JP3127761B2 - 溶銑脱りん用上吹酸素ランス - Google Patents

溶銑脱りん用上吹酸素ランス

Info

Publication number
JP3127761B2
JP3127761B2 JP07034788A JP3478895A JP3127761B2 JP 3127761 B2 JP3127761 B2 JP 3127761B2 JP 07034788 A JP07034788 A JP 07034788A JP 3478895 A JP3478895 A JP 3478895A JP 3127761 B2 JP3127761 B2 JP 3127761B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oxygen
oxygen jet
nozzle
angle
hot metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP07034788A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08225818A (ja
Inventor
政樹 宮田
信 深川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP07034788A priority Critical patent/JP3127761B2/ja
Publication of JPH08225818A publication Critical patent/JPH08225818A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3127761B2 publication Critical patent/JP3127761B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、上吹ランスからの酸素
ジェット中心軸の軌道を推定する式(1) を用いて、脱り
ん用媒溶剤および脱りんスラグ利材化のコスト、脱りん
処理時の脱炭量、耐火物溶損量をいずれも低減して、効
率よく溶銑を脱りん処理するための上吹酸素ランスに関
する。
【0002】
【従来の技術】高炉で製造された溶銑には不純物として
多量のりんが含まれているので、製造工程において効率
のよい脱りん処理を行い、鋼材の機械的性質を改善する
ことが強く求められている。
【0003】通常、この脱りん処理は脱炭処理と共に転
炉等の酸化精錬中に生石灰系の造滓剤を用いて行われる
他、最近では転炉における脱炭精錬に先立つ溶銑の予備
処理で硫黄と同様、りんも除去する技術が実用化されて
きている。具体的には、トーピードカー、取鍋または転
炉で溶銑中に生石灰、CaF2、Na2CO3等を添加して撹拌
(インジェクション等)する方法がとられてきた。特
に、低りん鋼溶製の際は、スラグ塩基度を2以上とし、
滓化促進のためCaF2を添加したフラックスを用いるのが
一般的であった。しかし、生石灰、CaF2、Na2CO3等は比
較的高価であり、コスト面から媒溶剤使用量の更なる節
減が望まれている。
【0004】そこで、CaF2を用いずに滓化を確保して溶
銑の脱りん処理を効率よく行う方法として、次のような
方法が提案されている。
【0005】CaO-SiO2-Fe t O 系フラックス〔CaO/SiO2
>0.5 、処理中(%Fet O)は鉄鉱石または上吹き酸素で調
整〕を用いるもの(特公昭55-30042号公報)、CaO-Al2O
3-Fet O 系フラックス〔CaO:Al2O3 =2.5〜20:1、(%Fet
O)= 25〜65、(%Fet O)は鉄鉱石で調整〕を用いるもの
(特開昭62-207810 号公報)、およびCaO-SiO2-Fe t O
系フラックス〔CaO/SiO2>2.0 、(T.Fe)>50重量%、(%
Fet O)は鉄鉱石で調整〕を用いるもの(特開平2-11712
号公報)などである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】通常、低りん鋼溶製の
際は、スラグの塩基度(CaO/SiO2)を2以上とし、滓化促
進のためCaF2を添加したフラックスを用いて脱りん処理
を施すのが一般的であった。しかし、媒溶剤使用量を更
に低減するためには、CaF2使用量をミニマムにし、かつ
低い塩基度(CaO/SiO2)で脱りんする必要がある。
【0007】スラグ塩基度を2以下にすれば、滓化不良
やスラグが凝固する際の3CaO・SiO2→2CaO・SiO2+ f−
CaO (f−CaO :遊離石灰)反応により生じる遊離石灰が
スラグ中にほとんど存在しないため、エージング処理を
省略しても処理後スラグを路盤材として利用できる可能
性がある。
【0008】前記の特開昭62-207810 号公報および特開
平2-11712 号公報に示される方法では、脱りん処理中に
スラグ中の(%Fet O)は低下して行くので、脱りんを効率
よく行うために処理末期まで或る値以上の高(%T.Fe) を
維持するように、初期に多量の酸化鉄(鉄鉱石等)を添
加する。しかしこの方法では、酸化鉄を多量に添加する
ため、添加後溶銑温度が急激に低下してしまい、フラッ
クスの滓化が遅れ、その結果脱りん効率が低下する可能
性がある。
【0009】特公昭55-30042号公報の方法では、酸化鉄
および上吹酸素により脱りん処理中高(%Fet O)を維持す
るとしているが、上吹き酸素による高(%Fet O)維持の具
体的な方法については言及されていない。さらに、上吹
酸素ジェットの軌道を考慮せず、ただ必要量の酸素を上
吹きするだけでは、以下の(イ)および(ロ)のような
問題が生じる。
【0010】(イ)酸素を溶鉄に勢いよく吹き付ける
(ハードブローを行う)と、脱炭が必要以上に進行して
しまう。その結果、酸素とスラグ中に存在する粒鉄(底
吹きガスにより懸濁している粒鉄)との反応が減少し、
高(%Fet O)が維持できない。さらに、脱炭反応熱により
溶銑の温度が脱りん処理に最適な温度以上に上昇し、脱
りん効率が低下してしまう可能性がある。
【0011】(ロ)ノズル径、ノズル角度を大きくして
酸素の溶銑への衝突を和らげる(ソフトブローを行う)
等により、必要以上に脱炭を抑制させた場合、上吹酸素
ジェットのスラグ中への侵入深さが減少するため、上吹
酸素とスラグ中粒鉄との反応による(FeO) が生成し難く
なり、スラグ中(%Fet O)は増加しない可能性がある。ま
た、上吹酸素ジェットが炉壁に衝突してしまい、耐火物
溶損量が増加する可能性がある。
【0012】本発明の目的は、フラックスコストが低
く、かつ溶銑脱りん処理後スラグを低コストで路盤材等
へ利用できる、低(%CaF2) 、低CaO/SiO2、高(%Fet O)の
スラグによる脱りん法において用いる上吹酸素ランスで
あって、脱りん処理時スラグ中(%Fet O)を上吹酸素によ
り高値に維持し、かつ上吹酸素による脱炭量、耐火物溶
損量を制御して、効率よく脱りん処理を施すことができ
る上吹酸素ランスを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は次の溶銑脱りん
用上吹酸素ランスを要旨とする。
【0014】上底吹転炉において、CaO およびFet O を
主成分とするフラックスを添加し、上吹き酸素により高
(%T.Fe) を維持しつつ溶銑の脱りんを行う際に用いる上
吹酸素ランスであって、下記式 (1)〜(3) の条件を満た
す構造を有することを特徴とする溶銑脱りん用上吹酸素
ランス。
【0015】
【数2】
【0016】 α≦θ0 ≦β・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) γ≦d0≦δ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) 但し、 d=2S・tan(θc/2)・・・・・・・・・・・・・・・・・(a) S=∫{(dX)2 +(dY)21/2 ・・・・・・・・・・・・(b) X :酸素ジェット中心軸の水平方向変位(mm) Y :酸素ジェット中心軸の鉛直方向変位(mm) S :酸素ジェット中心軸の進行方向の移動距離(mm) θc :酸素ジェットの広がり角度( 20°) θ0 :ノズル角度(鉛直軸からの角度)(°) H :S での酸素ジェット中酸素ガスのホールドアップ(
− ) d :S での酸素ジェット径(mm) d0:ノズル径(mm) U0:ノズル出口での酸素ガス流速(mm/s) ρs :溶融スラグの密度( g/cm3 ) ρg :ノズル出口での酸素ガス密度( g/cm3 ) ρg ' :酸素ガス圧力を1atm (すなわち、酸素ジェッ
ト中では酸素ガス密度は一定)と仮定した時の酸素ジェ
ット中酸素ガス密度( g/cm3 ) g :重力加速度( m/s2 ) α:酸素ジェット中心軸の軌道が溶銑表面に接する時の
ノズル角度( °) β:酸素ジェットがランス−溶銑表面間距離の半分に達
する時の角度と酸素ジェットが炉壁に直接当たる時の角
度とのうち小さい方の角度(°) γ:酸素ジェット中心軸の軌道が溶銑表面に接する時の
ノズル径(mm) δ:酸素ジェットがランス−溶銑表面間距離の半分に達
する時のノズル径(mm) 初期条件: X=d0・cos θ0/{2tan(θc/2)}の時、 Y=−d0・sin θ0 / {2tan(θc/2)}・・(c) dY/dX=−tan θ0 ・・・・・・・・・・・(d) 上記でいう酸素ジェットは、一つのノズル出口から噴出
する酸素ジェット単体を意味する。
【0017】上記の酸素ジェットの広がり角度θc は、
20°で一定である(N.J.Themelis:Trans.Met.Soc.,AI
ME,245 ,1969,P.2425 参照)。
【0018】上記の酸素ジェット中酸素ガスのホールド
アップ Hとは、酸素ジェットが酸素ガスとスラグとの混
相流となっている状態において、酸素ジェット中の酸素
ガスが占める体積の割合を意味する。
【0019】
【作用】本発明は、従来の溶銑脱りん方法における問題
点、すなわち、高価なCaF2や生石灰等の媒溶剤の多量使
用、処理後スラグを路盤材等に利材化するためのエージ
ング処理コスト増大を解決することを目的に、CaF2を使
用せずに生石灰使用量を節減〔低塩基度(CaO/SiO2)化〕
し、高(%Fet O)を維持して効率よく溶銑の脱りん処理を
行い、しかも処理時の脱炭量、耐火物溶損量を抑制する
ことができる上吹酸素ランスのノズル構造を明確化する
ものである。
【0020】以下、図1〜図12に基づいて本発明ランス
の作用を効果とともに詳述する。
【0021】図1は、上底吹転炉内の上吹酸素ジェット
単体の軌道を模式的に示す図であり、この上吹き酸素ラ
ンスのノズルはストレート形状の複数孔構造を有するも
のである。図2は、ノズル出口での酸素ジェット単体の
挙動を模式的に説明する図である。図2中A点の座標が
(0,0)、B点がノズル出口であり、その座標が下記
である。
【0022】 ( d0・cos θ0/{2tan(θc/2)},−d0・sin θ0 / {2tan(θc/2)}) 図1および図2において、X 方向が水平方向、Y 方向が
垂直方向、一点鎖線が酸素ジェット中心軸の軌道であ
る。図示する記号は、前述のように定義されている。
【0023】図2に示すように、ノズルから噴出した酸
素ジェットは角度θc (=20℃)で広がり、ジェットは
水平方向には運動量を保存しながら進行し、垂直方向に
は運動量変化が浮力と釣り合うまで進行し、図1に示す
ように、その後は浮力により上昇してゆく。
【0024】後述する図7および図12に示すように、こ
のときノズル径d0を変えることにより酸素ジェット中心
軸の軌道を変えることができる。すなわち、ノズル角度
θが小さいほど、酸素ジェットの垂直方向の運動量が
増加するため垂直方向の到達距離が増加し、逆にその
際、水平方向の運動量は小さくなるので水平方向の到達
距離が減少する。
【0025】ノズル出口での酸素ガス流速Uが音速以
下の場合には、ノズル径d0の増加にともない、この流速
U0が低下するため酸素ジェットの運動量が低下し、到達
距離は水平、垂直の両方向とも減少する。
【0026】溶銑脱りん時のスラグ中の上吹酸素ジェッ
トの挙動と処理時の状況(脱りん、脱炭、耐火物溶損挙
動)を種々検討した結果、酸素ジェット中心軸の軌道を
推定する前記式 (1)、および式(2) 、(3) によりノズル
径d0およびノズル角度θ0 を適正化することにより、低
りん鋼溶製に必要な処理後〔P〕0.01%以下を達成し、
かつ、脱炭量、耐火物溶損量の低減が可能であることが
判明した。
【0027】式(1) は、酸素ジェット単体の水平方向の
運動量は保存され、垂直方向の運動量の変化はジェット
内のガスに働く浮力に等しく、酸素ジェットはその両方
向の運動量を合成した運動量の方向に進むものとして、
酸素ジェット中心軸の軌道を推定計算することができる
式である。初期条件とは、図2中のB点で示すノズル出
口での酸素ジェット中心軸の進行方向を定める条件であ
る。
【0028】すなわち、式(1) および式 (a)〜(d) を用
いて計算した酸素ジェット中心軸の軌道から、下記1)、
2)の条件を満足するように式(2) および式(3) の条件で
ノズル径d0とノズル角度θ0 を適正化することにより、
処理時のスラグ中(%T.Fe) を高く維持し、その結果効率
よく脱りんを行うことができるという知見を得た。
【0029】1) 酸素ジェットがランス−溶銑表面間距
離の半分以上に達し、かつ、溶銑に直接当たらないこ
と。
【0030】2) 酸素ジェットが炉壁に直接当たらない
こと。
【0031】まず、ノズル角度θ0 の適正化についてノ
ズル角度θ0 と転炉炉体の形状とを変化させて行った実
験結果を、図3〜図6により説明する。
【0032】詳細は実施例で後述するが、2トン試験転
炉(炉体A:炉内径1090mm、一部実験は炉体B:炉内径
1290mm)とCaO およびFet O を主成分とするフラックス
を用い、さらに上吹ランス(外形90mm)から酸素を吹き
付けることにより溶銑脱りん処理を行い、酸素ランスの
ノズル角度θ0 の脱りん、脱炭および耐火物溶損に及ぼ
す影響について検討した。このときのノズル径d0は3.7m
m のストレート、ノズル孔数は4孔、酸素流量は1.0Nm3
/min、ランス高さは350mm とした。
【0033】図3は、溶銑2トンの脱りん処理時のスラ
グ中(%T.Fe) とノズル角度θ0 との関係を示す図であ
る。図示するようにノズル角度θ0 が25〜53°のとき、
処理時のスラグ中(%T.Fe) を高値に維持することができ
た。
【0034】図4は、処理後〔%P〕とノズル角度θ0
との関係を示す図である。図示するように高(%T.Fe) を
維持できたノズル角度θ0 が25〜53°の場合に目標
〔P〕≦0.01が達成できた。
【0035】図5は、耐火物溶損指数とノズル角度θ0
との関係を示す図である。ここで耐火物溶損指数は、ノ
ズル径8mmの単孔ランス(ノズル角度θ0 =0°)を用
いた(酸素ジェットが炉壁へ衝突していない)ときの耐
火物溶損量を1として指数化したものである。図示する
ように炉体Aの場合には、耐火物溶損指数はノズル角度
θ0 が30°以上で急激に増加している。一方、炉体Bの
場合、図3に示したように脱りん挙動は炉体A使用時と
一致するが、耐火物溶損指数は図5に示すとおりノズル
角度θ0 によらず、ほぼ1であった。
【0036】図6は、処理後〔%C〕とノズル角度θ0
との関係を示す図である。図示するようにノズル角度θ
0 が小さくなるほど、処理後〔%C〕は低下することが
わかる。
【0037】図7に、炉体Aおよび炉体Bの場合につい
てノズル角度θ0 を10°から65°まで適宜変化させ、式
(1) により酸素ジェット単体の中心軸の軌道を計算した
結果を示す。図7中、左上の0点が図2に示すA点であ
る。なお、吹錬中のスラグフォーミング高さを測定して
溶融スラグの密度ρs を計算した結果、0.15g/cm3 が得
られたので上記計算にはこの値を採用した。
【0038】図7および図3の結果から、酸素ジェット
中心軸の軌道が溶銑表面に接しないとき(ノズル角度θ
0 が25°以上)、スラグ中(%T.Fe) を高値に維持でき、
その結果、処理後〔%P〕も低くなったと考えられる。
ノズル角度θ0 が25°より小さい場合は酸素ジェットが
溶銑に直接当たるため、脱炭反応に酸素が消費されてFe
t O を充分に生成させることができず、スラグ中(%T.F
e) が低くなる。その結果、処理後〔%P〕も高くなっ
たと考えられる。ノズル角度θ0 が53°を超えると、酸
素ジェットがランス−溶銑表面間距離の半分に到達でき
ず、酸素ジェットとスラグ中粒鉄との反応が減少してス
ラグ中の(%T.Fe) が低くなり、処理後〔%P〕も高くな
ったのである。
【0039】ノズル角度θ0 が30°以上で、かつ炉体A
の場合には、酸素ジェットが直接炉壁に当たるため、図
5に示したように耐火物溶損指数が急激に増加したこと
が裏付けられる。しかし、炉体Bの場合、ノズル角度θ
0 によらず酸素ジェットが炉壁に直接当たらないため
に、図5に示したように耐火物溶損指数は、ノズル角度
θ0 に依存しなかったと考えられる。
【0040】このように、効率的に脱りん処理するため
には、ノズル角度θ0 に最適な範囲、すなわち、式(2)
で示す範囲(α≦θ0 ≦β)が存在することがわかる。
ここで、αは酸素ジェット中心軌道が溶銑表面に接する
時のノズル角度から求まり、βは酸素ジェットがランス
−溶銑表面間距離の半分に達するときの角度と酸素ジェ
ットが炉壁に直接当たるときの角度とのうち、小さい方
から求まり、炉体A使用時が後者、炉体B使用時が前者
に、それぞれ相当する。
【0041】次に、ノズル径d0の適正化について炉体A
の場合にノズル径d0を変化させて行った実験結果を、図
8〜図11により説明する。このときのノズル角度θ0
15°、その他の条件は前述の試験のとおりとした。
【0042】図8はスラグ中(%T.Fe) とノズル径d0との
関係を示す図、図9は処理後〔%P〕とノズル径d0との
関係を示す図である。図8および図9に示すように、ノ
ズル径d0が4.6mm より小さいと、スラグ中(%T.Fe) を高
値に維持できず、処理後〔P〕≦0.01%が確保できなか
った。しかし、ノズル径d0が4.6mm 以上8.8mm 以下では
高(%T.Fe) が維持でき、処理後〔P〕≦0.01%を確保す
ることができた。ノズル径d0が8.8mm を超えると高(%T.
Fe) が維持できず、処理後〔%P〕が高くなった。
【0043】図10は、耐火物溶損指数とノズル径d0との
関係を示す図である。図示するように耐火物溶損指数は
ノズル径d0によらず、ほぼ1となった。
【0044】図11は、処理後〔%C〕とノズル径d0との
関係を示す図である。図示するようにノズル径d0の増大
に伴い、処理後〔%C〕は増加した。
【0045】図12に、ノズル径d0を適宜変化させ、ノズ
ル角度θ0 を15°、スラグ密度ρsを0.15g/cm3 として
式(1) により酸素ジェット中心軸の軌道を計算した結果
を示す。図示するようにノズル径d0が4.6mm より小さい
と酸素ジェットが溶銑表面に直接当たるため、脱炭反応
に酸素が消費されてFet O を充分に生成させることがで
きず、スラグ中(%T.Fe) が低くなる。その結果、図9に
示したように処理後〔%P〕も高くなった。ノズル径d0
が8.8mm を超えると、酸素ジェットがランス−溶銑表面
間距離の半分に到達できず、酸素ジェットとスラグ中粒
鉄の反応が減少してスラグ中(%T.Fe) が低くなり、処理
後〔%P〕も高くなったと考えられる。
【0046】この場合、酸素ジェットはノズル径d0によ
らず炉壁に直接当たらないので、図10に示したように、
耐火物溶損指数はノズル径d0によらず、ほぼ1となった
のである。
【0047】このように、効率的に脱りん処理するため
には、ノズル径d0に最適な範囲、すなわち、式(3) で示
す範囲(γ≦d0≦δ)が存在することがわかる。γは酸
素ジェットの中心軌道が溶鉄表面に接する時のノズル径
から、δは酸素ジェットがランス−溶銑表面間距離の半
分に達するときのノズル径から、それぞれ求まる。
【0048】以上のように、式(1) で酸素ジェット中心
軸の軌道を計算し、酸素ジェットがランス−溶銑表面間
距離の半分以上に達し、かつ、溶銑に直接当たらず、し
かも、炉壁に直接当たらないように、下記式(2) および
(3) を満足させてノズル角度θ0 とノズル径d0を適正化
することにより、処理時の(%T.Fe) を高く維持でき、そ
の結果、効率良く脱りん処理が行え、しかも処理中の脱
炭量と耐火物溶損量を抑制することができる。
【0049】 α≦θ0 ≦β・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) γ≦d0≦δ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) 上記の作用効果は、孔数が2以上の外向きストレートノ
ズルの場合であれば、特にノズル孔数にはよらないが、
孔数が多いほど酸素ジェットとスラグとの接触面積が増
えるため、処理時の高(%T.Fe) が効率よく維持できる。
しかし、逆に孔数が多すぎると1孔あたりの酸素流量が
低下し、酸素ジェットがランス−溶銑表面間距離の半分
に達しなくなり、高(%T.Fe) が維持できなくなる。ま
た、適正な孔数は酸素流量とそのときの酸素ジェットの
到達距離にも依存するため、望ましい孔数の範囲は3〜
10程度、さらに望ましいのは3〜6または8程度であ
る。
【0050】フラックスはCaO およびFet O を主成分と
するものを初装で用いる。望ましいフラックスの組成は
重量%でCaO:20〜40%、Fet O:50〜80%程度であり、そ
の他に含んでいてもよい成分はMnO 、Al2O3 およびSiO2
などである。Fet O 源として望ましいのは鉄鉱石、スケ
ールおよび転炉滓などである。なお、フラックスの形状
には制約はないが、炉内添加であるため1〜50mm程度の
大きさの塊状のものを用いるのが望ましい。
【0051】望ましい酸素流量の範囲は、溶鉄トンあた
り 0.3〜0.7 Nm3/min 程度である。
【0052】
【実施例】上底吹試験転炉(炉体A、炉内径:1090mm)
に収容された溶銑2トン(組成、C:4.5 %、Si:0.3
%、P:0.1 %、残部:Feおよび不純物))に生石灰約
11kg/t、鉄鉱石15kg/tを添加し、表1に示す条件でノズ
ル径、ノズル角度を種々変更した4孔ストレート上吹ラ
ンスから酸素を1.0Nm3/min(初期3分間は2.0Nm3/min)
吹付けて約20分間脱りん処理を実施した。
【0053】処理後の〔%P〕目標は近年需要の多い低
りん鋼を溶製するために必要な0.01%以下、耐火物溶損
指数の目標は1以下とし、これらの目標の達成可否およ
び処理後スラグのエージング処理無しでの路盤材として
の使用可否を調査した。ただし、表1に示す試験 No.
6、9、11では炉内径が1290mmの転炉(炉体B)を使用
した。
【0054】表1に、脱りん処理中の(%T.Fe) 、処理後
〔%P〕、処理後〔%C〕、耐火物溶損指数および処理
後温度を併せて示す。
【0055】
【表1】
【0056】ノズル径d0=3mmの場合、図7に示したと
おり、炉体Aではノズル角度θ0 =25°( 試験No.4 )、
炉体Bではノズル角度θ0 =30°、53°( 試験No.6、9
) の条件についてのみ、本発明ランスから定まる下記
1) 、2)の条件を満たしていたため、効率よい脱りんが
可能となったのである。
【0057】1) 酸素ジェットがランス−溶銑表面間距
離の半分以上に達し、かつ、溶銑に直接当たらないこ
と。
【0058】2) 酸素ジェットが炉壁に直接当たらない
こと。
【0059】ノズル角度θ0 =15°の場合、図12に示し
たとおり、ノズル径d0=4.6mm 、7.0mm 、8.8mm ( 試験
No.13 、14、15 、炉体A )の条件についてのみ、上記
1)、2)の条件を満たしていたため、効率よい脱りんが
可能となったのである。
【0060】表1に示す評価○印(処理後〔%P〕<0.
01、かつ、耐火物溶損指数1.0)の処理後スラグでは、遊
離石灰の含有率が0.5 %以下と小さく、特にエージング
処理を施さなくとも水和膨張の恐れはなかった。一方、
評価×印の処理後スラグでは、(%T.Fe) >10の場合には
上記の評価○印の場合と同様であったが、(%T.Fe) ≦10
の場合には滓化不良のため、未滓化の石灰含有率が高
く、水和膨張抑制を目的とするエージング処理を施さね
ばならなかった。
【0061】
【発明の効果】本発明の溶銑脱りん用上吹酸素ランスに
よれば、高価な蛍石(CaF2)、生石灰および多量の鉄鉱
石を使用せずに、スラグ中の高(%T.Fe) を維持して効率
的に脱りん処理を行うことができる。しかも、処理時の
脱炭量、耐火物溶損量を抑制することができ、低りん鋼
溶製のコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】上底吹転炉内の上吹酸素ジェット単体の軌道を
模式的に示す図である。
【図2】ノズル出口での酸素ジェット単体の挙動を模式
的に説明する図である。
【図3】脱りん処理時のスラグ中(%T.Fe) とノズル角度
θ0 との関係を示す図である。
【図4】処理後〔%P〕とノズル角度θ0 との関係を示
す図である。
【図5】耐火物溶損指数とノズル角度θ0 との関係を示
す図である。
【図6】処理後〔%C〕とノズル角度θ0 との関係を示
す図である。
【図7】ノズル角度θ0 を変化させ、式(1) により酸素
ジェット単体の中心軸の軌道を計算した結果を示す図で
ある。
【図8】スラグ中(%T.Fe) とノズル径d0との関係を示す
図である。
【図9】処理後〔%P〕とノズル径d0との関係を示す図
である。
【図10】耐火物溶損指数とノズル径d0との関係を示す
図である。
【図11】処理後〔%C〕とノズル径d0との関係を示す
図である。
【図12】ノズル径d0を変化させ、式(1) により酸素ジ
ェット単体の中心軸の軌道を計算した結果を示す図であ
る。
【記号の説明】
S :酸素ジェット中心軸の進行方向の移動距離(mm) θc :酸素ジェットの広がり角度( 20°) θ0 :ノズル角度(鉛直軸からの角度)(°) d :S での酸素ジェット径(mm) d0 :ノズル径(mm) U0 :ノズル出口での酸素ガス流速(mm/s) ρs :溶融スラグの密度( g/cm3 ) ρg :ノズル出口での酸素ガス密度( g/cm3 ) ρg ' :酸素ガス圧力を1atm (酸素ジェット中では酸
素ガス密度は一定)と仮定した時の酸素ジェット中酸素
ガス密度( g/cm
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21C 1/02,5/30 C21C 5/46,7/064

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】上底吹転炉において、CaO およびFet O を
    主成分とするフラックスを添加し、上吹き酸素により高
    (%T.Fe) を維持しつつ溶銑の脱りんを行う際に用いる上
    吹酸素ランスであって、下記式 (1)〜(3) の条件を満た
    す構造を有することを特徴とする溶銑脱りん用上吹酸素
    ランス。 【数1】 α≦θ0 ≦β・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) γ≦d0≦δ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3) 但し、 d=2S・tan(θc/2)・・・・・・・・・・・・・・・・・(a) S=∫{(dX)2 +(dY)21/2 ・・・・・・・・・・・・(b) X :酸素ジェット中心軸の水平方向変位(mm) Y :酸素ジェット中心軸の鉛直方向変位(mm) S :酸素ジェット中心軸の進行方向の移動距離(mm) θc :酸素ジェットの広がり角度( 20°) θ0 :ノズル角度(鉛直軸からの角度)(°) H :S での酸素ジェット中酸素ガスのホールドアップ(
    − ) d :S での酸素ジェット径(mm) d0:ノズル径(mm) U0:ノズル出口での酸素ガス流速(mm/s) ρs :溶融スラグの密度( g/cm3 ) ρg :ノズル出口での酸素ガス密度( g/cm3 ) ρg ' :酸素ガス圧力を1atm (すなわち、酸素ジェッ
    ト中では酸素ガス密度は一定)と仮定した時の酸素ジェ
    ット中酸素ガス密度( g/cm3 ) g :重力加速度( m/s2 ) α:酸素ジェット中心軸の軌道が溶銑表面に接する時の
    ノズル角度( °) β:酸素ジェットがランス−溶銑表面間距離の半分に達
    する時の角度と酸素ジェットが炉壁に直接当たる時の角
    度とのうち小さい方の角度(°) γ:酸素ジェット中心軸の軌道が溶銑表面に接する時の
    ノズル径(mm) δ:酸素ジェットがランス−溶銑表面間距離の半分に達
    する時のノズル径(mm) 初期条件: X=d0・cos θ0/{2tan(θc/2)}の時、 Y=−d0・sin θ0 / {2tan(θc/2)}・・(c) dY/dX=−tan θ0 ・・・・・・・・・・・(d)
JP07034788A 1995-02-23 1995-02-23 溶銑脱りん用上吹酸素ランス Expired - Fee Related JP3127761B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP07034788A JP3127761B2 (ja) 1995-02-23 1995-02-23 溶銑脱りん用上吹酸素ランス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP07034788A JP3127761B2 (ja) 1995-02-23 1995-02-23 溶銑脱りん用上吹酸素ランス

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08225818A JPH08225818A (ja) 1996-09-03
JP3127761B2 true JP3127761B2 (ja) 2001-01-29

Family

ID=12424026

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP07034788A Expired - Fee Related JP3127761B2 (ja) 1995-02-23 1995-02-23 溶銑脱りん用上吹酸素ランス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3127761B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017002331A (ja) * 2015-06-04 2017-01-05 株式会社神戸製鋼所 溶銑の脱りん処理における固体酸素源の供給方法
CN109554513B (zh) * 2018-11-30 2020-06-19 中冶南方工程技术有限公司 获取铁水喷吹脱硫用脱硫剂输送管径的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08225818A (ja) 1996-09-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9493854B2 (en) Converter steelmaking method
US5902374A (en) Vacuum refining method for molten steel
CN101294233A (zh) 一种铁水预处理同时脱硅脱锰的方法
JP2001064713A (ja) 溶銑の脱りん方法
US4601749A (en) Method for adjusting chemical composition of molten pig iron tapped from blast furnace
JP3127761B2 (ja) 溶銑脱りん用上吹酸素ランス
KR20190099018A (ko) 용선의 탈인 방법
JP2003239009A (ja) 溶銑の脱りん精錬方法
JP4065225B2 (ja) 溶銑の脱燐精錬方法
JP2004277830A (ja) 転炉製鋼方法
JP3333339B2 (ja) 脱炭滓をリサイクルする転炉製鋼法
JP4025751B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP4025713B2 (ja) 溶銑の脱燐精錬方法
JP3733013B2 (ja) 溶銑脱りん方法
JP5304816B2 (ja) 溶鋼の製造方法
KR100225249B1 (ko) 슬로핑 발생 억제를 위한 잔류 슬래그량 조절방법
JP4305127B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP4344070B2 (ja) 密閉型フリーボードを用いた溶銑脱硫方法
JP2005146335A (ja) 溶銑の脱りん方法
JP3794048B2 (ja) 溶銑の脱珪処理方法
JP5533814B2 (ja) 溶銑の脱炭処理方法
JPH1192815A (ja) ダスト発生を抑制する転炉吹錬法
JPH1088219A (ja) 溶鉄への粉体吹き付け方法
JPH01252753A (ja) ステンレス鋼母溶湯の溶製方法並びに溶製用の反応容器底部羽口配列及び底部羽口
JPS60403B2 (ja) 溶銑の脱炭方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees