JP3112807B2 - ニッケルを含む塩化鉄溶液の処理方法 - Google Patents

ニッケルを含む塩化鉄溶液の処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、ブラウン管用
シャドーマスク、半導体用リードフレーム等の製造工程
で循環使用される塩化第2鉄を主成分としたエッチング
液の再生処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シャドーマスク等の製造工程では、ニッ
ケル合金からなる金属薄板をエッチング液に浸して所望
の微細パターンに加工している。この工程においては、
エッチングの進行に伴いニッケル合金が溶出するので、
液のエッチング能力が徐々に低下して最終的に使用困難
な廃液となってしまう。
【0003】経済性及び省資源の観点より、エッチング
廃液を再生しリサイクルすることは望ましいところであ
るが、エッチング廃液には、エッチング液としての能力
を低下させるニッケルが通常数千ppm〜1万ppm程
度存在しており、エッチング廃液を再使用するために
は、ニッケル含有量を例えば500ppm以下に抑える
必要がある。
【0004】そこで、このような廃液を再生し、エッチ
ング能力を回復するための試みが従来から種々行われて
いる。例えば特開昭61−104092号公報には、イ
オン交換膜によって区画された電解槽の陽極室に第1鉄
塩を含み第2鉄塩を有効成分とするエッチング廃液を供
給して連続的に酸化再生することが開示されている。こ
の方法では2価鉄から3価鉄への反応を電流効率ほぼ1
00%で行うことができるとしている。
【0005】しかしながら、当該方法においては、使用
する隔膜が陰イオン交換膜であるために、再生すべき廃
液中の陽イオン、特に2価のニッケルを陰極側へ移動さ
せることができない。また当該公報の実施例では、Fe
Cl3を追加してNiCl2を一定濃度に保つとしてお
り、当該方法では、増加する塩化鉄溶液を排出して別
途、処理することが必要とならざるをえない。更に使用
されるイオン交換膜は比較的高価で耐久性に乏しく、取
り扱いも煩雑で実用性の点で難がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】それゆえ本出願人は、
同じく廃液を電解処理する方法として、特開平6−24
0475号公報において、電気的に中性で電気抵抗の小
さな隔膜を用い、陰極でニッケル及び鉄を電析回収する
とともに、陽極で含有する2価鉄イオンを3価鉄イオン
に酸化し、更に発生する塩素ガスについても、塩化第1
鉄を含むエッチング液の酸化に有効利用することを提案
した。
【0007】更に優れた方法として、ニッケルを含む塩
化鉄系のエッチング液を、電気的に中性で電気抵抗の小
さな隔膜を有した電解槽に供給し、当該電解槽の陰極側
で金属を電析回収するとともに陽極側で電解酸化して2
価鉄を3価鉄とし、また陽極側で発生する塩素ガスを酸
化剤として用いることで、エッチング廃液を連続的に再
生する方法において、同じ組成の液を同じ電解槽でバッ
チ処理して得られる通電量と析出金属組成の関係から所
望金属比となる単位時間当たりの処理液量を決定し、こ
の単位時間当たりの液量で電解槽への液供給を行うこと
も提案している(特願平6−309031号)。
【0008】このような方法によって、エッチング工程
で溶出するニッケル・鉄合金のみを系外に取り出すべ
く、電解槽の陰極側で析出回収される金属中のNi/F
e比を制御し、もって他の成分を全てリサイクル可能と
した。しかしながら、当該方法は、廃液中に数%含有す
るNiを約1/5の量にまで低下させるには良い方法で
あるが、より一層除去率を上げて、回収液中に残存する
ニッケル濃度を新液並みに低下させることは、経済的に
みて極めて困難である。また電解では、析出する金属中
の鉄とニッケルの含有率が電解の進行に伴い変化するた
めに安定した析出物が得にくい。また電極板上に析出す
る密着性のニッケル・鉄合金は、歪みや割れ、樹状結晶
の発生が起こりやすい。
【0009】一方、金属鉄を添加することで脱ニッケル
を行う一連の提案がある。例えば特開平5−26327
3号公報には、塩化鉄水溶液に鉄材を加えて得られる液
に鉄粉を加えて当該水溶液中のニッケルを除去及び回収
するに際して、ニッケル析出に必要な鉄粉を分割添加
し、分割添加毎に析出するニッケルをその都度分離する
ことが開示されている。このような所謂鉄置換法による
処理では、再生液中に残存するニッケル濃度を100p
pmくらいまで低下させることができ、析出金属の回収
も鉄材とともに濾別すれば良く、容易であるが、上記シ
ャドーマスクやリードフレーム製造の際の廃液のように
多量の3価鉄を含有する液を処理する場合には、
【0010】
【数1】
【0011】の反応に先行して、
【0012】
【数2】
【0013】の反応が起こるため、塩化第2鉄を例えば
200g/lのように多量に含む液の場合、大量の余剰
塩化鉄の発生を伴い、その処分に苦慮しているのが現状
である。また鉄置換の際に、回収されるニッケルと等モ
ルの鉄の溶出があるので、エッチング液の再生のために
は、この溶出鉄分の回収も問題となる。
【0014】そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑
み、鉄置換法の利点である析出物回収の容易さと高いニ
ッケル回収率を活かし、しかも同法の欠点である余剰塩
化鉄発生を極めて抑制したエッチング液の再生方法を提
供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の課題を、
塩化第2鉄と塩化ニッケルを主成分とする溶液を電解還
元し、当該溶液に含有される3価鉄の少なくとも一部を
2価鉄とした後に、当該還元溶液を鉄材と接触させて、
溶液中に含有されるニッケルを還元析出し、ニッケル析
出後の溶液を再び電解処理して鉄を還元析出するととも
に、電解処理で発生した塩素ガスを用いて、鉄析出後の
溶液を酸化することにより、解決した。
【0016】電解処理にあたっては、電気的に中性で電
気抵抗の小さな隔膜を有した電解槽を用いるのが好まし
い。また置換反応に使用する鉄材としては、取り扱いが
容易で接触面積を大きくすることができる鉄粉を使用す
るのが好ましい。例えば粒径として、100メッシュパ
ス以上が好ましく、150〜350メッシュパスがより
好ましい。更に比表面積として、1m2/g以上を有す
れば、ニッケルの除去効率が上がり、好ましい。
【0017】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げて更に具体的に
説明する。実施例 図1に示すように、2価の鉄成分20.3g/リット
ル、3価の鉄成分205g/リットル、ニッケル成分1
4.5g/リットル、塩素成分434g/リットルの組
成からなる廃液2000mlを、ポリエステル濾過布の
隔膜を有した電解槽1の陰極室(陰極:チタン板)に導
き、同じ組成液を陽極室(陽極:RuO2/Ti網(D
SA電極))に満たして、定電流10Aで、陰極、陽極
とも電流密度20mA/cm2、電圧2.3Vの条件下
で電解した。
【0018】この結果、陰極側では還元作用により2価
の鉄成分225g/リットル、3価の鉄成分0.5g/
リットル未満、ニッケル成分14.5g/リットル、塩
素成分303g/リットルの組成からなる塩化第1鉄溶
液2000mlを得た。一方、陽極側では塩素ガス26
2gが発生したので、吸収塔2に送った。この時の消費
電力は535whであった。
【0019】次いで、電解還元後の塩化第1鉄溶液20
00mlを鉄置換槽3に導き、これに140gの鉄粉
(液中のNiに対して5倍モル相当)を3回に分けて投
入し、撹拌しながら液温60℃で合計48時間(16時
間×3)かけて反応させた。
【0020】反応後の液を濾過したところ、2価の鉄成
分239g/リットル、3価の鉄成分0.5g/リット
ル未満、ニッケル成分210mg/リットル、塩素成分
303g/リットルの組成からなる脱Ni液2000m
lと、Fe=76%、Ni=19.1%からなる金属粉
152gが得られた。
【0021】次に、上記脱Ni液を上記隔膜電解槽1と
同じ構成の隔膜電解槽4に送り(陰極側と陽極側に等量
供給)、定電流15Aで電圧3.5Vの条件下で電解し
たところ、陰極板上には平滑で安定した金属が析出し
た。これを陰極板から剥離して回収したところ、その組
成はFe=98.5%、Ni=0.1%未満で重量は3
6.8gであった。また電解後の陰極液は2価の鉄成分
205g/リットル、3価の鉄成分0.5g/リットル
未満、ニッケル成分200mg/リットル、塩素成分2
60g/リットルの組成からなり、陽極液は2価の鉄成
分161.6g/リットル、3価の鉄成分75.1g/
リットル、ニッケル成分160mg/リットル、塩素成
分348g/リットルの組成であった。この時の消費電
力は132whであった。これら両極の液2000ml
を吸収塔2に送り、先に電解槽1の陽極側で発生した塩
素ガスと接触させ酸化した。酸化処理された液の組成
は、2価の鉄成分0.5g/リットル未満、3価の鉄成
分220g/リットル、ニッケル成分180mg/リッ
トル、塩素成分419g/リットルであった。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、3価鉄から2価鉄への
還元反応を所謂電解法で行い、電解処理後の液に鉄材を
投入してニッケルを除去し、更に電解処理で余剰鉄分を
除去するとともに、電解処理で発生する塩素ガスを酸化
剤として用いるので、余剰塩化鉄の発生が回避され、含
有ニッケル量を新液に近いレベルまで除去することがで
きる。更に電極からの析出物回収のための複雑な機構を
必要としない電解装置を用いて、従来よりも低い電圧
(1.5〜2.5V)で電解還元を行った後に金属電析
が可能なために、低コスト、高効率の再生システムを実
現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る処理工程を説明する概念図であ
る。
【符号の説明】
1 隔膜電解槽 2 吸収塔 3 鉄置換槽 4 隔膜電解槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三上 八州家 東京都西多摩郡日の出町平井字欠下2− 1 日鉄鉱業株式会社内 (72)発明者 加藤 正義 神奈川県横浜市栄区小菅ヶ谷1−11−2 (56)参考文献 特開 昭55−18558(JP,A) 特開 平5−263273(JP,A) 特開 平6−240475(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 1/46 C02F 1/461

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩化第2鉄と塩化ニッケルを主成分とす
    る溶液を電解還元し、当該溶液に含有される3価鉄の少
    なくとも一部を2価鉄とした後に、当該還元溶液を鉄材
    と接触させて、溶液中に含有されるニッケルを還元析出
    し、ニッケル析出後の溶液を再び電解処理して鉄を還元
    析出するとともに、電解処理で発生した塩素ガスを用い
    て、鉄析出後の溶液を酸化する方法。
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