11表面にガスをプラズマ状態にして照射
する電子サイクロトロン共鳴(Electron Cycrotron Res
onance)型プラズマ源(以下、単にECR型プラズマ源
ともいう)41と、ECR型プラズマ源41内部を真空引き
して所定真空圧力にする真空排気装置(第2真空排気装
置)42と、流量制御器を備えアルゴンガス導入手段43a
および窒素ガス導入手段43bによりECR型プラズマ源
41内部にアルゴンおよび窒素ガスを導入し所定圧力に調
整する第1ガス導入手段43と、流量制御器を備え金型11
表面付近に所定流量の高純度窒素ガスを供給する高純度
窒素ガス供給手段44と、から構成されている。この窒化
物形成手段40は、真空排気装置42がECR型プラズマ源
41内部を排気して第1ガス導入手段43がアルゴンおよび
窒素ガスを導入し、ECR型プラズマ源41がその混合ガ
スを低温高密度のプラズマ状態にしてその混合プラズマ
を金型11表面に照射するとともに、高純度窒素ガス供給
手段44がその金型11表面付近に高純度窒素ガスを供給す
ることによって、金型11表面のアルミニウムを窒化して
窒化アルミニウムを形成する。この窒化アルミニウムを
形成する際の真空容器12内の圧力は、8×10-5torr〜
2×10-4torr程度のガス圧力に調整することが好まし
い。
【0034】この窒化物形成手段40は、プラズマの測定
用プローブであるラングミュア探針45およびその計測器
46を具備しており、このラングミュア探針45および計測
器46により金型11表面に照射される前記混合プラズマの
電子温度、電子密度、およびイオン密度等を測定してプ
ラズマを解析するようになっている。その解析結果に基
づいて図示しないプラズマ制御手段により第1ガス導入
手段43およびECR型プラズマ源41を制御してプラズマ
生成時のアルゴンおよび窒素ガス流量、アルゴンおよび
窒素ガス混合比、マイクロ波電力、ガス圧力、および磁
界強度等を最適化して前記混合プラズマを最適化する。
すなわち、ラングミュア探針45および計測器46はプラズ
マ解析手段を構成している。また、窒化物形成手段40は
前記高純度窒素ガスを取り込んで分析する質量分析計4
7、およびその制御・計測器48を具備しており、制御・
計測器48によって質量分析計47を制御するとともに前記
高純度窒素ガス量を検出するようになっている。その検
出結果に基づいて図示しない窒素ガス分圧制御手段によ
り高純度窒素ガス供給手段44を制御して高純度窒素ガス
供給量を最適化する。すなわち、質量分析計47、および
その制御・計測器48は窒素ガス分圧検出手段を構成して
おり、この窒素ガス分圧制御手段により金型11表面付近
の高純度窒素ガス量を最適化するとともに、前記プラズ
マ制御手段によりプラズマを最適化することによって金
型11表面を窒化する窒化処理を安定させる。
【0035】固溶体形成手段50は、ガスをイオン化しそ
のイオンガスを金型11表面に照射する荷電粒子ビーム源
51と、荷電粒子ビーム源51内部を真空引きして所定真空
圧力にする図示していない真空排気装置と、流量制御器
を備えアルゴンガス導入手段52aおよび窒素ガス導入手
段52bにより荷電粒子ビーム源51内部にアルゴンおよび
窒素ガスを所定流量で導入する第2ガス導入手段52と、
荷電粒子ビーム源51を制御するとともにイオンを加速さ
せる制御・加速電源53と、から構成されている。この固
溶体形成手段50は、前記真空排気装置が荷電粒子ビーム
源51内部を所定圧力に排気して第2ガス導入手段52がア
ルゴンまたは/および窒素ガスを導入し、荷電粒子ビー
ム源51がそのガスをイオン化して金型11表面に照射する
ことにより金型11表面に形成された前記窒化アルミニウ
ムにイオン衝撃を加え金型11の表面内にその窒化アルミ
ニウムを拡散させることによって固溶体化し、その表面
層に固溶体層11a(図3に示す)を形成する。なお、こ
の荷電粒子ビーム源51は、不純物のないイオンビームを
照射するために内部の圧力を前記真空装置により4×1
-6torr以下にすることが好ましい。
【0036】この固溶体形成手段50は、反射電界型のエ
ネルギー分散器およびファラデーコレクタがアセンブリ
されイオンガスビームを検出する検出器54と、検出器54
が検出するイオンガスビームを計測する計測器55と、か
らなり荷電粒子ビーム源51が照射するイオンガスビーム
の照射強度および照射量を検出する照射エネルギ検出手
段56を具備しており、照射エネルギ検出手段56の検出結
果に基づいて制御・加速電源53により荷電粒子ビーム源
51を制御してイオンガスビームの照射エネルギーを最適
化する。すなわち、制御・加速電源53は荷電粒子ビーム
制御手段を構成している。
【0037】硬質層形成手段60は、少なくともアルミニ
ウム元素を含有する所定金属からなるターゲット61と、
ターゲット61を保持し所定形状のマグネットがその背面
側に配設された電極構造のターゲットホルダ62と、この
ターゲットホルダ62に高周波電圧を印加し高周波電力
(RF電力)を供給するマッチング回路を備える高周波
電源(電力供給電源)63と、流量制御器を備え真空容器
12内にアルゴンガス(不活性ガス)を供給し所定圧力に
調整する図示しないアルゴンガス供給手段と、高純度窒
素ガスを供給する高純度窒素ガス供給手段44と、から構
成されている。この硬質層形成手段60は、真空容器21内
に前記アルゴンガス供給手段によりアルゴンを供給する
とともに高純度窒素ガス供給手段44が高純度窒素ガスを
供給し所定圧力に調整した後、高周波電源63がターゲッ
トホルダ62に所定電力の高周波電圧を印加してターゲッ
ト61を構成する前記所定金属(スパッタ元素)と高純度
窒素ガスとのマグネトロン方式の反応性スパッタリング
によって金型11表面上に窒化アルミニウム(硬質窒化
膜)からなる硬質層11b(図3に示す)を形成する。
【0038】このとき、硬質層形成手段60の高純度窒素
ガス供給手段44は真空容器12内への高純度窒素ガスの供
給量を当初には窒素ガス量を少量に抑え徐々に増加する
よう制御して前記反応性スパッタリングするとともに、
固溶体形成手段50を駆動させ第2ガス導入手段52が荷電
粒子ビーム源51ヘの導入する窒素ガスの混合率を当初に
は低く抑え徐々に増加するよう制御してイオンガスビー
ムを前記金型表面に照射することにより金型11表面に形
成される窒化アルミニウムを金型11表面から離隔するほ
ど窒化率が高くなるよう形成する。
【0039】なお、真空排気装置13、22、42にターボ分
子ポンプを用いているが、真空容器12、21内等を汚染せ
ずに不純物および水分等が残らない排気能力の優れたポ
ンプあればよく、例えばクライオポンプでもよい。ま
た、スパッタリング用電源として高周波電源24、63を用
いているが、ターゲット61の材料によってはDC電源に
代えても良いことはいうまでもない。
【0040】次に、作用を説明する。まず、改質処理し
ていない金型11を基体ホルダ23に取り付けた後、真空排
気装置22により真空容器21内を5×10-7torr程度の圧
力まで真空引きする。次いで、真空容器21内に前記アル
ゴンガス供給手段によりアルゴンガスを供給して10 -2
torr程度のガス圧力となるように調整した後、高周波電
源24から基体ホルダ23に所定電力の高周波電圧を印加し
金型11表面を逆スパッタリングして付着している不純物
および水分等を除去し金型11表面を活性化する。このと
き、前記逆スパッタリングされることによって弾き飛ば
された金型11表面からのスパッタ粒子を質量分析計25お
よび制御・計測器26からなる前記活性化検出手段により
分析し、金型11を構成するアルミニウム量により金型11
表面の活性化が充分行なわれたか確認する。
【0041】次いで、真空排気装置13により真空容器12
内を10-7torr程度の圧力まで真空引きするとともに、
真空容器21内へのアルゴンガスの供給を停止し、真空容
器21内を真空排気装置22により再度10-7torr程度の圧
力まで排気した後、ゲートバルブ31を開放し、前記搬送
装置によって金型11を基体ホルダ23から取り外してその
金型11を大気に触れさせることなく真空容器12内に移送
し、基体ホルダ14に固定する。
【0042】次いで、金型11表面付近に高純度窒素ガス
供給手段44により高純度窒素ガスを供給して真空容器内
の圧力を8×10-5torr〜2×10-4torr程度のガス圧
力に調整するとともに、ECR型プラズマ源41によりア
ルゴンおよび窒素ガスの混合プラズマを金型11表面に照
射して、金型11表面に混合プラズマのイオンおよび電子
を作用させその金型11表面を活性にすることにより高温
に加熱した状態と同様の効果が得られる非熱平衡状態に
することによって金型11表面のアルミニウムと前記高純
度窒素ガスを反応させてガス窒化するとともに、混合プ
ラズマの窒素プラズマイオンによりイオン窒化して窒化
アルミニウムを形成する。このときの金型11温度は、電
子サイクロトロン共鳴によってECR型プラズマ源41で
アルゴンおよび窒素ガスの低温・高密度な混合プラズマ
が生成され、その混合プラズマにより窒化アルミニウム
を形成するので、金型11を水冷しなくても150℃以上
になることはなく水冷すると100℃前後の処理温度で
窒化アルミニウムを形成することができる。
【0043】また、ECR型プラズマ源41により混合プ
ラズマを金型11表面に照射して窒化アルミニウムを形成
すると同時に、荷電粒子ビーム源51に第2ガス導入手段
52からアルゴンガスを導入するとともに制御・加速電源
53から1kV程度の加速電圧を供給し金型11表面にその
アルゴンガスのイオンビームを照射することによって、
金型11表面に形成された前記窒化アルミニウムにイオン
衝撃を加え金型11表面内にその窒化アルミニウムを拡散
させ固溶体化する。このとき、窒化物形成手段40による
前記窒化アルミニウムの形成速度が遅い場合には、第2
ガス導入手段52から窒素ガスを荷電粒子ビーム源51に少
量導入して窒素ガスのイオンビームを混合して金型11表
面に照射する。なお、この荷電粒子ビーム源51の内部圧
力は真空容器12内の圧力の影響を受けるがイオンビーム
を照射するには何等問題なく、また真空容器12内も10
-7torr程度まで真空引きしているためイオンビームの純
度に何等問題もない。
【0044】ここで、アルミニウム原子と窒素原子との
表面反応によって窒化アルミニウムが形成されるが、荷
電粒子イオンビーム源51により照射されるイオンビーム
の衝撃が加えられるとともに、ECR型プラズマ源41に
より照射される混合プラズマ中のアルゴンプラズマイオ
ンの衝撃も加えられることによってその窒化アルミニウ
ムが金型11の表面層内に拡散して固溶体化し、その表面
層に1〜3μm程度の固溶体層11aが形成される。その
ため、金型11表面のビッカース硬度は1000Hv程度
にまで達する。
【0045】次いで、真空容器12内に前記アルゴンガス
供給手段によりアルゴンを供給するとともに高純度窒素
ガス供給手段44により少流量の高純度窒素ガスを供給し
して所定圧力に調整した後、高周波電源63によりターゲ
ットホルダ62に所定電力の高周波電圧を印加してターゲ
ット61をスパッタリング開始するとともに、荷電粒子ビ
ーム源51から金型11表面に窒素ガスの混合率の低いイオ
ンビームを照射して反応スパッタリングのアシストイオ
ンとして作用させ金型11表面上への窒化アルミニウムの
形成時の応力を緩和したり表面反応を促進する。なお、
荷電粒子ビーム源51は真空容器12内の圧力の影響を受け
るが前述したようにイオンビームの照射には何等問題な
い。
【0046】次いで、高純度窒素ガスの供給量を徐々に
増加するとともにイオンビームの窒素ガスの混合率を増
加して金型11表面から離隔するほど窒化率の高くなる窒
化アルミニウムを形成する。ここで、硬質層11bが形成
される金型11の表面層は窒化アルミニウムが拡散し固溶
体化することにより硬化された固溶体層11aであるが、
この固溶体層11aには窒化アルミニウムと固溶体化して
いないアルミニウム元素が多量に残存しているため、こ
の固溶体層11a上に窒化アルミニウムをそのまま形成す
るとその内部応力の相違や界面での接合性によって剥離
が発生してしまう。そのため、当初はアルミニウムリッ
チの窒化アルミニウムを形成し、徐々に窒化率を上げて
金型11表面から離隔するほど窒化率を高くしてアルミニ
ウム元素のほとんどが窒化されたストイキオメトリック
な窒化アルミニウムとなる硬質層11bを形成し、固溶体
層11aと硬質層11bとの密着力を向上させ硬質層11bの
剥離を防止する。
【0047】このように本実施例においては、金型11表
面に窒化物形成手段40により形成された窒化アルミニウ
ムが固溶体形成手段50により金型11表面内に拡散されて
金型11表面層が窒化アルミニウムとの固溶体にされ固溶
体層11aが形成され、その固溶体層11a上に硬質層形成
手段60により窒化アルミニウムからなる硬質層11bが形
成される。したがって、金型11の耐摩耗性が向上される
とともに硬質層11bの亀裂および剥離等が防止され、金
型11の耐久性が向上される。さらに、この硬化処理され
る前に金型11表面が活性化手段20により活性化され、金
型11表面に吸着している酸化物等が除去されるので、金
型11表面と硬質層との密着力が向上される。
【0048】また、活性化手段20は、活性化された金型
11を移送手段30により大気に触れることなく真空容器12
に移送するので、金型11表面が酸化されたり不純物が付
着してしまうことが防止される。したがって、不純物が
混入してしまうことが防止される。さらに、硬化処理す
る真空容器12と異なる真空容器21内で活性化処理するた
め、活性化手段20により除去される酸化物等によって真
空容器12が汚染してしまうことが防止される。
【0049】硬質窒化物形成手段40は、アルゴンおよび
窒素ガスの混合プラズマを金型11表面に照射するととも
に金型11表面付近に高純度窒素ガスを供給するので、金
型11表面のアルミニウム元素はガス窒化されるとともに
イオン窒化される。このとき、混合プラズマは電子サイ
クロトロン共鳴型プラズマ源41で生成されため低温・高
密度のプラズマにすることができ、金型11は高温にされ
ることなく金型11表面に低電力で高硬度の硬質な窒化ア
ルミニウムが形成される。
【0050】また、この硬質窒化物形成手段40は、前記
プラズマ解析手段および窒素ガス分圧検出手段により混
合プラズマを解析するとともに高純度窒素ガスの分圧を
検出し、その解析および検出結果に基づいてプラズマ制
御手段および窒素ガス分圧制御手段により混合プラズマ
および高純度窒素ガス供給量を制御するので、金型11表
面層を窒化する窒化処理が安定され均一な窒化アルミニ
ウムが形成される。また、金型11を構成する金属元素が
異なったり金型11のサイズが異なってもその窒化処理を
最適化させることができる。
【0051】固溶体層形成手段50は、照射エネルギ検出
手段56により金型11表面に照射されるイオンガスビーム
の照射強度および照射量を検出し、その検出結果に基づ
いて荷電粒子ビーム源51を制御して最適なエネルギーの
イオンガスビームを窒化アルミニウムに照射するので、
窒化アルミニウムが金型11表面内に効率よく拡散され金
型11表面層が効率よく固溶体化される。
【0052】硬質層形成手段60は、ターゲット61に高周
波電源63によりRF電力を供給するとともに真空容器12
内にアルゴンガスおよび高純度窒素ガスを供給し、金型
11を構成するアルミニウム元素の反応性スパッタリング
により硬質層11bを形成するので、金型11表面と硬質層
11bとの密着力が向上される。また、この硬質層形成手
段60および固溶体層形成手段50は、金型11表面上に硬質
層11bを形成する際に、真空容器12内への高純度窒素ガ
スの供給量を徐々に増加して反応性スパッタリングによ
り硬質層11bを形成するとともに、荷電粒子ビーム源51
ヘの窒素ガスの導入量を徐々に増加させてそのイオンガ
スビームを金型11表面に照射するので、硬質膜11bは金
型11表面から離隔するほど窒化率が高くなるよう形成さ
れ、金型11表面層と硬質層との密着力がさらに向上され
る。
【0053】なお、本実施例では、射出成形用金型の金
型表面の改質処理方法およびその処理装置を説明した
が、他の耐久性を向上させる必要のある基体表面の改質
処理に適用できることはいうまでもない。
【0054】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、活性化し
た基体表面の金属元素を窒化して硬質窒化物を形成する
とともに、その硬質窒化物を基体表面内に拡散して固溶
体化し、次いで、その基体表面上に硬質層を形成するの
で、基体表面を低摩耗性にして耐摩耗性を向上させるこ
とができるとともに硬質層の亀裂および剥離等を防止す
ることができ、基体の耐久性を向上させることができ
る。また、基体表面を固溶体化して硬質にするので、基
体表面の形状を損なうことがない。さらに、硬化処理の
前処理として基体表面に吸着している酸化物等を除去し
て活性化するので、高純度な固溶体を形成することがで
き、基体表面と硬質層との密着力を向上させることがで
きる。その結果、基体の表層内および表層表面を簡易に
硬化処理して基体の耐久性を向上させる低コストで信頼
性の高い基体表面の改質処理方法を提供することができ
る。
【0055】請求項2記載の発明によれば、基体表面上
に形成する硬質層を、基体表面から離隔するほど窒化率
が高くなるよう基体を構成している金属元素を含む硬質
窒化膜により形成するので、内部応力を低減するととも
に界面での接合性を向上させて剥離を防止することがで
き、基体表面と硬質膜との密着力をより向上させること
ができる。
【0056】また、請求項3記載の発明によれば、活性
化手段が基体表面を活性化し、窒化物形成手段がその基
体表面の金属元素を窒化して硬質窒化物を形成し、固溶
体形成手段がその硬質窒化物を基体表面内に拡散して硬
質な固溶体層を形成する。さらに、硬質層形成手段がそ
の固溶体層上に硬質層を形成する。したがって、基体表
面を低摩耗性にして耐摩耗性を向上させることができる
とともに硬質層の亀裂および剥離等を防止することがで
き、基体の耐久性を向上させることができる。また、基
体表面を固溶体化して固溶体層を形成するので、基体表
面の形状を損なうことがない。さらに、硬化処理の前処
理として活性化手段により基体表面に吸着している酸化
物等を除去して活性化するので、高純度な固溶体を形成
することができ、基体表面と硬質層との密着力を向上さ
せることができる。その結果、基体の表層内および表層
表面を簡易に硬化処理して基体の耐久性を向上させる低
コストで信頼性の高い基体表面の改質処理方法を提供す
ることができる。
【0057】請求項4記載の発明によれば、照射手段が
不活性ガスを基体表面に照射することにより活性化し
て、その基体を移送手段が大気に触れることなく第1真
空容器に移送するので、基体表面に不純物を付着させる
ことなく活性化して基体表面が酸化したり大気中の不純
物が付着してしまうことを防止することができ、高純度
な固溶体を形成することができ、基体表面と硬質層との
密着力をより向上させることができる。したがって、ア
ルミニウムやチタン等の活性な金属からなる基体表面を
活性化して高品質の処理をすることができる。さらに、
硬化処理する第1真空容器と異なる第2真空容器内で活
性化処理するため、活性化手段により除去される酸化物
等によって第1真空容器が汚染してしまうことを防止す
ることができる。
【0058】請求項5記載の発明によれば、電子サイク
ロトロン共鳴型プラズマ源が低温高密度の混合プラズマ
を生成してその混合プラズマを基体表面に照射するとと
もに、第2ガス導入手段が基体表面付近に高純度窒素ガ
スを供給することにより基体表面の金属元素をガス窒化
するとともにイオン窒化して硬質窒化物を形成するの
で、基体を高温にすることなく基体表面に低電力で高硬
度の硬質窒化物を形成することができる。したがって、
アルミニウム合金等の高温にすることができない材料か
らなる基体表面を硬化処理することができる。
【0059】請求項6記載の発明によれば、プラズマ解
析手段が混合プラズマを解析するとともに、窒素ガス分
圧検出手段が高純度窒素ガス分圧を検出し、その解析結
果および検出結果に基づいてプラズマ制御手段により混
合プラズマが最適化されるとともに窒素ガス分圧制御手
段により高純度窒素ガス供給量が最適化されるので、基
体表面を窒化する窒化処理を安定させることができ、均
一な硬質窒化物を形成することができる。また、基体を
構成する金属元素が異なったり基体サイズが異なっても
その窒化処理を最適化することができる。
【0060】請求項7記載の発明によれば、照射エネル
ギ検出手段がイオンガスビームの照射強度および照射量
を検出し、その検出結果に基づいて荷電粒子ビーム制御
手段が照射エネルギーを最適化してイオンガスビームを
硬質窒化物に照射するので、硬質窒化物を基体表面内に
効率よく拡散することができ、基体表面層を効率よく固
溶体化することができる。
【0061】請求項8記載の発明によれば、ターゲット
にRFあるいはDC電力を供給するとともに第1真空容
器内に高純度窒素ガスを供給して、基体を構成する金属
元素の反応性スパッタリングにより硬質層を形成するの
で、基体表面と硬質層との密着力をより向上させること
ができる。また、硬質膜として基体を構成している金属
元素を窒化してセラミックス系の化合物薄膜を基体表面
に密着性よく形成することができ、基体表面をより高硬
度に改質することができる。
【0062】請求項9記載の発明によれば、硬質層を形
成する際に、荷電粒子ビーム源ヘの窒素ガスの導入量を
徐々に増加させたイオンガスビームを基体表面に照射す
るとともに第1真空容器内への高純度窒素ガスの供給量
を徐々に増加して硬質窒化膜を形成するので、基体表面
から離隔するほど窒化率の高い硬質層を形成することが
でき、内部応力を低減するとともに界面での接合性を向
上させて剥離を防止することができ、基体表面と硬質膜
との密着力をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金型表面の改質処理方法を実施す
るその処理装置の全体構成図である。
【図2】その一部構成図である。
【図3】本発明により改質された金型の一部断面図であ
【符号の説明】
10 表面改質装置 11 金型(基体) 11a 固溶体層 11b 硬質層(硬質窒化膜) 12 真空容器(第1真空容器) 13 真空排気装置(第1真空排気装置) 20 活性化手段 21 真空容器(第2真空容器) 23 基体ホルダ(照射手段) 24 高周波電源(照射手段) 25 質量分析計(活性化検出手段) 26 制御・計測器(活性化検出手段) 30 移送手段 40 窒化物形成手段 41 電子サイクロトロン共鳴型プラズマ源 42 真空排気装置(第2真空排気装置) 43 第1ガス導入手段 44 高純度窒素ガス供給手段 45 ラングミュア探針(プラズマ解析手段) 46 計測器(プラズマ解析手段) 47 質量分析計(窒素ガス分圧検出手段) 48 制御・計測器 50 固溶体形成手段 51 荷電粒子ビーム源 52 第2ガス導入手段 53 制御・加速電源(荷電粒子ビーム制御手段) 56 照射エネルギ検出手段 60 硬質層形成手段 61 ターゲット 63 高周波電源(電力供給電源)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定の金属元素からなる基体表面を活性化
    した後、該基体表面の前記金属元素を窒化することによ
    り硬質窒化物を形成するとともに、該硬質窒化物を基体
    表面内に拡散することにより該基体表面層を固溶体化
    し、次いで、該基体表面上に硬質層を形成することを特
    徴とする基体表面の改質処理方法。
  2. 【請求項2】前記硬質層を、少なくとも前記金属元素を
    含む硬質窒化膜により構成し、該硬質窒化膜は前記基体
    表面から離隔するほど窒化率を高くすることを特徴とす
    る請求項1記載の基体表面の改質処理方法。
  3. 【請求項3】所定の金属元素からなる基体を内部に保持
    可能な第1真空容器と、該第1真空容器内を真空引きす
    る第1真空排気装置と、前記基体表面を活性化させる活
    性化手段と、該基体表面の前記金属元素を窒化して硬質
    窒化物を形成する窒化物形成手段と、該硬質窒化物を基
    体表面内に拡散させ該基体表面層を固溶体化して固溶体
    層を形成する固溶体形成手段と、該固溶体層上に硬質層
    を形成する硬質層形成手段と、を備えることを特徴とす
    る基体表面の改質処理装置。
  4. 【請求項4】前記活性化手段が、 前記基体を保持可能な第2真空容器と、不活性ガスを基
    体表面に照射し、その衝撃により前記基体表面から不純
    物を離脱させ活性化させる照射手段と、該基体表面の活
    性化状態を検出する活性化検出手段と、該基体を大気に
    触れさせることなく前記第1真空容器および第2真空容
    器間を移送する移送手段と、を備え、 前記基体表面を活性化させ、該基体を大気に触れさせる
    ことなく第1真空容器に内に移送することを特徴とする
    請求項3記載の基体表面の改質処理装置。
  5. 【請求項5】前記窒化物形成手段が、 ガスをプラズマ状態にして前記基体表面に照射する電子
    サイクロトロン共鳴型プラズマ源と、前記基体表面付近
    に高純度窒素ガスを供給する高純度窒素ガス供給手段
    と、からなり、 前記電子サイクロトロン共鳴型プラズマ源に、 内部を排気して所定真空度にする第2真空排気装置と、
    内部にアルゴンおよび窒素ガスを導入する第1ガス導入
    手段と、を設け、 アルゴンおよび窒素ガスの混合プラズマを基体表面に照
    射するとともに高純度窒素ガスを該基体表面付近に供給
    することにより前記金属元素を窒化処理して硬質窒化物
    を形成することを特徴とする請求項3記載の基体表面の
    改質処理装置。
  6. 【請求項6】前記窒化物形成手段に、 前記基体表面に照射される前記混合プラズマを解析する
    プラズマ解析手段と、 該プラズマ解析手段による解析結果に基づいて電子サイ
    クロトロン共鳴型プラズマ源を制御して混合プラズマを
    最適化するプラズマ制御手段と、 前記基体表面付近に供給される前記高純度窒素ガスの分
    圧を検出する窒素ガス分圧検出手段と、 該窒素ガス分圧検出手段による検出結果に基づいて前記
    高純度窒素ガス供給手段を制御して高純度窒素ガス供給
    量を最適化する窒素ガス分圧制御手段と、を設け、 前記混合プラズマおよび高純度窒素ガス分圧を最適化す
    ることにより窒化処理を安定させることを特徴とする請
    求項5記載の基体表面の改質処理装置。
  7. 【請求項7】前記固溶体形成手段が、 ガスをイオン化して前記基体表面に照射する荷電粒子ビ
    ーム源と、該荷電粒子ビーム源にアルゴンまたは窒素ガ
    スの少なくともどちらか一方を導入する第2ガス導入手
    段と、該荷電粒子ビーム源が照射するイオンガスビーム
    の照射強度および照射量を検出する照射エネルギ検出手
    段と、該照射エネルギ検出手段の検出結果に基づいて荷
    電粒子ビーム源を制御してイオンガスビームの照射エネ
    ルギーを最適化する荷電粒子ビーム制御手段と、を備
    え、 前記硬質窒化物にイオンガスビームを照射して前記基体
    表面内に該硬質窒化物を拡散させ基体表面層を固溶体化
    することを特徴とする請求項3記載の基体表面の改質処
    理装置。
  8. 【請求項8】前記硬質層形成手段が、 前記金属元素を含むターゲットと、該ターゲットにRF
    あるいはDC電力を供給する電力供給電源と、前記第1
    真空容器内に高純度窒素ガスを供給する高純度窒素ガス
    供給手段と、を備え、 前記ターゲットに所定電力を供給して前記金属元素をス
    パッタリングするとともに高純度窒素ガスを供給して反
    応性スパッタリングにより前記硬質層を形成することを
    特徴とする請求項3記載の基体表面の改質処理装置。
  9. 【請求項9】前記硬質層形成手段が、前記金属元素を含
    むターゲットと、該ターゲットにRFあるいはDC電力
    を供給する電力供給電源と、前記第1真空容器内への高
    純度窒素ガスの供給量を制御可能な高純度窒素ガス供給
    手段と、を備え、 前記固溶体形成手段が、ガスをイオン化して前記基体表
    面に照射する荷電粒子ビーム源と、該荷電粒子ビーム源
    ヘ導入するアルゴンおよび窒素ガスの混合率の制御可能
    な第2ガス導入手段と、を備え、 前記高純度窒素ガス手段が高純度窒素ガスの供給量を当
    初には少量に抑えて徐々に増加させるとともに、前記第
    2ガス導入手段が窒素ガスの混合率を当初には低くして
    徐々に高くすることにより、前記基体表面から離隔する
    ほど窒化率の高い前記硬質層を形成することを特徴とす
    る請求項3記載の基体表面の改質処理装置。
JP03913193A 1993-03-01 1993-03-01 基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置 Expired - Fee Related JP3157943B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP03913193A JP3157943B2 (ja) 1993-03-01 1993-03-01 基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP03913193A JP3157943B2 (ja) 1993-03-01 1993-03-01 基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06248417A JPH06248417A (ja) 1994-09-06
JP3157943B2 true JP3157943B2 (ja) 2001-04-23

Family

ID=12544554

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP03913193A Expired - Fee Related JP3157943B2 (ja) 1993-03-01 1993-03-01 基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3157943B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0957757A (ja) * 1995-03-27 1997-03-04 Toyoda Gosei Co Ltd 成形品及びその製造方法並びに成形用金型装置
US5783641A (en) * 1995-04-19 1998-07-21 Korea Institute Of Science And Technology Process for modifying surfaces of polymers, and polymers having surfaces modified by such process
WO1997031202A1 (fr) * 1996-02-26 1997-08-28 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Piston en aluminium pour moteurs a combustion interne
GB2321063A (en) * 1997-01-08 1998-07-15 Oxford Plasma Technology Ltd Reactive particle beam sputtering
KR100324435B1 (ko) * 1999-09-18 2002-02-16 김덕중 플라즈마를 이용한 질화알루미늄 형성 방법 및 그 장치
FR2879625B1 (fr) * 2004-02-04 2007-04-27 Guernalec Frederic Dispositif de nitruration par implantation ionique d'une piece en alliage d'aluminium et procede mettant en oeuvre un tel dispositif
KR100654673B1 (ko) * 2005-06-30 2006-12-08 한국원자력연구소 이온빔 스퍼터링에 의한 금형 표면연마장치 및 그 연마방법

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06248417A (ja) 1994-09-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2207235C (en) Large-scale, low pressure plasma-ion deposition of diamondlike carbon films
JPS6135269B2 (ja)
JP2007524760A (ja) アルミニウム合金製の部品をイオン注入によって窒化処理する装置および、そのような装置を利用する方法
JP3157943B2 (ja) 基体表面の改質処理方法およびその改質処理装置
US5400317A (en) Method of coating a workpiece of a plastic material by a metal layer
JP2004292934A (ja) イオン窒化装置およびこれを用いた成膜装置
JP3252020B2 (ja) 射出成形用アルミニウム金型の表面処理方法及びその装置
JP2010229463A (ja) 硬質皮膜被覆部材およびその製造方法
KR20130128733A (ko) 이온주입 및 박막 증착 장치 및 이를 이용한 이온주입 및 박막 증착 방법
JPH01129958A (ja) 高密着窒化チタン膜形成方法
JP2001192861A (ja) 表面処理方法及び表面処理装置
JPH08260126A (ja) アルミニウム基材の表面溶融硬化方法
KR100324435B1 (ko) 플라즈마를 이용한 질화알루미늄 형성 방법 및 그 장치
JP2916735B2 (ja) プラズマ表面改質方法および装置
US20080124941A1 (en) Manufacturing method of semiconductor device and semiconductor device manufacturing apparatus
KR100333948B1 (ko) 마이크로펄스 글로우방전을 이용한 이온질화 및다이아몬드형 탄소막 증착방법
JP2593011B2 (ja) 硬質膜被覆金属部材の製造方法
JPH03267358A (ja) 金型の表面処理方法
KR102382779B1 (ko) 박막증착장치 및 이를 이용한 dlc 박막 코팅 방법
JPH04161308A (ja) モールド用簡易金型およびその製造方法
US20020078895A1 (en) Plasma treatment apparatus
KR100317731B1 (ko) 고밀도 플라즈마 이온질화 방법 및 그 장치
JP3314812B2 (ja) グロー放電を利用した金属表面のイオン窒化方法
JP3572240B2 (ja) 導電部材の物理的表面改質方法および表面改質装置
JPH0776029A (ja) 射出成形金型およびその成形金型の表面処理装置およびその表面処理装置による成形金型の表面処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080209

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090209

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100209

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees