JP3149354B2 - 磁性体含有樹脂組成物 - Google Patents

磁性体含有樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性体含有樹脂組
成物に関し、より詳しくは電子機器間接続用のインター
フェースケーブルの磁性損失層に用いられる磁性体含有
樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、電子機器間接続用のインターフェ
ースケーブルは、コモンモード輻射ノイズの防止するた
めに、図1および図2に示されるように、アルミマイラ
テープ2とポリ塩化ビニルからなるジャケット4との間
に、ポリ塩化ビニルとフェライトからなる磁性損失層3
を有している。このようなインターフェースケーブル
は、従来のインターフェースケーブルと比較して磁性損
失層3の分だけ外径が大きくなっている。このため、従
来のインターフェースケーブルに使用されている標準の
コネクター類を使用することができないという問題があ
った。また複数のインターフェースケーブルを束ねて使
用する場合にも、各々のケーブルをできるだけ小さくし
たいという要望もあった。
【0003】最外層のジャケット4は、UL(Underwri
ters Laboratories Inc.、米国の民間検査機関)認定の
ためには最小限の厚さを確保しなければならないため、
従来のインターフェースケーブルと同等の厚さとするた
めには、磁性損失層3を薄くすることが有効な1つの手
段である。しかし、磁性損失層3は、ポリ塩化ビニルに
フェライトが高充填された非常に脆い材料からなるた
め、その押出成形時に樹脂の流れが悪く、その結果、薄
く成形することが困難であり、かつ高速に成形すること
ができず生産性が悪いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の欠点
を解決しようとするものであり、その目的は、磁性損失
層を薄くかつ高速に成形することができるような磁性体
含有樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、磁性体と、熱
可塑性樹脂と、粘着付与剤とを含有することを特徴とす
る磁性体含有樹脂組成物である。好適な実施態様は、上
記熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリ
ル酸エチル共重合体または超低密度ポリエチレンであ
る。上記粘着付与剤は、ナフタレン・ホルムアルデヒド
系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、水素添加テルペ
ン樹脂および低分子量スチレン樹脂からなる群より選択
される少なくとも1種であり、上記熱可塑性樹脂100
重量部に対して5〜100重量部含有される。また上記
磁性体はフェライトであり、上記熱可塑性樹脂100重
量部に対して200〜3000重量部含有される。
【0006】次に本発明を詳細に説明する。本発明の磁
性体含有樹脂組成物は、磁性体と、熱可塑性樹脂と、粘
着付与剤とを含有する。
【0007】本発明で使用される磁性体としては、Ba
フェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェラ
イト、Srフェライト等のフェライトが挙げられるが、
中でもMn−Znフェライトが好ましく、公知のものが
使用され得る。フェライト粉末の粒径は、好ましくは1
00μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ま
しくは0.1〜5μmである。
【0008】磁性体の含有量は、熱可塑性樹脂100重
量部に対して、好ましくは200〜3000重量部、よ
り好ましくは400〜2500重量部である。磁性体の
含有量が200重量部未満の場合、この樹脂組成物から
なる磁性損失層によるコモンモード輻射ノイズを充分に
防止することができず、逆に3000重量部を超える場
合、樹脂組成物が脆くなって薄く成形することができな
くなる場合があり、好ましくない。
【0009】本発明で使用される熱可塑性樹脂として
は、絶縁性を有する樹脂であり、例えばポリ塩化ビニ
ル、塩化ビニル系共重合体(エチレン−塩化ビニル共重
合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体等)、ポリオレ
フィン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低
密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン
(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LD
PE)、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、エ
チレン系共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重
合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体
(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMA
A)、エチレン−酢酸ビニルグリシジルメタクリル酸共
重合体(E−VA−GMA)等)、ポリスチレン、ポリ
アミド樹脂(ナイロン等)、フッ素樹脂(例えばポリ4
フッ化エチレン、ポリ塩化3フッ化エチレン等)、ポリ
エステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、
アクリル樹脂、ポリイミド等が挙げられるが、中でも機
械的特性の点から、ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビ
ニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EV
A)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EE
A)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、塩素化ポ
リエチレンが好ましく、特にポリ塩化ビニル、エチレン
−塩化ビニル共重合体、塩素化ポリエチレンが好まし
い。
【0010】本発明で使用される粘着付与剤は、本発明
の磁性体含有樹脂組成物に粘性を付与するために配合す
るものであり、特に限定されず公知のものが使用され
る。例えば、クマロン・インデン系樹脂、フェノール・
ホルムアルデヒド系樹脂、ナフタレン・ホルムアルデヒ
ド系樹脂(アルキルナフタレン・ホルムアルデヒド樹
脂、メチルナフタレン・ホルムアルデヒド樹脂等)、キ
シレン・ホルムアルデヒド系樹脂、水素添加テルペン樹
脂、テルペン−フェノール系樹脂(ジペンテン−フェノ
ール共重合体、αピネン−フェノール共重合体、βピネ
ン−フェノール共重合体等)、低分子量スチレン樹脂
(重量平均分子量(Mw)が100〜3000程度)、
石油系炭化水素樹脂、ロジンエステル等が挙げられ、中
でも粘着付与効果が高い点で、ナフタレン・ホルムアル
デヒド系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、水素添加
テルペン樹脂、低分子量スチレン樹脂が好ましく、特に
ナフタレン・ホルムアルデヒド系樹脂、テルペン−フェ
ノール系樹脂が好ましい。
【0011】この粘着付与剤の含有量は、熱可塑性樹脂
100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、
特に好ましくは10〜50重量部である。粘着付与剤の
含有量が5重量部未満の場合、本発明の磁性体含有樹脂
組成物の高温時の粘性が不足して脆くなるため、押出成
形時に樹脂の流れが悪く、従って薄くかつ高速に成形す
ることができない場合がある。逆に100重量部を超え
ると、本発明の磁性体含有樹脂組成物の機械的特性が低
下して好ましくない。
【0012】本発明の磁性体含有樹脂組成物はこのよう
に高温時に粘性を有するので、その押出成形時に樹脂の
流れが良好となり、その結果、薄く成形することが可能
で、かつ高速に成形することが可能で生産性が良好とな
る。
【0013】本発明の磁性体含有樹脂組成物は、必要に
応じて他の添加剤、例えば可塑剤、安定剤、滑剤、難燃
剤等が添加され得る。
【0014】可塑剤としては、例えばトリメリット酸系
(例えばトリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸
イソノニル、トリメリット酸イソデシル等)、フタル酸
系(例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フ
タル酸ジヘプチル等)、リン酸系、アジピン酸系等の公
知のものが使用される。可塑剤の含有量は、熱可塑性樹
脂100重量部に対して、好ましくは50〜300重量
部、より好ましくは100〜200重量部である。
【0015】安定剤としては、例えば金属セッケン、有
機スズ系、鉛系、アンチモン系等の従来公知のものが使
用される。安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量
部に対して、好ましくは1〜15重量部、より好ましく
は4〜10重量部である。また従来公知の酸化防止剤
(例えばヒンダードフェノール系、アミン系等)、光安
定剤等も使用され得る。
【0016】滑剤としては、例えばステアリン酸、ステ
アリン酸亜鉛等が挙げられる。滑剤の含有量は、熱可塑
性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜10
重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0017】難燃剤としては、例えば水酸化アルミニウ
ム、三酸化アンチモン等が挙げられる。
【0018】本発明の磁性体含有樹脂組成物は、前記し
た各成分の1種もしくは2種以上を用い、それらの所定
量を適宜混練機等で混合することにより調製される。調
製された磁性体含有樹脂組成物は、用途に応じて所望の
形状に成形され、例えば図1に示される電子機器間のイ
ンターフェースケーブルの磁性損失層、磁気シールドテ
ープ、磁気シールドシート、路側通信用同軸ケーブル用
コア等の種々のシールド用途に使用され得る。
【0019】
【実施例】以下、実施例によって本発明を詳細に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0020】実施例1 熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル(ビニカKR80
0、平均重合度2350、三菱化学(株)製)100重
量部、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチル160
重量部、鉛系安定剤7重量部、磁性体としてフェライト
粉末(BSF−547、平均粒径3.12μm、戸田工
業(株)製)1600重量部、滑剤としてステアリン酸
1重量部、および粘着付与剤として水素添加テルペン樹
脂(クリアロンM115、軟化点115℃、ヤスハラケ
ミカル製)10重量部をミキシングロールを用いて混練
した(条件:ロール混練、170〜175℃)。これを
押出機により厚さ約0.5mmtのチューブ状に押出
し、そのチューブを一定の速度で引き伸ばした。この時
の引き伸ばす速度が速い場合にはあるところで切断され
る。この切断する限界まで引き伸ばした時にどの程度ま
で薄く成形できるかを下記式により評価した。その結果
を表1に示す。
【0021】
【数1】
【0022】判定基準は以下の通りである。 ◎・・・35%未満 ○・・・35%以上50%未満 ×・・・50%以上
【0023】実施例2 実施例1において、粘着付与剤の配合量を20重量部と
したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調
製し、その押出時の伸びを評価した。その結果を表1に
示す。
【0024】実施例3 実施例1において、粘着付与剤の配合量を50重量部と
したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調
製し、その押出時の伸びを評価した。その結果を表1に
示す。
【0025】実施例4 実施例1において、粘着付与剤を水素添加テルペン樹脂
の代わりにテルペン−フェノール系樹脂(ジペンテン−
フェノール共重合体、マィティエースG150、軟化点
150℃、ヤスハラケミカル製)20重量部用いたこと
以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、そ
の押出時の伸びを評価した。その結果を表1に示す。
【0026】実施例5 実施例1において、粘着付与剤を水素添加テルペン樹脂
の代わりにテルペン−フェノール系樹脂(αピネン−ビ
スフェノールA共重合体、YSポリスター2130、軟
化点130℃、ヤスハラケミカル製)20重量部用いた
こと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製
し、その押出時の伸びを評価した。その結果を表1に示
す。
【0027】実施例6 実施例1において、粘着付与剤を水素添加テルペン樹脂
の代わりにテルペン−フェノール系樹脂(αピネン−フ
ェノール共重合体、YSポリスターT145、軟化点1
45℃、ヤスハラケミカル製)20重量部用いたこと以
外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、その
押出時の伸びを評価した。その結果を表1に示す。
【0028】実施例7 実施例1において、粘着付与剤を水素添加テルペン樹脂
の代わりにテルペン−フェノール系樹脂(βピネン−フ
ェノール共重合体、YSポリスターS145、軟化点1
45℃、ヤスハラケミカル製)20重量部用いたこと以
外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、その
押出時の伸びを評価した。その結果を表1に示す。
【0029】実施例8 実施例1において、粘着付与剤を水素添加テルペン樹脂
の代わりに低分子量スチレン樹脂(YSレジン−SX1
00、軟化点100℃、重量平均分子量2500、ヤス
ハラケミカル製)20重量部用いたこと以外は、実施例
1と同様にして樹脂組成物を調製し、その押出時の伸び
を評価した。その結果を表2に示す。
【0030】実施例9 実施例1において、粘着付与剤を水素添加テルペン樹脂
の代わりにメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂(レ
ジタックスA−2、軟化点68〜82℃、三井鉱山化成
製)20重量部用い、フェライト粉末の配合量を230
0重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂
組成物を調製し、その押出時の伸びを評価した。その結
果を表2に示す。
【0031】実施例10 実施例1において、粘着付与剤を水素添加テルペン樹脂
の代わりにアルキルナフタレンホルムアルデヒド樹脂
(レノシン300、軟化点58−74℃、Rhein
Chemie製)20重量部用いたこと以外は、実施例
1と同様にして樹脂組成物を調製し、その押出時の伸び
を評価した。その結果を表2に示す。
【0032】実施例11 実施例10において、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニ
ルの代わりにエチレン−アクリル酸エチル共重合体(M
B−870、日本ユニカー製)100重量部を用い、ト
リメリット酸トリオクチルおよび鉛系安定剤を用いずに
ヒンダードフェノール系酸化防止剤5重量部を用い、フ
ェライト粉末の配合量を400重量部としたこと以外
は、実施例10と同様にして樹脂組成物を調製し、その
押出時の伸びを評価した。その結果を表2に示す。
【0033】実施例12 実施例10において、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニ
ルの代わりに超低密度ポリエチレン(X−136、三菱
化学製)100重量部を用い、トリメリット酸トリオク
チルおよび鉛系安定剤を用いずにヒンダードフェノール
系酸化防止剤5重量部を用い、フェライト粉末の配合量
を600重量部としたこと以外は、実施例10と同様に
して樹脂組成物を調製し、その押出時の伸びを評価し
た。その結果を表2に示す。
【0034】比較例1 実施例1において、粘着付与剤を配合しなかったこと以
外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、その
押出時の伸びを評価した。その結果を表2に示す。
【0035】比較例2 実施例1において、粘着付与剤である水素添加テルペン
樹脂の代わりに表面処理剤であるチタネート系カップリ
ング剤(ブレンアクトKR−TTS、味の素製)2重量
部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成
物を調製し、その押出時の伸びを評価した。その結果を
表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】表1および2より、実施例1〜12で得ら
れた樹脂組成物は、薄肉成形性が良好であるので、薄く
かつ高速に成形することが可能であると考えられる。し
かし、比較例1および2で得られた樹脂組成物は薄肉成
形性が不良であり、薄くかつ高速に成形することが不可
能であると考えられる。
【0039】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
磁性体含有樹脂組成物によれば、高温時に粘性を有する
ため、押出成形時に樹脂の流れが良好となり、磁性損失
層を薄く成形することができる。従って、例えばこのよ
うな薄い磁性損失層を有する電子機器間のインターフェ
ースケーブルは、最外層のジャケットの最小厚さを確保
したまま、従来のインターフェースケーブル並の外径を
有するので、これまでのコネクター類を使用することが
でき、また複数のインターフェースケーブルを束ねて使
用する場合にも小型化できる。また、比重の高い磁性損
失層を薄くできるので軽量化にも有益である。さらに押
出成形時に磁性損失層を高速に成形することができるの
で生産性が向上する。またその他のシールド用途にも非
常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性損失層を有するインターフェースケーブル
の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すインターフェースケーブルを順次被
覆を剥離してその内部構造を示した図である。
【符号の説明】
1 絶縁線心 2 アルミマイラテープ 3 磁性損失層 4 ジャケット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 33/08 C08L 33/08 101/00 101/00 H01F 1/113 H01F 1/113 H05K 9/00 H05K 9/00 X (56)参考文献 特開 平4−355124(JP,A) 特開 平5−262935(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 1/00 - 101/16 C08K 3/00 - 13/08 G06F 3/00 H01F 1/113 H05K 9/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性体と、熱可塑性樹脂としてポリ塩化
    ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体または超
    低密度ポリエチレンと、粘着付与剤とを含有する組成物
    からなる磁性損失層を有することを特徴とするインター
    フェースケーブル
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂100重量部に対して、粘
    着付与剤が5〜100重量部含有されることを特徴とす
    る請求項1に記載のインターフェースケーブル
  3. 【請求項3】 粘着付与剤が、ナフタレン・ホルムアル
    デヒド系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、水素添加
    テルペン樹脂および低分子量スチレン樹脂からなる群よ
    り選択される少なくとも1種であることを特徴とする請
    求項1に記載のインターフェースケーブル
  4. 【請求項4】 熱可塑性樹脂100重量部に対して、磁
    性体が200〜300重量部含有されることを特徴とす
    る請求項1に記載のインターフェースケーブル
  5. 【請求項5】 磁性体が、フェライトであることを特徴
    とする請求項1に記載のインターフェースケーブル
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