JP3117624B2 - 汚染物質の捕捉方法およびその遮断壁 - Google Patents

汚染物質の捕捉方法およびその遮断壁

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、汚染物質の捕捉方
法およびその遮断壁に係り、環境保全、特に汚染された
または汚染の虞れがある領域の周囲に、その領域から周
辺への汚染物質の移動を阻止する遮断壁を構築して環境
への影響を防止して環境保全を図る際における汚染物質
の捕捉方法およびその遮断壁に関する。
【0002】
【従来の技術】産業の発達および都市生活の多様化に伴
って、産業廃棄物や都市ごみの問題が大きくクローズア
ップされてきている。特に、その廃棄物の処理量の増大
の他、廃棄物中に含まれる有害物質、たとえば水銀、カ
ドミウム、クロムなどの重金属が生活領域に、たとえば
地下水を通して流出することが大きな問題となってい
る。
【0003】このためには、汚染されたまたは汚染の虞
れがある領域の周囲に、その領域から周辺への汚染物質
の移動を阻止する遮断壁を構築することが好適な解決策
となる。実際に、従来から、その領域の周囲にコンクリ
ート壁を、あるいはさらに底にコンクリートの不透水性
壁を構築することが行われてきた。
【0004】しかし、コンクリート壁では、重金属を透
過する可能性が高く、またクラックが生じた場合、そこ
から集中的に流出してしまう。
【0005】これに対して、特開昭61−105500号公報で
は、ベントナイト−セメントを基本材料として、その中
に粘土類、シリカ質材料、炭酸ナトリウム、アルカリ金
属のピロ燐酸塩または酒石酸などを含ませて、重金属の
遮断性が高い遮断壁を構築することを提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、遮断壁
を構成する材料として、ベントナイトおよびセメントを
主体とする遮断壁においては、汚染物質に対して優れた
遮断性を示すものの、未だ充分に低い透水係数を示すも
のではない。
【0007】この対策として、ゴムやプラスチック材料
からなる遮断シートとを組み合わせて地下水の流通の遮
断を図ることが考えられるものの、その遮断シートは、
不意の外力や長期にわたる暴露により破断したり劣化に
損傷したりし、適切な手段とはいい難い。
【0008】したがって、現状においては、ベントナイ
トおよびセメントを主体とする遮断壁のみで遮断を図る
のが最適な手法である。しかし、この遮断壁はほとんど
の汚染物質について優れた遮断性を示すものの、例外的
に6価クロム(Cr6+)の遮断性は充分でない。
【0009】したがって、本発明の課題は、遮断壁の透
水性を低下させるとともに、優れた6価クロム(C
6+)の遮断性を示すものを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題は、汚染された
または汚染される虞れがある汚染対象領域に対して、セ
メントおよびベントナイトを主体とする遮断壁を構築し
てその遮断壁の外側に汚染物質が流出するのを防止する
方法において、前記遮断壁の内部または汚染対象領域
に、2価または3価の金属の化合物であり、かつその金
属イオンが水酸化イオンと反応し水和物を生成し、その
水和物の溶解度積が1.0×10-12 以下である、無機
凝集剤の少なくとも一種を含有させることで解決でき
る。
【0011】この凝集剤としては、硫酸第二鉄、塩化第
二鉄、硫酸アルミニウム、およびポリ塩化アルミニウム
を例示できる。
【0012】また、遮断壁の内部または汚染対象領域に
ポリ塩化アルミニウムを含有させる場合に、前記遮断壁
の壁面周囲部分における地下水1リットル中、0.5mg
以上の濃度で含有させ、pHを4以上5未満に調整する
のが望ましい。
【0013】さらに望ましくは、前記遮断壁の壁面周囲
部分における地下水1リットル中、塩化マグネシウムを
250〜1000mgの濃度で存在させる。
【0014】また、汚染物質の捕捉用遮断壁としては、
汚染されたまたは汚染される虞れがある汚染対象領域に
対して、セメントおよびベントナイトを主体とし、外側
に汚染物質が流出するのを防止する遮断壁であって、内
部に、2価または3価の金属の化合物であり、かつその
金属イオンが水酸化イオンと反応し水和物を生成し、そ
の水和物の溶解度積が1.0×10-12 以下である無機
凝集剤の少なくとも一種が含有されているものが提供さ
れる。
【0015】本発明では、セメントとベントナイト(よ
り好適にはナトリウムベントナイト)系固化物を主体と
する遮断壁は、相互に絡み合った微細な珪酸カルシウム
水和物により構成されているので、止水性に富むもので
ある。また、経時的に水和反応が進行し、水和物の結晶
がよりタイト(強化)になり、透水係数の低下を示す。
【0016】しかるに、前述のとおり、この遮断壁の透
水係数の低下には限界がある。そこで、本発明者らは、
遮断壁に凝集剤を含有させることが有効であるのではな
いかと考えた。
【0017】凝集剤としては、有機高分子凝集剤と無機
凝集剤とがある。有機高分子凝集剤は、地下水中のコロ
イド粒子や遮断壁内部の微細なセメント水和物に吸着し
て、架橋結合することによってフロックを形成し、この
フロックが遮断壁の細孔を塞ぐことにより透水係数を低
下させるものと考えられる。この過程を概念的に図7に
よって説明すると、図7(A)に示すように、地下水中
に分散しているコロイド粒子に対して、図7(B)に示
すように糸状に伸びた凝集剤が吸着し、その後、図7
(C)に示すように、凝集剤相互間で架橋結合が起こ
り、フロックを形成する。この有機高分子凝集剤は過度
に濃度を高めると、前記の効果が低下するので、0.1
〜0.3%程度の水溶液として用いるものが好ましい。
【0018】しかるに、有機高分子凝集剤の種類は多
く、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性のものがある
が、汎用されているのは、ポリアクリルアミドおよびそ
の誘導体である。しかし、これらの原料となるアクリル
アミドモノマーは、毒性の強い物質であり、これらのポ
リアクリルアミドおよびその誘導体系のものは、本発明
の目的から適当でない。他方、その他のものも含めて有
機高分子凝集剤では、透水係数の低下にさほど効果がな
いことも知見している。
【0019】そこで、本発明者らは、無機凝集剤を使用
できないかとの観点から鋭意研究を行った。無機凝集剤
としては、表1に示すものなど多くのものが知られてい
るが、2価または3価の金属の化合物であり、その金属
イオンが水酸化イオンと反応し水和物を生成し、その水
和物の溶解度積が1.0×10-12 以下である無機凝集
剤の少なくとも一種を含有させることが適していること
を知見した。逆に、溶解度積が1.0×10-12 を超え
るもの、たとえば塩化マグネシウムでは、遮断性が十分
ではない。
【0020】本発明では、2価または3価の金属イオン
を含む無機凝集剤が用いられるが、特にこれらの無機凝
集剤の中でも、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニ
ウム、およびポリ塩化アルミニウムが有効である。
【0021】表1に示す凝集剤のいくつかについて溶解
度積を示すと次記のとおりである。
【0022】Al(OH)3 =1.92×10-32 Fe(OH)2 =8.0×10-16 Fe(OH)3 =3.16×10-38 Zn(OH)2 =4.0×10-16 Mg(OH)2 =1.1×10−11
【0023】
【表1】
【0024】これらの無機凝集剤を汚染対象領域に含有
させ、地下水の流れに伴って遮断壁を通る過程で、ある
いは直接遮断壁の内部に含有させることにより、凝集剤
中の金属イオン(Mn+)が遮断壁内部においてn個の
水酸化イオン(OH- )と反応して水和物を生成する。
この反応は次式で示される。 Mn++nOH- →M(OH)n この水和物(M(OH)n )が、遮断壁を形成するセメ
ント−ベントナイトの細孔を塞ぎ透水係数を低下させる
ものと考えられる。
【0025】また、特に硫酸塩を用いた場合には、水和
物の生成による透水係数の低下のほかに、エトリンガイ
ドの生成による透水係数の低下を示す。すなわち、硫酸
塩由来の硫酸イオンがカルシウムイオンと反応し、石膏
が生成され、この石膏とセメント成分のCsAとが反応
し、エトリンガイド(CsA・3CaSO4 ・32H2
O)が生成する。しかも、このエトリンガイドは遮断壁
の透水係数を低下させるほか、6価クロムを吸着保持す
る機能をも示す。
【0026】本発明者らは、さらなる鋭意研究を続けた
結果、これらの無機凝集剤のうちポリ塩化アルミニウム
(以下「PAC」ともいう)を用いることが特に有効で
あることを知見した。
【0027】そこで、無機凝集剤としてポリ塩化アルミ
ニウムを選択し、その含有量により、透水係数の低下お
よび6価クロムの封じ込め特性について実験を行った。
【0028】(基礎実験)この実験の概要を説明すると
直径5cm、高さ10cmの円柱状の供試体を作製し、
これに蒸留水(対照)と、千葉県野田市の地下水(以下
便宜的に純地下水という)と6価クロムおよび塩化マグ
ネシウムを溶解した同地下水(疑似改良地下水)とを通
水し、その供試体について透水係数、pHおよび6価ク
ロムの流出量を経時的に調べたところ、図2〜図4に示
す結果を得た。
【0029】具体的な実験設備としては、図1に示すよ
うに、水1m3 に対する割合としてセメント250k
g、Naベントナイト60kgの配合の材料を水温20
℃で7日間水中養生し、前記寸法に仕上げて供試体と
し、これを透水試験モールド内に設置し、および重クロ
ム酸カリウム試薬を用いて6価クロム濃度が5mg/リ
ットル、およびPACが0.9、0.7、0.5、0.
3、0.1mg/リットルの5水準となるように調整し
た疑似改良地下水を0.5kgf/cm2 の圧力で前記供試体
に通水したものである。また、現実の地下水の地盤中の
圧力を考慮して、供試体には1.0kgf/cm2 の側圧を作
用させた。供試体を通過した水はビニール袋により採取
し、各水について前記の測定項目について試験を行っ
た。
【0030】その結果についてみると、図2に示すよう
に、蒸留水や地下水の透水係数は徐々に低下してゆくの
に対して、PACを添加した場合、PACの添加量が
0.1mg/リットルの場合を除いて、透水係数が通水
初期において急激に低下することが判る。また、図3か
らこの透水係数の低下が溶液の僅かな通水によって引き
起こされていることが判る。
【0031】なお、前述の図2に示されているように、
PACの添加量が0.1mg/リットルの場合には、透
水係数の低下がほとんど見られないが、これは、pHが
高いことに起因しているものと思われる。各疑似改良地
下水のpHを表2に示す。PACの添加量が0.1mg
/リットルの場合のみがpH5以上である。
【0032】
【表2】
【0033】pHが5以上となると、PAC中のアルミ
ニウムイオンが供試体内の陽イオンと反応する前に水と
反応して水酸化アルミニウム(Al(OH)3 )とな
り、沈殿してしまうからであると考えられる。
【0034】このように、無機凝集剤としてPACを用
いた場合に透水係数が通水初期に急激に低下する原因と
しては、次の2つの現象が挙げられる。その一つは、不
活性なベントナイト粒子やその他の要因となる陰イオン
の選択的吸着によって負に帯電した粒子が、正に帯電し
た水酸化アルミニウムの錯体によって電気的に結合し、
疎水性コロイドが作られることである。
【0035】他の一つは、3価の金属塩であるアルミニ
ウムが加水分解によって陰イオンとなり、供試体内部の
陽イオンとの中和反応を生じることである。このときの
反応は以下の化学式で表される。
【0036】
【化1】
【0037】この反応は、浸出水量に対するpHの変化
を示した図4からも読み取れる。PACの添加量が0.
1mg/リットルの場合以外については、浸出水が1リ
ットルにも満たないうちにpHが低下している。これ
は、OH- が減少していることを示しており、アルミニ
ウムイオンとOH- の反応が進行していることを明らか
にしている。
【0038】また、浸出水量に対するクロム濃度を調べ
た結果を図5に示す。PACを添加した場合は、PAC
の添加量が0.1mg/リットルである場合を除いて、
透水係数が低下したため、浸出水量は僅かであり、Cr
6+は検出されなかった。この結果をみると、添加量が
0.3mg/リットル以上の範囲でPACを添加するこ
とにより、6価クロムの浸出を大幅に低減できることが
判る。
【0039】(応用実験)前記の基礎実験では、地下水
に対して、塩化マグネシウムとPACとの両者を添加し
た場合である。そこで、蒸留水にPACのみを添加した
場合について同様の実験を行いPAC自体の効果を検討
した。実験は蒸留水を用いて6価クロム濃度0.5mg
/リットルに調整し、PACを0.3、0.5、0.
7、0.9mg/リットルの4水準にして通水実験を行
った。その結果を図6に示す。
【0040】PACの濃度が0.3mg/リットルのと
き、透水係数はあまり低下しなかったものの、濃度が
0.5、0.7、0.9mg/リットルのときは地下水
に塩化マグネシウムとPACを添加した通水溶液(疑似
改良地下水)を用いた前記実験と同様の結果となった。
【0041】PACの濃度が0.3mg/リットルのと
き、前記実験に比べ透水係数があまり低下しなかった理
由としては、蒸留水が地下水のように蒸発残留物を含ま
ないことが考えられる。
【0042】以上の実験から、蒸留水についてのPAC
の濃度については、0.5mg/リットル以上であれ
ば、十分な効果が得られることが判った。
【0043】前述の実験例との関連で述べたように、P
ACを用いる場合には、pHの管理が問題となり、pH
が5以上となると、遮断壁を通過させる前に水酸化アル
ミニウムとなってしまう。しかるに、これはPACの添
加量を変えるか、酸、たとえば塩酸を添加することによ
り、pHを4以上5未満に調整することができる。
【0044】また、塩化マグネシウム単独では、前述の
とおり、水和物の溶解度積が1.0×10-12 より大き
く、遮断壁の透水係数の低下に十分ではないものの、本
発明に係る凝集剤に対して、さらに塩化マグネシウムを
含有させと、6価クロムの捕捉性を高め、本発明に係る
凝集剤単独の場合より透水係数を低下させる効果があ
る。
【0045】塩化マグネシウムを地下水中に添加するこ
とにより、次記の反応を生じるものと推論される。
【0046】重クロム酸カリウムK2 Cr2 7 はアル
カリ下で、 Cr2 7 2-+2OH- →2CrO4 2- +2H2 O …(3) さらに、スラグセメント中などの硫黄分(CaS)が働
き、次記のとおりCrが3価に還元される。 2CrO4 2- +4H2 O+3e- →Cr(OH)3 +5OH- …(4) Cr(OH)3 →Cr2 4 ・nH2 O …(5) しかも、アルカリ性になるとき、 Cr2 4 ・nH2 O→スピネル型の複酸化物(クロマイト) MII(CrO2 2 :水に難溶 …(6) Cr2 4 ・nH2 O→スピネル型の以外のもの MgO・2CrO3 …(7) かくして、(6)および(7)式に示すように、亜クロ
ム酸塩が生成し、遮断壁内において目詰まりを生じ、C
6+を遮断壁内に抑留させる。
【0047】この場合、塩化マグネシウムの濃度につい
ては、地下水1リットル当たり150〜1000mg
(特に250〜1000mg)とするのが好適である。
地下水中Mg2+イオン濃度は50〜300mg/1リッ
トル(通常は50〜200mg)である。したがって、
透水係数を低減し、かつ6価クロムの浸出を防止するた
めに、少なくとも現地盤中の地下水中のMg2+イオン濃
度より高める必要がある。他方で、塩化マグネシウムを
過度に含有させると、1000mgを超えて添加すると
透水性が高まり、特に5000mg程度になると、セメ
ント−ベントナイト壁がボロボロに軟化してしまう。
【0048】他方、本発明では、PAC以外に、硫酸第
二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウムなども用いること
ができる。これらの凝集剤については、基本的にPAC
と同様の凝集作用を示すが、PACの効果より若干劣る
傾向がある。これを、図2および図5の結果の基礎とな
る実験における、経過日数14日目の透水係数と、6価
クロムの濃度で代表して表3に示す。また、溶解度積が
1.0×10-12 以下(小さい)である他の無機凝集剤
についても、目的に対して十分に小さい透水係数を示す
ことが認められた。
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照しながら具体的に説明する。現実に遮断壁を構築
し、汚染物質を捕捉する際には、たとえば次記の方法を
採ることができる。
【0051】図8および図9は本発明の施工対象領域を
示す概念図であり、廃棄物1の捨場の周囲を取り囲んで
遮断壁2を構築してある。廃棄物により汚染されたまた
は汚染の虞れがある領域Aの周囲に、その領域Aから周
辺への汚染物質の移動を阻止する遮断壁2は、好ましく
は下部に不透水層3が存在する場合には、その不透水層
3に達して構築する。また、不透水層3を有しない、あ
るいは下方へ地下水に乗って浸透の虞れがある場合に
は、汚染領域の下部に遮断壁2と同様の底壁を適宜の手
段により構築することができる。この場合の底壁は遮断
壁2と連続しているのが望ましい。
【0052】かかる遮断壁2を構築する材料としては、
セメント−ベントナイトを主体とするものを用いる。こ
の遮断壁2中には、廃棄物1中の汚染物質を吸着保持す
る粒子またはその粒子を造粒したペレットからなる捕捉
中核材料、あるいはその表面に、汚染物質との直接の接
触を防止する被膜を形成した捕捉材料を含有させること
ができる。
【0053】遮断壁2の構築に際して、連続地中壁を構
築方式に用いる場合には、ガイドウォールを形成して、
ベントナイト安定液で満たしながら掘削溝を掘削し、掘
削した後、そのベントナイト安定液にセメントなどの固
化性材料および前記の捕捉材料を添加攪拌しまたは置換
攪拌し、その固化を図ることで造成できる。
【0054】造成された遮断壁2は、一般に当初はその
透水係数が大きく、したがって遮断壁2内を汚染物質を
含む液が透過する割合が大きい。このとき、捕捉材料は
その液の接触により、被膜が一部または全部溶解し、捕
捉中核材料が露出する。この露出した捕捉中核材料に対
して、汚染物質が吸着保持される。やがて、遮断壁2の
造成後の経時に伴って、透水係数が小さくなり、高い遮
液性を発揮する。この場合であっても、クラックなどを
通して遮断壁2内に入る液に対してその汚染物質を捕捉
中核材料が吸着保持する。その結果、遮断壁2の周囲に
は、汚染物質の流出を防止できる。また、被膜を構成す
る材料または膜厚を選択することにより、固化の完了時
点までに被膜が溶解するようにコントロールすることも
できる。
【0055】掘削溝を安定液で満たさない場合などにお
いては、遮断壁2の構成材料とともに捕捉材料を予め混
合して、その掘削溝内に打設することができる。
【0056】上記例において、捕捉材料に関しては、汚
染物質を吸着または保持するもの、たとえば活性炭、石
炭、木炭、ゼオライト、バーミキュライト、カオリン、
ナトリウムベントナイト、シリカ、高炉スラグのほか、
他の粘土鉱物を単独または複数混合した状態で用いるこ
とができる。この種のものには、イオン交換能力、吸着
能力あるいは多孔質によるその孔内への保持能力を有す
るので、これを利用することができる。
【0057】さらに、捕捉中核材料の表面を被覆する被
膜としては、水や遮断壁を構成するスラリーにより溶解
する材料を用いればよく、たとえばゼラチン、セルロー
ス系材料、酢酸ビニル系材料を用いることができる。
【0058】具体的な配合としては、セメント(より好
適には高炉セメント)250kg当たり、Naベントナ
イト20〜250kg、特に40〜80kg、必要によ
り膨張剤、たとえば電気化学工業社製「デンカCSA」
15〜40kg、必要により減水剤、たとえばポゾリス
物産社製「ポゾリスシリーズ」1〜5kg、さらに必要
ならば、前記の汚染物質捕捉材を適量とし、これに
水、たとえば1000kgを配合して用いることができ
る。
【0059】さて、本発明にしたがって、遮断壁2の内
部または汚染対象領域に、本発明に係る凝集剤、たとえ
ばPACを含有させるための具体的手段として、遮断壁
2に注出管10を設置する。
【0060】この注出管10としては、図11に具体例
を示すように、外管10Aの壁面に高さ方向に複数の注
入口11を形成し、その内部に同心的に挿入設置される
内管10Bから、PAC水溶液12を吐出させて、外管
10Aの注入口11から可撓性の短管状のスリーブ15
を膨張させながら遮断壁2および汚染対象領域に注入す
ることができる。
【0061】この場合、特に遮断壁2については、PA
C水溶液12の広い範囲への浸透がさほど期待できない
ので、内管10Bの注入口13を挟んでエアまたは水な
どの流体圧により膨縮するパッカー14、14を設け、
地上から各パッカー14、14を膨張させて外管10A
の内壁面に当接させた状態で、PAC水溶液12の注入
を行い、次いで、たとえば所定長さステップアップし
て、上のステージにおいて、同様の注入を行うことを繰
り返すのが好適である。
【0062】この注入時点としては、遮断壁2の硬化が
開始した時点、より具体的には、遮断壁2の造成後、2
4〜48時間後に注入することが好適である。これによ
り、遮断壁2の汚染対象領域方向に水みちを形成でき、
後に、この水みちを通って汚染地下水が遮断壁2を通ろ
うとするときにおいて、6価クロムの捕捉を行うことが
できるからである。
【0063】注入には、注入ポンプにより低い圧力で注
入するほか、図10に示すように、高架タンク16に塩
化マグネシウム水溶液12を貯留して、水頭ヘッドを利
用して徐々に注入することもできる。
【0064】必要ならば汚染対象領域にPAC水溶液を
前述の注入態様のほか、単なる流し込みなどの適宜の手
段によりPACを存在させることもできるが、地下水に
ある濃度で、PACを存在させるためには、大量のPA
Cを必要とするとともに、現実的または最終的には、遮
断壁において捕捉を図るのであるから、遮断壁2の内
部、特に汚染対象領域に近接した位置を注入位置とする
のが望ましい。
【0065】なお、本実施形態では、PACを含有させ
る場合についてのみ説明したが、硫酸第二鉄、塩化第二
鉄、硫酸アルミニウムなどを使用する場合、またはこれ
らを併用する場合、さらに塩化マグネシウムを添加する
場合でも、同様の方法により施工を行うことができる。
【0066】
【発明の効果】以上の説明から明らかなとおり、本発明
によれば、遮断壁の透水係数を低下させることができる
とともに、優れた6価クロム(Cr6+)の遮断性を示す
ものを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基礎となった実験設備の概略図であ
る。
【図2】実験結果を示すグラフである。
【図3】実験結果を示すグラフである。
【図4】実験結果を示すグラフである。
【図5】実験結果を示すグラフである。
【図6】実験結果を示すグラフである。
【図7】コロイド粒子と高分子凝集剤との吸着および架
橋結合を示す模式図である。
【図8】本発明の施工例を示す断面概要図である。
【図9】施工例の平面図である。
【図10】注入管の設置例を示す概要断面図である。
【図11】注入管の例の断面概要図である。
【符号の説明】
1…廃棄物、2…遮断壁、3…不透水層、10…注出
管、10A…外管、10B…内管、A…汚染領域。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯尾 正俊 東京都千代田区九段北4丁目2番35号 ライト工業株式会社内 (72)発明者 ダニエル グヴァノ フランス国 92110 クリシ アレガン ベッタ 1 (56)参考文献 特開 平7−24441(JP,A) 特開 平8−252555(JP,A) 特開 平6−166556(JP,A) 特開 昭62−132579(JP,A) 特開 昭58−36690(JP,A) 特開 昭54−33294(JP,A) 特開 昭52−52460(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B09B 1/00 A62D 3/00 B09C 1/02 B09C 1/08

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】汚染されたまたは汚染される虞れがある汚
    染対象領域に対して、セメントおよびベントナイトを主
    体とする遮断壁を構築してその遮断壁の外側に汚染物質
    が流出するのを防止する方法において、 前記遮断壁の内部または汚染対象領域に、2価または3
    価の金属の化合物であり、かつその金属イオンが水酸化
    イオンと反応し水和物を生成し、その水和物の溶解度積
    が1.0×10-12 以下である、無機凝集剤の少なくと
    も一種を含有させることを特徴とする汚染物質の捕捉方
    法。
  2. 【請求項2】前記凝集剤は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、
    硫酸アルミニウム、およびポリ塩化アルミニウムの群か
    ら選ばれる請求項1記載の汚染物質の捕捉方法。
  3. 【請求項3】前記遮断壁の内部または汚染対象領域に、
    ポリ塩化アルミニウムを含有させる場合に、前記遮断壁
    の壁面周囲部分における地下水1リットル中、0.5m
    g以上の濃度で含有させ、pHを4以上5未満に調整す
    る請求項1記載の汚染物質の捕捉方法。
  4. 【請求項4】前記遮断壁の壁面周囲部分における地下水
    1リットル中、塩化マグネシウムを250〜1000m
    gの濃度で存在させる請求項1または2記載の汚染物質
    の捕捉方法。
  5. 【請求項5】汚染されたまたは汚染される虞れがある汚
    染対象領域に対して、セメントおよびベントナイトを主
    体とし、外側に汚染物質が流出するのを防止する遮断壁
    において、 前記遮断壁の内部に、2価または3価の金属の化合物で
    あり、かつその金属イオンが水酸化イオンと反応し水和
    物を生成し、その水和物の溶解度積が1.0×10-12
    以下である、無機凝集剤の少なくとも一種が含有されて
    いることを特徴とする汚染物質の捕捉用遮断壁。
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