JP3127710B2 - 歯面強度に優れた歯車およびその製造方法 - Google Patents

歯面強度に優れた歯車およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種歯車伝動装置等に
おいて利用するのに好適な歯面強度に優れた歯車に関
し、また、そのような歯面強度に優れた歯車を製造する
のに好適な歯車の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、主として、変速機用浸炭歯車にお
けるピッティング(pitting),スコーリング
(scoring)などといった歯面損傷に対する歯面
強度向上対策としては、歯車精度の向上による歯当りの
改善や、相手歯車の歯先修正による面圧負荷の低減によ
る方法があり、また、歯面のラッピング加工や長時間の
なじみ運転により面粗度を向上させて金属間接触を防止
し、歯面間の油膜形成を助けることにより面圧,摩擦係
数を低減して耐ピッティング性,耐スコーリング性を向
上させる手法がある。
【0003】一方、例えば、エヌティエヌ(NTN)
(株)の赤松による「表面あらさの改質によるころがり
軸受寿命の向上」(トライボロジスト,第37巻,第7
号,1992,p533〜537)に記載されているよ
うに、表面にバレル研磨による大きさ数10μm程度の
微小凹部を無数かつランダムに配置することにより、接
触面の油膜形成能力を高め、軸受のころがり寿命を向上
させることができるといった研究や、トヨタ自動車
(株)の柿原らによる「ころがりすべり摩擦摩耗特性の
解析」(トヨタ技術,第36巻,第2号,1986,1
2月,p42〜51)に記載されているように、ころが
りすべり接触において、表面あらさが大きい場合には初
期に適当な面積の平滑部を設けた表面形状とすることに
より、摩擦係数を低くすることができるといった研究な
どが近年なされている。
【0004】これらの研究結果を踏まえて、本発明者ら
が鋭意調査研究を行った結果、歯車においても歯面の表
面形状をバレル研磨,ラッピング等により図1に示すよ
うなプラトー状(plateau state;上部が
平らな表面形状)とすることにより、歯面間の接触面
積,油膜厚さが増加して、面圧,摩擦係数を低減でき、
耐ピッティング性,耐スコーリング性を向上できること
が明かとなった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の歯車におけるピッティング,スコーリングな
どといった歯面損傷に対する歯面強度向上対策におい
て、歯車精度の向上による歯当りの改善のみでは、効果
が不十分であること、相手歯車の歯先修正による面圧負
荷の低減による場合は、熱処理歪との兼ね合いから形状
の管理が難しく、かつまた、歩留りが悪いこと、さらに
は、歯面のバレル研磨やラッピング加工,長時間のなじ
み運転などによる場合には効果が顕著であるものの、生
産性が著しく悪化するため、低コストでかつ生産性の良
い手法によって、歯面強度に優れた歯車を得ることがで
きなかった。
【0006】また、歯面強度の向上に有効なプラトー形
状とすることについても、その定義や管理範囲が確立さ
れておらず、また、適切な製造方法も見い出されていな
いのが実情であることから、実用的な歯面強度向上対策
の開発が望まれているという課題があった。
【0007】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであって、実用的な歯面強度向上対
策を開発することによって、ピッティング,スコーリン
グなどといった歯面の損傷に対する強度を飛躍的に向上
させることが可能である歯面強度に優れた歯車およびそ
の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明においては、歯面
強度の向上に有効である表面のプラトー形状の範囲を実
験的に求め、表面粗さの片寄りRskによって定義,限
定すると共に、化学研磨および電解研磨の少なくとも何
れかにより、表面を溶解除去して所望の形状を得るとい
う歯車の製造方法を確立することによって、歯面強度に
優れた歯車を提供することが可能であることを見い出し
たものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明に係わ
る歯面強度に優れた歯車は、化学研磨および電解研磨の
少なくとも何れかにより、歯面上の粗さの突起部が溶解
除去されていて、次式、 で定義される表面粗さの中心線に対する片寄りRsk
が、歯面上で、−5≦Rsk≦−0.2の範囲にあるプ
ラトー形状の歯面表面形状を有する構成としたことを特
徴としている。
【0010】また、本発明に係わる歯面強度に優れた歯
車の製造方法は、化学研磨および電解研磨の少なくとも
何れかにより、歯面上の粗さの突起部を溶解除去するこ
とによって、次式、 で定義される表面粗さの中心線に対する片寄りRsk
が、歯面上で、−5≦Rsk≦−0.2の範囲にあるプ
ラトー形状の歯面表面形状を得ることで、上記した歯面
強度に優れた歯車を製造するようにしたことを特徴とし
ており、歯面強度に優れた歯車の製造方法の実施態様に
おいては、機械加工により、研磨前の歯面の表面粗さを
最大粗さRmax≦5μm,平均粗さRa≦0.5μm
とした後、その粗さに応じて最大粗さRmax値の0.
2〜2倍の厚さだけ除去するようになすことができ、同
じく実施態様にあっては、化学研磨において、被膜厚さ
が最大粗さRmax値の0.3〜3倍のリン酸塩被膜を
形成するようになすことができ、同じく実施態様にあっ
ては、歯面上または被膜下部の素材表面上に直径20μ
m以下,深さ5μm以下の微細な腐食ピットを生成させ
るようになすこともできる。
【0011】一般的に、歯車では、通常の場合、図2に
示すような表面形状を初期状態に有するときにおいて
も、噛合いの進行に伴って表面の摩耗,変形を生ずるこ
とにより、図1に示したようなプラトー形状に近付く
が、その過程において、表面に微視的な塑性変形や発熱
に伴う組織の軟化等による損傷が蓄積されるため、ピッ
ティング寿命の向上は図れないことがわかっている。
【0012】このようなプラトー形状は、表面粗さの中
心線に対する片寄りRskを意味する関数、すなわち で定義され、Rsk<0の場合に相当する(図4参
照)。
【0013】本発明者らは、歯車のピッティング,スコ
ーリング等の歯面損傷に対する表面形状の影響を鋭意調
査研究した結果、上記式で定義される表面粗さの中心線
に対する片寄りRskが、歯面上で、−5≦Rsk≦−
0.2の範囲にある場合において、顕著な効果が表れる
ことを新規に見い出した。
【0014】そして、このような表面形状を得るために
は、前述したように、従来の歯車製造方法では困難なこ
とから、種々の方法を検討して確認した結果、化学研磨
および電解研磨の少なくともいずれかによる表面の溶解
除去を行うことにより、短時間でかつ安価な工程によっ
て、図3に示すように、破線で示す研磨前の状態から、
実線で示す研磨後の状態へと、表面の加工傷の突起部を
除去し、これによって、所望の形状が得られることが明
らかとなった。
【0015】さらに、前述の化学研磨の一手法として、
リン酸塩処理を用いた場合には、リン酸溶液の特徴とし
て鋼材への腐食性が弱いため、表面層の数μm程度の極
く薄い部分のみの除去に適しており、管理が容易となる
こと、および腐食により前述のプラトー形状が得られ易
くなることに併せて、さらなる効果として、リン酸塩被
膜自体は噛合い初期において摩滅してしまうことが多い
が、はく離の過程で歯面のラッピング材として作用し、
表面の平滑化を促進し、加えて、被膜自体が金属間接触
を防ぐため、噛合い初期のかじり,異常摩耗の発生を防
ぐ作用もある。
【0016】一方、化学研磨や電解研磨を実施すると、
素材表面の結晶粒界等の腐食され易い部分から優先的に
溶解するため、処理条件をコントロールすることによっ
て、表面上または被膜下部の素材表面上に直径20μm
以下、深さ5μm以下の微細な腐食ピットが多数そして
ランダムに生成し、噛み合い時に油溜り作用を持つこと
から、油膜保持性がますます良好なものとなり、より一
層高い歯面強度が得られることも明かとなった。
【0017】次に、本発明の特許請求の範囲に記載され
た構成要件の限定理由について述べる。
【0018】◎研磨前の歯面の表面粗さを最大粗さRm
ax≦5μm,平均粗さRa≦0.5μm 本発明では、機械加工により成形した歯車において必然
的に生ずる歯面の加工痕による突起状の粗さの先端を溶
解および/または機械的に除去することを狙ったもので
あるが、除去前の歯面の表面粗さが最大粗さRmax>
5μm,平均粗さRa>0.5μmと粗い場合には、除
去厚さが必然的に大きくなって処理に長時間を要するこ
と、また、化学研磨(リン酸塩処理を含む)の場合は、
除去厚さが大きくなると溶解による腐食ピットが粗大化
して、逆に表面粗さが悪化すること、などのため、研磨
前の初期粗さを最大粗さRmax≦5μm,平均粗さR
a≦0.5μmとすることがより望ましい。
【0019】◎表面除去厚さが最大粗さRmax値の
0.2〜2倍 表面除去厚さが最大粗さRmax値の2倍を超えると、
前記したように、処理時間が過大となり、また、化学研
磨の場合は粗大な腐食ピットが生成するため、表面粗さ
が逆に悪化する。また、最大粗さRmax値の0.2倍
未満ではプラトー状の表面形状が得がたく、効果が不十
分なことから、表面除去厚さは最大粗さRmax値の
0.2〜2倍の範囲とすることがより望ましい。
【0020】◎表面粗さの中心線に対する片寄りRsk
が、歯面上で−5≦Rsk≦−0.2 表面のプラトー形状は、図4の振幅分布曲線が粗さ曲線
の平均線に対して下側に片寄った場合に相当し、一般的
に、Rsk<0で表される。
【0021】本発明者らが調査研究を行ったところ、表
面粗さの片寄りRskが−0.2を超える場合には、効
果が十分でなく、また、−5未満となると凹部がき裂状
の欠陥となり、ピッティング等の歯面疲労の起点となっ
て、強度が低下するため、−5≦Rsk≦−0.2の範
囲とする必要がある。
【0022】◎リン酸塩被膜厚さが最大粗さRmax値
の0.3〜3倍 通常の場合、リン酸塩処理では、リン酸溶液への浸漬中
において、まず、処理品の最表面から内部へ向かって酸
化が進行し、リン酸塩が形成された後、次に、処理品の
表面方向へ結晶状に成長する。この時、リン酸溶液によ
る処理品表面の酸化溶解深さは、図5に示すように、通
常において、リン酸塩被膜厚さの約2/3となるため、
前記表面除去厚さが最大粗さRmax値の0.2〜2倍
に相当する被膜厚さである最大粗さRmax値の0.3
〜3倍の被膜厚さがより望ましくは必要となる。
【0023】また、リン酸塩処理を行う場合において
は、リン酸塩被膜の中でも、耐熱性,耐荷重性の比較的
良好なリン酸マンガン処理を行うことが望ましい。
【0024】◎腐食ピットの直径20μm以下,深さ5
μm以下 化学研磨(リン酸塩処理を含む)を行うことにより金属
表面が腐食,溶解する際に、一般的に、不純物元素が偏
析し易い結晶粒界が優先的に溶解することによって腐食
ピットが形成される。
【0025】この腐食ピットの直径,深さが歯面の噛合
いによる接触面積,接触幅に対して十分に微細な場合
は、その中にオイルが閉じ込められることにより、オイ
ル溜まりとなって油膜保持性を向上させる効果がある。
【0026】しかしながら、直径が20μm,深さが5
μmを超えるような比較的大型の腐食ピットが多数生成
すると、実質的な接触面積が低下して、局部的な面圧が
増加することに加えて、ピットが表面き裂の起点となっ
て、歯面強度が低下するため、腐食ピットの直径は20
μm以下,深さは5μm以下とすることがより望まし
い。
【0027】
【発明の作用】本発明に係わる歯面強度に優れた歯車
は、化学研磨および電解研磨の少なくとも何れかによ
り、歯面上の粗さの突起部が溶解除去されていて、次
式、 で定義される表面粗さの片寄りRskが、歯面上で、−
5≦Rsk≦−0.2の範囲にあるプラトー状の歯面表
面形状を有する構成としたから、歯面での油膜形成能力
が向上したものとなって、面圧とすべりによる摩擦係数
が低減するものとなるので、ピッティング,スコーリン
グなどといった歯面の損傷に対する強度が飛躍的に向上
して、歯面強度に優れた歯車が提供されることとなる。
【0028】また、本発明に係わる歯面強度に優れた歯
車の製造方法では、化学研磨および電解研磨の少なくと
も何れかにより、歯面上の粗さの突起部を溶解除去する
ことによって、前記式で定義される表面粗さの片寄りR
skが、歯面上で、−5≦Rsk≦−0.2の範囲にあ
るプラトー状の歯面表面形状を得る構成としたから、上
述したピッティング,スコーリングなどといった歯面の
損傷に対する強度が飛躍的に向上した歯面強度に優れた
歯車が製造されることとなる。
【0029】そして、本発明に係わる歯面強度に優れた
歯車の製造方法の実施態様においては、機械加工によ
り、研磨前の歯面の表面粗さを最大粗さRmax≦5μ
m,平均粗さRa≦0.5μmとした後、その粗さに応
じて最大粗さRmax値の0.2〜2倍の厚さだけ除去
するようになすことによって、機械加工後の歯面の加圧
痕による突起状の粗さの先端を溶解および/または機械
的に除去する前において、歯面の表面粗さが粗すぎない
ものとなっているので、除去厚さが適切なものとなっ
て、突起状の粗さの先端の除去処理が短時間で済ますこ
とができるようになり、また、化学研磨による場合にお
いても除去厚さが大きすぎないものとなるので溶解によ
る腐食ピットが粗大化しないものとなり、適切な表面粗
さが得られることとなる。
【0030】また、表面除去厚さが最大粗さRmax値
の2倍を超えないようにすることによって、処理時間が
過大なものとならず、化学研磨を行う場合にも粗大な腐
食ピットが生成しないものとなって、適切な表面粗さが
短時間で得られることとなり、表面除去厚さを最大粗さ
Rmax値の0.2倍以上とすることによってプラトー
状の表面形状が得やすいものとなる。
【0031】同じく本発明に係わる歯面強度に優れた歯
車の製造方法の実施態様では、化学研磨において、被膜
厚さが最大粗さRmax値の0.3〜3倍のリン酸塩被
膜を形成するようになすことによって、前記表面除去厚
さが最大粗さRmax値の0.2〜2倍に相当する被膜
厚さが得られることとなり、これによって、被膜下部の
歯車素材の表面形状をプラトー状にするのが容易になる
と共に、リン酸塩被膜の高い保油性,ラッピング作用に
よって噛合い初期のかじり発生が防止されることにな
り、歯面のなじみ性が向上するものとなる。
【0032】同じく、本発明に係わる歯面強度に優れた
歯車の製造方法の実施態様において、歯面上または被膜
下部の素材表面上に直径20μm以下,深さ5μm以下
の微細な腐食ピットを生成させることによって、この腐
食ピットはその直径,深さが歯面の噛合いによる接触面
積,接触幅に対して微細なものとなっているので、この
ような微細な腐食ピットの中にオイルが閉じ込められる
ことによりオイル溜まりとなって、このような油溜まり
効果によって油膜保持性が向上したものとなり、良好な
油膜形成能力が発揮されることによって歯面の潤滑性が
向上することにより高い歯面強度が得られることとな
る。
【0033】
【実施例】以下に、本発明の実施例を示す。
【0034】表1に示す諸元の耐ピッティング試験用お
よび繰り返し衝撃試験用歯車対を0.18%C−0.1
%Si−1%Cr−0.4%Mo−Feの組成を有する
肌焼鋼を用いて図6に示す工程に従って製作した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】表2には、試験用歯車の初期の表面粗さを
測定した結果を示しているが、この場合の試験用歯車の
表面粗さ(歯面粗さ)の測定は、測定長さ0.8mm,
カットオフ0.25mmの条件にて歯丈方向に測定し
た。また、同じく表2には、表面粗さの片寄りRskを
測定した結果を示しているが、この場合のリン酸マンガ
ン処理後の表面粗さの片寄りRskの測定は、Cr酸溶
液により被膜を除去した後に行った。
【0038】同じく表2には、表面の平均ピット直径,
(深さ)を測定した結果を示しているが、この場合の表
面の平均ピット直径,(深さ)はレーザー顕微鏡により
測定した。
【0039】そして、歯車の性能試験は動力循環式歯車
試験機を用いて行い、ピッチ円上での面圧2019MP
a,小歯車回転数1000rpmの条件とし、自動変速
機用オイルを強制潤滑することにより実施した。
【0040】試験終了後、ピッティング寿命は、小歯車
の歯面に発生したピッティングによるはく離の面積を全
歯の有効噛合い面積で除した値が3%となった時の小歯
車の累積回転数とし、歯面摩耗量は、図7に示すよう
に、小歯車の歯元近傍部の摩耗深さを測定することによ
り求めた。この結果を同じく表2に示す。
【0041】表2に示すように、初期の表面粗さ,表面
除去厚さ,表面粗さの片寄りRsk,表面の平均ピット
直径,(深さ)が適切なものとなっているNo.1〜4
では、いずれも、ピッティング寿命,歯面摩耗量とも良
好な値を示していることがわかる。
【0042】これに対して、除去前の初期の表面粗さが
大きいNo.5では、化学研磨による除去厚さが大きい
ものとなって逆に表面粗さが悪化することによりピッテ
ィング寿命が短いと共に歯面摩耗量が多いものとなり、
また、表面除去厚さが最大粗さRmax値の2倍を超え
るNo.6の場合には、化学研磨を行ったときに粗大な
腐食ピットが生成されて表面粗さが大となり、実質的な
接触面積が低下して局部的な面圧が増加することにより
ピッティング寿命が短いと共に歯面摩耗量が多いものと
なり、無処理としたNo.7の場合には噛合いの進行に
伴って表面の摩耗,変形を生じることによりプラトー形
状に近づくが、その過程において表面に塑性変形や発熱
軟化等による損傷が蓄積されるため、ピッティング寿命
が短いと共に歯面摩耗量は多いものとなっていた。
【0043】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係わ
る歯面強度に優れた歯車では、化学研磨および電解研磨
の少なくとも何れかにより、歯面上の粗さの突起部が溶
解除去されていて、次式、 で定義される表面粗さの片寄りRskが、歯面上で、−
5≦Rsk≦−0.2の範囲にあるプラトー状の歯面表
面形状を有する構成としたから、油膜形成能力を向上さ
せることが可能であって、面圧とすべりによる摩擦係数
を低減することができ、ピッティング,スコーリングな
どといった歯面の損傷に対する強度を飛躍的に向上させ
た歯面強度に優れた歯車を提供することが可能であると
いう著しく優れた効果がもたらされる。
【0044】また、本発明に係わる歯車の製造方法で
は、化学研磨および電解研磨の少なくとも何れかによ
り、歯面上の粗さの突起部を溶解除去することによっ
て、前記式で定義される表面粗さの片寄りRskが、歯
面上で、−5≦Rsk≦−0.2の範囲にあるプラトー
状の歯面表面形状を得る構成としたから、上記した表面
強度に優れた歯車を短時間のうちに低コストで製造する
ことが可能であるという著しく優れた効果がもたらされ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラトー状の表面形状を示す説明図である。
【図2】一般的な歯車の表面形状を示す説明図である。
【図3】研磨前後による表面形状の違いを示す説明図で
ある。
【図4】粗さ曲線の片寄りを示す説明図である。
【図5】リン酸塩処理による表面の溶解深さを示す説明
図である。
【図6】実施例で採用した試験用歯車の製作工程を示す
説明図である。
【図7】歯面摩耗量の測定要領を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−7221(JP,A) 特開 平4−341648(JP,A) 実開 平3−357(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 55/00 - 55/30 C25F 3/16

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学研磨および電解研磨の少なくとも何
    れかにより、歯面上の粗さの突起部が溶解除去されてい
    て、次式、 で定義される表面粗さの片寄りRskが、歯面上で、−
    5≦Rsk≦−0.2の範囲にあるプラトー状の歯面表
    面形状を有することを特徴とする歯面強度に優れた歯
    車。
  2. 【請求項2】 化学研磨および電解研磨の少なくとも何
    れかにより、歯面上の粗さの突起部を溶解除去すること
    によって、次式、 で定義される表面粗さの片寄りRskが、歯面上で、−
    5≦Rsk≦−0.2の範囲にあるプラトー状の歯面表
    面形状を得ることを特徴とする歯面強度に優れた歯車の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 機械加工により、研磨前の歯面の表面粗
    さを最大粗さRmax≦5μm,平均粗さRa≦0.5
    μmとした後、その粗さに応じて最大粗さRmax値の
    0.2〜2倍の厚さだけ除去することを特徴とする請求
    項2に記載の歯面強度に優れた歯車の製造方法。
  4. 【請求項4】 化学研磨において、被膜厚さが最大粗さ
    Rmax値の0.3〜3倍のリン酸塩被膜を形成するこ
    とを特徴とする請求項2または3に記載の歯面強度に優
    れた歯車の製造方法。
  5. 【請求項5】 歯面上または被膜下部の素材表面上に直
    径20μm以下,深さ5μm以下の微細な腐食ピットを
    生成させることを特徴とする請求項2ないし4のいずれ
    かに記載の歯面強度に優れた歯車の製造方法。
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