JP3112484B2 - 医療容器 - Google Patents

医療容器

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JP3112484B2
JP3112484B2 JP03004063A JP406391A JP3112484B2 JP 3112484 B2 JP3112484 B2 JP 3112484B2 JP 03004063 A JP03004063 A JP 03004063A JP 406391 A JP406391 A JP 406391A JP 3112484 B2 JP3112484 B2 JP 3112484B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はヒートシールおよび高周
波誘電加熱シールの両方が可能な合基材を用いた医療
容器に関するものである。本発明はさらに耐薬剤吸着
性、透明性、柔軟性、表面耐擦傷性、表面光沢性などの
特性に優れ、輸液容として特に有用な架橋処理を施さ
れたオートクレーブ滅菌に適した医療容器用複合基材に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、プラスチックフィルムないしシー
ト同士を接着させるには、大別して、接着剤または溶剤
を用いて行なう方法と、加熱によってプラスチックフィ
ルムないしシート同士を熱融着させる方法とが用いられ
ていた。特にプラスチックフィルムないしシートを輸液
バッグ、血液バッグ等の高い安全性が要求される医療用
材料として用いる場合には、前者の方法では、使用され
る接着剤や溶剤が、内部に収容された薬剤ないしは血液
等へと溶出して、生体に対して悪影響を及ぼす虞れがあ
り不適当である。従って、特に医療用基材として用いる
場合には、後者の熱融着方法が一般的に用いられてい
る。
【0003】この熱融着方法は、さらにヒートシールに
代表される外部加熱方式と、高周波誘電加熱に代表され
る内部加熱方式とに大別される。ヒートシールは、加熱
板を直接またはシリコーンゴム等の緩衝膜を介して接触
加熱して、熱伝導により溶着する方法であり、加熱板の
熱源としては、電熱あるいは高圧蒸気等が用いられる。
このヒートシールは、装置が簡単であり、費用も少なく
てすむので最も一般的に用いられており、特にポリエチ
レンフィルム、ポリプロピレフィルム、ポリアミドフィ
ルム等の接合に用いられている。しかしながら、融点の
高いポリエステルフィルム、アセテートフィルム、キャ
スティングポリプロピレンフィルムや、熱融着温度範囲
の狭いポリビニルアルコールフィルムやポリ塩化ビニル
フィルムを溶着するには適していない。
【0004】一方、高周波誘電加熱シールは、プラスチ
ックフィルムを高周波電界中に置き、フィルム内部に発
熱を起して溶着させる方法であり、接着部に集中的に熱
を発生させることができるので、きれいに溶着でき、ま
た接着強度も大きい。しかしながら、この方法は、誘電
体損失の比較的大きい、例えば、ポリ塩化ビニルフィル
ムやポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアミドフィルム
等にしか適用できず、誘電体損失の小さいポリエチレン
フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィ
ルム、ポリエステルフィルム等を接着するには適してい
ない。また、接着時におこるスパークによって接着がで
きない場合もあり、さらには、炭化した異物等がフィル
ム面に付着していたり、電極面がアース面に平行でなか
ったり、鋭角の部分があると、高周波はすべてこの一部
を通過するので、フィルム面の加熱が起らず接着できな
いという欠点を有するものであった。
【0005】従って、ヒートシールおよび高周波誘電加
熱シールの両方が可能な材料であれば、接着箇所、部材
の形状、あるいは必要とされる接着強度等に応じて適宜
接着方法を選択することができ、また上記した理由で高
周波誘電加熱シールができなかった場合には、ヒートシ
ールに切り変えて接着することができるため、極めて有
用であると考えられる。しかしながら、このような性質
を有する医療容器用基材は未だ存在しておらず、その提
供が切望されていた。
【0006】また、従来、輸液バッグ、あるいは輸液セ
ットに代表される輸液搬送回路チューブなどの輸液容器
は、軟質塩化ビニル樹脂製シートないしチューブから構
成されるものが一般的であったが、塩化ビニル樹脂は、
ニトログリセリン、ジアゼパム、塩酸クロルプロマジ
ン、硝酸イソソルバルト等の薬剤成分を吸着するもので
あり、実際の薬剤投与時において、薬剤の濃度が低下し
てしまうということが生じ問題となっていた。さらに、
このような輸液容器として、酢酸ビニルの含有量が10
〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、
EVAと称する。)製シートないしチューブから構成さ
れるものも実用化されているが、このような基材からな
るものもやはり上記したような薬剤吸着性があり、容器
表面が傷付きやすく、表面光沢がないなどの問題を有す
るものであった。さらにまた、薬剤吸着性が低い低密度
ポリエチレンを内層とし、柔軟でかつ前記低密度ポリエ
チレンとの接着性のよいEVAを外層とする二重構造の
チューブがニトログリセリン用輸液セットの連結チュー
ブとして実用化されている。しかしながら、この二重構
造チューブにおいては、内層の強度維持と耐ピンホール
性向上のために、低密度ポリエチレン製内層の膜厚を一
定以上とする必要があり、また外層と内層との接着性向
上のために、外層EVA中のエチレンの配合比率を高め
る必要があるために、結果的にチューブの柔軟性が不十
分となるものであった。さらにまた、薬剤吸着性のない
輸液用チューブとして、直鎖型低密度ポリエチレンと、
熱可塑性ポリスチレン系エラストマー、熱可塑性ポリオ
レフィン系エラストマーおよび/または熱可塑性低結晶
α−オレフィン系樹脂のブレンド体からなるものが提唱
されている(特開昭62−53671号、特開昭62−
53670号、特開昭62−53672号)。しかしな
がら、このようなブレンド体を用いた輸液用チューブ
も、柔軟性を得るために、熱可塑性ポリスチレン系エラ
ストマー、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマーまた
は熱可塑性低結晶α−オレフィン系樹脂の含量を所定以
上のレベルにする必要があり、このため一部の薬剤が吸
着したり、あるいは樹脂中の微粒子が溶出する等の問題
があった。このような観点から、輸液容器用基材として
は、上記したような熱融着性の問題と共に、シートある
いはチューブなどの形態において輸液容器を形成した際
に、薬剤吸着が少なく、柔軟性および透明性に優れ、容
器表面が傷付き難くかつ光沢を有するものとなるなどの
特性を満足することができるものであることが望まれ
る。なお、本明細書において「薬剤吸着」とは、輸液剤
あるいは注射剤に含まれる薬剤の一部または全部が、輸
液容器の表面へ物理的に吸着もしくは輸液容器を構成す
る基材中へ浸透、拡散することによって輸液剤あるいは
注射剤中の薬剤濃度が低下する現象を言うものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は新規
基材を用いた医療容を提供することを目的とするも
のである。本発明はまた、ヒートシールおよび高周波誘
電加熱シールの両方が可能な基材を用いた医療容器を提
供することを目的とするものである。本発明はさらにま
た、輸液容器などの医療容器を形成した際に、該医療容
器が、薬剤吸着が少なく、柔軟性および透明性に優れ、
容器表面が傷付き難くかつ光沢性を有するものとなる
材を用い架橋処理を施されたオートクレーブ滅菌に適し
医療容を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決しようとするための手段】上記諸目的は、
融点が80〜250℃の範囲内にある樹脂材から構成さ
れる第一の層と、1MHzにおける誘電率をε2 、誘電
力率をtanδ2 としたときに次の数式(1) ε2 ・tanδ2 ≧0.05 (1) の関係を満足する樹脂材より構成される第二の層と、
記第一の層を構成する樹脂材と同一の樹脂材から構成さ
れる第三の層とが、前記第一の層および第三の層によっ
て前記第二の層の両面を被覆するように接合されてなる
複合基材を用いた医療容器であって、該複合基材は架橋
処理を施されたオートクレーブ滅菌に適したものである
ことを特徴とする医療容により達成される。
【0009】本発明はまた、前記第一の層の厚さを
1 、第二の層の厚さをL2 、第三の層の厚さをL 3 とし
たときにL1 :L2 :L 3 =1:2〜20:0.5〜5
関係を満足することを特徴とする上記医療容を示すも
のである。本発明はさらにまた、前記第一の層および第
三の層を構成する樹脂材が酢酸ビニル含有量1〜7重量
%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、前記第二の
層を構成する樹脂材が酢酸ビニル含有量7〜30重量%
のエチレン−酢酸ビニル共重合体である上記医療容
示すものである。本発明はさらにまた、前記第一の層
よび第三の層を構成する樹脂材が酢酸ビニル含有量1〜
7重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、前記
第二の層を構成する樹脂材が酢酸ビニル含有量7〜30
重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、か
層となる前記第一の層が10〜100μm、中層となる
前記第二の層が80〜1000μm、外層となる前記
の層が5〜100μmの肉厚をそれぞれ有するもので
ある上記医療容を示すものである。
【0010】本発明は、さらにまた上記医療容器におい
、所定箇所がヒートシールおよび/または高周波誘電
加熱シールにより溶着されて内部空間が形成されてなる
ことを特徴とする医療容器を示すものである。
【0011】
【作用】参考例と本発明に関わる医療容器に用いられる
複合基材は融点の低い樹脂材から形成された第一の層
と、誘電体損失が大きくかつ誘電率の大きい樹脂材から
形成された第二の層とを備えるものである。従って、外
部加熱によって第一の層が効率よく溶融するのでヒート
シールが可能であり、また高周波電界をかけることによ
り第二の層が内部発熱し、この熱が第一の層に伝導さ
れ、第一の層を溶融させるため、高周波誘電加熱も首尾
よく行なうことができる。
【0012】以下、本発明を実施態様に基づきより詳細
に述べる。図1は、参考例の医療容器用複合基材の一
態様の構成を模式的に示す断面図である。図1に示す
参考態様において、医療容器用複合基材1は、融点の低
い樹脂材から形成された第の層2と、誘電体損失が大
きくかつ誘電率の大きい樹脂材から形成された第二の層
3とを備えるものである。
【0013】参考例と本発明の医療容器用複合基材にお
いて、融点の低い樹脂材から構成される第一の層2は、
ヒートシールまたは高周波誘電加熱シールによる熱融着
時に自ら溶融して接着性を発揮する作用を有する層であ
り、その融点が80〜250℃、より好ましくは100
〜200℃である樹脂材から構成することが望まれる。
すなわち、その融点が80℃よりも低いものであると、
参考例と本発明の医療容器用複合基材を用いて医療容器
を形成した場合に、その接合部が使用時において何らか
の熱が加わった際に容易に破断する虞れがあり、一方そ
の融点が250℃よりも高いものであると、ヒートシー
ルまたは高周波誘電加熱シールを行なう際に、該第1の
層が十分に溶融せず、接合が不十分となる虞れが大きい
ためである。さらにこの第1の層2を構成する樹脂材
は、その融点範囲が極端に狭くないものであることが、
熱融着時の制御を容易とする上から好まれる。
【0014】一方、参考例と本発明の医療容器用複合材
料において、誘電体損失が大きくかつ誘電率の大きい樹
脂材から構成される第二の層3は、高周波電界をかけた
ときに、誘電加熱作用により発熱して、この発生熱によ
り第一の層2を溶融させる作用を有する層であり、1M
Hzにおける誘電率をε2 、誘電力率をtanδ2 とし
たときに次の数式(1) ε2 ・tanδ2 ≧0.05 (1) を満足する、より好ましくは次の数式(1a) ε2 ・tanδ2 ≧0.08 (1a) を満足する樹脂材から構成することが望まれる。
【0015】一般に、平行電極内に、誘電物質を挿入
し、誘電加熱を行なう場合において、印加周波数をf
(MHz)、電圧に対する電流の位相差をφ、誘電体の
誘電率をε、誘電体を含まないときの電界強度をEとす
れば、単位体積当りの単位時間に発生する熱量Pvは、
電極の形状、間隔、および誘電物質の大きさ等には無関
係に次に示す数式(2)のように表わされることが知ら
れている。 Pv=5/9・fεE2 tanδ×10-12 (W/cm2 ) (2) (ただし、δ=π−φである。) すなわち、誘電物質の発熱量は、誘電率εおよび誘電力
率tanδが同じならば、印加周波数fと電界強度Eの
二乗に比例する。また印加周波数fと電界強度Eが同じ
ならば、発熱量は誘電物質の誘電率εおよび誘電力率t
anδに比例する。しかもこの誘電率εおよび誘電力率
tanδは、同じ物質であっても周波数によって大幅に
変化するものである。
【0016】一般に高誘電率でかつ高誘電力率を有する
樹脂材は、1〜50MHZ程度の高周波電界によって発
熱し、溶着させることができる。しかしながら、低誘電
率でかつ低誘電力率を有する材料を発熱させるには、非
常に高い周波数が必要になる(例えば、ポリエチレン
(ε・tan=0.001)を高周波溶着するには、理
論的には8450MHzの周波数が必要になるが、この
ような高周波電界を発生する装置は現在のところ製造で
きない。)従って、第二の層を構成する樹脂材を、1M
Hzにおけるε・tanδの値が上記の条件に合致する
ものに限定することにより、第一の層2を構成する樹脂
材が低誘電率でかつ低誘電力率のものであっても、この
第二の層3が高周波電界によって効率よく発熱するた
め、本発明の医療容器用複合基材は高周波加熱によって
首尾よく接着することができる。なお、本明細書におい
て述べる誘電率εおよび誘電力率tanδの値は、いず
れもASTM D 150−64Tに準じて測定された
値である。
【0017】また、第二の層3を構成する樹脂材の融点
は、特に限定されるものではないが、80〜250℃、
より好ましくは100〜200℃程度のものであること
が望まれる。
【0018】第一の層2を構成する樹脂材としては、上
記のごとく低融点の条件を満たすものであれば特に限定
されないが、例えば、ポリエチレン、セルロースアセテ
ート、、ポリプロピレン、ポリスチロール、ポリテトラ
フルオロエチレン、ポリカーボネイト、低酢酸ビニル含
有量のエチレン−酢酸ビニル共重合体等を挙げることが
できる。特に、参考例と本発明に係わる医療容器用複合
基材には、柔軟性、透明性、耐薬剤吸着性に優れること
から、低酢酸ビニル含有量のエチレン−酢酸ビニル共重
合体(EVA)を用いることが好ましい。
【0019】また、第二の層3を構成する樹脂材として
も、上記のごとく高誘電率でかつ高誘電力率の条件をも
たすものであれば特に限定されず、ポリ塩化ビニル、ポ
リ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエ
ステル、高酢酸ビニル含有量のEVA等を挙げることが
できるが、前記第一の層2を構成する樹脂材として低酢
酸ビニル含有量のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用い
た場合には、その組成および融点が近いものとなり、層
間の接着性が良好となることが期待できるために、上記
の樹脂材のうち、特に高酢酸ビニル含有量のエチレン−
酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0020】表1に参考例と本発明の医療容器用複合基
材の第一の層2および第二の層3を構成するものとして
好適な樹脂材の誘電率、誘電力率ならびに融点の値を示
す。
【0021】
【表1】
【0022】また、ここで、一般にEVAの誘電率及び
誘電力率は、酢酸ビニルの含有量によって左右され酢酸
ビニルが少ないと強度は上るが、誘電率および誘電力率
は下がる。反対に酢酸ビニルが多いと誘電率および誘電
力率が高くなるが、強度は下がる。従って、第一の層2
および第二の層3をEVAで構成した場合、第一の層2
を構成するEVAの酢酸ビニル含有量は、1〜7重量
%、より好ましくは1〜4重量%程度とされることが好
ましい。すなわち、酢酸ビニル含有量が1重量%未満で
あると、医療容器用複合基材の透明性および柔軟性を損
なう虞れが大きく、また第二の層3を構成するEVAと
の組成が大きく異なることとなるために、第一の層2と
第二の層3の接着性が低下する虞れがあるためであり、
一方酢酸ビニル含有量が7重量%を越えるものである場
合には、耐薬剤吸着性が低下してしまう虞れがあるため
である。また第二の層3を構成するEVAの酢酸ビニル
含有量は、7〜30重量%、より好ましくは15〜25
重量%程度とされることが望まれる。すなわち、酢酸ビ
ニル含有量がこの範囲を逸脱するものであると、実質的
に本発明の医療容器用複合基材を高周波誘導加熱により
シールすることが困難なものとなり、さらに酢酸ビニル
含有量が7重量%未満であると、医療容器用複合基材の
柔軟性を損ない、例えば、輸液バッグ等に加工された場
合に、輸液供給流量にバラツキを生じる虞れがあり、一
方、酢酸ビニル含有量が30重量%を越えるものである
と、逆に柔らかすぎて、例えば高圧蒸気滅菌などにおい
て熱を加えることによって、製品にシワが寄るなどの問
題が生じる虞れがあるためである。
【0023】なお、これらの第一の層2および第の層
3を構成するEVAには、必要に応じて、ソルビタン脂
肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシ
エチレン脂肪酸エステル等の防曇剤、ポリオキシエチレ
ンアルキルアミンなどの帯電防止剤、脂肪酸アミドなど
のスリップ剤、アルキルフェノール系などの酸化防止剤
を適当量添加することは可能である。
【0024】参考例の医療容器用複合基材1は、上記し
た第一の層2および第二の層3を、第一の層2を内層と
し、第二の層3を外層としてラミネートすることにより
製造され得る。ラミネート法としては、エキストルージ
ョンラミネート、ホットメルトラミネート、ドライラミ
ネート、ウェットラミネート等の公知の手法を適用する
ことができる。またこれらの層は、接着剤を介して接合
されていてもよい。さらに例えば、この基材がシートな
いしフィルム状である場合には、二機の押出機を備え二
層のサーキュラーダイを装備したインフレーション装
置、または二層のTダイを装備したTダイ装置等を用い
て、またこの基材がチューブ状である場合には、同じく
二機の押出機を備え、二層のダイを装備した押出装置を
用いて成形することもできる。さらに、第一の層2を構
成する樹脂材を溶剤に溶解させたり、あるいはエマルジ
ョンとして、第二の層3上にコーティングすることによ
り成形してもよい。
【0025】また、参考例に係わる医療容器用複合基材
1において、第一の層2と第二の層3のそれぞれの肉厚
としては、特に限定されるものではないが、上記したよ
うに第一の層2は、上記したように主としてシール部に
おける熱融着性および容器内面としての例えば耐薬剤吸
着性などの特性を付与するためのものであり、基材とし
ての実質的な機械的強度、耐熱性などを付与するものと
して機能する第二の層3に比較して十分薄いものでよ
い。従って、基材の形状あるいは各層を構成する樹脂材
の種類等によっても左右されるが、第一の層2の厚さを
1 、第二の層3の厚さをL2 としたときに、L1 :L
2 =1:2〜20、より好ましくはL1 :L2 =1:1
0〜15の関係を満足することが好ましい。このような
肉厚条件を満足することにより、高周波電界によって第
二の層3から発生した熱が、効率よく第一の層2に伝導
され、首尾よく高周波誘電加熱シールすることができる
ものである。具体的には、第一の層2の厚さは10〜1
00μm、より好ましくは20〜80μm程度とされ、
また第二の層3の厚さは80〜1000μm、より好ま
しくは100〜800μm程度とされる。
【0026】図2は、本発明の医療容器に用いられる
合材料の施態様の構成を模式的に示す断面図である。
この図2に示す実施態様において、医療容器用複合基材
11は、前記図1に示す参考態様と同様に、融点の低い
樹脂材から形成された第一の層12と、誘電体損失が大
きくかつ誘電率の大きい樹脂材から形成された第二の層
13とを備えているが、この実施態様においてはさら
に、第二の層13の第一の層12と接する面と反対側の
面に第三の層14を備えるものである。この第三の層1
4は外層として機能するために、耐表面擦傷性に優れた
樹脂材より構成されることが望ましく、具体的には例え
ば、ポリアミド、ポリビニルアルコール、低酢酸ビニル
含有量のEVA等により構成され得るが、好ましくは第
一の層12を構成する樹脂材と同一の樹脂材により構成
されることが望まれる。すなわち誘電体損失が大きくか
つ誘電率の大きい樹脂材から形成された第二の層がその
両面を融点の低い樹脂材から形成された第一の層により
被覆された形態とするものである。これによって、この
三層構造の基材の製造コストを低下させることができる
ものである。また、この図2に示す実施態様において、
第一の層12および第二の層13を構成する樹脂材とし
ては、前記図1に示す実施態様における第一の層2およ
び第二の層3を構成する樹脂材と同様のものが用いられ
る。
【0027】特に、この図2に示す実施態様において、
内層となる第一の層12を酢酸ビニル含有量が1〜7重
量%、より好ましくは1〜4重量%のEVA、中層とな
る第二の層13を酢酸ビニル含有量が7〜30重量%、
より好ましくは15〜25重量%のEVA、そして外層
となる第三の層14を酢酸ビニル含有量が1〜7重量
%、より好ましくは1〜4重量%のEVAにより構成す
ることが望まれる。ここで、第三の層14を構成するE
VAの酢酸ビニル含有量を1〜7重量%に限定するの
は、酢酸ビニル含有量が1重量%未満のものであると、
得られる医療容器用複合基材の透明性および柔軟性を損
なう虞れが大きく、また第二の層13を構成するEVA
との組成が大きく異なることとなるために第二の層13
と第三の層14との接着性が低下する虞れがあるためで
あり、一方、酢酸ビニル含有量が7重量%を越えるもの
であると、表面が傷つきやすくかつ表面の光沢性が失わ
れる虞れが大きいためである。さらにこの第3の層14
を構成するEVAと第一の層12を構成するEVAとを
同一組成にすることにより製造コストを低下させること
が可能である。なお、第一の層12および第二の層13
を構成するEVAの酢酸ビニル含有量をそれぞれ上記の
ごとく限定する理由は、上記図1の参考態様の説明にお
いて述べたものと同様のものである。
【0028】なお、本発明の医療容器に用いられる複合
基材を、図2に示すように三層構造のものとし、さらに
各層を上記したような酢酸ビニル含有量をそれぞれ有す
るEVAにより構成した場合には、この基材は輸液容器
用基材として特に適したものとなる。これは以下の理由
による。すなわち、EVAの薬剤吸着量、酢酸ビニル
の含有量と正の相関を有するものであるため、輸液容器
用基材を構成するEVAを低酢酸ビニル含有量のものと
することで薬剤吸着量を抑えることができる。さらにE
VAの表面硬度および表面光沢性は酢酸ビニルの含有量
と負の相関を有するものであるため、輸液容器用基材を
構成するEVAを低酢酸ビニル含有量のものとすること
で、表面硬度および表面光沢も高度のものとできる。し
かしながら、EVAの柔軟性および透明性は、酢酸ビニ
ルの含有量と正の相関を有するものであるため、輸液容
器用基材を構成するEVAを低酢酸ビニル含有量のもの
としてしまうと、柔軟性および透明性は満足のいかない
ものとなってしまう。ところが、輸液容器用基材に要求
される薬剤吸着量、表面硬度および表面光沢性はいずれ
も表面的特性であるため、上記のごとく基材をそれぞれ
酢酸ビニル含有量の異なるEVAによって三層の積層構
造とし、輸液と接触する内層部、および外部に露出する
外層部は酢酸ビニル含有量の低いEVAで、また基材と
しての実質的な肉厚部としての中層部には酢酸ビニル含
有量が中位ないしは高いEVAで構成したことにより、
従来、実用化されていた酢酸ビニル含有量が中位ないし
は高いEVAよりなる基材と同等の透明性および柔軟性
を保持しつつ、耐薬剤吸着性、表面耐擦傷性および表面
光沢性の特性を満足することが可能となるためである。
【0029】なお、これらの第一の層12、第二の層1
3および第三の層14を構成するEVAには、必要に応
じて、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エ
ステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の防曇
剤、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの帯電防止
剤、脂肪酸アミドなどのスリップ剤、アルキルフェノー
ル系などの酸化防止剤等を適当量添加することは可能で
ある。
【0030】本発明の医療容器に用いられる複合基材が
図2に示すように三層構造を有する場合には、第一の層
12、第二の層13および第三の層14を構成するシー
トないしフィルムを、第一の層12を内層、第二の層1
3を中層、第三の層14を外層としてラミネートするこ
とにより製造され得る。ラミネート法としては、エキス
トルージョンラミネート、ホットメルトラミネート、ド
ライラミネート、ウェットラミネート等の公知の手法を
適用することができる。またこれらの層は、接着剤を介
して接合されていてもよい。さらに例えば、この基材が
シートないしフィルム状である場合には、三機の押出機
を備え三層のサーキュラーダイを装備したインフレーシ
ョン装置、または三層のTダイを装備したTダイ装置等
を用いて、またこの基材がチューブ状である場合には、
同じく三機の押出機を備え、三層のダイを装備した押出
装置を用いて成形することもできる。なお、第一の層1
2を構成する樹脂材と第三の層14を構成する樹脂材と
を同一の組成とする場合には、これらの混練溶融に用い
る押出機を共通のものとし、上記のごとき装置構成にお
ける押出機の数を二機とすることも可能である。さら
に、第一の層12を構成する樹脂材を溶剤に溶解させた
り、あるいはエマルジョンとして、第二の層13の一方
の面上にコーティングし、同様にして第三の層14を構
成する樹脂材を第二の層13の他面にコーティングする
ことにより成形してもよい。
【0031】また、本発明に係わる医療容器に用いられ
複合基材11を図2に示すように三層構造とした場
合、第一の層12、第二の層13および第三の層14の
それぞれの肉厚としては、特に限定されるものではない
が、上記したように第一の層12は、上記したように主
としてシール部における熱融着性および容器内面として
の例えば耐薬剤吸着性などの特性を付与するためのもの
であり、また第三の層14は主として表面耐擦傷性およ
び表面光沢性等を付与するためのものであり、いずれも
基材としての実質的な機械的強度、耐熱性などを付与す
るものとして機能する第二の層13に比較して十分薄い
ものでよい。従って、厚さの関係は、基材の形状あるい
は各層を構成する樹脂材の種類等によっても左右される
が、、第一の層12の厚さをL1 、第二の層13の厚さ
をL2 、第三の層14の厚さをL3としたときに、
1 :L2 :L3 =1:2〜20:0.5〜5、より好
ましくはL1 :L2 :L3 =1:10〜15:0.5〜
1の関係を満足することが好ましい。このような肉厚条
件を満足することにより、高周波電界によって第二の層
13から発生した熱が、効率よく第一の層12に伝導さ
れ、首尾よく高周波誘電加熱シールすることができるも
のであり、また表面耐擦傷性および表面光沢性も良好な
ものとすることができる。具体的には、第一の層2の厚
さは10〜100μm、より好ましくは20〜80μm
程度とされ、第二の層3の厚さは80〜1000μm、
より好ましくは100〜800μm程度、また第三の層
14の厚さは5〜100μm、より好ましくは5〜60
μm程度とされる。さらにこの基材を薬剤容器用基材と
して用いる場合には、第一の層2の厚さを20〜60μ
m、より好ましくは30〜50μm程度、第二の層3の
厚さを200〜600μm、より好ましくは250〜5
00μm程度、また第三の層14の厚さを10〜40μ
m、より好ましくは10〜30μm程度とすることが望
まれる。
【0032】さらに、本発明の医療容器に用いられる
合基材の各層が、上記したようにEVA系樹脂により構
成されたものである場合、電子線照射等の物理的手法に
より架橋処理を施したものは、高圧蒸気滅菌に耐え得る
ので、医療容器用基材として特に好適に用いることがで
きる。電子線照射としては、例えば2メガ電子ボルトの
電圧印加で線量率は10メガラド/秒で1〜10メガラ
ドを照射することにより行なうことができる。これによ
り、本発明の医療容器はオートクレーブ滅菌に適する。
【0033】本発明の医療容器に用いられる複合基材
は、シート状あるいはチューブ状などの形状に成形され
るものであるが、これらは上記したように優れた熱融着
特性を有し、また医療容器として必要とされる強度、透
明性、柔軟性、耐薬剤吸着性、耐表面擦傷性、表面光沢
性等の基本的性能を有するものであるために、必要に応
じて適当に加工されて、輸液バッグ、輸液回路、IHV
バッグ等の輸液容器などの各種医療容器を好適に作製で
きるものである。
【0034】例えば、図3は、図2に示すような構造を
有す複合基材の一実施態様を用いて作製された本発明
の医療容器の一実施態様である輸液容器(輸液バッグ)
の構造を示す断面図である。すなわち、この輸液バッグ
21は、シート状に成形された本発明に係わる輸液容器
に用いられる基材11を所望形状に裁断して得られた壁
面材22a、22bを、それぞれの第一の層12が内面
側を向くよう留意しながら重ね合せ(なお、前記したよ
うに医療容器用複合基材の第一の層12を構成する樹脂
材と第三の層14を構成する樹脂材とを同一組成として
おけば、このような製作上の注意も不要となる。)、そ
の周縁端部を高周波誘電加熱シールおよび/またはヒー
トシールにより接合し、袋状に加工したものである。本
発明に係わる医療容器に用いられる複合基材11は、上
記したような構造を有しているので、ヒートシールある
いは高周波誘導加熱シールのいずれによっても良好に接
着することができるものである。なおこの輸液バッグ2
1の下端部には、輸液導出口23を形成するために、例
えば、中高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエ
ステル、ポリアミドなどの薬剤吸着のない硬質合成樹脂
製の管状の輸液ポート材24が、両壁面材22a、22
b間に配されている。この輸液ポート材24の外周面
は、前記したように両壁面材22a、22bの周縁端部
を融着接合した際に、合せて両壁面材22a、22b内
面に密に接合され、これにより両壁面材22a、22b
間に液密に挟持されている。
【0035】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明する。
【0036】参考例1 多層インフレーション成形法により、第一の層が酢酸ビ
ニル含有量2重量%のEVA(誘電率ε=2.4、誘電
力率tanδ=0.0025[1MHz])により構成
され、第二の層が酢酸ビニル含有量19重量%のEVA
(誘電率ε=2.9、誘電力率tanδ=0.045
[1MHz])により構成され、第三の層が酢酸ビニル
含有量2重量%のEVA(誘電率ε=2.4、誘電力率
tanδ=0.0025[1MHz])により構成され
た三層複合シートを得た。なお、この三層複合シートに
おける各層の肉厚は、第一の層40μm、第二の層29
0μm、第三の層20μmとされた。なお、誘電率およ
び誘電力率は共にASTMD 150−64Tに準じて
測定された。この三層複合シートを幅10mm、長さ7
0mmの板状に裁断し、この裁断片2片をそれぞれの第
一の層が当接するように重ね合せ、そしての一端同士を
ヒートシールおよび高周波誘電加熱シールにより接着
し、それぞれのシール強度を測定した。なお、ヒートシ
ールおよび高周波誘電加熱シールの条件は下記に示すと
おりに設定した。
【0037】 ヒートシール 1)シール面積 5mm×10mm 2)接着圧力 2.5kg/cm2 3)接着温度 180、190、200、210、220、230℃ 4)シール時間 2.3秒 高周波誘電加熱シール 1)使用装置 パール工業(株)製AW−06 2)シール面積 5mm×10mm 3)接着圧力 3.5kg/cm2 4)出 力 6kW 5)周波数 40.46MHz 6)シール時間 1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8秒 また、シール強度の測定は、下記に示す条件にて、前記
裁断片2片の他端同士を引張り、剪断が起こったときの
荷重B[kg]を測定し、下記に示す数式(3)から平
均剪断強さを求めることにより行なった。 τ=B/A [kg/mm2 ] (3) (ただし、式中Aはシール面積[mm2 ]である。) 得られた結果を表2および表3に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】表2および表3に示す結果から明かなよう
に、本発明および参考例に係わる医療容器用複合基材
は、ヒートシールおよび高周波誘電加熱シールの両方に
おいて優れた接着性を示すことが確認された。なお、表
2および表3には示していないが、ヒートシールと高周
波誘電加熱シールの双方を併用して裁断片の端部を接着
し、そのシール強度を測定したところ、上記と同様に優
れた接着性を示すことが確認された。参考 例2〜4 多層インフレーション成形法により、それぞれ表4に示
す酢酸ビニル含有量を有するEVAにより構成された第
一の層、第二の層および第三の層よりなる三層積層シー
トを得た。なお、これらの三層複合シートにおける各層
の肉厚は、第一の層30μm、第二の層300μm、第
三の層30μmであった。
【0041】そしてこれら三層複合シートを用いてヒー
トシールにより端部を接合し、図3に示すような構造の
500ml容量の輸液バッグを作製し、薬剤吸着、柔軟
性、透明性、および傷付き易さを調べた。結果を表5に
示す。
【0042】実施例1〜3 参考 例2〜4の輸液バッグに電子線を照射して(2メガ
電子ボルトの電圧印加で線量率は10メガラド/秒で1
0メガラド)架橋処理を施し、薬剤吸着、柔軟性、透明
性、および傷付き易さを調べた。結果を表5に示す。
【0043】比較例1〜5 比較のために、表4に示す酢酸ビニル含有量を有するE
VAよりなる肉厚400μmの単層シートをインフレー
ション成形法により成形した。これらの単層シートを用
いて、参考例2〜4と同様に輸液バッグを作製し、薬剤
吸着、柔軟性、透明性、および傷付き易さを調べた。結
果を表5に示す。
【0044】比較例6 比較例2の輸液バッグに電子線を照射して(2メガ電子
ボルトの電圧印加で線量率は10メガラド/秒で10メ
ガラド)架橋処理を施し、薬剤吸着、柔軟性、透明性、
および傷付き易さを調べた。結果を表5に示す。
【0045】比較例7および8参考 例2〜4と同様に多層インフレーション成形法によ
り、表4に示す酢酸ビニル含有量を有するEVAにより
構成された第一の層、第二の層および第三の層よりなる
三層複合シートを得た。なお、これらの三層複合シート
における各層の肉厚は、第一の層30μm、第二の層3
00μm、第三の層30μmであった。そしてこれら三
層複合シートを用いて、参考例2〜4と同様に輸液バッ
グを作製し、薬剤吸着、柔軟性、透明性、および傷付き
易さを調べた。結果を表5に示す。
【0046】比較例9 比較例7の輸液バッグに電子線を照射して(2メガ電子
ボルトの電圧印加で線量率は10メガラド/秒で10メ
ガラド)架橋処理を施し、薬剤吸着、柔軟性、透明性、
および傷付き易さを調べた。結果を表5に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】表5から明らかなように、従来品(比較例
1〜3)は、柔軟性、透明性については輸液容器として
適正な物性レベルにあるが、薬剤吸着については、いず
れの薬剤においても薬剤の残存率が低く問題のあるもの
である。また容器の表面が傷付きやすいという欠点も有
る。また比較例4では、薬剤吸着と表面の傷付き難さに
関しては良好な結果が得られたが、柔軟性と透明性では
上記比較例1〜3に比較して劣っている。とりわけ柔軟
性の面では弾性率が1500Kg/cm2 と極めて高
く、これは輸液容器の内部を空気等の気体で置換するこ
となく(いわゆる閉鎖系で)排液することが困難であっ
て輸液容器として機能上問題のあるものであった。一
方、比較例5では、比較例1〜3と同様に、柔軟性、透
明性は優れているものの、薬剤が吸着しやすいという欠
点があり、また表面に傷が付きやすいものであった。ま
た比較例6では、オートクレーブ滅菌時に変形が生じ
ず、さらに比較例2と同様に、柔軟性、透明性について
は輸液容器として適正な物性レベルにあるが、薬剤吸着
についてはいずれの薬剤においても残存率が低く問題が
あり、また容器の表面が傷付き易いものであった。これ
らの比較例1〜6の評価結果から、従来用いられている
EVAの単層シートを用いて輸液容器を作製する方法で
は、EVA中の酢酸ビニル含有量をいかに変化させて
も、所望の柔軟性および透明性を保持しつつ、薬剤吸着
を防止することは不可能であることがわかる。また比較
例7では、薬剤吸着、柔軟性、透明性、傷付き難さに関
しては輸液容器として適正な物性レベルにあるが第二の
層と第一の層および第三の層との接着性が悪く、機能上
問題のあるものであった。さらに比較例8では、薬剤吸
着、柔軟性、透明性、傷付き難さに関しては、輸液容器
として適正な物性レベルにあるが、第2の層の酢酸ビニ
ル含量が多いため基材としての強度が不足し、機能上問
題のあるものであった。また、比較例9では、オートク
レーブ滅菌時に変形が生じないものの比較例7と同様に
第二の層と第一の層および第三の層との接着性が悪く、
機能上問題のあるものであった。これに対し、参考例2
〜4および実施例1〜3の輸液バッグにおいては、所望
の柔軟性および透明性を保持しつつ、薬剤吸着を防止す
ることが可能となり、表面の耐擦傷性も所望のものであ
った。加えて、目視による表面光沢性も十分なものであ
った。特に参考例2および3のものにおいては、評価に
供した3種の薬剤ともに、残存率が90%以上であっ
て、実用上全く問題がなく、また参考例4のものにおい
ても、使用する薬剤によっては残存率90%以上を確保
することができ、実用上問題がないことが明らかであっ
た。しかし、参考例2〜4の輸液バッグは表5に示すよ
うにオートクレーブ滅菌には適さなかった。また電子線
による架橋処理を施した実施例5〜7のものにおいて
は、上述の参考例2〜4の効果に加えて、オートクレー
ブ滅菌による容器の変形がなく、輸液容器に用いる基材
として特に好適に用いることができることがわかる。な
お、これら参考例2〜4および実施例1〜3の輸液バッ
グにおける接合端部のシール性は極めて良好であった。
さらにヒートシールに代えて高周波誘電加熱シールを行
なう以外は参考例2〜4および実施例1〜3と同様にし
て作成した輸液バッグにおいても参考例2〜4および
施例1〜3と同様に良好な特性が得られた。
【0050】なお、これらの実施例、参考例および比較
例において用いられた各評価方法は以下の通りである。
薬剤吸着評価方法薬剤吸着は、薬剤の残存率により評価
した。すなわち、作製された輸液バッグに、表6に示さ
れた混注条件で調製されたニトログリセリン輸液、ジア
ゼパム輸液あるいは塩酸クロルプロマジン輸液を充填
し、気温25℃、相対湿度65%で、24時間遮光静置
保存したのちの薬剤濃度を、表6に示される定量方法に
より測定し、上記輸液の混注直後の薬剤濃度と比較する
ことにより残存率を算出した。 残存率(%)=(保存後の薬剤濃度/混注直後の薬剤濃度)×100 なお、残存率(%)=100−吸着率(%)の関係にあ
り、残存率が高い程、薬剤吸着が少なく、輸液容器とし
て優れていることを示す。
【0051】
【表6】
【0052】透明性評価方法 日本薬局方一般試験法の輸液用プラスッチック容器試験
法に準拠し、450nmにおける透過率を測定した。
【0053】容器表面の傷付き易さの評価方法 JIS K5400に定める鉛筆引掻き試験を実施し、
2Bの鉛筆を用いた場合の傷の発生の有無を目視にて確
認した。
【0054】オートクレーブ滅菌適性評価方法 121℃、2.0気圧下にて20分間オートクレーブ滅
菌を施し、原形を維持しているものを適、融けるなどし
て変形しているものを否とした。
【0055】
【発明の効果】以上述べたように、本発明に係わる医療
容器に用いられる複合基材は、融点が80〜250℃の
範囲内にある樹脂材から構成される第一の層と、1MH
zにおける誘電率をε2 、誘電力率をtanδ2 とした
ときに次の数式(1) ε2 ・tanδ2 ≧0.05 (1) の関係を満足する樹脂材より構成される第二の層と、前
記第一の層を構成する樹脂材と同一の樹脂材から構成さ
れる第三の層とが、前記第一の層および第三の層によっ
て前記第二の層の両面を被覆するように接合されてなる
複合基材であって、該複合基材は架橋処理を施されたオ
ートクレーブ滅菌に適したものであることを特徴とする
ものであるので、外部加熱によって第一の層が効率よく
溶融するのでヒートシールが可能であり、また高周波電
界をかけることにより第二の層が内部発熱し、この熱が
第一の層に効率よく伝導され、第一の層を溶融させるた
め、高周波誘電加熱シールも首尾よく行うことができ
る。従って、各種の医療容器を構成する基材として好適
に使用されるものである。さらに、第二の層の、第一の
層と接する面と反対側の面に、第一の層を構成する樹脂
材と同一の樹脂材からなる第三の層を備えている。従っ
て、前記二層に加え、耐表面擦傷性に優れた外層として
機能する第三の層を有する三層構造の基材の製造コスト
を低下させることができる。さらに本発明に関わる複合
基材は、架橋処理を施されたものであるため、オートク
レーブ滅菌に耐える医療容器である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は療容器に用いられる複合基材の一参考態様
の構造を模式的に示す拡大断面図、
【図2】は本発明に係わる医療容器に用いられる複合基
材の施態様の構造を示す拡大断面図、
【図3】は本発明に係わる医療容器の一実施態様である
輸液容器の構造を模式的に示す一部破断拡大断面図であ
る。
【符号の説明】
1…医療容器用複合基材、2…第1の層、3…第2の
層、 11…医療容器用複合基材、12…第1の層、13…第
2の層、 14…第3の層、21…輸液バッグ、22a,22b…
壁面材、 23…輸液導入口、24…輸液ポート材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−204750(JP,A) 特開 昭60−210445(JP,A) 特開 昭58−206759(JP,A) 実開 平3−58427(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61J 1/10 A61L 31/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 融点が80〜250℃の範囲内にある樹
    脂材から構成される第一の層と、1MHzにおける誘電
    率をε2 、誘電力率をtanδ2 としたときに次の数式
    (1) ε2 ・tanδ2 ≧0.05 (1) の関係を満足する樹脂材より構成される第二の層と、
    記第一の層を構成する樹脂材と同一の樹脂材から構成さ
    れる第三の層とが、前記第一の層および第三の層によっ
    て前記第二の層の両面を被覆するように接合されてなる
    複合基材を用いた医療容器であって、該複合基材は架橋
    処理を施されたオートクレーブ滅菌に適したものである
    ことを特徴とする医療容
  2. 【請求項2】 前記第一の層の厚さをL1 、第二の層の
    厚さをL2 、第三の層の厚さをL 3 としたときにL1 :L
    2 :L 3 =1:2〜20:0.5〜5の関係を満足するこ
    とを特徴とする請求項に記載の医療容
  3. 【請求項3】前記第一の層および第三の層を構成する樹
    脂材が酢酸ビニル含有量1〜7重量%のエチレン−酢酸
    ビニル共重合体であり、前記第二の層を構成する樹脂材
    が酢酸ビニル含有量7〜30重量%のエチレン−酢酸ビ
    ニル共重合体である請求項1または2に記載の医療容
  4. 【請求項4】 前記第二の層が、前記第一の層によって
    両面を被覆され三層構造において、内層となる前記第
    一の層が10〜100μm、中層となる前記第二の層が
    80〜1000μm、外層となる前記第三の層が5〜1
    00μmの肉厚をそれぞれ有するものである請求項
    記載の医療容
  5. 【請求項5】 請求項1〜のいずれかに記載の医療容
    において、所定箇所がヒートシールおよび/または高
    周波誘電加熱シールにより溶着されて内部空間が形成さ
    れてなことを特徴とする医療容器。
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