JP3128085B2 - 非線形光半導体装置、光共振器および光双安定レーザダイオード - Google Patents

非線形光半導体装置、光共振器および光双安定レーザダイオード

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JP3128085B2
JP3128085B2 JP04071401A JP7140192A JP3128085B2 JP 3128085 B2 JP3128085 B2 JP 3128085B2 JP 04071401 A JP04071401 A JP 04071401A JP 7140192 A JP7140192 A JP 7140192A JP 3128085 B2 JP3128085 B2 JP 3128085B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は一般に半導体装置に関
し、特に非線形応答を示す光半導体装置に関する。
【0002】高速光通信システムや光デジタルプロセッ
サに関連して、非線形光半導体装置の研究がなされてい
る。非線形光半導体装置では、透過率や反射率などの光
学的性質が光ビームの照射により制御される。このた
め、非線形光半導体装置は光作動光スイッチや光論理プ
ロセッサ、あるいは光変調器を構成するのに極めて有用
である。
【0003】特願平1−126239において、本出願
人は非線形光半導体装置としていわゆるTBQ構造を有
する光半導体装置を提案した。TBQ構造においては、
一対のバリア層で挟まれた第一の量子井戸層に隣接して
第二の量子井戸層が形成され、光励起により第一の量子
井戸層中に生じたキャリアを第二の量子井戸層で吸収す
るようにする。このために、バリア層の厚さはキャリ
ア、特に電子のトンネリングが可能な程度に薄く設定
し、また第二の量子井戸層中に生じる量子準位が第一の
量子井戸層中の量子準位よりも低くなるように第一、第
二の量子井戸層の組成および厚さを設定する。かかるT
BQ構造では、入射光による光励起の後入射光が遮断さ
れた場合、第一の量子井戸層中のキャリアは直ちに第二
の量子井戸層に脱出し、非線形光半導体装置の光学的状
態は短時間で元に戻る。
【0004】
【従来の技術】図21は従来のTBQ装置のバンド構造
図である。
【0005】図21を参照するに、TBQ装置は一対の
バリア層14bにより挟まれた活性層14aを有する。
活性層14aの幅は電子およびホールの離散的な準位E
1 ,H1 が形成されるように十分に小さく設定される。
換言すれば、活性層14aは量子井戸層を形成し、量子
準位E1 およびH1 のエネルギ差に相当する波長の入射
光ビームを吸収する。入射光ビームは量子準位E1 へ電
子を励起すると共に量子準位H1 にホールを生成し、励
起された電子およびホールは準位E1 よりわずかに低い
エネルギレベルに励起子を形成する。また、生成した励
起子は準位E1 およびH1 に電子およびホールを放出し
て分解する。
【0006】図1のTBQ装置では、バリア層14bの
厚さは量子井戸層14a中で励起された電子がトンネリ
ングにより脱出できるように十分に小さく設定される。
さらに、電子の量子井戸層14aからの脱出を促進する
ために第二の量子井戸層14cをバリア層14bに接し
て形成する。通常、第二の量子井戸層の厚さは第一の量
子井戸層14aの厚さよりも実質的に大きく設定され、
第一の量子井戸層中の量子準位E1 ,H1 よりもエネル
ギー的に低い量子準位E2 ,H2 を形成する。非線形光
学装置をこのように形成することにより、電子は第一の
量子井戸層14aから第二の量子井戸層14cへ、バリ
ア層14bをトンネリングして脱出し、電子が第一の量
子井戸層中に滞留する問題が解決される。電子が励起状
態で第一の量子井戸層中に滞留すると、入射光ビームの
吸収が阻害される。入射光ビームを遮断した後に元の光
学的状態を速やかに回復するには励起されたキャリアを
第一の量子井戸層から出来るだけ速やかに除去する必要
がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図21のTBQ装置に
おいては量子準位E2 と量子準位H2 の間のエネルギー
ギャップは入射光ビームのエネルギーにくらべてはるか
に小さい。そこで、図21の装置においては入射光ビー
ムが第二の量子井戸層によって吸収されることが避けら
れない。換言すれば、図21の非線形光半導体装置はS
N比が劣化する傾向がある。
【0008】図21のTBQ装置においては、また第一
の量子井戸層14aから第二の量子井戸層14cに脱出
した電子あるいはホールが層14c中に滞留する問題点
を有する。この問題は特に高速の光パルスが入射される
ような場合に顕著になる。図21の装置では電子の有効
質量がホールのそれよりも小さいため、特に電子が第二
の量子井戸層14c中に蓄積されやすい。これに対し、
ホールは第一の量子井戸層14aに蓄積される傾向があ
る。このようなキャリアの蓄積が生じると量子井戸層1
4aと量子井戸層14cの相対的なエネルギーが変化
し、最終的には量子準位E1 と量子準位E2 が等しくな
ってしまうこともあり得る。こうなると、電子はもはや
第二の量子井戸層に脱出することができなるなり、装置
の応答特性は著しく劣化する。
【0009】本発明は、上記の問題点に鑑みなされたも
ので、新規で有用な非線形光半導体装置を提供すること
を概括的目的とする。
【0010】本発明のより具体的な目的は、入射光と相
互作用をする第一の量子井戸層と、入射光との相互作用
の結果第一の量子井戸層中に形成されたキャリアを吸収
する第二の量子井戸層とを備えたTBQ構造を有する非
線形光半導体装置において、第二の量子井戸層による入
射光ビームの吸収を最小化した光半導体装置を提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
入射光の波長に対応するエネルギーギャップ(Egap1
だけ相互に隔てられて形成された電子のための第一の量
子準位(E1 )とホールのための第二の量子準位
(H1 )とを有する第一の量子井戸層(12a)と、前
記第一の量子井戸層の上下にキャリアのトンネリングを
許容するような厚さで形成され、前記第一の量子井戸層
に対応してポテンシャル井戸を形成するバリア層(12
b)と、前記バリア層に接して形成され、前記第一の量
子井戸層中において前記入射光による励起により生成
し、前記バリア層(12b)をトンネリングしたキャリ
アを吸収する第二の量子井戸層(12c)とを備え、入
射光の照射に応じて光学的な状態を変化させる非線形光
半導体装置において、前記第二の量子井戸層は伝導帯中
にX点とΓ点とを含み、前記Γ点は前記第一の量子準位
よりも実質的に高いエネルギを有し、一方前記X点は前
記第一の量子準位よりも実質的に低いエネルギを有し、
前記第二の量子井戸層は前記X点に対応して前記第一の
量子準位よりも低いエネルギの位置に電子のための第三
の量子準位を有することを特徴とする非線形光半導体装
置により、又は 信号光ビームの半波長の整数倍程度の距
離だけ離間して相互に対向するように配設された第一お
よび第二の半透明ミラー(31a,31b)と、前記第
一および第二の半透明ミラーの間に配設された積層構造
体(32)とよりなり、信号光ビームを供給されて共振
を生じる光共振器において、前記積層構造体は信号光の
波長に略対応するエネルギーギャップ(Egap1)だけ相
互に隔てられて形成された電子のための第一の量子準位
(E1 )とホールのための第二の量子準位(H1 )とを
有する第一の量子井戸層(12a)と、前記第一の量子
井戸層の上下にキャリアのトンネリングを許容するよう
な厚さで形成され、前記第一の量子井戸層に対応してポ
テンシャル井戸を形成するバリア層(12b)と、前記
バリア層に接して形成され、前記第一の量子井戸層中に
おいて制御光による励起により生成し、前記バリア層
(12b)をトンネリングしたキャリアを吸収する第二
の量子井戸層(12c)とを備え、前記第二の量子井戸
層は伝導帯中にX点とΓ点とを含み、前記Γ点は前記第
一の量子準位よりも実質的に高いエネルギを有し、一方
前記X点は前記第一の量子準位よりも実質的に低いエネ
ルギを有し、前記第二の量子井戸層は前記X点に対応し
て前記第一の量子準位よりも低いエネルギの位置に電子
のための第三の量子準位を有することを特徴とする光共
振器により、または所定の距離離間して対向する第一お
よび第二のミラー(44a,44b)より構成される光
共振器と、前記第一および第二のミラーの間に配設さ
れ、電子およびホールを注入されて誘導放出により光ビ
ームを形成する活性層(41)と、前記第二のミラーと
前記活性層の間に形成され、供給される光放射に応じて
透過率を変化させる可飽和吸収領域(45)とよりなる
光双安定レーザダイオードにおいて、前記可飽和吸収領
域は光放射の波長に略対応するエネルギーギャップ(E
gap1 )だけ相互に隔てられて形成された電子のための
第一の量子準位(E1 )とホールのための第二の量子準
位(H1 )とを有する第一の量子井戸層(12a)と、
前記第一の量子井戸層の上下にキャリアのトンネリング
を許容するような厚さで形成され、前記第一の量子井戸
層に対応してポテンシャル井戸を形成するバリア層(1
2b)と、前記バリア層に接して形成され、前記第一の
量子井戸層中において前記光放射による励起により生成
し、前記バリア層をトンネリングしたキャリアを吸収す
る第二の量子井戸層(12c)とを備え、前記第二の量
子井戸層は伝導帯中にX点とΓ点とを含み、前記Γ点は
前記第一の量子準位よりも実質的に高いエネルギを有
し、一方前記X点は前記第一の量子準位よりも実質的に
低いエネルギを有し、前記第二の量子井戸層は前記X点
に対応して前記第一の量子準位よりも低いエネルギの位
置に電子のための第三の量子準位を有することを特徴と
する光双安定レーザダイオードによ達成する。
【0012】
【作用】本発明によれば、第二の量子井戸層の材料を前
述のように選定することにより、第二の量子井戸層によ
る光ビームの吸収が抑止され、非線形光半導体装置のS
N比が大きく向上する。第二の量子井戸層においては、
価電子帯から伝導帯のΓ点への電子の光励起は、入射光
の光エネルギーよりもはるかに大きいエネルギーを要す
るため生じない。一方、伝導帯のX点およびこれに付随
する第三の量子準位は第一の量子井戸層中の第一の量子
準位よりもエネルギー的に低い位置にあるため、第一の
量子井戸層中に光励起により形成された電子は速やかに
第二の量子井戸層に脱出することが可能になり、非線形
光半導体装置は速やかに元の状態に復帰する。その際、
第二の量子井戸層の価電子帯から第三の量子準位への遷
移は間接遷移過程によりなされるため、実質的には生じ
ない。このため、この過程により入射光が吸収されるこ
ともない。
【0013】好ましい実施例によれば、第一および第二
の量子井戸層中の電子およびホールを速やかに除去する
ため非線形光半導体装置には電極手段が設けられる。電
極手段は第一および第二の量子井戸層に沿って電場を誘
起し、これに伴って第一および第二の量子井戸層では伝
導帯および価電子帯に勾配が誘起される。その結果、電
子およびホールは傾斜した価電子帯および伝導帯に沿っ
て電極手段に到達し、吸収される。
【0014】他の好ましい実施例によれば、第二の量子
井戸層の材料を第二の量子井戸層中にホールの量子準位
が形成されるように選定する。このようにすることで、
第一の量子井戸層中におけるホールの滞留の問題を解決
することが可能になる。
【0015】本発明の実施例を説明する前に、本発明の
原理をGaAsおよびAlAsのバンド構造を示す図2
2(a),(b)を参照して説明する。
【0016】図22(a)はGaAsのバンド構造を波
数空間ないし結晶運動量空間において示す図である。図
中横軸は運動量を示し、伝導帯と価電子帯のバンド端が
運動量とともに変化するのがわかる。伝導帯にはΓ点お
よびX点に対応して極小値が存在し、一方価電子帯には
Γ点に対応して極大値が存在する。また、価電子帯はX
点に対応して極小値を有する。その際、GaAsのバン
ドギャップはΓ点に対応して形成され1.42eVの値
を有する。これに対してX点においてはバンドギャップ
は4.75eVの値を有する。さらに、X点における伝
導帯の極小値とΓ点における価電子帯の極大値との間の
エネルギー差は約2.1eVになる。
【0017】かかるGaAsのバンド構造は直接遷移型
として周知のもので、光励起はΓ点において運動量の変
化を伴うことなく生じる。これに対し、価電子帯のΓ点
から伝導帯のX点へ遷移するには運動量の変化を必要と
し、このためかかる間接遷移の確率は低い。これは、か
かる運動量の変化を伴う遷移は適当な運動量を有するフ
ォノンとの相互作用等、他の素過程の助けを必要とする
ためである。
【0018】AlAsについても同様な事情が成立す
る。すなわち、AlAsはΓ点において遷移エネルギー
として2.95eVを有するのに対し、X点では4.8
9eVの遷移エネルギーを有する。さらに、伝導帯のX
点と価電子帯のΓ点との間のエネルギー差は2.16e
Vとなる。GaAsの場合と同様に、価電子帯のΓ点か
ら伝導帯のX点への遷移は間接過程を含むため、実質的
には生じない。GaAsと異なり、AlAsの場合伝導
帯の下端はX点となり、一方価電子帯の上端はΓ点とな
る。AlAsはかかるバンド構造を有するため2.16
eV程度の光エネルギーが供給されても殆ど光吸収を示
さない。
【0019】
【実施例】本発明は、TBQ構造における第二の量子井
戸層による光吸収の問題を、第二の量子井戸層に対して
AlAsと同様な間接遷移を特徴とする材料を使用する
ことで解決する。
【0020】図1は本発明の原理を説明するバンド構造
図である。
【0021】図1を参照するに、本発明による非線形光
半導体装置は図21と同様なTBQ構造を有する積層構
造体12よりなり、積層構造体12は図21のGaAs
層14aに対応するGaAs層12aを有し、GaAs
層12aはAlGaAsよりなる一対のバリア層12b
により挟まれる。このバリア層12bは図21のバリア
層14bに対応する。さらに、バリア層12bの外側に
は図21の層14cに相当する第二の量子井戸層12c
が形成される。TBQ構造はかかる層12a〜12cを
繰り返し積層することで形成され、図示の例では層12
aの厚さは2.8nm,層12bの厚さは4.0nm,
層12cの厚さは7.0nmとされている。
【0022】層12aの厚さを薄くすることにより、層
12a中には電子のための量子準位E1 やホールのため
の量子準位H1 が図1に示したように形成され、層12
aは量子井戸層として作用する。図中、量子準位E1
量子準位H1 のエネルギー差をEgap1とあらわす。さら
に、量子井戸層12aにおいて伝導帯Ecの下端と価電
子帯Evの上端との間のエネルギーギャップをEg1
あらわす。層12aでは伝導帯の下端と価電子帯の上端
とはいずれもΓ点に形成されており、エネルギーギャッ
プEg1 は1.42eVの値を有する。図22(a)の
バンド構造図を参照。ここで、層12aの厚さは入射光
ビームの波長に対応して設定され、入射光ビームは量子
準位E1 に電子を励起すると同時に量子準位H1 にホー
ルを生成する。さらに、このように励起された電子とホ
ールは量子準位E1 よりわずかに低い位置に励起子を形
成し、かかる励起子の存在によって層12aによる光吸
収は妨げられる。換言すれば、量子井戸層12a、従っ
て積層構造体12は光吸収について非線形な応答を示
す。図21の装置と同様に、励起された電子はバリア層
12bをトンネリングすることにより層12aから脱出
する。電子の脱出を促進するために、バリア層12bの
厚さは電子が自由にトンネリングできる程度に薄く設定
される。
【0023】本実施例では、AlAs層12cが伝導帯
Ec中にX点を、量子準位E1 よりもエネルギー的に低
い位置に有している。図1において、層12cの伝導帯
下端と価電子帯上端のエネルギー差をEg3 とあらわし
ているが、この図で伝導帯の下端がX点に対応し、一方
価電子帯の上端がΓ点に対応する。図22(b)を参照
するに、エネルギー差Eg3 は2.16eVに等しいこ
とがわかる。さらに、層12cの厚さは層12a中の量
子準位E1 よりも実質的に低いエネルギーレベルに量子
準位E2 が形成されるように十分に大きく設定される。
量子準位E2 がこのように量子準位E1 よりも低く形成
される結果、励起された電子は量子井戸層12cの量子
準位E2 に速やかに逃れることができ、層12a中に励
起電子の蓄積が生じることはない。
【0024】量子井戸層12cにおいては価電子帯Ev
の上端から量子準位E2 への電子の光遷移は先にも説明
した間接遷移過程が含まれるために、容易には起こらな
い。量子準位E2 は伝導帯のX点に対応して形成される
のに対し、価電子帯の上端はΓ点に対応して形成される
ことに注意すべきである。さらに、層12cでは伝導帯
のΓ点が図1の量子準位E1 よりもはるかに高い位置に
あるため、直接遷移による光励起は生じない。入射光ビ
ームがギャップエネルギーEgap1に対応する波長を有す
る限り量子井戸層12cによる光吸収は生じない。層1
2cが光吸収を生じるためには入射光ビームはΓ点にお
けるバンドギャップEgap2以上のエネルギーを有する必
要がある。
【0025】図1のバンド構造を実現する材料は勿論前
記のものに限定されるものではなく、例えば層12a〜
12cとしてAlGaAsを使い、その際層12aの組
成Alx Ga1-x Asを組成範囲0≦x<0.45に設
定し、層12bの組成Aly Ga1-y Asを組成範囲x
<yに設定し、さらに層12cの組成Alz Ga1-z
sを組成範囲y<z≦1に設定してもよい。
【0026】ところで、前記特願平1−126239は
GaAsよりなる第一の量子井戸層とAlGaAsより
なる第二の量子井戸層にAlAsよりなるバリア層を組
み合わせて第二の量子井戸層による光吸収を抑止する構
成を開示している。この従来のTBQ装置においては第
二の量子井戸層における電子とホールの量子準位差を増
大させることにより第二の量子井戸層による光吸収を抑
止すると同時に、第二の量子井戸層における電子の量子
準位を第一の量子井戸層における電子の量子準位よりも
低く設定することにより第一の量子井戸層から第二の量
子井戸層への電子の脱出を可能にしている。しかし、こ
の先行技術においては、第二の量子井戸層おける光吸収
を抑止するのにΓ点における大きなバンドギャップを利
用する思想や、第二の量子井戸層のX点に対応して量子
準位を形成し第一の量子井戸層中の励起電子を吸収させ
る思想は開示されていない。
【0027】図2は積層構造体12を使った本発明の第
1実施例による非線形光半導体装置の構造を示す図であ
る。本実施例では積層構造体12はGaAs基板10の
上主面上に形成されている。図2中に拡大して示したよ
うに、積層構造体12は層12a〜12cを繰り返し積
層することによって形成される。その際繰り返しの単位
は層12b/層12a/層12b/層12cとなってい
る。さらに、基板10には積層構造体12の下面を露出
させる開口部10aが形成されている。
【0028】本実施例装置では、信号光ビームが矢印に
より示したように供給され、一方積層構造体12の光学
的性質が別の制御光を別の矢印で示したように照射する
ことで制御される。すなわち、十分な強度の制御光ビー
ムを照射すると積層構造体12は飽和し、光ビームを吸
収しなくなる。この状態では信号光ビームは積層構造体
10を自由に通過する。これに対し、制御光ビームを遮
断すると積層構造体12は元の光学的状態を速やかに回
復し、光ビームの吸収が再開される。本実施例の装置で
は第二の量子井戸層12cによる信号光ビームの吸収は
生じることがない。
【0029】図3(a)は本実施例による非線形光半導
体装置の吸収スペクトルを示す図である。この図より明
らかなように、本実施例装置の吸収スペクトルには波長
約740nmのところで光吸収係数が階段状に変化する
のがわかる。この図で認められる主要な吸収ピークは電
子と重いホールにより生成される励起子によるものであ
り、一方より短波長側のピークは電子と軽いホールによ
り生成される励起子によるものと同定される。
【0030】本発明の効果は図3(a)を従来のTBQ
の吸収スペクトルを示す図3(b)と比較すると明らか
である。従来の装置の場合、約845nmのところに形
成される第一段目と約790nmのところに形成される
第二段目の二段になった光吸収スペクトルがみられ、こ
のうち第二段目は量子井戸層12aに対応する量子井戸
層14aによるものであるが、第一段目は量子井戸層1
2cに対応する量子井戸層14cによるものと考えられ
る。図3(b)より、従来のTBQでは明らかに層14
cによる光吸収が生じており、その光吸収が量子井戸層
14aによる光吸収に重畳されていることがわかる。そ
の結果、従来の非線形光半導体装置ではS/N比が劣化
することが避けられない。本発明の構成によれば、図3
(a)から明らかなように層12cによる光吸収の問題
は解決される。その結果、本実施例による非線形光半導
体装置ではS/N比が大きく向上する。
【0031】図2の装置では、装置の光学的状態は信号
光ビームの強度が十分に大きい場合信号光ビームのみに
よっても制御できる。一般に、図2の装置は十分な強度
の入射光がエネルギーEgap1に相当する波長で入来した
場合はそれが信号光であれ制御光であれ光学的状態を変
化させる。
【0032】次に、本発明の第2実施例を図4を参照し
ながら説明する。図4中、先に説明した部分は同一の符
号で示し、説明を省略する。
【0033】図4の実施例では、積層構造体12の上主
面上にショットキー電極16aおよび16bが、積層構
造体12のうち開口部10aに対応した入射光を照射さ
れる領域の両側に対向して位置するように形成される。
典型的な場合、電極16a,16bはAlより形成さ
れ、例えば10μmの距離だけ離間される。
【0034】動作時には、電極16a,16bにバイア
ス電圧が印加され、これに応じて積層体12中に電場が
誘起される。一方、かかる電場は図5のバンド構造図の
右側に図示したように層12a〜12cのバンドを傾斜
させ、その結果層12cの量子準位E2 にある電子は正
電圧が印加されている電極12cに向かって加速され
る。一方、層12a中で量子準位H1 にあるホールは負
電圧が印加されている電極16bに向かって加速され
る。バイアス電圧をこのように印加することにより、光
励起されたキャリアを効率的に除去することが可能とな
り、非線形光半導体装置が元の光学的状態に復帰するま
での時間が実質的に短縮できる。図2の装置ではホール
の有効質量が電子よりも大きいため、電子が量子井戸層
12cに脱出した後もホールが層12a中に滞留する傾
向があるが、本実施例ではホールを層12aにトンネリ
ングさせることなく除去することが可能である。
【0035】図6は第2実施例の効果を示す。
【0036】図6は入射光インパルスがt=0に入来し
た場合の応答特性を示し、電極16a,16bにバイア
ス電圧を印加しない場合は図示の時間範囲では元の光吸
収は完全には回復しないことがわかる。これに対し、約
40Vのバイアス電圧を印加した場合、元の光吸収が2
00p秒程度の時間で回復するのがわかる。
【0037】図7は本発明の第3の実施例を示す。本実
施例では電極16aと16bの間隔が実質的に10μm
よりも狭く設定される。その結果積層構造体12のうち
入射光によって照射される範囲が狭まり、回復時間がさ
らに短縮される。
【0038】図8は本発明の第4実施例を示す。本実施
例では、信号光や制御光等の入射光が照射する範囲はス
リット18aを有するマスク18により規定される。図
示の例ではスリット18aは幅Dとして例えば1μmの
大きさを有する。これに対し、電極16aと電極16b
の距離は図4の例と同じく10μmに設定される。本実
施例では電極16aと電極16bの距離が比較的大きく
設定されるため、一様な電界を発生させることができ、
しかもマスク18を使うことで照射範囲を減少させるこ
とが可能になる。
【0039】図9は図8の装置の応答特性を電極16a
および16b間にバイアス電圧を印加しない場合と40
Vのバイアス電圧を印加した場合について示す。この図
よりわかるように、40Vのバイアス電圧を印加してお
くと元の光学的状態に20p秒程度の時間で復帰させる
ことができる。
【0040】図10は本発明の第5実施例を示す。本実
施例ではマスク18が照射面積をさらにせばめるように
形成される。図示の例ではスリット18aの幅Dが光の
波長以下、例えば光の波長が0.8μmである場合0.
1μm以下に設定される。光ビームをこのような狭いス
リットを通過させるため、本実施例では入射光の偏光面
をスリットの延在方向に一致させる偏光子19が設けら
れている。
【0041】図11は本実施例装置の応答特性を示し、
電極16a,16b間に40Vのバイアス電圧を印加す
ることで回復時間を5p秒程度に短縮できることがわか
る。
【0042】次に、本発明の第6の実施例を図12を参
照しながら説明する。
【0043】図12を参照するに、本実施例による非線
形光学装置は量子井戸層22aおよびバリア層22bを
交互に積層した積層構造体22を使用する。換言すれ
ば、積層構造体22はMQW構造を形成する。典型的な
例では層22aは2.8nmの厚さを有する非ドープG
aAsより形成され、一方層22bは厚さ7.0nmの
AlAsにより形成される。一対の層22bはその間の
層22aに対応してポテンシャル井戸を形成し、入射光
の波長に対応したエネルギーギャップEgap1に対応した
電子の量子準位E1 とホールの量子準位H1 とが層22
a中に形成される。
【0044】バリア層22bにAlAsを使うことによ
り、層22bの伝導帯のXのエネルギーを量子準位E1
よりも低く形成でき、その結果光励起された電子は層2
2bに自由に脱出することが可能になる。これに対し、
層22bのΓ点に対応する伝導帯は層22aの伝導帯下
端よりもはるかに高いエネルギーを有し、従って層22
bはバリア層として作用する。また、図12の装置は図
1のものに比べバリア層12bを欠いているぶんだけ動
作が速くなる。
【0045】本実施例においても、積層構造体22上に
電極が形成され、図12の右側に示したように電場が構
造体22中に誘起される。このようにして誘起された電
場はバンドを傾斜させ、電子,ホールは傾斜したバンド
にそって層22a,22bから除去される。
【0046】図13は前記第6の実施例による非線形光
半導体装置の構造を示す。
【0047】図13を参照するに、本実施例による装置
は開口部20bを形成されたGaAs基板20を有し、
基板20上には積層構造体22が形成される。また、積
層構造体22の上主面上には、開口部20bに対応した
入射光により照射される領域を間に、相互に対向する電
極24a,24bが形成される。電極24a,24bに
バイアス電圧を印加することにより、図12に示した電
場が誘起され、積層構造体22からのキャリアの除去が
効率的に行われる。
【0048】ここで、電極24a,24bは例えばショ
ットキー電極を構成する。この場合は積層構造体22の
上主面上にAlが堆積され次いで適宜パターニングされ
て電極24a,24bが形成される。あるいは、積層構
造体22に電極24a,24bに対応してn+ 型のコン
タクト領域およびn-型のコンタクト領域を形成し、電
極24a,24bを積層構造体22にオーミック接触さ
せてもよい。例えば、n+ 型のコンタクト領域に接触す
る電極24aをAuGe/Au構造とし、またp+ 型コ
ンタクト領域に接触する電極24bをAu/Zn/Au
構造としてもよい。n+ 型コンタクト領域は例えばSi
のイオン注入によって形成できるのに対し、p+ 型コン
タクト領域はZnのイオン注入によって形成できる。
【0049】先にも説明したように、本実施例による光
半導体装置はトンネリングバリア層を省略したことで、
元の光学的状態を回復する時間が大幅に短縮される。
【0050】図14は本発明の第7の実施例による非線
形光共振器ないしエタロンを示す。
【0051】図14を参照するに、本実施例による装置
は一対の半透明ミラー31a,31bを有し、その間に
先の実施例で説明したTBQ構造を有する積層構造体3
2が配設されてなる。ここで、積層構造体32は例えば
積層構造体12と同一のものである。ミラー32a,3
2bは主面が入射光に対して直交するように配置され、
ミラー32a,32bの間の距離は入射光の半波長の整
数倍近傍に設定される。また、積層構造体32内におい
て、各半導体層の主面はミラー32a,32bの主面に
平行に設定される。さらに、図14に示すように、制御
光ビームが入射光に対して斜めに照射される。
【0052】図15は図14の装置の反射スペクトルを
示す。このスペクトルは制御光が照射されない場合につ
いてのものである。図15よりわかるように、波長77
0nmのところにエタロンの鋭い共振ピークがみられ
る。この共振点においてエタロンの反射率は最低にな
る。また、励起子に起因するブロードなピークが短波長
側、例えば744nmにみられる。
【0053】制御光を照射するとエタロンの共振ピーク
は短波長側に変移し、例えば共振点が点Aで示した波長
767nmのところに移る。その結果、点Aにおいてエ
タロンの反射率は図16のカーブAで示すように鋭く落
ち込む。一方、点Bで示す波長773nmでは反射率は
鋭く立ち上がり、これを図16にカーブBで示す。
【0054】積層構造体32を積層構造体12あるいは
22と同様に構成することにより、第二の量子井戸層1
2cによる光吸収を除去することが可能となり、本発明
のエタロンは大きな反射率変化を示す。勿論、制御光を
遮断すると、反射率は図16に示したように短時間で元
の値に戻る。また、先の実施例で説明した電極を設ける
ことにより、元の光学状態への復帰は一層速くなる。
【0055】図17は本発明の第8の実施例による光双
安定レーザを示す。この光双安定レーザでは光双安定レ
ーザを特徴づける可飽和吸収層として前記の積層構造体
12あるいは22が使われる。
【0056】図17を参照するに、本実施例の装置はn
型AlGaAsコンタクト層42の上主面上に形成され
たp型AlGaAsよりなる活性層41を含み、活性層
41上には別のp型AlGaAsコンタクト層43が形
成される。活性層41は通常の場合と同じく電子とホー
ルを注入されて誘導放出により光ビームを形成する。さ
らに、コンタクト層43の上主面上には第一のミラー4
4aが形成される。また、コンタクト層43の上主面上
にはミラー44aを囲むように第一の電極43aが形成
される。同様に、コンタクト層42の上主面上には活性
層41を囲むように第二の電極43bが形成される。こ
の構成により、電子とホールが電極43a,43bから
コンタクト層42,43を介して活性層41に注入され
る。さらに、コンタクト層42の下側には可飽和吸収層
45が図示したように形成され、可飽和吸収層45の下
主面上には第二のミラー44bが形成される。その結
果、ミラー44a,44bは所定の距離離れて対向する
ように配置される。可飽和吸収層45は積層構造体12
あるいは22と同一の構成を有し、層45の下面に斜め
に照射される制御光ビームにより光吸収係数を変化させ
る。ここで、可飽和吸収層45は活性層41中に形成さ
れる光放射の波長に同調するように形成される。より具
体的には、層12aのエネルギーギャップEgap1を活性
層41で形成される光放射の波長に略等しくなるように
形成する。
【0057】図17の装置の動作時には、レーザは可飽
和吸収層45で光吸収がなければレーザ発振が生じるよ
うなレベルに設定されたバイアス電流で駆動される。こ
の場合、可飽和吸収層45において吸収が生じるため自
発的なレーザ発振は生じない。次に、強力な制御光を可
飽和吸収層45に照射すると、層45における光吸収が
減少し、層45は実質的に透明に変化する。その結果、
レーザ発振が開始される。レーザ発振が開始されると可
飽和吸収層45はレーザ発振により生じた光により透明
状態に維持され、制御光を遮断するとレーザ発振は停止
する。
【0058】次に、本発明の第9の実施例を積層構造体
50のバンド構造を示す図18を参照しながら説明す
る。本実施例による積層構造体50は積層構造体12と
同様なTBQ構造を有するが、積層構造体50では第一
の量子井戸層12aに対応する層におけるホールの滞留
の問題を電場を誘起することなく解決している。
【0059】図18を参照するに、積層構造体50は厚
さ40ÅのInGaP量子井戸層51を含み、組成をI
x Ga1-x Pとあらわした場合、組成パラメータxは
0.48に設定される。層51は各々組成パラメータx
を0.7として組成In0.5 (Ga1-x Alx 0.5
を有する一対のバリア層52により挟まれ、各バリア層
52の厚さは20Åに設定される。さらに、バリア層5
2の外側にはGaSbPよりなる第二の量子井戸層53
が厚さ50Åで形成される。量子井戸層53の組成はG
aSb1-x x であらわした場合xの値が0.69に設
定される。層51〜53は繰り返し例えば約100周期
積層される。ここで、繰り返しの単位は53/52/5
1/52となる。
【0060】図18のバンド構造図を参照するに、伝導
帯EcのΓ点を実線で、またX点を破線で示す。一方価
電子帯Evのバンド端は実線で示してある。このバンド
構造図よりわかるように、量子井戸層51は直接遷移型
であり、バリア層52は層51に対応して深さが約19
0meVのポテンシャル井戸を形成する。この量子井戸
層中には電子の量子準位E1 が伝導帯下端から測って7
3.1meVのところに形成される。また、量子準位E
1 に対応して層51中にはホールの量子準位H 1 が価電
子帯の上端から測って22.1meVのところに形成さ
れる。このように形成された量子準位E1 ,H1 は約2
eVのエネルギーを有する光ビームと相互作用をする。
【0061】これに対し、量子井戸層53は間接遷移型
のバンド構造を有し、電子の量子準位E2 がX点の下端
から約9.7emVだけ高いところに形成される。ここ
で、量子準位E2 は量子準位E1 よりも実質的に低いエ
ネルギーレベルに形成され、量子井戸層51中で光励起
された電子はバリア層52を通って層53に逃げること
が可能である。また、先の実施例と同じく、量子井戸層
53による吸収は生じない。これは、層53においてΓ
点のバンドギャップが層51の量子準位間エネルギーよ
りも大きいからである。
【0062】本実施例の特徴は、量子井戸層53におい
てホールの量子準位H2 が層51の量子準位H1 よりも
低い位置に形成される点にある。このため、層51中に
おいて光励起により形成されたホールはバリア層52を
トンネリングして層53の量子準位H2 に落ちる。換言
すれば、ホールは量子井戸層51から速やかに除去さ
れ、層51にホールが滞留することはない。このため、
電気的なバイアスを使うことなく元の光学的状態を速や
かに回復させることができる。図18のバンド構造は層
51と層53がΓバンドについていわゆるスタッガード
型ヘテロ接合を形成することを特徴とする。
【0063】図19は本実施例による非線形光半導体装
置の応答特性を示す。本実施例の装置は、図2に示した
のと同様なGaAs基板10上に前記積層構造体50を
形成し、さらに入射光を導入するためにGaAs基板1
0に開口部10aを形成してある。このような開口部1
0aは例えばアンモニア系のエッチャントを使ったウエ
ットエッチングにより容易に形成できる。この場合、
(100)面に対応するGaAs基板10の上主面上に
AlAsのエッチングストッパー層(図示せず)を例え
ば約200Åの厚さに形成しておくとよい。積層構造体
50はかかるエッチングストッパー層上にMOCVDあ
るいはMBE法により形成すればよい。また、積層構造
体50の上主面およびAlAs層下面の露出部はSiO
2 保護膜により保護される。
【0064】図19より明らかなように、本実施例の装
置は200p秒程度の時間で元の光学的状態を回復する
ことができる。これは、図6,図9,図11の各図にお
いてバイアス電圧を印加しない実施例と比較するとその
効果があきらかである。
【0065】図20は本発明の第10の実施例による非
線形光半導体装置に使う積層構造体60のバンド構造を
示す。本実施例では第二の量子井戸層に二種類の材料を
使用している。
【0066】より具体的に説明すると、積層構造体60
は先の実施例の層51と同一の組成および厚さの第一の
量子井戸層61と、やはり先の実施例の層52と同一の
組成および厚さのバリア層62をゆうし、一対の層62
が層61を挟む構成となっている。さらに、片方のバリ
ア層62に接して層53と同一の厚さおよび組成の第二
の量子井戸層63が形成され、さらに、他方のバリア層
62に接してAlAsよりなる別の量子井戸層63’が
形成される。
【0067】図20に示したバンド構造において、Al
As層63’にはホールの量子準位は形成されない。こ
のため、量子井戸層61において生成したホールは量子
井戸層63’に脱出することはないが量子井戸層63に
脱出することができる。勿論、電子は量子井戸層63,
63’の両方に脱出することができる。
【0068】さらに、本発明は上記の実施例に限定され
るものではなく、本発明の要旨内において様々な変形、
変更が可能である。
【0069】
【発明の効果】本発明によれば、第二の量子井戸層を、
伝導帯中のΓ点が第一の量子井戸層中の電子の量子準位
よりも実質的に高いエネルギに形成される一方伝導帯中
のX点が前記量子準位よりも実質的に低いエネルギに形
成され、さらに前記量子準位よりも低いエネルギの位置
に電子のための第三の量子準位が形成されるように形成
することにより、第二の量子井戸層による光ビームの吸
収を抑止でき、非線形光半導体装置のSN比が大きく向
上する。第二の量子井戸層においては、価電子帯から伝
導帯のΓ点への電子の光励起は、入射光の光エネルギー
よりもはるかに大きいエネルギーを要するため生じな
い。一方、伝導帯のX点およびこれに付随する第三の量
子準位は第一の量子井戸層中の第一の量子準位よりもエ
ネルギー的に低い位置にあるため、第一の量子井戸層中
に光励起により形成された電子は速やかに第二の量子井
戸層に脱出することが可能になり、非線形光半導体装置
は速やかに元の状態に復帰する。その際、第二の量子井
戸層の価電子帯から第三の量子準位への遷移は間接遷移
過程によりなされるため、実質的には生じない。このた
め、この過程により入射光が吸収されることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を示すバンド構造図である。
【図2】本発明の第1の実施例により光半導体装置を示
す断面図である。
【図3】(A),(B)は図1の光半導体装置の光吸収
スペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明の第二の実施例による光半導体装置を示
す断面図である。
【図5】図4の光半導体装置のバンド構造を示す図であ
る。
【図6】図4の光半導体装置の光吸収率の変化を示すグ
ラフである。
【図7】本発明の第3の実施例による光半導体装置を示
す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施例による光半導体装置を示
す断面図である。
【図9】図8の光半導体装置の光吸収率の変化を示すグ
ラフである。
【図10】本発明の第5の実施例による光半導体装置を
示す断面図である。
【図11】図10の光半導体装置の光吸収率の変化を示
すグラフである。
【図12】本発明の第6の実施例による光半導体装置の
動作を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図13】本発明の第6の実施例による光半導体装置を
示す断面図である。
【図14】本発明の第7の実施例を示す図である。
【図15】図14の装置の反射スペクトルを示す図であ
る。
【図16】図14の装置の応答特性を示す図である。
【図17】本発明の第8の実施例による双安定レーザを
示す図である。
【図18】本発明の第9の実施例を示す図である。
【図19】図18の装置の応答特性を示す図である。
【図20】本発明の第10の実施例を示す図である。
【図21】従来のTBQのバンド構造を示す図である。
【図22】(A),(B)はGaAs,AlAsのバン
ド構造を示す図である。
【符号の説明】
10,20 基板 10a,20a 基板開口部 12,14,22,32,45,50,60 積層構造
体 12a,14a,22a,51,61 第一の量子井戸
層 12b,14b,52,62 バリア層 12c,14c,22b,53,63,63’ 第二の
量子井戸層 16a,16b,24a,24b 電極 31a,31b ミラー 41 活性層 42,43 電極コンタクト層 42a,43a 電極 44a,44b ミラー E1 ,E2 電子の量子準位 H1 ,H2 ホールの量子準位 Ec 伝導帯 Ev 価電子帯 X X点 Γ Γ点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉山 芳弘 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−184083(JP,A) Appl.Phys.Lett.Vo l.57,No.15,p.p.1520−1522 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/355 501 H01S 5/10 EPAT(QUESTEL) JICSTファイル(JOIS)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入射光の波長に対応するエネルギーギャ
    ップ(E gap1 )だけ相互に隔てられて形成された電子の
    ための第一の量子準位(E 1 )とホールのための第二の
    量子準位(H 1 )とを有する第一の量子井戸層(12
    a)と、前記第一の量子井戸層の上下にキャリアのトン
    ネリングを許容するような厚さで形成され、前記第一の
    量子井戸層に対応してポテンシャル井戸を形成するバリ
    ア層(12 b)と、前記バリア層に接して形成され、
    前記第一の量子井戸層中において前記入射光による励起
    により生成し、前記バリア層(12b)をトンネリング
    したキャリアを吸収する第二の量子井戸層(12c)と
    を備え、入射光の照射に応じて光学的な状態を変化させ
    る非線形光半導体装置において、 前記第二の量子井戸層は伝導帯中にX点とΓ点とを含
    み、前記Γ点は前記第一の量子準位よりも実質的に高い
    エネルギを有し、一方前記X点は前記第一の量子準位よ
    りも実質的に低いエネルギを有し、前記第二の量子井戸
    層は前記X点に対応して前記第一の量子準位よりも低い
    エネルギの位置に電子のための第三の量子準位を有する
    ことを特徴とする非線形光半導体装置。
  2. 【請求項2】 前記第一の量子井戸層(12a)は直接
    遷移型のバンド構造を有する半導体材料より形成される
    ことを特徴とする請求項1記載の非線形光半導体装置。
  3. 【請求項3】 前記第二の量子井戸層(12c)は間接
    遷移型のバンド構造を有する半導体材料より形成される
    ことを特徴とする請求項1記載の非線形光半導体装置。
  4. 【請求項4】 前記第一の量子井戸層(12a)はGa
    Asよりなり、前記バリア層はAlGaAsよりなり、
    さらに前記第二の量子井戸層(12c)はAlAsより
    なることを特徴とする請求項1記載の非線形光半導体装
    置。
  5. 【請求項5】 前記第一の量子井戸層(12a),第二
    の量子井戸層(12c),及びバリア層(12b)はい
    ずれもAlGaAsよりなり、第一の量子井戸層(12
    a)は組成をAl x Ga 1-x Asとあらわした場合にお
    ける組成パラメータxが0≦x≦0.45の範囲にあ
    り、前記バリア層(12b)は組成をAl y Ga 1-y
    sとあらわした場合における組成パラメータyがx<y
    の範囲に あり、前記第二の量子井戸層(12c)は組成
    をAl z Ga 1-z Asとあらわした場合における組成パ
    ラメータzがy<z≦1の範囲にあることを特徴とする
    請求項1記載の非線形光半導体装置。
  6. 【請求項6】 前記第二の量子井戸層(12c)は前記
    第二の量子準位よりも低いエネルギの位置にホールのた
    めの第三の量子準位を有することを特徴とする請求項1
    記載の非線形光半導体装置。
  7. 【請求項7】 前記第一の量子井戸層(12a)はIn
    0.48 Ga 0.52 Asよりなり、前記バリア層(12b)は
    In 0.5 (Ga 1-x Al x 0.5 Pよりなり、さらに前
    記第二の量子井戸層(12c)はGaSb 0.31 0.69
    りなることを特徴とする請求項6記載の非線形光半導体
    装置。
  8. 【請求項8】 前記第一の量子井戸層(12a),バリ
    ア層(12b)および第二の量子井戸層(12c)は相
    互に積層されて積層構造体(12)を形成し、前記積層
    構造体上には層の延在方向に平行に電場を印加する電極
    手段が形成され、前記電場によって第一および第二の量
    子井戸層中に励起された電子およびホールを除去するこ
    とを特徴とする請求項1記載の非線形光半導体装置。
  9. 【請求項9】 前記第一の量子井戸層(12a),バリ
    ア層(12b)および第二の量子井戸層(12c)は相
    互に積層されて積層構造体(12)を形成し、前記積層
    構造体は光遮断マスク(18)により被覆され、前記マ
    スクには入射光を導入するための開口部(18a)が形
    成され、その際前記開口部の大きさ(D)を入射光の波
    長以下に設定することを特徴とする請求項1記載の非線
    形光半導体装置。
  10. 【請求項10】 信号光ビームの半波長の整数倍程度の
    距離だけ離間して相互に対向するように配設された第一
    および第二の半透明ミラー(31a,31b)と、前記
    第一および第二の半透明ミラーの間に配設された積層構
    造体(32)とよりなり、信号光ビームを供給されて共
    振を生じる光共振器において、 前記積層構造体は信号光の波長に略対応するエネルギー
    ギャップ(E gap1 )だけ相互に隔てられて形成された電
    子のための第一の量子準位(E 1 )とホールのための第
    二の量子準位(H 1 )とを有する第一の量子井戸層(1
    2a)と、前記第一の量子井戸層の上下にキャリアのト
    ンネリングを許容するような厚さで形成 され、前記第一
    の量子井戸層に対応してポテンシャル井戸を形成するバ
    リア層(12b)と、前記バリア層に接して形成され、
    前記第一の量子井戸層中において制御光による励起によ
    り生成し、前記バリア層(12b)をトンネリングした
    キャリアを吸収する第二の量子井戸層(12c)とを備
    え、前記第二の量子井戸層は伝導帯中にX点とΓ点とを
    含み、前記Γ点は前記第一の量子準位よりも実質的に高
    いエネルギを有し、一方前記X点は前記第一の量子準位
    よりも実質的に低いエネルギを有し、前記第二の量子井
    戸層は前記X点に対応して前記第一の量子準位よりも低
    いエネルギの位置に電子のための第三の量子準位を有す
    ることを特徴とする光共振器。
  11. 【請求項11】 所定の距離離間して対向する第一およ
    び第二のミラー(44a,44b)より構成される光共
    振器と、前記第一および第二のミラーの間に配設され、
    電子およびホールを注入されて誘導放出により光ビーム
    を形成する活性層(41)と、前記第二のミラーと前記
    活性層の間に形成され、供給される光放射に応じて透過
    率を変化させる可飽和吸収領域(45)とよりなる光双
    安定レーザダイオードにおいて、 前記可飽和吸収領域は光放射の波長に略対応するエネル
    ギーギャップ(E gap1 )だけ相互に隔てられて形成さ
    れた電子のための第一の量子準位(E 1 )とホールのた
    めの第二の量子準位(H 1 )とを有する第一の量子井戸
    層(12a)と、前記第一の量子井戸層の上下にキャリ
    アのトンネリングを許容するような厚さで形成され、前
    記第一の量子井戸層に対応してポテンシャル井戸を形成
    するバリア層(12b)と、前記バリア層に接して形成
    され、前記第一の量子井戸層中において前記光放射によ
    る励起により生成し、前記バリア層(12b)をトンネ
    リングしたキャリアを吸収する第二の量子井戸層(12
    c)とを備え、前記第二の量子井戸層は伝導帯中にX点
    とΓ点とを含み、前記Γ点は前記第一の量子準位よりも
    実質的に高いエネルギを有し、一方前記X点は前記第一
    の量子準位よりも実質的に低いエネルギを有し、前記第
    二の量子井戸層は前記X点に対応して前記第一の量子準
    位よりも低いエネルギの位置に電子のための第三の量子
    準位を有することを特徴とする光双安定レーザダイオー
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