JP3111086B2 - エンジンのクランクシャフトの軸受メタル組込方法 - Google Patents

エンジンのクランクシャフトの軸受メタル組込方法

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JP3111086B2 JP03152872A JP15287291A JP3111086B2 JP 3111086 B2 JP3111086 B2 JP 3111086B2 JP 03152872 A JP03152872 A JP 03152872A JP 15287291 A JP15287291 A JP 15287291A JP 3111086 B2 JP3111086 B2 JP 3111086B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジンのクランクシ
ャフトの軸部とこれに対する軸受部分との間のギャップ
に一対の半円状の軸受メタルを組み込むエンジンのクラ
ンクシャフトの軸受メタル組込方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、クランクシャフトの軸部に対
する軸受部分には一対の半円状の軸受メタルが組み込ま
れており、例えば実開昭60−85663号公報に示さ
れるように、クランクピンとコンロッドとの結合部分に
おいては、クランクピンとコンロッドハウジングとの間
にギャップが形成され、このギャップに上下一対の半円
状の軸受メタルが組み込まれている。そして、クランク
ピンとの間のオイルクリアランスが適度に調整され、良
好な潤滑性が得られるようになっている。この種の構造
では一般に、上記一対の軸受メタルは同一肉厚のもので
形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の構
造においては、上記クランクピン(軸部)およびコンロ
ッドハウジング(軸受部分)の各公差により両者の間の
ギャップにはある程度のばらつきが生じる。従って、潤
滑性等の機能を満足するには、軸受メタルの組付けにあ
たり、上記ギャップに応じて軸受メタルの肉厚を選定す
ることにより、軸受メタルとクランクピンとの間のクリ
アランスを一定範囲内に調整する必要がある。このよう
な調整として、上記ギャップのばらつきを等間隔で複数
のレンジに区分し、その区分に応じた複数種の肉厚の軸
受メタル予め用意し、組付け時に調べられるレンジに応
じ、上記複数種の中からギャップに適合する軸受メタル
を選択して用いることは、一般に行われている。しかし
このようにする場合に、従来では同一肉厚の軸受メタル
が一対とされてギャップに組み込まれるため、上記ギャ
ップのレンジ区分数と同数種類の異なった肉厚の軸受メ
タルを用意しておく必要があり、軸受メタルの種類が多
くなって、製造上不利である。
【0004】また、エンジンの爆発力及びピストン等の
慣性力などによって軸受部分に作用する応力は、上半部
側と下半部側とで異なるため、振動抑制作用および信頼
性等の面からは、必ずしも上記一対の軸受メタルを同一
肉厚とすることが最適であるとはいえず、この点からも
改善の余地があった。
【0005】本発明は、これらの事情に鑑み、軸受メタ
ルの種類数を少なくしつつ、軸部との間のオイルクリア
ランスを適正に調整することができるとともに、振動抑
制作用及び軸受メタルの信頼性を向上することができる
軸受メタル組込方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のエンジンのクラ
ンクシャフトの軸受メタル組込方法は、クランクシャフ
トの軸部とこれに対する軸受部分との間に形成されるギ
ャップのばらつきを等間隔で複数のレンジに区分し、組
付け時に調べられるレンジに応じ、予め用意した複数種
の肉厚の半円状の軸受メタルの中から軸受メタルと上記
クランクシャフトの軸部との間が所定のオイルクリアラ
ンスになるよう選択した一対の軸受メタルを上記ギャッ
プに組み込む方法であって、同一肉厚の軸受メタルを一
対として用いる場合にはギャップの小さい側もしくは大
きい側から数えて奇数番目のレンジのギャップに適合す
るように、上記レンジ区分数よりも少ない所定数種の肉
厚の軸受メタルを用意し、偶数番目のレンジのギャップ
に対しては、このレンジを挾んだ両隣のレンジにそれぞ
れ対応する異なった肉厚の軸受メタルを一対とし、か
つ、軸受部分に作用する引張応力が大きくなる側に肉厚
の大きい軸受メタルを、他の側に肉厚の小さい軸受メタ
ルを配置するようにしてギャップに組み込むことを特徴
とする。
【0007】特にクランクピンとコンロッドとの結合部
分に適用する場合は、シリンダブロック下端に支承され
クランクシャフトのクランクピンと上端側がピストン
に結合されるコンロッドの下端側のコンロッドハウジン
グとの間に形成されるギャップに一対の軸受メタルを組
み込むものとし、かつ、全ての軸受において上半部側の
軸受メタルの厚さが下半部側の軸受メタルの厚さ以上と
なるように配置するものである。
【0008】
【0009】
【作用】上記の方法によると、上記ギャップに応じて一
対の軸受メタルの組合せが変えられることにより、上記
レンジ区分数よりも少ない所定数種の肉厚の軸受メタル
によりながら、各ギャップに適合するように肉厚が管理
され、オイルクリアランスが適正に調整される。しか
も、偶数番目のレンジのギャップに対してこのレンジを
挾んだ両隣のレンジにそれぞれ対応する異なった肉厚の
軸受メタルを一対として用いる場合に、軸受部分に作用
する引張応力が大きくなる側に肉厚の大きい軸受メタル
を、他の側に肉厚の小さい軸受メタルを配置するように
しているため、振動抑制作用及び軸受メタルの信頼性が
高められる。
【0010】また、クランクピンとコンロッドとの結合
部分に適用する場合は、上半部側の軸受メタルの厚さが
下半部側の軸受メタルの厚さ以上とされ、つまり上半部
側の軸受メタルの厚さが下半部側の軸受メタルの厚さと
等しいか(ギャップの小さい側もしくは大きい側から数
えて奇数番目のレンジのギャップに対して、同一肉厚の
軸受メタルを一対として用いる場合)、それより厚くな
る(偶数番目のレンジのギャップに対して、異なった肉
厚の軸受メタルを一対として用いる場合)ことにより、
上記のような作用が得られる。
【0011】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1および図2はクランクシャフト軸受構造の一実施例
を示している。これらの図において、1はクランクピン
であり、これとクランクジャーナル2およびクランクア
ーム(図示せず)等でクランクシャフトが構成されてい
る。上記クランクジャーナル2は、エンジンのシリンダ
ブロック3下端に設けられたメインベアリング4に支承
されている。
【0012】6はコンロッドであり、その上端側の小端
部7がピストン5に結合されるとともに、下端側の大端
部で構成されるコンロッドハウジング8が上記クランク
ピン1と結合されている。上記コンロッドハウジング8
は、コンロッド本体と一体の上半部に対してコンロッド
キャップ9がボルト10で連結されることにより構成さ
れ、上記クランクピン1を取り囲んでいる。
【0013】上記クランクピン1の外周面とコンロッド
ハウジング8の内周面との間にはギャップが存在し、こ
のギャップに上下一対の半円状の軸受メタル11,12
が組み込まれている。この一対の軸受メタル11,12
には肉厚の異なるものが用いられている。これらの軸受
メタル11,12の配置としては、軸受部分に作用する
引張応力が大きくなる側に肉厚の大きい軸受メタル1
1、他の側に肉厚の小さい軸受メタル12が配設され
る。当実施例のようにクランクピン1とコンロッドハウ
ジング8との結合部分に適用される場合は、上半部側に
肉厚の大きい軸受メタル11が位置し、下半部側に肉厚
の小さい軸受メタル12が位置するように配設されてい
る。そして、このように異なる肉厚の軸受メタル11,
12が用いられつつ、クランクピン1との間に適度のオ
イルクリアランスCが残されるように、軸受メタル1
1,12の肉厚が設定されている。
【0014】このような構造によると、引張応力が大き
くなる側に肉厚の大きい軸受メタル11が配置されるこ
とにより、応力および衝撃力に対して強度的に有利とな
り、かつ振動低減作用が高められる。
【0015】すなわち、エンジン作動中にピストン5が
上死点付近となったときには、図1中に矢印で示すよう
に、クランクピン1がコンロッドハウジング8の下半部
側に押し付けられた状態で、コンロッドハウジング8の
上半部側に、ピストン5およびコンロッド6の上向きの
慣性力による大きな引っ張り応力が作用する。従ってこ
のときには、図1中に一点鎖線で示すように、上半部側
のコンロッドハウジング8および軸受メタル11が伸び
方向に変形して、この方向にオイルクリアランスCが増
大する傾向が生じ、また、この直後には爆発荷重がピス
トンに下向きに加わることにより、上半部側のコンロッ
ドハウジング8および軸受メタル11が急激にクランク
ピン1に押し付けられる傾向が生じる。このような傾向
に対し、上半部側の軸受メタル11の肉厚が大きくされ
ていることにより、その剛性が高められて上記変形が抑
制され、これに伴い、爆発荷重でクランクピン1に押し
付けられるときの衝撃も軽減され、振動が抑制されるこ
ととなる。
【0016】なお、ピストン5が下死点付近となったと
きには、クランクピン1がコンロッドハウジング8の上
半部側に押し付けられた状態で、下半部側にコンロッド
キャップ4の慣性力が作用するが、コンロッドキャップ
4のみの慣性力は小さいため、下半部側の軸受メタル1
2は上半部側の軸受メタル11に比べて肉厚を小さくし
ても差し支えない。
【0017】このように、クランクシャフト軸受構造と
しては、肉厚の異なる軸受メタルを組み合わせて用いる
ことも有効となる。そこで、製造段階で上記ギャップG
に組み込む一対の軸受メタル11,12を選定する場合
に、同一肉厚のものを用いることと異なる肉厚のものを
組み合わせることのいずれをも許容することにより、軸
受メタルの種類を少なくしつつ有効にオイルクリアラン
スCを調整することが可能となる。この方法の実施例を
次に説明する。
【0018】この方法においては、予め、クランクピン
1の径Daの公差とコンロッドハウジング8の内径Db
の公差とに基づいて、両者の間のギャップGのばらつき
が等間隔で複数のレンジに区分される。つまり、オイル
クリアランスCの規制範囲を考慮した所定間隔Aでレン
ジを区分するものとして、例えばクランクピン1の径D
a およびコンロッドハウジング8の内径Db が、それぞ
れの公差に基づいて、ともに三つのレンジ(Da1−A,
Da1,Da1+AおよびDb1−A,Db1,Db1+A)に区
分される場合、次の表1に示すように、ギャップGは5
種類のレンジ(G1〜G5)に区分される。
【0019】
【表1】
【0020】ここで、Da1およびDb1はそれぞれ径Da
およびDb の標準値であり、また、G1はギャップGの
標準値、G2〜G4は G2=G1−A G3=G1−2A G4=G1+A G5=G1+2A である。これらギャップに対し、同一肉厚の軸受メタル
を一対として用いるとした場合、一定のクリアランスC
を得るためには表2の5種類の軸受メタルM1〜M5が
必要となる。
【0021】
【表2】
【0022】当実施例ではこれらのうちで、ギャップの
小さい側もしくは大きい側から数えて奇数番目のレンジ
のギャップG3,G1,G5に対応するものであるM
3,M1,M5の3種類の肉厚の軸受メタルが用意され
る。そして、組付け時に、実際のギャップのレンジに応
じ、上記3種類の肉厚の軸受メタルの中から、一対のメ
タルの組合せが次のように選択される。
【0023】実際のギャップのレンジがG3,G1,G
5のいずれかであれば、それに対応して、M3,M1,
M5の3種類のうちから選択された同一肉厚の軸受メタ
ルが一対とされて、ギャップに組み込まれる。一方、実
際のギャップのレンジがG2またはG4であれば、その
レンジを挾んだ両隣のレンジに対応する2種類の軸受メ
タルが組み合わされ、つまり、G2のレンジのギャップ
に対してはM3とM1の2種類の軸受メタルが一対とし
てギャップに組み込まれ、G4のレンジのギャップに対
してはM1とM5の2種類の軸受メタルが一対としてギ
ャップに組み込まれる。これにより、M2,M4の軸受
メタルを用いなくても、所定のクリアランスCが得られ
る。そしてこのように肉厚が異なる二種類の軸受メタル
が組み合わされる場合は、図2のように上半部側に肉厚
の大きい軸受メタル11が位置し、下半部側に肉厚の小
さい軸受メタル12が位置する状態に組み込まれる。
【0024】なお、このような肉厚管理により、オイル
クリアランスCは0.028〜0.046mm程度の範囲
に調整される。
【0025】本発明の方法において、ギャップのレンジ
区分数は、上記実施例に限定されずクランクピンおよび
コンロッドハウジング公差等に応じて定められ、そのレ
ンジ区分数が奇数の場合は上記実施例に準じた方法で軸
受メタルを選定すればよい。また、レンジ区分数が偶数
の場合にも本発明の方法を適用することができる。
【0026】例えば、クランクピンの径のばらつきが5
種類に区分され、コンロッドハウジングの径のばらつき
が4種類に区分される場合は、表3のように、ギャップ
は8種類のレンジ(G1〜G8)に区分される。
【0027】
【表3】
【0028】この場合、表4のように、各レンジのギャ
ップに対応する8種類の肉厚の軸受メタルのうちで、肉
厚の小さい側か大きい側のいずれかから奇数番目、例え
ば肉厚の小さい側から奇数番目であるM5,M3,M
1,M7と、M8よりさらに大きい肉厚としたM9と
の、都合5種類の軸受メタルを用意すれば、偶数番目の
ギャップに対しては肉厚の異なる軸受メタルを組み合わ
せることで、所定のクリアランスに調整することができ
る。
【0029】
【表4】
【0030】この例において、上記M9の軸受メタルの
代りにM8の軸受メタルを用意し、G8のギャップに対
してはM8の軸受メタルを一対として用いてるようにし
てもよい。
【0031】なお、上記各実施例ではクランクピンとコ
ンロッドハウジングとの結合部分に適用する場合を説明
したが、本発明の構造および方法は、クランクジャーナ
ルとメインベアリングとの間のギャップに一対の軸受メ
タルを組み込む場合にも適用することができる。
【0032】
【発明の効果】本発明の軸受メタル選定方法によると、
クランクシャフトの軸部とこれに対する軸受部分との間
に形成されるギャップのばらつきを等間隔で複数のレン
ジに区分し、これに対して、レンジ区分数よりも少ない
所定数種の肉厚の軸受メタルを用意し、ギャップによっ
ては異なった肉厚の軸受メタルを一対としてギャップに
組み込むようにしているので、軸受メタルの種類数を少
なくしつつ、各レンジのギャップに適合するように肉厚
管理を行って、オイルクリアランスを適正に調整するこ
とができる。とくに、同一肉厚のものを用いることと異
なる肉厚のものを組み合わせることのいずれをも許容し
つつ、異なった肉厚の軸受メタルを一対としてギャップ
に組み込む場合には軸受部分に作用する引張応力が大き
くなる側に肉厚の大きい軸受メタルを、他の側に肉厚の
小さい軸受メタルを配置するようにしているため、数少
ない軸受メタルの種類で振動抑制及び信頼性の向上を図
ることができる。
【0033】
【0034】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すクランクシャフト軸受
構造の全体図である。
【図2】要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 クランクピン 6 コンロッド 8 コンロッドハウジング 11,12 軸受メタル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 9/00 F16C 33/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クランクシャフトの軸部とこれに対する
    軸受部分との間に形成されるギャップのばらつきを等間
    隔で複数のレンジに区分し、組付け時に調べられるレン
    ジに応じ、予め用意した複数種の肉厚の半円状の軸受メ
    タルの中から軸受メタルと上記クランクシャフトの軸部
    との間が所定のオイルクリアランスになるよう選択した
    一対の軸受メタルを上記ギャップに組み込む方法であっ
    て、同一肉厚の軸受メタルを一対として用いる場合には
    ギャップの小さい側もしくは大きい側から数えて奇数番
    目のレンジのギャップに適合するように、上記レンジ区
    分数よりも少ない所定数種の肉厚の軸受メタルを用意
    し、偶数番目のレンジのギャップに対しては、このレン
    ジを挾んだ両隣のレンジにそれぞれ対応する異なった肉
    厚の軸受メタルを一対とし、かつ、軸受部分に作用する
    引張応力が大きくなる側に肉厚の大きい軸受メタルを、
    他の側に肉厚の小さい軸受メタルを配置するようにして
    ギャップに組み込むことを特徴とするエンジンのクラン
    クシャフトの軸受メタル組込方法。
  2. 【請求項2】 シリンダブロック下端に支承されるクラ
    ンクシャフトのクランクピンと上端側がピストンに結合
    されるコンロッドの下端側のコンロッドハウジングとの
    間に形成されるギャップに一対の軸受メタルを組み込む
    ものとし、かつ、全ての軸受において上半部側の軸受メ
    タルの厚さが下半部側の軸受メタルの厚さ以上となるよ
    うに配置することを特徴とする請求項1記載のエンジン
    のクランクシャフトの軸受メタル組込方法。
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サービスマニュアル エンジン整備編 C32A(本田技研工業株式会社発行)平成2年9月発行 4−8から4−10参照

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