JP3153705B2 - 耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板 - Google Patents

耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板

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JP3153705B2 JP11359094A JP11359094A JP3153705B2 JP 3153705 B2 JP3153705 B2 JP 3153705B2 JP 11359094 A JP11359094 A JP 11359094A JP 11359094 A JP11359094 A JP 11359094A JP 3153705 B2 JP3153705 B2 JP 3153705B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車車体や家電製品に
好適な有機複合被覆鋼板に関するものである。
【従来の技術】近年、北米や北欧などの寒冷地では、冬
期に散布する道路凍結防止の塩類による自動車車体の腐
食が大きな社会問題となっている。このため、自動車車
体として使用される鋼板は優れた耐食性が要求され、従
来の冷延鋼板に代わって、耐食性の高い表面処理鋼板を
使用する傾向が強くなっている。
【0002】このような表面処理鋼板として、特公平4
−48348号公報や特開平2−15177号公報に示
されるような有機複合被覆鋼板をあげることができる。
これらの鋼板は、亜鉛系めっき鋼板をベースとして、第
1層にクロメート皮膜を有し、その上層に第2層として
エポキシ樹脂の末端に1個以上の塩基性窒素原子と2個
以上の一級水酸基とを付加させた基体樹脂と、ポリイソ
シアネート化合物およびブロックイソシアネート化合物
とからなる有機樹脂に、シリカと難溶性クロム酸塩を特
定の比率で添加した有機樹脂皮膜を有することを特徴と
する、耐食性、溶接性、耐パウダリング性、塗料密着性
に優れた有機複合被覆鋼板である。また、特公平4−7
6392号公報には、エポキシ樹脂にポリイソシアネー
ト化合物を反応硬化させ、さらにシリカを単独で配合し
た有機皮膜用塗料組成物が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、最近、腐食環境
下に鉄錆が共存するような特殊な環境下での耐食性(以
下、「耐もらい錆性」という)が問題とされ始めている
(CAMP-ISIJ vol.5(1992),p.1693)。すなわち、有
機複合被覆鋼板をこのような環境下で使用すると、鉄錆
が有機皮膜の表面に付着して、有機複合被覆鋼板の元来
の優れた耐食性を著しく低下させ、その結果、有機皮膜
を施していない亜鉛系合金めっき鋼板に対する耐食性の
優位性を低下させるという問題が指摘されている。そし
て、上述した従来の有機複合被覆鋼板(特公平4−48
348号、特開平2−15177号、特公平4−763
92号)についても、この耐もらい錆性が必ずしも十分
ではないことが最近明らかとなった。これに対して「GA
LVATECH '92,p.372」では、有機樹脂中の架橋剤の添
加量を減少させて架橋密度を低下させた場合、有機複合
被覆鋼板の耐もらい錆性が低下したとしており、有機樹
脂皮膜の架橋密度増加による耐もらい錆性の向上効果を
示唆しているが、耐もらい錆性を向上させるための手段
としては全く具体性がない。
【0004】本発明はこのような現状に鑑み、耐もらい
錆性に優れた有機複合被覆鋼板を提供することをその目
的とする。
【課題を解決するための手段】本発明の有機複合被覆鋼
板は、上記の目的を達成するために本発明者らが鋭意検
討を重ねた結果、耐もらい錆性向上のためには、 硬化剤であるポリイソシアネート化合物の多官能化
による有機皮膜の高架橋密度化 防錆添加剤として、シリカと難溶性クロム酸塩の併
用 という2つの条件が極めて有効であることを見出し、な
されたものである。すなわち、本発明の有機複合被覆鋼
板は、以下のような構成を有する。
【0005】(1) 亜鉛系めっき鋼板の表面に金属ク
ロム換算で付着量10〜200mg/m2のクロメート
皮膜を有し、該クロメート皮膜の上部に、エポキシ樹脂
の末端に少なくとも1個以上の塩基性窒素原子と少なく
とも2個以上の一級水酸基を付加せしめてなる基体樹脂
に、1分子中に少なくとも3個のイソシアネート基を有
する多官能ポリイソシアネート化合物と、(基体樹脂+
多官能ポリイソシアネート化合物)/防錆添加剤の重量
比が90/10〜40/60の割合で添加された防錆添
加剤が配合された有機皮膜を膜厚0.2〜2.0μmの
厚さで有してなる耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
板。
【0006】(2) 有機皮膜を構成する防錆添加剤
が、下記重量比からなるシリカおよび難溶性クロム酸塩
である上記(1)に記載の耐もらい錆性に優れた有機複
合被覆鋼板。 シリカ/難溶性クロム酸塩=35/5〜1/39 (3) 多官能ポリイソシアネートが、1分子中に少な
くとも4個のイソシアネート基を有する上記(1)また
は(2)に記載の耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
板。 (4) 多官能ポリイソシアネートが、1分子中に少な
くとも6個のイソシアネート基を有する上記(1)また
は(2)に記載の耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
板。 (5) 多官能ポリイソシアネートが、1分子中に少な
くとも6個のイソシアネート基を有するヘキサメチレン
ジイソシアネートの多官能体である上記(1)または
(2)に記載の耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
板。
【0007】
【作用】亜鉛系めっき鋼板の表面に形成されたクロメー
ト層の上層に第2層として形成された有機皮膜は、クロ
メート層中の6価のクロム酸イオンの腐食環境中への過
剰な溶出を抑制して防食効果を持続させる効果を有する
が、本発明では特に、エポキシ樹脂の末端に少なくとも
1個以上の塩基性窒素原子と少なくとも2個以上の一級
水酸基を付加せしめてなる基体樹脂に対して、硬化剤と
して1分子中に少なくとも3個のイソシアネート基を有
する多官能ポリイソシアネート化合物を反応させて形成
された高架橋密度の有機皮膜と、有機皮膜中に特定の比
率で添加された防錆添加剤(シリカと難溶性クロム酸塩
とによる相乗効果によって、従来の有機複合被覆鋼板と
比較して耐もらい錆性を著しく向上させたものである。
【0008】ベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、
亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−F
e合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−
Al合金めっき鋼板、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn
−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金め
っき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、さらには
これらに金属酸化物、難溶性クロム酸塩、ポリマー等を
分散めっきした亜鉛系複合めっき鋼板等を挙げることが
できる。また、上記のようなめっきのうち同種または異
種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板であっも
よい。めっき方法としては、電解法、溶融法、気相法の
うち実施可能ないずれの方法を採用することもできる
が、下地の冷延鋼板の選択性からは、電解法が有利であ
る。
【0009】上記の亜鉛系めっき鋼板の表面に形成され
るクロメート皮膜は、6価クロムのクロム酸イオンによ
る自己修復作用により亜鉛系めっき鋼板の腐食を抑制す
る。このクロメート皮膜は付着量が、金属クロム換算で
10mg/m2未満では十分な耐食性を期待することが
できず、一方、200mg/m2を超えると溶接性が劣
化する。このためクロメート皮膜の付着量は金属クロム
換算で10〜200mg/m2とする。また、さらに高
度な耐食性、溶接性を満足させるためには、金属クロム
換算で20〜100mg/m2の範囲とすることが好ま
しい。このクロメート皮膜を形成するためのクロメート
処理としては、反応型、電解型、塗布型のいずれの方法
も適用可能である。耐食性の観点からは、クロメート皮
膜中に6価クロムのクロム酸イオンを多く含有する塗布
型が好ましい。
【0010】塗布型クロメート処理は、部分的に還元さ
れたクロム酸水溶液を主成分とし、 水溶性または水分散性のアクリル樹脂、ポリエステ
ル樹脂等の有機樹脂 シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化
物のコロイド類および/または粉末 モリブデン酸、タングステン酸、バナジン酸等の酸
および/またはその塩類 りん酸、ポリりん酸等のりん酸類 ジルコニウムフッ化物、ケイフッ化物、チタンフッ
化物等のフッ化物 亜鉛イオン等の金属イオン りん化鉄、アンチモンドープ型酸化錫等の導電性微
粉末 上記〜の成分の中から、必要に応じて1種以上を添
加された処理液を亜鉛系めっき鋼板に塗布し、水洗する
ことなく乾燥させる。塗布型クロメート処理は、通常、
ロールコーター法により処理液を塗布するが、浸漬法や
スプレー法により塗布した後に、エアナイフ法やロール
絞り法により塗布量を調整することも可能である。
【0011】有機皮膜を構成するエポキシ樹脂は、ビス
フェノールAとエピクロロヒドリンとを縮合反応させた
縮合物を主体としたものが好ましい。エポキシ樹脂とし
ては、例えばエポキシ化油、エポキシポリブタジエンの
ような脂肪族構造、或いは脂環族構造のみからなるもの
があるが、優れた耐食性を得るためには上記縮合物を主
体としたエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。エポキシ
樹脂としては、例えば、エピコート828、1001、
1004、1007、1009、1010(いずれもシ
ェル化学社製)等を用いることができる。このエポキシ
樹脂は、特に低温での硬化を必要とする場合には数平均
分子量1500以上のものが望ましい。なお、上記エピ
コートは単独または異なる種類のものを混合して使用す
ることができる。
【0012】エポキシ樹脂に塩基性窒素原子と一級水酸
基を導入するには、例えば、アルカノールアミンおよび
/またはアルキルアルカノールアミンをエポキシ樹脂の
オキシラン基に付加せしめる方法を採ることができる。
これらのアミンとしては、例えばモノエタノールアミ
ン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、
モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブ
タノールアミン等があり、これらのアミンを単独または
混合して使用する。
【0013】上記のような基体樹脂を用いる狙いは以下
のような点にある。すなわち、まず、ベース樹脂にビス
フェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応からな
るエポキシ樹脂を用いることにより、自動車車体防錆用
として通常用いられているカチオン電着塗料との優れた
密着性が期待できる。また、樹脂構造として塩基性窒素
原子と一級水酸基を導入することにより、(1) カチ
オン電着時に発生するアルカリによる皮膜破壊を防止
し、下地クロメートおよびカチオン電着塗膜との密着性
を安定化させ、(2) 一級水酸基と後述するような選
択された有機溶媒組成が架橋剤(イソシアネート)との
低温反応性を高め、(3) さらに、エポキシ1分子中
に2モル以上の水酸基を導入することによって十分に緻
密な架橋構造の皮膜が得られる。2モル以下では十分な
架橋が得られない。
【0014】また、他の方法として、エポキシ樹脂を部
分的に他の化合物で変性してもよい。但し、この場合に
はエポキシ樹脂1分子中に平均2モル以上の一級水酸基
を含有させることが必要である。エポキシ樹脂の部分的
変性の方法は、 (1) モノカルボン酸によるエステル化(モノカルボ
ン酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヒ
マシ油脂肪酸等の飽和または不飽和脂肪酸;酢酸、プロ
ピオン酸、酪酸等の低分子脂肪族モノカルボン酸;安息
香酸等の芳香族モノカルボン酸等) (2) 脂肪族または芳香族アミンによる変性(脂肪族
または芳香族アミンとしては、モノメチルアミン、ジメ
チルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、イソ
プロピルアミン等の脂肪族アミン;アニリン等の芳香族
アミン等) (3) オキシ酸類による変性(オキシ酸類としては、
乳酸、γ−オキシプロピオン酸等) 等がある。なお、ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、
ゼバチン酸等)による変性方法もあるが、この方法は、
エポキシ樹脂が必要以上に高分子量化し過ぎること、さ
らには分子量分布を一定にコントロールすることが反応
制御上困難であること、耐食性の向上が認められないこ
と等の理由から、本発明の皮膜を得るには不適当な方法
である。
【0015】本発明の有機皮膜の硬化方法は、基体樹脂
中の水酸基とポリイソシアネート中のイソシアネート基
との間のウレタン化反応とすることが好適である。本発
明の有機皮膜に用いられるポリイソシアネート化合物と
しては、耐もらい錆性向上の目的から、1分子中に少な
くとも3個以上のイソシアネート基(これらのイソシア
ネート基はブロックしてあってもよい)を有するものと
する。すなわち、1分子中に1個のイソシアネート基を
有するモノイソシアネート化合物、或いは1分子中に2
個のイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物
では、十分な耐もらい錆性を付与することができない。
これに対して本発明では、1分子中に少なくとも3個以
上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化
合物、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは6個
以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート
化合物が、モノイソシアネート化合物やジイソシアネー
ト化合物よりも、優れた耐もらい錆性を付与できること
を見出したものである。
【0016】このような1分子中に少なくとも3個以上
のイソシアネート基を有する多官能ポリイソシアネート
化合物としては、1分子中に3個以上のイソシアネート
基を有する化合物、少なくとも2個のイソシアネート基
を有するイソシアネート化合物を多価アルコールと反応
せしめた化合物、若しくはそれらのビューレットタイプ
付加物、イソシアヌル環タイプ付加物等の化合物があ
る。例えば、トリフェニルメタン−4,4´、4´´−
トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベ
ンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,
4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´、5,5´
−テトライソシアネート等の3個以上のイソシアネート
基を有するポリイソシアネート化合物;エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコ
ール、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロ
パン、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基に対
してイソシアネート基が過剰量となる量のポリイソシア
ネート化合物を反応させてなる付加物;ヘキサメチレン
ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリ
レンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、
4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4
´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等
のビューレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付
加物等がある。
【0017】上記ポリオールの水酸基に対してイソシア
ネート基が過剰量となる量のポリイソシアネート化合物
を反応させてなる付加物において、該ポリイソシアネー
ト化合物としては、上記3個以上のイソシアネート基を
有するポリイソシアネート化合物並びにヘキサメチレン
ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシア
ネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシ
アネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホ
ロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シク
ロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−
2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3
−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘ
キサンなどの脂環族ジイソシアネート化合物;およびキ
シリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネー
ト、m−(又はp−)フェニレンジイソシアネート、ジ
フェニルメタンジイソシアネート、ビス(4−イソシア
ナトフェニル)スルホンなどの芳香族ジイソシアネート
化合物などを挙げることができる。
【0018】また、1分子中に少なくとも6個のイソシ
アネート基を有する多官能ポリイソシアネート化合物
(6官能ポリイソシアネート化合物)の中でも、特に、
ヘキサメチレンジイソシアネートの多官能体が耐もらい
錆性に有効である。なお、本発明で使用する多官能ポリ
イソシアネート化合物は、1分子中のイソシアネート基
の数が異なる同属化合物の混合物であってもよい。ま
た、上記多官能ポリイソシアネートの2種類以上の化合
物を併用してもよい。
【0019】皮膜形成物を安定に保存するためには、硬
化剤のイソシアネートを保護する必要がある。この方法
としては、加熱硬化時に保護基(ブロック剤)が脱離
し、イソシアネート基が再生する保護方法が採用でき
る。また、この保護剤(ブロック剤)としては、例え
ば、 (1) メタノール、エタノール、プロパノール、ブタ
ノール、オクチルアルコール等の脂肪族モノアルコール
類 (2) エチレングリコールおよび/またはジエチレン
グリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチ
ル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,is
o,sec)等のモノエーテル (3) フェノール、クレゾール等の芳香族アルコール (4) アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム
等のオキシム 等があり、これらの1種または2種以上と前記イソシア
ネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常
温下で安定に保護されたイソシアネート化合物を得る。
【0020】このような多官能ポリイソシアネート化合
物は、硬化剤として基体樹脂(固形分)100重量部に
対して5〜80重量部、好ましくは10〜50重量部の
割合で配合することが好ましい。硬化剤の配合量が10
重量部未満では、形成された皮膜の架橋密度が不十分と
なり、耐もらい錆性の向上効果が小さい。一方、80重
量部を超えて配合すると、未反応の残留イソシアネート
が吸水し、耐もらい錆性に効果がないばかりではなく、
逆に耐食性(耐穴あき性)、密着性を損なう。このよう
な理由から、多官能ポリイソシアネート化合物の配合量
は、基体樹脂100重量部に対して5〜80重量部とす
ることが好ましい。
【0021】さらに、架橋剤としてメラミン、尿素およ
びベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルム
アルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若
しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させ
てなるアルキルエーテル化アミノ樹脂を、イソシアネー
ト化合物と併用してもよい。なお、樹脂は以上のような
架橋剤で十分架橋するが、さらに低温架橋性を増大させ
るため、公知の硬化促進触媒を使用することが望まし
い。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモ
ルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバル
ト、塩化第一スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマス等が
ある。また、付着性など若干の物性向上を狙いとして、
上記樹脂組成物に公知のアクリル、アルキッド、ポリエ
ステル等の樹脂を併用することもできる。
【0022】本発明で以上のような樹脂組成物皮膜を設
ける狙いとしては、次のような点を挙げることができ
る。すなわち、高度な耐食性(耐穴あき性)と2コート
以上の多層塗膜密着性、さらに鉄錆共存腐食環境下での
優れた耐もらい錆性を得るために、 ベースとしてエ
ポキシ樹脂を採用し、素地やカチオン電着皮膜との高密
着性と高耐食性を得ることを期待し、 また樹脂の極
性を塩基性とすることによってカチオン電着時に界面に
発生するアルカリによる樹脂構造の劣化をなくす、とい
った従来の知見を生かし、 さらに、エポキシ1分子
中に2モル以上の水酸基を導入したエポキシ樹脂に対し
て、硬化剤として本発明の特徴である1分子中に少なく
とも3個以上のイソシアネート基を有する多官能ポリイ
ソシアネート化合物を採用することによって、優れた耐
もらい錆性を有する高架橋密度皮膜を得る、というもの
である。
【0023】本発明の皮膜形成組成物は、基体樹脂であ
るエポキシ樹脂の塩基を低分子酸で中和し、水分散若し
くは水溶性組成物として使用することも可能であるが、
板温で250℃以下の低温乾燥、特に170℃以下の極
低温乾燥を必要とするようなBH鋼板用皮膜材として使
用する場合には、そのような中和操作を行わず、有機溶
剤に溶解せしめた組成物として使用するのがより望まし
い。すなわち、水分散若しくは水溶性組成物では、水溶
化のために必要とされる酸性化合物が皮膜中で塩を形成
し、湿潤環境下で水分を皮膜中および皮膜下に吸収し易
く、また低温乾燥条件では十分に強固な皮膜を得ること
ができない等の理由により、耐食性、密着性がやや劣る
傾向がある。
【0024】この有機溶剤種としては、通例塗料業界で
使用する有機溶媒の1種または2種以上の混合溶剤が使
用できるが、その目的のためには高沸点のアルコール系
溶媒は避けるのが好ましい。これには例えば、エチレン
グリコール若しくはジエチレングリコール、モノアルキ
ルエーテル類、C5以上の一級水酸基を有するアルコー
ル類が挙げられる。このような溶剤は、皮膜の硬化反応
を阻害する。推奨される溶剤としては、炭化水素系、ケ
トン系、エスエル系、エーテル系溶剤が挙げられ、ま
た、低分子C4以下のアルコール類、若しくは二級、三
級の水酸基を有するアルコール類も好適である。
【0025】本発明は、樹脂皮膜中に防錆添加剤とし
て、シリカと難溶性クロム酸塩を特定の比率で併用する
ことにより、上記の特定の有機樹脂皮膜による効果との
相乗効果により、優れた耐もらい錆性を実現できる。シ
リカは、亜鉛系めっき鋼板の腐食生成物のうち腐食の抑
制に有効な塩基性塩化亜鉛の生成を促進させる効果を有
するほか、腐食環境中に微量に溶解することにより、ケ
イ酸イオンが皮膜形成型腐食抑制剤として機能すること
により、防食効果が発揮されるものと推定される。
【0026】本発明で使用されるシリカとしては、乾式
シリカ(例えば、日本アエロジル(株)製のAEROS
IL 130、AEROSIL 200、AEROSIL
300、AEROSIL 380、AEROSIL R
972、AEROSIL R811、AEROSIL R
805等)、オルガノシリカゾル(例えば、日産化学工
業(株)製のMA−ST、IPA−ST、NBA−S
T、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、ETC
−ST、DMAC−ST等)、沈降法湿式シリカ(例え
ば、徳山曹達(株)製T−32(S)、K−41,F−
80等)、ゲル法湿式シリカ(例えば、富士デヴィソン
化学(株)製サイロイド244、サイロイド150、サ
イロイド72、サイロイド65、SHIELDEX等)
等を使用することができる。また、上記のシリカを2種
以上を混合して使用することができる。
【0027】これらのシリカには親水性シリカと疎水性
シリカとがある。これらのうち、親水性シリカでも耐も
らい錆性向上効果は期待できるが、後述するように疎水
性シリカの方が耐もらい錆性を顕著に向上させる。親水
性シリカは、その表面が水酸基(
【化1】 )で覆われており、親水性を示す。このシラノール基は
反応性に富むため各種有機化合物と反応しやすく、シリ
カ表面を有機化することができる。疎水性シリカは、こ
のような親水性シリカ表面のシラノール基に一部または
ほとんどをメチル基やアルキル基等で置換反応させ、シ
リカ表面を疎水化させたものである。
【0028】疎水性シリカの製法は多種多様であり、そ
の代表的なものとして、アルコール類、ケトン類、エス
テル類等の有機溶剤、シラン類、シラザン類、ポリシロ
キサン類等の反応であり、反応の方法としては、有機溶
媒中における反応加圧法、触媒加熱法等がある。シリカ
は優れた防食効果を有しているが、特に、疎水性シリカ
が耐もらい錆性を向上させる効果が大きい。その理由と
して、親水性シリカはその強い親水性のために鉄錆中の
鉄イオン、或いは鉄の酸化物の浸透を招き易く、これが
耐もらい錆性向上に効果が少ない理由と推定される。こ
のため本発明においては、疎水性シリカを採用する方が
好ましい。
【0029】また、有機皮膜中に添加された難溶性クロ
ム酸塩は、腐食環境中で微量に溶解することにより、6
価のクロム酸イオンを放出し、クロメート皮膜と同様の
機構で亜鉛系めっき鋼板の腐食を抑制するものと考えら
れる。本発明で使用する難溶性クロム酸塩としては、ク
ロム酸バリウム(BaCrO 4)、クロム酸ストロンチ
ウム(SrCrO4)、クロム酸カルシウム(CaCr
4)、クロム酸亜鉛(ZnCrO4・4Zn(O
H)2)、クロム酸亜鉛カリウム(K2O・4ZnO・4
CrO3・3H2O)、クロム酸鉛(PbCrO4)等の
微粉末を使用することができる。また、上記の難溶性ク
ロム酸塩を2種以上混合して使用することも可能であ
る。但し、耐食性の観点からは、長期にわたってクロム
酸イオンによる自己修復効果の期待できるクロム酸バリ
ウム、クロム酸ストロンチウムを使用することが好まし
い。また、自動車の塗装前処理工程において、有機皮膜
中からの水可溶性クロムの溶出をできるだけ少なくする
という観点からは、水に対する溶解度の小さいクロム酸
バリウムが好ましい。
【0030】本発明では、上述した特定の基体樹脂と多
官能ポリイソシアネート化合物からなる樹脂組成物中
に、シリカおよび難溶性クロム酸塩を特定の比率で配合
することにより、双方の防食効果の相乗効果によって、
最も優れた耐もらい錆性を実現できる。すなわち、シリ
カおよび難溶性クロム酸塩が不揮発分の重量比で、 (基体樹脂+多官能ポリイソシアネート化合物)/
(シリカ+難溶性クロム酸塩=90/10〜40/60 シリカ/難溶性クロム酸塩=35/5〜1/39 の割合で配合された場合に、最も優れた耐食性を得るこ
とが可能となる。ここで、(基体樹脂+多官能ポリイソ
シアネート化合物)/(シリカ+難溶性クロム酸塩)が
90/10を超えると、シリカおよび難溶性クロム酸塩
による防食効果が十分に発揮されないため耐もらい錆性
が劣る。一方、40/60未満であると、エポキシ樹脂
のバインダーとしての効果が不十分となり、塗料密着性
が劣化する。また、シリカ/難溶性クロム酸塩が35/
5を超えても、また、1/39未満でも相乗効果が不十
分となり、耐もらい錆性がやや劣化する。
【0031】以上のように、シリカは安定な腐食生成物
の生成を促進する効果によってもらい錆による腐食を抑
制し、一方、難溶性クロム酸塩はもらい錆によって形成
された有機皮膜の欠陥部を6価のクロム酸イオンの効果
によって補修する作用をするものであり、このようなも
らい錆による腐食の抑制機構が異なるシリカと難溶性ク
ロム酸塩とを併用することによって、はじめて優れた耐
もらい錆性を達成できたものである。
【0032】図1に、上述した特定の基体樹脂とイソホ
ロンジイソシアネート系の6官能ポリイソシアネート化
合物とからなる有機樹脂(表2のNo.2)に、シリカ
と難溶性クロム酸塩をその比率を変えて添加した場合
の、通常の未塗装耐食性(耐穴あき性試験200サイク
ル後の評価)および耐もらい錆性(耐もらい錆性試験7
サイクル後の評価)とシリカ/難溶性クロム酸塩の重量
比との関係について示す。これによれば、シリカ/難溶
性クロム酸塩の重量比が35/5を超えると耐もらい錆
性が劣化し、一方、1/39未満では通常の未塗装耐食
性(耐穴あき性)が劣化する。したがって、シリカ/難
溶性クロム酸塩の配合比は35/5〜1/39、望まし
くは20/20〜1/39が好ましいことが判る。ま
た、図2には、比較のために硬化剤として従来のジイソ
シアネート化合物(HMDI)を用いた場合の耐もらい
錆性とシリカ/難溶性クロム酸塩の重量比との関係を示
す。図1、図2から、本発明は多官能ポリイソシアネー
ト化合物と特定比率のシリカおよび難溶性クロム酸塩の
配合による相乗効果によってはじめて達成できたもので
あることが判る。
【0033】さらに、図4に、硬化剤としてヘキサメチ
レンジイソシアネート系の6官能ポリイソシアネート化
合物を用いた場合の、未塗装耐食性(耐穴あき性試験2
00サイクル後の評価)および耐もらい錆性(耐もらい
錆性試験15サイクル後の評価)とシリカ/難溶性クロ
ム酸塩の重量比との関係について示す。これによれば、
イソホロンジイソシアネート系の6官能ポリイソシアネ
ート化合物を用いた場合と同様、シリカ/難溶性クロム
酸塩の配合比は35/5〜1/39、望ましくは20/
20〜1/39が好ましいことが判る。さらに、後述す
る実施例(例えば、No.66とNo.70の比較)の
記載から明らかなように、ヘキサメチレンジイソシアネ
ート系の6官能ポリイソシアネート化合物とイソホロン
ジイソシアネート系の6官能ポリイソシアネート化合物
とを較べた場合、シリカ/難溶性クロム酸塩の配合比を
同一とした場合には、ヘキサメチレンジイソシアネート
系の6官能ポリイソシアネート化合物を用いた方がより
優れた耐もらい錆性が得られる。
【0034】なお、本発明では、上記のシリカおよび難
溶性クロム酸塩が樹脂組成物中への主な添加剤成分とな
るが、その他にもシランカップリング剤、着色顔料(例
えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料
等)、着色染料(例えば、アゾ系染料、アゾ系金属錯塩
染料等)、潤滑剤(例えば、ポリエチレン系ワックス、
テフロン、グラファイト、二硫化モリブデン等)、防錆
顔料(例えば、トリポリりん酸二水素アルミニウム、り
んモリブデン酸アルミニウム、りん酸亜鉛等)、導電顔
料(例えば、りん化鉄、アンチモンドープ型酸化錫
等)、界面活性剤等から1種以上をさらに配合すること
も可能である。
【0035】上述したような有機皮膜はクロメート皮膜
上に0.2〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μ
mの膜厚で形成させる。膜厚が0.2μm未満である
と、十分な耐もらい錆性が得られず、一方、2.0μm
を超えると溶接性(特に連続打点性)が低下する。図3
に、有機被膜の膜厚とスポット溶接性(連続打点性)と
の関係を調べた結果を示す。これによれば、膜厚が2.
0μmを超えるとスポット溶接性が低下することが判
る。
【0036】上記の塗料組成物を亜鉛系めっき鋼板に塗
布する方法としては、通常、ロールコーター法により塗
料組成物を塗布するが、浸漬法やスプレー法により塗布
した後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量を
調整することも可能である。また、塗料組成物を塗布し
た後の加熱処理方法としては、熱風炉、高周波誘導加熱
炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は、到
達板温で80〜250℃、好ましくは100〜200℃
の範囲で行うことが望ましい。さらに本発明をBH鋼板
に適用する場合には、150℃以下の加熱処理が望まし
い。本発明鋼板はこのような低温焼付により得られると
いう大きな特徴がある。
【0037】この焼付温度が80℃未満では皮膜の架橋
が進まず、十分な耐食性を得ることができず、一方、2
50℃を超える高温焼付になると、耐食性が劣化してく
る。これは250℃を超える高温焼付では、クロメート
皮膜成分中に含有される水分の揮散と、水酸基(
【化2】 )どうしの脱水縮合反応の急速な進行とにより、クロメ
ート皮膜のクラック発生によるクロメート皮膜の破壊が
進行し、また、6価クロムの還元が進んで6価クロムの
不働態化作用が低減すること等によるものと推定され
る。なお、自動車車体にはカチオン電着塗装が施される
が、クロメート皮膜+有機皮膜の湿潤電気抵抗が200
kΩ/cm2を超えるとカチオン電着塗装がうまく形成
されないという問題があり、このため自動車車体を主た
る用途とする本発明鋼板では、クロメート皮膜+樹脂組
成物皮膜の湿潤抵抗を200kΩ/cm2以下に抑える
よう両皮膜を形成させることが好ましい。
【0038】本発明は、以上述べたような皮膜構造を両
面または片面に有する鋼板を含むものである。本発明鋼
板の態様としては、例えば以下のようなものがある。 (1)片面…メッキ皮膜−クロメート皮膜−有機皮膜 片面…Fe面 (2)片面…メッキ皮膜−クロメート皮膜−有機皮膜 片面…メッキ皮膜 (3)両面…メッキ皮膜−クロメート皮膜−有機皮膜 なお、本発明の有機複合被覆鋼板は自動車用に限らず、
家電、建材等の用途にも用いることができる。
【0039】
【実施例】自動車車体用の有機複合被覆鋼板として、亜
鉛系めっき鋼板をアルカリ脱脂後、水洗・乾燥し、クロ
メート処理を施し、次いで、塗料組成物をロールコータ
ーにより塗布し、焼き付けた。得られた有機複合被服鋼
板について、耐もらい錆性、塗料密着性、耐パウダリン
グ性および溶接性の各試験を行った。その結果を表5〜
表14に示す。なお、本実施例の製造条件は、以下の通
りである。 (1)亜鉛系めっき鋼板 厚さ0.8mm、表面粗さ(Ra)1.0μmの冷延鋼
板に各種亜鉛系めっきを施し、処理原板として用いた。
(表1参照)
【0040】(2)クロメート処理 塗布型クロメート処理 下記に示す液組成のクロメート処理液をロールコーター
により塗布し、水洗することなく乾燥させた。クロメー
ト層の付着量は、ロールコーターのピックアップロール
とアプリケーターロールの周速比を変化させ調整した。 無水クロム酸:20g/l りん酸イオン:4g/l ジルコニウムフッ化物イオン:1g/l 亜鉛イオン:1g/l 6価クロム/3価クロム:3/3(重量比) 無水クロム酸/ジルコニウムフッ化物イオン:20/1
(重量比)
【0041】 電解クロメート処理 無水クロム酸30g/l、硫酸0.2g/l、浴温40
℃の処理液を用いて、電流密度10A/dm2で、亜鉛
系めっき鋼板に陰極電解処理を行い、水洗・乾燥した。
クロメート層の付着量は、陰極電解処理の通電量を制御
することにより調整した。 反応型クロメート処理 無水クロム酸30g/l、りん酸10g/l、NaF
0.5g/l、K2TiF64g/l、浴温60℃の処理
液を用いて、亜鉛系めっき鋼板にスプレー処理し、水洗
・乾燥した。クロメート層の付着量は、処理時間を変化
させ調整した。
【0042】(3)有機樹脂 表2に、使用した有機樹脂を示す。なお、同表に示す基
体樹脂およびポリイソシアネートは下記に示す方法で作
成した。 〔基体樹脂〕 (I) 還流冷却器、撹拌装置、温度計および窒素ガス
吹込み装置を付属してある反応装置にエピコート100
4(シェル化学(株)製エポキシ樹脂;分子量約160
0)1600gにペラルゴン酸(試薬)57g,キシレ
ン80gを加え、170℃で反応せしめた。その後、減
圧下でキシレンを除去し、反応中間体〔A〕を得た。 (II) 撹拌装置、還流冷却器、温度計、液体滴下装
置を付属してある反応装置にエピコート1009(シェ
ル化学(株)製エポキシ樹脂;分子量約3750)18
80g(0.5モル)とメチルイソブチルケトン/キシ
レン=1/1(重量比)の混合溶媒1000gを加えた
後、撹拌加熱し、溶媒の沸点下で均一に溶解した。その
後、70℃まで冷却し、液体滴下装置に分取したジ(n
−プロパノール)アミン70gを30分間を要して滴下
した。この間、反応温度を70℃に保持した。滴下終了
後120℃で2時間保持し、反応を完結せしめた。得ら
れた反応物を樹脂Aとする。樹脂Aの有効成分は66%
である。 (III) 上記(II)と同じ反応装置に(I)で得
た反応中間体〔A〕1650gとキシレン1000gを
秤取し、100℃に加熱し、これに液体滴下装置に分取
したジエタノールアミン65gとモノエタノールアミン
30gとを30分間を要して滴下した。その後120℃
で2時間保持し、反応を完結せしめた。得られた反応生
成物を樹脂Bとする。樹脂Bの有効成分は63%であっ
た。
【0043】〔硬化剤〕 (a)6官能イソシアネート 温度計、撹拌器および滴下ロート付還流冷却器を付属し
てある反応容器にイソホロンジイソシアネート222部
とメチルイソブチルケトン34部を秤取し、均一に溶解
した後、メチルエチルケトンオキシム87部を前記滴下
ロートから、70℃に保持した撹拌状態のイソシアネー
ト溶液中に2時間を要して滴下した。その後、ソルビト
ール30.4部を加えて120℃に昇温し、120℃で
反応させた。その後、この反応物のIR測定をし、
【数1】 のイソシアネート基による吸収がないことを確認し、ブ
チルセロソルブ50.4部を加え、硬化剤aを得た。こ
の硬化剤aの有効成分は80%であった。
【0044】(b)4官能イソシアネート 温度計、撹拌器および滴下ロート付還流冷却器を付属し
てある反応容器にイソホロンジイソシアネート222部
とメチルイソブチルケトン34部を秤取し、均一に溶解
した後、メチルエチルケトンオキシム87部を前記滴下
ロートから、70℃に保持した撹拌状態のイソシアネー
ト溶液中に2時間を要して滴下した。その後、ペンタエ
リスリトール34部を加えて120℃に昇温し、120
℃で反応させた。その後、この反応物のIR測定をし、
【数2】 のイソシアネート基による吸収がないことを確認し、ブ
チルセロソルブ52部を加え、硬化剤bを得た。この硬
化剤bの有効成分は80%であった。
【0045】(c)3官能イソシアネート 温度計、撹拌器および滴下ロート付還流冷却器を付属し
てある反応容器にデュラネート TPA−100(HM
DIのイソシアヌル環タイプ;旭化成(株)製)550
部とメチルイソブチルケトン34部を秤取し、均一に溶
解した後、メチルエチルケトンオキシム270部を前記
滴下ロートから、70℃に保持した撹拌状態のイソシア
ネート溶液中に2時間を要して滴下した。その後、この
反応物のIR測定をし、
【数3】 のイソシアネート基による吸収がないことを確認し、ブ
チルセロソルブ47部を加え、硬化剤cを得た。この硬
化剤cの有効成分は90%であった。
【0046】(d)2官能イソシアネート タケネートB−870N(IPDIのMEKオキシムブ
ロック体;武田薬品工業(株)製)を硬化剤dとして用
いた。 (e) ヘキサメチレンジイソシアネート系の6官能イ
ソシアネート化合物であるデュラネート MF−B80
M(HMDI系の6官能イソシアネートのオキシムブロ
ック体:旭化成工業(株)製)を硬化剤eとして用い
た。
【0047】なお、各特性の評価方法は以下の通りであ
る。 (a)耐食性試験(耐穴あき性) 無塗装の試験片のエッジ部と裏面をテープシールした
後、試験片の下半面にクロスカットを入れ、下記の複合
腐食試験サイクルの腐食促進試験を施し、200サイク
ル後の腐食の進行程度で評価した。 なお、評価基準は以下の通りである。 ◎ : 赤錆発生なし ○+: 赤錆面積率5%未満 ○ : 赤錆面積率5%以上、10%未満 ○−: 赤錆面積率10%以上、20%未満 △ : 赤錆面積率20%以上、50%未満 × : 赤錆面積率50%以上
【0048】(b)耐もらい錆性 無塗装の試験片のエッジ部と裏面をテープシールした
後、下記の鉄錆共存下の複合腐食試験サイクルによる促
進腐食試験を行い、実施例No.1〜65については7
サイクル後の錆発生程度を、また、実施例No.66〜
124については15サイクル後の錆発生程度を、それ
ぞれ評価した。 (*注)鉄錆の供給方法:塩水1l当り10cm2の面
積の冷延鋼板を浸漬した。 なお、評価基準は以下の通りである。 ◎ : 赤錆発生なし ○ : 赤錆面積率10%未満 ○−: 赤錆面積率10%以上、20%未満 △ : 赤錆面積率20%以上、50%未満 × : 赤錆面積率50%以上
【0049】(c)塗料密着性 試験片をアルカリ脱脂した後、日本ペイント(株)U−
600で電着塗装(膜厚25μm)を行い、次いで関西
ペイント(株)製ルーガベークB−531で上塗り塗装
(膜厚35μm)を行った。これらの試験を40℃のイ
オン交換水中に240時間浸漬した。次いで試験片を取
り出し、24時間室温で放置した後、塗膜に2mm間隔
の碁盤目を100個刻み、接着テープを粘着・剥離し
て、塗膜の剥離率で評価した。その評価基準は以下の通
りである。 ◎: 剥離なし ○: 剥離率3%未満 △: 剥離率3%以上、10%未満 ×: 剥離率10%以上
【0050】(d)溶接性 CF型電極、加圧力200kgf、通電時間10サイク
ル/50Hz、溶接電流10kAで連続打点性の試験を
行い、連続打点数で評価した。その評価基準は以下の通
りである。 ◎: 5000点以上 ○: 4000点以上、5000点未満 △: 3000点以上、4000点未満 ×: 3000点未満
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
【表11】
【0062】
【表12】
【0063】
【表13】
【0064】
【表14】
【0065】*1 発:本発明例、比:比較例 *2 表1に記載のNo. *3 金属クロム換算のクロメート付着量 *4 表2に記載のNo. *5 表3に記載のNo. *6 表4に記載のNo. *7 不揮発分の重量比 *8 不揮発分の重量比
【0066】以上の実施例からも明らかなように、本発
明の有機複合被覆鋼板は優れた耐もらい錆性を示す。ま
た、特に硬化剤として1分子中に少なくとも4個、好ま
しくは6個以上のイソシアネート基を有する多官能ポリ
イソシアネートを用いた場合に、より優れた耐もらい錆
性を示すこと、さらに、表10の実施例No.66〜6
8とNo.70〜72によれば、硬化剤としてヘキサメ
チレンジイソシアネート系の6官能ポリイソシアネート
化合物を用いた方が、イソホロンジイソシアネート系の
6官能ポリイソシアネート化合物を用いるよりも優れた
耐もらい錆性が得られることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が規定する特定の基体樹脂と多官能ポリ
イソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネート系
の6官能ポリイソシアネート化合物)とからなる有機樹
脂中にシリカと難溶性クロム酸塩を比率を変えて添加し
た場合の、シリカ/難溶性クロム酸塩の重量比と通常の
未塗装耐食性および耐もらい錆性(耐もらい錆性試験7
サイクル後の評価)との関係を示すグラフ
【図2】硬化剤として従来のジイソシアネート化合物を
用いた有機樹脂中にシリカと難溶性クロム酸塩を比率を
変えて添加した場合の、シリカ/難溶性クロム酸塩の重
量比と耐もらい錆性との関係を示すグラフ
【図3】有機皮膜の膜厚と溶接性との関係を示すグラフ
【図4】本発明が規定する特定の基体樹脂とヘキサメチ
レンジイソシアネート系の6官能ポリイソシアネート化
合物とからなる有機樹脂中にシリカと難溶性クロム酸塩
を比率を変えて添加した場合の、シリカ/難溶性クロム
酸塩の重量比と通常の未塗装耐食性および耐もらい錆性
(耐もらい錆性試験15サイクル後の評価)との関係を
示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石山 高 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 春田 泰彦 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関西ペイント株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−235071(JP,A) 特公 平4−48348(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05D 1/00 - 7/26 C23C 22/00 C23C 22/30

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板の表面に金属クロム換
    算で付着量10〜200mg/m2のクロメート皮膜を
    有し、該クロメート皮膜の上部に、エポキシ樹脂の末端
    に少なくとも1個以上の塩基性窒素原子と少なくとも2
    個以上の一級水酸基を付加せしめてなる基体樹脂に、1
    分子中に少なくとも3個のイソシアネート基を有する多
    官能ポリイソシアネート化合物と、(基体樹脂+多官能
    ポリイソシアネート化合物)/防錆添加剤の重量比が9
    0/10〜40/60の割合で添加された防錆添加剤が
    配合された有機皮膜を膜厚0.2〜2.0μmの厚さで
    有してなる耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼板。
  2. 【請求項2】 有機皮膜を構成する防錆添加剤が、下記
    重量比からなるシリカおよび難溶性クロム酸塩である請
    求項1項に記載の耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
    板。 シリカ/難溶性クロム酸塩=35/5〜1/39
  3. 【請求項3】 多官能ポリイソシアネートが、1分子中
    に少なくとも4個のイソシアネート基を有する請求項1
    または2に記載の耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
    板。
  4. 【請求項4】 多官能ポリイソシアネートが、1分子中
    に少なくとも6個のイソシアネート基を有する請求項1
    または2に記載の耐もらい錆性に優れた有機複合被覆鋼
    板。
  5. 【請求項5】 多官能ポリイソシアネートが、1分子中
    に少なくとも6個のイソシアネート基を有するヘキサメ
    チレンジイソシアネートの多官能体であることを特徴と
    する請求項1または2に記載の耐もらい錆性に優れた有
    機複合被覆鋼板。
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