JP3109039B2 - 防錆処理方法並びに亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物 - Google Patents
防錆処理方法並びに亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物Info
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Description
系被覆を施さない冷延鋼板等の無被覆鋼の防錆処理方
法、並びに、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物に
関し、更に詳しくは、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼の一次
防錆処理又は塗装下地処理に適用される防錆処理方法、
並びに、その方法に使用される非クロメート系の塗布型
防錆組成物に関する。
射により被覆した亜鉛系被覆鋼、及び、上記被覆を施さ
ない無被覆鋼の一次防錆処理又は塗装下地処理には、従
来からクロムイオンを含有するクロメート系処理剤が広
く用いられている。上記クロメート系処理剤としては、
例えば、特開平5−279867号公報には、クロムイ
オン(Cr6+、Cr3+)と水分散性樹脂からなる塗布型
クロメート系処理剤が開示されている。しかし、上記ク
ロメート系処理剤は、有毒なクロムイオンを含有してい
るため、無公害化するための排水処理のコストアップ、
作業環境における人体への悪影響等の問題があり、ま
た、処理剤により形成されるクロメート被膜を有する製
品からのクロム溶出による環境汚染等のおそれもある。
含有しない非クロメート系の防錆若しくは防食処理剤又
は防錆若しくは防食処理方法の開発が考えられる。この
ようなものとして、特公平5−37234号公報には、
硫化水素ガス又は硫化水素ガスを溶解させた水溶液と亜
鉛メッキ鋼板又は無被覆鋼板を接触させ、その後塗装す
る防食処理方法が開示されている。特公平5−3879
0号公報には、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト等の
金属の硫化物であって、特定の範囲の溶解度積を有する
ものを含有する防食用被覆組成物が開示されている。ま
た、特公平5−76552号公報には、硫化水素と反応
しうる金属表面に塗膜を形成後、硫化水素を含有する水
溶液又は硫化水素を含有する水蒸気を接触させて、塗膜
下面に金属硫化物を生成させる防食処理方法が開示され
ている。
又は硫化水素ガスを溶解させた水溶液を用いて塗装下地
の防食処理を行う方法は、硫化物層を形成させるに際し
て、直接硫化水素ガスと金属表面とを接触させるので、
有害な硫化水素ガスが環境中に漏れやすく工業的な利用
は困難であった。また、金属硫化物を含有する防食用被
覆組成物は、金属表面に塗布して使用されるが、塗布後
相当期間が経過して塗膜中に水分が浸入したとき又は腐
食したときに、組成物中に含有される金属硫化物が一部
溶解して硫化物イオンを放出し、被塗物である金属と反
応して金属表面に硫化物層を形成するものであるので、
塗膜形成時に積極的に被塗物金属表面に硫化物層を形成
させる方法に比べ、防錆力、耐剥離性に劣っていた。硫
化水素を含有する水溶液又は硫化水素を含有する水蒸気
を接触させて塗装後に金属の防食処理を行う方法は、作
業中に硫化水素ガスが発生しやすく、作業環境下におけ
る人体への悪影響等の問題があった。
ロメート系処理剤と同等以上の優れた防錆力を有し、耐
剥離性に優れた非クロメート系の塗布型防錆組成物とし
ては、例えば、水性樹脂及び水からなる溶液に、硫化物
イオンを含有させてなるか、又は、更に、難溶性の硫化
物を分散させてなる亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組
成物等を提案することも可能である。
錆組成物を使用すれば、塗膜形成時に硫化物イオンによ
って被塗物である金属の硫化物層を金属表面に積極的に
形成することが可能である。しかし、防錆性をより一層
向上させるために、硫化物を多量にこのような防錆組成
物に添加した場合、対イオンであるナトリウムイオン、
マンガンイオン等のカチオンの塗膜中における残存量が
多くなって、塗膜の透水性が増大するおそれがある。
であり、有害なクロムを使用することなく、クロメート
系処理剤による防錆処理方法と同等以上の優れた防錆性
を発揮する亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼の防錆処理方法、
並びに、クロメート系処理剤と同等以上の優れた防錆力
を有する非クロメート系の塗布型防錆組成物であって、
特に亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼に塗布後熱乾燥すること
ができるか、又は、熱時塗布乾燥することができるもの
を提供することを目的とするものである。
被覆鋼及び無被覆鋼の防錆処理方法を、水性樹脂1〜8
0重量部及び水99〜20重量部からなる溶液に、微粒
子状イオウを前記水性樹脂100重量部に対して0.5
〜200重量部含有させてなるpH7以上である組成物
を、亜鉛系被覆鋼又は無被覆鋼に塗布し、その後前記亜
鉛系被覆鋼又は無被覆鋼を50〜250℃となるように
加熱して乾燥するか、又は、予め前記亜鉛系被覆鋼又は
無被覆鋼を50〜250℃に加熱し、その後前記組成物
を塗布し乾燥することにより構成するところにある。ま
た、本発明の要旨は、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆
組成物を、水性樹脂1〜80重量部及び水99〜20重
量部からなる溶液に、微粒子状イオウを前記水性樹脂1
00重量部に対して0.5〜200重量部含有させてな
るpH7以上である組成物に、りん酸イオンを500〜
5000ppm含有させるか、更に、硫化物イオンを
0.1〜10000ppm含有させるか、難溶性硫化物
を前記水性樹脂100重量部に対して0.1〜200重
量部含有させるか、又は、硫化物イオンを0.1〜10
000ppm、及び、難溶性硫化物を前記水性樹脂10
0重量部に対して0.1〜200重量部含有させて構成
するところにもある。以下に本発明を詳述する。
覆鋼の防錆処理において、水性樹脂1〜80重量部及び
水99〜20重量部からなる溶液に、微粒子状イオウを
上記水性樹脂100重量部に対して0.5〜200重量
部含有させてなるpH7以上である組成物(以下「組成
物I」という)を使用する。上記水性樹脂は、塗膜を形
成して硫化亜鉛、硫化鉄等の金属硫化物層の耐久性を高
め、防錆力を向上させる機能を有する。上記水性樹脂と
しては、pH7以上で水に溶解又は分散するものであれ
ば特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリ
ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポ
キシ樹脂、アルキド樹脂等を挙げることができる。これ
らのうち、ポリオレフィン樹脂が好ましく、なかでも、
防錆性の点で、カルボン酸変性されたポリエチレンが特
に好ましい。
水性樹脂及び水の配合割合は、水性樹脂1〜80重量
部、水99〜20重量部である。水性樹脂が1重量部未
満であり、水が99重量部を超えると、上記本発明の組
成物を用いて得られる塗膜の膜厚が充分とならず防錆力
が不足し、水性樹脂が80重量部を超え、水が20重量
部未満であると、上記組成物Iを用いて得られる塗膜の
膜厚が大きくなりすぎ、また、含有する微粒子状イオウ
又は必要に応じて含有される硫化物の水への溶解量が少
なすぎるので、上記範囲に限定される。好ましくは水性
樹脂10〜40重量部、水90〜60重量部である。
ず、例えば、市販のイオウ粉末、コロイダルイオウ、イ
オウ崋等を挙げることができるが、分散性、溶解性の点
から、粒径の小さいものが好ましい。
ウの含有量は、上記水性樹脂100重量部に対して0.
5〜200重量部である。上記微粒子状イオウの含有量
が0.5重量部未満であると、被塗物と塗膜との界面に
被塗物である金属の硫化物層が充分に形成されず防錆性
が低下し、200重量部を超えると、硫化ナトリウムや
硫化マンガン等の場合のように対イオンを放出すること
がないので特に防錆性を低下させることはないが、イオ
ウ粒子が塗膜表面に浮上し、ざらつき等による外観不良
となるので、上記範囲に限定される。
リッチペイントを被塗物に乾燥膜厚10〜20μmに塗
布し乾燥させた後、アクリロニトリルブタジエン樹脂と
イオウ又はイオウ化合物の加硫化剤を100:0.2〜
100:10の重量比で含むプライマー組成物を乾燥膜
厚30〜100μmに塗布乾燥させ、その後、プラスチ
ック粉体を1〜3mmの膜厚に溶射塗装する防食被覆方
法が開示されている。上記発明においては、上記プライ
マー組成物中のイオウ又はイオウ化合物は、被塗物とプ
ラスチック塗膜との接着性を向上させている。本発明に
おける上記微粒子状イオウも被塗物と上塗り塗膜との接
着性を向上させるものであることから、この点において
は、本発明と上記発明とは同様である。しかしながら、
上記発明が、イオウ又はイオウ化合物の加硫化剤により
接着性の向上したプライマー組成物塗膜を介して、ジン
クリッチペイントを塗布した被塗物と厚さ数mmに及ぶ
溶射プラスチック塗膜との付着性を向上させて、海洋構
造物等の防食効果を高めるものであるのに対して、本発
明は、上記微粒子状イオウが、被塗物と塗膜との界面に
被塗物である金属の安定な硫化物層を形成することによ
って、厚さ数μm〜十数μm程度の上塗り塗膜と被塗物
との接着性を高めて耐剥離性を発現し、亜鉛系被覆鋼又
は無被覆鋼の耐食性を向上させるものである。したがっ
て、本発明は、上記発明と構成が異なり、また、その目
的及び作用においても上記発明と全く別異のものであ
る。
H7以上である。pH7未満であると、水に分散した水
性樹脂がゲル化するおそれがあり、また、硫化物を含有
する場合、硫化水素が発生して悪臭を放つので、上記範
囲に限定される。好ましくはpH8〜pH12である。
pH調整は、例えば、アンモニア水又はその他のアミン
系化合物;水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナ
トリウム等の金属水酸化物等を用いて行うことができ
る。
配合されていてもよい。上記他の成分としては、例え
ば、シリカ粒子、顔料、界面活性剤等を挙げることがで
きる。また、水性樹脂とイオウ粒子、顔料又は難溶性硫
化物粒子との親和性を向上させ、更に、水性樹脂と亜鉛
又は鉄の硫化物層との密着性等を向上させるために、シ
ランカップリング剤が配合されていてもよい。
膜密着性等の改善剤として用いられる。上記シリカ粒子
としては、ナトリウム等の不純物が少なく、弱アルカリ
系のものであれば特に限定されず、例えば、スノーテッ
クスN(日産化学工業社製)、アデライトAT−20N
(旭電化工業社製)等の市販のシリカゾル;市販のアエ
ロジル粉末シリカ粒子等を挙げることができる。上記シ
リカ粒子の粒径は、10〜20mμが好ましい。
(TiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム
(ZrO)、炭酸カルシウム(CaCO3 )、硫酸バリ
ウム(BaSO4 )、アルミナ(Al2 O3 )、カオリ
ンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe2 O3 、F
e3 O4 )等の無機顔料;有機顔料等の各種着色顔料等
を挙げることができる。上記シランカップリング剤とし
ては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロ
キシプロピルトリメトキシシラン、N−〔2−(ビニル
ベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメ
トキシシラン等を挙げることができる。
均一で平滑な塗膜を形成するために、溶剤を用いてもよ
い。上記溶剤としては、塗料に一般的に用いられるもの
であれば特に限定されず、例えば、アルコール系、ケト
ン系、エステル系、エーテル系のもの等を挙げることが
できる。
て亜鉛系被覆鋼又は無被覆鋼の防錆処理を行うことがで
きる。上記防錆処理は、上記組成物Iを被塗物に塗布
し、塗布後に被塗物を熱風で加熱し、乾燥させる方法で
あってもよく、予め被塗物を加熱し、その後上記組成物
Iを熱時塗布し、余熱を利用して乾燥させる方法であっ
てもよい。上記加熱の温度は、上記いずれの方法であっ
ても、50〜250℃である。50℃未満であると水分
の蒸発速度が遅く充分な成膜性が得られないので、防錆
力が不足し、250℃を超えると水性樹脂の熱分解等が
生じるので、塩水噴霧試験(以下「SST」という)
性、耐水性が低下し、また、外観も黄変するので、上記
範囲に限定される。好ましくは70〜100℃である。
塗布後に被塗物を熱風で加熱し、乾燥させる場合、乾燥
の時間は、1秒〜5分が好ましい。
布膜厚は、乾燥膜厚が0.1μm以上であることが好ま
しい。0.1μm未満であると、防錆力が不足する。乾
燥膜厚が厚すぎると、塗装下地処理としては不経済であ
り、塗装にも不都合であるので、より好ましくは0.1
〜20μmである。更に好ましくは0.1〜10μmで
ある。上記防錆処理においては、上記組成物Iの塗布方
法は特に限定されず、一般に使用されるロールコート、
エアースプレー、エアーレススプレー、浸漬等によって
塗布することができる。
イオンを500〜5000ppm含有させた亜鉛系被覆
鋼及び無被覆鋼用防錆組成物(以下「亜鉛系被覆鋼及び
無被覆鋼用防錆組成物II」という)、亜鉛系被覆鋼及
び無被覆鋼用防錆組成物IIに硫化物イオンを0.1〜
10000ppm含有させた亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼
用防錆組成物(以下「亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆
組成物III」という)、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用
防錆組成物IIに難溶性硫化物を水性樹脂100重量部
に対して0.1〜200重量部含有させた亜鉛系被覆鋼
及び無被覆鋼用防錆組成物(以下「亜鉛系被覆鋼及び無
被覆鋼用防錆組成物IV」という)、又は、亜鉛系被覆
鋼及び無被覆鋼用防錆組成物IIに硫化物イオンを0.
1〜10000ppm含有させ、更に、難溶性硫化物を
水性樹脂100重量部に対して0.1〜200重量部含
有させた亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物(以下
「亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物V」という)
を使用することもできる。
物IIにおいては、上記りん酸イオンの供給源としては
特に限定されず、例えば、りん酸(H3 PO4 )、りん
酸ナトリウム(Na3 PO4 )、りん酸一水素ナトリウ
ム(Na2 HPO4 )、りん酸二水素ナトリウム(Na
H2 PO4 )、りん酸カリウム(K3 PO4 )、りん酸
一水素カリウム(K2 HPO4 )、りん酸二水素カリウ
ム(KH2 PO4 )、りん酸アンモニウム((NH4 )
3 PO4 )、りん酸一水素アンモニウム((NH4 )2
HPO4 )、りん酸二水素アンモニウム((NH4 )H
2 PO4 )等を挙げることができ、更に、りん酸ヒドラ
ジニウム等のりん酸の低分子アミン塩、りん酸エチル等
の比較的低分子のりん酸エステル等を挙げることができ
る。これらのうち、りん酸アンモニウム、りん酸一水素
アンモニウム、りん酸二水素アンモニウム等の揮発性塩
基との塩;りん酸ヒドラジニウム等のりん酸の低分子ア
ミン塩等が好ましい。
000ppmである。りん酸イオンの含有量が500p
pm未満であると被塗物である金属と塗膜との界面にお
けるりん酸亜鉛層等のりん酸金属塩層の形成が不充分と
なり、硫化物イオンにより形成される硫化亜鉛層等の防
錆性を補充する効果がなくなる。りん酸イオンの含有量
が5000ppmを超えると塗膜中の電解質量が増大し
塗膜の透水性が増すので、耐SST性や耐水性の低下を
引き起こす。また、過剰のりん酸イオンの添加は、防錆
組成物中において、経時的に水性樹脂をゲル化させるの
で、防錆組成物の貯蔵安定性を悪化させる。好ましくは
1000〜5000ppmである。
物IIIにおいては、上記硫化物イオンは、HS- 又は
S2-である。上記硫化物イオンは、塗布時、熱乾燥時等
において、被塗物である金属と反応して金属表面に金属
硫化物層を形成する機能を有する。上記硫化物イオンの
供給源としては、水性樹脂及び水からなる溶液中に、
0.1ppm以上の硫化物イオンを溶解させ得る水可溶
性硫化物であれば特に限定されず、例えば、硫化ナトリ
ウム(Na2 S)、硫化カリウム(K2 S)、硫化アン
モニウム((NH4 )2 S)、硫化水素アンモニウム
(NH4 HS)、硫化カルシウム(CaS)、硫化スト
ロンチウム(SrS)、硫化アルミニウム(Al
2 S3 )、硫化バリウム(BaS)、硫化ゲルマニウム
(GeS)、硫化マンガン(MnS)、硫化ランタン
(La2 S3 )等を挙げることができる。これらのう
ち、硫化マンガン(MnS)、硫化アンモニウム((N
H4 )2 S)、硫化水素アンモニウム(NH4 HS)が
好ましい。これらは、単独で使用されてもよく、2種以
上が併用されてもよい。
及び水からなる溶液中において0.1〜10000pp
mである。0.1ppm未満であると、亜鉛系被覆鋼及
び無被覆鋼用防錆組成物IIIの塗布乾燥時に被塗物と
亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物IIIの塗膜と
の界面に、均一な亜鉛又は鉄の硫化物層を形成すること
ができず、10000ppmを超えると、亜鉛系被覆鋼
及び無被覆鋼用防錆組成物IIIの塗膜中に水可溶性物
が過剰に残存して、塗膜の透水性が増大しブリスター
(ふくれ)の発生等による防錆力の低下が生じ、また、
硫化物特有の臭気が問題となる。好ましくは1〜100
0ppmである。
物IVにおいては、上記亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防
錆組成物IIに、更に、難溶性硫化物の粒子を含有させ
る。上記難溶性硫化物の粒子は、腐食環境下で防錆組成
物塗膜中に水分が浸入した場合、硫化物イオンを徐々に
放出し、被塗物と防錆組成物塗膜との界面に予め形成さ
れている硫化亜鉛、硫化鉄等の金属硫化物層の腐食部位
を補修するので、本発明の目的達成をより確実にする機
能を有する。しかし、このとき、対イオンであるカチオ
ンをそのまま界面や塗膜中に残存させ、塩素イオン等の
アニオンの透過性や透水性を促進させることがある。こ
の理由によって、本発明においては、上記現象を生じる
ことがなく防錆性に優れた微粒子状イオウを組成物の主
要構成要素として使用している。上記難溶性硫化物とし
ては水溶液中で硫化物イオンを解離するものであれば特
に限定されず、例えば、硫化マンガン(MnS2 )、硫
化モリブデン(MoS3、MoS4 )、硫化鉄(Fe
S、FeS2 、Fe2 S3 )、硫化バナジウム(V
S4 、V2 S5 、V2 S3 )、硫化ニッケル(Ni
S)、硫化ランタン(La2S3 )、硫化アンチモン
(Sb2 S3 )等を挙げることができる。
00重量部に対して2.5〜200重量部である。2.
5重量部未満であると、硫化物イオンの供給が少なすぎ
て硫化亜鉛、硫化鉄等の金属硫化物層を充分補修するこ
とができないので、防錆効果がなく、200重量部を超
えると、難溶性硫化物の量が過剰となり対イオンである
カチオンの塗膜中における残存量が多くなり、透水性が
増大して防錆力が低下する。好ましくは5〜50重量部
である。
び無被覆鋼用防錆組成物IIに硫化物イオンを0.1〜
10000ppm含有させ、更に、難溶性硫化物を水性
樹脂100重量部に対して0.1〜200重量部含有さ
せて上記亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物Vとす
る。上記硫化物イオンの供給源としては、上記亜鉛系被
覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物IIIに使用することが
できるものを、上記亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組
成物IIIと同様の含有量で使用することができる。上
記難溶性硫化物としては、上記亜鉛系被覆鋼及び無被覆
鋼用防錆組成物IVに使用することができるものを、上
記亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物IVと同様の
含有量で使用することができる。
無被覆鋼用防錆組成物II、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼
用防錆組成物III、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆
組成物IV、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物V
を使用して、亜鉛系被覆鋼又は無被覆鋼の防錆処理を行
うこともできる。上記防錆処理は、上述した本発明の組
成物Iを使用して行う防錆処理と同様にして行うことが
できる。
用防錆組成物II、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組
成物III、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物I
V、並びに、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物V
は、微粒子状イオウを含有する。イオウは、水に対して
は安定であって溶解しないが、酸又はアルカリに対して
は微量溶解して硫化物イオンとなる。このため、腐食環
境下において、イオウが溶解した硫化物イオンによって
金属硫化物が形成され、予め形成されている金属硫化物
層の腐食部位を補修する。また、イオウの溶解性は加温
によって促進される。従って、水性樹脂水溶液のpHを
7以上とすることによって、熱乾燥時にイオウが微量溶
解し、被塗物である金属の表面に安定な硫化物層を形成
する。更に、イオウは、加熱すると多くの金属と直接反
応して硫化物を形成する性質を有しているので、加熱乾
燥時にイオウと被塗物である金属とが直接反応して被塗
物の表面に硫化物層を形成する。
性が大きく、例えば、鉄は天然では黄鉄鉱として存在し
ており、亜鉛は90%以上が閃亜鉛鉱として産出される
等、長期にわたって変質することがない。また、溶解度
積からもわかるとおり、極めて水に溶けにくい。更に、
実験によっても、鉄や亜鉛等の金属の硫化物の安定性は
確かめられ、例えば、亜鉛メッキ表面を硫化処理により
硫化亜鉛に変えたものについて、腐食電流密度を測定す
ると、未処理の場合の10%以下であり、クロメート系
処理剤による腐食抑制効果と同等以上の防錆効果がある
ことが判明した。このため、本発明の防錆処理方法によ
って、硫化鉄、硫化亜鉛等の金属硫化物層による極めて
安定な防錆層が形成される。また、本発明の防錆処理方
法においては、硫化水素ガス又はその水溶液を使用する
ことがなく、安全である。
組成物II、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物I
II、亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物IV、亜
鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物Vは、更に、りん
酸イオンを含有している。りん酸イオンも被塗物である
金属と反応して、水に不溶のりん酸亜鉛、りん酸鉄等の
りん酸塩を形成する性質を有しているので、硫化物層が
未形成である金属素地の部分を補修して、イオウ粒子又
は可溶性若しくは難溶性硫化物による効果と相乗的に防
錆効果を発揮する。これらのりん酸塩は、中性、アルカ
リ性環境下では、硫化物に比べて安定性が劣るが、酸性
環境下では、硫化物よりも安定である。従って、腐食環
境下でのアノード部位等の酸性環境下において、被塗物
と塗膜との界面に濃化溶出したりん酸イオンと亜鉛、鉄
等の被塗物である金属のイオンとが反応して、安定なり
ん酸塩層を形成することができるので、防錆助剤として
機能することができ、防錆処理の耐酸性を向上させる。
説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるも
のではない。
量%を、水80重量%と混合した。イオウ粉末を樹脂1
00重量部に対して0.5重量部添加し、ディスパーで
30分間攪拌分散させ、pH9.0となるように調整し
て組成物を得た。得られた組成物を、予め板温が80℃
になるよう加熱した市販の溶融亜鉛メッキ鋼板(Z−2
7、日本テストパネル社製、70×150×2.3m
m)に、バーコート(#5)で、乾燥膜厚が2〜3μm
となるように塗布し、乾燥した。溶融亜鉛メッキ鋼板
は、スコッチブライトで表面を研磨した後、アルカリ脱
脂剤(SCL53、日本ペイント社製)で脱脂、水洗、
乾燥後に使用した。
鉛メッキ鋼板を下記項目について評価した。結果を表1
に示した。 (1)SST 5%食塩水を35℃で組成物塗布面に噴霧し、72時間
後の白錆の程度を5点満点で評価した。 (2)耐水試験 室温で水道水に1週間浸漬後、表面の白化の程度を5点
満点で評価した。
pHに調整し、予め板温が表1に示す温度になるよう加
熱したこと以外は、実施例1と同様にして、組成物を
得、塗布、乾燥し、評価した。結果を表1に示した。
pHに調整し、実施例1と同様にして、組成物を得た。
得られた組成物Iを、バーコート(#5)で、実施例1
と同様の膜厚となるように塗布後、250℃で5秒間乾
燥させ、評価した。結果を表1に示した。
にして、組成物を得、塗布、乾燥し、評価した。結果を
表1に示した。
たこと以外は、実施例9と同様にして、組成物を得、塗
布、乾燥し、評価した。結果を表1に示した。
と同様にして、組成物を得、塗布、乾燥し、評価した。
結果を表1に示した。
脂100重量部に対して5.0重量部添加し、表1に示
すpHに調整したこと以外は、実施例1と同様にして、
組成物を得、塗布、乾燥し、評価した。結果を表1に示
した。
酸アンモニウム((NH4 )3 PO4 )をりん酸イオン
((PO4 )3-)が表2に示す濃度になるように添加
し、表2に示すpHに調整したこと以外は、実施例1と
同様にして、防錆組成物を得、塗布、乾燥し、評価し
た。結果を表2に示した。ただし、SSTは、312時
間後の白錆の程度を5点満点で評価した。
4 )を使用しなかったこと以外は、実施例10と同様に
して、防錆組成物を得、塗布、乾燥し、評価した。結果
を表2に示した。
ず、イオウ粉末の代わりにストロンチウムクロメートを
樹脂100重量部に対して5.0重量部添加し、表2に
示すpHに調整したこと以外は、実施例10と同様にし
て、防錆組成物を得、塗布、乾燥し、評価した。結果を
表2に示した。
4 )をそれぞれ表3に示す添加量及びりん酸イオン濃度
で使用し、更に、表3に示す水可溶性硫化物を表3に示
す硫化物イオン濃度で使用し、表3に示すpHに調整し
たこと以外は、実施例1と同様にして、防錆組成物を
得、塗布、乾燥し、評価した。結果を表3に示した。た
だし、SSTは、384時間後の白錆の程度を5点満点
で評価した。
4 )をそれぞれ表3に示す添加量及びりん酸イオン濃度
で使用し、更に、表3に示す難溶性硫化物を表3に示す
添加量で分散させ、表3に示すpHに調整したこと以外
は、実施例1と同様にして、防錆組成物を得、塗布、乾
燥し、評価した。結果を表3に示した。ただし、SST
は、384時間後の白錆の程度を5点満点で評価した。
4 )をそれぞれ表3に示す添加量及びりん酸イオン濃度
で使用し、更に、表3に示す水可溶性硫化物及び難溶性
硫化物を、それぞれ表3に示す硫化物イオン濃度及び添
加量で使用し、表3に示すpHに調整したこと以外は、
実施例1と同様にして、防錆組成物を得、塗布、乾燥
し、評価した。結果を表3に示した。ただし、SST
は、384時間後の白錆の程度を5点満点で評価した。
O4 )及び水可溶性硫化物を使用せず、表3に示すpH
に調整したこと以外は、実施例19と同様にして、防錆
組成物を得、塗布、乾燥し、評価した。結果を表3に示
した。
性硫化物を使用せず、イオウ粉末の代わりにストロンチ
ウムクロメートを樹脂100重量部に対して5.0重量
部添加し、表3に示すpHに調整したこと以外は、実施
例19と同様にして、防錆組成物を得、塗布、乾燥し、
評価した。結果を表3に示した。
なクロムを使用することがなく、クロメート系処理剤を
使用する防錆処理方法と同等以上の優れた防錆力を有
し、しかも、硫化水素の発生がなく工業的に容易に利用
が可能である亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼の防錆処理方法
を実現することができる。また、本発明によって、クロ
メート系処理剤と同等以上の優れた防錆力を有する非ク
ロメート系の塗布型防錆組成物であって、特に亜鉛系被
覆鋼及び無被覆鋼に塗布後熱乾燥できるか、又は、熱時
塗布乾燥できるものを得ることができる。
Claims (5)
- 【請求項1】 水性樹脂1〜80重量部及び水99〜2
0重量部からなる溶液に、微粒子状イオウを前記水性樹
脂100重量部に対して0.5〜200重量部含有させ
てなるpH7以上である組成物を、亜鉛系被覆鋼又は無
被覆鋼に塗布し、その後前記亜鉛系被覆鋼又は無被覆鋼
を50〜250℃となるように加熱して乾燥するか、又
は、予め前記亜鉛系被覆鋼又は無被覆鋼を50〜250
℃に加熱し、その後前記組成物を塗布し乾燥することを
特徴とする防錆処理方法。 - 【請求項2】 水性樹脂1〜80重量部及び水99〜2
0重量部からなる溶液に、微粒子状イオウを前記水性樹
脂100重量部に対して0.5〜200重量部含有させ
てなるpH7以上である組成物に、りん酸イオンを50
0〜5000ppm含有させてなることを特徴とする亜
鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物。 - 【請求項3】 請求項2記載の亜鉛系被覆鋼及び無被覆
鋼用防錆組成物に、更に、硫化物イオンを0.1〜10
000ppm含有させてなることを特徴とする亜鉛系被
覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物。 - 【請求項4】 請求項2記載の亜鉛系被覆鋼及び無被覆
鋼用防錆組成物に、更に、難溶性硫化物を前記水性樹脂
100重量部に対して0.1〜200重量部含有させて
なることを特徴とする亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆
組成物。 - 【請求項5】 請求項2記載の亜鉛系被覆鋼及び無被覆
鋼用防錆組成物に、更に、硫化物イオンを0.1〜10
000ppm、及び、難溶性硫化物を前記水性樹脂10
0重量部に対して0.1〜200重量部含有させてなる
ことを特徴とする亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成
物。
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08239776A JPH08239776A (ja) | 1996-09-17 |
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JP07018443A Expired - Fee Related JP3109039B2 (ja) | 1995-01-09 | 1995-01-09 | 防錆処理方法並びに亜鉛系被覆鋼及び無被覆鋼用防錆組成物 |
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- 1995-01-09 JP JP07018443A patent/JP3109039B2/ja not_active Expired - Fee Related
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