JP3148097B2 - 高温長期保存時の耐力値の大きいアルミニウム合金の製造方法 - Google Patents

高温長期保存時の耐力値の大きいアルミニウム合金の製造方法

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JP3148097B2
JP3148097B2 JP07505895A JP7505895A JP3148097B2 JP 3148097 B2 JP3148097 B2 JP 3148097B2 JP 07505895 A JP07505895 A JP 07505895A JP 7505895 A JP7505895 A JP 7505895A JP 3148097 B2 JP3148097 B2 JP 3148097B2
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aluminum alloy
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晃治 岩永
功 村瀬
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昭和アルミニウム株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電子複写機のヒート
ローラー等に用いられるアルミニウム合金、特に高温長
期保存時の耐力値の大きいアルミニウム合金の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】上記の
ようなヒートローラー等の材料には、加工性、耐食性に
優れていることから、JIS3003等の3000系ア
ルミニウム合金が用いられる場合が多い。
【0003】しかるに、従来用いられているようなJI
S3000系アルミニウム合金は、長期にわたって高温
環境下に置かれるような場合には、経時的に耐力値が低
下するという欠点があった。
【0004】この発明は、このような事情に鑑みてなさ
れたものであって、長期にわたって高温環境下に置かれ
るような場合にも、耐力劣化が少なく高耐力値を実現し
得るアルミニウム合金の製造方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、発明者は、高温長期保存時の耐力劣化が合金の再結
晶によってもたらされることの知見に基き、再結晶温度
を高くして高温長期保存時の再結晶を防止するための合
の製造方法について鋭意研究の結果、本発明を完成し
えたものである。
【0006】即ち、この発明は特定組成のアルミニウム
合金の製造方法に係るものである。その合金組成は、
n:0.8〜2.0wt%、Si:0.1〜0.6wt%を
含有し、あるいはさらにCu:0.05〜0.2wt%を
含有し、さらに必要に応じてCr:0.01〜0.3wt
%、Zr:0.01〜0.3wt%の1種または2種以上
を含有し、残部がアルミニウム及び不純物からなり、不
純物としてのMgの含有量が0.05wt%以下、Feの
含有量が0.5wt%以下にそれぞれ規制されてなるも
である。そして、上記組成を有するアルミニウム合金の
ビレットを、均質化処理することなく500〜550℃
の温度で加熱して押出したのち、加工度20〜30%で
冷間引抜加工することを特徴とするものである。
【0007】本発明が対象とするアルミニウム合金にお
ける各元素の添加意義と組成範囲の限定理由を説明する
と次の通りである。即ち、Mnはアルミニウム中へ固溶
することにより再結晶温度を高め、ひいては高温長期保
存時の耐力を高く維持するのに寄与するものである。し
かし、0.8wt%未満では固溶量が少なく再結晶温度の
上昇効果に乏しい。一方、2.0wt%を超えても固溶量
の増大効果が飽和し、経済的な無駄を招く。従ってMn
は0.8〜2.0wt%の範囲で含有されなければならな
い。特に好ましいMn含有量の下限値は1.0wt%であ
り、上限値は1.5wt%である。
【0008】Siは、その添加によりMnとの間でα−
Al12Mn3 Siを析出し、ピンニング効果により再結
晶温度を高めるのに寄与するものである。しかし、0.
1wt%未満ではその効果に乏しく、0.6wt%を超える
と効果が飽和する。従ってSiは0.1〜0.6wt%の
範囲で含有されなければならない。特に好ましいSi含
有量の下限値は0.2wt%であり、上限値は0.4wt%
である。
【0009】任意的に添加が許容されるCuは、固溶強
化作用により合金強度の向上に寄与するものであるが、
0.05wt%未満ではその効果に乏しく、0.2wt%を
超えても効果が飽和するとともに加工性の劣化等を招
く。このため、Cuを添加する場合の含有量は0.05
〜0.2wt%とする必要がある。特に好ましいCu含有
量の下限値は0.10wt%であり、上限値は0.17wt
%である。
【0010】同じく任意的に添加が許容されるCr、Z
rは、合金の再結晶温度を高めるのに効果がある。この
作用効果の点で両者は均等物であり、少なくとも一方が
含有されれば良いが、いずれもが0.01wt%未満では
その効果に乏しい。一方、いずれかが0.3wt%を超え
ると、もはや効果が飽和するのみならず、加工性の劣化
などを招く。このため、Cr、Zrを添加する場合の含
有量はそれぞれ0.01〜0.3wt%とする必要があ
る。特に好ましい含有量の下限値はCr、Zrともに
0.1wt%であり、上限値はともに0.2wt%である。
【0011】上記元素のほか、不純物としてMg、F
e、Zn、Ti、Ni、V、Ga等の含有が許容され
る。このうちMgは蓄積歪量の増加による冷間加工後の
再結晶温度の低下をもたらすため、0.05wt%未満に
その含有量が規制されなければならない。また、Feが
増えるとAl6 (Mn、Fe)が晶出してMn固溶量を
低下させ、再結晶温度を低下させる。しかも、Al−M
n−Fe−Si晶出物も多くなってSi固溶量を少なく
しやはり再結晶温度を低下させる。このため、Feは
0.5wt%以下に規制されなければならない。なお、他
のZn、Ti、Ni、V、Ga等の不純物は、それぞれ
0.3wt%以下の範囲であれば含有されていても良い。
【0012】次に、この発明の製造方法について説明す
ると、まず上記のような合金組成のアルミニウム合金ビ
レットを鋳造し、これに均質化処理を施すことなく、5
00〜550℃の温度で加熱して所期する形状に押出
す。ビレットに均質化処理を施さないのは、Mnが鋳造
時に過飽和に固溶して固溶量が最大となっていることか
ら、これを保持してひいては再結晶温度を高くするため
である。また、押出に際しての加熱温度を500〜55
0℃に規定したのは、熱間押出中Mnを固溶状態のまま
保持するためである。即ち、500℃未満の温度ではM
nが析出して固溶量が減少し、再結晶温度が低下してし
まう。一方550℃を超える温度では押出中に押出材の
割れ、肌荒れ等の欠陥を発生するおそれがある。押出し
に際しての特に好ましいビレット加熱温度の下限値は5
10℃であり、上限値は540℃である。
【0013】押出後、加工度20〜30%で冷間引抜加
工してヒートローラー等の所期するアルミニウム合金材
となす。ここに、加工度は、{(加工前の外径−加工後
の外径)/加工前の外径}×100%で定義されるが、
かかる冷間引抜加工の加工度が20〜30%に限定され
るのは、20%未満の加工率ではヒートローラー等とし
ての強度に劣るものとなるからであり、逆に30%を超
える加工率では再結晶温度が低下して、高温長期保存時
の耐力が低下してしまうからである。特に好ましい加工
度の下限値は23%であり、上限値は27%である。
【0014】
【作用】本発明に係るアルミニウム合金の製造方法によ
って製造されたアルミニウム合金は、再結晶温度が高く
なっているものと推測され、従って長期保存時の耐力値
を大きくできる。
【0015】
【実施例】次に、この発明の実施例を説明する。
【0016】(実施例1) 表1に示す各種組成のアルミニウム合金からなるビレッ
トを用意した。そして、各ビレットにつき、均質化処理
することなく530℃に加熱したのち、外径63mm×
肉厚2mmのアルミニウム合金パイプに押出した。次い
で、得られたパイプを加工度25%で冷間引抜加工して
ヒートローラーを製造した。
【0017】上記により得られた各ヒートローラーにつ
き、330℃の高温環境下に15年間保持したときの推
定耐力値を算出した。推定耐力値の算出は、各ヒートロ
ーラーを330℃の高温環境下に150日間保持したと
きの耐力値を引張試験により測定したのち、その値をも
とに単回帰分析により15年後の耐力値を推定すること
により行った。その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】 上記表1の結果からわかるように、本発明実施品はいず
れも70N/mm2 以上の耐力値を示しており、本発明
の組成範囲を逸脱する比較品よりも高温長期保存時の耐
力値が大きいことがわかる。
【0019】(実施例2)前記実施例1の表1における
No4の合金ビレットを用い、各ビレットに表2に示す
ような均質化処理を施したのち、あるいは施すことな
く、表2に示す温度に加熱し、次いで外径63mm×肉
厚2mmのアルミニウム合金パイプに押出した。
【0020】次いで表2のように加工度を各種に設定し
て冷間引抜加工し、ヒートローラーを製造した。
【0021】そして、得られた各ヒートローラーにつ
き、330℃の高温環境下に15年間保持したときの推
定耐力値を、前記実施例1と同様の方法で算出した。そ
の結果を表2に示す。
【0022】
【表2】 上記表2の結果からわかるように、本発明によって製造
された実施品は、本発明の製造条件を逸脱する比較品よ
りも高温長期保存時の耐力値が大きいことがわかる。
【0023】
【発明の効果】本発明に係るアルミニウム合金の製造方
によって製造されたアルミニウム合金は、再結晶温度
が高くなっているものと推測され、従って長期保存時の
耐力値を大きくできる。その結果、ヒートローラー等の
ように高温環境下で使用される部材の耐久性を向上する
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/00 C22F 1/04 C22C 21/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mn:0.8〜2.0wt%、Si:0.
    1〜0.6wt%を含有し、残部がアルミニウム及び不純
    物からなり、不純物としてのMgの含有量が0.05wt
    %以下、Feの含有量が0.5wt%以下にそれぞれ規制
    されてなるアルミニウム合金のビレットを、均質化処理
    することなく500〜550℃の温度で加熱して押出し
    たのち、加工度20〜30%で冷間引抜加工することを
    特徴とする高温長期保存時の耐力値の大きいアルミニウ
    ム合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 Mn:0.8〜2.0wt%、Si:0.
    1〜0.6wt%、Cu:0.05〜0.2wt%を含有
    し、残部がアルミニウム及び不純物からなり、不純物と
    してのMgの含有量が0.05wt%以下、Feの含有量
    が0.5wt%以下にそれぞれ規制されてなるアルミニウ
    ム合金のビレットを、均質化処理することなく500〜
    550℃の温度で加熱して押出したのち、加工度20〜
    30%で冷間引抜加工することを特徴とする高温長期保
    存時の耐力値の大きいアルミニウム合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 Mn:0.8〜2.0wt%、Si:0.
    1〜0.6wt%を含有し、さらにCr:0.01〜0.
    3wt%、Zr:0.01〜0.3wt%の1種または2種
    以上を含有し、残部がアルミニウム及び不純物からな
    り、不純物としてのMgの含有量が0.05wt%以下、
    Feの含有量が0.5wt%以下にそれぞれ規制されてな
    アルミニウム合金のビレットを、均質化処理すること
    なく500〜550℃の温度で加熱して押出したのち、
    加工度20〜30%で冷間引抜加工することを特徴とす
    る高温長期保存時の耐力値の大きいアルミニウム合金の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 Mn:0.8〜2.0wt%、Si:0.
    1〜0.6wt%、Cu:0.05〜0.2wt%を含有
    し、さらにCr:0.01〜0.3wt%、Zr:0.0
    1〜0.3wt%の1種または2種以上を含有し、残部が
    アルミニウム及び不純物からなり、不純物としてのMg
    の含有量が0.05wt%以下、Feの含有量が0.5wt
    %以下にそれぞれ規制されてなるアルミニウム合金のビ
    レットを、均質化処理することなく500〜550℃の
    温度で加熱して押出したのち、加工度20〜30%で冷
    間引抜加工することを特徴とする高温長期保存時の耐力
    値の大きいアルミニウム合金の製造方法。
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