JP4331284B2 - 短絡移行式ア−ク溶接方法 - Google Patents
短絡移行式ア−ク溶接方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、消耗性電極を使用し、短絡とアーク発生とを繰り返しながら溶接する短絡移行式アーク溶接方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
消耗電極式アーク溶接で安定した溶接を行うためには、定速送給される消耗性電極を消耗性電極の送給速度に匹敵する一定の速度で溶融するように制御しなければならない。特に短絡移行式アーク溶接方法においては、消耗性電極と被溶接物との間が短絡したり、離れてアークが発生する現象を交互に繰り返すので溶融量の制御は難しい。従来、このような溶接での消耗性電極溶融量の制御は溶接時の平均電圧を一定にすることによってなされている。
【0003】
図6に従来の短絡移行式アーク溶接方法を実施する装置の例を示す。同図において、1は交流電源であり商用交流電源が用いられる。2は電力変換回路であり交流電源1からの電力を出力指令信号Sw1に応じた略定電圧特性の直流出力に変換する。3は直流リアクトルであり、電力変換回路2の出力電流に短絡移行式アーク溶接に適した電流変化の時定数を与える。4は溶接トーチであり電動機5によって駆動される送給ロール6によって被溶接物7に向かって送給される消耗性電極8が内挿され、これに電力変換回路2からの電力を給電する。9は電動機5の回転速度を一定に制御する電動機制御回路である。10は溶接電圧の瞬時値Vd を検出する電圧検出器、11は電圧検出器10の出力を平滑して溶接電圧の平均値Vdaを得る溶接電圧平滑回路、12は溶接電圧設定回路であり、溶接電圧設定値Vs を設定する。13は比較器であり溶接電圧設定回路12の設定値Vs と溶接電圧平滑回路11の出力信号Vdaとを比較し、その差信号ΔV=Vs −Vdaを出力する。14は増幅器であり、比較器13の出力信号ΔVを必要に応じて増幅する。15はアーク期間検出器であり、電圧検出器10の出力信号Vd が所定値よりも高いときにアーク期間と判断してハイレベルのアーク期間信号Sadを出力する。16は短絡期間用出力電圧設定器であり、短絡期間中の電力変換回路2の出力電流が過大にならないようにアーク期間中の出力電圧よりも低い値の出力電圧設定信号Vssを出力する。17は信号切り替え回路であり、アーク期間検出器15のアーク期間信号Sadがハイレベルのときは (a)側に、アーク期間信号Sadがローレベルのときは (b)側に信号を切り替えて電力変換回路2に伝達するアナログスイッチが用いられる。
【0004】
図6において、溶接中の電圧を電圧検出器10で検出し、溶接電圧平滑回路11で平滑し、検出電圧平滑信号Vdaを求める。溶接電圧設定回路12からの出力である溶接電圧設定信号Vs と検出電圧平滑信号Vdaを比較器13で比較してその差信号ΔV=Vs −Vdaを出力する。比較器13の出力ΔVは次に増幅器14に入力されて短絡期間用出力電圧設定器16の出力電圧と対応するレベルに増幅されてアーク期間中の出力電圧指令信号Vudとなる。溶接中は短絡、アークが交互に発生するので電圧検出器10の出力はまた、アーク期間検出器15にも供給されて溶接電圧の瞬時値Vd が所定値よりも高いときはアーク期間信号Sadをハイレベル信号として出力する。信号切り替え回路17はこのアーク期間信号Sadがハイレベルの間、すなわちアーク期間は信号切り替え回路17を (a)側にし、増幅器14の出力信号Vudを選択する。アーク期間信号Sadがローレベルの期間、即ち短絡期間には信号切り替え回路17を (b)側にして短絡期間用出力電圧設定器16の出力信号Vssを選択する。このようにして選択された出力指令信号Sw1は電力変換回路2に送られる。
【0005】
図6の装置の動作のタイミングチャートを図7に示す。図7において、(a)は電圧検出器10の出力信号である溶接電圧の瞬時値Vd を、(b)は溶接電圧の瞬時値Vd を溶接電圧平滑回路11にて平滑した検出電圧平滑信号Vdaを、(c)は比較器13の出力ΔVを、(d)は増幅器14の出力信号Vudを、(e)はアーク期間検出器15の出力信号Sadを、また(f)は信号切り替え回路17によって選択された出力指令信号Sw1をそれぞれ時間の経過とともに示す。
図6および図7において、溶接中は消耗性電極8は被溶接物7に対してアーク発生と短絡とを1秒間に数十回も繰り返す。短絡が発生した場合には溶接電流は急速に増大し、この増大した電流が流れることによって短絡部に作用する電磁ピンチ力によって短絡部を切断してアークの再生を促す。このとき電流が過大になりすぎるとアーク再生時にスパッタの発生をもたらすので短絡期間中は信号切り替え回路17が(b)側に切り替えられて、電力変換回路2の出力電圧が短絡期間用出力電圧設定器16の設定信号Vssで定まる低い値に低減される。通常この短絡時の溶接電流は短絡を解消するために必要な電磁ピンチ力を得るためとアーク再生時の許容スパッタ量とによってその下限と上限が定められる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来方法においては、平均電圧を一定にする制御であるので、溶接電圧を十分平滑して溶接電源の出力制御情報として用いなければならない。このために、制御の応答速度は遅くなり、充分な制御ができなかった。
【0007】
図8にてこの点を詳細に説明する。図8は溶接中に段差をおりたとき、溶接トーチ4からの消耗性電極8の突出し長さが急に長くなった時の状態を示す。同図(a)は溶接電圧瞬時値Vd とこれを平滑した検出電圧平滑信号Vdaとを示し、(b)は溶接電流の瞬時値Ia と平均アーク電流Idaとを示し、(c)は消耗性電極8の先端と被溶接物7との平均距離、即ち平均アーク長La と被溶接物7の状態とを各時刻毎に示してある。
【0008】
溶接開始から時刻t1 までの間は平均アーク長がL1 である。被溶接物7の段差を時刻t1 に通過すると平均アーク長がL2 に急増し消耗性電極8の先端と被溶接物7の距離が長くなるのでア−ク時間が長くなる。すると電圧検出器10の出力信号Vd は直ちに増加するが、(a)に示すように実際に制御に使用される溶接電圧平滑回路11の出力信号Vdaは十分平滑した値なので変化は遅く、このために増幅器14の出力信号Vudはあまり変化しない。また(b)に示すようにア−ク時間が長くなることによって溶接電流Ia は減少するがアーク時間そのものが長いために消耗性電極8の溶融量が大きく成りすぎる。この結果、(c)に示すように段差をおりた後に元のアーク長に戻るためには時刻t2 までかかることになる。
【0009】
図9に図8に示したような段差を通過した時のビードの外観を示す。同図に示すように、時刻t1 を境にしてア−ク時間が急増するので、溶接部の入熱が上がりすぎるためビード外観も大きく乱れることになる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、消耗性電極を使用し、短絡とアーク発生とを繰り返しながら溶接を行う短絡移行式アーク溶接方法において、各ア−ク発生開始後予め定めた一定時間経過後のア−ク発生期間の長さを検出し、前記検出したアーク発生期間の長さに比例して前記アーク発生期間における溶接電源の出力電圧を低減し、これにより前記アーク発生期間における溶接電源の溶接電流を低減すること、を特徴とする短絡移行式アーク溶接方法である。
【0011】
第2の発明は、消耗性電極を使用し、短絡とア−ク発生とを繰り返しながら溶接を行う短絡移行式ア−ク溶接方法において、短絡発生期間における溶接電源の出力電圧をア−ク発生期間における溶接電源の出力電圧よりも低い一定値に設定するとともに、各ア−ク発生開始後予め定めた一定時間経過後のア−ク発生期間の長さを検出し、前記検出したア−ク発生期間の長さに比例して前記ア−ク発生期間における溶接電源の出力電圧を低減し、これにより前記アーク発生期間における溶接電源の溶接電流を低減すること、を特徴とする短絡移行式アーク溶接方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の短絡移行式アーク溶接方法を実施する装置の例を示す接続図である。同図において、18は出力電圧補正器であり、アーク期間検出器15の出力であるアーク期間信号Sadを入力としてこれを積分しアーク期間の長さに応じた出力電圧補正信号Vmsを出力する。19は減算器であり、増幅器14の出力A・ΔVから出力電圧補正器18の出力Vmsを減算し、その結果を短絡期間用出力電圧設定器16の信号のレベルに対応するレベルまで増幅する。同図においてその他は図6に示した従来装置と同機能のものに同符号を付してあるので説明を省略する。
【0014】
同図において、溶接中の電圧を電圧検出器10で検出し、溶接電圧平滑回路11で平滑して平均電圧となる検出電圧平滑信号Vdaを求める。溶接電圧設定回路12からの出力である溶接電圧設定信号Vs と検出電圧平滑信号Vdaを比較器13で比較してその差信号ΔVを出力する。溶接中は短絡、アークが交互に発生するのでアーク期間検出器15により判定し、アーク期間中はハイレベルのアーク期間信号Sadを出力する。アーク期間信号Sadは出力電圧補正器18にて計数されて、このアーク期間信号Sadの継続時間の長さに応じた大きさの出力電圧補正信号Vmsを出力する。比較器13の出力ΔVを増幅した増幅器14の出力と出力電圧補正器18の出力Vmsとは減算器19に入力されて
Vuh=A・ΔV−Vms
となる。(但し、Aは増幅器14の増幅率によって定まる定数)
【0015】
アーク期間中はアーク期間検出器15のアーク期間信号Sadがハイレベルとなり、信号切り替え回路17を (a)側にし、減算器19の出力信号Vuhを選択し、逆に短絡期間にはアーク期間検出器15のアーク期間信号Sadがローレベルになり、信号切り替え回路17を (b)側に切り替えて、短絡期間用出力電圧設定器16の出力電圧設定信号Vssを選択する。こうして選択された出力指令信号Sw1は電力変換回路2に供給される。
【0016】
図2は出力電圧補正器18の具体例を示す。図2において、MM1はモノマルチバイブレータであり入力信号の立ち下がり時にトリガーされて短時間幅のパルスを出力する。IG1は積分回路であり、アーク期間検出器15の出力信号Sadを積分して出力電圧補正信号Vmsとして出力するとともにモノマルチバイブレータMM1の出力信号によってリセットされるものである。
【0017】
図3は図1の装置に図2の出力電圧補正器を用いたときの動作を示すタイミングチャートである。同図において、(a)は電圧検出器10の出力信号、即ち溶接電圧の瞬時値Vd を示し、(b)はこの溶接電圧の瞬時値Vd を平滑した溶接電圧平滑回路11の出力信号Vdaを示す。(c)は検出電圧平滑信号Vdaと溶接電圧設定回路12の出力信号である溶接電圧設定値Vs とを比較した比較器13の出力信号ΔVを増幅した増幅器14の出力を示す。(d)はアーク期間検出器15の出力信号Sadを示し、(e)は出力電圧補正器18のモノマルチバイブレータMM1の出力信号、(g)は出力電圧補正器18の積分回路IG1の出力信号、即ち出力電圧補正信号Vmsを示す。(h)は増幅器14の出力信号A・ΔVから出力電圧補正信号Vmsを減算する減算器19の出力信号Vuh、(i)はアーク期間検出器15の出力信号Sadによって短絡期間とアーク期間とにおいて出力電圧設定信号をVuhまたは短絡期間中の出力電圧設定信号Vssに切替える信号切り替え回路17の出力指令信号Sw1を示す。
【0018】
図1ないし図3において、溶接電圧Vd は電圧検出器10によって検出されて溶接電圧平滑回路11にて平均値Vdaが導出されて比較器13にて溶接電圧設定回路12の設定値Vs と比較されて差信号ΔVが算出される。一方、電圧検出器10の出力はまたアーク期間検出器15にも供給されて信号Vd が一定値よりも高いときはアーク期間と判断されてハイレベルのアーク期間信号Sadが出力される。ハイレベルのアーク期間信号Sadは出力電圧補正器18の積分回路IG1にて積分されて出力電圧補正信号Vmsが出力される。アーク期間検出器15の出力Sadはまた出力電圧補正器18のモノマルチバイブレータMM1にも供給されて、モノマルチバイブレータMM1は入力信号Sadの立ち下がり、即ち、アーク期間の終了直後に短時間のパルス信号を出力する。積分回路IG1はこのモノマルチバイブレータMM1の出力パルスの立ち下がりによりリセットされてその出力信号は零に復帰する。
【0019】
一方、アーク期間検出器15の出力はまた、信号切り替え回路17にも供給されてアーク期間信号Sadがハイレベルのときは信号切り替え回路17を (a)側にアーク期間信号Sadがローレベルのときは信号切り替え回路17を (b)側に切り替える。この結果、アーク期間信号Sadがハイレベルとなるアーク発生期間のはじめからアーク期間信号Sadが出力電圧補正器18の積分回路IG1にて積分され、アーク期間の終了時にアーク期間信号Sadがローレベルに反転すると、モノマルチバイブレータMM1の出力パルスの立ち上がりによって積分回路IG1はリセットされ、出力電圧補正信号Vmsは零に戻り、次のアーク期間が始まってアーク期間信号Sadがハイレベルになるまで待機する。この結果、各アーク期間の長さが出力電圧補正器18の積分回路IG1によって算出されて、減算器19に出力電圧補正信号Vmsとして出力される。減算器19では出力電圧補正信号Vmsを増幅器14の出力信号から減算してVuh=A・ΔV−Vmsを得て、信号切り替え回路17にアーク期間における出力指令信号として出力する。
【0020】
このように、アーク期間が長くなるほど出力電圧補正信号Vmsは大きく、アーク期間における減算器19の出力信号Vuhは小さくなり、電力変換回路2の出力電圧は低くなる。逆に、アーク期間が短かいときは出力電圧補正信号Vmsは小さくなり、アーク期間における減算器19の出力信号Vuhは大きく電力変換回路2の出力電圧は高くなる。
【0021】
図4は図1の装置を用いて本発明の溶接方法を実施したときに、溶接中に段差をおりてアーク長が急に長くなった時の状態を模式的に示した図である。同図の(a)は溶接電圧の瞬時値Vd とその検出電圧平滑信号Vdaを示す。(b)は溶接電流の瞬時値Ia と平均アーク電流Idaを示す。(c)は消耗性電極8と被溶接物7との距離、即ち平均アーク長La の変化および被溶接物7の状態を示す。溶接開始から時刻t1 までの間は平均アーク長がL1 である。被溶接物7の段差を時刻t1 に通過すると平均アーク長がL2 に急増し、消耗性電極8の先端と被溶接物7との距離が遠のくのでア−ク期間が長くなる。すると同図(a)に示すように溶接電圧の瞬時値Vd は低下していく。これに対して、実際の検出電圧平滑信号Vdaは十分平滑した値なので変化は遅くあまり変化しない。しかし、アーク期間が長くなるので出力電圧補正信号Vmsは大きくなり、アーク期間の減算器19の出力信号Vuhの変化量が大きくなり、アーク期間中の溶接電圧Vd が低下していく。これによりアーク電流が減少して最適な消耗性電極の溶融量が得られる。この結果、(c)に示すように消耗性電極8の溶融量の高速制御が可能となり、段差をおりた後にもとのアーク長に戻るために要する時間は従来よりも大幅に減少する。
【0022】
図5に被加工物の段差を通過した時の溶接ビードの外観を示す。同図のように時刻t1 を境にしてア−ク期間が急増するが、アーク期間の増加に比例して溶接電流が減少する。その結果、消耗性電極8の溶融速度の制御が可能となり元のア−ク長にすぐに回復するので、ビード外観が乱れる期間も従来方法によるよりも短くなる。
【0023】
図10は図1の装置に用いる出力電圧補正器18の別の具体例を示す。図10において、22はインバ−タゲ−トでア−ク期間信号Sadを反転して出力する。MM1およびMM2はモノマルチバイブレ−タであり、MM1は入力信号Sadの立ち下がり時にトリガ−されて短時間幅のパルスを出力し、MM2はインバ−タゲ−ト22の出力信号の立ち下がり時にトリガ−されて短時間幅のパルスを出力する。21はオアゲ−トで、MM1およびMM2のパルス出力のハイレベル期間を出力する。IG1は積分回路であり、モノマルチバイブレ−タMM2の出力信号のハイレベル期間が終了後、ただちにア−ク期間検出器15の出力信号Sadの積分を開始して出力電圧補正信号Vmsを出力するとともに、モノマルチバイブレ−タMM1の出力信号によってリセットされるものである。
【0024】
図11は図1の装置に図10の出力電圧補正器20を用いたときの動作を示すタイミングチャ−トである。同図において、(a)は電圧検出器10の出力信号即ち溶接電圧の瞬時値Vd を示し、(b)はこの溶接電圧の瞬時値Vd を平滑した溶接電圧平滑回路11の出力信号Vdaを示す。(c)は検出電圧平滑信号Vdaと溶接電圧設定回路12の出力信号である溶接電圧設定値Vs とを比較した比較器13の出力信号ΔVを増幅した増幅器14の出力を示す。(d)はア−ク期間検出器15の出力信号Sadを示し、(e)は出力電圧補正器20のモノマルチバイブレ−タMM1の出力信号、(f)は出力電圧補正器20のモノマルチバイブレ−タMM2の出力信号、(g)は出力電圧補正器20の積分回路IG1の出力信号、即ち出力電圧補正信号Vms、(h)は増幅器14の出力信号A・ΔVから出力電圧補正信号Vmsを減算する減算器19の出力信号Vuh、(i)はア−ク期間検出器15の出力信号Sadによって短絡期間とア−ク期間とにおいて出力電圧設定信号をVuhまたは短絡期間中の出力電圧設定信号Vssに切換える信号切り換え回路17の出力指令信号Sw1を示す。
【0025】
図1、図10および図11において、溶接電圧Vd は電圧検出器10によって検出されて溶接電圧平滑回路11にて平均値Vdaが導出されて比較器13にて12の設定値Vs と比較されて差信号ΔVが算出される。一方、電圧検出器10の出力はまたア−ク期間検出器15にも供給されて信号Vd が一定値よりも高いときはア−ク期間と判断されてハイレベルのア−ク期間信号Sadが出力される。ア−ク期間検出器15の出力Sadは出力電圧補正器20のモノマルチバイブレ−タMM1およびMM2に供給される。モノマルチバイブレ−タMM1は入力信号Sadの立ち下がり即ち、ア−ク期間の終了直後に短時間のパルス信号を出力する。また、入力信号Sadはインバ−タゲ−ト22によって反転されモノマルチバイブレ−タMM2に入力されモノマルチバイブレ−タMM2はこの入力信号の立ち下がり、即ち、ア−ク期間の開始直後に短時間のパルス信号を出力する。積分回路IG1はモノマルチバイブレ−タMM2の出力信号のハイレベル期間終了後、ア−ク期間検出信号15の出力信号Sadの積分を開始して出力電圧補正信号Vmsを出力する。また、積分回路IG1はモノマルチバイブレ−タMM1の出力パルスの立ち上がりによりリセットされてその出力信号は零に復帰する。
【0026】
一方、ア−ク期間検出器15の出力はまた、信号切り換え回路17にも供給されてア−ク期間信号Sadがハイレベルのときは信号切り替え回路17を (a)側にし、ア−ク期間信号Sadがロ−レベルのときは信号切り替え回路17を (b)側に切り替える。ア−ク期間信号Sadがハイレベルになるとモノマルチバイブレ−タMM2の出力信号が出力されこのモノマルチバイブレ−タMM2の出力信号のハイレベル期間終了後に、ア−ク期間信号Sadが出力電圧補正器20の積分回路IG1にて積分され、ア−ク期間の終了時にア−ク期間信号Sadがロ−レベルに反転すると、モノマルチバイブレ−タMM1の出力パルスの立ち上がりによって積分回路IG1はリセットされ、出力電圧補正信号Vmsは零に戻り、次のア−ク期間が始まってア−ク期間信号Sadがハイレベルになるまで待機する。この結果、モノマルチバイブレ−タMM2の出力パルスのハイレベル期間を差し引いたア−ク期間の長さが出力電圧補正器20の積分回路IG1によって算出されて、減算器19に出力電圧補正信号Vmsとして出力される。減算器19では出力電圧補正信号Vmsを増幅器14の出力信号から減算してVuh=A・ΔV−Vmsを得て、信号切り替え回路17にア−ク期間における出力指令信号として出力する。
【0027】
この結果、ア−ク期間においては、その始めからモノマルチバイブレ−タMM2の出力パルスの期間は出力電圧補正信号は零であるが、その後のア−ク期間の長さに応じて出力電圧補正信号Vmsは急激に大きくなる。したがって、ア−ク期間が長くなるほど出力電圧補正信号Vmsは大きくなり、ア−ク期間における減算器19の出力信号Vuhは小さくなり電力変換回路2の出力電圧は低くなる。逆にア−ク期間が短いときは出力電圧補正信号Vmsは小さくなり、ア−ク期間における減衰器19の出力信号Vuhは大きく、電力変換回路2の出力電圧は高くなる。ここで、モノマルチバイブレ−タMM2の出力パルスの継続時間は、ア−ク再生後に消耗性電極を再生したア−クによって溶融して、十分にア−ク長が回復するのに適した値に定める。
【0028】
図12は図1の装置に図10の出力電圧補正器20を用いて本発明の溶接方法を実施したときに、溶接中に段差をおりたときのア−ク長が急に長くなった時の状態を模式的に示した図である。図12(a)は溶接電圧の瞬時値Vd とその検出電圧平滑信号Vdaを示す。(b)は溶接電流の瞬時値Ia と平均ア−ク電流Idaを示す。(c)は消耗性電極8と被溶接物7との距離、即ち平均ア−ク長La の変化および被溶接物7の状態を示す。溶接開始から時刻t1までの間は平均ア−ク長がL1である。被溶接物7の段差を時刻t1に通過すると平均ア−ク長がL2に急増し、消耗性電極8の先端と被溶接物7との距離が遠のくのでア−ク期間が長くなる。すると図12(a)に示すように溶接電圧の瞬時値Vd はア−ク開始後、モノマルチバイブレ−タMM2の出力パルス幅に相当する時間、例えば数msの後に減少しはじめる。これに対して、実際の検出電圧平滑信号Vdaは十分平滑した値なので変化は遅い。しかし、ア−ク時間が長くなるので出力電圧補正信号Vmsは大きくなり、ア−ク期間の減算器19の出力信号Vuhの変化量が大きな値となり、ア−ク期間中の溶接電圧が減少する。これによりア−ク電流が急速に減少して最適な消耗電極の溶融量が得られる。この結果、(c)に示すように消耗性電極8は最適に溶融することになり、段差をおりた後にもとのア−ク長に戻るために要する時間は従来よりも大幅に減少する。
【0029】
【発明の効果】
本発明の短絡移行式アーク溶接方法は、上記の通りであるので、消耗性電極と被溶接物との間の距離が急変した場合でも、消耗性電極の溶融量を即座に変化させ適正なアーク状態まで早く復帰させることが出来、溶接欠陥の発生を防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の短絡移行式アーク溶接方法を実施する装置の例を示す接続図である。
【図2】図1の装置に用いる出力電圧補正器18の実施例を示す接続図である。
【図3】図1の装置に図2の出力電圧補正器18を用いたときのの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】図1の装置によって本発明の短絡移行式アーク溶接方法を実施したときの溶接電圧、溶接電流、消耗性電極と被溶接物との位置関係を時間の経過と共に示した模式図である。
【図5】本発明の短絡移行式アーク溶接方法を実施したとき被加工物の段差を通過した時の溶接ビードの外観を示す図である。
【図6】従来の短後移行式アーク溶接方法を実施する装置の例を示した接続図である。
【図7】図6の従来装置の動作を説明するための線図である。
【図8】図6の装置によって従来の短絡移行式アーク溶接方法を実施したときの溶接電圧、溶接電流、消耗性電極と被溶接物との位置関係を時間の経過と共に示した模式図である。
【図9】図6の装置によって従来の短絡移行式アーク溶接方法を実施したときの被加工物の段差を通過した時の溶接ビードの外観を示す図である。
【図10】図1の装置に用いる出力電圧補正器18の別の実施例を示す接続図である。
【図11】図1の装置に図10の出力電圧補正器20を用いたときの動作を説明するためのタイミングチャ−トである。
【図12】図1の装置に図10の出力電圧補正器20を用いて本発明の短絡移行式ア−ク溶接方法を実施したときの溶接電圧、溶接電流、消耗性電極と被溶接物との位置関係を時間の経過と共に示した模式図である。
【符号の説明】
1 交流電源
2 電力変換回路
3 直流リアクトル
4 溶接トーチ
5 電動機
6 送給ロール
7 被溶接物
8 消耗性電極
9 電動機制御回路
10 溶接電圧の瞬時値Vd を検出する電圧検出器
11 溶接電圧平滑回路
12 溶接電圧設定回路
13 比較器
14 増幅器
15 アーク期間検出器
16 短絡期間用出力電圧設定器
17 信号切り替え回路
18 出力電圧補正器
19 減算器
20 出力電圧補正器
21 オアゲ−ト
22 インバ−タゲ−ト
MM1 モノマルチバイブレータ
MM2 モノマルチバイブレータ
IG1 積分回路
Vd 溶接電圧の瞬時値
Vs 溶接電圧設定値
ΔV 溶接電圧設定値Vs と検出電圧平滑信号Vdaとの差信号
Sad アーク期間信号
Vss 短絡期間中の出力電圧設定信号
Vda 検出電圧平滑信号
Vms 出力電圧補正信号
Vud 増幅器14の出力信号
Vuh 減算器19の出力信号
Sw1 出力指令信号
Claims (2)
- 消耗性電極を使用し、短絡とアーク発生とを繰り返しながら溶接を行う短絡移行式アーク溶接方法において、各ア−ク発生開始後予め定めた一定時間経過後のア−ク発生期間の長さを検出し、前記検出したアーク発生期間の長さに比例して前記アーク発生期間における溶接電源の出力電圧を低減し、これにより前記アーク発生期間における溶接電源の溶接電流を低減すること、を特徴とする短絡移行式アーク溶接方法。
- 消耗性電極を使用し、短絡とア−ク発生とを繰り返しながら溶接を行う短絡移行式ア−ク溶接方法において、短絡発生期間における溶接電源の出力電圧をア−ク発生期間における溶接電源の出力電圧よりも低い一定値に設定するとともに、各ア−ク発生開始後予め定めた一定時間経過後のア−ク発生期間の長さを検出し、前記検出したア−ク発生期間の長さに比例して前記ア−ク発生期間における溶接電源の出力電圧を低減し、これにより前記アーク発生期間における溶接電源の溶接電流を低減すること、を特徴とする短絡移行式アーク溶接方法。
Priority Applications (1)
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1998
- 1998-04-01 JP JP10539198A patent/JP4331284B2/ja not_active Expired - Fee Related
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