JP3111792B2 - 高純度銅インゴットの製造法 - Google Patents

高純度銅インゴットの製造法

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JP3111792B2 JP06031837A JP3183794A JP3111792B2 JP 3111792 B2 JP3111792 B2 JP 3111792B2 JP 06031837 A JP06031837 A JP 06031837A JP 3183794 A JP3183794 A JP 3183794A JP 3111792 B2 JP3111792 B2 JP 3111792B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、オーディオ用電線、
半導体装置のボンディングワイヤ、超電導安定化材など
の高純度銅線材を製造するための高純度銅インゴットの
製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、オーディオ用電線、半導体装置
のボンディングワイヤ、超電導安定化材には、99.9
999重量%(以下、6Nという)以上の高純度銅ワイ
ヤが使用されている。
【0003】これら6N以上の高純度銅ワイヤは、先ず
6N以上の高純度銅インゴットを製造し、この高純度銅
インゴットを圧延し、伸線と焼鈍を繰り返し、最終的に
伸線により所定の細径を有する高純度銅ワイヤを製造し
ていた。
【0004】従来、6N以上の高純度銅インゴットは、
6N以上の高純度電気銅を高純度アルミナ製ルツボにて
真空または不活性ガス雰囲気溶解し、得られた溶湯を高
純度アルミナ製ノズルを通して高純度アルミナ製鋳型に
鋳造することにより製造されている。
【0005】しかし、高純度アルミナ製ルツボ、高純度
アルミナ製ノズルおよび高純度アルミナ製鋳型を使用し
て製造した高純度銅インゴットは電気銅とほぼ同じ程度
の純度を保つことができるが、高純度アルミナ製のルツ
ボ、ノズルおよび鋳型などは割れ易く、鋳付きしやす
く、その上高価であるために得られる高純度銅ワイヤの
価格も高価なものとなっていた。
【0006】そのため、通常は市販の高純度カーボン製
ルツボを使用して高純度電気銅を溶解し、得られた溶湯
を市販の高純度カーボン製ノズルおよびカーボン製鋳型
を使用して高純度銅インゴットを製造していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、市販の高純度
と言われるカーボン製ルツボ、カーボン製ノズルおよび
カーボン製鋳型(以下、これらをカーボン製炉材と総称
する)を用い、高純度の電気銅を溶解鋳造して高純度イ
ンゴットを製造すると、カーボン製炉材に含まれるFe
およびSiが溶出して溶銅中に溶け込み、得られた高純
度インゴットにはFeおよびSiがそれぞれ0.5ppm
程度含まれることは避けることができなかった。
【0008】これは、FeおよびSiが質量分析器では
検出することができないほどの高純度電気銅を原料とし
て溶解しても、得られた高純度銅インゴットに含まれる
FeおよびSiの含有量はそれぞれ0.5ppm 以上含ま
れていることからも確認されている。
【0009】高純度銅線材にFeおよびSiがそれぞれ
0.5ppm 以上含まれていると、残留抵抗比(室温にお
ける電気抵抗ρ298Kと液体ヘリウム温度における電気抵
抗ρ4.2Kの比ρ298K/ρ4.2Kで定義され、以下、RRR
と記す)を低下させ、かかるRRRの低い高純度線材を
オーディオ用電線に使用するとノイズの発生が激増し、
超電導安定化材として使用しても極低温下の電気抵抗が
大となって所望の効果が得られず、半導体装置のボンデ
ィングワイヤとして使用しても接着性が悪くなる。
【0010】したがって、オーディオ用電線、超電導安
定化材、ボンディングワイヤ等として使用することので
きる線材はRRRが10,000以上あることが必要で
あり、RRRが10,000以上とするためには6N以
上でありかつFeおよびSiの含有量がそれぞれ0.1
ppm 以下であることが必要であるところから、Feおよ
びSiの含有量がそれぞれ0.1ppm 以下の高純銅イン
ゴットをカーボン製炉材を用いて安価に製造することの
できる技術開発が求められていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
カーボン製炉材を用いてFeおよびSiの含有量がそれ
ぞれ0.1ppm 以下の高純度銅インゴットを製造するべ
く研究を行った結果、(a) 高純度電気銅を予め非酸
化性雰囲気中、温度:800〜1120℃(好ましく
は、900〜1050℃)でカーボン製炉材を熱処理
し、この熱処理したカーボン製炉材を用いてインゴット
を製造すると、カーボン製炉材に含まれるFeおよびS
i不純物が溶銅中に溶け込むことがなく、FeおよびS
i不純物の含有量がそれぞれ0.1ppm 以下の高純度銅
インゴットが得られる、(b) 上記カーボン製炉材の
一部を市販のアルミナ製ノズルおよび/またはアルミナ
製鋳型で置換してもよい、などの研究結果が得られたの
である。
【0012】この発明は、かかる研究結果に基づいてな
されたものであって、(1) 高純度銅原料をカーボン
製炉材を用いて溶解鋳造し、高純度銅インゴットを製造
する方法において、高純度銅原料を溶解鋳造する前に、
予めカーボン製炉材を非酸化性雰囲気中、温度:800
〜1120℃(好ましくは、900〜1050℃)に保
持の条件で熱処理し、この熱処理したカーボン製炉材を
使用して高純度銅インゴットを製造するカーボン製炉材
による高純度銅インゴットの製造法、(2) 上記
(1)の熱処理したカーボン製炉材の一部をアルミナ製
ノズルおよび/またはアルミナ製鋳型で置換して高純度
銅インゴットを製造するカーボン製炉材による高純度銅
インゴットの製造法、に特徴を有するものである。
【0013】
【実施例】
実施例1〜7、比較例1〜2および従来例、 高純度電気銅を用意し、この高純度電気銅をGD−MS
(質量分析器)で分析した結果、表1に示されるような
分析結果が得られた。
【0014】
【表1】
【0015】一方、市販の高純度黒鉛製ルツボ、高純度
黒鉛製ノズル、高純度黒鉛製鋳型を用意し、これらを表
2に示される条件で熱処理し、かかる熱処理した高純度
黒鉛製ルツボを用い、1150℃、真空雰囲気中で溶解
し、この溶湯を上記熱処理した高純度黒鉛製ノズルおよ
び鋳型を使用して鋳造し、高純度銅インゴットを製造す
ることにより実施例1〜7および比較例1〜2を実施し
た。
【0016】さらに、比較のために、上記市販の高純度
黒鉛製ルツボ、高純度黒鉛製ノズルおよび高純度黒鉛製
鋳型を熱処理することなく使用して上記高純度電気銅を
溶解鋳造し高純度銅インゴットを製造することにより従
来例を実施した。
【0017】上記実施例1〜7、比較例1〜2および従
来例で得られた高純度銅インゴットをGD−MS(質量
分析器)で分析し、その分析結果を表2に示した。
【0018】
【表2】
【0019】表2に示される高純度銅インゴットの分析
結果から、温度:800〜1120℃、非酸化性雰囲気
中で熱処理した高純度黒鉛製ルツボ、ノズルおよび鋳型
を使用して製造した実施例1〜7の高純度銅インゴット
は、熱処理しない高純度黒鉛製ルツボ、ノズルおよび鋳
型を使用して製造した従来例の高純度銅インゴットに比
べてFeおよびSiの含有量が少ないことがわかる。ま
た比較例1および2に示されるように高純度黒鉛製ルツ
ボ、ノズルおよび鋳型を800〜1120℃の範囲から
外れた温度で熱処理しても十分な効果が得られないこと
がわかる。
【0020】実施例8〜10 表2の実施例4の条件で熱処理した高純度黒鉛製ルツ
ボ、ノズルおよび鋳型の他に、市販の高純度アルミナ製
ノズルおよび鋳型を用意し、これらルツボ、ノズルおよ
び鋳型を使用して表1の高純度電気銅から高純度銅イン
ゴットを製造することにより表3に示される実施例8〜
10を実施し、得られた高純度銅インゴットをGD−M
S(質量分析器)で分析し、その分析結果を表3に示し
た。
【0021】
【表3】
【0022】表3の実施例8〜10から、少なくとも熱
処理した黒鉛製ルツボを使用して溶解し、その他は市販
の高純度アルミナ製ノズルおよび/または鋳型を使用し
ても、表2の熱処理しない高純度黒鉛製ルツボ、ノズル
および鋳型を使用する従来例に比べて、FeおよびSi
含有量の少ない高純度銅インゴットが得られることがわ
かる。
【0023】
【発明の効果】上述のように、従来はFeおよびSiを
ほとんど検出することができない程度の高純度電気銅を
使用しても、通常のカーボン製炉材を使用して製造した
高純度銅インゴットにはFeおよびSiが増加して含ま
れ、このインゴットを圧延し伸線して得られた線材にも
FeおよびSiが多量に含まれて種々なる電気的トラブ
ルの原因となっていたが、カーボン製炉材を溶解鋳造す
る前に熱処理する本発明法によると、FeおよびSi含
有量の極めて少ない高純度銅インゴットを製造すること
ができ、RRRが10,000以上の線材を安価に提供
することができるので産業上すぐれた効果をもたらすも
のである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池ノ谷 秀行 埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテ リアル株式会社 中央研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22C 1/00,9/02 B22D 7/06,21/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高純度銅原料をカーボン製ルツボを用い
    て溶解し、得られた高純度銅溶湯をカーボン製ノズルを
    通してカーボン製鋳型に鋳造し、高純度銅インゴットを
    製造する方法において、 上記高純度銅原料を溶解し鋳造する前に、上記カーボン
    製ルツボ、カーボン製ノズルおよびカーボン製鋳型を予
    め非酸化性雰囲気中、温度:800〜1120℃に保持
    の条件の熱処理を施し、この熱処理したカーボン製ルツ
    ボ、カーボン製ノズルおよびカーボン製鋳型を使用して
    高純度銅インゴットを製造することを特徴とする高純度
    銅インゴットの製造法。
  2. 【請求項2】 高純度銅原料をカーボン製ルツボを用い
    て溶解し、得られた高純度銅溶湯を高純度アルミナ製ノ
    ズルを通して高純度アルミナ製鋳型に鋳造し、高純度銅
    インゴットを製造する方法において、 上記高純度銅原料を溶解する前に、上記カーボン製ルツ
    ボに予め非酸化性雰囲気中、温度:800〜1120℃
    に保持の条件の熱処理を施し、この熱処理したカーボン
    製ルツボを用いて上記高純度銅原料を溶解することを特
    徴とする高純度銅インゴットの製造法。
  3. 【請求項3】 高純度銅原料をカーボン製ルツボを用い
    て溶解し、得られた高純度銅溶湯をカーボン製ノズルを
    通して高純度アルミナ製鋳型に鋳造し、高純度銅インゴ
    ットを製造する方法において、 上記高純度銅原料を溶解し鋳造する前に、上記カーボン
    製ルツボおよびカーボン製ノズルを予め非酸化性雰囲気
    中、温度:800〜1120℃に保持の条件の熱処理を
    施し、この熱処理したカーボン製ルツボおよびカーボン
    製ノズルを用いて溶解鋳造することを特徴とする高純度
    銅インゴットの製造法。
  4. 【請求項4】 高純度銅原料をカーボン製ルツボを用い
    て溶解し、得られた高純度銅溶湯を高純度アルミナ製ノ
    ズルを通して高純度カーボン製鋳型に鋳造し、高純度銅
    インゴットを製造する方法において、 上記高純度銅原料を溶解し鋳造する前に、上記カーボン
    製ルツボおよびカーボン製鋳型を予め非酸化性雰囲気
    中、温度:800〜1120℃に保持の条件の熱処理を
    施し、この熱処理したカーボン製ルツボおよびカーボン
    製鋳型を用いて溶解鋳造することを特徴とする高純度銅
    インゴットの製造法。
  5. 【請求項5】 上記カーボン製ルツボ、カーボン製ノズ
    ルおよびカーボン製鋳型の熱処理温度は、900〜10
    50℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1,2,
    3または4記載の高純度銅インゴットの製造法。
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