JP3125645B2 - 耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線材 - Google Patents
耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線材Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐縦割れ性に優れ
た溶融めっき鋼線用線材に関するものであり、詳細には
亜鉛めっき鋼撚線や吊り橋用ケーブル等を製造するにあ
たって用いられる太径(線径5mm程度)の溶融めっき
鋼線用線材であって、高強度を有すると共に、捻回時に
おける耐縦割れ性に優れた線材に関するものである。
た溶融めっき鋼線用線材に関するものであり、詳細には
亜鉛めっき鋼撚線や吊り橋用ケーブル等を製造するにあ
たって用いられる太径(線径5mm程度)の溶融めっき
鋼線用線材であって、高強度を有すると共に、捻回時に
おける耐縦割れ性に優れた線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】耐食性が要求されるPC鋼線や吊橋用ケ
ーブル等を製造するにあたっては、高炭素鋼線材にパテ
ンティング処理を行った後、伸線し、その後溶融亜鉛め
っきを施すことが一般的である。この製造方法によれ
ば、伸線加工によって線材の強度は向上するが、その後
の溶融亜鉛めっき処理工程において、400℃以上に加
熱されるので強度が低下してしまう。しかも、伸線加工
によって強度を高めれば高める程めっきによる強度低下
が大きくなり、結果的にめっき鋼線の高強度化は困難で
あった。
ーブル等を製造するにあたっては、高炭素鋼線材にパテ
ンティング処理を行った後、伸線し、その後溶融亜鉛め
っきを施すことが一般的である。この製造方法によれ
ば、伸線加工によって線材の強度は向上するが、その後
の溶融亜鉛めっき処理工程において、400℃以上に加
熱されるので強度が低下してしまう。しかも、伸線加工
によって強度を高めれば高める程めっきによる強度低下
が大きくなり、結果的にめっき鋼線の高強度化は困難で
あった。
【0003】上記高炭素鋼線材の強度を高める手段とし
て、C含有量を増加させることは、安価で効果も大きい
ことから工業的には最も望ましい方法であると考えられ
る。しかしながら、C含有量が0.9%以上である過共
析領域では、パテンティング時にオーステナイト粒界に
沿って脆い初析セメンタイトがネットワーク状に生成す
る。このため、伸線加工時に脆い初析セメンタイトの割
れを起点とする断線が発生し、伸線加工性が劣化してし
まう。しかも、めっきによる強度低下には全く影響を与
えず、添加量に応じためっき鋼線の高強度化は図れな
い。
て、C含有量を増加させることは、安価で効果も大きい
ことから工業的には最も望ましい方法であると考えられ
る。しかしながら、C含有量が0.9%以上である過共
析領域では、パテンティング時にオーステナイト粒界に
沿って脆い初析セメンタイトがネットワーク状に生成す
る。このため、伸線加工時に脆い初析セメンタイトの割
れを起点とする断線が発生し、伸線加工性が劣化してし
まう。しかも、めっきによる強度低下には全く影響を与
えず、添加量に応じためっき鋼線の高強度化は図れな
い。
【0004】これに対しSiは、パテンティング処理後
の鋼線強度を上昇させて伸線後の鋼線強度も上昇させる
効果と、鋼線の焼入性を向上させて初析セメンタイトの
析出を抑える効果を有する。さらに、めっきによる強度
低下を抑制して溶融めっき鋼線の高強度化を図ることが
可能である。但し、Siの多量の添加は鋼線の靭性及び
延性を劣化させることも知られている。そこで、特開平
4−325627号公報では、伸線加工歪に対応してS
i添加量を調整することにより延性の優れた鋼線を製造
する方法が開示されている。しかしながら、該公報には
伸線材の特性が言及されているだけであり、めっき鋼線
の特性については言及されていない。
の鋼線強度を上昇させて伸線後の鋼線強度も上昇させる
効果と、鋼線の焼入性を向上させて初析セメンタイトの
析出を抑える効果を有する。さらに、めっきによる強度
低下を抑制して溶融めっき鋼線の高強度化を図ることが
可能である。但し、Siの多量の添加は鋼線の靭性及び
延性を劣化させることも知られている。そこで、特開平
4−325627号公報では、伸線加工歪に対応してS
i添加量を調整することにより延性の優れた鋼線を製造
する方法が開示されている。しかしながら、該公報には
伸線材の特性が言及されているだけであり、めっき鋼線
の特性については言及されていない。
【0005】捻回特性を向上させる技術としては、鋼線
にブルーイング処理を施すことが有効であることが知ら
れており、例えば特開平4−246125号公報や特開
平4−236742号公報には、溶融めっきを施した後
に、矯正加工または伸線加工を施し、次いでブルーイン
グ処理を施す方法が開示されている。しかしながら、め
っき後の加工はめっき層の剥離等を生じて耐食性の劣化
を招き易く、例えば吊橋用めっき鋼線の場合には、めっ
き後の鋼線に加工を加えることは極力避けるべき方法で
ある。
にブルーイング処理を施すことが有効であることが知ら
れており、例えば特開平4−246125号公報や特開
平4−236742号公報には、溶融めっきを施した後
に、矯正加工または伸線加工を施し、次いでブルーイン
グ処理を施す方法が開示されている。しかしながら、め
っき後の加工はめっき層の剥離等を生じて耐食性の劣化
を招き易く、例えば吊橋用めっき鋼線の場合には、めっ
き後の鋼線に加工を加えることは極力避けるべき方法で
ある。
【0006】また、鋼線表面の引張残留応力を解放する
ことにより、捻回時の縦割れを抑制できることも知られ
ており、例えば特公平3−66386号公報では、鋼線
表面に圧縮残留応力を積極的に付与する方法が開示され
ている。しかしながら、残留応力を制御した後にめっき
を施すと、めっき時の線温の上昇により残留応力の効果
がほとんどなくなってしまい、溶融めっき鋼線用線材に
適用しても十分な効果は得られなかった。
ことにより、捻回時の縦割れを抑制できることも知られ
ており、例えば特公平3−66386号公報では、鋼線
表面に圧縮残留応力を積極的に付与する方法が開示され
ている。しかしながら、残留応力を制御した後にめっき
を施すと、めっき時の線温の上昇により残留応力の効果
がほとんどなくなってしまい、溶融めっき鋼線用線材に
適用しても十分な効果は得られなかった。
【0007】この様に、溶融めっき後に特別な加工や熱
処理を必要としない溶融めっき鋼線用線材であって、高
強度を有する共に、捻回時における耐縦割れ性が十分に
優れた溶融めっき鋼線用線材は開発されていなかった。
処理を必要としない溶融めっき鋼線用線材であって、高
強度を有する共に、捻回時における耐縦割れ性が十分に
優れた溶融めっき鋼線用線材は開発されていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであって、高強度を有すると共に、
耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線材を提供しよう
とするものである。
目してなされたものであって、高強度を有すると共に、
耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線材を提供しよう
とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明の溶融めっき鋼線用線材とは、質量%で、C:0.7
〜1.2%,Si:0.5〜2.0%,Mn:0.2〜
2.0%,Al:0.01〜0.05%,N:30〜1
50ppmを含有する鋼からなり、かつ上記鋼中の固溶
N量が10ppm以下であることを要旨とするものであ
る。更に、Crを0.1〜1.0%含有することが、強
度や伸線加工性の向上という観点から推奨される。
明の溶融めっき鋼線用線材とは、質量%で、C:0.7
〜1.2%,Si:0.5〜2.0%,Mn:0.2〜
2.0%,Al:0.01〜0.05%,N:30〜1
50ppmを含有する鋼からなり、かつ上記鋼中の固溶
N量が10ppm以下であることを要旨とするものであ
る。更に、Crを0.1〜1.0%含有することが、強
度や伸線加工性の向上という観点から推奨される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは鋼中の微量化学成
分、特に固溶N量に着目して研究を行った結果、耐縦割
れ性に与える影響が非常に大きいことを見出し本発明に
想到した。尚、本発明において固溶N量とは、化学分析
によって測定された鋼中の全N量と、抽出残渣法で得ら
れたAlN中のN量の差から計算されたものである。
分、特に固溶N量に着目して研究を行った結果、耐縦割
れ性に与える影響が非常に大きいことを見出し本発明に
想到した。尚、本発明において固溶N量とは、化学分析
によって測定された鋼中の全N量と、抽出残渣法で得ら
れたAlN中のN量の差から計算されたものである。
【0011】固溶N量が、鋼線の特性に影響を与えるこ
とは知られており、例えば本発明者らは特開平6−27
1937号公報において、固溶Nが時効を促進して、鋼
線の靭性を劣化させることを開示している。しかしなが
ら、これまでに固溶N量と、溶融めっき鋼線の縦割れ性
に関する開示はなかった。
とは知られており、例えば本発明者らは特開平6−27
1937号公報において、固溶Nが時効を促進して、鋼
線の靭性を劣化させることを開示している。しかしなが
ら、これまでに固溶N量と、溶融めっき鋼線の縦割れ性
に関する開示はなかった。
【0012】尚、耐縦割れ性には線径依存性があり、線
径が細い程縦割れを起こすことなく高強度化を図ること
ができる。タイヤ用スチールコードが一例であり、線径
0.2mm程度で300kgf/mm2 以上の高強度材が得ら
れている。しかし、太径の線材(例えば、線径5mm程
度)では、200kgf/mm2 程度の強度が限界であり、2
00kgf/mm2 を超えると捻回時に縦割れが発生してしま
う。本発明者らは、固溶Nの存在が耐縦割れ性に及ぼす
悪影響は太径線材ほど顕著であり、この固溶N量が10
ppmを超えると捻回時に縦割れを発生することのない
強度の上限値(縦割れ限界引張強さ)が極端に低下する
ことを突き止めた。従って本発明では、固溶N量の上限
を10ppmに設定した。
径が細い程縦割れを起こすことなく高強度化を図ること
ができる。タイヤ用スチールコードが一例であり、線径
0.2mm程度で300kgf/mm2 以上の高強度材が得ら
れている。しかし、太径の線材(例えば、線径5mm程
度)では、200kgf/mm2 程度の強度が限界であり、2
00kgf/mm2 を超えると捻回時に縦割れが発生してしま
う。本発明者らは、固溶Nの存在が耐縦割れ性に及ぼす
悪影響は太径線材ほど顕著であり、この固溶N量が10
ppmを超えると捻回時に縦割れを発生することのない
強度の上限値(縦割れ限界引張強さ)が極端に低下する
ことを突き止めた。従って本発明では、固溶N量の上限
を10ppmに設定した。
【0013】以下、本発明の成分限定理由について説明
する。Cは、強度を上げるために有効かつ経済的な元素
であり、C含有量を増加させるに伴い、パテンティング
後の強度並びに伸線時の加工硬化量、伸線後の強度が増
加する。従って、本発明では下限を0.7%に設定し
た。但し、C量が多過ぎると初析セメンタイトの析出を
防止できなくなるので、C量の上限を1.2%とした。
する。Cは、強度を上げるために有効かつ経済的な元素
であり、C含有量を増加させるに伴い、パテンティング
後の強度並びに伸線時の加工硬化量、伸線後の強度が増
加する。従って、本発明では下限を0.7%に設定し
た。但し、C量が多過ぎると初析セメンタイトの析出を
防止できなくなるので、C量の上限を1.2%とした。
【0014】Siは、脱酸剤として必要な元素であると
共に、フェライトに固溶し、固溶体強化に顕著な効果を
発揮する。さらに、フェライト中のSiは伸線後のブル
ーイング処理や溶融亜鉛めっき処理による強度低下を低
減させる効果があり、高強度鋼線を製造するには不可欠
の元素である。従って、下限を0.5%に設定した。但
し、過剰に添加すると伸線後の鋼線の延性が低下するの
で、上限は2.0%とした。
共に、フェライトに固溶し、固溶体強化に顕著な効果を
発揮する。さらに、フェライト中のSiは伸線後のブル
ーイング処理や溶融亜鉛めっき処理による強度低下を低
減させる効果があり、高強度鋼線を製造するには不可欠
の元素である。従って、下限を0.5%に設定した。但
し、過剰に添加すると伸線後の鋼線の延性が低下するの
で、上限は2.0%とした。
【0015】Mnも脱酸剤として必要な元素であると共
に、鋼の焼入れ性を向上させて鋼線の断面内の組織の均
一性を高める上で有効である。従って、下限を0.2%
に設定した。但し、Mn量が多過ぎると、Mnの偏析部
が形成され、マルテンサイトやベイナイト等の過冷組織
が生成して伸線加工性が劣化するので、上限は2.0%
とする。
に、鋼の焼入れ性を向上させて鋼線の断面内の組織の均
一性を高める上で有効である。従って、下限を0.2%
に設定した。但し、Mn量が多過ぎると、Mnの偏析部
が形成され、マルテンサイトやベイナイト等の過冷組織
が生成して伸線加工性が劣化するので、上限は2.0%
とする。
【0016】Alは脱酸剤として効果的であり、またオ
ーステナイト粒度の粗大化防止に有効である。しかも鋼
中のNと結合して耐縦割れ性に有害な固溶Nを低減する
効果もあるので、0.02%以上必要である。但し、過
剰に添加しても効果が飽和すると共に、経済性を損なう
要因となるので0.05%を上限と定めた。
ーステナイト粒度の粗大化防止に有効である。しかも鋼
中のNと結合して耐縦割れ性に有害な固溶Nを低減する
効果もあるので、0.02%以上必要である。但し、過
剰に添加しても効果が飽和すると共に、経済性を損なう
要因となるので0.05%を上限と定めた。
【0017】Nは鋼中でAlの窒化物となり、加熱時の
オーステナイト粒度の粗大化防止に有効である。添加量
が30ppm以下では十分にその効果が発揮されないの
で、下限を30ppmに設定した。一方、過剰に添加す
ると、Al窒化物量が増加し過ぎて伸線性に悪影響を及
ぼすだけでなく、固溶N量が多くなり鋼線の耐縦割れ性
に悪影響を及ぼすので、上限は150ppmとする必要
がある。
オーステナイト粒度の粗大化防止に有効である。添加量
が30ppm以下では十分にその効果が発揮されないの
で、下限を30ppmに設定した。一方、過剰に添加す
ると、Al窒化物量が増加し過ぎて伸線性に悪影響を及
ぼすだけでなく、固溶N量が多くなり鋼線の耐縦割れ性
に悪影響を及ぼすので、上限は150ppmとする必要
がある。
【0018】本発明の溶融めっき鋼線用線材では、上記
成分に加えてCrを0.1〜1.0%含有させてもよ
い。Crは、パーライトのラメラ間隔の微細化に有効で
あり、線材の強度及び伸線加工性を向上させる。このよ
うな効果を得るには、0.1%以上添加する必要があ
る。但し、多過ぎると、変態終了時間が長くなり過ぎ、
設備の大型化を招いたり、生産性の低下をもたらすの
で、上限は1.0%とした。
成分に加えてCrを0.1〜1.0%含有させてもよ
い。Crは、パーライトのラメラ間隔の微細化に有効で
あり、線材の強度及び伸線加工性を向上させる。このよ
うな効果を得るには、0.1%以上添加する必要があ
る。但し、多過ぎると、変態終了時間が長くなり過ぎ、
設備の大型化を招いたり、生産性の低下をもたらすの
で、上限は1.0%とした。
【0019】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲内に含まれるものである。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲内に含まれるものである。
【0020】
【実施例】表1に示す化学成分の鋼を真空溶解炉にて溶
製し、熱間圧延により線径11mmの鋼線とした後、鉛
パテンティング処理(条件:再加熱950℃×5分,恒
温状態540℃×4分)を施した。得られた鋼線を、目
標線径の4.9mmまで減面率80.2%で連続伸線し
た。この時のダイス枚数は7枚であり、いずれのダイス
の出口部においても線材を冷却することにより、線材温
度を170℃以下に維持した。
製し、熱間圧延により線径11mmの鋼線とした後、鉛
パテンティング処理(条件:再加熱950℃×5分,恒
温状態540℃×4分)を施した。得られた鋼線を、目
標線径の4.9mmまで減面率80.2%で連続伸線し
た。この時のダイス枚数は7枚であり、いずれのダイス
の出口部においても線材を冷却することにより、線材温
度を170℃以下に維持した。
【0021】得られた線材を用いて、以下の方法により
縦割れ限界引張強さを測定した。伸線した鋼線を、20
0〜450℃の温度範囲(10℃間隔)に15分間加熱
(ブルーイング)処理して空冷した鋼線を用いて引張試
験と捻回試験を行い、捻回試験の際に縦割れが発生しな
くなる加熱温度の引張強さを縦割れ限界引張強さとし
た。例えば、図1は上記縦割れ限界引張強さを算出する
方法を模式的に示すグラフであり、100〜400℃の
範囲における加熱処理では捻回試験において縦割れが発
生したことを示している。一方引張試験においては、加
熱温度が200℃で引張強さは最大値を示していること
が分かるが、捻回試験において200℃前後は縦割れが
発生する領域内にあり、縦割れが発生しない領域での引
張強さは400℃において最大値を示している。本発明
では、この値を縦割れ限界引張強さとするものである。
表1に、鋼線の化学成分と、上記縦割れ限界引張強さを
併記する。
縦割れ限界引張強さを測定した。伸線した鋼線を、20
0〜450℃の温度範囲(10℃間隔)に15分間加熱
(ブルーイング)処理して空冷した鋼線を用いて引張試
験と捻回試験を行い、捻回試験の際に縦割れが発生しな
くなる加熱温度の引張強さを縦割れ限界引張強さとし
た。例えば、図1は上記縦割れ限界引張強さを算出する
方法を模式的に示すグラフであり、100〜400℃の
範囲における加熱処理では捻回試験において縦割れが発
生したことを示している。一方引張試験においては、加
熱温度が200℃で引張強さは最大値を示していること
が分かるが、捻回試験において200℃前後は縦割れが
発生する領域内にあり、縦割れが発生しない領域での引
張強さは400℃において最大値を示している。本発明
では、この値を縦割れ限界引張強さとするものである。
表1に、鋼線の化学成分と、上記縦割れ限界引張強さを
併記する。
【0022】尚、固溶N量の測定方法は、伸線した鋼線
を用い、まず化学分析によって全N量を測定し、次に
抽出残渣法によってAlNの量を分析してAlと化合し
ているN量を求め、その差(−)を固溶N量とし
た。上記抽出残渣法でAlN量を分析するに当っては、
まず10%アセチルアセトン系電解液を用いて鋼線を溶
かし、得られた溶液をポアサイズ0.2μmのフィルタ
ーで吸収ろ過して残渣を抽出した。この残渣を用いて中
和滴定法でAlN量を定量した。
を用い、まず化学分析によって全N量を測定し、次に
抽出残渣法によってAlNの量を分析してAlと化合し
ているN量を求め、その差(−)を固溶N量とし
た。上記抽出残渣法でAlN量を分析するに当っては、
まず10%アセチルアセトン系電解液を用いて鋼線を溶
かし、得られた溶液をポアサイズ0.2μmのフィルタ
ーで吸収ろ過して残渣を抽出した。この残渣を用いて中
和滴定法でAlN量を定量した。
【0023】
【表1】
【0024】No.1,2は本発明例であり、縦割れ限
界引張強さは高い値を示している。No.3,5,7は
それぞれC,Si,Mnが少な過ぎる場合の比較例であ
り、縦割れ限界引張強さが低い値を示している。No.
4は、C量が多過ぎる場合の比較例であり、初析セメン
タイトが多くて伸線性が劣化し、結果的に伸線途中で断
線してしまった。No.6はSiが多過ぎる場合の比較
例であり、LP線材の靭性が低下し、伸線途中で断線し
た。No.8は、Mnが多過ぎる場合の比較例であり、
過冷組織の存在の為に伸線途中で断線してしまった。N
o.9は、Alが少な過ぎる場合の比較例であり、Al
Nの析出量が不十分でありLP材の結晶粒径が粗大化し
てしまい、その結果伸線中に断線してしまった。No.
10は、全N量が少な過ぎる場合の比較例であり、Al
Nの析出量が不十分でLP材の結晶が粗大化してしま
い、その結果伸線中に断線してしまった。No.11
は,全N量が多過ぎて、固溶N量が本発明範囲を超えて
多くなっている場合の比較例であり、縦割れ限界引張強
さが低い。No.12,13は固溶N量が本発明範囲を
超えて多過ぎる場合の比較例であり、縦割れ限界引張強
さが低い。
界引張強さは高い値を示している。No.3,5,7は
それぞれC,Si,Mnが少な過ぎる場合の比較例であ
り、縦割れ限界引張強さが低い値を示している。No.
4は、C量が多過ぎる場合の比較例であり、初析セメン
タイトが多くて伸線性が劣化し、結果的に伸線途中で断
線してしまった。No.6はSiが多過ぎる場合の比較
例であり、LP線材の靭性が低下し、伸線途中で断線し
た。No.8は、Mnが多過ぎる場合の比較例であり、
過冷組織の存在の為に伸線途中で断線してしまった。N
o.9は、Alが少な過ぎる場合の比較例であり、Al
Nの析出量が不十分でありLP材の結晶粒径が粗大化し
てしまい、その結果伸線中に断線してしまった。No.
10は、全N量が少な過ぎる場合の比較例であり、Al
Nの析出量が不十分でLP材の結晶が粗大化してしま
い、その結果伸線中に断線してしまった。No.11
は,全N量が多過ぎて、固溶N量が本発明範囲を超えて
多くなっている場合の比較例であり、縦割れ限界引張強
さが低い。No.12,13は固溶N量が本発明範囲を
超えて多過ぎる場合の比較例であり、縦割れ限界引張強
さが低い。
【0025】No.14〜17はCrを含有する例であ
り、No.14,15は本発明の条件を全て満足してい
るので、縦割れ限界引張強さが高い値を示している。N
o.16は固溶N量が本発明範囲を超えて多過ぎる場合
の比較例であり、縦割れ限界引張強さが低い。No.1
7は、Crが多過ぎる場合の比較例であり、変態終了ま
でが長時間となり、鉛パテンティング中に変態が終了せ
ず、過冷組織が存在し、そのため伸線中に断線してしま
った。
り、No.14,15は本発明の条件を全て満足してい
るので、縦割れ限界引張強さが高い値を示している。N
o.16は固溶N量が本発明範囲を超えて多過ぎる場合
の比較例であり、縦割れ限界引張強さが低い。No.1
7は、Crが多過ぎる場合の比較例であり、変態終了ま
でが長時間となり、鉛パテンティング中に変態が終了せ
ず、過冷組織が存在し、そのため伸線中に断線してしま
った。
【0026】図2は、表1の結果を、固溶N量と、縦割
れ限界引張強さで整理したグラフである。図2のグラフ
から、捻回時に縦割れを起こすことなく高い強度を得る
には、固溶N量を10ppm以下に制御すべきことが分
かる。
れ限界引張強さで整理したグラフである。図2のグラフ
から、捻回時に縦割れを起こすことなく高い強度を得る
には、固溶N量を10ppm以下に制御すべきことが分
かる。
【0027】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、高強度であると共に、耐縦割れ性に優れた溶融めっ
き鋼線用線材を提供することができることとなった。
で、高強度であると共に、耐縦割れ性に優れた溶融めっ
き鋼線用線材を提供することができることとなった。
【図1】縦割れ限界引張強さを算出する方法を模式的に
示すグラフである。
示すグラフである。
【図2】固溶N量と、縦割れ限界引張強さの関係を示す
グラフである。
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−271937(JP,A) 特開 昭62−4859(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C23C 2/38
Claims (2)
- 【請求項1】 質量%で、C :0.7〜1.2%,S
i:0.5〜2.0%,Mn:0.2〜2.0%,A
l:0.01〜0.05%,N :30〜150ppm
を含有し、 残部Fe及び不可避不純物からなり、 かつ上記Nのうち固溶N量が10ppm以下であること
を特徴とする耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線
材。 - 【請求項2】 更に、Crを0.1〜1.0%含有する
請求項1に記載の溶融めっき鋼線用線材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP07247928A JP3125645B2 (ja) | 1995-09-26 | 1995-09-26 | 耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP07247928A JP3125645B2 (ja) | 1995-09-26 | 1995-09-26 | 耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH0987803A JPH0987803A (ja) | 1997-03-31 |
JP3125645B2 true JP3125645B2 (ja) | 2001-01-22 |
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ID=17170642
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP07247928A Expired - Lifetime JP3125645B2 (ja) | 1995-09-26 | 1995-09-26 | 耐縦割れ性に優れた溶融めっき鋼線用線材 |
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JP (1) | JP3125645B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP4527913B2 (ja) * | 2001-09-20 | 2010-08-18 | 新日本製鐵株式会社 | 高強度高炭素鋼線用線材及びその製造方法 |
-
1995
- 1995-09-26 JP JP07247928A patent/JP3125645B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH0987803A (ja) | 1997-03-31 |
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