JP3130359B2 - 液晶性ポリエステル - Google Patents

液晶性ポリエステル

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JP3130359B2
JP3130359B2 JP04032568A JP3256892A JP3130359B2 JP 3130359 B2 JP3130359 B2 JP 3130359B2 JP 04032568 A JP04032568 A JP 04032568A JP 3256892 A JP3256892 A JP 3256892A JP 3130359 B2 JP3130359 B2 JP 3130359B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶性ポリエステルに
関するものであり、詳しくは、シークェンスがより交互
的に制御された新規な液晶性ポリエステルに関するもの
である。本発明の液晶性ポリエステルは、高弾性率であ
り、引張強度、曲げ強度、衝撃強度等が高く、更に、高
伸度であるため靱性があり、且つ、同一組成、同一組成
比においては、従来のものに比較し、力学特性、耐熱性
に優れている。
【0002】
【従来の技術】近年、繊維、フィルムまたは成形品の何
れの分野においても、剛性、強度、伸度、耐熱性の優れ
た素材に対する要望が高まっている。ポリエステルは、
一般成形品の分野において広く認められるに至っている
が、多くのポリエステルは、曲げ弾性率、曲げ強度が劣
るため、高弾性率、高強度を要求される用途には適して
いない。
【0003】近年、高弾性率、高強度が要求される用途
に適しているポリエステルとして、液晶性ポリエステル
が注目されている。そして、特に注目を集めるようにな
ったのは、W.J.ジャクソン等がポリエチレンテレフ
タレートとアセトキシ安息香酸とからなる熱液晶高分子
を発表してからである(ジャーナル・オブ・ポリマー・
サイエンス・ポリマー・ケミストリー・エディション1
4巻(1976年)2043頁、USP3,778,4
10、アメリカ特許第3,804,805号明細書及び
特公昭56−18016号公報参照)。そして、ジャク
ソン等は、上記の文献において、熱液晶高分子がポリエ
チレンテレフタレートの5倍以上の剛性、4倍以上の強
度、25倍以上の衝撃強度を発揮することを報告し、高
性能樹脂への新しい可能性を示した。
【0004】しかしながら、ジャクソン等によるポリマ
ーは、非常に脆く、強度、伸度が低いという欠点があ
る。これは、下記の化学式[化3]で表されるp−オキ
シ安息香酸残基の連鎖の割合が非常に多いことが主原因
になっていると考えられる。そして、上記の連鎖の割合
などにより、融点、軟化点等が変動するものと考えられ
る。
【0005】
【化3】
【0006】一方、ジャクソン等によるポリマーを用い
て成形加工条件を検討した報文が数多くある。(例え
ば、J.A.Cuculo等、Journal of
Polymer Science.Physical
Edition 26 179(1988))上記の報
文によれば、ジャクソン等によるポリマーの弾性率は、
成形温度を高めるほど高くなり、その理由は、溶融して
いない部分が低温側で存在して成形品の高次構造等に欠
陥を与えるためだとしている(このことは、ジャクソン
等によるポリマーは部分的にしか液晶状態をとっていな
いことを示している)。
【0007】上記の事実は、シークェンスやその分布お
よび組成分布が広範に亙っており、不均一性が大きいこ
とを示していると考えられる。また、このことは、固体
時の耐熱性が高いにも拘わらず、成形温度を高くしなけ
れば、高性能の物性が発現できなくなることを意味し、
更に、高温側でなければ本来の液晶性が充分に発現され
ないために、低温側、つまり溶融開始点およびそれより
少し高い温度付近では、流動性も悪化し、液晶性ポリマ
ーの特徴である薄物成形等が不可能になることを示して
いる。
【0008】本出願人は、ジャクソンらの開発したポリ
エステルに比較し、優れた破断伸度を有する共重合ポリ
エステルに関する発明を完成し、先に提案した(特開昭
60−186527号)。斯かる発明における発想は、
前記の化学式[化3]で表されるp−オキシ安息香酸残
基の連鎖を少なくするという点にある。しかしながら、
特開昭60−186527号公報に記載の製法やその他
の特開昭60−186525号公報に記載の製法によれ
ば、重合の初期において、p−オキシ安息香酸残基が連
鎖しないように工夫しているにも拘わらず、ランダム重
合しか起こらず、従って、得られるポリマーは、破断伸
度の点で必ずしも十分ではなく且つ固体時の耐熱性を維
持し得る温度と充分に流動し得る温度との差が大きいと
いう問題がある。
【0009】また、特開昭63−317524号公報に
おいては、エチレングリコール以外の脂肪族ジオール等
を原料とするポリマー系により、伸びの改良や物性の異
方性の改良を行う方法が提案されている。しかしなが
ら、上記の提案には、下記の化学式[化4]で表される
構造単位は含まれておらず、勿論、斯かる構造単位によ
るシークェンスのコントロールや耐熱性の向上の可能性
は何ら示唆されていない。
【0010】
【化4】
【0011】また、特開平3−56527号公報におい
ても脂肪族ジオールを原料とするポリマー系の例が記載
されているが、上記の化学式[化4]で表される構造単
位については記載されていない。また、特開平3−56
527号公報には、ポリマーに耐熱性を付与する方法と
して、−O−ArO−で表される構造単位(Arは芳香
族基)の利用が提案されているが、上記の化学式[化
4]で表される構造単位単独によるシークェンスのコン
トロールや耐熱性の向上の可能性は何ら示唆されていな
い。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実状に
鑑みなされたものであり、その目的は、シークェンスが
より交互的に制御された新規な液晶性ポリエステルを提
供することにある。本発明者等は、上記の目的を達成す
るために、特許請求の範囲第1項に記載の化学式[化
1]で表されるジカルボン酸単位(a)、ジオール単位
(b)及びp−オキシ安息香酸単位(c)を構造単位と
して含有する液晶性ポリエステルであって、次の(1)
〜(3)の物性ないしは特性を満足するポリマー系につ
いて鋭意検討を重ねた。 (1)引張強度、曲げ強度、衝撃強度等が高く、高破断
伸度で且つ耐熱性に優れている。 (2)固体での耐熱性には優れるが、流動を開始すると
少し高温にするだけで非常に優れた流動性を示す。その
ためには、ある温度(T1 )までは固体状態であって耐
熱性を示し、ある温度(T2 )で非常に優れた流動性を
示すと仮定した場合、(T1 )はできるだけ高く、(T
2 )−(T1 )はできるだけ小さくすればよい。斯かる
特性によれば、優れた成形性が発現される。 (3)共重合体であっても固体状態でできるだけ高い結
晶性を示す。斯かる特性によれば、力学特性および耐加
水分解性の向上が図られる。また、フィラー等の混合に
より、力学特性や熱的特性の大幅な向上を図ることが可
能になり得る。そして、本発明者等は、シークェンスの
より交互的な制御により、上記のポリマー系を達成し得
るとの結論を得、本発明の完成に到った。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
は、下記の化学式[化5]([化1]と同じ)中、
(a)で表されるジカルボン酸単位(R1 は炭素数6〜
18の2価の芳香族炭化水素基を示す)、(b)で表さ
れるジオール単位および(c)で表されるp−オキシ安
息香酸単位を構造単位として含有し、温度275℃、剪
断速度1000sec-1の条件下で測定した溶融粘度が
30ポイズ以上であり、次の(1)及び(2)に規定す
る条件を満足することを特徴とする液晶性ポリエステル
に存する。
【0014】
【化5】
【0015】(1)(a)〜(c)の各構造単位のモル
数を各々〔a〕、〔b〕、〔c〕の記号で表した場合
(以下同じ)、各構造単位の割合が下記の数式[数6]
([数1]と同じ)を満足すること。
【数6】
【0016】(2)下記の化学式[化6]([化2]に
同じ)において、そのエーテル側(−O−側)の隣に更
にp−オキシ安息香酸単位を有する当該p−オキシ安息
香酸単位(d)(実線で表示)及びそのカルボニル側
(−CO−側)の隣にジオール単位を有する当該p−オ
キシ安息香酸単位(g)(実線で表示)の各モル数を各
々〔d〕、〔g〕の記号で表した場合、下記の数式[数
7]([数2]に同じ)及び[数8]([数3])で各
々定義されるシークェンス生成性比(r1 )及び
(r2 )の少なくとも一方が下記の数式[数9]([数
4]と同じ)及び[数10]([数5]同じ)を満足す
ること。
【0017】
【化6】
【0018】
【数7】
【数8】
【0019】
【数9】0≦r1 ≦0.88
【数10】0≦r2 ≦0.88
【0020】以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本
発明の液晶性ポリエステルの物性および構造的特徴につ
いて従来のポリマーと対比しつつ説明する。本発明の液
晶性ポリエステルは、高弾性率であり、引張強度、曲げ
強度、衝撃強度等が高く、更に、高伸度であるため靱性
があり、且つ、同一組成、同一組成比においては、従来
のものに比較し、力学特性、耐熱性に優れている。更
に、前述の(T2 )−(T1 )が非常に小さいために、
低い温度で成形できるという特徴を有し、しかも、一般
的に低い温度、すなわち、融点より少し高い温度で成形
した方が力学特性に優れるという特徴を有する。また、
本発明の液晶性ポリエステルは、固体状態で高い結晶性
を示すので耐加水分解性に優れており、上記の力学特
性、耐熱特性は、フィラー等の配合により一層向上され
る。
【0021】本発明の液晶性ポリエステルは、次のよう
な分子設計の考えに基づき完成されたものである。先
ず、前記の化学式[化5]で表されるジカルボン酸単位
(a)、ジオール単位(b)及びp−オキシ安息香酸単
位(c)を構造単位として含有するポリマーの製造にお
いて、前記の化学式[化3]で表されるp−オキシ安息
香酸残基の連鎖の割合をできる限り少なくすることに留
意した。特開昭60−186527号、特開昭64−2
6632号および特開平2−45524号は、ジャクソ
ン等により開発された液晶性ポリエステルの改良に関す
る発明であり、斯かる発明では、耐熱性や力学特性は改
良されるものの、ブロック的に存在しているp−オキシ
安息香酸単位をランダム的に存在させたに過ぎず、しか
も、そのランダム性については、定性的であり且つラン
ダム性の尺度の定量化は行なわれていない。
【0022】本発明者等は、前述の各物性等を満足する
ためには、p−オキシ安息香酸単位のランダム的存在で
は不充分であり、交互的存在が必要であるとの知見を得
た。本発明で規定するシークェンス生成性比に関する条
件(2)は、上記の知見に基づくものである。そして、
シークェンス生成性比(r1 )及び(r2 )は、下記の
数式[数11]及び[数12]を満足するのが好まし
い。
【数11】
【数12】
【0023】各シークェンス生成性比(r1 )及び(r
2 )の上限値は、0.85よりも0.80が好ましく、
0.73が特に好ましい。シークェンス生成性比
(r1 )の下限値は、各構造単位のモル数に従って上記
の数式[数11]により算出される。ただし、p−オキ
シ安息香酸単位(c)とジカルボン酸単位(a)との各
モル数が〔c〕≦2×〔a〕の関係の場合には(r1
の下限値は0となる。
【0024】シークェンス生成性比(r2 )の下限値に
ついても、上記と同様であり、p−オキシ安息香酸単位
(c)とジオール単位(b)との各モル数が〔c〕=2
×〔b〕の関係の場合にはシークェンス生成性比
(r2 )の下限値は0となる。しかしながら、p−オキ
シ安息香酸単位(c)のモル数が上記の関係で表される
量よりも多い場合は、各構造単位のモル数に従って上記
の数式[数12]により算出される。
【0025】そして、各シークェンス生成性比(r1
及び(r2 )の下限値の算出については、通常、計算上
の誤差を考慮し、下記の数式[数13]及び[数14]
に従うのが好ましい。
【数13】
【数14】
【0026】本発明の液晶性ポリエステルにおいて、各
シークェンス生成性比(r1 )及び(r2 )は、両者が
同時に、下記の数式[数15]([数4]に同じ)及び
[数16]([数5]に同じ)を満足するのが好まし
い。そして、(r1 )及び(r2 )の好ましい上限値お
よび実用的な下限値については、上記の通りである。
【数15】0≦r1 ≦0.88
【数16】0≦r2 ≦0.88
【0027】次に、上記のシークェンス生成性比
(r1 )及び(r2 )の導入の背景について説明する。
なお、シークェンス生成性比(r1 )及び(r2 )を定
義する前記の数式[数5]([数2]と同じ)は、B.
Vollmert編、Polymer Chemist
ry;Springer−Verlag:NY 197
3 P.117〜P.123の記載に基づいて導出した
ものである。
【0028】p−オキシ安息香酸単位(c)のシークェ
ンスを考える場合は、エーテル側(−O−側)の隣とカ
ルボニル側(−CO−側)の隣とを区別して考える必要
がある。すなわち、下記の化学式[化7]中において破
線で示した通り、p−オキシ安息香酸単位(c)のエー
テル側の隣には、異なる2種類の構造単位が連結し得る
と考えられる。また、同様に、下記の化学式[化8]中
において破線で示した通り、p−オキシ安息香酸単位
(c)のカルボニル側の隣にも、異なる2種類の構造単
位が連結し得ると考えられる。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】上記の各化学式[化7]及び[化8]にお
いて、実線で表示したp−オキシ安息香酸単位(d)、
(e)、(f)、(g)のモル数を各々〔d〕、
〔e〕、〔f〕、〔g〕の記号で表した場合、概略、次
の数式〔数17]及び〔数18]で表される関係が成立
する。
【数17】〔c〕=〔d〕+〔e〕
【数18】〔c〕=〔f〕+〔g〕
【0032】そして、上記の各式は、末端基等があった
り、主鎖中に下記の化学式[化9]で表される酸無水物
結合がある場合は、必ずしも、左辺と右辺とは等しくな
らない。
【0033】
【化9】
【0034】また、その他の隣合う連鎖としては、下記
の化学式[化10]で表される構造単位が考えられる。
【0035】
【化10】
【0036】従って、p−オキシ安息香酸単位(c)の
シークェンス生成性比(r1 )及び(r2 )に関する実
際的に意味のある式は、下記の数式[数19]([数
2]と同じ)及び[数20]である。
【数19】
【数20】
【0037】しかしながら、(r2 )を求める後述の分
析法では、〔f〕は求まらず、〔g〕と〔c〕とが求ま
る。そこで、〔f〕=〔c〕−〔g〕と近似し得るた
め、上記の数式[数20]を下記の数式[数21]
([数3]と同じ)の通りとした。
【数21】
【0038】〔a〕、〔b〕及び〔c〕の測定法の詳細
については後述するが、[数19]においてはポリマー
のNMR法により求め、[数21]においてはアミン分
解物のNMR法により求めた。また、〔a〕、〔b〕及
び〔c〕は、メタノール分解後のガスクロマトグラフィ
ー法でも求めることも可能であり、その値はNMR法の
値とよい一致を示す。
【0039】次に、(r1 )、(r2 )の具体的意義に
ついて述べる。一般に、高分子の共重合体製造時にはモ
ノマー反応性比という概念が使用される。すなわち、2
種のモノマー(M1 )、(M2 )があり、活性種(〜M
1 * )の隣にモノマー(M1 )が入る確率を(W11)と
し、(M1 )、(M2 )の濃度を〔M1 〕、〔M2 〕で
示した場合、モノマー反応性比(R1 )は、下記の数式
[数22]で表される。
【数22】 (R1 =K11/K12、K11:活性種(〜M1 * )の隣に
モノマー(M1 )が入る反応速度定数、K12:K11:活
性種(〜M1 * )の隣にモノマー(M2 )が入る反応速
度定数)
【0040】従って、(R1 )は、結局、活性種(〜M
1 * )の隣にモノマー(M1 )又はモノマー(M2 )が
入る反応速度定数比ということになる。一般的には、
(W11)は、ポリマーを分析することによって求める場
合もあり、また、ビニル化合物系の連鎖重合の場合は、
モノマー消費量(あるいはポリマー中の組成比)より
(R1 )を求める場合もある。
【0041】一方、本発明におけるポリマー系の場合
は、逐次反応であり且つエステル交換のような副反応も
考える必要があるので、モノマー反応性比(R1 )が直
ちにポリマーの組成やシークェンスを決定することには
ならない。しかしながら、モノマー反応性比(R1 )は
分からないとしても、上記と同様な考え方により、ポリ
マーから(W11)を決定できれば、それにより、シーク
ェンスの生成比を決定することができる。従って、(W
11)は、下記の数式[数23]で表すことができる。
【数23】 (上記の式中、〔M1 −M1 〕はモノマー(M1 )の隣
りに存在するモノマー(M1 )の濃度を表す)
【0042】そこで、本発明者らは、上記の数式と同様
な下記の数式[数24]により、新たに(r1 )を定義
し、これをシークェンス生成性比と名付けた。
【数24】 上記の数式において、左辺は、p−オキシ安息香酸単
位(c)が下記の化学式[化11]で示す構造になって
いる比率すなわち確率を表す。
【0043】
【化11】
【0044】そして、r1 >1の場合は、p−オキシ安
息香酸単位(c)がジカルボン酸単位(a)に対してブ
ロック的なシークェンスになっており、(r1 )値が大
きくなる程よりブロック性が高い。すなわち、p−オキ
シ安息香酸単位(c)が上記の化学式[化11]で示す
構造になっている比率が大になることを意味する。一
方、r1 ≒1の場合は、p−オキシ安息香酸単位(c)
がジカルボン酸単位(a)に対してランダム的なシーク
ェンスになっており、このことは、上記の数式[数2
4]におけるポリマー中の〔c〕に対する〔d〕の割合
(〔d〕/〔c〕)は、(c)及び(a)に対する
(c)の組成比と同一であることを意味する。
【0045】更に、r1 <1の場合は、p−オキシ安息
香酸単位(c)が上記の化学式[化11]で表される構
造になっている比率が小さくなる。すなわち、p−オキ
シ安息香酸単位(c)は、ジカルボン酸単位(a)に対
して交互的になり、(r1 )が小さくなる程に一層交互
的であることを意味する。なお、r1 =0の場合は、上
記の化学式[化11]で示す構造のp−オキシ安息香酸
単位(c)は生成しないことを意味する。ただし、p−
オキシ安息香酸単位(c)の比率が増えた場合、例え
ば、〔c〕>2×〔a〕になった場合、(r1 )は、事
実上、下記の数式[数25]に示す通りである。そし
て、下記の数式[数25]において左辺が(r1 )と等
しい場合に理想的交互共重合体といえる。
【数25】
【0046】上記と逆な面から考察した場合は、次の通
りである。すなわち、r1 >1の場合は、下記の化学式
[化12]([化10]と同じ)で示す構造単位のシー
クェンスの分率が多いことを意味し、r1 ≦1の場合
は、斯かる構造のシークェンスが減少していることを意
味する。換言すれば、同様の組成、組成比の従来の液晶
性ポリエステルは、本発明の液晶性ポリエステルに比べ
て下記の化学式[化12]で示す構造のシークェンスが
多くなっている。このことは、従来の製法では下記の化
学式[化12]で示す構造のシークェンスを減少させる
ことが困難であったためと思われる。
【0047】
【化12】
【0048】次に、(r2 )の意味について述べる。
(r2 )についても(r1 )と同様に、p−オキシ安息
香酸単位(c)のカルボニル側の隣の構成単位に着目
し、下記の数式[数26]([数3]と同じ)で定義さ
れる。
【数26】
【0049】上記の数式において、左辺は、p−オキシ
安息香酸単位(c)から下記の化学式[化13]で示す
構造になっているp−オキシ安息香酸単位(g)を除い
たものの比率すなわち確率を表す。
【0050】
【化13】
【0051】そして、例えば、p−オキシ安息香酸単位
(c)が下記の化学式[化14]で示す構造になってい
る場合、下記の化学式[化15]で示す構造を形成する
下線部は、下記の化学式[化16]で示す通り、2個分
あると考えられる。
【0052】
【化14】
【0053】
【化15】
【0054】
【化16】
【0055】そして、p−オキシ安息香酸単位(c)
は、ジオール単位(b)に対し、r2 >1の場合はブロ
ック的なシークェンスになっており、r2 ≒1の場合は
ランダム的なシークェンスになっており、r2 <1の場
合は交互的になることを意味する。
【0056】前述の特開昭60−186527号公報に
記載の製法で得られるポリマーにおいては、p−オキシ
安息香酸単位(c)がジオール単位(b)に対してラン
ダム的なシークェンスになっており、また、特開昭64
−26632号、特開平2−45524号に記載のポリ
マーも同様である。勿論、本発明のポリエステルに類似
の組成のポリエステルにおいて交互的なシークェンスの
例が全くないわけではない。例えば、R.W.Lenz
等は、界面法(溶液法)により、下記の化学式[化1
7]で表される化合物と[化18]で表される化合物と
を使用して交互系のポリエステルを得ている(Poly
merJournal 14(1)9(1982))。
【0057】
【化17】
【0058】
【化18】
【0059】しかしながら、R.W.Lenz等により
得られた上記のポリエステルの溶液粘度(ηinh )は、
0.178dl/gと低く、ポリエステルとしての力学
特性は期待し得ない。なお、British Poly
mer Journal 12(4)132(198
0)にも同一著者の報告がある。そして、これには、ポ
リマーの溶液粘度(ηinh )の記載はないが、他のデー
タより、上記のPolymer Journalに記載
のポリエステルと同一物と考えられる。
【0060】また、S.I.Stupp等は、本発明の
ポリエステル系以外のポリマーにおいて完全交互系と非
交互系とでメルトにどのような差があるかについて報告
している(Macromolecules 21 12
28(1988))。そして、この報告に示されている
通り、確かに、交互系のポリマーは、固体から液晶への
転移の幅が狭い。しかしながら、上記の交互系のポリマ
ーは、逐次的にモノマーを合成する必要があるため、モ
ノマー合成が非常に大変でり、また、合成されたポリマ
ーの力学的物性は調査されていない。
【0061】本発明の液晶性ポリエステルは、前述の
(r1 )、(r2 )の少なくとも1つが0.88以下で
あり、そして、斯かる要件規定により、次ような一般的
な特徴を有する。 (1)引張り強度、曲げ強度が高い。 (2)衝撃強度が高い。 (3)破断伸度が高い。 (4)同一組成、組成比での耐熱性が高い。 (5)前述の(T2 )−(T1 )が小さいので成形温度
を低くできる。 (6)より低温での成形品の方が力学特性に優れる。 (7)溶融粘度のみかけの活性化エネルギーが小さい。 (8)結晶性が高い。 (9)耐加水分解性が良好である。 (10)フィラー等の混合の効果が顕著に現れる。
【0062】なお、本発明の液晶性ポリエステルは、上
記の個々の物性の全てについて従来のポリマーより優れ
ているという訳ではなく、最大の特徴は、力学特性と熱
特性のバランスが従来のポリマーに比べて遙かに優れて
いる点にある。また、本発明の液晶性ポリエステルは、
耐熱性が高い割には成形温度を低くできるという特徴も
有する。そして、このことは、製造時の重合温度を低く
できるのみならず、従来の製造装置で耐熱性の良好なポ
リマーを製造し得ることを意味する。
【0063】前述の化学式[化5]中、(a)で表され
るジカルボン酸単位のR1 は、炭素数6〜18の2価の
芳香族炭化水素基を示し、その具体例としては、下記の
化学式[化19]中、(h)〜(n)で表される芳香族
炭化水素基等が挙げられる。そして、これらは、単独に
用いてもよいし、併用して共重合体となっていてもよ
い。そして、併用の場合、3種以上の併用でもよいが、
2種までの併用が好ましい。なお、下記の化学式中、芳
香族炭化水素基(m)および(n)において、連結基−
X−としては、−O−、−S−、−SO2 −、−CH2
−、−C(CH2 2 −等が挙げられる。
【0064】
【化19】
【0065】上記の芳香族炭化水素基の中では、(h)
〜(l)が好ましい。単独に用いる場合は、(h)、
(j)及び(k)が好ましく、特には(h)及び(j)
が好ましい。また、併用する場合においても、少なくと
も1単位は(h)、(j)及び(k)の中から選択する
のが好ましく、そして、(h)、(j)及び(k)の合
計がR1 のモル比で50%以上、好ましくは66%以上
を占めるのがよい。そして、好ましい併用系の組合せ
は、(h)−(i)、(h)−(j)、(h)−
(k)、(i)−(k)、(k)−(l)である。そし
て、前述の化学式[化5]中、(b)で表されるジオー
ル単位は、トランス体およびシス体の何れであってもよ
いが、トランス体/シス体の割合が1以上が好ましく、
耐熱性の観点からは2以上が好ましい。従って、トラン
ス体のみの場合が特に好ましい。
【0066】本発明の液晶性ポリエステルにおいて、前
述の化学式[化5]中、(a)で表されるジカルボン酸
単位および(c)で表されるp−オキシ安息香酸単位の
各モル数〔a〕及び〔c〕の割合は、下記の数式[数2
7]([数1]と同じ)を満足することが必要である。
【数27】
【0067】上記に規定する割合が0.65未満の場合
は、耐熱性の良好な液晶性ポリエステルとならず、0.
88を越える場合は、p−オキシ安息香酸単位(c)の
連鎖の絶対値が多くなる。耐熱性の観点からは、上記に
規定する割合の下限値および上限値は、それぞれ、0.
68及び0.86とするのが好ましく、0.70及び
0.85とするのが更に好ましい。また、ジカルボン酸
単位(a)のR1 として、前述の芳香族炭化水素基
(i)が一部または全部に用いられる場合、上記に規定
する割合の下限値および上限値は、それぞれ、0.75
及び0.85とするのが好ましい。
【0068】本発明の液晶性ポリエステルにおいて、前
述の化学式[化5]中、(a)で表されるジカルボン酸
単位および(b)で表されるジオール単位の各モル数
〔a〕及び〔b〕の割合は、重合度を高める観点から、
下記の数式[数28]を満足することが好ましい。
【数28】
【0069】上記に規定する割合の下限値および上限値
は、それぞれ、0.85及び1.15とするのが好まし
く、0.90及び1.10とするのが更に好ましい。そ
して、上記に規定する割合の下限値および上限値は、耐
加水分解性を向上させる観点からは、それぞれ、0.8
0及び1.0とするのが好ましく、末端基を効果的に封
止する観点からは、それぞれ、1.0及び1.2とする
のが好ましい。
【0070】本発明の液晶性ポリエステルにおいては、
下記の化学式[化20]で表される構造単位を殆ど含有
していない。
【0071】
【化20】
【0072】上記の構造単位を含有する液晶性ポリエス
テルは、耐熱性低くまた、結晶性も低い。そして、仮
に、本発明の液晶性ポリエステルが上記の構造単位を含
有する場合は、斯かる構造単位は、p−オキシ安息香酸
単位(c)のモル数〔c〕には含めないものとする。
【0073】次に、(r1 )、(r2 )の計算法と共に
前述の各構造単位(a)、(b)、(c)、(d)、
(e)、(g)の測定法について説明する。先ず、(r
1 )の計算法について説明する。(r1 )の計算法は、
本質的には、前述のNicelyらの方法と同一であ
り、 1H−NMR法により(r1 )を求めた値を利用し
得る。例えば、NMR装置は、BRUKER製のAM−
500を使用し、溶媒としてはトリフルオロ酢酸溶媒ま
たはトリフルオロ酢酸とペンタフルオロフェノールの混
合溶媒を使用することができる。測定温度は、トリフル
オロ酢酸溶媒のみの場合は室温、トリフルオロ酢酸とペ
ンタフルオロフェノールの混合溶媒の場合は60℃とす
るのがよい。
【0074】各 1H−NMRスペクトルから、下記の化
学式[化21]に由来するシグナル(Ha :約7.55
ppm)と下記の化学式[化22](ジカルボン酸単位
(a)とp−オキシ安息香酸単位(c)の連鎖)に由来
するシグナル(Hb :約7.45ppm)の両シグナル
強度を求め、更に、約8.3ppm、約8.5ppmの
シグナルから、(a)と(c)の割合を求め、これを基
に(r1 )を算出する。この方法によれば、(c)のエ
ーテル側(−O−側)側のシークェンスの情報が得られ
る。
【0075】
【化21】
【0076】
【化22】
【0077】次に、(r2 )の計算法について説明す
る。(r2)は、ポリマーのNMRからは求めることが
できない。そこで、本発明者等は、(r2 )を求める方
法について鋭意検討を重ねた結果、次の知見を得た。す
なわち、本発明の液晶性ポリエステルを一級アミンと反
応させた場合、驚くべきことに、下記の化学式[化2
3]で表される構造単位のエステル結合は選択的に切断
されずに残ったままであり、他のエステル結合(例え
ば、構造単位(e)、(f)あるいは前記の化学式[化
12]で示す構造単位のエステル結合等)は切断され
る。
【0078】
【化23】
【0079】上記の知見を利用すれば、次のような方法
により、本発明の液晶性ポリエステルのシークェンスを
解析することができる。先ず、本発明の液晶性ポリエス
テルを粉砕し、その粉砕試料に大過剰のn−プロピルア
ミンを加え、40℃で90分間処理する。次に、前述の
NMR装置を使用し、得られた分解物の 1H−NMRを
測定する。溶媒としては、重水素化メタノール溶媒、重
水素化DMSOと重水素化メタノールとの混合溶媒、ま
たは、重水素化トリフルオロ酢酸溶媒を使用することが
できる。上記の方法により、(g)の成分量を定量する
ことができ、また、(b),(c)の割合は、各同定さ
れたピーク強度を用いて算出することができる。その結
果、構造単位(c)のカルボニル側(CO−側)のシー
クェンスの情報が得られ、それらに基づいて(r2 )を
算出することができる。
【0080】(a)、(b)、(c)の割合および
(d)、(g)の割合は、前記の方法に従って得られた
1H−NMRチャート(後記実施例1における図1およ
び図2参照)を拡大して測定することができる。この場
合の誤差は、〔a〕/〔d〕=20/80の場合、20
±0.5/80±0.5の範囲である。
【0081】前述の説明からすれば、(r1 )と
(r2 )とは同一であるように考えられるが、上記の分
析法からすれば、(r1 )と(r2 )とにかなりの相違
がある。すなわち、構造単位(d)と(e)は、 1H−
NMRから区別できるため、(r1 )は〔d〕を用いて
表現できる。しかしながら、アミン分解法では(f)と
(g)が分かるのではなく、(c)と(g)のみが分か
るため、正確な(r2 )は〔c〕−〔g〕を用いて表現
する必要がある。また、末端基等のために、〔d〕と
(〔c〕−〔g〕)とは、必ずしも等しくはない。更に
は、測定精度からも等しくなるとは限らない。
【0082】このように、より交互的なポリエステル
は、シークェンスのみならず組成分布的にも均一になっ
ているものと思われる。また、本発明の液晶性ポリエス
テルは、構造単位(a)のR1 として、前記の化学式
[化19]中(h)で表される芳香族炭化水素基(すな
わち、p−フェニレン基)が使用され、且つ、〔c〕/
〔a〕≒80/20の場合、従来の液晶性ポリエステル
に比べて破断伸度が約20%以上向上し、強度も約10
〜20%程度向上する。
【0083】(T1 )−(T2 )が小さいということ
は、耐熱性が高く且つ低い温度で成形でき、しかも、そ
の際、全体がメルトしているために、そのものの溶融粘
度が非常に低くなっていることを意味する。そして、こ
のことは、シークェンスが交互的であること、すなわ
ち、(r1 )、(r2 )の値が小さいことと対応してい
る。シークェンスがより交互的(すなわち、均一的)で
あることは、同一組成比の場合に結晶性が向上すること
を意味する。
【0084】本発明の液晶ポリエステルの溶液粘度(η
inh )は、以下のようにして求めることができる。すな
わち、溶媒としてp−クロロフェノール/o−ジクロロ
ベンゼン=1/1(重量比)を使用し、試料を室温で溶
解して濃度0.5g/dlとなし、30℃で測定する。
そして、下記の数式[数29]によって求める。
【数29】ηinh =2(lnt/t0 ) (上記の式中、t0 はブランク(溶媒のみ)の落下速度
(秒)、tは濃度0.5g/dlでの落下速度(秒)を
表す)
【0085】本発明の液晶性ポリエステルは、重合度
(この尺度として上述の溶液粘度を考慮することができ
る)の割に、同一組成および組成比における溶融粘度が
小さくなり、流動性が向上するという特徴を有する。そ
して、溶液粘度が0.4dl/g未満の場合は力学特性
が芳しくないので好ましくない。溶液粘度は、より好ま
しくは0.5以上、更に好ましく0.6以上、最も好ま
しくは0.7以上である。
【0086】また、本発明の液晶性ポリエステルは、上
記のように溶液粘度が測定でき、更に、フェノール/
1,1,2,2,テトラクロロエタン=1/1重量比の
混合溶媒やヘキサフルオロイソプロパノール中にも溶解
することることからして、p−オキシ安息香酸単位
(c)の連鎖の長いポリマーは存在しないと考えられ
る。また、組成分布もより均一になっていると考えられ
る。
【0087】次に、本発明の液晶性ポリエステルの製造
法について説明する。本発明においては、重合形式は特
に限定されず、例えば、界面重合法、溶液重合法、溶融
重合法等を適宜採用し得る。特に、溶融重合法は、重合
度が向上し易く製造コストが安価であり好ましい。本発
明の液晶性ポリエステルは、そのシークェンス生成性比
(r1 )及び(r2 )の少なくとも一方が0≦r1
0.88または0≦r2 ≦0.88の条件を満足するこ
とが必要であり、これにより、優れた物性を発揮する。
特公昭56−18016号、特開昭58−87125
号、特開昭60−186525号、特開昭64−266
32号、特開平2−45524号等の各公報には、各種
の製造方法が記載されているが、本発明の液晶性ポリエ
ステルは、これらの溶融重合法では製造し得ない。
【0088】本発明者等は、そのシークェンス生成性比
(r1 )及び(r2 )が上記の範囲を満たすポリエステ
ルを製造するためは、p−オキシ安息香酸単位(c)の
連鎖を生成し難くする必要があり、そのためには、反応
の初めの段階からp−オキシ安息香酸単位(c)同志を
分離させておくこと、すなわち、原料として、例えば、
下記の化学式[化24]中、(m)で表される化合物お
よび/または(n)で表される化合物を使用すればよい
との知見を得た。
【0089】
【化24】
【0090】すなわち、本発明の液晶性ポリエステルの
ように、ジオール成分として、前記の化学式[化5]中
(b)で表されるジオール単位(b)が用いられる場合
は、一般的に、高温下ではエステル交換やアシドリシス
反応が活発に起こり、その結果、p−オキシ安息香酸単
位(c)がブロック的になったり、ランダム的になった
りするものと考えられていた。ところが、意外にも、ジ
オール単位(b)の成分は、エステル交換し難く、前述
の(r1 )及び(r2 )の測定の際には殆どエステル交
換を受けない。すなわち、ジオール成分として、本発明
で規定するジオール単位(b)が用いられる場合、ジャ
クソン等の方法や先に提案した本出願人の方法によれ
ば、前記の化学式[化12]で示す構造単位の成分が残
存するために、p−オキシ安息香酸単位(c)の連鎖の
割合が増大する。
【0091】本発明において好適な製造方法としては、
溶融重合法による次の(1)〜(3)の方法が挙げられ
る。これらは、いずれも、ジオール単位(b)の成分の
エステル交換が高温下では予想外に起こり難いことを逆
に利用した方法である。 (1)アセテート化合物を酸化合物から脱酢酸重縮合反
応により製造する方法 (2)フェノール性化合物と酸化合物に無水酢酸を加え
て反応させた後脱酢酸重合縮合反応により製造する方法 (3)フェノール性化合物と酸のフェニルエステル化合
物から脱フェノール重縮合反応により製造する方法
【0092】以下、上記の(1)と(2)の方法に基づ
く製造方法を詳細に説明する。本発明においては、原料
化合物として、前記の化合物(m)、(n)及び下記の
化学式[化25]中、(o)〜(q)で表される化合物
を使用する。
【0093】
【化25】
【0094】先ず、アセチル化反応について説明する。
前記の化合物(m)及び/又は(n)に化合物(o)を
加え、場合によっては、更に、化合物(p)及び/又は
(q)を加え、必要に応じて無水酢酸(以下、(r)と
表す)を加え、100〜170℃でアセチル化を行な
う。反応時間は、通常5分ないし3時間、好ましくは2
0分ないし1.5時間とされる。そして、無水酢酸の量
は、原料のヒドロキシル記量に対し同量ないし1.5倍
程度とするのが好ましい。すなわち、上記の原料化合物
の各モル数を前述と同様に〔m〕等の記号で表した場
合、無水酢酸の量は、下記の数式[数30]を満足する
ように調整する。そして、下記の数式において、好まし
い下限値および上限値は1.1及び1.4である。
【数30】
【0095】また、ヒドロキシル基を含有しない原料の
みを用いる場合も少量の無水酢酸を用いるのが好まし
い。この場合、重合速度が高くなるというメリットがあ
る。また、反応は無触媒でも可能であるし、必要に応じ
て、触媒を添加してもよい。
【0096】次に、重合反応について説明する。アセチ
ル化反応終了後、昇温して重合反応を行なう。重合温度
は、220〜340℃、好ましくは260〜320℃、
特に好ましくは265〜300℃、最も好ましくは26
5〜280℃である。このような低温で重合できるとい
うメリットは、本発明の液晶性ポリエステルの特徴であ
る。重合反応を減圧下に行なう場合、例えば、760m
mHgから1mmHgまで徐々に減圧にする場合、これ
に要する時間は、30分以上、好ましくは60分以上と
するのがよく、特に、30mmHgから1mmHgまで
の減圧を徐々に行うことが重要である。
【0097】重合反応は、無触媒でも可能であるが、必
要に応じ触媒の存在下で実施される。触媒としては、エ
ステル交換触媒、重縮合触媒、アシル化触媒、脱カルボ
ン酸触媒が使用され、これらは混合して使用してもかま
わない。好ましい触媒としては、Ti(OBu)4 ,B
uSnOOH,Sn(OAc)2 ,Sb2 3 ,Fe
(acac)3 ,Zn(OAc)2 ,Co(OA
c)2 ,NaOAc,KOAc等が挙げられる。触媒の
使用量は、生成するポリマーに対し、5〜50,000
ppm、好ましくは50〜5,000ppmである。重
合時間は、10時間以内とするのがよく、好ましくは7
時間以内、更に好ましくは1〜4時間以内である。本発
明の液晶性ポリエステルによれば、上述のように、低温
で重合し得るメリットがあるが、更に、重合反応器から
低温で且つ簡単に抜出せ、しかも、抜出時にトラブルを
起こすことがないというメリットもある。このようなこ
とも、本発明の液晶性ポリエステルのシークェンスが制
御されていることに基づいていると推定される。
【0098】前述の原料化合物(m)及び/又は(n)
と(o)との使用割合は、下記の数式[数31]を満足
するように調整するのが好ましい。そして、下記の数式
において、特に好ましい下限値および上限値は0.9及
び1.1である。
【数31】
【0099】また、前述の原料化合物(p)及び(q)
の使用割合は、下記の数式[数32]を満足するように
調整するのが好ましい。そして、下記の数式において、
特に好ましい下限値および上限値は0.5及び4、最も
好ましい下限値および上限値は1及び3である。
【数32】
【0100】また、本発明の液晶性ポリエステルは、前
述の化合物(p)及び/又は(q)と下記の化学式[化
26]中の化合物(s)と(t)とから製造することも
できる。
【0101】
【化26】
【0102】本発明の液晶性ポリエステルは、溶融相に
おいて光学的異方性を示す。特に、溶融を開始した場
合、開始温度から少し温度を高めることにより、固体部
分が殆どなくなって実質的に全体が液晶状態を採り得る
ため、溶液粘度(ηinh )見合いの流動性は、従来のポ
リエステルよりも遙かに良好であるという特徴を有す
る。そのため、成形性が良好であり、押出成形、射出成
形、圧縮成形等の一般的な溶融成形を行なうことが可能
である。従って、成形品、フィルム、繊維等に容易に加
工することができる。
【0103】本発明の液晶ポリエステルの溶融粘度は、
温度275℃、剪断速度1000sec-1の条件下で測
定した場合、30ポイズ以上であることが必要である。
しかしながら、本発明のポリエステルは、液晶性を示す
ことより、その溶融粘度が一般に低い。例えば、上記の
条件下で測定した溶融粘度は、5000ポイズ以下であ
る。従って、本発明の液晶ポリエステルの溶融粘度は、
好ましくは50〜3000ポイズ、更に好ましくは10
0〜2500ポイズである。そして、275℃の溶融粘
度と290℃の溶融粘度との比が小さい点も本発明の液
晶性ポリエステルの特徴である。
【0104】本発明の液晶性ポリエステルは、高流動で
あるとの特徴のために、特に、精密成形品等に適してい
る。例えば、自動車用部品、コンパクトディスクやフロ
ッピーディスク等情報材料の部品、コネクター、ICソ
ケット等の電子材料の部品等に好適に使用し得る。ま
た、本発明の液晶性ポリエステルは、ガラス繊維、炭素
繊維等の繊維類、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の
フィラー類、核剤、顔料、酸化防止剤、滑剤、その他安
定剤、難燃剤等の充てん剤や添加剤、熱可塑性樹脂等を
添加することにより、成形品に所望の特性を付与するこ
とも可能である。更にまた、他のポリマーとのブレンド
やアロイ化を行なうことにより、本発明の液晶性ポリエ
ステルと他のポリマーとの両者の長所を合わせ持つ組成
物にすることも可能である。
【0105】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実
施例に限定されるものではない。なお、以下の例におい
て次の方法により、物性測定や成形を行なった。 (1)溶液粘度(ηinh ) p−クロロフェノール/o−ジクロロベンゼン混合溶媒
を使用し、温度30℃、濃度0.5g/dlの条件で測
定した。測定には、島津製作所フローテスター(シリン
ダーノズルの長さ/直径=20)を用い、剪断速度
(r)1000 sec-1とした。 (2)光学異方性(液晶性) ホットステージ付偏光顕微鏡を用いて観察した。 (3)成形 成形は、日本製鋼社製0.1OZ射出成形機を用いて行
った。 (4)引張特性 引張弾性率、引張強度および破断伸度は、上記の成形機
にて得られた0.1OZ成形品について、東洋ボールド
ウィン社製TENSILON/UTM(III)Lを用
いて測定した。 (5)耐熱性 耐熱性は、ビカット軟化温度を測定して評価した。ビカ
ット軟化温度は東洋精器の自動HDT装置を用い、上記
の0.1OZ成形品を試料とし、50℃/Hrの昇温速
度で針が1mm侵入したところの温度とした。
【0106】参考例(前記化合物(m)の合成) キシレン中にパラヒドロキシ安息香酸と1,4−シクロ
ヘキサンジメタノールとをパラヒドロキシ安息香酸/
1,4−シクロヘキサンジメタノール=2/1(モル
比)となるように仕込み、触媒としてp−トルエンスル
ホン酸を仕込んだ。次いで、キシレンのリフラックス温
度まで昇温して反応させた。反応終了後、反応物にDM
Fを加えて濾過し、未反応物を除去し、高純度の前記化
合物(m)を得た。構造は 1H−NMRで確認した。
【0107】実施例1 撹拌翼、窒素導入口、減圧口を備えたガラス重合管に、
参考例で合成した化合物(m)55.7g(0.145
モル)、前記の化合物(p)40.0g(0.190モ
ル)及び前記の化合物(t)24.1g(0.145モ
ル)を仕込み、N2 減圧置換後、更に、無水酢酸を6
1.2g(0.60モル)添加した。次いで、撹拌しな
がら140℃に昇温して1時間140℃に保持した後、
1.5時間かけて275℃に昇温し、275℃になった
ところで減圧を開始した。減圧は、最初の1時間で10
mmHgにし、以後、1.5時間かけて10mmHgか
ら1mmHgにした。減圧開始後4時間でトルクが充分
上がったので重合を終了した。その後、静置して復圧
し、重合管の底からポリマーを抜き出した。抜き出し性
は非常に良好であった。次いで、チップ化した後、12
0℃で1晩真空乾燥させた。
【0108】得られたポリマーの溶液粘度(ηinh
は、1.20dl/gであり、溶融粘度は275℃で2
50ポイズであった。また、(r1 )は0.50、(r
2 )は0.53であった。図1は(r1 )を求めるのに
用いたNMRチャート、図2は(r2 )を求めるのに用
いたアミン分解後のNMRチャートである。また、得ら
れたポリマーの引張特性は、破断伸度4.0%、引張強
度2,400kg/cm2 、引張弾性率8.8×104
kg/cm2 であった。また、ビカット軟化温度は21
7℃であった。上記のポリマーは、(r1 )、(r2
≒0.5の結果から、非常に交互性の高いポリマーであ
ると言える。
【0109】実施例2 撹拌翼、窒素導入口、減圧口を備えたガラス重合管に、
化合物(m)47.6g(0.124モル)、化合物
(p)51.3g(0.372モル)、化合物(t)2
0.6g(0.124モル)を仕込み、N減圧置換
後、更に、無水酢酸を79.1g(0.775モル)添
加した。次いで、撹拌しながら140℃に昇温して1時
間140℃に保持した後、1.5時間かけて290℃に
昇温し、290℃になったところで減圧を開始した。減
圧は、最初の1時間で10mmHgにし、以後、1.5
時間かけて10mmHgから1mmHgにした。減圧開
始後3時間でトルクが充分上がったので重合を終了し
た。その後、静置して復圧し、重合管の底からポリマー
を抜き出した。抜き出し性は非常に良好であった。次い
で、チップ化した後、120℃で1晩真空乾燥させた。
【0110】得られたポリマーの溶液粘度
(ηinh )は、1.15dl/gであり、溶融粘度
は290℃で850ポイズであった。また、(r
は0.61、(r)は0.62であった。また、得
られたポリマーの引張特性は、破断伸度3.5%、引張
強度2,200kg/cm、引張弾性率7.8×1
kg/cmであった。また、ビカット軟化温
度は232℃であった。
【0111】比較例1 ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートとp−
アセトキシ安息香酸とを用い、特公昭56−18016
号公報に記載の方法に基づきポリマーを製造した。ポリ
マーの組成比が実施例1と同じになるようにしたとこ
ろ、粘度測定溶媒(p−クロロフェノール/o−ジクロ
ロベンゼン)に不溶であり、均一なポリマーであった。
また、脆すぎるために成形不可であった。上記のポリマ
ーは、(r1 )及び(r2 )のいずれもが1を遙かに越
え、非常にブロック性の高いものである。
【0112】比較例2 ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートとp−
ヒドロキシ安息香酸とを用い、特開昭60−18652
7号公報に記載の方法に基づきポリマーを製造した。ポ
リマーの組成比が実施例1と同じになるようにしたとこ
ろ、粘度測定溶媒に不溶であり、不均一なポリマーであ
った。また、脆くて成形不可であった。
【0113】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、シークェ
ンスがより交互的に制御された新規な液晶性ポリエステ
ルが提供される。そして、本発明の液晶性ポリエステル
は、高弾性率であり、引張強度、曲げ強度、衝撃強度等
が高く、更に、高伸度であるため靱性があり、且つ、同
一組成、同一組成比においては、従来のものに比較し、
力学特性、耐熱性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において(r1 )を求めるのに用いた
NMRチャートである。
【図2】実施例1において(r2 )を求めるのに用いた
アミン分解後のNMRチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−27110(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の化学式[化1]中、(a)で表さ
    れるジカルボン酸単位(R1 は炭素数6〜18の2価の
    芳香族炭化水素基を示す)、(b)で表されるジオール
    単位および(c)で表されるp−オキシ安息香酸単位を
    構造単位として含有し、温度275℃、剪断速度100
    0sec-1の条件下で測定した溶融粘度が30ポイズ以
    上であり、次の(1)及び(2)に規定する条件を満足
    することを特徴とする液晶性ポリエステル。 【化1】 (1)(a)〜(c)の各構造単位のモル数を各々
    〔a〕、〔b〕、〔c〕の記号で表した場合(以下同
    じ)、各構造単位の割合が下記の数式[数1]を満足す
    ること。 【数1】 (2)下記の化学式[化2]において、そのエーテル側
    (−O−側)の隣に更にp−オキシ安息香酸単位を有す
    る当該p−オキシ安息香酸単位(d)(実線で表示)及
    びそのカルボニル側(−CO−側)の隣にジオール単位
    を有する当該p−オキシ安息香酸単位(g)(実線で表
    示)の各モル数を各々〔d〕、〔g〕の記号で表した場
    合、下記の数式[数2]及び[数3]で各々定義される
    シークェンス生成性比(r1 )及び(r2 )の少なくと
    も一方が下記の数式[数4]及び[数5]を満足するこ
    と。 【化2】 【数2】 【数3】 【数4】0≦r1 ≦0.88 【数5】0≦r2 ≦0.88
  2. 【請求項2】 シークェンス生成性比(r1 )及び(r
    2 )が同時に前記[数4]及び[数5]を満足すること
    を特徴とする請求項1記載の液晶性ポリエステル。
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