JP3130814B2 - 金属の熱処理法 - Google Patents

金属の熱処理法

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一雄 三谷
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属の熱処理法に関
し、特に、光輝表面を有する金属を得るための熱処理法
に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】金属
には、様々な目的で熱処理が施されている。例えば、
「鉄または鋼の軟化、結晶組織の調整もしくは内部応力
の除去のために、鉄または鋼を適当な温度に加熱した後
に徐冷する操作」である焼きなまし、「鋼の組織を常態
化するため、鋼を変態点以上の適当な温度に加熱した
後、大気中で冷却する操作」である焼きならしなど、金
属の品質を向上するために各種の熱処理が行われてい
る。
【0003】次に、本発明の理解を容易にするために、
ステンレス鋼を例にとって、さらに詳しく従来の金属の
熱処理法を説明する。例えば、ステンレス鋼製のパイプ
を得る目的でステンレス鋼板を溶接した場合、溶接によ
る残留応力を除去するため並びに粒界析出物による粒界
腐食を避けるため、約1050℃まで加熱した後に急冷
する操作である、いわゆる溶体化処理が行われている。
ところが、この加熱が大気中で行われた場合、ステンレ
ス鋼の表面に酸化膜が形成されるので、この酸化膜を除
去するために酸洗設備による酸洗が行われている。しか
し、酸洗を行った場合、酸洗設備自体が大がかりである
上に、その維持管理や酸洗後の廃液の処理のような付帯
作業が不可欠であり、そのために廃液処理設備も必要に
なる。さらに、酸洗作業や廃液処理作業の作業環境は好
ましいものではない。
【0004】また、上記加熱を非酸化性の光輝雰囲気で
ある『H2 雰囲気』で行う場合、水素爆発の危険性があ
り、水素は比較的高価なガスであるから、ランニングコ
ストが高くなるという欠点もある。
【0005】本発明は従来の技術の有するこのような問
題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、特別
の大規模付帯設備や付帯作業を必要とすることなく、作
業環境が悪化せず、しかも、低コストで安全な金属の熱
処理法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、金属を加熱することにより金属表面に形成
される酸化膜を、高圧で噴射する水と粉状硬質固形物と
の混合物により剥離除去することにより光輝表面を有す
る金属を得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】すなわち、本発明に係る金属の熱
処理法は、金属を一定温度に加熱した後に、この金属を
急冷し、次いで、その金属の表面に水と粉状硬質固形物
との混合物を高圧で噴射して金属表面の酸化膜を剥離除
去し、さらに、その金属を水洗および乾燥することから
なる金属の熱処理法において、粉状硬質固形物としてス
テンレス鋼ショットを用い、そのステンレス鋼ショット
を500〜3000kgf/cm2 の圧力の高圧水と
ともに噴射することを特徴としている。
【0008】上記のように構成される本発明によれば、
鋼管、棒鋼、ステンレス鋼管またはステンレス棒鋼など
の金属を、焼鈍、焼準、球状化処理、溶体化処理などの
目的で、直接通電や誘導加熱などの手段で一定温度に加
熱した後に急冷し、次いで、その金属の表面に水とステ
ンレス鋼ショットとの混合物を500〜3000kgf
/cm2 の圧力の高圧で噴射することにより、加熱時
に生成した金属表面の酸化膜を剥離除去し、さらに、そ
の金属を水洗することにより表面に付着したステンレス
鋼ショットを除去し、最後に乾燥することにより光輝表
面を有する金属を得ることができる。
【0009】粉状硬質固形物としては、例えば、ガーネ
ット、珪砂、ジルコンサンド、鋳鉄グリット、鋳鉄ショ
ット、鋳鋼グリット、鋳鋼ショット、ステンレス鋼ショ
ット、ステンレス鋼カットワイヤなどを用いることがで
きるが、酸化膜剥離能力・表面光沢・リサイクル性・コ
ストなどを総合的に考慮すると、ステンレス鋼ショッ
ト、ステンレス鋼カットワイヤが好ましい。
【0010】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。図1は、
本発明の方法を実施するに好適な熱処理装置の概略配置
図である。図1において、1は被研磨物たる金属パイ
プ、2は金属パイプを加熱する高周波誘導加熱炉、3は
加熱後の金属パイプを急冷する水冷装置、4は金属パイ
プの表面に形成された酸化膜を剥離除去するウォータジ
ェット研磨装置(詳細は図2参照)、5は研磨後の金属
パイプの表面に付着した研磨材を除去する水洗装置、6
は空気乾燥設備である。図2は、ウォータジェット研磨
装置の基本原理を示し、図2(a)において、10は高
圧水発生装置、11は研磨材供給タンク、12はノズル
ヘッド、13は被研磨物、14は加工台、15は研磨材
を捕捉するキャッチャー、16は排水設備である。ノズ
ルヘッド12に対しては、図2(b)に拡大して示すよ
うに、上部から高圧水Aがウォータノズル17を介して
供給され、側部からは研磨材Bが供給される。そして、
ノズルヘッド内でこれらが混合されて、アブレイシブノ
ズル18から被研磨物に向けて噴射される。ウォータジ
ェット研磨装置は金属表面の光沢を確保するために不可
欠の機器であり、その好ましい操作条件の範囲を次の表
1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】具体的には、SUS304の板材を溶接し
て得たSUS304製のパイプを図1に示す装置の高周
波誘導加熱炉2により1050℃まで加熱した後、水冷
装置3で約300℃まで急冷し、次いで、ウォータジェ
ット研磨装置4により以下に詳細に説明するような研磨
条件でSUSパイプ表面の酸化膜を剥離除去し、水洗装
置5によりSUSパイプ表面に付着した研磨材を水洗除
去し、空気乾燥設備6によりSUSパイプ表面の水分を
取り除いた。
【0013】ウォータジェット研磨装置による研磨は、
以下の表2に示す共通条件の下、表3に示すように、ノ
ズルの相対移動速度、研磨材の種類および噴射角度を変
えて行った。その結果、同表に示すように、本実施例の
ものの光沢ならびに表面粗度は従来の酸洗法により金属
表面の酸化膜を除去していたものと比べて同等もしくは
それ以上であることが分かる。
【0014】
【表2】
【0015】
【表3】
【0016】なお、ノズルおよびキャッチャーの形状お
よび配置については、様々な組み合わせが可能である
が、被研磨物がパイプ状の場合は、例えば、図3に示す
ような構成を採用することができる。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、特別の大規模付帯設備
や付帯作業を必要とすることなく、作業環境が悪化せ
ず、しかも、低コストで安全な金属の熱処理法を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するに好適な金属の熱処理
装置の概略配置図である。
【図2】図2(a)はウォータジェット研磨装置の一実
施例の側面図、図2(b)はノズルヘッド部分の拡大斜
視図である。
【図3】図3(a)は被研磨物を回転させる場合のウォ
ータジェット研磨装置のノズルおよびキャッチャーの形
状および配置の一実施例を示す図であり、図3(b)は
被研磨物を回転させない場合のウォータジェット研磨装
置のノズルおよびキャッチャーの形状および配置の一実
施例を示す図である。
【符号の説明】
1…金属パイプ 2…高周波誘導加熱炉 3…水冷装置 4…ウォータジェット研磨装置 5…水洗装置 6…空気乾燥設備 10…高圧水発生装置 11…研磨材供給タンク 12…ノズルヘッド 13、13a…被研磨物 14…加工台 15…キャッチャー 16…排水設備 17…ウォータノズル 18…アブレイシブノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池本 喜和 兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番 1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内 (72)発明者 木村 剛 兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番 1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内 (72)発明者 松井 繁朋 兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番 1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内 (72)発明者 辻田 京史 兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番 1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内 (72)発明者 三谷 一雄 千葉県木更津市清見台南3丁目16番10号 (72)発明者 石坂 雄二 神奈川県横須賀市船越町8丁目16番6号 (56)参考文献 特開 昭52−93634(JP,A) 特開 昭62−253732(JP,A) 特開 昭61−249603(JP,A) 特開 平3−39421(JP,A) 特開 昭63−54597(JP,A) 特開 平7−237125(JP,A) 特開 平1−91908(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 1/70 B21B 45/08 B24C 1/10,9/00,11/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属を一定温度に加熱した後に、この金
    属を急冷し、次いで、その金属の表面に水と粉状硬質固
    形物との混合物を高圧で噴射して金属表面の酸化膜を剥
    離除去し、さらに、その金属を水洗および乾燥すること
    からなる金属の熱処理法において、粉状硬質固形物とし
    てステンレス鋼ショットを用い、そのステンレス鋼ショ
    ットを500〜3000kgf/cm 2 の圧力の高圧
    水とともに噴射することを特徴とする金属の熱処理法。
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