JP3971034B2 - 耐縦割れ性および伸線性に優れた高炭素鋼線用熱間圧延線材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パテンティング処理することなく圧延材のまま直接伸線することができ、しかも耐縦割れ性および伸線性に優れた高炭素鋼線用熱間圧延線材に関するものであり、殊にベルトコード等の様なゴム用補強材あるいはミニチュアロープ、PC鋼線、一般雑ばね等の高炭素鋼線を製造する為の線材であって、高強度を有すると共に、捻回時における耐縦割れ性、および伸線時における伸線性に優れた熱間圧延線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タイヤビードの補強材として用いられるビードワイヤは、通常下記の手順で製造されている。即ち、所定の化学成分を有する鋼を熱間圧延後調整冷却した直径5.0〜6.4mm程度の鋼線材を、一次伸線加工、パテンティング処理、二次加工、ブロンズめっきによって線材とする。一般に高強度高炭素鋼線には伸線工程で、断線あるいは縦割れの発生しないような物性が要求される。
【0003】
鋼線表面の引張残留応力を解放することにより、捻回時の縦割れを抑制できることも知られており、例えば特公平3−66386号公報では、鋼線表面に圧縮残留応力を積極的に付与した後開放する方法が開示されている。しかしながらこうした技術では、設備の大型化および工程の複雑化を招くため、実施化は困難である。また従来の高炭素鋼線用線材では、パテンティング処理を施した後、伸線加工が行なわれるのが一般的であり、パテンティング処理を施すことなく伸線加工される線材は実用化されていない。
【0004】
一方、伸線工程においては、線材に付着する潤滑剤の量が多ければ多い程伸線が円滑に行われるので、線材表面にはある程度の凹凸が存在することが必要となる。こうした観点から、伸線前の圧延ままの段階で燐酸塩化成処理を施して線材表面に燐酸塩結晶被膜を形成して凹凸の表面とするのが一般的である。この燐酸塩化成処理は、コイル状の線材を酸洗浴に浸漬し、脱スケール後、燐酸洗浴に浸漬する方法であるが、前記燐酸塩結晶被膜には付着むらのないことが必要である。
【0005】
こうした燐酸塩結晶被膜付着むらを防止する為に、酸洗浴、燐酸洗浴等を最適条件にコントロールしているが、操業時の気候等が燐酸塩処理条件に影響を及ぼし、これまでの高炭素鋼線用線材では燐酸塩結晶被膜の付着むらが生じているのが実状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、圧延材にパテンティング処理を施さなくとも伸線でき、しかも高強度で且つ優れた耐縦割れ性および伸線性を発揮し、必要によって燐酸塩皮膜の付着むらをも防止できる高炭素鋼線用熱間圧延線材を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成した本発明の高炭素鋼線用線材とは、C:0.7〜1.2、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%およびN:0.003〜0.015%を夫々含む他、Al:0.01〜0.05%および/またはNb:0.01〜0.05%を含有し、且つAl、NbおよびNが下記(1)を満足すると共に、上記Nのうち固溶N量が0.001%以下である点に要旨を有するものである。ここで固溶N量とは、化学分析によって測定された鋼中の全N量から、抽出残渣法で得られたAIN、NbN中のN量を差し引いて計算された値である。
([Al]+[Nb])/[N]≧4 …(1)
但し、[Al],[Nb]および[N]は、夫々Al,NbおよびNの含有量(質量%)を示す。
【0008】
また本発明の高炭素鋼線用線材においては、必要によって(a)Sb,As,LaおよびCeよりなる群から選択される1種以上:合計で0.005%以下(0%を含まない)、(b)V:0.5%以下(0%を含まない)、(c)Cr:1.0%以下(0%を含まない)、(d)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、(e)Ni:0.5%以下(0%を含まない)、等を含むことも有効であり、これによって線材の強度や伸線加工性を更に向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
耐縦割れ性には線径依存性があり、線径が細い程縦割れを起こすことなく高強度化を図ることができる。例えばタイヤ用スチールコードでは、線径:0.2mm程度の細径であれば300kgf/mm2 以上の高強度材が達成されている。これに対して、例えば線径5mm程度の太径の線材では、およそ180kgf/mm2 が強度の上限となっており、約180kgf/mm2 を超えると捻回時に縦割れが発生してしまうことになる。
【0010】
本発明者らは、固溶Nの存在が線材の縦割れ性に悪影響を及ぼしており、特にこの悪影響は太径線材ほど顕著であって、この固溶N量が0.001%を超えると、捻回時に縦割れが発生しない強度の上限値(以下、「縦割れ限界引張強さ」と呼ぶ:後記図4参照)が極端に低下することを突き止め、鋼中の固溶N量を0.001%以下とすることによって優れた耐縦割れ性を発揮する溶融めっき鋼線用線材を見出し、その技術的意義が認められたので先に出願した(特開平9−87803号)。しかしながら、高炭素鋼線の縦割れ性と固溶N量に関しては、これまでに明らかにされておらず、鋼中の固溶N量を低減するだけでは希望する特性を発揮させることはできなかった。
【0011】
本発明者らは、高炭素鋼線における耐縦割れ性と化学成分組成との関係について更に研究を重ねた。その結果、鋼中の固溶N量を0.001%以下に抑えると共に、化学成分組成を適切に規定してやれば、高炭素鋼線における縦割れ限界引張強さを著しく高め得ることを突き止め、本発明を完成した。次に、本発明の線材における化学成分限定理由について説明する。
【0012】
C:0.7〜1.2%
Cは、線材の強度を上げるために有効かつ経済的な元素であり、C含有量を増加するに伴い、伸線時の加工硬化量や伸線後の強度が増加する。こうした観点から、本発明の線材中のC含有量は0.7%以上とする必要がある。しかしながら、C含有量が多くなり過ぎると初析セメンタイトの析出を防止できなくなるので、C量の上限を1.2%とした。尚C含有量の好ましい下限は、0.8%であり、好ましい上限は、1.1%である。
【0013】
Si:0.05〜2.0%
Siは鋼の脱酸のために必要な元素であり、そのために少なくとも0.05%以上含有する必要がある。Si含有量が0.05%よりも少ないときには、脱酸が十分に行われない。一方、Siはフェライトの固溶体元素として熱処理材の強度の向上にも有効であるため、多く添加するほうが良いが、多過ぎるとフェライトが脆化し、熱処理材の延性の低下を招き、結果として後の伸線性を悪くする。こうした観点から、Si含有量は2.0%以下とする必要がある。尚Si含有量の好ましい下限は、0.2%であり、より好ましいは0.5%以上とするのが良い。またSi含有量の好ましい上限は、1.8%であり、より好ましくは1.5%以下とするのが良い。
【0014】
Mn:0.2〜2.0%
MnもSiと同様に脱酸剤として必要な元素であると共に、鋼の焼入れ性を向上させて鋼線の断面内の組織の均一性を高める上で有効である。こうした効果を発揮させる為には、0.2%以上含有させる必要があるが、その量が過剰になるとMnの偏析部が形成され、マルテンサイトやベイナイト等の過冷組織が生成して伸線加工性が劣化するので2.0%以下とする必要がある。尚Mn含有量の好ましい下限は、0.3%であり、より好ましいは0.4%以上とするのが良い。またMn含有量の好ましい上限は、1.8%であり、より好ましくは1.6%以下とするのが良い。
【0015】
N:0.003〜0.015%
Nは鋼中でAlやNb等の窒化物となり、加熱時のオーステナイト粒度の粗大化防止に有効である。N含有量が0.003%未満ではその効果が十分に発揮されないので、Nは0.003%以上含有させる必要がある。しかしながら、N含有量が過剰になると、Al窒化物やNb窒化物量が増加し過ぎて伸線性に悪影響を及ぼすだけでなく、固溶N量が多くなり鋼線の耐縦割れ性に悪影響を及ぼすので、0.015%以下とする必要がある。尚N含有量の好ましい下限は、0.004%であり、好ましい上限は、0.012%であり、より好ましくは0.010%以下とするのが良い。
【0016】
Al:0.01〜0.05%
Alは脱酸剤として効果的であり、またオーステナイト粒度の粗大化防止に有効である。しかも鋼中のNと結合して耐縦割れ性に有害な固溶Nを低減する効果もあるので、0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に添加しても効果が飽和すると共に、経済性を損なう要因となるので0.05%を上限と定めた。尚Al含有量の好ましい上限は、0.04%であり、より好ましくは0.03%以下とするのが良い。
【0017】
Nb:0.01〜0.05%
Nbは鋼中で微細な炭窒化物を形成して析出強化により強度の上昇を図ると共に、前記Alと同様に加熱時のオーステナイト粒の粗大化を防止する効果を発揮する。こうした効果を発揮させる為には、0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、Nb含有量が過剰になると炭窒化物量が増加し過ぎ、また炭窒化物の粒子径も大きくなり過ぎるため、その上限を0.05%とした。
【0018】
本発明においては、Al、NbおよびNの含有量が、前記(1)式の関係を満足する必要があるが、この要件は固溶N量を0.001%以下とし、縦割れ限界引張強さを高める上で非常に重要な要件である。この要件の作用・効果について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、高炭素鋼線用線材の([Al]+[Nb])/[N]の値と縦割れ限界引張強さの関係を示したグラフである。この図は第2相フェライトの最大粒径が10μm以下の場合を示したものであるが、この場合には(Al+Nb)/Nが4未満では縦割れ限界引張強さが小さく、(Al+Nb)/Nの値が4以上で縦割れ限界引張強さが大きくなっていることが分かる。
【0020】
ところでAlの原子量は26.98で、Nの原子量は14.0であるから、Al/Nの原子量比は1.93となる。従って、[Nb]=0のときの鋼中のAl/Nの比が1.93であれば、理論的には全てのNがAlと化合しAlNとなるが、平衡状態になるにはかなりの長時間を要し、量産は困難である。しかしながら、図1のグラフから明らかな様に、(Al+Nb)/Nの値が4以上とすることによって縦割れ限界引張強さが顕著に大きくなり、(Al+Nb)/Nの値を4以上とすることにより固溶N量を十分に低減させて耐縦割れ性を大幅に高めることができたのである。
【0021】
図2は、線材中の固溶N量と縦割れ限界引張強さの関係を示したグラフである。図2から明らかな様に、線材中の固溶N量を0.001%以下とすることによって、縦割れ限界引張強さが著しく高められていることが分かる。こうしたことから、本発明の線材における固溶N量を0.001%以下と規定した。
【0022】
本発明の高炭素鋼線用線材においては、上記成分の他(残部)は鉄および不可避不純物からなるものであるが、必要によって(a)Sb,As,LaおよびCeよりなる群から選択される1種以上:合計で0.005%以下(0%を含まない)、(b)V:0.5%以下(0%を含まない)、(c)Cr:1.0%以下(0%を含まない)、(d)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、(e)Ni:0.5%以下(0%を含まない)、等を含むことも有効であり、これによって線材の強度や伸線加工性を更に向上させることができる。またこれらの成分以外にも、本発明の線材の特性を低下させない程度の微量成分を含むことも許容できるものであり、こうした線材も本発明の技術的範囲に含まれるものである。必要によって含有される化学成分における作用・効果は下記の通りである。
【0023】
Sb,As,LaおよびCeよりなる群から選択される1種以上:合計で0.005%以下(0%を含まない)
Sb、As、LaおよびCeは、酸洗におけるオーバーピックリングを抑制して、燐酸塩皮膜の付着むらを防止するのに有効な元素であるが、合計で0.0050%を超えると偏析により組織の脆化を引軌して伸線加工を劣化させる。従って、これらの元素を含有させるときには、合計で0.005%以下とする必要がある。上記効果を発揮させる為には、合計で0.00001%以上含有させることが好ましい。
【0024】
図3は、Sb、As、LaおよびCeの含有量(合計の含有量)と燐酸塩皮膜付着評価点(ボンデ付着評価点)との関係を示したグラフである。ここで燐酸塩皮膜付着評価点は、燐酸塩皮膜付着むらの目安となるものである。
【0025】
尚燐酸塩皮膜付着評価点は、燐酸塩皮膜付着量(ボンデ付着量)や燐酸塩皮膜付着面積率(ボンデ付着面積率)等と相関関係があるものであるが、付着量が多くても面積率にムラがあれば伸線性が悪くなり、また面積率が良くても付着量が少なければ伸線性が悪くなるものである。燐酸塩皮膜付着評価点と燐酸塩皮膜付着量の関係を図4に、燐酸塩皮膜付着評価点と燐酸塩皮膜付着面積率の関係を図5に夫々示す。
【0026】
V:0.5%以下(0%を含まない)
Vは微細な炭窒化物として分散して、オーステナイト粒度やノジュールサイズを粗大化させず、パーライトラメラ間隔も狭くする効果を有するので、伸線加工性を向上させるのに有効である。オーステナイト粒度やノジュールサイズの微細化は、伸線加工途中に発生しやすいミクロクラックを防止し、また発生したミクロクラックの進展を抑えるので、断線発生率をも低減させる効果を有する。またVは線材の耐腐食性も向上させる。しかしながら、0.5%を超えて過多に添加しても、耐腐食性の向上が飽和するのみならず、靱性や延性の劣化をもたらす。従って、Vを含有させるときには、その上限を0.5%として、高強度高延性高靱性を有せしめ、断線が少ないうえに、耐腐食性にすぐれた高炭素鋼線を得ることができる。尚上記した種々の効果を有効に発揮させるためには、Vは0.03%以上含有させることが好ましい。
【0027】
Cr:1.0%以下(0%を含まない)
Crは、パーライトのラメラ間隔の微細化に有効であり、線材の強度および伸線加工性を向上させる上で有効である。しかしながら、1.0%を超えて過剰に含有させると、変態終了時間が長くなり過ぎ、設備の大型化を招いたり、生産性の低下をもたらすので、上限は1.0%とすることが好ましい。尚上記した効果を有効に発揮させるためには、Crは0.03%以上含有させることが好ましい。
【0028】
Cu:0.5%以下(0%を含まない)
Cuは析出硬化作用によって鋼線の強度を向上させるが、過剰に添加すると強度向上効果が飽和するだけでなく、粒界脆化を招くため熱間圧延時に鋳塊表面がひび割れてしまうことがあるので上限をCuを含有させる場合には、その上限を0.5%とする必要がある。尚上記した効果を有効に発揮させるためには、Cuは0.03%以上含有させることが好ましい。
【0029】
Ni:0.5%以下(0%を含まない)
Niは鋼線の強度向上にはあまり寄与しないが、伸線材の靱性を高める効果を有する。しかしながら、0.5%を超えて過剰に含有させると変態終了時間が長くなり過ぎるため、生産性の点から好ましくない。尚上記した効果を発揮させる為には、Niは0.03%以上含有させることが好ましい。
【0030】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲内に含まれるものである。
【0031】
【実施例】
下記表1に示す化学成分の鋼を真空溶解炉にて溶製し、熱間圧延により線径11mmの鋼線を作製した。このとき、圧延時の載置温度を700〜950℃の範囲で変化させると共に、800℃から500℃までの線材の冷却速度を1℃/secから10℃/secまで変化させた。上記線材を、目標線径の4.9mmまで減面率79.3%で連続伸線して鋼線とした。このときのダイス枚数は7枚であり、いずれのダイスの出口部においても線材を冷却することにより、線材温度を180℃以下に維持した。尚固溶N量の測定は、下記の様に伸線した鋼線を用い、まず化学分析によって全N量▲1▼を測定し、次に抽出残渣法によってAlN、NbNの量を分析してAl,Nbと化合しているN量▲2▼を求め、その差(▲1▼―▲2▼)を固溶N量とした。また上記抽出残渣法でAlN,NbN量を分析するに当たっては、まず10%アセチルアセトン系電解液を用いて鋼線を溶かし、得られた溶液をポアサイズ0.2μmのフィルターで吸収濾過して残渣を抽出し、この残渣を用いて中和滴定法でAlN,NbN量を定量した。
【0032】
【表1】
【0033】
得られた線材を、200〜450℃の温度範囲(10℃間隔)で15分間加熱(ブルーイング)処理して空冷した鋼線を用い、引張試験と捻回試験を行ない、捻回試験の際に縦割れが発生しなくなる加熱温度の引張強さを縦割れ限界引張強さとした。
【0034】
図6は上記縦割れ限界引張強さを算出する方法を模式的に示すグラフであり、100〜400℃の範囲における加熱処理では捻回試験において縦割れが発生したことを示している。また引張試験においては、加熱温度が200℃で引張強さは最大値を示していることが分かるが、捻回試験において200℃前後は縦割れが発生する領域内にあり、縦割れが発生しない領域での引張強さは400℃において最大値を示している。本発明では、この値を縦割れ限界引張強さとするものである。試験結果を、ボンデ付着評価点、ボンデ付着量、ボンデ付着面積率、伸線限界径および伸線加工性と共に、下記表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
No.1〜4は本発明で規定する要件の全てを満足するものであり、伸線時の断線も生じることなく、縦割れ限界引張強さも高い値を示していることが分かる。
【0037】
No.5,7および9は、夫々C,SiおよびMnの含有量が本発明で規定する量より少ないものであり、いずれも縦割れ限界引張強さが低くなっている。
【0038】
No.6は、C含有量が多過ぎものであり、初析セメンタイトが多くて伸線性が劣化し、結果的に伸線途中で断線してしまった。またNo.8のものは、Si量が多過ぎるものであり、線材の靱性が低下し、伸線途中で断線した。更に、No.10は、Mn含有量が多過ぎるものであり、過冷組織の存在の為に伸線途中で断線した。
【0039】
No.11は、Cr含有量が多過ぎるものであり、変態終了までが長時間となり、鉛パテンティング中に変態が終了せず、過冷組織が存在し、そのため伸線中に断線してしまった。No.12は、V含有量が多過ぎるものであり、線材の靱性が低下し、伸線途中で断線した。No.13は、Cu含有量が多過ぎる場合の比較例であり、粒界脆化し、伸線途中で断線した。
【0040】
No.14は、Ni含有量が多過ぎるものであり、変態終了までが長時間となり、鉛パテンティング中に変態が終了せず、過冷組織が存在し、そのため伸線中に断線してしまった。No.15〜18は、夫々Sb,As,LaおよびCeが多過ぎるものであり、線材の靱性が低下し、伸線途中で断線した。No.19はSb、As、La、Ceが全く添加されていない場合の比較例であり、燐酸塩皮膜の付着むらが発生し、伸線途中で断線した。
【0041】
No.20は、Al含有量が少な過ぎるものであり、AlNの析出量が不十分であり、オーステナイト粒が粗大化してしまい、その結果伸線中に断線してしまった。No.21は全N量が少な過ぎるものであり、AlNの析出量が不十分でオーステナイト粒が粗大化してしまい、その結果伸線中に断線してしまった。No.22は、全N量が多過ぎて固溶N量が多過ぎるものであり、縦割れ限界引張強さが低くなっている。No.23〜25は、固溶N量が本発明で規定する範囲を超えて多過ぎるものであり、縦割れ限界引張強さが低くなっている。
【0042】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、圧延材にパテンティング処理を施さなくとも伸線でき、しかも高強度で且つ優れた耐縦割れ性を発揮し、必要によって燐酸塩皮膜の付着むらをも防止できる高炭素鋼線用線材が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炭素鋼線用線材の([Al]+[Nb])/[N]の値と縦割れ限界引張強さの関係を示したグラフである。
【図2】固溶N量と、縦割れ限界引張強さの関係を示すグラフである。
【図3】Sb、As、LaおよびCeの含有量(合計の含有量)と燐酸塩皮膜付着評価点との関係を示したグラフである。
【図4】燐酸塩皮膜付着評価点と燐酸塩皮膜付着量の関係を示すグラフである。
【図5】燐酸塩皮膜付着評価点と燐酸塩皮膜付着面積率の関係を示すグラフである。
【図6】縦割れ限界引張強さを算出する方法を模式的に示したグラフである。
Claims (1)
- C:0.7〜1.2%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.003〜0.015%、Al:0.01〜0.05%および/またはNb:0.01〜0.05%、及び、Sb,As,LaおよびCeよりなる群から選択される1種以上を合計で0.00001〜0.005%含有し、更に、V:0.5%以下(0%を含まない)、Cr:1.0%以下(0%を含まない)、Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、且つAl、NbおよびNが下記(1)を満足すると共に、上記Nのうち固溶N量が0.001%以下であることを特徴とする耐縦割れ性および伸線性に優れた高炭素鋼線用熱間圧延線材。
([Al]+[Nb])/[N]≧4 …(1)
但し、[Al],[Nb]および[N]は、夫々Al,NbおよびNの含有量(質量%)を示す。
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