工場などで発生する塵埃や油煙を除去するために用いられるオイルミスト除去装置は、例えば特開平10−216437号公報をはじめ特開2003−225524にも記載されているように、羽根車の回転によって吸引した空気をフィルタに通し、随伴されるオイルミストや微細な切削屑などのダストを捕捉する。
その装置は、オイルミストを含んだ空気を略水平方向に吸引し、羽根車の上流側にあるフロントケーシングに配置した平面状の前段フィルタによりオイルミストを一次的に除去する。そして、羽根車室を通過した吸引空気をメインケーシングに装着された円筒状の後段フィルタの外面から内方に流通させることにより、残存オイルミストを最終的に捕捉して浄化する。なお、場合によっては空気の流れを羽根車通過後に曲げるなどして最終段フィルタ前の中段フィルタによって二次的に浄化することもある。いずれにしても多段構造フィルタ機構が採用される。
吸引空気は多段フィルタ構造により順次濾過されて大気中へ放出されるが、その間に各段のフィルタ層にはオイルミストや塵埃が付着する。その量が多くなれば目詰まりを起こすことは言うまでもなく、定期的に交換される。なお、フィルタとして、通常ある一定の厚みを持った不織布や多重構造の繊維質フィルタ等が使用される。
このようなオイルミスト除去装置は、例えば図8に示すように、羽根車2および電動機6を格納しているメインケーシング3Aと、上流側でこれに一体化されたフロントケーシング3Bとを備える。空気導入管14に連なるフロントケーシング3Bの吸込口11の直後には多層構造の面状フィルタ4が直立姿勢で、大気への排気用吐出口9を持つメインケーシング3Aには電動機6を取り囲むように重層構造の筒状フィルタ8が横置き姿勢で装備される。前者は図に垂直となる側方へ、後者は図の右である後方へ引き出して交換される。
すなわち、筒状フィルタ8は電動機6の周囲に設けた円筒形のワイヤケージ42によって支えられるので、大気開放の吐出口9と一体になったリヤカバー43を外せば、水平な姿勢のまま後方へ取り出すことができる。一方、面状フィルタ4はフィルタケージ5に格納され、図9に示すサイドカバー16のいずれか一方を外してフロントケーシング3B内に設けた左右に延びるガイドレール15(図8を参照)に案内させて側方に運び出すことができるようにしている。
このようなフィルタ取付構造を採用しておけば、壁際に配備されたり工作機械直上の高いところに設置されることの多いこの種の装置でのフィルタを交換する作業が極めて容易となる。すなわち、近づきさえすれば水平な目線で手軽にケーシングを開くことができ、従前では欠かせなかった前方引き出し時の空気導入管(図8中の符号14)の取り外し作業や、高所での不安定な姿勢が強いられる上方引き出しといった操作を回避することができ、保守点検における負担がおおいに軽減される。
ところで、多層構造の面状フィルタを保持するフィルタケージは、フィルタの撤去や装填が容易であること、羽根車の作動中に流通する空気に左右されてフィルタの姿勢を変化させないこと、フィルタケージの開閉構造をシンプルにしておくこと、前面に衝突板が備えられている場合は、空気流から脱落させた塵埃を捕捉ミストと分別して収集でき清掃が容易であること、衝突板をフィルタケージに安定して取りつけておくことができること、フィルタ交換時に衝突板が邪魔にならないようにしておくことなどを配慮した利便性の高いものであることが望まれる。
これらの点を可及的に満たそうとするフィルタケージが、上記の特開2003−225524に開示されている。それは、衝突板に当たって落下したダストを収容するボックス状のダスト受け17(図8を参照)をケージ前面下部から前方へ張り出して設けており、このダスト受けの底部前縁とケージの底部後縁を前後一対のロアガイドレール15,15に載せ、ケージの頂部前縁と頂部後縁をアッパガイドレール15,15に沿わせるようにして、出し入れを容易にしている。
そのケージは、吸引空気の流通を阻害しないように、前後は図10に示すように格子面となっている。すなわち、ケージのトップ52tとサイド52sとボトム52bが単なるパネルをなして多層構造の面状フィルタ(図示せず)を囲繞し、フロントとリヤの格子面52f,52rがフィルタ層の直立姿勢を保つ。そのうち、リヤ格子52rはサイド52sの後縁部に設けた上下に延びる昇降用ガイドレール53に抜き差し可能に装着され、フィルタケージ52の背後からフィルタの交換を可能にしている。
フィルタの交換作業は、図11に示すフロントケーシング3Bより引き出されたフィルタケージ52からリヤ格子52rを引き上げ、所定枚数からなる面状フィルタ4を除去して、新しいものを入れて下ろせばよい。フィルタが再装填されたフィルタケージ52をフロントケーシング3Bに格納し、サイドカバー16を取りつけてフロントケーシング3Bを密閉する(図9を参照)。フィルタの交換自体はフロントケーシング3Bの外部で行われ、その作業性は極めて高いものとなる。
このように、フィルタケージ52からリヤ格子52rを抜き取り可能(図10を参照)としておくために必要となる昇降用のガイドレール53は、サイドパネル52sの後縁を曲げるだけで形成され、フィルタケージを構成する部品数を増やさず実現できる。それだけでなく、羽根車の吸引力を受けるフィルタ層がリヤ格子を昇降用ガイドレールに押しつける結果、リヤ格子52rのがたつきやそれに原因する騒音の発生が抑えられ、安定した静かな運転を可能にする。衝突板13(図10を参照)は周囲のパネルと一体をなしたフロント格子52fに取りつけられるから、リヤ格子52rの抜き取りがそれとは独立して可能となり、衝突板13の固定方法に自由度を持たすことができる。
ところで、多層構造の面状フィルタ4で捕捉されるミスト量は90%にも達することが多く、その汚れの程度は筒状フィルタ8(図8を参照)の比でない。リヤ格子を着脱自在とする場合、汚れの酷いフィルタ層を取り替えようとすると、汚れの少ないフィルタ層も含めて多層構造の面状フィルタの全てを取り出さなければならない。最前層や必要に応じて第二層を剥がして新しいものを重ね、これをケージに収納するとき、少ないとはいえオイルミストの付着した継続使用層にも手を触れねばならず、装填作業の円滑を欠く。その一方、フロント格子は固定されているから、ダスト受けに溜まったごみは取り出しが容易でない。とりわけ、ダスト受けとフロント格子の境界部分の隅に付着するごみの大部分は油にまみれた微細な金属片であり、その剥落作業に多大な労力を費やさねばならないことが多い。
さらに、フィルタ層が羽根車の吸引力によりリヤ格子に密着したり食い込んだりし、またリヤ格子の目からフィルタが膨らみ出るなどしていると、リヤ格子が抜き取りにくくなる。面状フィルタ層の自由厚さはフィルタケージの前後寸法よりやや大きく与えられているため、上流側の一・二枚を取り替えただけのときの再装填時には、格子の間から指を入れるなどして油の付着するフィルタを押し返しながら嵌め込み空間を確保しなければならず、操作が極めて煩瑣なものとなる。
特開平10−216437号公報
特開2003−225524
以下に、本考案に係るオイルミスト除去装置を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。図8の従来技術の項で触れたとおり、その装置1には、オイルミストが含まれた空気を吸引する羽根車2を装備したメインケーシング3Aと、その上流側に位置するフロントケーシング3Bとが備えられる。フロントケーシング3Bにはオイルミスト捕集用の多層構造の面状フィルタ4が格納されるが、それを保持するためにフィルタケージ5が使用され、これがフロントケーシング3Bの側方で出し入れ可能となっている。なお、羽根車2は水平な回転軸を有する例えばパドルファン形式の遠心式タイプであり、その上流側と下流側にフィルタが配置され、多段のフィルタ構成となっている。
上記したメインケーシング3Aは、羽根車2とそれを駆動する電動機6、二次デミスタ7、後段フィルタとしての重層構造の筒状フィルタ8および吐出口9を備え、羽根車室2Rと濾過室8Rと電動機収容空間兼浄化空気通路6Rに画成されている。フロントケーシング3Bは、後述する要領でファンケーシング3Aにボルト10,10で締結され、通常は一体となっている。これは吸込口11、フィルタケージ5および一次デミスタ12を備え、ダスト除去空間13R、濾過空間5R、捕捉油滴下空間12Rが軸方向に並んで確保されている。
このような構造によって、蛇腹式ダクト等の空気導入管14を介して取り込まれた空気は、メインケーシング3A内の羽根車2の回転によって略水平方向へ吸引される。その流れからはフロントケーシング3B内に配置の多層構造の面状フィルタ4によってオイルミストが一次的に捕集され、羽根車室2Rを経てメインケーシング3Aの後部に至った空気からは横置きの筒状フィルタ8によって残存オイルミストが二次的に除去され、吸引空気からオイルミストを捕捉して浄化できるようになっている。
面状フィルタ4はポリエステル繊維等からなる不織布であり、何枚もがフロントケーシングに設けた左右へ延びるガイドレール15,15に沿って側方へ出し入れすることができるフィルタケージ5に収納されている。そのガイドレール15は例えば段付き断面のサッシュのようなものであり、フィルタケージは後述する籠体をなしている。なお、フロントケーシング3Bは側面開放形式となっているので、それを閉止しておくためのサイドカバー16,16が左右に取りつけられる。
図3を参照して、そのフィルタケージ5の前面中心部分には、空気の流れに随伴するダストや細粒物を叩き落とす衝突板13がステー13aを介して取りつけられる。そして、その下方には衝突板によって落下したダストを収容するボックス状のダスト受け17が設けられる。このボックスはケージ前面下部から前方へ張り出しており、フィルタケージと一体的に形成される。フィルタケージ5は、トップパネル5t,サイドパネル5s,ボトムパネル5b,それらと一体のリヤ格子5r,サイドパネル前縁部に抜き差し可能に装着されるフロント格子5fおよび上記したダスト受け17とでもって、面状フィルタ4(図8を参照)をホールドする一つの籠体を形成している。
もう少し詳しく述べると、フロントケーシング3Bは図1に示したように、幾つかの箱の組合せ体の形態となっている。これは、フロントボディ18とリヤボディ19および二つのサイドカバー16,16からなる。このサイドカバーはクランプ金具20を解けば取り外すことができるが、フロントボディ18とリヤボディ19とは、溶接などによって一体化して組み立られている。
このフロントケーシング3Bは、面状フィルタ4を収納したフィルタケージ5を格納するものであるが、それを簡単に出し入れすることができるように配慮される。すなわち、フロントボディ18には上下に各一本のガイドレール15U1 ,15L1 が固定される。レール15U1 はフィルタケージ5の前面上縁を案内し、レール15L1 はダスト受け17の前面下縁を乗載できるように配置される。なお、図中の丸い開口は先に述べた吸込口11であり、その下方の傾斜したプレートは吸引空気から離脱した切削粉をダスト受け17へ誘導するための案内板21である。
リヤボディ19にも、ガイドレール15U2 ,15L2 が設けられる。レール15U2 はフィルタケージ5の背面上縁を案内し、レール15L2 は背面下縁を乗載できるように配置される。このリヤボディ19を上記したフロントボディ18と図のように一体化させると、ガイドレール15U1 ,15U2 ,15L2 ,15L1 によって囲繞される部分がフィルタケージ挿脱用開口22を形成する。なお、図中の23は背後のメインケーシング(図示せず)へ空気を送るための丸い開口である。
図8に示したように、フロントケーシング3Bにはフィルタケージ5を収納する位置の背後に一次デミスタ12を設置できる捕集油滴下空間12Rが確保されている。このデミスタはメインケーシング3Aに備えられた二次デミスタ7と同じく、成長油滴の下流側への飛散を抑制して筒状フィルタ8での濾過負担を大幅に軽減しておこうとするためのものである。その構造は、例えば多数のアルミ線24を上下方向にして並べ、前後から金網25を当てるなどして適宜の箇所を針金で一体的に括りつけ略マット状にしたものである。流れ方向に重なる密集したアルミ線は飛来した油滴を捕捉し、上下に延びるアルミ線を伝って油滴をフロントケーシング3Bの下部へ導く。
一次デミスタ12は面状フィルタ4と略同じサイズの前面面積を備えており、フィルタケージ5の背面部を案内するガイドレール15U2 ,15L2 を図1のように後方へ張り出させて乗載桟26U,26Lを形成し、これに載せるようにしておけば、リヤボディ19は部品点数の少ないシンプルな構造としておくことができる。なお、各乗載桟の後縁には突起27U,27Lが設けられ、リヤボディ19のサイドパネルル19sの内面にもフック27Sを取りつけておけば、一次デミスタの後方への位置ずれが阻止され、フィルタ・デミスタ構造体の安定が図られる。
サイドカバー16はフィルタケージ5をフロントケーシング3Bに入れた後に、そのフロントケーシングの気密を保っておくための蓋である。これは必ずしも左右なければならないというものでないが、図のように左右の対にしておけばいずれが壁に面しようとも他方を使用できることは言うまでもない。このカバーは蝶番を用いて例えば観音開き構造としてもよいが、この例ではクランプ金具20を使用してカバー全体を固定しまた取り外すことができる。
なお、クランプ金具20による固縛を解放したときカバーが直ちに脱落しないように、フロントケーシング側に突出する爪体28(図9を参照)が設けられる。そのため、図1に示すように、リヤボディ19のサイドウオール19sには挿入孔29が形成され、係合させることができるようにしている。その爪体があれば、サイドカバー16をフロントケーシング3Bにあてがうときの位置決め操作も助ける。なお、サイドカバー16はフロントケーシング3Bを密閉しておく必要のあることから、パッキン材がカバー内周部に嵌め込まれる。
次に、面状フィルタを収納するフィルタケージ5について述べる。面状フィルタ4は、図4に示したように面状をなした多層フィルタ構造である。そのフィルタの一つひとつはポリエステル繊維のマット4Aであり、例えば前後各二層のフィルタマットの間に油滴を流下させると共に、前二層で捕捉し凝集させた油滴を後二層に移らせないようにするための菱形スペースネット4Bが介在される。
このような面状フィルタ4を収納するフィルタケージ5は、その前後が図3に示したフロント格子5fと、図4に示すリヤ格子5rで形成される。いずれも例えば金属製パネルであるが、フロント格子は縦横の桟を備えて空気流入用の開口30(図3を参照)を、リヤ格子5rも空気流出用の開口31を有して面状フィルタを押さえるように機能する。リヤ格子5rは、この例では周囲のトップ5t、サイド5s、ボトム5bの各パネルと一体をなして固定された状態にあるが、フロント格子5fはサイドパネル5sの前縁部に抜き差し可能に取りつけられる。
すなわち、サイドパネル5sの前縁部には図4の破線円中の拡大図に示した曲げ部32が形成され、図2のように上から隙間33に落とし込むことができるようになっている。このような構成によって、フロント格子5fとリヤ格子5rとで面状フィルタを押さえつつ空気の流通を図り、面状フィルタの安定を増強する。フィルタケージ5は空気の流れを阻害することなく多層構造の面状フィルタ4が流れに直角となるように保持するが、そのフロント格子5fはサイドパネル5sの前縁に形成された昇降用ガイドレール32に沿って上方へ簡単に抜き取り可能となっている。
このように出し入れ自在なフロント格子5fと固定状態に置かれるリヤ格子5rを備えたフィルタケージ5は、フィルタの撤去や装填が容易であり、羽根車の作動中に流通する空気によってフィルタの姿勢を変化させることもなく、多層構造の面状フィルタを保持するにふさわしく、またケージの取扱性を向上させた構造を持つことになる。
フロント格子5fの前面には前述したように吸引空気から随伴細粒物を叩き落とす衝突板13が取りつけられているので、衝突板を避けて通過するオイルミストと分別して塵埃を収集でき、回収が容易となる。衝突板13はフロント格子の面剛性を高めるようにも作用し、フィルタの保持機能を維持しつつ格子の薄肉化や軽量化を促す。衝突板はフロント格子と一体であるから、フィルタの取り替え作業の邪魔をすることもないし、衝突板自体の清掃も手軽になる。
衝突板には吸引空気が衝突するからその動圧がフロント格子の略中心部を少し下流側へ押しやり、格子をフィルタ層に接触させるなどして無用な振動の発生を防止する。また、昇降用のガイドレール32内に留めるようにも作用する。ちなみに、図4中の拡大部分に示すように昇降用ガイドレール32の下流側にアングル材34を固定して溝33を形成させるようにしておけば、フロント格子を下ろす操作はより一層容易となる。なお、フロント格子の出し入れのために昇降用ガイドレール32の直上は、トップパネル5tの縁部が被らないよう配慮される。
こうして面状フィルタをホールドすることができるフィルタケージ5には、フィルタ層格納部すなわち濾過空間5Rの下部のボトムパネル5bに凹み35(図4を参照)が形成され、この凹みの底部にオイル抜き孔36が設けられる。この凹みの存在によりフィルタケージ5がフロントケーシング3Bから引き出しにくくなるのを回避するため、図1に示したごとくリヤボディ19のサイドパネル19sには、そのフロントボディ18との境界近くに切欠き部37が形成される(図8も参照)。
上記のオイル抜き孔36を設けておくと、フィルタケージ5からの油切れが極めてよくなる。フィルタケージをフロントケーシング3Bから引き出すとき、ケージ下面を伝う油滴や拡がる油膜の量を少なくしておくことができ、従ってフィルタ交換時の油汚染が可及的に抑えられる。図4の例では二箇所設けられているがその数は適宜選択される。いずれにしても横一列に配置しておけば切欠き部37(図1を参照)の幅を可及的に小さくしておくことができる。ちなみに、その切欠き部に小さなゴムプレートを貼着するなどしておけば(図示せず)、引き出し時の油どりスクレーパとして機能させ、油飛散をより一層少なくすることができる。
このように構成されたオイルミスト除去装置によれば、以下のようにして組み立て、空気を流してその浄化を図ることができる。まず図1のように一体化されたフロントケーシング3Bは図8に示したメインケーシング3Aに、図示しないパッキンを挟んでボルト締結される。メインケーシング3Aのフロントプレート38にボルト10が溶接等によって予め固定されており、そのねじ部を図1に示した締結孔39に挿通し、ガイドレール15U1 ,15U2 ,15L2 ,15L1 で囲まれたフィルタケージ挿脱用開口22から手を入れるなどして、ナットを掛ければよい。
フロントケーシング3Bにはフィルタケージ挿脱用開口22から一次デミスタ12(図8を参照)が入られ、それをガイドレール15U2 ,15L2 の乗載桟26U,26Lに載せる。それを突起27U,27Lとフック27Sに当たるまで下流側へ押しつけ、その前面部分に前抜け防止用の適数本の棒材40を立てる。棒材は上端を乗載桟26Uの孔に下方から深く挿入した後に下端を乗載桟26Lの孔に落とし込むと、膨径部40aで支えられる。
一方、フィルタケージ5においては、図4のようにフロント格子を取り除いて所定枚数の面状フィルタ4を収納し、図3のようにフロント格子5fを下ろせばよい。フロント格子を嵌め込むとき最前面のフィルタが膨らみ加減になるが、格子の間に手や指を入れて軽く押し返せば、フロント格子を簡単にセットすることができる。このようなフィルタケージ5をフロントケーシング3Bに格納し、図9のようにサイドカバー16,16を取りつけ、フロントケーシング3Bを密閉しておく。
ちなみに、図8のメインケーシング3Aにおいては、略ドーナツ状であるが例えば左右二つ割れとなっている二次デミスタ7のマットが、羽根車室2Rと濾過室8Rを画成する隔壁41に沿って取りつけられる。そして、電動機6の周囲を覆うワイヤケージ42の外周に、筒状フィルタ8が後方から嵌め込まれる。最後に、吐出口9の付いたリヤカバー43が被せられ、クランプ金具44で固定される。
本装置を工作機械の直上に配置するなどして、油煙の発生する箇所から空気を取り入れるダクト(空気導入管14)が図8のように吸込口11に繋がれる。電動機6を駆動すると羽根車2が回り、空気がフロントケーシング3Bに導入される。吸引空気に伴われたダストは、落下しやすくするために前傾させた衝突板13に当たり、そこで失速してダスト受け17に入る。一方、オイルミストはフィルタケージ5に入り、面状フィルタ4によって捕捉される。図2に示す上流側の2枚のフィルタ4A1 4A2 で捕捉されたオイルミストは、後続の捕捉オイルミストと接触して油滴に成長する。ちなみに、フロント格子5fの最下部にも横桟5aを形成しておけば、ダストがフィルタ層に進入するのを阻止しておくことができる。フロント格子5fを外せば、ダスト受けとフィルタ層格納部との境界部分、すなわちフロント格子の直下に溜まったごみの掻き出し作業が極めて容易となる。
フィルタにおいては、結集してできた油滴が表面張力などによって簡単に流下することはないが、この成長した油滴は風圧で剥がれて下流側へ押しやられることが多い。図8を参照して、押し流された油滴が菱形スペースネット4Bに到るとそれに付着するが、このネットは横線のない傾斜した線ばかりであるので、それに沿って流落する。その油滴は面状フィルタ4の下部に溜まるが、オイル抜き孔36(図2を参照)を通してフロントケーシング3Bの油溜め45に落とされる。ダスト受け17が設けられているがために油溜めに進入するダストの量は極めて僅かであり、排油パイプ46での詰まりもほとんどなく円滑に排出される。
菱形スペースネット4Bはフィルタスペーサとしても機能する厚みを持つものであり、面状フィルタ4における空気の閉塞を和らげる。菱形経路を利用しての流落の促進は、下流側での濾過性能の向上やフィルタの交換頻度の低減にも寄与する。この菱形スペースネット4Bを通過した空気は下流側のフィルタ4A3 ,4A4 (図2を参照)に入り、さらにオイルミストが捕捉される。
一次デミスタ12に入った空気がこれを通過するとき随伴油滴はアルミ線に付着し、再度油滴の流落が助長される。空気はフロントケーシング3Bの開口23(図1を参照)を経て羽根車室2Rに入るが、この時点でオイルミストや成長油滴は半減してしまっているので、羽根に付着する油や微細なごみが少なく、羽根車の回転にアンバランスをきたすこともない。もちろん、成長油滴の羽根車進入を抑制するので、筒状フィルタでの濾過負担がおおいに軽減される。
羽根車室2Rで加圧された空気は矢印47(図8を参照)のように流れて、二次デミスタ7に入り、ここでさらに脱油される。このように油滴を除去しておくと筒状フィルタ8での濾過負担がさらに軽減されることは言うまでもない。濾過室8Rに到ると筒状フィルタ8を矢印48のようによぎって電動機収容空間兼浄化空気通路6Rに進み、浄化された空気が吐出口9を経て大気中へ放出される。なお、筒状フィルタの構造は従来技術の項に掲げた特開平10−216437号公報等に紹介されているのでここではその説明を省くが、面状フィルタを巻いて筒状フィルタとして使用することも何ら差し支えない。
二次デミスタ7や筒状フィルタ8から離脱した油滴はメインケーシング3Aの底部の油溜め49に集められ、排油パイプ50から排出される。一方、面状フィルタ4の油汚染が酷くなる頃合いを見計らってサイドカバー16が開かれ、フィルタケージ5が取り出される。運転中の羽根車2による吸引力でフィルタ層は下流側へ変位傾向にあり、フィルタとの間に僅かでも空隙が生じていれば密着状態は軽減され、また、フィルタ層に付着した油滴がフロント格子5fとの滑りを助けるから、フロント格子の抜き出しはリヤ格子を抜き取る場合に比べて著しく容易なものとなる。
図2のようにフロント格子5fを上げると、汚れの最も酷い最前層フィルタ4A1 が多層構造の手前面に位置しており、その層だけを剥がし取る。必要に応じて二番目の層も取り除くことができ、交換の必要がない背後のフィルタ層に新しいフィルタ層をあてがう。交換の対象となるフィルタ層の除去も装填もその操作は極めて容易である。このように、新しいものを既設層にあてがうようにして重ねればよく、このとき交換品以外のフィルタに触れる必要がないから、取り替えの作業は著しく楽になる。
汚れが甚だしい上流側のフィルタ層の一または二を交換し、汚れの少ない下流側の層をひき続き使用することができるから、フィルタの消費も抑えられる。フィルタの交換が手軽にできるようになれば、目詰まりの激しい最前面の取り替え頻度を上げることにより圧損増を抑えて、電動機負荷の軽減も図りやすくなる。
フロント格子5fを取り外すにあたっては、ケージのサイドパネル前縁に形成した昇降用ガイドレール32に沿わせるようにするので、シンプルな開閉構造により格子の横ぶれを生じないようにしておくことができる。そのガイドレールは例えばサッシュを取りつけるなどして形成してもよいが、サイドパネルを曲げるだけでも形成させることができる。後者の場合には、フィルタケージを構成する部品数を増やさない点で都合がよい。
リヤ格子5rは周囲のパネルと一体をなしているが、汚れの少ないフィルタ層に接するだけであり、その清掃の必要性は低いことが多く、取り外し自在となっていないことによる弊害は特にない。例えば目詰まりが進行して羽根車室に大きな負圧が立ったとしても、リヤ格子はケージのパネルと箱状をなすから簡単には変形せず、ましてやケージから外れるということもないから、フィルタ層のケージによる保形状態は飛躍的に高まる。
吸引力によりケージ後面に密着したフィルタ層にリヤ格子が食い込むなどしてもリヤ格子は取り外されることがないので、下流側に位置するフィルタ層の挙動や変形を細かく観察する必要もなくなり、保守や点検といった作業の負担は著しく軽減される。なお、羽根車の吸引力によってフィルタ層がリヤ格子に密着押圧するから、リヤ格子自体振動するのも抑えられ、それに原因する騒音は発生しなく、吸引空気の流通も安定する。
フィルタケージ5の中で汚れの酷くなるのはボトム5bを除けばフロント格子5fの裏面であるが、ケージから取り外すことができるからその清掃は極めて簡単であり、清掃が行き届けば取り替えられたフィルタを早期に汚してしまうことも避けられる。
フィルタ層の取り替えが済めばフロント格子を下ろすが、取り替えた最前面のフィルタ層4A1 が膨らみ加減となっていても、格子の間に手や指を入れて押し返せばフロント格子を簡単にセットすることができる。継続使用のフィルタ層に触れることはないから、手が汚れたり油滴を散らすこともない。フィルタケージ5を図1のようにしてフロントケーシング3Bに戻せば、運転は直ちに再開することができる。なお、デミスタは一次・二次のいずれも油切れがよいものであり、日頃は特に清掃したり交換する必要はない。
ちなみに、フロント格子を入れる直前にやや変形可能な仮押さえパネルで最前面フィルタを覆っておき、その上流側にフロント格子を押し込むようにすれば、最前面フィルタの膨らみがフロント格子のスライドを阻む程度も少なくなる。フロント格子のセットが済んだときパネルを抜き去れば、フィルタケージは空気の流通が可能となる。
これを図5を参照して説明する。アングル材34の下流側に仮押さえパネル51をひっかけるようにして、最前面のフィルタ層(図示せず)の前面に臨ませる。仮押さえパネル51を図のように曲げることができる資質のものにしておけば、フロント格子のない状態においては最前面のフィルタ層を図6のようにすっぽりと覆うことができる。フロント格子5fをガイドレール32とアングル材34との隙間33に入れるが、その操作においてはフロント格子が仮押さえパネル51に擦れるように下ろされるものの、フィルタ層のはみ出しはないから、フロント格子5fは取り替えたばかりのフィルタ層を下流側に押しやるように作用する。最後に仮押さえパネル51を図7のように抜き取れば、本来の姿に復元されたことになる。
なお、仮押さえパネル51を使用するとき、昇降用ガイドレール32にパネル51とフロント格子5fとを入れることができほどに隙間の余裕があれば、アングル材34は是非必要というものでない。トップパネル5tは図6のように昇降用ガイドレール32とアングル材34のいずれの上端をも覆わないようにしておけばよいが、仮押さえパネル51に曲がりやすいものを使用するなら、昇降用ガイドレール32の直上だけがあいている形状であってもよい。
以上の説明から分かるように、本装置によれば、面状フィルタに流入する空気から予めダストを除去した際に、そのダストをダスト受けに貯めておくことができる。このボックスは面状フィルタの上流側に位置しているので捕集されたオイルミストの油滴が混入することがなく、フィルタ交換時などに簡単に取り除くことができる。ダストがフロントケーシング内に散在することも少なくなり、ケーシング内の清掃負担が著しく軽減されるだけでなく、面状フィルタを収納したフィルタケージの交換操作も常時円滑なものとなる。
排油パイプから排出された捕集油にはダスト混入量が極めて少なく、従って排油の後処理も簡便化される。フィルタケージはガイドレールに沿って側方へ引き出すことになり、建屋壁面近くなど邪魔にならない箇所に設置することもできる。装置が大きくなるほどフィルタ交換の利便性が高まることは言うまでもなく、本装置のレイアウト上の自由度も大きくなる。