JP3133776B2 - 湿式紡糸装置 - Google Patents

湿式紡糸装置

Info

Publication number
JP3133776B2
JP3133776B2 JP03074102A JP7410291A JP3133776B2 JP 3133776 B2 JP3133776 B2 JP 3133776B2 JP 03074102 A JP03074102 A JP 03074102A JP 7410291 A JP7410291 A JP 7410291A JP 3133776 B2 JP3133776 B2 JP 3133776B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coagulation bath
nozzle
spinning
temperature
stock solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP03074102A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH04289210A (ja
Inventor
昭夫 大森
友之 佐野
俊平 楢村
健治 永松
邦夫 雪吉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP03074102A priority Critical patent/JP3133776B2/ja
Publication of JPH04289210A publication Critical patent/JPH04289210A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3133776B2 publication Critical patent/JP3133776B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)
  • Spinning Methods And Devices For Manufacturing Artificial Fibers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、主として強度に優れ
たビニルアルコール系ポリマー(以下、PVAと称す
る)繊維を安価に、かつ安定的に製造するために利用さ
れる湿式紡糸装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】PVA系繊維は、ポリアミド、ポリエス
テル、ポリアクリロトニリル系繊維に比べて強度、弾性
率が高いため、その主用途である産業資材用繊維として
はもとより、近年ではアスベスト代替のセメント補強
材、ゴム補強材あるいはプラスチック補強材など各種の
補強材に幅広く利用されつつある。
【0003】このような高強度なPVA系繊維を製造す
る方法として、従来から知られているものに、例えば特
開昭59−100710号公報や特開昭61−1087
11号公報等に開示されているように、高分子ポリエチ
レンのゲル紡糸超延伸の考え方を応用して、有機溶媒を
使用して乾湿式紡糸を行なう方法がある。
【0004】上記公報等に開示されている乾湿式紡糸方
法は、紡糸原液であるPVA溶液をノズルより押し出
し、空気層を介して凝固浴中に吐出させる方式であるの
で、空気層における曵糸性の維持のためには、PVA溶
液の濃度を余り低くすることができず、したがって、高
強度繊維を得ることが困難である。また、PVA溶液の
濃度を低くすると、ノズル面にポリマー液が粘着して安
定な紡糸が行なえない。さらに、ノズルの吐出孔間のピ
ッチが小さいと、ポリマー流同志が接触し易く、吐出直
後の空気層において、吐出糸同志が膠着するため安定な
紡糸ができず、紡糸ができたとしても膠着糸となり、こ
の膠着糸が延伸時に単糸切れを起こして延伸倍率を上げ
ることができないために、高強度繊維を得にくい。
【0005】従って、上記のような問題を解決するため
には、ノズルの吐出孔間ピッチを大きくしなければなら
ないが、そうすると、多ホール化が困難になり、工業的
生産をしようとすれば、コストの上昇を招く。仮に、孔
数を多くした極大ノズルを作製するとしても、大型であ
る故に、取扱い上および維持保全上で種々の不利がある
ばかりでなく、吐出孔間の吐出斑を起こし易いという別
の問題を生ずる。このように従来の乾湿式紡糸方法で
は、工業的な生産を考えた場合、多くの問題を抱えてい
る。
【0006】上記のような乾湿式紡糸方法のもつ問題点
を生じないものとして、従来、例えば特公昭43−16
675号公報に開示されているような湿式紡糸方法も知
られている。この従来の湿式紡糸方法は、ノズルおよび
このノズルに至る紡糸原液配管を凝固浴内に浸漬させた
ものであるが、この場合は、凝固浴温度と原液温度とが
相互に影響を与え合い、原液と凝固浴との温度差が大き
いと、原液配管およびノズルの中心部と外周部とで温度
斑を生じて原液粘度に斑を発生するために、原液の吐出
を正常均一にすることができず、これが高強度なPVA
繊維の製造を妨げる一因となっており、特に、凝固浴温
度が20℃以下と低い場合に問題が顕著である。
【0007】以上の説明からも明らかなように、高強度
で緻密な良質のPVA繊維を生産性良く製造するにあた
っては、紡糸原液がノズルから押し出される際、他の問
題を発生しない範囲でできるかぎり高温にして、粘度を
低下させて紡糸原液の流動性を増加させること、および
凝固浴ができるだけ低温であることが望ましい。
【0008】前述の如く、湿式紡糸方式では高温の紡糸
原液が低温の凝固浴によってその温度の悪影響を受け、
ノズル部での外周部と中心部とにおける温度斑を生じさ
せ、それによるノズルからの吐出の不均一さを生じ、正
常安定した紡糸ができなくなり、良好な紡糸原糸を得る
ことがむずかしくなる。
【0009】これを防ぐためには、ノズル部ができるだ
け低温の凝固浴中に浸漬しないようにすることが考えら
れ、したがって、ノズル吐出面のみが凝固浴と接するよ
うに装置を構成することが考えられる。しかしこのよう
な構成によれば、温度的な悪影響は少なくなるが、該ノ
ズル孔全面に、乱れのない、かつ新鮮な凝固液を均一に
供給するのがむずかしくなるという新たな問題を引き起
こす。この場合、ノズルから吐出されたばかりの極めて
多数本の吐出糸条への凝固液の均一な供給ができなくな
るので、やはり正常均一な紡糸原糸が得られず、高強力
糸を得るという目的が達せられなくなるのである。
【0010】従って、湿式紡糸方式を採用せんとする場
合、ノズル部はどうしても凝固浴中に進出させ、凝固液
の自然な供給が行ない得る構成が必要となるのである。
つまり、湿式紡糸装置においては、このような構成を前
提としつつ、その上で、前に述べた低温凝固浴からの影
響を排除できる紡糸装置の構成が必要である。
【0011】また、湿式紡糸方法には、紡糸原液を凝固
浴中にその下方から上方へ導入する流上方式と、その逆
に上方から下方へ向けて導入する流下方式とがあり、両
方式を比較してみた場合、流下方式では、凝固浴槽の側
方から供給された凝固液を凝固浴槽内において下向きに
流動する紡糸原液の外周に沿って下降させることが難し
く、そのように供給しようとすれば、凝固浴槽を大型化
する必要があり、さらに、凝固液の供給速度を高速化す
ると、吐出原液および糸の拡がりを小さく安定化するこ
とができない。これに対して、流上方式は紡糸原液およ
び糸の凝固浴中での拡がりを小さく安定化しやすくて、
装置のコンパクト化および紡糸の安定性の面で流下方式
に比べて優れていることを見出した。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は、
ノズルの多孔化が容易で、かつコンパクトで紡糸の安定
性に優れた流上方式の湿式紡糸装置において、正常均一
な吐出が可能で、しかも高強度で均質なPVA繊維を安
定かつ安価に製造することを目的としてなされたもので
ある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、この発明に係る湿式紡糸装置は、高温の紡糸原液を
低温の凝固浴中にその下方から上方へ導入することによ
り紡糸する湿式紡糸装置であって、凝固浴槽の下部に、
上部に漏斗状のノズルを備えた原液吐出装置が装着さ
れ、上記ノズルの上端の原液吐出孔が凝固浴中に進出し
ており、上記原液吐出装置における凝固浴中に浸漬した
浸漬部の外周に、上記凝固浴槽の下部から供給された凝
固液を上記外周に沿って上昇させながら上記原液吐出孔
の周囲へ向かわせる導入通路が形成され、上記原液吐出
装置は、上記ノズルヘ原液を供給する原液供給路と、こ
の原液供給路とノズルのうちの少なくとも原液供給路の
外周を覆い、かつ凝固浴の下面よりも上方へ進出して、
原液を保温する熱媒通路と、この熱媒通路およびノズル
の外周側に設けられて上記原液吐出装置と凝固浴との間
での熱伝導を抑制する断熱カバーとを備えてなり、上記
熱媒通路の一部が上記漏斗状のノズルの外周面を覆う
のである。
【0014】この発明に用いるPVAは、30℃の水溶
液で粘度法により求めた平均重合度が1500未満であ
ると、高強度PVA繊維が得られず、平均重合度が15
00以上であると、高強度PVA繊維が得られる。粘度
平均重合度が3000以上、好ましくは4000以上で
あると、より高強度なPVA繊維が得られ易い。さら
に、好ましくは平均重合度が7000以上であれば、欠
陥になり易い分子鎖末端が少なく、かつ結晶間を連結す
るタイ分子が多くなり、さらに高強度のPVA繊維が得
られ易い。ただし、粘度平均重合度が10000以上に
なると、高強度PVA繊維は得られるが、現状の技術か
らみてコストの上昇が避けられず、コストパーフォーマ
ンスの点で最適の平均重合度を選定することが望まれ
る。
【0015】この発明に用いるPVAのケン化度には特
別な限定はないが、98.5モル%以上が好ましく、9
9.9モル%以上であると、特に耐熱水性が優れるの
で、さらに好ましい。この発明に用いるPVAの分岐度
には特別な限定はないが、分岐度の低い直鎖状のものが
好ましい。また、この発明に用いるPVAは、他のビニ
ル基を有するモノマー、例えばエチレン、イタコン酸、
ビニルピロリドンなどのモノマーを10モル以下、好ま
しくは共重合比率が2モル%以下の比率で共重合したポ
リビニルアルコール系モノマーであってもよい。
【0016】この発明に用いる溶媒としては、PVAを
溶解するものならば特に限定はなく、ジメチルスルホキ
シド(以下、DMSOと称する)、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルイミダゾリジノン、水、グリセリン、エチ
レングリコール、ロダン塩などの水溶液およびこれら溶
媒同志の2種あるいはそれ以上の混合物、例えばDMS
Oと水、ジメチルホルムアミドとエチレングリコール、
エチレングリコールやグリセリンと水、さらに水とn−
プロパノールやイソプロパノール等が挙げられる。この
発明では、後述するように、凝固浴の温度を20℃以下
とすることが好ましい。したがって、上記溶媒の中で、
紡糸原液のゲル化温度が50℃以下となる溶媒組成が好
ましく、30℃以下のゲル化温度を示すか、または冷却
によってゲル化しない溶媒組成がさらに好ましい。中で
も、DMSOは80℃以下で溶解することができ、重合
度の低下が少ないので、特に好ましい溶媒である。
【0017】紡糸原液のPVA濃度は、PVAの重合度
や溶媒の種類によって異なるが、通常2〜30重量%、
好ましくは3〜20重量%とする。特に、この発明では
高強度繊維を得ることを目的としているため、紡糸時の
単糸切れや糸斑、単糸間の膠着等が生じない範囲でPV
A濃度を低くした方が好ましい。その理由は、PVA濃
度の低い方が分子鎖の絡みが少なく、高倍率に延伸が可
能となるからである。
【0018】紡糸原液の紡糸時の温度は、PVA濃度に
よって異なるが、通常40〜150℃とする。凝固浴の
温度は20℃以下とするのが好ましいから、紡糸原液と
凝固浴の温度差は30℃以上となるので、この発明の湿
式紡糸のごとく、紡糸原液と凝固浴の温度が相互に影響
し合う場合は、特に原液の温度斑を生じ易いので、十分
な配慮が必要である。
【0019】また、紡糸原液にはPVAと溶媒以外にも
目的に応じて種々の添加剤、例えば顔料などの着色剤、
酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸などのPH
調整剤、硼酸などのゲル化促進剤などを所要量添加して
もよい。さらに、DMSOのように、比較的高い凍結温
度を有する溶媒に対しては、メタノールなどの凝固作用
を有するものでもPVAが凝固しない範囲で添加する
と、凝固浴を溶媒の凍結温度以下としても紡糸原液が凍
結しないので好ましい場合がある。
【0020】この発明に用いる凝固液(浴)としては、
特に限定がなく、PVA繊維の凝固に使用されているボ
ウ硝や硫安などの塩類水溶液、苛性ソーダなどの強アル
カリ水溶液、これらを混合したアルカリ性塩類水溶液な
どの水系凝固浴、メタノール、エタノール、アセトンな
どのPVAに対して凝固作用を有する有機溶媒を主体と
する凝固浴およびこれらと原液溶媒との混合液、さらに
水系と有機溶媒系の凝固液との混合浴などが考えられ
る。
【0021】凝固浴温度は20℃以下とするのが好まし
い。20℃を越えると、凝固糸はボイドが多く不透明化
し、均質でなく高強度繊維が得られない。凝固浴温度が
15℃以下であることがさらに好ましく、10℃以下で
あると、均質な凝固糸が得られる点で一層好ましい。た
だし、凝固浴温度があまり低いと、ノズルから吐出され
る紡糸原液が凍結し、吐出不能となることがあるので、
この点を十分に配慮した温度に設定することが重要であ
る。
【0022】つぎに、この発明に係る湿式紡糸装置の好
適実施態様について具体的に説明する。図1は、この発
明の湿式紡糸装置による紡糸方法のモデル図を示し、図
2は、この発明の湿式紡糸装置の要部の縦断面図を示
す。図1において、1は紡糸原液吐出装置で、この原液
吐出装置1は、40℃〜150℃に設定された高温の紡
糸原液を、図示省略したギヤポンプを介して所定量毎に
計量しながら上昇流動させる原液供給管路2と、この原
液供給管路2の上端部に装着された濾斗状のノズル部3
と、上記原液供給管路2の外周を覆い原液を保温する熱
媒通路4と、この熱媒通路4およびノズル部3の外周側
に設けられて原液吐出装置1と後述する凝固浴との間の
熱伝導を抑制する断熱カバー5とからなる。上記ノズル
部3は、図2に示すように、多孔式整流板6、フィルタ
7および押え板8の積層体と、多数の原液吐出孔9aを
有するノズル板9と、ノズル固定用キャップ10とから
なる。
【0023】11は凝固浴槽であり、その底部11aの
上端部に、上方へ向って延びる筒形の本体11bをボル
ト・ナット12により締結している。この凝固浴槽11
内には、20℃以下、好ましくは10℃以下の凝固液
(浴)13が収容されている。上記凝固浴槽11内の凝
固液(浴)13中には、上記原液吐出装置1における上
半部が浸漬され、これによって、上記ノズル部3先端の
原液吐出孔9aが凝固浴13中に進出している。14は
凝固浴供給管で、この凝固浴供給管14は上記凝固浴槽
11の下部側面に開口させて接続されており、ここから
供給された凝固浴を、図2の矢印Uで示すように、上記
原液吐出装置1における凝固浴13中への浸漬部の外周
に沿って上昇させながら上記ノズル部3の原液吐出孔9
aの周囲へ向かわせる凝固浴導入通路15が、凝固浴槽
11の内壁と断熱カバー5との間に形成されている。即
ち、上記構成によりノズル部3先端の原液吐出孔9aへ
の凝固液の自然かつ均一な供給を可能にしているもので
ある。
【0024】上記熱媒通路4は、上記原液供給管路2の
外周にこの原液供給管路2と同芯状に配置された内外二
重管4A,4Bから構成されている。そのうち内側管4
Aの下端部近くには、温水やシリコンオイルなどの炭化
水素系で紡糸原液と同一の40℃〜150℃に設定され
た原液保温用熱媒の供給口4aが接続されているととも
に、外側管4Bの下端部には熱媒の排出口4bが接続さ
れ、かつ、上記内側管4Aの上端は上記ノズル部3の基
端部付近で開口しており、この開口部を介して内外二重
管4A,4Bが接続されて熱媒のUターン流路4cが形
成されている。こうして、熱媒供給口4aから入り、内
側管4A、Uターン流路4c、外側管4Bを経て熱媒排
出口4bから排出されるように形成された熱媒通路4
は、上記凝固浴13の下面よりも上方へ進出して、紡糸
原液を保温する。
【0025】また、上記断熱カバー5は、その目的がノ
ズル部3から吐出される直前の紡糸原液と凝固浴13と
の間の熱の授受を抑制して両者の温度が相互に影響し合
うことを防止する点にあり、これがこの発明の重要なポ
イントの1つである。この断熱カバー5は、ポリプロピ
レンやテフロンなどのプラスチック成形物、硬質発泡プ
ラスチック、軟質発泡プラスチック、セラミックなどの
ように、熱伝導率が1Kcal/m・hr・℃以下のも
のから構成されている。特に、取扱性の面からみて、ポ
リプロピレンなどのプラスチック成形物や硬質発泡プラ
スチック成形物が好ましい。この断熱カバー5はボルト
20を介して上記ノズル固定用キャプ10に固定され、
このノズル固定用キャップ10はボルト16を介して、
上記内外二重管4A,4Bの外側に嵌合されたステンレ
ス製筒体17に固定されており、また、この断熱カバー
5の上端外周には上方ほど小径になるような円錐面5a
が形成されていて、凝固浴導入通路15内を上昇してく
る凝固浴13がノズル部3の吐出孔9aの全周に均一に
まわりやすくしている。
【0026】なお、上記ステンレス製筒体17の下部に
図2に示すような断熱用空気溜り部18を形成して、低
温の凝固浴13の温度が高温の紡糸原液に影響を与えな
いようにすることが望ましいが、この空気溜り部18の
存在は特に必要としない。また、上記熱媒通路4は、そ
の上端がノズル部3の原液吐出孔9aを含む面と同一ま
たはほぼ同一高さレベルに達するように形成することが
理想的であるが、ノズル部3の原液吐出孔9aを含む面
から下方に10cm以内にその上端が位置するように形
成すれば、保温能力の面からは充分である。
【0027】図1において、19は紡糸筒12の上部に
配置されたゴデットローラであり、このローラ19によ
り凝固浴13から引き取られた凝固糸は、以下の工程に
従って繊維化される。すなわち、メタノールや水などの
抽出液により糸中の原液溶媒などを抽出洗條除去して乾
燥する。乾燥前に、1段あるいは好ましくは多段で合計
2倍以上の湿延伸を施しておけば、乾燥時の膠着を防止
することができる。より好ましくは、2.5倍ないし
5.5倍の湿延伸倍率に設定することである。湿延伸倍
率が6倍を越えると、単糸切れや断面変形などを招きや
すい。乾燥温度は30℃〜150℃が乾燥効率、性能維
持の面で好ましい。
【0028】次いで、高温高倍率で熱延伸し、分子を配
向結晶化させて高強度繊維とする。熱延伸は、210℃
以上、より好ましくは220℃〜250℃で、全延伸倍
率が16倍以上、より好ましくは18倍以上、さらに好
ましくは20倍以上となるように実施する。この発明の
紡糸方法においては、凝固斑、デニール斑のない均一な
紡糸ができるので、高延伸倍率が可能となり、高強度繊
維を得ることができる。熱延伸は乾熱でも、シリコンな
どの熱媒浴中、あるいは高温蒸気中などの湿熱でもよ
い。また、1段あるいは2段以上で熱延伸してもよい。
さらに、必要に応じて熱処理や熱収縮を施してもよい。
【0029】
【作用】以上のごとく、この発明によれば、紡糸原液を
凝固浴中にその下方から上方へ導入する流上方式とする
ことと、熱媒通路を凝固浴の下面よりも上方へ進出させ
て、ノズルを凝固浴中に浸漬しながらも熱媒の循環によ
り吐出直前まで原液を保温させ、原液が熱媒により保温
されない非加熱ゾーンを短かくしたこと、およびその非
加熱ゾーンに設けた断熱カバーにより、ノズルの原液吐
出孔を除いて原液と凝固浴との間の熱伝導を抑制したこ
とに重要なポイントがあり、これらによって、ノズルの
吐出孔から吐出直前の高温原液と低温の凝固浴との間の
熱授受にともなうデニール斑や凝固斑の発生を抑えて、
均質な繊維の製造が可能となり、そのため、高強度PV
A繊維を安定かつ安価に製造することが可能である。
【0030】
【実施例】以下、この発明の実施例を説明する。ただ
し、この発明は以下の実施例に限定されるものでない。
【0031】粘度平均重合度4100、ケン化度99.
8モル%のPVAを9重量%となるようにDMSOに添
加し、さらに凍結防止剤としてメタノールを2重量%添
加して、80℃にて窒素雰囲気下で溶解して紡糸原液と
する。このようにして得られた紡糸原液を孔径0.12
mm、孔数600、孔ピッチ1.1mmのノズルより、
1℃のメタノール/DMSO=7/3よりなる凝固浴1
3中に吐出して、流上方式の湿式紡糸を実施した。この
際、原液供給管路の外側の熱媒通路に70℃の温水を循
環させた。この温水は、ノズルの原液吐出孔9aを含む
面から下4cmまで循環されるように配慮し、かつノズ
ル板9およびノズル固定用キャップ10は、熱伝導率が
1.0Kcal/m・hr・℃のポリプロピレン製断熱
カバー5により覆い、原液と凝固浴との間の熱の授受を
抑制した。そして、得られた凝固糸をメタノール浴に浸
漬し、DMSOを抽出するとともに、2段階で合計4.
5倍の湿延伸を施し、90℃の熱風で乾燥した。次い
で、180℃−200℃−235℃の温度勾配を有する
熱風炉中で全延伸倍率が22.5倍になるように熱延伸
した。その結果、全工程を通じて、8時間以上にわたり
断糸などのトラブルがなく、安定しており、断面は円形
で均一であった。また、得られた繊維の強度は21.8
g/dで、単糸の変動率は7%であった。
【0032】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、紡糸
原液の非加熱ゾーンを短かくし、かつその非加熱ゾーン
において、紡糸原液と凝固浴との間の熱伝導を抑制する
ことにより、従来の流上方式湿式紡糸方法の短所、つま
り紡糸原液と凝固浴の温度が相互に影響し合うことによ
る原液の温度斑および粘度斑の発生を防いで、原液を正
常均一に吐出させることができるとともに、流上方式湿
式紡糸方法の長所、つまり低濃度で多孔紡糸、コンパク
トで、かつ安定のよい紡糸機能をそのまま生かすことが
できる。これによって、高強度で均質なPVA繊維を安
定に製造することができ、このようにして得られたPV
A繊維は、自動車用タイヤやホース等のゴム資材分野、
繊維補強コンクリート(FRC)や繊維補強プラスチッ
ク(FRP)等の補強材分野などに幅広く有効に利用す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る湿式紡糸装置による流上方式紡
糸法を説明するためのモデル図である。
【図2】この発明の湿式紡糸装置の要部を示す縦断面図
である。
【符号の説明】
1…紡糸原液吐出装置、2…原液供給管路、3…ノズル
部、4…熱媒通路、5…断熱カバー、9a…原液吐出
孔、11…凝固浴槽、13…凝固液(浴)、14…凝固
液供給管、15…凝固浴導入通路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永松 健治 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (72)発明者 雪吉 邦夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (56)参考文献 特開 昭49−69911(JP,A) 特開 平4−209818(JP,A) 実開 昭49−98504(JP,U) 実公 昭44−12171(JP,Y1) 実公 昭33−11004(JP,Y1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01D 1/00 - 13/02 D01F 6/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高温の紡糸原液を低温の凝固浴中にその
    下方から上方へ導入することにより紡糸する湿式紡糸装
    置であって、 凝固浴槽の下部に、上部に漏斗状のノズルを備えた原液
    吐出装置が装着され、上記ノズルの上端の原液吐出孔が
    凝固浴中に進出しており、上記原液吐出装置における凝
    固浴中に浸漬した浸漬部の外周に、上記凝固浴槽の下部
    から供給された凝固液を上記外周に沿って上昇させなが
    ら上記原液吐出孔の周囲へ向かわせる導入通路が形成さ
    れ、 上記原液吐出装置は、上記ノズルヘ原液を供給する原液
    供給路と、この原液供給路とノズルのうちの少なくとも
    原液供給路の外周を覆い、かつ凝固浴の下面よりも上方
    へ進出して、原液を保温する熱媒通路と、この熱媒通路
    およびノズルの外周側に設けられて上記原液吐出装置と
    凝固浴との間での熱伝導を抑制する断熱カバーとを備え
    てなり、上記熱媒通路の一部が上記漏斗状のノズルの外
    周面を覆っている湿式紡糸装置。
JP03074102A 1991-03-12 1991-03-12 湿式紡糸装置 Expired - Fee Related JP3133776B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP03074102A JP3133776B2 (ja) 1991-03-12 1991-03-12 湿式紡糸装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP03074102A JP3133776B2 (ja) 1991-03-12 1991-03-12 湿式紡糸装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH04289210A JPH04289210A (ja) 1992-10-14
JP3133776B2 true JP3133776B2 (ja) 2001-02-13

Family

ID=13537490

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP03074102A Expired - Fee Related JP3133776B2 (ja) 1991-03-12 1991-03-12 湿式紡糸装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3133776B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104099676B (zh) * 2014-07-11 2016-04-20 江苏鹰游纺机有限公司 腈纶长丝纺丝装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH04289210A (ja) 1992-10-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US3842151A (en) Method for preparing fibers from polymer solutions
CN101643943B (zh) 聚丙烯腈基碳纤维原丝的制备方法
WO2008141405A3 (en) Process for the preparation of polymer yarns from ultra high molecular weight homopolymers or copolymers, polymer yarns, molded polymer parts, and the use of polymer yarns
US5234651A (en) Dry-jet wet spinning of fibers including two steps of stretching before complete coagulation
US11932971B2 (en) Method of producing precursor fiber for carbon fiber and carbon fiber
US20140106167A1 (en) Method for hybrid dry-jet gel spinning and fiber produced by that method
JP3133776B2 (ja) 湿式紡糸装置
US5229057A (en) Process of making high-strength polyvinyl alcohol fiber
CN112725918A (zh) 聚乙烯纤维的制备方法及纤维
KR100543968B1 (ko) 고강도를 가진 비대칭성 폴리에틸렌 중공사막의 제조방법
NO20023310L (no) Apparat for fremstilling av optiske fibre laget av semi- krystallinske polymere
JP2899426B2 (ja) 高強度ビニルアルコール系ポリマー繊維の製法
JP2006188792A (ja) 紡浴装置およびアクリル繊維束
JPH0696807B2 (ja) 高強度、高弾性率ポリビニルアルコール系繊維の製造法
JP3021944B2 (ja) 強度の優れたポリビニルアルコール系繊維の製法
JP2865736B2 (ja) 高強度ポリビニルアルコール繊維の製造法
KR880001033B1 (ko) 고물성(高物性) 아크릴섬유 및 그 제조법
JP2888497B2 (ja) 強度の優れたポリビニルアルコール系繊維の製法
JPH0578902A (ja) 強度の優れたポリビニルアルコール系繊維の製造法
CN115491776B (zh) 一种凝固浴系统及利用该系统制备再生纤维素纤维的方法
JP3537539B2 (ja) ビニルアルコール系共重合体中空糸膜の製造方法
KR100646652B1 (ko) 고강도 폴리비닐알코올 섬유의 제조방법
JP2003113524A (ja) 高速紡糸用離浴槽
DE2260178A1 (de) Neues verfahren zur herstellung von mehrfaedigen garnen auf der basis eines vulkanisierten diorganopolysiloxans
JPH01250406A (ja) 高強度繊維の製造法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071124

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081124

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees