JP3147046B2 - 消耗電極式パルスアーク溶接機の出力制御装置 - Google Patents

消耗電極式パルスアーク溶接機の出力制御装置

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JP3147046B2
JP3147046B2 JP22782797A JP22782797A JP3147046B2 JP 3147046 B2 JP3147046 B2 JP 3147046B2 JP 22782797 A JP22782797 A JP 22782797A JP 22782797 A JP22782797 A JP 22782797A JP 3147046 B2 JP3147046 B2 JP 3147046B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭酸ガスを主成分
とするシールドガスを用いて消耗電極(以下、ワイヤと
称する)を自動送給して溶接する消耗電極式パルスアー
ク溶接機の出力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、消耗電極式パルスアーク溶接にお
いては、スパッタ発生量が少ないのみでなく溶接コスト
を削減するために安価なシールドガス、例えば炭酸ガス
を使用できることが要求される。
【0003】以下、従来の炭酸ガスを主成分とするシー
ルドガスを用いた消耗電極式パルスアーク溶接機につい
て説明する。炭酸ガスを主成分とするシールドガスを用
いた消耗電極式パルスアーク溶接機の出力制御方法とし
ては、特開平8−267238号公報及び特開平8−2
67239号公報に開示されている手段が提案されてい
る。具体的には、ピーク電流を供給するピーク期間は定
電圧制御とし、ベース電流を供給するベース期間は定電
流制御とする切り替え制御を行うようにしたものであ
る。すなわち、ピーク期間の初期において、溶滴が離脱
した直後にアーク長が長くなるので、ピーク期間の電流
応答速度が十分に高ければ、定電圧制御を行うとアーク
の自己制御作用によってピーク電流が自然に低下して離
脱した溶滴にかかるアーク力が緩和されることを利用し
て溶滴離脱時の溶滴くびれ部の飛び散り及び離脱した後
の溶滴の飛び散りを低減すると共に溶融池の振動による
溶融池金属の飛び散りをも低減することによってスパッ
タを低減させるようにしたものである。また、ピーク期
間において定められたある一定の電圧傾斜を有するピー
ク電圧を設定することや、溶滴離脱の前と離脱後のピー
ク期間においてそれぞれの電圧傾斜を設定することなど
を特徴としたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような特開平8−
267238号公報及び特開平8−267239号公報
が開示した従来の手段には以下のような問題点がある。
1)施工状態によって低い電圧で溶接を行うことが必要
とされた場合や、溶接中に外乱などによる溶接状態の変
化が発生した場合は、ベース期間が終了した時点のアー
ク長が非常に短くなることがある。このような状態でピ
ーク期間に定電圧制御を行うとピーク期間開始直後のア
ークのインピダンスが小さいので、非常に大きなピーク
電流が流れてしまうという問題がある。このようにピー
ク期間初期にピーク電流が過大に上昇すると、離脱する
溶滴の溶滴くびれ部の飛び散りによるスパッタが発生し
やすくなる。また、その時のアーク力が非常に強くなる
ので、溶融池の振動が一層激しくなり、時には溶融池か
ら溶融金属が飛び散ってスパッタになることもあり、予
期したスパッタ低減の効果が得られなくなる。2)一
方、溶接電圧が高い場合にはアーク長が長くなるので、
電圧が高いほどピーク期間初期の溶滴離脱時に発生した
アーク長の変動が全体のアーク長に対する比率が低下
し、アークの自己制御作用のみを利用した溶滴移行時の
アーク力の低減の効果が薄れていく。以上のような問題
は、全ピーク期間で定められた一定の電圧傾斜を有する
ピーク電圧を設定すること、あるいは溶滴離脱の前と離
脱後のピーク期間においてそれぞれの電圧傾斜を設定す
ることも提案されているが、完全に解決するのは困難で
ある。
【0005】そこで本発明は、上記従来手段の課題を解
決するものであり、ワイヤ端溶滴が離脱する時に溶滴に
かかるアーク力を最小限に押さえることによって溶滴離
脱時の溶滴くびれ部分の飛散によるスパッタを少なくす
ると共に、溶融池の振動を押さえることによって溶融池
からのスパッタ発生をほとんどなくすことができるよう
にした消耗電極式パルスアーク溶接機の出力制御装置を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に関わる本発明は、所定のピーク期間tp
と所定のベース期間tbを交互に発生し、前記ピーク期
間tpの開始点を起点とする初期ピーク時間tcの間は
初期電圧Vcで、その後のピーク期間(tp−tc)は
ピーク電圧Vpで構成され、かつ前記ベース期間tbは
所定のベース電流Ibで構成されるパルス波形を設定す
るパルス波形発生手段と、前記ベース期間tbは定電流
制御を行い、かつ、前記初期ピーク時間tcは前記初期
電圧Vcに相当する一定出力を出力し、前記初期ピーク
時間tcが過ぎた後のピーク期間(tp−tc)は定電
圧制御を行う出力制御手段を具備したものである。
【0007】請求項2に関わる本発明は、請求項1記載
のものにおいて、前記初期ピーク時間tcにおいて電流
検出手段の検出電流が所定の上限電流Iu以上あるいは
所定の下限電流Id以下になった時に前記初期電圧Vc
を下げる、あるいは上げるように調整することを特徴と
したものである。
【0008】請求項3に関わる本発明は、請求項1記載
のものにおいて、前記初期電圧Vcを前記ピーク電圧V
pに応じて変化させることを特徴としたものである。
【0009】請求項4に関わる本発明は、請求項1記載
のものにおいて、前記初期電圧Vcを前記ベース時間t
bに応じて変化させることを特徴としたものである。
【0010】請求項5に関わる本発明は、請求項1記載
のものにおいて、溶接電圧を検出する電圧検出器と、前
記電圧検出器からの信号を入力する溶滴離脱検出手段
、前記溶滴離脱検出手段からの信号を入力し、パルス
波形発生手段に信号を出力する出力補正手段を備え、パ
ルス波形発生手段に前記出力補正手段の出力補正信号が
入力された場合、前記出力補正信号の入力時点から所定
の補正時間trの間、検出電流が所定の補正電流Irに
なるように定電流制御を行った後、ピーク時間tpにお
いて検出電圧が所定のピーク電圧Vpになるように定電
圧制御を行うことを特徴としたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】上記構成によればパルス波形発生
手段は、溶接中のパルス波形信号を発生する手段であ
り、ピーク期間tpとベース期間tbを1周期とする波
形を、各期間の電流または電圧で規定された波形として
発生するもので、ピーク期間の開始点を起点とする初期
ピーク期間tcの間は初期電圧Vcで、その後はピーク
電圧Vpで構成され、かつベース期間は所定のベース電
流Ibで構成される定常パルス波形を想定して出力する
ようにしている。それらの設定値は、パルス時間設定
器、初期時間設定器、ベース電流設定器、初期電圧設定
器及びピーク電圧設定器で設定される。なお、上記設定
による波形はマイクロコンピュータなどのプログラム処
理で生成できる。また、溶滴離脱時に前記定常パルス波
形は後述する出力補正手段によって補正することができ
る。なお、上記の各設定値は、固定値についてはRO
M、可変値についてはレジスタなどの記憶手段で設定で
きる。
【0012】次に出力制御手段は、出力制御素子を制御
することによって刻々の溶接出力を制御する手段であ
り、ベース期間tbには検出電流が前記ベース電流Ib
になるように定電流制御を行い、初期ピーク時間tcに
は初期電圧Vcに相当する一定出力を出力し、前記初期
ピーク時間tcが過ぎた後のピーク期間には検出電圧が
ピーク電圧Vpになるように定電圧制御を行うようにし
たものである。
【0013】溶滴離脱検出手段は、ピーク期間中の溶接
電圧の検出値に基づいて溶滴離脱を検出する手段であ
り、前記検出電圧が微分器によって微分されてその微分
値を比較器により微分値設定器の所定値と比較し、前記
微分値が前記所定値を超えた時に溶滴離脱があったとし
て溶滴離脱検知信号を出力する。
【0014】出力補正手段は、溶滴離脱検知信号に基づ
き前記パルス波形発生手段のパルス波形信号を補正する
手段であり、前記溶滴離脱検出手段の溶滴離脱検出信号
が入力された時点から所定補正時間trの間は所定補正
電流Irを出力した後、ピーク期間tpで始まるパルス
波形を出力補正信号として出力するようにしたものであ
る。補正時間trは補正時間設定器、補正電流Irは補
正レベル設定器によって設定される。
【0015】以下、本発明の一実施の形態例について図
面を参照しつつ説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の第1の実施の形態例の
構成を示すものである。図1に示すように、1は出力制
御素子、2は出力制御素子1の出力を溶接に適した電圧
に降圧するトランス、3はダイオードからなる整流部、
4はリアクタ、5はワイヤ送給モータ6により溶接トー
チ7を経由して電極8から母材9の溶接箇所に向かって
送給されるワイヤ、10はシャント、11はシャント1
0の信号を入力して溶接電流を検出する電流検出器、1
2は溶接電圧を検出する電圧検出器である。13は溶接
出力波形のピーク期間tpの期間長とベース期間tbの
期間長とを設定するパルス時間設定器、14は前記ピー
ク期間tpにおける初期ピーク時間tcの期間長を設定
する初期時間設定器、15は溶接出力のベース期間tb
におけるベース電流Ibを設定するベース電流設定器、
16は溶接出力の初期ピーク時間tcにおける初期電圧
Vcを設定する初期電圧設定器、17は溶接出力の初期
ピーク期間tcの後のピーク電圧Vpを設定するピーク
電圧設定器である。18はパルス波形を生成するパルス
波形発生器であり、パルス時間設定器13、初期時間設
定器14、ベース電流設定器15、初期電圧設定器16
及びピーク電圧設定器17の設定信号を入力してパルス
波形を周期的に出力するものである。19は出力制御器
であり、電流検出器11、電圧検出器12及びパルス波
形発生器18の出力信号を入力して出力制御素子1を制
御することによって溶接出力を制御するものである。な
お、図1において、50はパルス波形発生手段である。
【0016】前記構成において、溶接出力制御の動作に
ついて説明する。溶接中に、パルス波形発生手段50の
パルス波形発生器18は、所定のピーク期間tpと所定
のベース期間tbと前記ピーク期間tpにおいてピーク
期間の開始点を起点とする初期ピーク時間tcの間は初
期電圧Vcで、その後はピーク電圧Vpで構成され、前
記ベース期間tbは所定のベース電流Ibで構成される
定常パルス波形を発生して出力制御器19に出力する。
図2は前記パルス波形発生手段50から発生した定常パ
ルス波形を示す波形図である。一方、出力制御器19
は、前記定常パルス波形においてベース期間tbには電
流検出器11の検出電流がベース電流Ibになるように
定電流制御を行い、ピーク期間tpの初期ピーク時間t
cには初期電圧Vcに相当する一定出力を出力した後、
電圧検出器12の検出電圧がピーク電圧Vpになるよう
に定電圧制御を行うようにして出力制御素子1を制御す
ることによって溶接出力を制御する。前記初期ピーク時
間tc及び初期電圧Vcは以下のような意味合いで設定
される。すなわち、初期ピーク時間tc及び初期電圧V
cは、ベース期間tbからピーク期間tpへ移行して溶
滴を離脱させる時にピーク期間初期のパルス電流の過大
上昇を防ぐために設けたものであり、ピーク期間開始し
てから溶滴が離脱するまでの溶滴挙動を考慮して適切に
設定する必要がある。このことは以下のように理解され
る。ベース期間tbの終了と共にワイヤ端に形成された
溶滴の整形が終わり、次のピーク期間tpの初期に溶滴
離脱を行う。来るピーク期間の初期に溶滴が安定に離脱
できるかどうかは、ピーク期間tpが始まってから溶滴
が離脱するまでのパルス電流が適正な範囲に制御されて
いるかどうかによって決まる。そのパルス電流が大きす
ぎると、ワイヤ端溶滴が強いアーク力の影響を受けて飛
び散るのみでなく、強いアーク力の影響で溶融池が激し
く振動し、溶融池から溶融金属が飛び散ることもある。
ピーク期間tpが始まってから溶滴が離脱するまでのパ
ルス電流を適正な範囲に押さえるためには、ピーク期間
tp開始直後の初期ピーク期間tc及び初期電圧Vcの
値を適正に選定する必要があることが実験によって確認
されている。本発明では、実験から求めた初期ピーク時
間tc及び初期電圧Vcの値を設定している。なお、初
期ピーク時間tcは、全ピーク期間中に定電圧制御を行
った場合のピーク期間が始まってから溶滴が離脱するま
での時間よりも短く設定している。
【0017】溶接中に、以上の動作を繰り返し行うこと
でピーク期間初期の溶滴離脱時のワイヤ端の溶滴くびれ
部にかかるアーク力を押さえることができると共に、溶
融池振動を押さえることができ、スパッタを大幅に低減
させることができる。
【0018】図3は本実施例で得られた溶接電流、溶接
電圧波形の一例を示す。比較のために、全部のピーク期
間tpにおいて定電圧制御を行った場合の波形も図に示
す。
【0019】(実施の形態2)図4は本発明の第2の実
施の形態例の構成を示すものである。図4に示すよう
に、本実施の形態例では前記第1の実施の形態例のパル
ス波形発生手段50のパルス波形発生器18へ信号を出
力する初期電圧設定器16を初期電圧調整器20に置き
換えると共に、上限電流設定器21の設定した上限電流
Iuと下限電流設定器22の設定した下限電流Idと電
流検出器11の検出電流とパルス波形発生器18の定常
パルス波形信号を前記定常パルス波形信号の初期ピーク
時間tcの間における三者の関係を比較してその結果を
出力する比較器23の出力信号と、初期電圧設定器16
の設定信号を初期電圧調整器20へ入力している点で第
1の実施の形態例と異なるものである。なお、第1の実
施の形態例と同機能のものには同符号を付してその説明
を省略する。
【0020】次に、動作について説明する。なお、前記
第1の実施の形態例と共通する部分の動作の説明は省略
する。溶接機の電源投入時に、初期電圧調整器20は初
期電圧設定器16の設定した初期電圧Vcを記憶保持す
る。溶接中に比較器23は、前記定常パルス波形の一つ
の初期ピーク時間tcが開始してから電流検出器11の
検出電流を常に前記上限電流Iuと前記下限電流Idと
を比較しつつ、経過した時間内の最大電流時の比較結果
を更新記憶していく。同初期ピーク時間tcが終了する
と比較器23は、記憶した比較結果を前記初期電圧調整
器20に出力すると同時に、記憶結果をリセットする。
前記初期電圧調整器20は、前記検出電流が上限電流I
uよりも小さく、かつ前記下限電流Idよりも高いとの
比較器23の信号を受けると、その記憶値をそのままパ
ルス波形発生器18に出力する。一方、溶接状態などの
外乱によって前記検出電流が前記上限電流Iuよりも大
きい、あるいは前記下限電流Idよりも小さいとの比較
器23の信号を受けると、初期電圧調整器20は、その
記憶結果を下げる、あるいは上げるように調整してから
記憶保持すると同時にパルス波形発生器18に出力す
る。以上のことを説明すると以下のようになる。前記第
1の実施の形態例で説明したように、ベース期間tbの
終了と共にワイヤ端に形成された溶滴の整形が終わり、
次のピーク期間tpの初期に溶滴離脱を行う。来るピー
ク期間の初期に溶滴が安定に離脱できるかどうかは、ピ
ーク期間tpが始まってから溶滴が離脱するまでのパル
ス電流が適正な範囲に制御されているかどうかによって
決まる。前記第1の実施の形態例で述べたように、その
パルス電流が大きすぎると、ワイヤ端溶滴が強いアーク
力の影響を受けて飛び散るのみでなく、強いアーク力の
影響で溶融池が激しく振動し、溶融池から溶融金属が飛
び散ることもある。一方、そのパルス電流が小さすぎる
と、逆にワイヤ端溶滴にかかる電磁的ピンチ力が減少し
て離脱しにくくなるので、溶滴が却って大きく成長す
る。大きく成長した溶滴がアーク力の影響で飛び散って
スパッタになることがある。ピーク期間tpが始まって
から溶滴が離脱するまでのパルス電流を適正な範囲に押
さえるためには、初期ピーク時間tcの間のパルス電流
をある適正な範囲(Id〜Iu)に制御することが有効
であることが実験によって確認されている。また、前記
一定時間tcにおける電流値を適正範囲に制御すること
は、溶融池の振動を押さえるにも有効である。
【0021】溶接中に、以上の動作を繰り返し行うこと
によって離脱した溶滴をアーク力の弱い状態で確実に溶
融池に移行させるのみでなく、溶滴離脱時に電磁的ピン
チ力が最適に制御され、ワイヤ端溶滴くびれ部にかかる
アーク力も最低限に押さえると共に、溶融池の振動をも
押さえることができ、スパッタを大幅に低減させること
ができる。
【0022】(実施の形態3)図5は本発明の第3の実
施の形態例の構成を示すものである。図5に示すよう
に、本実施の形態例では前記第1の実施の形態例のパル
ス波形発生手段50を新たな構成のパルス波形発生手段
51で置き換えたものである。なお、パルス波形発生手
段51は、パルス波形発生手段50の初期電圧設定器1
6を初期電圧設定器24で置き換えると共に、ピーク電
圧設定器17の設定信号を前記初期電圧設定器24に入
力するように構成したものである。なお、第1の実施の
形態例と同機能のものには同符号を付してその説明を省
略する。
【0023】次に、動作について説明する。なお、前記
第1の実施の形態例と共通する部分の動作の説明は省略
する。溶接中に初期電圧設定器24は、ピーク電圧設定
器17で設定したピーク電圧Vpに応じてその設定した
初期電圧Vcを再設定してパルス波形発生器18に出力
する。このことを説明すると、以下のようになる。前記
ピーク電圧Vpによってベース期間終了時のアーク長が
変化する。ピーク電圧Vpが低い場合、ベース期間終了
時のアーク長が短くなるので、ピーク電圧Vpが高い場
合の初期電圧Vcに相当する出力を出力制御器19によ
って出力制御素子1に出力すると、ピーク期間初期のパ
ルス電流の上昇が大きくなる恐れがあり、溶滴離脱時の
スパッタ発生が生じやすくなるのみでなく、溶融池の振
動によるスパッタ発生も増加するのである。一方、ピー
ク電圧Vpの高い場合はピーク電圧Vpの低い場合と相
反して、ピーク期間の初期にパルス電流が低くなりすぎ
て、溶滴離脱が困難になる恐れがある。従って、溶滴離
脱を安定に行わせるためには、ピーク電圧Vpの設定値
に応じてパルス初期の前記初期電圧Vcを再設定して出
力する必要がある。なお、本発明ではピーク電圧設定器
17の設定したピーク電圧Vpはユーザによって調整さ
れた時のことを想定している。
【0024】溶接中に、以上の動作を繰り返し行うこと
によって離脱した溶滴をアーク力の弱い状態で確実に溶
融池に移行させるのみでなく、溶滴離脱時に電磁的ピン
チ力が最適に制御され、ワイヤ端溶滴くびれ部にかかる
アーク力も最低限に押さえることができると共に、溶融
池振動も押さえることができ、スパッタを大幅に低減さ
せることができる。
【0025】(実施の形態4)図6は本発明の第4の実
施の形態例の構成を示すものである。図6に示すよう
に、本実施の形態例では前記第1の実施の形態例のパル
ス波形発生手段50を新たな構成のパルス波形発生手段
52で置き換えたものである。なお、パルス波形発生手
段52は、パルス波形発生手段50の初期電圧設定器1
6を初期電圧設定器25で置き換えると共に、パルス時
間設定器13の設定信号を前記初期電圧設定器25に入
力したものである。なお、第1の実施の形態例と同機能
のものには同符号を付してその説明を省略する。
【0026】次に、動作について説明する。なお、前記
第1の実施の形態例と共通する部分の動作の説明は省略
する。溶接中に初期電圧設定器25は、パルス時間設定
器13で設定したベース時間tbの時間長に応じてその
設定した初期電圧Vcを再設定してパルス波形発生器1
8に出力する。以上のことは第3の実施の形態例の説明
から容易にわかる。すなわち、前記ベース時間tbの時
間長によってベース期間終了時のアーク長が変わる。ベ
ース時間tbの長い場合は、ベース期間終了時のアーク
長が短くなるので、ベース時間tbが短い場合の初期電
圧Vcに相当する出力を出力制御器19によって出力制
御素子1に出力すると、ピーク期間初期のパルス電流の
上昇が大きくなる恐れがあり、溶滴離脱時のスパッタが
生じやすくなるのみでなく、溶融池の振動によるスパッ
タ発生も増加する。一方、前記ベース時間tbの短い場
合はベース時間tbの長い場合と相反して、ピーク期間
の初期にパルス電流が低くなりすぎて、溶滴離脱が困難
になる恐れがある。従って、溶滴離脱を安定に行わせる
ためには、ベース時間tbの設定値に応じてパルス初期
の前記初期電圧Vcを再設定して出力する必要がある。
なお、本発明ではパルス時間設定器13の設定したベー
ス時間tbはユーザによって調整された時のことを想定
している。
【0027】溶接中に、以上の動作を繰り返し行うこと
によって離脱した溶滴をアーク力の弱い状態で確実に溶
融池に移行させるのみでなく、溶滴離脱時に電磁的ピン
チ力が最適に制御され、ワイヤ端溶滴くびれ部にかかる
アーク力も最低限に押さえることができると共に、溶融
池振動も押さえることができ、スパッタを大幅に低減さ
せることができる。
【0028】(実施の形態5)図7は本発明の第5の実
施の形態例の構成を示すものである。図7に示すよう
に、本実施の形態例では溶滴離脱検出手段54と出力補
正手段55とを設けると共に、前記第1の実施の形態例
のパルス波形発生手段50を新たな構成のパルス波形発
生手段53で置き換えたものである。なお、パルス波形
発生手段53は、パルス波形発生手段50のパルス波形
発生器18をパルス波形発生器26で置き換えると共
に、前記出力補正手段55の出力信号をパルス波形発生
器26に入力したものである。溶滴離脱検出手段54
は、電圧検出器12の検出電圧信号と前記パルス波形発
生器26のパルス波形信号とを入力とするピーク電圧微
分器27と、微分値設定器28と、比較器29とから構
成され、溶接中の溶滴離脱検知信号を出力補正手段55
に出力する。また、前記出力補正手段55は、補正時間
設定器30と、補正レベル設定器31と、出力補正器3
2とから構成され、出力補正信号をパルス波形発生手段
53に出力する。なお、第1の実施の形態例と同機能の
ものには同符号を付してその説明を省略する。
【0029】次に、動作について説明する。なお、前記
第1の実施の形態例と共通する部分の動作の説明は省略
する。
【0030】溶滴離脱検出手段54の動作について説明
する。溶接中に、電圧検出器12の検出電圧と後述する
パルス波形発生手段53のパルス波形信号とが入力され
て、溶滴離脱検出手段54のピーク電圧微分器27は、
前記パルス波形信号のピーク期間の初期ピーク時間tc
経過後のピーク期間においてのみ前記検出電圧を微分し
てその微分値を比較器29に出力する。比較器29は、
前記微分値と微分値設定器28の基準微分値と比較演算
し、前記微分値が前記基準微分値を超えた時に溶滴離脱
検知信号を出力補正手段55に出力する。このことにつ
いて説明すると以下のようになる。前述したように、炭
酸ガスを主成分とした消耗電極パルスアーク溶接の溶滴
が大きいので、ピーク期間中に溶滴がワイヤ端から離脱
すると、アーク長が急激に長くなる。ピーク期間中に定
電圧制御を行うと、アーク長が長くなった場合アーク電
圧が一定になるように、出力制御器19は出力制御素子
1を制御することによって溶接出力を下げるように働く
が、パワー回路の時定数などによって制御遅れが発生す
る。制御遅れが起こっている間にピーク電圧がわずかに
上昇するので、ピーク電圧を微分することによってこの
電圧がわずかに上昇したタイミングを検知することによ
って溶滴離脱検知が可能になる。
【0031】出力補正手段55の動作について説明す
る。出力補正手段55の出力補正器32は、前記溶滴離
脱検出手段54の溶滴離脱検知信号を受けると、前記溶
滴離脱検知信号を開始点として補正時間設定器30で設
定した補正時間trの間はパルス電流を補正レベル設定
器31で設定した補正電流Irになるように、出力補正
信号をパルス波形発生手段53に出力する。補正時間t
rと補正電流Irについて説明すると以下のようにな
る。補正電流Irは、溶滴がワイヤ端から離脱して溶融
池に移行する時に溶滴にかかるアーク力が十分小さく、
溶滴が飛び散ることなく、安定に溶融池に移行できるレ
ベルに設定されている。離脱した溶滴が飛び散りスパッ
タになることを防止する効果を向上させるためには、I
rをベース電流Ibと同じレベルに設定することが望ま
しい。また、補正時間trは、溶滴が離脱して溶融池に
完全に吸収されるまでの時間であり、実験によって求め
た値に設定されている。
【0032】パルス波形発生手段53の動作について説
明する。パルス波形発生手段53のパルス波形発生器2
6は、出力補正手段55からの出力補正信号が入力され
るまで、すなわち溶滴離脱を検出するまでは、前記第1
実施例で示す定常パルス波形を出力制御器19に指示出
力する。一方、溶滴離脱が発生して出力補正手段55の
出力補正信号が入力された場合、パルス波形発生器26
は、前記出力補正信号の補正時間trの間は補正電流I
rを出力制御器19に出力した後、パルス時間設定器1
3で設定したパルス時間tpから始まるパルス波形を出
力制御器19に出力する。図8に溶滴離脱検出手段54
と出力補正手段55とパルス波形発生手段53からの波
形図を示す。
【0033】出力制御器19との動作について説明す
る。出力制御器19は、前記パルス波形発生手段53の
パルス波形信号の補正時間trの間は電流検出器11の
検出電流が補正電流Irになるよう定電流制御を行った
後、その直後のピーク期間中において電圧検出器12の
検出電圧がピーク電圧Vpになるように定電圧制御を行
うように働く。以上のことは、以下のように説明され
る。溶滴が離脱してから補正時間trを経過した直後の
ワイヤ端には溶融金属がなく、アーク力の影響によって
スパッタが発生する心配がないことに加えて、溶滴離脱
直後のアーク長が長く、定電圧制御を行ってもパルス電
流の過大上昇が発生しないので、アーク安定性を向上さ
せるために初期電圧Vcに相当する出力を出力してから
定電圧制御を行うよりも、定電圧制御を行ったほうがよ
い。これは、定電圧制御ではアークの自己制御作用が有
効に働くためである。なお、溶接中のパルス波形条件
は、前記定電圧制御を行うピーク期間tpにおいて溶滴
が離脱しないように設定されている。
【0034】溶接中に、以上の動作を繰り返し行うこと
によって離脱した溶滴をアーク力の弱い状態で確実に溶
融池に移行させるのみでなく、溶滴離脱時にワイヤ端の
溶滴くびれ部にかかるアーク力をも押さえることができ
ると共に、溶融池振動を押さえることができ、スパッタ
を大幅に低減させることができる。
【0035】
【発明の効果】以上のように請求項1記載の本発明によ
れば、溶接中にベース期間tbには検出電流が前記ベー
ス電流Ibになるように定電流制御を行い、ピーク期間
tpの初期ピーク時間tcには初期電圧Vcに相当する
一定出力を出力した後、検出電圧がピーク電圧Vpにな
るように定電圧制御を行うことによってピーク期間初期
の溶滴離脱時のワイヤ端の溶滴くびれ部にかかるアーク
力を押さえることができると共に、溶融池振動を押さえ
ることができ、スパっタを大幅に低減させることができ
る。
【0036】また、請求項2〜4に記載の本発明によれ
ば、ピーク期間tpの初期ピーク時間tcの間に出力す
る初期電圧Vcを検出電流の大小、ピーク電圧Vpの設
定値の大小、及びベース時間tbの設定値の大小に応じ
て調整することによってワイヤ端の溶滴をスムーズに移
行させると共に、ワイヤ端溶滴くびれ部にかかるアーク
力を最低限に押さえ、溶融池振動をも押さえることがで
き、スパッタを大幅に低減させることができる。
【0037】また、請求項5記載の本発明によれば、溶
滴離脱が検知されて出力補正時間trを経過した直後の
ピーク期間においてのみ、検出電圧がピーク電圧Vpに
なるように定電圧制御を行うことによって、溶滴離脱時
にワイヤ端溶滴くびれ部にかかるアーク力を押さえると
共に溶融池振動も押さえることによってスパッタを低減
させると共に、溶接の安定性を増加させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態例の構成を示すブロ
ック図
【図2】同実施の形態例におけるパルス波形発生手段5
0の出力信号を示す波形図
【図3】同実施の形態例における溶接電圧・電流の出力
波形の一例の模式図
【図4】本発明の第2の実施の形態例の構成を示すブロ
ック図
【図5】本発明の第3の実施の形態例の構成を示すブロ
ック図
【図6】本発明の第4の実施の形態例の構成を示すブロ
ック図
【図7】本発明の第5の実施の形態例の構成を示すブロ
ック図
【図8】同実施の形態例における溶滴離脱検出手段5
4、出力補正手段55及びパルス波形発生手段53の出
力信号を示す波形図
【符号の説明】
11 電流検出器 12 電圧検出器 13 パルス時間設定器 14 初期時間設定器 15 ベース電流設定器 16 初期電圧設定器 17 ピーク電圧設定器 18 パルス波形発生器 19 出力制御器 20 初期電圧調整器 21 上限電流設定器 22 下限電流設定器 23 比較器 24 初期電圧設定器 25 初期電圧設定器 26 パルス波形発生器 27 ピーク電圧微分器 28 微分値設定器 29 比較器 30 補正時間設定器 31 補正レベル設定器 32 出力補正器 50 パルス波形発生手段 51 パルス波形発生手段 52 パルス波形発生手段 53 パルス波形発生手段 53 溶滴離脱検出手段 54 出力補正手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−136162(JP,A) 特開 昭62−40974(JP,A) 特開 昭60−177963(JP,A) 特開 昭60−40676(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/09 B23K 9/173

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定のピーク期間tpと所定のベース期
    間tbを交互に発生し、前記ピーク期間tpの開始点を
    起点とする初期ピーク時間tcの間は初期電圧Vcで、
    その後のピーク期間(tp−tc)はピーク電圧Vpで
    構成され、かつ前記ベース期間tbは所定のベース電流
    Ibで構成されるパルス波形を設定するパルス波形発生
    手段と、前記ベース期間tbは定電流制御を行い、か
    つ、前記初期ピーク時間tcは前記初期電圧Vcに相当
    する一定出力を出力し、前記初期ピーク時間tcが過ぎ
    た後のピーク期間(tp−tc)は定電圧制御を行う出
    力制御手段を備えた消耗電極式パルスアーク溶接機の出
    力制御装置。
  2. 【請求項2】 前記初期ピーク時間tcにおいて電流検
    出手段の検出電流が所定の上限電流Iu以上あるいは所
    定の下限電流Id以下になった時に前記初期電圧Vcを
    下げる、あるいは上げるように調整することを特徴とす
    る前記請求項1記載の消耗電極式パルスアーク溶接機の
    出力制御装置。
  3. 【請求項3】 前記初期電圧Vcを前記ピーク電圧Vp
    に応じて変化させることを特徴とする請求項1記載の消
    耗電極式パルスアーク溶接機の出力制御装置。
  4. 【請求項4】 前記初期電圧Vcを前記ベース時間tb
    に応じて変化させることを特徴とする請求項1記載の消
    耗電極式パルスアーク溶接機の出力制御装置。
  5. 【請求項5】 溶接電圧を検出する電圧検出器と、前記
    電圧検出器からの信号を入力する溶滴離脱検出手段と
    前記溶滴離脱検出手段からの信号を入力し、パルス波形
    発生手段に信号を出力する出力補正手段を備え、パルス
    波形発生手段に前記出力補正手段の出力補正信号が入力
    された場合、前記出力補正信号の入力時点から所定の補
    正時間trの間、検出電流が所定の補正電流Irになる
    ように定電流制御を行った後、ピーク時間tpにおいて
    検出電圧が所定のピーク電圧Vpになるように定電圧制
    御を行うことを特徴とする請求項1記載の消耗電極式パ
    ルスアーク溶接機の出力制御装置。
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