JP3153645B2 - パラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンの製法 - Google Patents

パラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンの製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパラ−(2−ヒドロキシ
エチル)アニリンを高純度で製造する方法に関する。詳
しくは、染料、農薬等の原料または中間体として有用な
パラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンを高純度で製
造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2−ヒドロキシエチルアニリンは、アニ
リン誘導体の環アルキル化、あるいはアルキルベンゼン
誘導体のニトロ化等の工程を経て製造されるが、この
際、通常オルト、メタ、パラの3種の異性体が生成する
ため、2−ヒドロキシエチルアニリンはオルト、メタ、
パラの異性体混合物として得られる。従来、この混合物
から1種の異性体を単離するためには、再結晶、懸濁洗
浄、蒸留等の煩雑な付帯的操作が必須であり、パラ異性
体を高純度で工業的に量産することは困難であった。
【0003】一方、2−ヒドロキシエチルアニリンのパ
ラ異性体の高純度品(純度95%以上)は染料や農薬等
の原料または中間体として特に有用な化合物である。例
えば、高純度のパラ異性体を用いて公知のポリエステル
用分散染料であるC.I.Disp.Blue27を合
成すると、低純度のパラ−(2−ヒドロキシエチル)ア
ニリンを用いて合成した場合に比べ、より耐光堅牢度の
高い染料が得られる。
【0004】また通常の晶析方法(pH8〜10、濃度
20〜35%の水溶液から晶析させる方法)で得られた
低純度のパラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンは、
含まれている他の異性体(主としてオルト異性体)が常
温で粘調な油状物であるため、合成された染料の品質に
悪影響を与えるばかりでなく、パラ−(2−ヒドロキシ
エチル)アニリンのケーキを取扱いにくくしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このため、高純度のパ
ラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンを工業的に量産
する方法が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題に
つき鋭意検討した結果、反応後の晶析条件を適切かつ厳
密に設定、制御することにより、煩雑な付帯的操作を伴
うことなく高純度かつ高収率でパラ−(2−ヒドロキシ
エチル)アニリンが得られることを見いだし、本発明に
到達した。
【0007】すなわち本発明の要旨は(2−ヒドロキシ
エチル)アニリンのオルト、メタ及びパラの各異性体を
含有する水溶液をpH9以上、各異性体の合計濃度9〜
12重量%に調節し、温度−3〜15℃で選択的にパラ
体を析出させることを特徴とするパラ−(2−ヒドロキ
シエチル)アニリンの製法に存する。また発明の他の要
旨は、上記パラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンの
製法に於て、原料(2−ヒドロキシエチル)アニリンの
オルト、メタ及びパラの各異性体を含有する水溶液を製
造する方法が(2−アセトキシエチル)アニリンのオル
ト、メタ及びパラの各異性体を含有する水溶液を、苛性
アルカリの存在下加熱することによりエステルの加水分
解をし、得る方法であるものである。
【0008】さらに本発明の他の要旨は、上記パラ−
(2−ヒドロキシエチル)アニリンの製法に於て、上記
(2−アセトキシエチル)アニリンのオルト、メタ及び
パラの各異性体を含有する水溶液を製造する方法が、
(2−アセトキシエチル)ニトロベンゼンのオルト、メ
タ及びパラの各異性体を含有する水溶液を鉄粉の存在下
還元する方法であり、しかも鉄粉還元後、分離操作等す
ることなく引き続いて苛性アルカリの存在下エステルの
加水分解を行い、80℃以上でろ過し、水を加えて上記
方法に従ってパラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリン
を選択的に析出させる方法である。
【0009】以下、本発明の内容について詳細に説明す
る。本発明方法の原料である(2−ヒドロキシエチル)
アニリンのオルト、メタ、パラの各異性体を含有する水
溶液の濃度は通常20〜35重量%程度である。この濃
度は(2−ヒドロキシエチル)アニリンの合成を公知の
方法によって適切な条件で行ったときに得られる生成物
の濃度である。一方、各異性体の比率は原料の(2−ヒ
ドロキシエチル)アニリンの製造条件に依存するもの
で、例えば、(2−ヒドロキシエチル)アニリンの合成
中間体のオルト、メタ、パラの各異性体の比率を反映す
るが、特に限定されるものではない。例えば(2−アセ
トキシエチル)ニトロベンゼンを原料として、ニトロ化
反応、還元反応、エステルの加水分解により(2−ヒド
ロキシエチル)アニリンを合成した場合は、ニトロ化反
応の際の異性体生成比率に依存し、通常パラ体60〜7
0%、オルト体30〜20%、メタ体5〜10%程度で
ある。
【0010】本発明では、(2−ヒドロキシエチル)ア
ニリンのオルト、メタ及びパラの各異性体を含有する水
溶液に適量の水を添加することにより、各異性体の合計
濃度9〜12重量%、pH9以上に調節する。pHが9
より小さいとパラ体の溶解度が大きくなり、オルト体と
の溶解度差が小さくなるので好ましくない。pHを9以
上に調節することによりパラ体の溶解度をオルト体、メ
タ体の溶解度に比べて低くすることができ、分離が容易
となる。
【0011】又、水溶液の濃度が12重量%より大きい
とオルト体が油状物としてパラ体の結晶に付着して析出
するので好ましくない。9重量%より小さいとパラ体の
収率が小さくなるので好ましくない。なお、pH調整剤
としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の苛性
アルカリ等が挙げられるが、(2−アセトキシエチル)
アニリンの異性体混合物の加水分解物を引き続き本発明
方法に従って処理する場合には、通常pH9以上であ
り、特にpH調整剤を使用する必要はない。
【0012】pH、濃度を調節した上記(2−ヒドロキ
シエチル)アニリン水溶液は、−3〜15℃に冷却し、
パラ体を選択的に析出させる。温度が15℃より高いと
パラ体の溶解度が大きいため収率が低下する。温度は、
好ましくは−1〜5℃である。なお、通常、水溶液の温
度を均一とし、また、結晶を十分析出させるため攪拌が
行なわれる。攪拌時間はパラ体が析出するのに十分な時
間であれば特に限定されないが、過飽和による溶解ロス
を防ぐために充分な時間行うことが好ましく、通常、2
時間以上攪拌する。
【0013】一方、本発明方法の原料である(2−ヒド
ロキシエチル)アニリンのオルト、メタ及びパラの各異
性体を含有する水溶液の製法は特に限定されないが、
(2−アセトキシエチル)アニリンのオルト、メタ、パ
ラの各異性体を含有する水溶液を、苛性アルカリの存在
下、加水分解することにより製造することが好ましい。
エステルの加水分解の条件は特に限定されないが、苛性
アルカリ添加後、約60〜95℃程度で1〜3時間程度
反応させればよい。この方法で製造することにより、引
き続きpH調節と濃度調節によりパラ体を選択的に析出
させる場合、水の添加だけでできるようになる。
【0014】苛性アルカリとしては通常、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム等が用いられる。また、苛性アル
カリは水溶液として添加してもよい。苛性アルカリの使
用量は、加水分解が行なわれるのに必要な範囲で適宜選
定され、通常は生成すべき(2−ヒドロキシエチル)ア
ニリンの異性体混合物の理論モル量と等モル量程度使用
される。
【0015】一方、(2−アセトキシエチル)アニリン
のオルト、メタ及びパラの各異性体を含有する水溶液の
製造法は特に限定されないが、(2−アセトキシエチ
ル)ニトロベンゼンを還元することにより好適に行われ
る。この還元は副反応防止或は収率向上のため、鉄粉の
存在下行なうと温和な条件で還元できるので好ましい。
なお、(2−アセトキシエチル)ニトロベンゼンは(2
−アセトキシエチル)ベンゼンを公知の方法に準じてニ
トロ化することにより得られる。
【0016】還元反応を行うときの溶媒量は、系の攪拌
維持のためには多いほどよいが、後に続く加水分解反応
後の晶析の際、水溶液の濃度に制限があるので、過多と
なるのは好ましくなく、攪拌状態維持のために必要な最
低限が望ましい。例えば生成すべき2−ヒドロキシエチ
ルアニリン異性体混合物の理論量1重量部に対して3〜
4重量部程度が好ましい。
【0017】また、一般にはろ過後、鉄粉残渣に目的物
が付着して散逸することを防ぐために、異性体混合物の
理論量1重量部に対し、3〜4重量部の水で鉄粉残渣を
洗浄し、ろ液に加えるので、上記還元反応時の溶媒量が
多すぎると晶析させるときの濃度を9〜12重量%とす
るために濃縮工程が必要となるので好ましくない。還元
反応は鉄粉の存在下行なわれるが、通常、(2−アセト
キシエチル)ニトロベンゼン含有水溶液に、あらかじめ
硫酸、塩酸、酢酸等を添加し、pHを3以下程度に調整
した後、鉄粉を加えることにより行なわれる。
【0018】鉄粉の使用量は(2−アセトキシエチル)
ニトロベンゼンのオルト、メタ及びパラ異性体の混合物
1重量部に対して1.0〜1.5重量部程度である。還
元反応は、通常、60〜70℃で、4〜6時間程度攪拌
し反応させればよい。反応生成物は、還元反応後に鉄粉
残渣を除くため中間ろ過をする。このろ過は、還元反応
直後でも可能であるが、続く加水分解後に行うことが好
ましい。これは、生成物がエステル加水分解することに
より水への溶解度が増加するので、目的物が鉄粉残渣に
付着するのを抑制できるからである。なお、エステルの
加水分解の際に鉄粉残渣が存在することは、反応に悪影
響なく問題はない。
【0019】なお、上記中間ろ過は80℃以上で行な
い、残渣を熱水で洗浄すると、目的物の付着によるロス
が抑制されるので好ましい。中間ろ過を、加水分解後に
行なった場合、ろ液として得られる反応液はpH11〜
12、生成物濃度は20〜30重量%程度である。そこ
で、ろ液に鉄粉残渣を洗浄した水を加え、さらに前述の
如く適量の水を加えることにより(2−ヒドロキシエチ
ル)アニリンの各異性体の合計濃度9〜12重量%、p
H9以上に調節した後に、パラ−(2−ヒドロキシエチ
ル)アニリンを晶析させることができ、晶析後、ろ過す
ることにより高純度で取扱い良好なパラ−(2−ヒドロ
キシエチル)アニリンのケーキが得られる。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を越えない限り実施例により
限定されるものではない。 実施例1 水72.4重量部(目的異性体混合物理論量1重量部に
対して4.3重量部)に98%硫酸2.9重量部と鉄粉
31.7重量部を加え、60℃にまで昇温し、1時間攪
拌した。この系に(2−アセトキシエチル)ニトロベン
ゼンのオルト、メタ及びパラ異性体混合物(異性体比:
p/o/m=65/30/5)26.3重量部を65±
5℃の温度を維持しながら加え、その後、65±5℃で
4時間反応を行なった。ニトロ基の消失を薄層液体クロ
マトグラフィー(HPLC)で確認した。次いで25重
量%の水酸化ナトリウム水溶液30.2重量部を加え、
90℃まで昇温し、90±2℃で2時間攪拌し、反応を
行なった。エステルの加水分解をHPLCで確認した。
【0021】その後、85±5℃で鉄粉残渣を中間ろ過
し、さらにこの残渣を90℃の熱水52.6重量部で洗
浄し、中間ろ液と洗液を混ぜ合わせた。この時の、生成
物〔(2−ヒドロキシエチル)アニリンの異性体混合
物〕濃度は21重量%、pH12となっていた。これに
攪拌しながら水を加え、全体の液量を152.1重量部
とした(生成物濃度11.3重量%、pH11)。この
液(45℃)を2±2℃まで冷却し、2時間攪拌した
後、晶析ケーキを濾取、乾燥し、高純度パラ−(2−ヒ
ドロキシエチル)アニリン10重量部(純度98%)を
得た。(2−アセトキシエチル)ニトロベンゼンのパラ
体に対するパラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンの
収率は89.2%であった。
【0022】比較例1 実施例1と同様にして還元反応、エステルの加水分解、
中間ろ過、残渣洗浄を行ない、中間ろ液と洗液を混合し
て得られた混合物(生成物濃度21重量%、pH12)
に、98%硫酸3.5重量部および水70重量部を添加
し、pH5、生成物濃度11.3重量%に調節し、その
後実施例1と同様にして冷却して晶析を行った。収量は
12.3重量部と増えたがパラ体の純度は80%に低下
した。
【0023】比較例2 中間ろ液と洗液の混合液を20℃に冷却し、この温度で
攪拌、晶析、濾取を行った以外実施例1と同様に行なっ
た。得られたケーキのパラ体純度はほぼ100%であっ
たが、収量は7.7重量部まで減少した。
【0024】比較例3 中間ろ液と洗液の混合液に、攪拌しながら、水133部
を加え、全体の液量を215重量部とした(生成物濃度
8.0%、pH=11)以外、実施例1と同様に行なっ
た。パラ体の純度は99%と良好だったが、収量は9.
1重量部まで減少した。
【0025】比較例4 中間ろ液と洗液の混合液に、攪拌しながら、水51部を
加え、全体の液量を133重量部とした(生成物濃度1
3%、pH=11)以外、実施例1と同様に行なった。
収量は10重量部であり、実施例1と変らなかったが、
パラ体の純度は90%に低下した。
【0026】
【発明の効果】本発明の製造法によりパラ−(2−ヒド
ロキシエチル)アニリンを煩雑な付帯的操作を行うこと
なしに高純度かつ高収率に製造できる。要するに、通
常、反応終了後の混合物を単に冷却することにより目的
化合物の結晶が回収される場合には、該混合物を希釈や
濃縮することなく、そのまま冷却晶析を施すのが常法で
あるが、本発明の場合、反応終了後の混合物を水で希釈
し特定の濃度に調節することにより、目的化合物のパラ
体を高純度で回収することができるのである。これによ
り高純度パラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンを工
業的に量産することが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 215/68 C07C 213/10 CASREACT(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (2−ヒドロキシエチル)アニリンのオ
    ルト、メタ及びパラの各異性体を含有する水溶液をpH
    9以上、各異性体の合計濃度9〜12重量%に調節し、
    温度−3〜15℃で選択的にパラ体を析出させることを
    特徴とするパラ−(2−ヒドロキシエチル)アニリンの
    製法。
  2. 【請求項2】 (2−アセトキシエチル)アニリンのオ
    ルト、メタ及びパラの各異性体を含有する水溶液を、苛
    性アルカリの存在下加熱することによりエステルの加水
    分解をし、次いで水を加えて(2−ヒドロキシエチル)
    アニリンのオルト、メタ及びパラの各異性体の合計濃度
    9〜12重量%、pH9以上に調節し、温度−3〜15
    ℃で結晶を析出させることを特徴とするパラ−(2−ヒ
    ドロキシエチル)アニリンの製法。
  3. 【請求項3】 (2−アセトキシエチル)ニトロベンゼ
    ンのオルト、メタ及びパラの各異性体を含有する水溶液
    を鉄粉の存在下還元し、次いで苛性アルカリの存在下加
    熱することによりエステルの加水分解を行い、80℃以
    上でろ過した後に水を加えて、(2−ヒドロキシエチ
    ル)アニリンのオルト、メタ及びパラの各異性体の合計
    濃度9〜12重量%、pH9以上に調節し、温度−3〜
    15℃で結晶を析出させることを特徴とするパラ−(2
    −ヒドロキシエチル)アニリンの製法。
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