JP3149764B2 - 軸受鋼の連鋳片の置き割れ防止方法 - Google Patents

軸受鋼の連鋳片の置き割れ防止方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、JIS規格に規定
されたSUJ2やSUJ3のような高炭素軸受鋼の連続
鋳造された鋳片(以下連鋳片という)を冷却する際、又
は冷却後再加熱する際、発生する置き割れを未然に防ぐ
方法に関する。
【0002】
【従来技術】上記SUJ2やSUJ3のような高炭素軸
受鋼は、通常連続鋳造法によって得られた連鋳片を熱間
のまま均熱炉に装入して適切な均熱処理を施し、その後
分塊圧延等の圧延を行う。ところが製鋼工場と分塊工場
との間で、工程の調整が必要とされるとき、軸受鋼の連
鋳片を一旦室温まで冷却する過程が避けられなくなる。
このとき軸受鋼の連鋳片の置き割れが発生するという問
題が生ずる。
【0003】連鋳片の置き割れとは、連続鋳造後の連鋳
片が冷却途中あるいは次工程である分塊圧延のための加
熱中あるいは均熱中に連鋳片が横割れもしくは破損する
現象であり、軸受鋼と同様にクロムを含むフェライト系
ステンレス鋼においては問題とされている。
【0004】これまでフェライト系ステンレス鋼の連鋳
片の置き割れに対しては、特開昭58−39732号公
報、特開昭60−2622号公報、特開昭62−565
17号公報、特開平6−328214号公報などにおい
てその対策が開示されている。特開昭58−39732
号公報においては、連鋳片を遷移温度(実施例では30
0℃)以下に冷却してはならないことを開示している。
【0005】特開昭60−2622号公報においては、
連鋳片の冷却にあたって800℃〜1300℃から30
0℃まで40℃/hr以下の冷速で徐冷する方法が開示
されている。また特開昭62−56517号公報では熱
応力危険域およびラーベス(Laves)相の析出危険
域をさけて冷却するという手段を開示している。一方、
特開平6−328214号公報では凝固後の冷却中ある
いは冷却後再加熱中の連鋳片の温度偏差を200℃以内
に抑えるという手法を開示している。
【0006】しかし、フェライト系ステンレス鋼は炭素
が低く(0.1wt%以下)、クロムが高く(10〜3
0wt%)。他方、軸受鋼は炭素が高く(1wt%程
度)、クロムが低く(1〜2wt%程度)、金属組織が
基本的に異なるので、フェライト系ステンレス鋼につい
ての技術をそのまま軸受鋼に適用できない。
【0007】また、軸受鋼の連鋳片については、特開平
1−201422号公報ではAISI M−50(高温
軸受用鋼)に対して、特開平3−75312号公報では
高炭素クロム軸受鋼に対して、連鋳片を分塊した後均熱
処理を施す技術が開示されているが、これらはそれぞれ
炭化物を微細化し、粗大炭化物を消失させることを目的
としているものであり、置き割れの防止方法に関するも
のではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明では、
軸受鋼の連鋳片の置き割れに対する対策技術を課題とす
る。即ち、連続鋳造後の軸受鋼の連鋳片の冷却途中ある
いは次工程である熱間圧延のための加熱又は均熱中にお
ける連鋳片が横割れ若しくは破損することを防止する技
術を課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、上記課
題を解決すべく研究を重ねた結果、軸受鋼の置き割れを
防止するためには、連続鋳造された連鋳片を熱間のまま
所定の時間均熱処理を施し、その後徐冷することがが有
効であることを見いだし、下記の発明をするに至った。
【0010】第1の発明は、軸受鋼を連続鋳造機で鋳造
した後、連鋳片表面温度が600℃以下に冷却される前
に加熱炉に装入し、1150℃から1250℃の間で8
時間以上の加熱処理を施し、その後連鋳片の表面が60
0℃から500℃間における平均冷却速度が10℃/h
r以下であるように徐冷することを特徴とする軸受鋼の
連鋳片の置き割れ防止方法を提供する。
【0011】第2の発明は、軸受鋼を連続鋳造機で鋳造
した後、連鋳片の表面温度が600℃以下に冷却される
前に均熱炉に装入し、1150℃から1250℃の間で
8時間以上の均熱処理を施し、その後該連鋳片を均一冷
却するために抱き合わせ材で該連鋳片を囲み、さらにそ
れらにカバーをかけて徐冷することを特徴とする軸受鋼
の連鋳片の置き割れ防止方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】軸受鋼を連続鋳造すると、得られ
た連鋳片は連続鋳造機の2次冷却帯で水冷され、切断機
で所定の長さに切断されて搬出されてる。搬出された直
後では、連鋳片の温度は通常600℃以上である。
【0013】通常、連鋳片は2次冷却床で更に冷却され
るが、本発明では、連鋳片の冷却時の熱応力を軽減する
ため、連鋳片の表面温度が600℃以下になる前に加熱
炉、例えば、均熱炉に装入する。そして、均熱炉におい
て加熱し、均熱温度範囲を1150℃〜1250℃に8
時間保持する。なお、連鋳片が600℃程度であると上
記均熱を行う前に700〜800℃程度で数時間加熱
し、その後1150℃〜1250℃に保持することが、
置き割れを防止する点からより望ましい。
【0014】加熱温度が1150℃以下であると、加熱
による粗大炭化物が消滅するまでに保持時間が長時間必
要であり、製造コストの上昇を招く。一方加熱温度が1
250℃以上であると、炭化物の溶融が起こる可能性が
ある。そこで、1150℃〜1250℃に8時間以上と
する。
【0015】加熱後における連鋳片の徐冷方法である
が、徐冷は図2に示すように、不均一な冷却を避けるた
めに、抱き合わせ材で連鋳片を囲み、さらに鉱物繊維で
内張りして保温効果を持たせた鉄製のカバーを被せるこ
とが望ましい。ここで、抱き合わせ材とは、例えば連鋳
片と同程度の大きさの鋼塊若しくは鋳片であって、連鋳
片と同程度の温度に予熱したものである。
【0016】適正な徐冷条件を確認するため上記抱き合
わせ材で連鋳片を囲み、この際熱電対を図2に示す位置
に設置して連鋳片の表面温度を測定した。その結果、図
3の冷却曲線が得られた。また、図3には連鋳片を抱き
合わせ材で囲み、鉄製のカバーを被せた場合と、これを
被せない場合における連鋳片の表面温度の冷却曲線を示
してある。前者の場合には600〜500℃の冷却速度
が10℃/hrであるが、後者の場合には冷却速度が1
4℃/hrであった。
【0017】前者のような徐冷方法を採用すると連鋳片
の再加熱中の割れを誘発することがなかった。後者の冷
却条件では後述するように連鋳片の一部に割れが発生し
た。この事実から軸受鋼の連鋳片の表面の600℃から
500℃における平均冷却速度が10℃/hr以下であ
れば冷却時の熱応力は小さくなり、結果として連鋳片の
再加熱中の割れを誘発することはない。
【0018】従って、連鋳片の表面温度600℃から5
00℃における平均冷却速度を10℃/hr以下とする
ことが望ましいことが判明した。冷却後置き割れを生じ
ていない連鋳片は、引き続き加熱し分塊圧延を行い、そ
の後割れが生ずることがないかを調べた。
【0019】
【実施例】連続鋳造で得られた連鋳片(断面サイズ:4
05×520mm、長さ4500mm)を、図1に示す
5種類の条件で室温まで冷却した。冷却条件1は連鋳片
をそのまま空冷するものである。冷却条件2は連鋳片を
鋳造後そのまま徐冷するものである。冷却条件3は連鋳
片を熱片のまま均熱炉に装入し、1200℃で10時間
均熱処理を施した後、空冷するものである。
【0020】冷却条件4は冷却条件3と同様、連鋳片を
鋳造後直ちに均熱炉熱に装入し、1200℃で10時間
均熱処理を施した後、抱き合わせ材と鉄製のカバーを掛
けて徐冷した。冷却条件5は冷却条件4と異なり、抱き
合わせ材を用いたが、鉄製のカバーを使用しなかった。
なお、冷却条件3、4及び5においては、上記均熱をす
るに際して700〜800℃において3時間程度予熱し
てから1200℃で10時間均熱処理を施した。加熱に
伴う熱応力を緩和するするためである。
【0021】徐冷は、以前に連続鋳造した略同寸法の連
鋳片であって、約600℃に予熱した抱き合わせ材で連
鋳片を囲み、さらに鉄製のカバーをかぶせて行った。冷
却後置き割れを生じていない連鋳片は、引き続き加熱し
分塊圧延を行い、その後割れが生ずることがないかを調
べた。
【0022】連鋳片の置き割れ発生状況をまとめたもの
が表1である。連鋳片をそのまま空冷した場合、試験に
供した3本すべてが冷却後の再加熱時に数カ所で脆性破
断した。連鋳片をそのまま徐冷した場合は、8本のうち
2本が冷却後の再加熱圧延中に割れ生じた。
【0023】また、1200℃の均熱処理後空冷した場
合、試験に供した4本のうち1本は冷却時に、残りの3
本は冷却後再加熱中にやはり数カ所で脆性破断した。そ
れに対し、均熱処理を施した後抱き合わせ材と鉄製のカ
バーを掛けて徐冷した連鋳片では、再加熱分塊圧延後も
そのような置き割れは全く生じなかった。
【0024】
【表1】
【0025】そこで、SEM(走査電子顕微鏡)により
金属組織を観察した。均熱処理を施さずに冷却した連鋳
片からは粗大化な塊状の炭化物が数多く見られた。これ
らはC,Crの濃化した未凝固の液相が共晶反応を起こ
してできたものであり、低融点の炭化物(Fe、Cr)
3 Cである。この炭化物は均熱処理を施した連鋳片から
はほとんど観察されず、均熱処理によって消滅したこと
がわかった。
【0026】また、上記金属組織を観察した結果、空冷
又は徐冷した連鋳片のパーライトラメラ間隔および旧オ
ーステナイト粒界の初析セメンタイトの形態にほとんど
差異は認められなかった。従って、徐冷処理は均熱炉か
ら連鋳片を抽出した後カバー徐冷を施すものであるが、
カバーをかける時点で連鋳片の表面温度は既に700℃
程度に下がっているため、実際に変態点を切るまでの冷
却速度は空冷材、徐冷材とも同程度となっていたと考え
られる。
【0027】空冷した連鋳片に特徴的なのは、7本のう
ち6本が冷却後の再加熱中に破断していることである。
これは次に理由によるものと推定される。空冷した連鋳
片の表層部、中間部、中心部ともに均一な初析セメンタ
イト+パーライト組織であったことから、空冷時の変態
応力は小さかったものと考えられる。
【0028】一方連鋳片の断面サイズは405×520
mmとかなり大きいことから、空冷時の熱応力は大きく
なっていた可能性が高い。その結果、冷却後の連鋳片表
層部には圧縮残留応力が生じ、内部に応力をため込みな
がらも割れを生ぜずに持ちこたえた。ところが冷却後の
再加熱時に表面から加熱されて膨張し、一気に割れを生
じたものと推定される。
【0029】1200℃での均熱処理を施した後徐冷処
理を行った連鋳片は、置き割れを生ずることがなかった
が、これは均熱処理によって亀裂の起点となりうる粗大
炭化物が除去されると共に、徐冷処理によって冷却時の
熱応力に起因する内部応力を低減できたことによるもの
と考えられる。
【0030】
【発明の効果】軸受鋼は従来、連続鋳造後に連鋳片を熱
間のまま均熱炉等の加熱炉に装入し、直接分塊若しくは
ビレット圧延工程に至るが、工程間の調整で連鋳片を室
温まで冷却する場合には置き割れが生ずるといる問題が
あった。しかしながら、本発明を用いることにより軸受
鋼の連鋳片を、置き割れを生ずることなく室温まで冷却
できるため、工程間の調整が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】軸受鋼の連鋳片の熱処理方法の概要を示す図で
ある。
【図2】軸受鋼の連鋳片の均熱処理後における徐冷の具
体的方法を示す図である。
【図3】軸受鋼の連鋳片の均熱処理後の徐冷における冷
却曲線を示す図である。
【符号の説明】
2 連鋳片 4 抱き合わせ材 6 熱電対 8 カバー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C21D 8/00 C21D 8/00 D 9/00 101 9/00 101A 101W (72)発明者 太田 肇 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−254342(JP,A) 特開 平3−254339(JP,A) 特開 昭61−86008(JP,A) 特開 昭50−6521(JP,A) 特開 昭60−255201(JP,A) 特開 昭60−2622(JP,A) 特開 平1−201422(JP,A) 特開 平3−75312(JP,A) 特開 平3−24228(JP,A) 特開 平3−104819(JP,A) 特開 昭54−40226(JP,A) 特開 平3−258448(JP,A) 特開 平7−216448(JP,A) 特開 昭62−56517(JP,A) 特開 昭58−39732(JP,A) 特開 平6−328214(JP,A) 特開 平7−299550(JP,A) 特開 平9−170024(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/22 B22D 11/00 B22D 11/12 B22D 11/124 C21D 8/00 C21D 9/00 101

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続鋳造機で軸受鋼を鋳造した後、得ら
    れた連鋳片の表面温度が600℃以下に冷却される前に
    加熱炉に装入し、1150℃から1250℃の間で8時
    間以上の加熱処理を施し、その後連鋳片の表面温度が6
    00℃から500℃間における平均冷却速度が10℃/
    hr以下の徐冷をすることを特徴とする軸受鋼の連鋳片
    の置き割れ防止方法。
  2. 【請求項2】 連続鋳造機で軸受鋼を鋳造した後、得ら
    れた連鋳片の表面温度が600℃以下に冷却される前に
    加熱炉に装入し、1150℃から1250℃の間で8時
    間以上の加熱処理を施し、その後連鋳片を抱き合わせ材
    で囲み、さらに、それらにカバーをかけて徐冷すること
    を特徴とする軸受鋼の連鋳片の置き割れ防止方法。
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