JP7230561B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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ただし、T L ≧5
本開示の連続鋳造方法において、鋳造対象となる鋼にはFe以外にC、Si、Mn及びCrが必須で含まれる。また、任意成分として、例えば、Mo、Ni、N、Al、Ti、V、Ca、Mg、REM、Nb及びBから選ばれる少なくとも1つが含まれていてもよい。また、不可避不純物として、例えば、PやSが含まれていてもよい。
Cは鋼の静的強度だけでなく、疲労強度、靭性、延性に影響する最も基本的な元素である。Cが0.15質量%未満では静的強度および疲労強度が不十分である。よって下限を0.15質量%以上とする。また、0.45質量%を超えると靭性が劣化する。よって上限を0.45質量%以下とする。
SiはCに次いで固溶強化能が大きい重要な元素である。Siが0.01質量%未満では十分な強度を得ることができない。よって下限を0.01質量%以上とする。また、0.5質量%を超えると靭性や加工性を著しく劣化させる。よって上限を0.5質量%以下とする。
Mnは焼入れ性を向上させ、冷却速度が不十分な場合でも部品の内部まで硬度を確保するのに重要な元素である。Mnが0.3質量%未満では必要な強度が確保できない。よって下限を0.3質量%以上とする。また、1.4質量%を超えると靭性および加工性が劣化する。よって上限を1.4質量%以下とする。
CrはMnと同様、鋼の焼入れ性を向上する有用な元素であり、低合金鋼を構成する重要な元素の1つである。0.8質量%未満ではこの効果が十分得られない。よって下限を0.8質量%以上とする。また、2.0質量%を超えると効果がほぼ飽和し、コストの増大を招く。よって上限を2.0質量%以下とする。
Moはその炭窒化物を微細に析出させることにより、焼戻し時に鋼を硬化させる、いわゆる2次硬化を起こす元素であり、疲労強度の改善にも有効である。また、焼入れ性向上効果も大きい。しかし1.5質量%を超えると焼入れ熱処理時に未溶解の炭化物が残存しやすくなり、靭性を劣化させる虞がある。靭性の劣化を十分に抑制するためには、上限を0.6質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上とする。
Niは強度及び靭性の確保に有効であり、焼入れ性の向上効果も大きい。しかし0.5質量%以上になるとコスト増大の弊害が大きくなる虞がある。よって上限を0.5質量%未満とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上とする。
NはTiN、AlN等の窒化物を生成し、結晶粒粗大化抑制効果を発現させる。しかし、0.025質量%を超えると窒化物の粗大化を招き、疲労強度を低下させる虞がある。また、熱間延性を低下させ、鋳造時あるいは圧延時に表面疵の要因となる虞がある。よって上限を0.025質量%以下とすることが好ましい。鋼材清浄性の観点から、0.02質量%以下とするとより好ましい。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.005質量%以上とする。
Alは脱酸目的で最も広く用いられる元素であり、またAlNを生成して結晶粒の粗大化を抑制する効果がある。しかし、0.1質量%を超えると、Al2O3の凝集合に伴い鋳造中にノズル詰まりが発生したり、鋼中に残存するAl2O3が性能を劣化させたりするなどの不具合が生じる虞がある。よって上限を0.1質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上とする。
TiはAlと同様に窒化物を生成し得る元素であり、熱的安定性に優れ、より高温まで結晶粒粗大化抑制効果を持続させる。ただし、0.1質量%を超えるとTiNが粗大に成長しやすくなり、疲労強度を低下させる虞がある。よって上限を0.1質量%以下とする。下限は特に限定されないが、0質量%以上、好ましくは0.005質量%以上とする。
VはTi及びAlと同様に窒化物を生成し得る元素であり、強度改善のために用いられる。しかし、0.4質量%を超えるとVNが粗大に成長しやすくなり、疲労強度を低下させる虞がある。よって上限を0.4質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に強度改善の効果が得られ易い。
CaはAl2O3を改質し、酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果がある。しかし、0.01質量%を超えるとCaO-Al2O3を主成分とする却って粗大な酸化物系介在物を形成し、疲労破壊の基点となる虞がある。よって上限を0.01質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に酸化物粗大化を抑制する効果が得られ易い。
MgはCa同様、Al2O3を改質し、酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果がある。また、硫化物系介在物にも作用し、アスペクト比を低下させる効果がある。しかし、0.01質量%を超えるとMgOを主成分とする粗大なクラスター状酸化物系介在物を形成し、疲労破壊の基点となる虞がある。よって上限を0.01質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果等が得られ易い。
REMもまたAl2O3を改質し、酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果がある。しかし、0.01質量%を超えると鋼の清浄性を低下させ、母材の靭性を劣化させる虞がある。よって上限を0.01質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に酸化物系介在物の粗大化を抑制する効果等が得られ易い。なお、ここでREMとはLaやCe等の希土類元素を表すが、そのうちの任意の1種類、あるいは2種類以上のREMを用いることができる。
Nbは強度および靭性の改善に効果がある。しかし、0.05質量%を超えると効果が飽和する。Nbの含有量をあまりに多くし過ぎると、鋳造時に割れが発生する虞もある。よって上限を0.05質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.005質量%以上とした場合に強度改善効果や靭性改善効果が得られ易い。
Bは少量で大きな焼入れ性向上効果がある。しかし、0.004質量%を超えると効果が飽和する。Bの含有量をあまりに多くし過ぎると、鋳造時に割れが発生する虞もある。よって上限を0.004質量%以下とすることが好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、0.0002質量%以上とした場合に焼入れ性向上効果が得られ易い。
図1に示すように、本開示の連続鋳造方法においては、上記組成を有する鋼の鋳片1を鋳型10から連続的に引き抜き、鋳型10の直下から矯正点20に至るまでに、鋳片1の表面に冷却水を噴射する等して鋳片1の2次冷却を行う。ここで、本開示の連続鋳造方法においては、鋳型10の直下から矯正点20に至る前において、鋳片1の表面温度が375~500℃の間にある時間をTL(s)、600~725℃にある時間をTH(s)として、上記式(a)で定められるTA(s)が60以上となるように鋳片1を冷却することが重要である。
TH=(t2-t1)+(t6-t5) ・・・(c)
本開示の連続鋳造方法において、2次冷却帯でオーステナイトを分解した後は、矯正点20に至る迄に鋳片1の表面温度をAc3以上の温度に復熱させる。この復熱は、鋳片1の表層組織を微細なオーステナイト組織にする、いわゆる逆変態組織を得るために必須である。復熱温度がAc3に満たない場合、逆変態が起こらない場所が残存する。このような組織は矯正歪に対して割れを呈しやすい鋳造まま組織の影響を有するため、Ac3以上にまで復熱させ、オーステナイト単相組織とすることが割れ発生抑制に有効である。尚、矯正点20に至る迄に鋳片1の表面温度を一旦Ac3以上にまで復熱していれば、その後は鋳片1の表面の熱間延性が高く保たれるため、矯正点20において温度が低下しても表面割れは問題とはならない。
(式(d)中の[Si]、[Mo]、[C]、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Cr]は、それぞれの成分の濃度(質量%)を表す。)
2次冷却および復熱による鋳片表層組織微細化効果を十分得るための条件を解明するために、変態点記録測定装置(フォーマスター装置)を用いたモデル実験を実施した。
上記のモデル実験において、粗大なオーステナイトが分解して変態する組織は375~500℃保持中ではベイナイト、600~725℃保持中ではフェライトおよびパーライトと推定される。本発明者らは上記実験に引き続き、実際の連続鋳造機にて鋳片表層がこれら2つの温度域を両方跨ぐ際の変態挙動を把握すべく、以下の実験を実施した。
TA=TL+TH×0.2 ・・・(a)
(式(a)において、TL:試料が375℃以上500℃以下にある時間、TH:試料が600℃以上725℃以下にある時間である。)
転炉-LFプロセスにて下記表2に示す組成の溶鋼を溶製し、曲率半径12.0mの湾曲型連鋳機において、220mm×256mmのサイズの鋳片を鋳造した。鋳造速度は1.0~1.6m/minである。鋳型から引き抜いた鋳片は鋳型直下に設置したゾーン長さ1mのスプレー急冷装置にて急冷した。ゾーン通過後は通常の2次冷却スプレーの水量を調整し、復熱を制御した。鋳片はガス切断機にて5.0±0.2mの長さに切断後、表面の観察に供した。
10 鋳型
20 矯正点
100 連続鋳造機
Claims (2)
- 質量%で、C:0.15~0.45%、Si:0.01~0.5%、Mn:0.3~1.4%、Cr:0.8~2.0%、Mo:0.6%以下、Ni:0.5%未満、N:0.025%以下の組成を有する鋼の鋳片を、矯正点を有する連続鋳造機を用いて連続的に鋳造する方法であって、
鋳型の直下から前記矯正点に至る前において、前記鋳片の表面温度が375~500℃の間にある時間をTL(s)、600~725℃にある時間をTH(s)として、下記式(a)で定められるTA(s)が60以上となるように前記鋳片を冷却し、
次いで前記矯正点に至る前までに、前記鋳片の表面温度をAc3以上の温度域まで復熱させることを特徴とする、
鋼の連続鋳造方法。
TA=TL+TH×0.2 ・・・(a)
ただし、T L ≧5 - 前記鋳片は、質量%で、Al:0.1%以下、Ti:0.1%以下、V:0.4%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下、Nb:0.05%以下、B:0.004%以下の組成を有する、
請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
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