以下、本考案の実施の形態として図面に示したホールダウン金物1について詳細に説明する。ホールダウン金物1は、詳細を後述するように主金物体2と補強金物体3とから構成され、例えば図1に示すようにアンカボルト5を埋設した基礎4Aと基礎4B(以下、個別に説明する場合を除いて基礎4と総称する。)とが直交するコーナ部位の基礎4Aの上面4A1上に設置される。ホールダウン金物1は、基礎4のコーナ部位において基礎4と、土台6A、6B(以下、個別に説明する場合を除いて土台6と総称する。)と、主柱7とを一体化するホールダウン機能を奏して図7に示す機械的強度の大きな軸組8を構成して耐震性の向上を図った木造家屋が建設されるようにする。
なお、ホールダウン金物1は、基礎4のコーナ部位ばかりでなく、例えば直線部位或いは交差部位等の主柱7を立設する箇所にも設置され、当該設置部位においてホールダウン機能を奏する。ホールダウン金物1は、後述するように軸組8を構成する構成部材にそれぞれ組み付けられ突合せ部位を強固に結合する他の結合金物50と巧に組み合わされる。
ホールダウン金物1は、主金物体2が、図2に示すように縦長矩形の嵌合部10と、この嵌合部10の下端部から直角に折曲されて一体に形成された横長矩形の固定部11とから構成される。主金物体2は、後述するように固定部11が補強金物体3とともにアンカボルト5により基礎4上に固定され、嵌合部10に土台6と主柱7とを結合することにより基礎4と土台6と主柱7とを一体化する。
主金物体2は、例えば6mm(5mm〜6mm)厚の鋼板が素材として用いられ、外形抜き工程、穿孔工程及び曲げ工程等の簡易なプレス加工を施し、四三酸化鉄被膜を成膜する黒染め処理等の適宜の防錆表面処理を施して製作される。なお、主金物体2は、鋼板を素材として防錆表面処理を施して製作したが、かかる素材に限定されないことは勿論である。主金物体2は、コスト的には有効ではないが、例えばステンレス材を用いてもよく、また鋼板に対して適宜のめっき処理を施したものを用いるようにしてもよい。
主金物体2は、各部を後述する構成で形成したものを用いて引抜き荷重試験を実施したところ、25Nの引抜き荷重に対しても試験体間の結合状態を確実に保持する結果を得ることができた。主金物体2は、鋼板の厚みについて上限は無いが、コスト条件や施工性からさほど大きな厚みの素材で形成する必要も無い。
主金物体2は、嵌合部10を、長さ(高さ)寸法Hが約230mm、幅寸法Wが約75mmの外形寸法を以って形成する。主金物体2は、固定部11を、嵌合部10からの突出寸法Lが約40mmを以って形成する。主金物体2は、嵌合部10と固定部11が、上述した外形寸法に限定されないが、上述したように25Nの引抜き荷重試験を実施した場合に基礎4と土台6と主柱7の結合部位にまったく変化を生じさせることが無い実験結果を得た。なお、主金物体2は、嵌合部10や固定部11を大きな外形寸法により形成するようにしてもよいが、コスト条件或いは大型化や重量増による作業性の低下等から上限値内で製作することが好ましい。
主金物体2は、嵌合部10が、例えば120mm角の土台6を貫通するとともに主柱7に対して所定の長さで嵌合するに足る上述した長さ寸法Hに形成される。主金物体2は、嵌合部10が、その長さ寸法Hを上述した上限値を大きく超えて形成した場合に、主柱7に形成する後述する柱側嵌合溝27の長さが大きくなって機械的強度を損なう虞もあることから上述した上限値内で製作することが好ましい。また、主金物体2は、嵌合部10の幅寸法Wについては、120mm角の土台6や主柱7と組み合わせた状態でその主面からはみ出すことがないようにするために最大でも100mm以下とすることが好ましい。なお、主金物体2は、土台6や主柱7に135mm角のものを用いた場合でも、これらに合わせた大きな外形寸法で形成する必要も無い。
嵌合部10には、図2に示すように、2個の土台取付孔12A、12B(以下、個別に説明する場合を除いて土台取付孔12と総称する。)と、4個の柱取付孔13A〜13D(以下、個別に説明する場合を除いて柱取付孔13と総称する。)が厚み方向に貫通して形成される。嵌合部10には、固定部11の上面11aから高さ寸法Kを下辺縁14aとしてやや縦長矩形の工具逃し開口部14が厚み方向に貫通して形成される。嵌合部10には、工具逃し開口部14の上方に位置し、上辺縁14bに開口して連通する高さ方向の長溝からなる金物逃し開口部15が厚み方向に貫通して形成される。
嵌合部10は、工具逃し開口部14と金物逃し開口部15を、幅方向の中心軸線上に位置する開口部として形成する。嵌合部10は、工具逃し開口部14が、後述するようにラチェットレンチ等の締付け工具を用いてアンカボルト5と主金物体2を結合する際に、締付け工具の頭部が嵌合部10と衝合しないように逃がすことでアンカボルト5との結合がより近い位置で行われるようにする。工具逃し開口部14は、固定部11の上面11aから高さ寸法Kが約5mmであり、長さが約40mm、幅が約30mmの開口寸法を以って嵌合部10に形成される。
アンカボルト5は、一般の木造家屋の場合に太さがM16、全長が400mmの仕様のものが用いられて、基礎4に対して埋め込み深さが250mm以上で埋設される。アンカボルト5には、太さ仕様或いは形状について各種仕様のものが提供されており、後述するように基礎4Aの上面4A1から突出して土台6を貫通される上端部位に形成したネジ部5aに座金付きナット9が締付け工具を用いてねじ込まれる。工具逃し開口部14は、上述した開口寸法により形成することにより、各種仕様のアンカボルト5や座金付きナット9を用いた場合でも、締付け工具が嵌合部10に衝合することなくねじ込み操作を可能とする。
金物逃し開口部15は、上述した工具逃し開口部14の上辺縁14bから長さ(高さ)が約85mm、幅が約10mmの開口寸法を以って嵌合部10に形成される。軸組8においては、詳細を後述するようにコーナ部において土台6A、6Bを結合金物50を介して結合するとともに、主金物体2の嵌合部10を土台6Aに貫通させて主柱7との結合が行われるようにする。軸組8においては、荷重条件等により各種仕様の結合金物50を用いて土台6A、6Bの結合を行い、また結合金物50が土台6A、6Bのいずれかに組み付けられる。金物逃し開口部15は、上述した開口寸法により形成することにより、各種仕様に対しても共通して用いることが可能である。
嵌合部10には、上述した金物逃し開口部15を挟んで土台取付孔12A、12Bが形成されている、土台取付孔12は、内径が約12.5mmの丸孔であり、それぞれ外側の内壁が側縁から約17.5mmに位置するようにして嵌合部10に形成される。土台取付孔12は、図2に示すように一方の土台取付孔12Aが他方の土台取付孔12Bに対してやや上方に位置して嵌合部10に形成される。土台取付孔12には、後述するように土台6Aの側面から打ち込まれる土台固定用ドリフトピン60がそれぞれ貫通し、土台6Aに主金物体2が固定されるようにする。主金物体2は、嵌合部10に2個の土台取付孔12A、12Bを位置を異にして形成することにより、土台6Aの強度低下が抑制されるようにする。なお、土台固定用ドリフトピン60には、12mmの外径で、例えば100mm程度の長さを有するものが用いられる。
嵌合部10には、上述した金物逃し開口部15の上方に位置して柱取付孔13A〜13Dが形成されている。柱取付孔13も、内径が約12.5mmの丸孔であり、下方側に2個の柱取付孔13A、13Bが約26mmの間隔を以って略同一高さ位置に並んで形成されるとともに、上方側に2個の柱取付孔13C、13Dが約40mmの間隔を以って略同一高さ位置に並んで形成される。柱取付孔13は、下方側の柱取付孔13A、13Bと上方側の柱取付孔13C、13Dが約50mmの間隔を以って形成される。柱取付孔13には、後述するように主柱7の側面7aから打ち込まれる柱固定用ドリフトピン61がそれぞれ貫通し、主柱7を主金物体2に固定するようにする。主金物体2は、嵌合部10に4個の柱取付孔13A〜13Dを上下、左右に位置を異にして形成することにより、主柱7の強度低下が抑制されるようにする。なお、柱固定用ドリフトピン61には、土台固定用ドリフトピン60と共用の外径が約12mm、長さが約100mmのドリフトピンが用いられる。
主金物体2は、嵌合部10に、上述した寸法形状を有する2個の土台取付孔12と4個の柱取付孔13と工具逃し開口部14と金物逃し開口部15を形成したが、かかる構成に限定されないことは勿論である。主金物体2は、土台取付孔12や柱取付孔13が軸組8の各部位において所定の結合強度を有して互換性を以って使用することを可能とするためにそれぞれ複数個を上述した位置に形成したが、嵌合部10がその外形寸法を異にして形成される場合にはそれらの個数や位置を異にして形成される。主金物体2は、土台6や主柱7に結合する結合金物50の仕様によっては、結合状態においてこの結合金物50を逃がす金物逃し開口部15も不要となる。
主金物体2には、図2に示すように固定部11に第1アンカボルト嵌挿孔16が厚み方向に貫通して形成される。第1アンカボルト嵌挿孔16は、内径が約22mmの丸孔であり、上述したM16の太さ仕様のアンカボルト5の外径よりも充分に大きな内径を有して固定部11に形成される。第1アンカボルト嵌挿孔16は、後述するようにアンカボルト5を貫通させるが、上述した孔径を有することで、施工条件により突出位置にバラツキが生じるアンカボルト5との組み合わせも簡易に行われて主金物体2を基礎4の上面4A1上に設置することを可能とし、またその孔径の範囲で種々の仕様のアンカボルト5に対する互換性を有する。
以上のように構成された主金物体2は、図1に示すように主柱7の立設位置に対応してアンカボルト5を埋設した基礎4の上面4A1上に設置され、アンカボルト5を介して固定部11の上面11a上に補強金物体3が組み合わされる。補強金物体3は、厚み寸法Tが、上述した主金物体2の固定部11の上面11aと工具逃し開口部14の下辺縁14aとの高さ寸法Kよりもやや大きな厚寸法、例えば8mm厚の鋼材を素材として、外形抜き工程と穿孔工程の簡易なプレス加工を施して全体が矩形板体に形成される。なお、補強金物体3にも、例えば四三酸化鉄被膜を成膜する黒染め処理等の適宜の防錆表面処理を施すようにしてもよい。
補強金物体3は、主金物体2の上述した固定部11の外形寸法よりもやや小さな外形寸法、例えば横幅寸法Jが約73mm、縦幅寸法Kが約36mmの外形寸法を以って形成される。補強金物体3には、左右方向の略中央部に位置して第2アンカボルト嵌挿孔17が厚み方向に貫通して形成される。第2アンカボルト嵌挿孔17は、主金物体2の第1アンカボルト嵌挿孔16よりもやや小径でありかつM16の太さ仕様のアンカボルト5の外径よりも大きな内径を有して補強金物体3に形成される。第2アンカボルト嵌挿孔17は、例えば20mmの内径で形成されることで、アンカボルト5に対して補強金物体3を容易に組み合わされるようにする。
補強金物体3は、第2アンカボルト嵌挿孔17が、その中心を幅方向の中心に対して一方側辺3A側に偏心されて形成される。すなわち、補強金物体3は、図3に示すように第2アンカボルト嵌挿孔17が、その中心から一方側辺3Aの間隔K1に対して他方側辺3Bの間隔K2よりもやや小さく形成される。補強金物体3は、第2アンカボルト嵌挿孔17が、間隔K1を約16mm、間隔K2を約20mmとなるように形成する。
補強金物体3は、後述するように主金物体2に対して、一方側辺3A又は他方側辺3Bを嵌合部10の内面に突き当てて固定部11の上面11a上に組み合わされ、第1アンカボルト嵌挿孔16を介して第2アンカボルト嵌挿孔17にアンカボルト5が貫通する。補強金物体3は、上述した各部の寸法形状により、嵌合部10に一方側辺3Aを突き当てて組み合わせた第1の組合せ状態と、この第1の組合せ状態から反転して嵌合部10に他方側辺3Bを突き当てて組み合わせた第2の組合せ状態であっても、第2アンカボルト嵌挿孔17を第1アンカボルト嵌挿孔16内に臨ませて主金物体2に組み合わされる。したがって、補強金物体3は、基礎4にアンカボルト5がその埋設位置にバラツキがあっても、互換性を有して主金物体2に組み付けることが可能である。
補強金物体3は、主金物体2の固定部11上に組み合わされてアンカボルト5に座金付きナット9をねじ込むことにより主金物体2と一体化される。補強金物体3は、これにより主金物体2の固定部11と共同して全体で厚みが130mmの基礎4に対する固定部を構成する。また、補強金物体3は、主金物体2に対して一方側辺3A或いは他方側辺3Bを嵌合部10の内面に突き合わせて固定部11の上面11a上に組み合わせることにより、固定部11から折曲されて立ち上がる嵌合部10の根元部位を補強する。
補強金物体3は、上述したように工具逃し開口部14の下辺縁14aの高さ寸法Kよりもやや大きな厚み寸法を有することにより、その主面が工具逃し開口部14に臨んで下辺縁14aとの間に段差が生じない状態で主金物体2の固定部11上に組み合わされる。したがって、補強金物体3は、上述したように主金物体2が固定部11を小型化して嵌合部10とアンカボルト5が近接した状態となるが、アンカボルト5にねじ込んだ座金付きナット9を締め付ける締付け工具が工具逃し開口部14の下辺縁14aに衝合することなくねじ込み操作を可能とする。
なお、実施の形態においては、アンカボルト5にねじ込むことにより主金物体2と補強金物体3を一体化する部材として上述したように取り扱いが簡易なナットと座金を一体で形成した座金付きナット9として説明したが、かかる締結部材に限定されないことは勿論である。締結部材については、別部材のナットと座金を組み合わせたるものであってもよい。なお、座金付きナット9は、詳細を省略するが座金が補強金物体3の第2アンカボルト嵌挿孔17の内径よりも大きな外形寸法を以って形成される。
以上のように構成された主金物体2と補強金物体3を組み合わせてなるホールダウン金物1は、図4に示すように基礎4の上面4A1上に設置されてアンカボルト5にねじ込んだ座金付きナット9により固定される。基礎4には、少なくとも主柱7を立設する箇所に位置してネジ部5aを上面4A1から突出させてアンカボルト5が埋設される。なお、基礎4には、間柱を立設する位置や適宜の間隔を以ってアンカボルト5が埋設され、またその上面4A1上に図示しない基礎パッキンが設置される。
アンカボルト5は、幅方向の略中央部に位置するように配列されて基礎4に埋設されることにより、いずれの箇所からも40mm以上のかぶり厚が保持される。アンカボルト5は、基礎4のコーナ部においてその中心に埋設する場合に、直交する基礎4A、4Bの両側面壁からのかぶり厚がそれぞれ約50mm〜60mmとなり、従来のホールダウン金物を用いる場合に主柱7に近づけて結合するためにはコンクリート技術ではほとんど実現が困難な公差範囲(10mm)で埋設されなければならない。
ホールダウン金物1は、図4に示すように、基礎4に対して主金物体2が、またこの主金物体2に対して補強金物体3が、上面からネジ部5aを突出させて埋設されたアンカボルト5を介してそれぞれ組み付けられて設置される。ホールダウン金物1は、主金物体2が、その第1アンカボルト嵌挿孔16にアンカボルト5のネジ部5aを嵌挿させて固定部11を基礎4の上面4A1上に設置される。ホールダウン金物1は、補強金物体3が、その表裏面を選択されて主金物体2に組み合わされて固定部11の上面11a上に設置される。ホールダウン金物1は、アンカボルト5に対してネジ部5aに座金付きナット9がねじ込まれることにより、同図に示すように主金物体2の固定部11と補強金物体3が共締めされて嵌合部10を立設した状態で基礎4の上面4A1上に設置される。
ホールダウン金物1は、主金物体2が主柱7との結合部を構成する嵌合部10と基礎4との固定部を構成する固定部11とを上述した寸法値で形成したことにより、図4に示すように主柱7をアンカボルト5の埋設位置により近い位置において一体化することが可能である。ホールダウン金物1は、上述した基礎4に対するアンカボルト5の埋設位置の公差範囲を大幅に軽減することを可能として基礎形成工程や土台敷き工程の効率化を図るとともに、基礎4と土台6と主柱7を強固に一体化する。
軸組工法においては、上述した工程によりホールダウン金物1を立設した基礎4上に、土台敷き工程が施される。ホールダウン金物1は、土台敷き工程において主金物体2の嵌合部10に、基礎4の上面4A1上に設置される土台6を結合し、さらにこの土台6に立設する主柱7を結合する。なお、軸組工法においては、プレカットした土台6や主柱7を現場搬入して土台敷き工程や建て方工程を施すが、これら土台6や主柱7に後述する結合金物50や他の結合金物も予め固定される。ホールダウン金物1は、基礎4のコーナ部に位置して結合金物50により相対する端部を突き合わせて直交状態に組み合わされる土台6A、6Bの主柱7を立設する一方の土台6Aと結合される。土台6は、一般にヒノキ、ヒバ或いはクリ等の防腐、防蟻特性を有する硬い材木に適宜の防腐剤を含浸或いは塗布した120mm角の木材が用いられる。
土台6A、6Bは、従来の軸組工法に採用される適宜のほぞ継ぎ手構造により一体に結合することも可能であるが、実施の形態では図1に示すように結合金物50を組み付けた土台6Aがホールダウン金物1に土台固定用ドリフトピン60により固定される。土台6A、6Bは、結合金物50を介して結合することで、面倒かつ精密な加工を要するほぞ継ぎ手構造を不要とするとともに機械的強度の向上も図られる。
結合金物50は、図7を参照して後述する軸組8の構成各部材を、それぞれに面倒かつ精密な加工を要するほぞ継ぎ手構造を不要とし機械的強度の向上を図って互いに強固に結合するための結合金物システムを構成する結合金物である。結合金物50は、詳細を省略するが、上述した主金物体2と同じ鋼材が素材として用いられて一体に形成され、複数個の第1結合孔が形成された板状の第1固定部51と、この第1固定部51の側縁から互いに所定の間隔を以って一体に突設されるとともにそれぞれに第2結合孔が形成された第1固定凸片部及び第2固定凸片部からなる第2固定部52とから構成される。結合金物50は、第2固定部52が、第1固定凸片部と第2固定凸片部をそれぞれの基端部において90°の捻り処理を施して第1固定部51に対して直交する部位として形成される。
土台6Aには、上述した結合金物50が、土台6Bとの突合せ側面6A1から第1固定部51を突出させて第2固定部52を固定する。土台6Aには、端部6A2から約60mmの位置で突合せ側面6A1に開口して、結合金物50の第1固定凸片部と第2固定凸片部を嵌合する金物取付孔20A、20Bが形成される。土台6Aには、突合せ側面6A1に取付孔20A、20Bを挟んだ側方に開口して、土台固定用ドリフトピン60を打ち込む第1ドリフトピン打込み孔21が形成される。
第1ドリフトピン打込み孔21は、後述するように土台6Aをホールダウン金物1に組み合わせた状態で、主金物体2の嵌合部10に形成した土台取付孔12と対向位置する。第1ドリフトピン打込み孔21は、外径が約12mm、長さが約100mmの土台固定用ドリフトピン60が打ち込まれてその先端部を主金物体2の土台取付孔12に貫通させるため、図6に示すように土台側嵌合溝23を横切る深さを以って形成される。
土台6Aには、突合せ側面6A1と直交する上面6A3に開口して、第1金物固定用ドリフトピン62を打ち込む第2ドリフトピン打込み孔22が形成される。第2ドリフトピン打込み孔22は、土台6Aに対して、端部6A2から約60mmの位置でありかつ突合せ側面6A1からの間隔が、土台6Aに組み合わされた結合金物50の第2固定部52に形成した取付孔と対向するようにして形成される。第2ドリフトピン打込み孔22も、外径が約12mm、長さが約100mmの第1金物固定用ドリフトピン62が打ち込まれてその先端部を結合金物50の第2固定部52に形成した取付孔に貫通させる孔寸法を以って形成される。土台6Aは、第2ドリフトピン打込み孔22に打ち込んだ第1金物固定用ドリフトピン62により結合金物50を固定する。
土台6Aには、図1に示すように、端部6A2の中央位置に高さ方向に開口して上面6A3と底面6A4に貫通する長さ方向のスリット状溝からなる土台側嵌合溝23が形成される。土台側嵌合溝23は、端部6A2からの長さが上述した主金物体2の嵌合部10の幅寸法Wとほぼ等しく、溝幅が嵌合部10の厚みとほぼ等しく形成される。なお、土台側嵌合溝23は、土台6Aに木材に施す加工精度の限界もあり、また主金物体2の嵌合部10が容易に嵌合されるようにその長さや溝幅がプラス公差を以って形成される。
土台6Aには、図5及び図6に示すように底面6A4の土台側嵌合溝23により区割りされた突合せ側面6A1側の部位に逃げ凹部24が形成される。逃げ凹部24は、詳細を省略するが上述した主金物体2の固定部11と補強金物体3の厚み及び座金付きナット9を収納するに足る深さを以って形成され、またその内部に補強金物体3から突出するアンカボルト5のネジ部5aを嵌合する高さ方向の嵌合溝が形成される。
土台6Aには、図6に示すように結合金物50が第2固定部52の第1固定凸片部と第2固定凸片部を相対する金物取付孔20A、20Bに嵌合して組み付けられる。結合金物50は、上述したように土台6Aの上面6A3に設けた第2ドリフトピン打込み孔22から第1金物固定用ドリフトピン62が打ち込まれて第1固定凸片部と第2固定凸片部に設けた取付孔を貫通することにより、第1固定部51を突合せ側面6A1から突出させて土台6Aに組み付けられる。
土台6Aは、上述したように上面4A1上にホールダウン金物1を設置した基礎4に設置される。土台6Aは、土台側嵌合溝23に主金物体2の嵌合部10を貫通させ、突合せ側面6A1に設けた第1ドリフトピン打込み孔21から土台固定用ドリフトピン60が打ち込まれる。土台6Aは、打ち込まれた土台固定用ドリフトピン60が嵌合部10に形成した土台取付孔12Aを貫通することにより、主金物体2と一体化される。
土台6Aには、その突合せ側面6A1に基礎4Bの上面4B1上に設置される土台6Bが結合金物50によって直交状態で結合される。土台6Bは、長さ方向の端部6B1を土台6Aの突合せ側面6A1に突き当て基礎4Bの上面4B1上に設置される。土台6Bには、端部6B1に土台側嵌合溝25が形成されるとともに、側面6B2に開口して第3ドリフトピン打込み孔26が形成される。土台側嵌合溝25も、端部6B1の中央位置に高さ方向に開口して上面6B3と底面6B4に貫通するスリット状溝からなり、結合金物50の第1固定部51の長さとほぼ等しい奥行き長さを以って形成される。
土台6Bは、土台6Aに対して、端部6B1が突合せ側面6A1に突き合わされてその土台側嵌合溝25に結合金物50の第1固定部51が嵌合されて基礎4Bの上面4B1上に載置される。土台6Bには、図6に示すように側面6B2に設けた第3ドリフトピン打込み孔26から第2金物固定用ドリフトピン63が打ち込まれる。第2金物固定用ドリフトピン63にも、他のドリフトピンと同等の外径が約12mm、長さが約100mmのドリフトピンが用いられる。第2金物固定用ドリフトピン63は、その先端が結合金物50の第1固定部51に設けた取付孔を貫通することにより、土台6Bを結合金物50に結合する。したがって、土台6Bは、結合金物50を介して土台6Aに対してその突合せ側面6A1に直交状態で結合されて基礎4Bの上面4B1上に設置される。
軸組工法においては、上述した土台敷き工程により基礎4上に設置した土台6に対して柱を立て、その上に梁等の横架材を組み立てる建て方工程が施される。ホールダウン金物1は、基礎4上において土台6Bと直交状態に結合された土台6Aの端部に立設される例えば120mm角(又は135mm角)の通し柱である主柱7を、土台6Aと基礎4に対して結合することによりホールダウン機能を奏する。なお、ホールダウン金物1は、主柱7を対象として用いられるが、105mm角(又は120mm角)の管柱或いは各種サイズの間柱等を結合する箇所にも用いるようにしてもよい。
主柱7は、一般にスギやヒノキ或いはツガ等の硬い材木が用いられ、土台6Aと結合する長さ方向の一端面(下端面)7bに柱側嵌合溝27が形成されるとともに、側面7aに柱固定用ドリフトピン61が打ち込まれる4個の第4ドリフトピン打込み孔28が形成される。柱側嵌合溝27は、土台6Aの上述した土台側嵌合溝25と対向して形成され、下端面7bの中央位置に高さ方向に開口して第4ドリフトピン打込み孔28を形成した側面7aと直交する相対する側面7c、7dに貫通するスリット状嵌合溝からなる。
柱側嵌合溝27は、主金物体2の嵌合部10の厚みとほぼ等しい溝幅と、嵌合部10の土台6Aの土台側嵌合溝25を貫通する部位とほぼ等しい高さで形成される。第4ドリフトピン打込み孔28は、後述するように主柱7をホールダウン金物1を介して土台6Aに組み合わせた状態で、主金物体2の嵌合部10に形成した柱取付孔13にそれぞれ相対するように形成される。第4ドリフトピン打込み孔28も、外径が約12mm、長さが約100mmの柱固定用ドリフトピン61が打ち込まれてその先端部を主金物体2の柱取付孔13に貫通させるため、図6に示すように柱側嵌合溝27を横切る深さを以って形成される。
主柱7は、上述したようにその端部に簡易な構造の柱側嵌合溝27や第4ドリフトピン打込み孔28を形成し、ホールダウン金物1を介して土台6A上に立設することにより、面倒かつ精密な加工を要するほぞ継ぎ手構造を不要とするとともに機械的強度の向上も図られる。主柱7は、図5及び図6に示すように上面6A3から主金物体2の嵌合部10の上方部位を突出させた土台6A上に、柱側嵌合溝27に嵌合部10を嵌合して組み合わされる。主柱7は、主金物体2に対して第4ドリフトピン打込み孔28を相対する嵌合部10の柱取付孔13に位置決めするように調整される。
主柱7には、第4ドリフトピン打込み孔28から柱固定用ドリフトピン61の打ち込みが行われる。主柱7は、打ち込まれた柱固定用ドリフトピン61の先端部が図6に示すように嵌合部10に形成した柱取付孔13にそれぞれ貫通することにより、主金物体2と一体化される。ホールダウン金物1は、上述したように主金物体2が、固定部11をアンカボルト5と座金付きナット9を介して補強金物体3により補強して基礎4Aの上面4A1上に強固に固定して嵌合部10を立設する。
ホールダウン金物1は、主金物体2が、嵌合部10の下方部位に土台側嵌合溝23を嵌合させ、第1ドリフトピン打込み孔21から打ち込んだ土台固定用ドリフトピン60の先端を土台取付孔12に貫通させることにより、土台6Aを強固に一体化する。ホールダウン金物1は、主金物体2が、嵌合部10の上方部位に柱側嵌合溝27を嵌合させ、第4ドリフトピン打込み孔28から打ち込んだ柱固定用ドリフトピン61の先端を柱取付孔13に貫通させることにより主柱7を強固に一体化する。ホールダウン金物1は、基礎4と土台6と主柱7を強固に一体化する。
ホールダウン金物1は、上述したように土台6や主柱7に対して簡易な加工によりスリット状の嵌合溝と複数個のドリフトピン打込み孔を形成すればよく、従来のように複雑な形状のほぞ継ぎ手構造等を形成する面倒な加工を不要として土台6や主柱7の加工コストを低減し、またほぞ継ぎ手構造により実質的な断面寸法が小さくなり機械的強度が低下するといった不都合も解消させる。ホールダウン金物1は、土台6や主柱7に形成する嵌合溝が中央部に開口する長さ方向のスリット状溝であり、大地震に伴って作用されるあらゆる方向からの大きな負荷に対して割れや破断の発生を抑制する。ホールダウン金物1は、主柱7をアンカボルト5に近接した位置で固定することから、大地震に伴って作用される垂直方向の大きな負荷に対する主柱7の大幅な耐性を図る。
ホールダウン金物1は、上述した結合金物50や他の結合金物とともに用いられて各種の横架材や柱間を巧に結合することにより、図7に示した機械的強度の大きな軸組8を構成する。ホールダウン金物1は、上述した実施の形態で詳細に説明したように、軸組8のコーナ部に用いられて基礎4と土台6と主柱7とを一体化するが、主柱7が立設される他の部位に用いられる。ホールダウン金物1は、土台6に対する結合金物50の固定位置によってはこの結合金物50が主金物体2の嵌合部10と衝合してしまうことがある。
上述した実施の形態においては、結合金物50が第2固定部52を50mm程度の長さとし、主金物体2の固定部11側と対応する位置において120mm角の土台6Aに第2固定部52を固定して結合される。したがって、結合金物50は、土台6Aに対して主金物体2の嵌合部10を嵌合させる土台側嵌合溝23により区分された一方領域において固定される。ホールダウン金物1は、土台側嵌合溝23を横切る長さを有する結合金物により土台間が結合される場合に、この結合金物を嵌合部10に形成した金物逃し開口部15を貫通させる。ホールダウン金物1は、使用する結合金物の仕様或いは土台との結合仕様に応じて、土台側嵌合溝23を横切る結合金物を金物逃し開口部15に貫通させることにより、共用することが可能である。
図8に示した結合構造は、基礎4に対して例えば105mm角の土台6と105mm角の柱7をホールダウン金物1を用いて一体化する適用例である。結合構造においては、土台6Aに固定される結合金物50が、第2固定部52の先端部を土台側嵌合溝23に嵌合された主金物体2の嵌合部10と衝合する位置となる。ホールダウン金物1には、上述したように嵌合部10に工具逃し開口部14に連通して金物逃し開口部15が形成されている。したがって、ホールダウン金物1においては、同図に示すように主金物体2に対して結合金物50が、金物逃し開口部15に第2固定部52の先端部を貫通させて固定されることにより、105mm角の土台6や柱7への適用も可能となる。
1 ホールダウン金物、2 主金物体、3 補強金物体、4 基礎、5 アンカボルト、6 土台、7 主柱、8 軸組、9座金付きナット、10 嵌合部、11 固定部、12 土台取付孔、13 柱取付孔、14 工具逃し開口部、15 金物逃し開口部、16 第1アンカボルト嵌挿孔、17 第2アンカボルト嵌挿孔、20 金物取付孔、21 第1ドリフトピン打込み孔、22 第2ドリフトピン打込み孔、23 土台側嵌合溝、24 逃げ凹部、25 土台側嵌合溝、26 第3ドリフトピン打込み孔、27 柱側嵌合溝、28 第4ドリフトピン打込み孔、50 結合金物、51 第1固定部、52 第2固定部、60 土台固定用ドリフトピン、61 柱固定用ドリフトピン、62 第1金物結合用ドリフトピン、63 第2金物結合用ドリフトピン