JP3153419U - 搬送用治具 - Google Patents
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Abstract
【課題】搬送における被搬送物を、即座に安定した吸引状態として得られるようにして生産性を低下させずに、かつ、搬送時の安定性を向上させた搬送用治具を提供する。【解決手段】複数枚の繊維強化プリプレグシートの積層体からなる搬送用治具であって、該搬送用治具の片面に形成された被搬送物を吸引固定する複数の吸引部2と、搬送用治具の内部に、各吸引部2から搬送用治具の側面まで他の吸引部を経由することなく形成された吸引径路と、吸引径路の側面の開口部を吸引手段と接続する吸引手段接続部4とを設けて搬送用治具1を構成する。【選択図】図1
Description
本考案は、シリコンウェハやフィルム基板等の薄板状の被搬送物を移動、積み下ろしする自動搬送装置に、薄板状物を保持又は乗せるなどして被搬送物と直接接触する部品として取り付けられる搬送用治具に係り、特に、シリコンウェハ等の極薄の被搬送物の搬送に適した搬送用治具に関する。
一般にシリコンウェハの搬送用治具は、カセット内に積載されたシリコンウェハ間の隙間の中に挿入して使用されるため、その厚さは非常に薄く、それでいて被搬送物を安定して搬送することが要求されている。
そのため、シリコンウェハの搬送用治具には、薄くしても変形し難く、また、運動の慣性力を小さくして、運動の制御をし易くするため、高い剛性と小さい比重を併せもつ材料を使用することが好ましい。
シリコンウェハの搬送用治具は、従来は金属製のものが用いられていたが、上記のような要求により、近年、これまで用いられていた金属部材と同等な曲げ剛性を有しながら、軽量で取り扱いやすい炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」ともいう)が使用されるようになってきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、極薄に加工されウェハの被搬送物を破損せずに搬送するために、吸引板がウェハと略同一の外形を有する円板部と、外周に形成された吸引領域とを備え、確実に保持し搬送できるようにした搬送用冶具が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
ところで、シリコンウェハは、携帯電話、ノートパソコン、スマートカードなどの小型化、軽量化などに伴い、その厚さが50〜150μmの極薄に加工されるようになってきた。特に、シリコンウェハは薄くなるほどその剛性が低下していく。
このような極薄の被搬送物を、特許文献1及び2のような搬送用治具で搬送したのでは固定が不十分で安定性を欠き、特許文献3の搬送用治具では吸引することができるため、安定はするものの、搬送用治具の吸引領域の吸引力が均等でないと吸引時に位置がずれるおそれがあり、このとき位置が大きくずれると搬送後、カセット内に収容する際にシリコンウェハが収容溝と干渉し、シリコンウェハが破損するという問題がある。
このような位置ずれを生じさせないように、吸引後の保持時間を長くすることによって安定した吸引状態が得られるが、この場合、搬送自体は安定して行うことができるものの、製品の生産性に悪影響を及ぼすおそれがあった。
そこで、本考案は上記問題を解決すべくなされたものであり、搬送に際してシリコンウェハ等の被搬送物を、即座に安定した吸引状態が得られるようにすることにより、保持時間を長くかけず生産性を低下させずに、搬送時の安定性を向上させた搬送用治具を提供することを目的とする。
本考案者らは、上記の問題点を解決するために鋭意検討を進めた結果、複数の吸引部を有する搬送用治具において、各々の吸引部ごとに、それぞれ接続する吸引径路を他の吸引部を経由することなく搬送用冶具内部に形成することによって、吸引力の偏在を無くし上記目的を達成できることを見出し、本考案を完成したものである。
すなわち、本考案の搬送用治具は、複数枚の繊維強化プリプレグシートの積層体からなる搬送用治具であって、該搬送用治具の片面に形成された被搬送物を吸引固定する複数の吸引部と、搬送用治具の内部に、各吸引部から搬送用治具の側面まで他の吸引部を経由することなく形成された吸引径路と、吸引径路の側面の開口部を吸引手段と接続する吸引手段接続部と、を有することを特徴とするものである。
また、本考案の搬送用治具の製造方法は、繊維強化プリプレグシートを複数枚重ね合わせて一体化した積層体を複数枚用意し、一枚の積層体に開口部となる複数の貫通孔を形成して搬送用治具の上側部材とし、他の積層体の一枚の片面に開口部に対応する位置から他の開口部を経由することなく搬送治具の縁部となる側面まで溝部を形成して搬送用治具の下側部材とし、上側部材と下側部材とを、開口部と溝部とを対応させ、接着シートを介して重ね合わせて加熱加圧一体化するとともに、端面加工により前記溝部を開口させることを特徴とするものである。
本考案の搬送用治具によれば、被搬送物への吸引が迅速に均一の力で安定するため、被搬送物を搬送、収納する際にも位置ずれ等を起こすことなく安定して搬送、収納することができる。したがって、収納時の被搬送物の破損等の発生率を低減させることができ、特に、被搬送物が極薄に加工されたシリコンウェハ等において、適したものである。
以下、本考案について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本考案の一実施形態である搬送用治具の吸引面側から見た平面図及び吸引部の拡大図であり、図2は、図1の搬送用治具の吸引径路の一例を示した断面図である。
図1は、本考案の一実施形態である搬送用治具の吸引面側から見た平面図及び吸引部の拡大図であり、図2は、図1の搬送用治具の吸引径路の一例を示した断面図である。
本考案の搬送用治具は、例えば、図1及び2に示したように、複数枚の繊維強化プリプレグシートを重ね合わせ一体化して形成された積層体からなる搬送用治具であって、この積層体の片面には複数の吸引部2が形成され、その内部には吸引部2から搬送用治具の側面まで通じる吸引径路3と、吸引径路3の搬送用治具側面に形成された開口部を吸引手段と接続する吸引手段接続部4とからなるものである。この搬送用治具では、各吸引通路3はそれぞれの吸引部2から吸引手段接続部4まで、他の吸引部を経由しない独立した通路となっている。
本考案の搬送用治具1は、その基体として、複数枚の繊維強化プリプレグシートを重ね合わせて得られた軽量で、高剛性のものであり、シリコンウェハ等の被搬送物を載置して安定して搬送することができる、平板状のものである。
その平面形状は、図1では円板形状のものを示したが、被搬送物を安定してその上面に保持することができるものであればその形状は特に制限されず、四角形状、U字形状、V字形状等の形状を用いることもできる。
そして、この搬送用治具1には、その片面に被搬送物を吸引により吸引する吸引部2が開口部として設けられており、この吸引部2は、吸引によりその表面に載置された被搬送物を吸引し、搬送時や収納時に被搬送物を所定の位置から動かないようにして、安定して、かつ、効率的に搬送をすることができるようにするものである。
吸引部2は、被搬送物を安定して保持するために、複数個所設けられているものであり、好ましくは3つ以上、より好ましくは6つ以上の吸引部2を設けるものである。また、このとき、これらの吸引部2は、被搬送物に吸引の力が均等にかかるように、分散して設けられているものである。例えば、図1(a)に示したように6個の吸引部2を持つ場合には、その吸引部は被搬送物が載置される円板状部材の中心に対する正六角形の頂点にそれぞれ配置されている。この吸引部2は、図のように円板状のハンドである場合には、円の軌跡に乗るように形成され、そのとき、吸引部2の位置は、円板の中心を通る線において線対象となるか、円板の中心に対して点対象になるように形成され、かつ、被搬送物にかかる吸引力が平面的に均等になるように配置されることが好ましい。
この吸引部2は、後で説明する吸引手段により吸引径路を通じて吸引部2でその表面に存在する被搬送物を吸引するものであり、吸引部2の具体的な構成は、図1(b)に示したように、搬送用治具1の吸引面に縦横に整列した開口部2aを有して形成されるものである。この開口部2aは、その直径又は一辺が0.2〜1.0mm程度の大きさの孔であり、これを16〜100個設けて形成することが好ましい。
次に、吸引径路3は、搬送用治具1の内部において、吸引部2から搬送用治具1の側面までを空間的に接続する径路のことであり、後で説明する吸引手段を用いて、この吸引径路3を通じて、吸引部2の表面にある被搬送物の吸引を行うことができるようになっている。
この吸引径路3は、ある吸引部2から他の吸引部2を経由せずに、それぞれ独自の吸引径路が形成され吸引手段接続部まで繋がっており、これによって吸引開始と略同時に吸引部2での吸引保持をほぼ同等の吸引力で行うことができる。そのため被搬送物の保持を安全に、かつ迅速に安定状態とすることができると共に、吸引してから搬送を開始するまでの保持時間を短くすることもできる。
ここで、吸引径路3において、独自の吸引径路とは、それぞれの吸引部2が一部でも独自の吸引径路を有していれば良く、図2に示したように、円板の中央でそれぞれの独自の吸引径路を集約して合流させ、吸引手段接続部4までは径路を共有しているような場合も含まれる。このようにすることで、独自の径路を持つ吸引部と共有径路しか持たない吸引部が混在する場合に生じる吸引力の差を解消することができる。
この吸引径路3としては、吸引部2が吸引手段接続部4まで、それぞれ全てが独立した吸引径路3を有していても良い。例えば、図3は、図2とは異なる吸引径路を示した一例であるが、このように共有の吸引径路を有さずに全てが独自の吸引径路で構成されているようにすることがより好ましい。
これらの吸引径路3の形態は、被搬送物の性状によって最適な形態を選択することができる。例えば、極薄で大型のウェハの搬送用途には、外周部だけではなく、その内側にも吸引部を形成することが好ましく、このとき外周の吸引部が形成する円の軌跡と同心円の軌跡上に内側の吸引部が乗るようにすることがより好ましい。これらの吸引部は、当然のことながら、他の吸引部を経由せずに、各々独自の吸引径路で構成されるものである。
これに対して、図7は従来の搬送用治具の吸引径路を示した断面図である(例えば、特許文献3参照)。この場合には、吸引部12から出た吸引径路13が他の吸引部12を経由しているため、独自の吸引径路を持つ吸引部12と、独自の吸引径路を持たず、全て共有の径路となっている吸引部12が混在してしまう。このように共通部分の吸引径路しか有さないものがあると、吸引部12ごとの吸引する力の差が大きくなり、吸引部12の位置のよって吸引保持の安定状態となるまでの時間に差が出てきてしまう。
このような差が生じると、吸引後の保持時間が不十分な吸引部が存在するにも関わらず、搬送が開始される可能性も出てくるため、その場合には、被搬送物の位置がずれて固定されるおそれがあり、吸引時に大きくずれてしまうと被搬送物をカセットに収容する際に被搬送物が収容溝と干渉し、被搬送物が破損してしまうおそれがある。また、このような不具合を生じさせないように、しっかり保持してから搬送しようとすると保持してから搬送するまでの時間がかかってしまい、いずれにしても製品の生産性に大きく影響してしまう。このような不具合は、特に、被搬送物がシリコンウェハ、特に極薄のものである場合には、それが顕著になっていた。
本考案の搬送用治具では、吸引部2が独時の吸引径路3を有していることにより、薄いシリコンウェハ等の保持、搬送においても位置がずれることなく、保持時間を長くしなくても安定して吸引保持でき、破損を抑制するため、製品の生産性にも優れた搬送を行うことができる搬送用治具を得ることができる。
なお、ここで吸引径路3は、搬送用治具の大きさや吸引部の大きさ等により異なるが、例えば、吸引径路の吸引方向に対する断面において、幅(横)2〜10mm、深さ(縦)0.5〜1.0mmであることが好ましい。
そして、吸引手段接続部4は、本考案の搬送用治具1を吸引手段と接続することで、吸引径路3を経由して吸引部2から被搬送物を吸引することができるようにするものであり、具体的には、搬送用治具1の側面に設けられた吸引部2と通じる開口部のことである。
この吸引手段接続部4には、吸引手段が接続され、この吸引手段としては、例えば、真空ポンプを挙げることができ、その他、吸引、排出ができる装置であれば真空ポンプ以外でも使用することができる。この吸引手段を動作させることにより、吸引径路3は空気の通路となり、その内部の空気がポンプ等により空気が吸われ吸引径路内部は減圧状態となり、空間的に接続された吸引部2において被搬送物が搬送用治具表面に固定されることとなる。
また、本考案の基体として用いられる搬送用治具は、繊維強化プリプレグシートからなるが、ここで用いられる繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、FBO繊維、全芳香族ポリエステル繊維等が挙げられ、炭素繊維であることが好ましい。また、本考案で用いられる樹脂としては熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられ、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
以下、本考案で用いるプリプレグシートについて、炭素繊維及び熱硬化性樹脂を用いた場合について説明する。
本考案で使用される炭素絨維は、強化プリプレグシートに用いられるものであれば特に制約されるものではなく、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等を用いることができる。PAN系炭素繊維では東邦テナックス株式会社製のベスファイトHTAシリーズや三菱レイヨン株式会社製のパイロフィルが好適に使用でき、ピッチ系炭素繊維では、日本グラファイトファイバー株式会社のGRANOCヤーンのYSH−Aシリーズ、YS−Aシリーズ、XNシリーズや三菱化学産資株式会社製のダイアリードから選択したものが好適に使用できる。
これら炭素繊維は、織布でも一方向引き揃えでも使用できる。織布の場合は平織り、綾織、朱子織りなどが使用でき、特に限定されるものではない。
ここで用いる炭素繊維は、表面にシランカップリング剤によりサイジング処理を行い、耐薬品性を維持するようにすることが好ましく、このサイジング処理を行うサイジング剤としては、アルカリ成分との反応性が低く、マトリックス樹脂に対するぬれ性が良い薬剤が挙げられ、具体的には、メタクリルシランやウレイドシラン等のシランカップリング剤又はそれらの混合品であることが好ましい。
また、本考案で使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、変性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、なかでも強度、成形性の観点からエポキシ樹脂が好ましく使用でき、質量平均分子量が700〜2000のエポキシ樹脂が特に好ましい。
また、熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂を用いた場合、より具体的には、その樹脂組成物の成分構成は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ樹脂用硬化剤と、(C)硬化促進剤と、を必須成分とすることが好ましい。
ここで用いられる(A)エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するような多官能のエポキシ樹脂のいずれか、又はこれらの2種以上を混合したものを使用することができる。
ここで用いられる(B)エポキシ樹脂用硬化剤としては、エポキシ樹脂に対して通常用いられているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジシアンジアミド、芳香族ジアミン等のアミン系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸等の酸無水物硬化剤等を用いることができる。
また、(C)硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等を用いることができる。
上記成分の配合割合は、樹脂組成物中に(A)エポキシ樹脂が60〜96質量%、(B)硬化剤が0.5〜35質量%、(C)硬化促進剤が0.1〜5質量%であることが好ましい。
これらの配合成分の他にも、本考案の効果を阻害しない範囲で、適宜必要な添加剤を配合することができる。
そして、このエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂に上記硬化剤を配合して溶媒に溶解し、固形分30〜80質量%程度、好ましくは50〜70質量%のワニスを調製して炭素繊維に含浸させた後、乾燥による半硬化を行なうことにより、プリプレグを作製することができる。溶媒としては、メチルエチルケトン/セロソルブ、メチルエチルケトン/トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等が挙げられる。
また、樹脂成分は、質量比率が40質量%以下であることが好ましく、35〜25質量%であることが特に好ましい。この比率があまりに低いと、積層した後に表面平滑性が低下するおそれがある。
このようにして得られた繊維強化プリプレグを用いて本考案の搬送用治具を製造するが、その方法は、次の通りである。
まず、繊維強化プリプレグの複数枚を所定の厚さになるように重ね合わせ、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で加熱加圧成形してCFRP積層体を得る。加熱加圧成形は通常、温度170〜200℃、圧力5〜50MPaで、60〜150分程度で行われる。
このようにして得られたCFRP積層体は、搬送用治具を製造するために、搬送用治具の上側部材と下側部材とを用意して、それらを重ね合わせて一体化することにより搬送用治具とするが、その具体的な製造方法を図4〜6を参照しながら説明する。図4は搬送用治具の上側部材を示した平面図とそのA−A断面図であり、図5は搬送用治具の下側部材を示した平面図とそのB−B断面図である。また、図6は、本考案の搬送用治具の製造工程を説明する図であり、それぞれ図4及び図5で示した部材の断面を見ながら内部構造がどのように形成されるか示したものである。
まず、上記したように、CFRP積層体を2枚用意し、これを図4(a)及び図5(a)の輪郭となるように切断してCFRP積層体10を得る(図6(a))。そして、各積層体は、1枚は図4に示した吸引部用の開口部2aを形成した上側部材1aとし、もう1枚は図5に示したように吸引径路3aを形成した下側部材1bとした(図6(b))。
これらの上側部材1aと下側部材1bとを、図6(b)のように対向させて、その間に、接着シート5を介するようにして(図5(c))重ね合わせて、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で温度170〜200℃、圧力5〜50MPa、成形時間60〜150分の条件で加熱加圧して一体に成形することによって搬送用治具が得られる(図5(d))。
このとき、繊維強化プリプレグシートの厚さは10〜200μmであることが好ましく、100〜160μmであることがより好ましい。このシートを積層して形成される上側部材1a、下側部材1bの厚さは1.0〜2.0mm、さらに、それらの部材を積層して一体成型した後の搬送用治具の厚さが2.0〜3.0mmとすることが好ましい。
また、上記説明では、上側部材と下側部材の2枚の積層体を用いて製造する方法を説明したが、それに加えて中間部材を使用して形成してもよく、その場合には、各部材の厚さは最終的に製造される搬送用治具の厚さを上記範囲に収まるようにして適宜調整すればよい。
ここで用いる接着シートは、エラストマーを有する熱硬化性樹脂組成物を含むことが好ましく、特に(a)少なくとも一種のエポキシド化合物、(b)エポキシ用硬化剤、(c)エポキシ用硬化促進剤及び(d)エラストマーを含み、(d)エラストマーの含有量が、全樹脂組成物に対して10〜70重量%であるような組成を有することが好ましい。上記要件を満足しない場合は、接着強度不足によって耐漏水性に劣る場合がある。
ここで、(a)ポリエポキシド化合物としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂が好適である。これには、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。また、このエポキシ樹脂には、グリシジルエーテル系の変性エポキシ樹脂も含む。変性エポキシ樹脂として例えば、BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂などを使用することができる。
また、(b)エポキシ用硬化剤としては、ジシアンジアミド(DICY)とその誘導体、ノボラック型フェノール樹脂、アミノ変性ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、有機酸ヒドラジッド、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、メラミンとその誘導体、アミンイミド、ポリアミン塩、モレキュラーシーブ、アミン、酸無水物、ポリアミド、イミダゾールのうちの少なくとも一種を用いることができる。
さらに、(c)硬化促進剤を用いる。硬化促進剤としては、必要な場合、通常のエポキシ樹脂用硬化促進剤として用いられる第三アミン、イミダゾール、芳香族アミンのうちの少なくとも一種を用いることができる。
さらに、(d)合成ゴムとしては、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンメチルアクリレートアクリロニトリルゴム、ブタジエンゴム、カルボキシル含有アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル含有アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリビニルブチラール等のゴムのうち少なくとも1種を用いることができる。
また、必要に応じて無機充填剤を配合することができ、無機充填剤としては、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
なお、上記接着シート3は、上述したような材料組成の原材料物質をプロピレングリコールモノメチルエーテル等の好適な有機溶剤で希釈して、キャリアフィルム上に塗布し、加熱乾燥するという通常の方法によりフィルム状接着剤として得ることができる。
なお、上記接着シート3は、接着の信頼性の観点より、0.010〜0.2mmの厚さで使用することが好ましく、0.025〜0.05mmの厚さで使用することがより好ましい。
接着シートは上記したように、エラストマーを有する熱硬化性樹脂組成物からなるフィルム状接着剤となっているため、良好な接着性を発現すると共に低フローで接着することができることから、クリーンルーム環境の汚染源となるような貼付け部からの接着剤のはみ出しを抑制することができる。同様に吸引溝内部への接着剤のはみ出しを抑制することができ、吸引時の発塵防止に有効である。
また、このようにして得られた搬送用治具1は、積層体が切断加工されて図1等の形状のハンドとなるため、切断箇所における炭素繊維の脱落等の不具合が生じるおそれがあり、このような脱落は、被搬送物を汚染し、生産性を低下させる原因になる。
そこで、本考案の搬送用治具においては、上記のように製造された搬送用治具の端面を熱硬化性樹脂で被覆加工して、炭素繊維の脱落等の不具合を防止することが好ましい。この被覆加工において用いられる熱硬化性樹脂としては、上記プリプレグの製造に用いた樹脂や接着シートで用いられる樹脂等が挙げられる。中でも、接着シートで用いられる樹脂のように合成ゴム成分が配合されていると、樹脂屑等も生じにくくなり好ましいものである。
以下、実施例を参照して本考案を具体的に説明する。
(実施例1)
熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名)70質量部及びクレゾールノボラックエポキシ樹脂のYDCN−704P(東都化成株式会社製、商品名)30質量部、硬化剤としてジシアンジアミド3質量部及び2E4MZ(四国化成工業株式会社製の2−エチル−4−メチル−イミダゾール)0.07質量部、からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分65質量%のワニスを調製した。
熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名)70質量部及びクレゾールノボラックエポキシ樹脂のYDCN−704P(東都化成株式会社製、商品名)30質量部、硬化剤としてジシアンジアミド3質量部及び2E4MZ(四国化成工業株式会社製の2−エチル−4−メチル−イミダゾール)0.07質量部、からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分65質量%のワニスを調製した。
炭素繊維織布(東邦テナックス製、商品名:W1103、一枚当たりの質量は125g)に上記ワニスを塗布し、含浸及び乾燥による半硬化を行い、樹脂分が30質量%のCFRPプリプレグシートを得た。
得られたCFRPプリプレグシートを13枚重ね合わせ、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で硬化温度160℃×60分、圧力3.0MPaの条件で加熱加圧成形を行い、厚さ1.5mmのCFRP積層体を得た。
上記CFRP積層体2枚を、それぞれ図4及び図5の形状に、切断、切削加工を施した。このとき、吸引径路は、幅3mm、深さ0.5mmの空気通路となる溝を形成し、吸引部は、15×15mmの吸引領域に直径0.5mmの開口部を上記溝と対応させて縦横5列ずつ整列して形成し、搬送用治具の上側部材1aと下側部材1bを作成した。
さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:エピコート1001;質量平均分子量 900)70質量部、ニトリルゴム(日本合成ゴム株式会社製、商品名:N−172)30質量部、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン0.7質量部、三フッ化ホウ素錯体化合物である三フッ化ホウ素モノメチルアミン錯体を0.5phr添加しニーダーで混練後、メチルエチルケトン(MEK)とメチルセロソルブアセテート(MCA)で樹脂固形分50重量%に希釈した。これを離型フィルム(OPP)に塗布し、150℃で3分間乾燥させて厚さ15μmの接着シートを作成し、図5の平面形状と同じ形状に加工した。
次に、得られた接着シートの両側に、それぞれ上記搬送用治具の上側部材1aと下側部材1bとを配置して重ね合わせ、さらに上下を離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で硬化温度160℃×60分、圧力3.0MPaの条件で加熱加圧成形を行い、厚さ3.0mmの搬送用治具を製造した。
得られた搬送用治具を用いて吸引試験と外観試験を行い、その結果を表1に示した。
(実施例2)
接着シートの樹脂組成物として、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:エピコート1256)20部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:エピコート828)30部、ジシアンジアミド1.6部、2−エチル4−メチルイミダゾール0.1部、合成シリカ(アドマ ファイン株式会社製、商品名:CS2050)40部、を使用した以外は、実施例と同様にして搬送用治具を作成した。
接着シートの樹脂組成物として、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:エピコート1256)20部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:エピコート828)30部、ジシアンジアミド1.6部、2−エチル4−メチルイミダゾール0.1部、合成シリカ(アドマ ファイン株式会社製、商品名:CS2050)40部、を使用した以外は、実施例と同様にして搬送用治具を作成した。
得られた搬送用治具を用いて吸引試験と外観試験を行い、その結果を表1に示した。
(比較例)
CFRP積層体の空気通路を幅3mm、深さ0.5mmで、図7のような形状に切削加工を施して搬送用治具の下側部材を作成した以外は、実施例1と同様にして搬送用治具を作成した。得られた搬送用治具を用いて吸引試験と外観試験を行い、その結果を表1に示した。
CFRP積層体の空気通路を幅3mm、深さ0.5mmで、図7のような形状に切削加工を施して搬送用治具の下側部材を作成した以外は、実施例1と同様にして搬送用治具を作成した。得られた搬送用治具を用いて吸引試験と外観試験を行い、その結果を表1に示した。
1…搬送用治具、2…吸引部、2a…吸引孔、3…吸引手段接続部、4…吸引径路、5…接着シート、1a…搬送用治具の上側部材、1b‥搬送用治具の下側部材
Claims (7)
- 複数枚の繊維強化プリプレグシートの積層体からなる搬送用治具であって、
該搬送用治具の片面に形成された被搬送物を吸引固定する複数の吸引部と、
前記搬送用治具の内部に、前記各吸引部から前記搬送用治具の側面まで他の吸引部を経由することなく形成された吸引径路と、
前記吸引径路の側面の開口部を吸引手段と接続する吸引手段接続部と、
を有することを特徴とする搬送用治具。 - 前記吸引径路は、前記吸引部から前記吸引手段接続部までが等距離になるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送用治具。
- 前記吸引径路が、前記吸引部ごとに独立して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の搬送用治具。
- 繊維強化プリプレグを複数枚重ね合わせた積層体に該積層体を貫通してなる開口部を複数形成した搬送用治具の上側部材と、繊維強化プリプレグを複数枚重ね合わせた積層体に前記各開口部に対応する位置から他の開口部を経由せずに前記吸引手段接続部まで溝を形成した搬送用治具の下側部材と、が接着シートを介して貼り合されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の搬送用治具。
- 繊維強化プリプレグシートに使用する繊維が炭素繊維であり、樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1乃至4のいずれか1項記載の搬送用治具。
- 前記熱硬化性樹脂が(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤を必須成分とし、エラストマー成分が合成ゴム、ゴム変成高分子化合物及び高分子エポキシ樹脂のいずれか1種以上からなることを特徴とする請求項5記載の搬送用治具。
- 前記接着シートが(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)エラストマーを必須成分とし、エラストマー成分が合成ゴム、ゴム変成高分子化合物及び高分子エポキシ樹脂のいずれか1種以上からなることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の搬送用治具。
Priority Applications (1)
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JP2009004320U JP3153419U (ja) | 2009-06-24 | 2009-06-24 | 搬送用治具 |
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